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審決分類 審判 訂正 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正する C08L
管理番号 1061991
審判番号 訂正2002-39034  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-02-15 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2002-02-07 
確定日 2002-05-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2660274号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2660274号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 I.本件審判請求の要旨は、特許第2660274号発明(平成3年12月9日特許出願、平成9年6月13日設定登録)の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち下記(1)〜(13)のとおり訂正することを求めるものである。
(1)訂正事項1 【請求項1】及び【請求項2】の「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜40重量%、(B)の含有量が15〜60重量%であり、」を
「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜70重量%、(B)の含有量が15〜30重量%であり、」と訂正する。
(2)訂正事項2 段落【0008】中の「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜40重量%、(B)の含有量が15〜60重量%であり、」を
「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜70重量%、(B)の含有量が15〜30重量%であり、」と訂正する。
(3)訂正事項3 段落【0009】中の「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜40重量%、(B)の含有量が15〜60重量%であり、」を
「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜70重量%、(B)の含有量が15〜30重量%であり、」と訂正する。
(4)訂正事項4 段落【0016】中の「(A)成分の含有量は85〜40重量%、(B)成分の含有量は15〜60重量%である」を
「(A)成分の含有量は85〜70重量%、(B)成分の含有量は15〜30重量%である」と訂正する。
(5)訂正事項5 段落【0037】中の「(実施例2、4及び比較例1〜4、6、7)実施例2、4」を
「(実施例2及び比較例1〜4、6、7)実施例2」と訂正する。
(6)訂正事項6 段落【0038】中の「実施例2〜4」を「実施例2、3」と訂正する。
(7)訂正事項7 段落【0040】中の【表2】の「実施例4」の列を削除する。
(8)訂正事項8 段落【0042】中の「(実施例5、6)」を「(実施例4、5)」と訂正する。
(9)訂正事項9 段落【0046】中の「(実施例7、比較例8)実施例1と同様な重合を行って、ブロック共重合体混合物を得る際、実施例7では」を「(実施例6、比較例8)実施例1と同様な重合を行って、ブロック共重合体混合物を得る際、実施例6では」と訂正する。
(10)訂正事項10 段落【0047】中の「実施例5、6」を「実施例4、5」と訂正する。
(11)訂正事項11 段落【0048】中【表3】の第1行中の「実施例5」、「実施例6」及び「実施例7」を、それぞれ「実施例4」、「実施例5」及び「実施例6」と訂正する。
(12)訂正事項12 段落【0050】中の「(実施例8、9及び比較例10)」を「(実施例7、8及び比較例10)」と訂正し、「実施例8、9、比較例10では、」を「実施例7、8、比較例10では、」と訂正する。
(13)訂正事項13 段落【0051】中の【表4】の第1行中の「実施例8」及び「実施例9」を、それぞれ「実施例7」及び「実施例8」と訂正する。
II.当審の判断
そこで、これらの訂正事項について検討する。
1、訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(1)の訂正は、請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明におけるブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)の配合量について、「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜40重量%、(B)の含有量が15〜60重量%」であったものを「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜70重量%、(B)の含有量が15〜30重量%」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、この訂正の根拠は、明細書段落【0016】の記載及び実施例2、3の記載に基づくものである。
また、上記(2)〜(13)の訂正は、特許請求の範囲の訂正により生じた明細書の記載を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記各訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
2、独立特許要件について
訂正後の発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か検討する。
(1)訂正後の発明
