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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1061306
異議申立番号 異議1999-71194  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-02-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-30 
確定日 2002-06-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第2805295号「パチンコ機の制御装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについてされた平成12年5月8日付け決定に対し、東京高等裁判所において決定取消の判決(平成12(行ケ)年第221号平成13年11月6日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり決定する。。 
結論 特許第2805295号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2805295号の請求項1に係る発明は、昭和63年2月8日に特許出願された特願昭63-27259号を平成9年4月25日に分割出願した特願平9-123241号に係り、平成10年7月24日に特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人細江裕実より特許異議の申立てがあり、平成11年6月7日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間である平成11年8月11日に訂正請求がなされ、平成11年12月10日付けで訂正拒絶理由通知がなされ、平成12年5月8日付けで特許を取り消すとの決定がなされ、特許権者は該決定の取消を求めて東京高等裁判所に訴えを提起し、これが平成12年(行ケ)第221号特許取消決定取消請求事件として審理され、平成13年11月6日に決定を取り消すと判決がなされて特許庁に差し戻されたところ、平成13年12月27日付けで再度の取消理由通知がなされたが、その指定期間内に応答がなかったものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)平成11年8月11日付けの訂正請求書で請求した訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1の「前記制御手順が正常に実行されない場合、」を「前記制御手順が正常に実行されない場合の否信号に基づき、」と訂正しようとするものであるところ、本件訂正に係る前記構成は、無信号状態とは異なる「否信号」を演算処理手段に入力し、演算処理手段が否信号を受信することのみによってリセット信号を発生するものを包含する点において、訂正は願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならないとする規定に違反するものであって、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書きの規定に違反するので、当該訂正は認められない。
(2)そして、前記判決は、前記平成12年5月8日付けの異議決定が本件訂正を認めないと判断したことに誤りはないと判断している。

3.特許異議申立てについての判断
(1)本件発明
前記2.のように、本件訂正は認められないから、本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本件特許の設定登録時における以下のとおりのものである。
「初期化用のリセット端子を備えると共に、予め定められたパチンコ機の制御手順を順次実行する演算処理手段を設けているパチンコ機の制御装置において、前記制御手順が正常に実行されない場合、前記演算処理手段に対する初期化命令を実行させるためのリセット信号を前記リセット端子に入力する演算監視手段と、前記パチンコ機への電源投入時に、前記リセット信号を前記リセット端子に入力するパワーオンリセット回路とを設けていることを特徴とするパチンコ機の制御装置。」(以下、「本件発明」という。)

(2)取消理由の概要
当審が平成13年12月27日付けで通知した取消理由は、本件発明は、刊行物である下記の第1引用例乃至第5引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきというものである。
第1引用例.特開昭62-14878号公報(甲第2号証)
第2引用例.特開昭60-138625号公報
第3引用例.実願昭57-98319号(実開昭59-6254号)
のマイクロフィルム(甲第8号証)
第4引用例.特開昭57-153347号公報(甲第21号証)
第5引用例.特開昭60-126740号公報(甲第22号証)

