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審決分類 |
審判 全部申し立て 特174条1項 F42B 審判 全部申し立て 2項進歩性 F42B 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 F42B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 F42B 審判 全部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) F42B 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 F42B |
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管理番号 | 1062771 |
異議申立番号 | 異議2001-72398 |
総通号数 | 33 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-08-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-09-04 |
確定日 | 2002-06-12 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3141155号「クラッカー」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3141155号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本件特許第3141155号は、【原出願の表示】の欄に平成6年10月26日に出願された特願平6-262355号を表示し、また【特記事項】の欄に「特許法第44条第1項の規定による特許出願」と表示して、平成10年11月30日にその願書が提出され、平成12年12月22日に設定登録され、その後、本件特許異議の申立てがなされたものであって、平成13年11月9日付け取消理由の通知に対してその指定期間内の平成14年1月21日付けで明細書についての訂正請求がなされ、平成14年2月4日付け訂正拒絶理由の通知に対して意見書が提出されたものである。 【2】訂正の要旨 上記訂正請求は、特許第3141155号の明細書を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであるが、その要旨は、次の訂正事項(a)〜(d)のとおりのものと認める。 訂正事項(a) 願書に添付した明細書の特許請求の範囲における請求項1の「可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」を、「可動受圧体(41)が火薬体(31)の爆発時に筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」と訂正する。 訂正事項(b) 願書に添付した明細書の特許請求の範囲における請求項1の「被放出物(51)が装填されている」を、「被放出物(51)が装填されていると共に、爆風で押し出された上記可動受圧体(41)が筒体(11)の先端部から飛び出すことを筒体(11)の先端部付近で阻止する位置規制手段を備えている」と訂正する。 訂正事項(c) 願書に添付した明細書の段落番号【0006】【課題を解決するための手段】における「可動受圧体が筒体の軸線方向に移動可能に配備され」を、「可動受圧体が火薬体の爆発時に筒体の軸線方向に移動可能に配備され」と訂正する。 訂正事項(d) 願書に添付した明細書の段落番号【0006】【課題を解決するための手段】における「被放出物が装填されている」を、「被放出物が装填されていると共に、爆風で押し出された上記可動受圧体が筒体の先端部から飛び出すことを筒体の先端部付近で阻止する位置規制手段を備えている」と訂正する。 【3】明細書の訂正についての当審の判断 1.訂正の目的 上記訂正事項(a)、(b)は、請求項の記載事項を限定又は付加するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものと認められる。 上記訂正事項(c)、(d)は、特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とが整合するように発明の詳細な説明を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。 2.新規事項の有無 (1)訂正事項(a)(c)について 願書に添付した明細書の段落【0007】には「【作用】上記構成のクラッカーにおいて、引紐を引張って火薬体を爆発させると、その爆発に伴う爆風によって可動受圧体が筒体の中を勢いよく瞬時に先端部側へ移動し、そのような可動受圧体の瞬間的な移動により被放出物が押されて筒体の先端部から勢いよく放出される。