訂正後の明細書に記載された請求項1〜2に係る発明(以下、本件発明1〜本件発明2という)は、訂正後の請求項1〜2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】少なくとも2個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個のブタジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(A)と、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(GPC)で測定されるピーク分子量が、標準ポリスチレン換算で、ブロック共重合体(A)の1/3〜2/3に相当する、少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物と少なくとも1個のブタジエンよりなるブロック共重合体(B)よりなるブロック共重合体組成物3〜15部と、アスファルト85〜97部よりなり、ブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)中の、全結合アルケニル芳香族化合物の含有量が20〜40重量%、ブタジエン中のビニル結合含有量が50重量%以下であり、ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜70重量%、(B)の含有量が15〜30重量%であり、かつブロック共重合体組成物のMI(G)が0.8〜5.0であって、更に静的熱機械分析(TMA)で測定したブロック共重合体組成物の軟化温度が80〜130℃であることを特徴とする、アスファルト組成物。
【請求項2】少なくとも2個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個のブタジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(A)と、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(GPC)で測定されるピーク分子量が、標準ポリスチレン換算で、ブロック共重合体(A)の1/3〜2/3に相当する、少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物と少なくとも1個のブタジエンよりなるブロック共重合体(B)よりなるブロック共重合体組成物よりなり、ブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)中の、全結合アルケニル芳香族化合物の含有量が20〜40重量%、ブタジエン中のビニル結合含有量が50重量%以下であり、ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜70重量%、(B)の含有量が15〜30重量%であり、かつブロック共重合体組成物のMI(G)が0.8〜5.0であって、更に静的熱機械分析(TMA)で測定したブロック共重合体組成物の軟化温度が80〜130℃であることを特徴とする、アスファルト改質用ブロック共重合体組成物。」
(2)刊行物記載の事項
アスファルトヘポリマーを添加した後、これを180℃で約30分間混合して、均一な混合物を得た。」(第2頁下から第9行〜第4頁第2行;訳文第3頁下から第7行〜第4頁第4行)と記載され、
また、テーブル1(表1、9頁)及びテーブル2(表2、13頁)には、注の欄に
「2)3%wNeat KRATON Polymer,D1101/D1118X(50:50)
3)6%wNeat KRATON Polymer,D1101/D1118X(50:50)」と記載されている。
(3)対比・判断
(i)本件発明2について
本件発明2は、前記記載のとおりの構成を採用するものであり、特にブロック共重合体(A)とブロック共重合体(B)とからなるアスファルト改質用ブロック共重合体組成物であって、ブロック共重合体(A)の含有量が85〜70重量%であり、ブロック共重合体(B)の含有量が15〜30重量%である点を主要な構成とするものである。
これに対して、刊行物には、「KRATON D1101」と「KRATON D 1118」を50/50の比でアスファルトに混合したことが記載されているが、試料3によれば、これはスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(「KRATON D1101」は、本件発明における「ブロック共重合体(A)」に相当する。)の含有量が54.6重量%であり、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(「KRATON D 1118」は、本件発明における「ブロック共重合体(B)」に相当する。)の含有量が45.4重量%であるものを使用したことになる。
しかしながら、刊行物の「KRATON D1101」が本件発明における「ブロック共重合体(A)」に相当し、「KRATON D 1118」が本件発明における「ブロック共重合体(B)」に相当するとしても、本件発明2と刊行物記載の発明とでは、ブロック共重合体(A)とブロック共重合体(B)との配合割合において相違するから、本件発明2は刊行物に記載された発明ではないことは明らかである。
したがって、本件発明2は刊行物に記載された発明であるとはいえない。
また、刊行物には、「KRATON D1101」と「KRATON D 1118」を50/50の重量比でアスファルトに混合したことが記載されているのみで、「KRATON D1101」と「KRATON D1118」とを混合して得られる組成物について、前記以外の組合せについてアスファルトに混合した場合に優れたものが得られることについては何ら記載がされていない。
そうすると、刊行物には、本件発明2が採用している構成である、「ブロック共重合体(A)の配合割合を85〜70重量%、ブロック共重合体(B)の配合割合を15〜30重量%とする」点について、これを採用することについて示唆がされているとはいえない。
さらに、本件発明2は、「高い軟化点と機械的強度、更に耐寒性等の物性と、加工性との高度なバランスに優れたアスファルト組成物、及びこのアスファルト組成物を提供するためのアスファルト改質剤としてのブロック共重合体組成物を提供する」(段落【0006】)ことを目的としてなされたものであり、アスファルトの性質を改善するために添加するポリマーとして、前記構成を備えたブロック共重合体組成物を用いることにより、前記目的が達成できることを見出して本件発明を完成したものである。そして、このような効果が秦せられることについては、刊行物の記載からは到底予測し得ないものといえる。
そうであれば、本件発明2は、前記刊行物の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