(3)第1引用例に記載の発明
i.第1引用例〔特開昭62-14878号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「(1)電気的に制御される弾球遊技機であって、制御データが記憶された記憶手段、前記記憶手段に記憶された前記制御データに基づいて、前記弾球遊技機を制御する制御手段、所定のサイクルで、前記記憶手段に記憶された制御データの異常を検出する手段、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記制御データを強制的に初期化する異常制御防止手段を含む、弾球遊技機。」(第1引用例第1頁左下欄第5〜14行)、
「(4)前記異常検出手段は、所定のサイクルで、前記制御手段から暴走による異常出力があるか否かを検出する手段である、特許請求の範囲第1項記載の弾球遊技機。」(同第1頁右下欄第8〜11行)、
「〔発明が解決しようとする問題点〕 一方、パチンコ遊技機が配設されたパチンコホール等は、人の出入りが多く、かつ大勢の人の熱気等に包まれているため、埃や、湿気や雑音等が溢れている。このような状況下では、マイクロコンピュータの制御信号に、時としてノイズが混じり、そのノイズによってマイクロコンピュータは制御に異常をきたし、いわゆるプログラムの暴走が生じることがある。 この発明は、上述のごとき苛酷な条件下で利用されるパチンコ遊技機の制御回路を改良し、ノイズ等によるプログラムの暴走防止が図られた、適正に可変入賞球装置が制御される、パチンコ遊技機を提供することである。」(同第2頁左上欄第14行〜右上欄第7行)、
「第4図を参照して、この制御回路は、各種入力信号に基づいて演算処理をし、各制御対象に対して制御信号を与えるマイクロコンピュータ96を備えている。マイクロコンピュータ96は、制御プログラムが記憶されたリードオンリメモリ(ROM)98と読出および書換可能なランダムアクセスメモリ(RAM)100とを含む。RAM100は、第5図のメモリマップに示すように、各アドレスごとに8ビットの記憶領域を有し、各種のデータは単アドレスまたは複数アドレスを使って記憶される。 この実施例の特徴は、たとえばRAMアドレス80Hに設定される初期設定フラグ1は、図6に示すように、「01010101」(55Hパターン)とし、RAMアドレス81に設定される初期設定フラグ2は「10101010」(AAHパターン)としたことである。また、これら初期設定フラグ1および初期設定フラグ2をチェックし、いずれかのフラグ1またはフラグ2の値が変化したとき、他のRAMアドレスに設定されている各種データにも異常が生じたものと類推して、データの初期設定をやりなおすようにされていることである。この際、初期設定フラグ1および初期設定フラグ2を、上述のように55HパターンとAAHパターンとにしたのは、次のような理由による。すなわち、RAMには、「0」または「1」の組合せにより各種のデータが設定されているが、この設定されたデータがノイズ等により変化して、プログラムの暴走が生じる。その際、ノイズ等によるデータの変化は、「0」が「1」に変化するか、「1」が「0」に変化するかの2種類である。また、ノイズによりデータが変化する場合、RAMのデータエリアのたとえばBIT0列がまとめて変化されたり、BIT4の列がまとまって変化されたりというように、各BIT列ごとに変化を受けることが多い。よって、ノイズ防止用フラグとして、上述のパターンの初期設定フラグ1および初期設定フラグ2を設定し、各フラグの変化を検出することによって、ノイズによる誤データの書込をチェックし、プログラムの暴走を防止することができる。」(同第4頁右上欄第20〜右下欄第20行)、
「アドレスデコード回路112からはアドレスデコード信号が与えられる。暴走防止回路114からは暴走防止信号が与えられる。暴走防止回路114は、マイクロコンピュータ96の制御の暴走を、ハード面から防止するための回路である。パワーオンリセット回路116からは電源投入時のパワーオンリセット信号が与えられる。暴走リセット回路118からは暴走リセット信号が与えられる。」(同第5頁右上欄第6〜14行)、
「第4図の割り込みクロック回路110から4msごとに割り込みクロック信号が入力されることにより、マイクロコンピュータ96は第9A図〜第9D図に示す割り込みルーチンの処理を行なう。 割り込み処理ルーチンでは、まず汎用レジスタを-1する(ステップS45)。すなわち、ここにおいて割り込みルーチンの処理が始まるごとに、すなわち4msごとに汎用レジスタが-1される結果、15秒という時間が作り出される。 次に、NMIパルスをポートに出力するためのサブルーチンに入り(ステップS46)、その後この実施例の特徴であるRAMのデータチェックを行なう。 RAMのデータチェックは、ステップS47ないしステップS55の手順に基づいて行なう。まず、スタックポインタのRAMチェックを行ない(ステップS47)、この時点で異常があればエラーとして初期設定ルーチンへジャンプする。異常がなければ、次にポートとポートイメージとが一致しているかどうかのチェックをし(ステップS50,S51)、一致していなければエラーとして初期設定ルーチンへジャンプする。異常がなければ、初期設定フラグ1および初期設定フラグ2のパターンチェックを行なう。前述のように、初期設定フラグ1は55H「01010101」パターンであり、初期設定フラグ2はAAH「10101010」パターンである。このパターンが1つでも異なっていれば、ノイズ等によりRAMのデータエリアに誤りがあると推定して、マイクロコンピュータ96の処理は初期設定ルーチンへジャンプするのである。」(同第6頁左下欄第7行〜右下欄第17行)。

ii.第1引用例における前記摘示の記載及び図面第4乃至9図によれば、第1引用例には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「初期化用のリセット端子を備えると共に、予め定められた弾球遊技機の制御手順を順次実行するマイクロコンピュータ96を設けている弾球遊技機の制御回路において、ノイズ等によって記憶手段RAM100に記憶された制御データに異常が生じてマイクロコンピュータ96による制御に異常をきたしてプログラムの暴走が生じた場合、前記マイクロコンピュータ96に対する初期設定ルーチンを実行させるための制御プログラムとしての異常制御防止手段を備えるとともに、前記弾球遊技機への電源投入時に、前記マイクロコンピュータ96に対する初期化命令を実行させるためのリセット信号を前記リセット端子に入力するパワーオンリセット回路116を設けている弾球遊技機の制御回路。」(以下、「引用発明」という。)