その際、筒体は円筒もしくは多角形筒形に形成されているので、可動受圧体が筒体の先端部に移動するまでの間においては、火薬体の爆発に伴う爆風が可動受圧体の筒体の内面との摺動面間の隙間から逃げることが少なくて筒体の内部における引玉受座と可動受圧体との間の空間に閉じ込められ続ける。そのため、被放出物を遠方にまで飛ばすことができる。」と記載され、また、段落【0013】には「このようなクラッカーCにおいて、筒体11の把手部12を片手で持ち、他方の手で引紐32を引張って火薬体31を爆発させると、その爆発に伴う爆風によって図2に矢印Xで示したように可動受圧体41が筒体11の中を勢いよく瞬時に先端部側へ移動し、そのような可動受圧体41の瞬間的な移動により被放出物51が押され、また、複数の突片14…でなる蓋部15が瞬時に開いて、被放出物51が筒体11の先端部13から勢いよく空中に放出される。……」と記載されており、訂正事項(a)(c)は、上記願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものと認められる。 (2)訂正事項(b)(d)について 願書に添付した明細書の段落【0011】には「……可動受圧体41と引玉受座21とは糸あるいはそれに類似する柔軟で軽い係索42で連結されている。この係索42は可動受圧体41が筒体11の把手部12付近の位置(以下、初期位置という)に配備されているときには図1のように弛んで伸び代を持っており、可動受圧体41が上記初期位置から図2に実線で示したように筒体11の先端部13の位置(以下、突出位置という)まで移動したときには、係索42の弛みが解消して緊張し、それによって可動受圧体41が筒体11の先端部13から飛び出さないように可動受圧体41を筒体11の先端部13付近で阻止する役割を担っている。」と記載され、また、段落【0013】には「……可動受圧体41は係索42が緊張することによって筒体11の先端部付近の突出位置で停止し、その可動受圧体41が筒体11の先端部14から飛び出すことはない。なお、図2には初期位置の可動受圧体41を二点鎖線で示してある。」と記載され、段落【0020】には「上記実施例のクラッカーCにおいて、係索42は、爆風で押し出された可動受圧体41が筒体11の先端部13から飛び出すことを筒体11の先端部付近で阻止する位置規制手段の例示である。位置規制手段としては他にも種々のものを採用することができる。例えば、図5にクラッカーCの火薬体31を爆発させた後の状態を示すように、位置規制手段は、筒体11の内部に筒体11と同心状に配備した棒状体46である。詳しくは、棒状体46の基部47を引玉受座21で支持させ、かつ、可動受圧体41に具備させた中心孔49に相対摺動自在に挿通した棒状体46の先端部に鍔体48を設けてある。このような位置規制手段によると、火薬体31の爆発に伴う爆風の風圧で初期位置(図5に初期位置の可動受圧体41を二点鎖線で示してある)の可動受圧体41が押されると、その可動受圧体41が棒状体46と摺動して筒体11の先端部まで移動し、鍔体48に当たって停止する。この停止位置が可動受圧体41の突出位置になる。なお、第2実施例のクラッカーCにおいては、火薬体31を引玉受座21の偏心位置で受け止める構成にしてある。」と記載されており、訂正事項(b)(d)は、上記願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものと認められる。 3.特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記訂正事項(a)(c)による訂正後の請求項1に係る発明は、訂正請求書に添付した訂正明細書の段落【0015】に「上記クラッカーCにおいて、火薬体31の火薬量を増やしたり火薬体31の数を増やしたりして爆発に伴う爆風の風圧を増大させると、それだけ可動受圧体41が筒体11内で速く移動して被放出物51が遠方まで飛ばされる。そして、そのようにして被放出物51が遠方に届くようにしても、上述したように、火薬体31の爆発に伴って発生する煙や臭いは筒体11の内部に閉じ込められたままになり、また、爆発に伴う音も筒体11の中にこもって消音されて外では静音が聞こえるに過ぎなくなって破裂音は聞こえなくなるので、劇場やホール、家庭などの大きな音を発することが嫌われるような場所や、火薬体の爆発によって発生する煙やその臭いが嫌われるような場所でも、小巻テープや紙片を遠方まで飛ばしてクラッカーCを楽しむことができる。」と記載されているように、願書に添付した明細書の段落【0004】及び【0005】に「【発明が解決しようとする課題】ところで、近時においては、劇場やホールなどでは、小巻テープや紙片を遠方まで飛ばしてクラッカーを楽しみたいという要求がある。」