なお、請求人が提出した「資料3」は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(以下「SBS」という)およびスチレン-ブタジエンブロック共重合体(以下「SB」という)に相当する以下の2種類の製品を50対50の比率で混合した組成物について、SBS、SBのピーク分子量および含有量、全結合スチレン含有量、ブタジエン中のビニル結合含有量、メルトインデックス(MI)ならびに軟化温度を測定した結果を示すものであり、本件発明2が刊行物の発明と同一であることを裏付けるものではないし、刊行物の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたことの裏付けになるものでもない。
同じく、請求人が提出した「試料4」についても、重合体としてD-1101CM3g、D-11183g(重量比50対50)、をストレートアスファルトと溶融混練してアスファルト組成物を得たことが示されているものの、本件発明2が刊行物の発明であることを裏付けるものではないし、刊行物の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたことの裏付けになるものでもない。
上記のとおりであるから、本件発明2は、刊行物に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(ii)本件発明1について
本件発明1は本件発明2の構成をそのまま構成として有するので、本件発明2について述べたと同様の理由により、刊行物に記載された発明であるとはいえないし、刊行物に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
また、他に本件発明1〜本件発明2について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとすべき理由も発見しない。
3.むすび
したがって、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明ということはできない。
III.むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第126条第1項第1号〜第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項〜第3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アスファルト組成物、及びアスファルト改質用ブロック共重合体組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも2個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個のブタジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(A)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるピーク分子量が、標準ポリスチレン換算で、ブロック共重合体(A)の1/3〜2/3に相当する、少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物と少なくとも1個のブタジエンよりなるブロック共重合体(B)よりなるブロック共重合体組成物3〜15部と、アスファルト85〜97部よりなり、ブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)中の、全結合アルケニル芳香族化合物の含有量が20〜40重量%、ブタジエン中のビニル結合含有量が50重量%以下であり、ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜70重量%、(B)の含有量が15〜30重量%であり、かつブロック共重合体組成物のMI(G)が0.8〜5.0であって、更に静的熱機械分析(TMA)で測定したブロック共重合体組成物の軟化温度が80〜130℃であることを特徴とする、アスファルト組成物。
【請求項2】 少なくとも2個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個のブタジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(A)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるピーク分子量が、標準ポリスチレン換算で、ブロック共重合体(A)の1/3〜2/3に相当する、少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物と少なくとも1個のブタジエンよりなるブロック共重合体(B)よりなるブロック共重合体組成物よりなり、ブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)中の、全結合アルケニル芳香族化合物の含有量が20〜40重量%、ブタジエン中のビニル結合含有量が50重量%以下であり、ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜70重量%、(B)の含有量が15〜30重量%であり、かつブロック共重合体組成物のMI(G)が0.8〜5.0であって、更に静的熱機械分析(TMA)で測定したブロック共重合体組成物の軟化温度が80〜130℃であることを特徴とする、アスファルト改質用ブロック共重合体組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なスチレン-ブタジエンブロック共重合体組成物に関するものである。特に、本発明は、特定の構造を有するアスファルト改質用ブロック共重合体組成物、及びこのブロック共重合体組成物を改質剤とする、高い軟化点を有し、機械的強度、低温での伸度等の耐寒性などの物性と加工性とのバランスに優れるアスファルト組成物、例えば排水舗装用に適したアスファルト組成物を提供する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アスファルト組成物は、道路舗装、防水シート、遮音シート、ルーフィング等の用途に広く使用されている。その際、アスファルトに種々のポリマーを添加して、その性質を改良しようとする試みが多くなされている。そのポリマーの具体例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、ゴムラテックス、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とからなるブロック共重合体等が使用されている。
【0003】