(4)本件発明と引用発明との対比検討
i.本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明における、「弾球遊技機」、「マイクロコンピュータ」、「制御回路」、「パワーオンリセット回路116」は、それぞれ、本件発明における、「パチンコ機」、「演算処理手段」、「制御装置」、「パワーオンリセット回路」に相当する。
また、引用発明における「ノイズ等によって記憶手段RAM100に記憶された制御データに異常が生じてマイクロコンピュータ96による制御に異常をきたしてプログラムの暴走が生じた場合、前記マイクロコンピュータ96に対する初期設定ルーチンを実行させるための制御プログラムとしての異常制御防止手段」は、制御データの異常に起因してプログラムの暴走が生じる場合、すなわち、制御プログラムが正常に実行されない場合にマイクロコンピュータ96(演算処理手段)を初期化する手段であるから、本件発明における「制御手順が正常に実行されない場合、演算処理手段に対する初期化命令を実行させるためのリセット信号をリセット端子に入力する演算監視手段」と対比して、いずれも「制御手順が正常に実行されない場合、演算処理手段に対する初期化命令を実行させるための手段」である点で一致する。

ii.そうすると、本件発明と引用発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点 「初期化用のリセット端子を備えると共に、予め定められたパチンコ機の制御手順を順次実行する演算処理手段を設けているパチンコ機の制御装置において、前記制御手順が正常に実行されない場合、前記演算処理手段に対する初期化命令を実行させるための手段と、前記パチンコ機への電源投入時に、前記リセット信号を前記リセット端子に入力するパワーオンリセット回路とを設けているパチンコ機の制御装置。」

相違点.制御手順が正常に実行されない場合、演算処理手段に対する初期化命令を実行させるための手段が、本件発明は、リセット信号をリセット端子に入力する演算監視手段であるのに対して、引用発明は、演算処理手段の制御プログラムとしての異常制御防止手段である点。

iii.そこで、前記相違点を検討すると、マイクロコンピュータによる制御手順が正常に実行されない場合に、前記マイクロコンピュータに対する初期化命令を実行させるためのリセット信号をリセット端子に入力する演算監視手段を備える技術は、周知(例えば、第2引用例〔特開昭60-138625号公報〕、第3引用例〔実願昭57-98319号(実開昭59-6254号)のマイクロフィルム〕、第4引用例〔特開昭57-153347号公報〕、第5引用例〔特開昭60-126740号公報〕参照、特に第2引用例にはゲーム機に適用できることが記載されている。)であるから、制御手順が正常に実行されない場合に演算処理手段に対する初期化命令を実行させるための手段として、引用発明におけるマイクロコンピュータによる演算処理手段の制御プログラムとしての異常制御防止手段に代えて、マイクロコンピュータによる演算処理手段のリセット端子に初期化命令を実行させるためのリセット信号を入力する前記周知技術を採用して、前記相違点にかかる本件発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到できるものである。

iv.そして、本件発明における、演算処理中に誤動作が発生したときのみ演算処理手段を初期化して、演算処理手段が正常に動作している場合には初期化されないので、無駄な初期化処理がなくなり、これにより、従来の周期的に初期化することによるプログラムの作成制限やプログラム実行の能率の低減がなくなるという作用効果は、引用発明に前記周知技術を適用したものにおいて、当業者が当然予測できるものである。

v.よって、本件発明は、第1引用例に記載された発明(引用発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-05-08 
出願番号 特願平9-123241
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (A63F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 村山 隆
松川 直樹
登録日 1998-07-24 
登録番号 特許第2805295号(P2805295)
権利者 株式会社平和
発明の名称 パチンコ機の制御装置  
代理人 中村 壽夫  
代理人 萼 経夫  
代理人 小野塚 薫  
代理人 宮崎 嘉夫  

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