、「本発明は、上記要望に応えるべく小巻テープや紙片などの被放出物を遠くに飛ばして楽しむことのできるクラッカーを提供することを目的とする。」と記載された願書に添付した明細書の請求項1に係る発明の目的の範囲内のものと認められる。 したがって、上記訂正事項(a)(c)(b)(d)は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 4.まとめ 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 【4】本件特許発明 上記「【3】」に説示のとおり明細書についての訂正が認められるから、本件特許の請求項1に係る発明は、訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「円筒もしくは多角形筒形の筒体(11)の内部に引玉受座(21)が設けられ、この引玉受座(21)と筒体(11)の先端部との間の筒体(11)内部に、前記筒体(11)の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形に形成された可動受圧体(41)が火薬体(31)の爆発時に筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され、該可動受圧体(41)と前記引玉受座(21)との間の筒体(11)内部の空間に、引紐(32)の引張り操作で爆発しかつ爆発時の爆風で上記可動受圧体(41)を筒体(11)の先端部側に押し出す火薬体(31)が配備され、筒体(11)内部における上記可動受圧体(41)と筒体(11)の先端部との間の空間に、爆風で押し出された上記可動受圧体(41)に押されて筒体(11)の先端部から放出される被放出物(51)が装填されていると共に、爆風で押し出された上記可動受圧体(41)が筒体(11)の先端部から飛び出すことを筒体(11)の先端部付近で阻止する位置規制手段を備えていることを特徴とするクラッカー。」 【5】特許異議申立ての理由の概要及び提出された証拠 特許異議申立人は、以下の申立理由1〜3を主張し、証拠として甲第1〜4号証を提出している。 1.申立理由1 (1)請求項1に記載された事項「可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」が、火薬体(31)の爆発前の通常状態においても移動できることを意味するならば、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (2)請求項1に記載された事項「可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」が、火薬体(31)の爆発によって移動することを意味するならば、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができないものである。 2.申立理由2 (1)請求項1の「筒体(11)の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形に形成された可動受圧体(41)」との記載中の「軸線方向に延びる」が、どの程度のものか不明確であるから、明細書の記載は、特許法第36条第4項乃至第6項に規定する要件を満たしていない。 (2)明細書の「延びる」なる語が不明確であるから、形式上、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、又は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 3.申立理由3 平成12年8月28日付け手続補正書によって明細書の【特許請求の範囲】及び段落【0006】において、可動受圧体が「筒体の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形に形成された」ものとの構成を追加した補正は、新規事項を追加するものであり、特許法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。 4.証拠 甲第1号証……実公昭49-45195号公報 甲第2号証……実願平2-97304号(実開平4-57097号)のマ イクロフィルム 甲第3号証……実願平3-47579号(実開平5-8294号)のCD -ROM 甲第4号証……特願平10-338914号の願書、願書に最初に添付し た明細書及び図面 【6】特許異議申立についての当審の判断 1.甲第1〜3号証に記載された事項 (1)甲第1号証 甲第1号証には、コメットに関して、 ア)「円筒1内に、先端近傍1′に爆薬2を固着せる芯糸3を内装定置する密閉状内筒4を内装し、円筒先端部1″に色テープ5或は紙吹雪5′を密封すると共に、」(第1頁左欄33乃至36行参照) イ)「尚、芯糸3の先端近傍には芯糸3が抜けてしまわない様に瘤3′を設けておくと理想的である。」