しかしながら、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体をアスファルトに添加したアスファルト組成物は低温特性に劣り、冬場のひび割れ等が発生して好ましくない。また、伸度特性も劣り、そのために粘結力(テナシテイー)も劣ることから、特に道路舗装の場合には骨材の把握特性に劣る。
【0004】
また、ゴムラテックスの場合、アスファルトと混合する際の取扱作業性は良好であるものの、ラテックス中の水を蒸発させるために、余分な加熱も必要であるなどの経済的或いはプロセス上の問題がある。一方、ラテックスゴムの困難性を解決するものとして、アルケニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とからなるブロック共重合体を添加したアスファルト組成物は、低温特性に優れ、弾性率が低いために加工性に優れる等の利点があった(特公昭47-17319号公報、特公昭59-36949号公報)。
【0005】
しかしながら、近年、道路通行車両の増大、或いは高速化といった事情に伴って、更に優れた強度、耐磨耗性を保持しつつ、こういった高速路での排水性改良や騒音低減化を目的として、開粒度の高いアスファルト混合物(排水舗装用アスファルト)の要求が高まっている。このために、より高い軟化点やタフネス、テナシテイーなどの機械的強度が必要とされ、例えば上記ブロック共重合体の分子量を上げることにより改良することが試みられているが、反面、溶融粘度が高くなり、道路舗装等の加工性が著しく犠牲になる等の問題があった。このように、従来の各ポリマーを添加したアスファルト組成物は、その特性として必要な高い軟化点、針入度、伸度と耐寒性能や、加工性との高度なバランスを同時に満足しうるものは存在しなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来のアスファルト組成物が有する課題を解決し、高い軟化点と機械的強度、更に耐寒性等の物性と、加工性との高度なバランスに優れたアスファルト組成物、及びこのアスファルト組成物を提供するためのアスファルト改質剤としてのブロック共重合体組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の好ましい物性を有するアスファルト組成物を開発するために、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するアルケニル芳香族化合物とブロックとのブロック共重合体組成物が、特定された範囲で含有されてなるアスファルト組成物によりその目的が達成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は;
▲1▼ 少なくとも2個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個のブタジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(A)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるピーク分子量が、標準ポリスチレン換算で、ブロック共重合体(A)の1/3〜2/3に相当する、少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物と少なくとも1個のブタジエンよりなるブロック共重合体(B)よりなるブロック共重合体組成物3〜15部と、アスファルト85〜97部よりなり、ブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)中の、全結合アルケニル芳香族化合物の含有量が20〜40重量%、ブタジエン中のビニル結合含有量が50重量%以下であり、ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜70重量%、(B)の含有量が15〜30重量%であり、かつブロック共重合体組成物のMI(G)が0.8〜5.0であって、更に静的熱機械分析(TMA)で測定したブロック共重合体組成物の軟化温度が80〜130℃である、アスファルト組成物に関する。
【0009】
▲2▼ 少なくとも2個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個のブタジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(A)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるピーク分子量が、標準ポリスチレン換算で、ブロック共重合体(A)の1/3〜2/3に相当する、少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物と少なくとも1個のブタジエンよりなるブロック共重合体(B)よりなるブロック共重合体組成物よりなり、ブロック共重合体(A)及びブロック共重合体(B)中の、全結合アルケニル芳香族化合物の含有量が20〜40重量%、ブタジエン中のビニル結合含有量が50重量%以下であり、ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜70重量%、(B)の含有量が15〜30重量%であり、かつブロック共重合体組成物のMI(G)が0.8〜5.0であって、更に静的熱機械分析(TMA)で測定したブロック共重合体組成物の軟化温度が80〜130℃である、アスファルト改質用ブロック共重合体組成物に関する。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明を構成する(A)成分は、少なくとも2個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個のブタジエンを主体とする重合体ブロックとの共重合体ブロックからなるブロック共重合体である。モノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックとは、モノアルケニル芳香族化合物を50〜100重量%含有するモノアルケニル芳香族化合物単独又は共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。また、ブタジエンを主体とする重合体ブロックとは、ブタジエンを50〜100重量%含有する共役ジエン化合物単独又はモノアルケニル芳香族化合物との共重合体ブロックである。
【0011】
