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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01B
管理番号 1062419
審判番号 審判1999-20557  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-12-28 
確定日 2002-07-19 
事件の表示 平成 5年特許願第 70985号「導電性熱可塑性樹脂組成物」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 9月16日出願公開、特開平 6-260017]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年3月4日の出願であって、その請求項1,2に係る発明は、平成12年5月19日付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1,2に記載されたとおりのものと認めるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりである。
「熱可塑性樹脂(ゴムを主体とするものを除く)に、平均繊維径0.5〜2.0μm、平均繊維長3〜20mmのピッチ系極細炭素繊維が5〜50重量%配合されていることを特徴とする安定した導電性又は半導電性を備える熱可塑性樹脂組成物。」

2.引用文献
これに対して、前置審査において平成12年7月14日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開昭60-202154号公報(以下「引用文献」という)には以下の記載がある。
A.「炭素繊維で強化された熱可塑性樹脂射出成形品において、径が2〜10μの炭素繊維が該射出成形品100重量%に対し40重量%以下であり、かつ1.5mm〜15mmの長さの炭素繊維が該射出成形品100重量部に対し5〜35重量%存在する・・・熱可塑性樹脂射出成形品」(特許請求の範囲)
B.「本発明の熱可塑性樹脂射出成形品を得る為には、熱可塑性樹脂を炭素繊維と共に射出成形するに際し炭素繊維の長さは1.5〜15mm(好ましくは3〜8mm)である必要がある。より具体的に説明すると・・・熱可塑性樹脂ペレットと1.5〜15mm(好ましくは3〜8mm)の炭素繊維のチョップをドライ・ブレンドし射出成形に供する方法又は上記チョップを射出成形機のベント孔より挿入して成形する方法などがある。」(第2頁左上欄第6-18行)
C.「本発明で使用される炭素繊維としては、・・・ピッチ等を原料として作られた通常のものを用いることができるが、熱可塑性樹脂中での分散性より2μ以上である必要がある。」(第2頁右上欄第2-6行)
D.「実施例4
炭素繊維のロービング(7μΦのモノフィラメント24000本)をエチレン-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量=20重量%)エマルジョン中に連続浸漬した後乾燥した。・・・このエチレン-酢酸ビニル共重合体で被覆された炭素繊維のロービングを6mmに切断しチョップとした。このチョップの25重量%を高密度ポリエチレン(密度=0.95、MFR=3g/10分)のペレット75重量%と混合し、混合物を通常の射出成形機で射出成形し、成形品中の繊維長及び物性を測定した。その結果を第1表に示す。」(第3頁左上欄第2-15行)
E.第1表(第4頁、実施例4において、炭素繊維含有量が25.5重量%、1.5mm以上の炭素繊維の含有量が>10重量%である点)

そして、Dの記載事項によると、エチレン-酢酸ビニル共重合体はゴムを主体とするものではないから、引用文献1における熱可塑性樹脂についてはゴムを主体とするものを除くものであってよく、Cの記載事項によると、引用文献1における炭素繊維については、ピッチ系のものであってよく、B,Dの記載事項によると、一定の繊維径(実施例4では、7μΦ)のロービングを一定の繊維長(実施例4では6mm)に切断して得られたものであってよく(すなわち、実施例4では、平均繊維径が7μm、平均繊維長が6mmのものとなる)、その含有量はD,Eの記載事項により、一定の範囲(実施例4では射出成形品100重量%に対し全炭素繊維量で25.5重量%、繊維長1.5mm以上の炭素繊維量で10重量%より大)となるものであるから、Aに記載された「・・・径が2〜10μの炭素繊維が該射出成形品100重量%に対し40重量%以下であり、かつ1.5mm〜15mmの長さの炭素繊維が該射出成形品100重量部に対し5〜35重量%存在する・・・熱可塑性樹脂射出成形品」とは、「平均繊維径が2〜10μであり平均繊維長が1.5〜15mmであるピッチ系炭素繊維が該射出成形品100重量%に対し5〜35重量%存在する熱可塑性樹脂(ゴムを主体としたものを除く)の射出成形品」を含むものであるということができ、結局、引用文献には、「熱可塑性樹脂(ゴムを主体とするものを除く)に、平均繊維径が2〜10μm、平均繊維長が1.5〜15mmであるピッチ系炭素繊維が射出成形品100重量%に対し5〜35重量%存在する射出成形品成形用の熱可塑性樹脂組成物」が記載されているといえる。

3.対比・判断
本願請求項1に係る発明(前者)と、引用文献記載の発明(後者)とを対比すると、後者の「平均繊維径が2〜10μm、平均繊維長が1.5〜15mmであるピッチ系炭素繊維」は、前者の「平均繊維径が0.5〜2μm、平均繊維長3〜20mmのピッチ系極細炭素繊維」と炭素繊維の平均繊維径及び平均繊維長が重複するものであり、後者の「ピッチ系炭素繊維が射出成形品100重量%に対し5〜35重量%存在する」は、前者の「(熱可塑性樹脂に・・・)ピッチ系極細炭素繊維が5〜50重量%配合されている」と炭素繊維の配合量が重複するものであるから、両者は組成が同じ組成物である。また、前者の「安定した導電性又は半導電性を備える・・・組成物」という構成は、組成が同じ組成物であれば、同じ性質を有するものと認められるから、後者の組成物も当然具備している電気的性質であると認められる。
してみると、本願請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明である。

なお、請求人は、平成12年9月21日付け意見書において、「引用文献2(上記引用文献と同じ)は、径2〜10μmの炭素繊維を用いる点で、本願発明の平均繊維径0.5〜2.0μmの炭素繊維を用いるものと相異します。即ち引用文献では径2〜10μmのものを用い、これは平均繊維径が6μm〔(2+10)/2=6〕程度のものを用いることを意味するものです。事実、全ての実施例では径が7μmの炭素繊維を・・・用いるものであります。従って本願発明は引用文献1(「引用文献1」は「引用文献2」の誤記と認める)とは用いる炭素繊維の径において明らかに相異します。」と主張しているが、引用文献記載の炭素繊維は、一定の繊維径のロービングを切断したものを含むことは上記3で述べたとおりであるから、「径2〜10μの炭素繊維」とは、径が2μmと一定であるロービングを切断したもの、すなわち平均繊維径が2μmの炭素繊維を含むと解されるので、上記主張を受け入れることはできない。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-05-10 
結審通知日 2002-05-21 
審決日 2002-06-06 
出願番号 特願平5-70985
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (H01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 進  
特許庁審判長 三浦 悟
特許庁審判官 吉水 純子
平塚 義三
発明の名称 導電性熱可塑性樹脂組成物  
代理人 田村 巌  
代理人 田村 巌  
代理人 田村 巌  

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