共重合体ブロック中のモノアルケニル芳香族炭化水素は均一に分布していても、またテーパー状に分布していてもよい。更に、本発明を構成する(B)成分は、少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1個のブタジエンを主体とする重合体ブロックとの共重合体ブロックからなるブロック共重合体である。
【0012】
モノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックとは、モノアルケニル芳香族化合物を50〜100重量%含有するモノアルケニル芳香族化合物単独又はブタジエンとの共重合体ブロックである。また、ブタジエンを主体とする重合体ブロックとは、ブタジエンを50〜100重量%含有するブタジエン単独又はモノアルケニル芳香族化合物との共重合体ブロックである。共重合体ブロック中のモノアルケニル芳香族炭化水素は均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。
【0013】
また、(A)及び(B)のブロック共重合体成分のモノアルケニル芳香族炭化水素の含有量は20〜40%である。モノアルケニル芳香族炭化水素の含有量が20%未満の場合、モノアルケニル芳香族炭化水素重合体ブロックの凝集力が不足し、タフネス・テナシテイー等の機械強度に劣る。また、40%を越える場合は、ブロック共重合体の静的熱機械分析での軟化温度が高すぎて、アスファルト配合物を製造する際に、アスファルト中への溶解分散時間が長くなり、加工性が困難となって好ましくない。また、アスファルト配合物の溶融粘度は低くなるものの、低温特性に劣り好ましくない。好ましくは、モノアルケニル芳香族炭化水素が25〜35重量%の範囲にある場合である。
【0014】
本発明を構成するブロック共重合体成分(A)及び(B)のモノアルケニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、P-メチルスチレン、第三級ブチルスチレン、α-メチルスチレン、1,1-ジフェニルエチレンなどの単量体が挙げられ、中でもスチレンが好ましい。これらの単量体は、単独でも2種以上の併用でもよい。
【0015】
一方、ブタジエン(類)としては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、フェニル-1,3-ブタジエンなどの単量体が挙げられ、中でも1,3-ブタジエン及びイソプレンが好ましい。これらの単量体は、単独でも2種以上の併用でもよい。
【0016】
本発明を構成する(B)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるピーク分子量は、(A)成分の同様にして測定されるピーク分子量の1/3〜2/3の範囲である。この範囲外、即ち1/3未満の場合には、溶融粘度が低くなり加工性は優れるものの、凝集力や軟化点の点で劣り、また伸度も劣ったものとなる。また、2/3を越える場合、軟化点は高くなるものの、アスファルト組成物の溶融粘度が高くなって、加工性の点で好ましくない。更に、ブロック共重合体成分(A)及び(B)中における(A)成分の含有量は85〜70重量%、(B)成分の含有量は15〜30重量%であることを必要とする。これらの範囲外の場合、溶融粘度、軟化点、伸度の高度な物性バランスが発現しない。
【0017】
本発明を構成する(A)成分は、例えば不活性炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物を重合開始剤としてスチレンを重合させ、次いで、ブタジエンを重合させ、再度スチレンを重合させ、場合により、更に、スチレンとブタジエンを交互に重合させてゆく逐次重合法により、GPCにおけるピーク分子量が、標準ポリスチレン換算で5×104〜50×104の範囲になるように、有機リチウム化合物量を制御し調製される。
【0018】
また、本発明を構成する(B)成分は、例えば不活性炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物を重合開始剤としてスチレンを重合させ、次いで、ブタジエンを重合させ、場合により、更にスチレンとブタジエンを交互に重合させてゆく逐次重合法により、GPCにおけるピーク分子量が(A)成分のピーク分子量の1/3〜2/3倍の範囲になるように、有機リチウム化合物量を制御し調製される。(A)成分及び(B)成分は、反応終了後、水、アルコール、酸などを添加して、活性種を失活させ、各成分の溶液を所定の組成でブレンドした後、例えばスチームストリッピングなどを行って得ることができる。
【0019】
本発明を構成する(A)成分および(B)成分からなるブロック共重合体混合物は、上記とは別の手法によっても得ることができる。即ち、上記と同様な手法で、(B)成分を重合した後重合系内に、適当なカップリング剤を有機リチウム化合物に対して、所定量添加することにより得られる共重合体生成物を(A)成分とし、同一反応系内で所期の混合物を得る。この手法を用いると、(A)成分のピーク分子量は(B)成分のピーク分子量の整数倍に限定されるが、上記の方法に比べ工業的に有利である。
【0020】
カップリング剤としては、2官能性又は3官能性のものを用いることが可能であるが、好ましくは2官能性カップリング剤が使用される。そのようなものとしては、例えばジクロルジメチルシランのようなケイ素化合物、ジクロルジメチルスズのようなスズ化合物、安息香酸メチルのようなエステル化合物、ジビニルベンゼンなどのようなビニルアレン類、そして2官能性のエポキシ化合物などがあるが、得られるブロック共重合体組成物の熱安定性や副生成物の点から、最も好ましいのは2官能性エポキシ化合物である。
【0021】
また、本発明を構成する(A)及び(B)成分のブタジエン重合体ブロック中のビニル結合含率は50重量%以下である。ビニル結合含率が50重量%を越えると、ブロック共重合体の溶融温度が高くなり、アスファルトを配合する際の溶解性が困難となって好ましくない。また、アスファルト組成物の低温特性も劣ったものとなる。より好ましくは、ビニル結合含率が10〜40重量%の範囲にある場合である。
【0022】
そのようなブタジエン重合体ブロック中のビニル結合含率は、例えば有機リチウム化合物を開始剤として重合体を得る際に、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、オクタンなどの不活性炭化水素溶媒中に少量のエーテル類や第三級アミン類などの極性化合物、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、α-メトキシテトラヒドロフラン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンなど、好ましくはテトラヒドロフランやN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンを所定量共存させることにより可変である。
【0023】
本発明を構成するブロック共重合体成分(A)及び(B)が上記の範囲で混合されてなる混合物の溶融粘度(MI)は、G条件(200℃、5kgf)で測定して0.5〜10であり、好ましくは、0.8〜5.0である。MIが0.5未満の場合はアスファルト配合物の溶融粘度が高すぎ、加工性の点で好ましくない。また、MIが10を越える場合、加工性は優れるものの、軟化点は低いものとなって、(A)及び(B)成分の高度なアスファルト改質効果が発現されず、好ましくない。
【0024】
更に、(A)及び(B)成分を混合してなるブロック共重合体混合物の静的熱機械分析(TMA)で計られる軟化温度は、80〜130℃であることを必要とする。軟化温度が80℃未満の場合、凝集力に乏しく、アスファルト組成物の高い軟化点が発現せず、またタフネス・テナシテイーにも劣る。一方、軟化温度が130℃を越える場合、アスファルト組成物の溶融粘度が高くなりすぎ、アスファルトとの分散相溶性が悪くなって、好ましい物性効果を発現できない。より好ましくは、95〜115℃の場合である。
【0025】
本発明は、アスファルト改質用のブロック共重合体組成物及び、これを用いて改質したアスファルト組成物を開示しているが、この時に、成分(A)及び(B)よりなるブロック共重合体混合物が3〜15重量部とアスファルト85〜97重量部とが含有される場合に、アスファルト組成物の効果が有効に発現される。アスファルト組成物中における共重合体の配合量が3重量部未満の場合は、満足なアスファルト改質効果を得ることができない。また、15重量部を越えて配合した場合、アスファルト組成物の溶融粘度が高くなって、加工性が損なわれるばかりか、経済的にも不利である。より好ましくは、共重合体成分が5〜10重量部、アスファルトが90〜95重量部配合されてなる場合である。
【0026】
本発明で使用されるアスファルトは、特に制限されるものでなく、慣用されているアスファルト、例えば、ストレートアスファルト、(セミ)ブローンアスファルト、及びこれらの混合物などが挙げられる。好適には、針入度40〜120のストレートアスファルト、針入度10〜30のブローンアスファルト及びこれらの混合物が挙げられる。本発明のアスファルト組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤などの安定剤を添加することもできる。
【0027】
該安定剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,4-ビス〔(オクチルチオ)メチル〕-o-クレゾール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-〔1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレートなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス(β-ラウリルチオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン系酸化防止剤などを挙げることができる。
【0028】
また、光安定剤としては、例えば2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールなどのべンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンなどのべンゾフェノン系紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系光安定剤などを挙げることができる。
【0029】
上記安定剤以外に、本発明のアスファルト組成物には、必要により従来アスファルト組成物に慣用されている各種添加剤、例えばシリカ、タルク、炭酸カルシウム、鉱物質粉末、ガラス繊維などの充填剤や補強剤、鉱物質の骨材、顔料あるいはパラフィン系、ナフテン系及びアロマ系のプロセスオイルなどの軟化剤、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂などの粘着付与性樹脂、アゾジカルボンアミドなどの発泡剤、アタクチックポリプロピレン、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのポリオレフィン系又は低分子量のビニル芳香族系熱可塑性樹脂;天然ゴム;ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレン-イソブチレンゴム、ポリペンテナマーゴム、及び本発明以外のスチレン-ブタジエン系ブロック共重合体、スチレン-イソプレン系ブロック共重合体などの合成ゴムを添加しても良い。特に、道路舗装用として用いられる場合には、通常該アスファルト組成物は、鉱物質の石、砂、スラグなどの骨材と混合して使用される。
【0030】
本発明のアスファルト組成物を混合する方法は特に限定されるものでなく、所望により前記の各種添加剤を、例えば熱溶融釜、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機などにより加熱溶融混練することにより調製することができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。なお、各種測定は下記の方法に従った。
▲1▼ 線状ブロック共重合体組成物の物性測定;
1)全スチレン含量:
紫外線分光光度計(日立UV 200)を用いて、262nmの吸収強度より算出した。
2)ブロックスチレン含量:
四酸化オスミウムとt-ブチルハイドロパーオキシドによる酸化分解法〔「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス」第1巻、第429頁(1946年)に記載〕に従って求めた。なお、スチレン重合体ブロックの重量測定は、紫外線分光光度計(日立UV200)を用いて、262nmの吸収強度より算出した。
3)ブタジエンブロック部のミクロ構造:
赤外線分光光度計(パーキングエルマー製モデル1710)を用いて測定し、ハンプトン法により測定した。
4)静的熱機械分析:
熱機械分析装置(島津製作所(株)製、TMA-40)を使用し、ブロック共重合体を2mm厚に圧縮成形したシートをピン径0.5φmmの円柱状先端を持つ石英棒を検出棒に用いて、針入度法によって温度変化を測定し、針入度が急激に変化する温度を外挿して求め、図1に示すように軟化温度とした(荷重10g、昇温速度5℃/分)。
5)ピーク分子量及び組成比:
GPC〔装置は、ウオーターズ製であり、カラムは、デュポン製のZORBAX PSM 1000-Sを2本とPSM 60-Sの計3本の組合せである。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度35℃、流速0.7ml/分、試料濃度0.1重量%、注入量50μlである〕のクロマトグラムより、ピーク分子量及び組成比を求めた。なお、ピーク分子量は、以下の標準ポリスチレン(ウオーターズ製)検量線からの換算値である。
1.75×106、4.1×105、1.12×105、3.5×104、8.5×103
【0032】
▲2▼ アスファルト組成物の物性測定;
1)溶融粘度:180℃でブルックフィールド型粘度計により測定した。
2)タフネス、テナシテイ:舗装工事に関する試験方法(日本道路建設業協会編)に準じて測定した。
3)伸度、針入度、軟化点:JIS-K 2207に準拠して測定した。
4)耐寒性:180℃で圧縮成形したサンプル(厚さ2mm、幅20mm、長さ100mm)を所定温度に保持したドライアイス・メタノール冷媒中に15分間浸漬し、素早く直径15mmの金属棒に沿って折り曲げて、クラックが発生しないものを○、完全に割れるものを×、その中間を△とし、3ランクで評価した。
【0033】
(実施例1)
ジャケットと攪拌機の付いた40Lステンレス製反応器を充分窒素置換した後、シクロヘキサン17,480g、テトラヒドロフラン3.5g、スチレン960gを仕込み、ジャケットに温水を通水して内容物を約65℃に設定した。この後、n-ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(純分で5.2g)を添加し、スチレンの重合を開始した。スチレンがほぼ完全に重合してから3分後に、ブタジエン(1,3-ブタジエン)2,240gを添加し重合を継続し、ブタジエンがほぼ完全に重合して最高温度約95℃に達してから4分後に、カップリング剤として下記の構造式(イ)と(ロ)とを1:1に混合したものを添加し、カップリングさせた。
【0034】
【化1】

【0035】
(ただし、n=0の場合の構造体を98重量%以上含有する。)
カップリング剤添加より10分後に、水1.6gを加えた。スチレンを仕込んだ直後より、この間、攪拌機により系内を連続的に攪拌した。この後、線状ブロック共重合体組成物の溶液を抜き出し、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール6.4g、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト4gを添加し、得られた該溶液をスチームストリッピングすることにより溶媒を除去し、引き続き、熱ロール(120℃)により脱水乾燥して、線状ブロック共重合体を得た。
【0036】
このようにして得られた該線状ブロック共重合体をGPCで測定し、低分子量成分を(B)、高分子量成分を(A)とした。その物性値を表1〜2に示した。また、該外線状重合体組成物6gとストレートアスファルト〔日本石油(株)製、ストアス60/80〕100gを、180℃で90分間溶融混練してアスファルト組成物を調製した。その特性を表1〜2に示す。
【0037】
(実施例2及び比較例1〜4、6、7)
実施例2及び比較例1〜4、6、7は、実施例1で用いたカップリング剤を使用し、全スチレン含量、ブロック共重合体(A)成分及び(B)成分の組成比、MIを変量とした。アスファルトは実施例1と同じものを用い、アスファルト配合、組成も実施例1と同等の量、方法で行った。
【0038】
(実施例3、比較例5)
実施例3、及び比較例5では、実施例1と同様な重合を行う際、シクロヘキサン中へ、テトラメチルエチレンジアミンを適当量添加共存させることにより、ブタジエン中のビニル含量を変化させた。アスファルトは実施例1と同じものを用い、アスファルト組成及び配合方法も実施例1と同様に行った。実施例2、3、比較例1〜7の物性値を表1〜2に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
この表から、ブロック共重合体混合物が、特定された範囲の構造である場合、アスファルト組成物物性は、低い溶融粘度を保持しつつ、高い軟化点及び高いタフネス、テナシテイーを示し、かつ低温特性にも優れていることが分かる。
【0042】
(実施例4、5)
(ブロック共重合体成分(A)の製法)
ジャケットと攪拌機の付いた40Lステンレス製反応器を十分に窒素置換した後、所定量のシクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン(第1スチレンと称する)を仕込み、ジャケットに温水を通水し、内容物を約70℃に設定した。
【0043】
この後、n-ブチルリチウムシクロヘキサン溶液を所定量添加し、第1スチレンの重合を開始した。第1スチレンがほぼ完全に重合してから10分後に、ブタジエン(1,3-ブタジエン)を所定量添加して重合を継続し、ブタジエンがほぼ完全に重合して最高温度に達してから15分後に、再度、スチレン(第2スチレンと称する)を所定量添加して重合を続け、第2スチレンがほぼ完全に重合してから、更に15分間保持して重合を完結させた後、水を加えて活性種を完全に失活させた。この後、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールとトリス(ノニルフェノール)ホスファイト(シクロヘキサン溶液)を添加した。
【0044】
(ブロック共重合体成分(B)の製法)
ジャケットと攪拌機の付いた40Lステンレス製反応器を十分に窒素置換した後、所定量のシクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン(第1スチレンと称する)を仕込み、ジャケットに温水を通水し、内容物を約70℃に設定した。この後、n-ブチルリチウムシクロヘキサン溶液を所定量添加し、第1スチレンの重合を開始した。第1スチレンがほぼ完全に重合してから10分後に、ブタジエン(1,3-ブタジエン)を所定量添加して重合を継続し、ブタジエンがほぼ完全に重合して最高温度に達してから15分間保持し、重合を完結させた後、水を加えて活性種を完全に失活させた。
【0045】
この後、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールとトリス(ノニルフェノール)ホスファイト(シクロヘキサン溶液)を添加した。以上の方法で得られた(A)成分及び(B)成分のポリマー溶液は、所定の組成比となるよう、溶液で混合し、得られた該溶液をスチームストリッピングすることにより溶媒を除去し、引き続き、熱ロール(120℃)により脱水乾燥して、線状ブロック共重合体を得た。このようにして得たブロック共重合体組成物を、実施例1と同様のアスファルトを用い、同様の配合量で、アスファルト組成物とした。以上の物性値を表3に示した。
【0046】
(実施例6、比較例8)
実施例1と同様な重合を行って、ブロック共重合体混合物を得る際、実施例6ではジクロルジメチルシラン、比較例8では四塩化ケイ素をカップリング剤として所定量用いた。アスファルト組成物は、実施例1と同じアスファルトを用い、同じ配合量とした。その物性値を表3に示した。
【0047】
(比較例9)
比較例9では、実施例4、5で示したブロック共重合体成分(A)の製法と同様な方法で作成した単一成分の線状ブロック共重合体を用いて、実施例1と同様のアスファルト、配合量でアスファルト組成物とした。以上の物性値を表3に示した。
【0048】
【表3】

【0049】
表3から、ブロック共重合体単一成分(A)は、(A)に対し、特定された分子量範囲にあるブロック共重合体単一成分(B)との混合物である場合に、優れえたアスファルト改質効果を有することが分かる。また、表1〜2及び表3に示した物性値から、ブロック共重合体成分(A)及び(B)がブレンドされてなる共重合体混合物は、特定された範囲であれば、共重合体組成物の製造方法の如何にかかわらず、優れた効果が発現されていることが分かる。
【0050】
(実施例7、8及び比較例10)
実施例7、8、比較例10では、実施例1で作成したブロック共重合体混合物と、実施例1で使用したアスファルトとの配合組成比を変量とした。それらの物性を表4に示した。
【0051】
【表4】

【0052】
表4から、ブロック共重合体混合物が、特定された配合量にあるときに優れた改質効果を発揮することが分かる。
【0053】
【発明の効果】
本発明のアスファルト組成物は、機械的強度、軟化点、伸度、耐寒性等の物性に優れ、かつ加工性にも優れた高度のバランスを有しており、道路舗装用としては勿論、防水シート、遮音シート、止水材などの用途に利用でき、その工業的意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたブロック共重合体混合物の、静的熱機械分析(TMA)で測定した軟化温度を示すグラフである。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2660274号に添付された明細書の記載を次のとおり訂正する。
(1)訂正事項1 【請求項1】及び【請求項2】の「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜40重量%、(B)の含有量が15〜60重量%であり、」を
「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜70重量%、(B)の含有量が15〜30重量%であり、」と訂正する。
(2)訂正事項2 段落【0008】中の「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜40重量%、(B)の含有量が15〜60重量%であり、」を
「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜70重量%、(B)の含有量が15〜30重量%であり、」と訂正する。
(3)訂正事項3 段落【0009】中の「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜40重量%、(B)の含有量が15〜60重量%であり、」を
「ブロック共重合体中における(A)の含有量が85〜70重量%、(B)の含有量が15〜30重量%であり、」と訂正する。
(4)訂正事項4 段落【0016】中の「(A)成分の含有量は85〜40重量%、(B)成分の含有量は15〜60重量%である」を
「(A)成分の含有量は85〜70重量%、(B)成分の含有量は15〜30重量%である」と訂正する。
(5)訂正事項5 段落【0037】中の「(実施例2、4及び比較例1〜4、6、7)実施例2、4」を
「(実施例2及び比較例1〜4、6、7)実施例2」と訂正する。
(6)訂正事項6 段落【0038】中の「実施例2〜4」を「実施例2、3」と訂正する。
(7)訂正事項7 段落【0040】中の【表2】の「実施例4」の列を削除する。
(8)訂正事項8 段落【0042】中の「(実施例5、6)」を「(実施例4、5)」と訂正する。
(9)訂正事項9 段落【0046】中の「(実施例7、比較例8)実施例1と同様な重合を行って、ブロック共重合体混合物を得る際、実施例7では」を「(実施例6、比較例8)実施例1と同様な重合を行って、ブロック共重合体混合物を得る際、実施例6では」と訂正する。
(10)訂正事項10 段落【0047】中の「実施例5、6」を「実施例4、5」と訂正する。
(11)訂正事項11 段落【0048】中【表3】の第1行中の「実施例5」、「実施例6」及び「実施例7」を、それぞれ「実施例4」、「実施例5」及び「実施例6」と訂正する。
(12)訂正事項12 段落【0050】中の「(実施例8、9及び比較例10)」を「(実施例7、8及び比較例10)」と訂正し、「実施例8、9、比較例10では、」を「実施例7、8、比較例10では、」と訂正する。
(13)訂正事項13 段落【0051】中の【表4】の第1行中の「実施例8」及び「実施例9」を、それぞれ「実施例7」及び「実施例8」と訂正する。
審決日 2002-04-23 
出願番号 特願平3-349419
審決分類 P 1 41・ 832- Y (C08L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三谷 祥子  
特許庁審判長 谷口 浩行
特許庁審判官 中島 次一
石井 あき子
登録日 1997-06-13 
登録番号 特許第2660274号(P2660274)
発明の名称 アスファルト組成物、及びアスファルト改質用ブロック共重合体組成物  
代理人 酒井 正己  
代理人 酒井 正己  

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