(第1頁右欄4乃至5行参照) ウ)「まず、コメットとして使用する場合は、蝋体中より延出した芯糸3を引っ張る事により、従来のコメットの如く爆薬2の作用で爆発音を発すると共に、色テープ或は紙吹雪が散りパーティ等の雰囲気を盛り上げる事になる。 尚、芯糸3には瘤3′が設けてあると芯糸を引っ張り過ぎても芯糸が蝋体より抜けてしまう事はない。」(第1頁右欄8乃至15行参照) と記載されている。 また、甲第1号証第1図には、 エ)円筒内部領域を色テープ5等が密封される先端部側と蝋体が充填される基部開□部1′″側とに区画する引玉受座が、円筒1の内部に円筒1と一体的に形成されている点、 オ)該引玉受座と円筒先端部1″との間の円筒1の内部に前端が閉じ後端が開□した密閉状内筒4が設けられ、該密閉状内筒4は、円筒1の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向一端に形成される端面とを有する形に形成されている点、 カ)引玉受座と密閉状内筒4との間に爆薬2が設けられている点 が、それぞれ記載されている。 なお、甲第1号証の第1図において、筒の内周面がラインシェーディング(軸線に平行な線で面を表現したもの)により表現されているものと認められるところ、円筒1の内周面を表現するラインシエーディングと、密閉状内筒4の内周面を表現するラインシェーディングとが異なる態様で記載されていることからも、第1図には、筒状の密閉状内筒4が記載されているものと認められる。 また、爆薬2の爆発で色テープ5を飛ばすコメット(クラッカー)である以上、爆薬2が爆発するとそれによって密閉状内筒4が内筒先端部1″へと押し出され、該密閉状内筒4に色テープ5が押されて内筒1から放出されることは、甲第1号証に記載の構成から自明な事項と認められる。 したがって、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。 “円筒1の内部に引玉受座が設けられ、この引玉受座と円筒1の先端部との間の円筒1内部に、前記円筒1の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向一端に形成される端面とを有する形に形成された密閉状内筒4が爆薬2の爆発時に円筒1の軸線方向に移動可能に配備され、該密閉状内筒4と前記引玉受座との間の円筒1内部の空間に、芯糸3の引張り操作で爆発しかつ爆発時の爆風で上記密閉状内筒4を円筒1の先端部側に押し出す爆薬2が配備され、円筒1内部における上記密閉状内筒4と円筒1の先端部との間の空間に、爆風で押し出された上記密閉状内筒4に押されて円筒1の先端部から放出される色テープ5等が装填されていると共に、前記芯糸3を前記密閉状内筒4に内装定置したコメット。” (2)甲第2号証 甲第2号証には、クラッカーに関して、 キ)「…(1)は本体筒体であって、…この筒体の内部の上部付近に発射用テープ(2)が複数個、筒体内部側面に遊嵌的に内接した圧力板(3)の上に載置されている。更に圧力板(3)の下部には間座(5)があって筒体の外部より延長された作動紐(6)が、その末端に於いて間座(5)を貫通し、その末端部分には発射用火薬(4)が塗着されている。本体筒体(1)の上部には発射口(7)があって…、本考案の景品付きクラッカーにあっては、…円筒形状の筒体を多用する。」(第10頁8行乃至第11頁3行参照) ク)「…景品付きクラッカーに使用する円筒形の筒体」(第11頁17乃至18行参照) ケ)「…作動紐を勢いよく引くことによって筒内に内装されていた発射用火薬が爆発し、筒本体上部の発射口を封着していた紙又は合成樹脂製等で作られた上蓋は、その火薬の爆発力によって開封され、筒内に内装されていたテープ等の詰め物もこの爆発力によって勢いよく空中に噴出し飛散するのであるが、」(第9頁11乃至18行参照) コ)「…クラッカーの本体筒体(1)を握り、…、もう一方の手で本体筒体(1)の下部から出ている作動紐(6)を掴み強く前に引く。作動紐(6)を引くと同時に筒部上部の発射口(7)から発射用火薬(4)の爆発音や閃光とともに発射用テープが噴出して空中に飛散する。」(第12頁13乃至19行参照) と記載されている。 更に、第1図、第3図乃至第5図には、 サ)圧力板(3)の外周面が軸線方向を向いている点 が示されているものと認められる。 したがって、甲第2号証には、次の発明が記載されているものと認められる。 “円筒形状の本体筒体(1)の内部に間座(5)が設けられ、この間座(5)と本体筒体(1)の先端部との間の本体筒体(1)内部に、前記本体筒体(1)の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形に形成された圧力板(3)が発射用火薬(4)の爆発時に本体筒体(1)の軸線方向に移動可能に配備され、該圧力板(3)と前記間座(5)との間の本体筒体(1)内部の空間に、作動紐(6)の引張り操作で爆発しかつ爆発時の爆風で上記圧力板(3)を本体筒体(1)の先端部側に押し出す発射用火薬(4)が配備され、本体筒体(1)内部における上記圧力板(3)と本体筒体(1)の先端部との間の空間に、爆風で押し出された上記圧力板(3)に押されて本体筒体(1)の先端部から放出される発射用テープ(2)が装填されているクラッカー。” (3)甲第3号証 甲第3号証には、クラッカーに関して、 シ)「【0009】 【実施例】以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。図1は外観を示す斜視図、図2は内部構造を示す拡大縦断面図であり、これらの図において、1は合成樹脂またはボール紙のような厚紙によって成形された円筒状のクラッカー筒体で、このクラッカー筒体1は、外筒1Aと、この外筒1Aの先端部に嵌合固定された内筒1Bとの二重構造になっており、外筒1Aの後側に補強筒2を介して起爆筒体3が同心かつ相対回転可能に配置されている。すなわち、外筒1Aの先端部を除く部分に合成樹脂またはボール紙のような厚紙によって成形された補強筒2が嵌合固定され、この補強筒2における外筒1Aより後方に延出している部分に合成樹脂またはボール紙のような厚紙によって成形された起爆筒体3が回転可能に外嵌されている。内筒1Bは、前端開口部側に形成した内径の略一様な径大部11Aと、この径大部11Aの後部に連続形成されて後端側に向かって漸次縮径する円錐筒形の径小保持部11Bとを有し、径大部11Aと径小部11Bとの境界部に受圧板4が配置され、前端開口部には、発泡スチロールなどで形成された爆発離脱蓋5が爆発離脱可能に嵌合固定されており、爆発離脱蓋5と受圧板4との間の筒体前室6に小巻テープなどの噴出物7が収納されている。 【0010】 8は紙巻形の火薬体で筒体後室9に配置されており、その爆薬外装部を内筒1Bの径小保持部11Bに嵌合することで回転不能に保持されている。火薬体8の爆薬部には、適当な捩じれ特性を備えた紐状起爆部材10の先端部10Aが相対回転可能に結合され、火薬体8から後方に延出する延出部10Bの後端部10bが外向きに折り曲げられて、起爆筒体3の後端部外面に固定されている。図中、11は外装紙で、外筒1A、内筒1Bの露出部および起爆筒体3の表面を被覆しており、外筒1Aの後端面と起爆筒体3の先端面との突合わせ部に対応するミシン目11aが円周方向に形成されている。」 と記載され、 また、第2図には、 ス)受圧板4が、円筒状の径大部11Aの内周面との間に隙間を形成するように配備されている点 が記載されている。 したがって、甲第3号証には次の発明が記載されているものと認められる。 “外筒1Aとこの外筒1Aの先端部に嵌合固定された内筒1Bとの二重構造になった円筒状のクラッカー筒体1の内部に円錐筒形の径小保持部l1Bが設けられ、この径小保持部l1Bと内筒1Bの先端部との間の内筒1B内部に、前記内筒1Bの内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形に形成された受圧板4が火薬体8の爆発時に内筒1Bの軸線方向に移動可能に配備され、該受圧板4と前記径小保持部l1Bとの間の内筒1B内部の空間に、爆発時の爆風で上記受圧板4を内筒1Bの先端部側に押し出す火薬体8が配備され、内筒1B内部における上記受圧板4と内筒1Bの先端部との間の空間に、爆風で押し出された上記受圧板4に押されて内筒1Bの先端部から放出される噴出物7が装填されているクラッカー。” 2.申立理由について (1)上記訂正請求により、願書に添付した明細書の請求項1の「可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」との記載は、「可動受圧体(41)が火薬体(31)の爆発時に筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」と訂正された。 (2)請求項1の「筒体(11)の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形に形成された可動受圧体(41)」との記載中の「軸線方向に延びる」について、発明の詳細な説明において、「延びる」程度、即ち「長さ」に関する記載はなく、前記「軸線方向に延びる」との記載は、単に、外周面の向きが軸線と平行であることを定義したに過ぎないものと認められるので、「どの程度のものか不明確であるから、明細書の記載は、特許法第36条第4項乃至第6項に規定する要件を満たしていない。」とすることはできない。 (3)願書に最初に添付した明細書の段落【0019】には、可動受圧体に関して、「可動受圧体41には……、コルクなどの木片、……発泡プラスチックといった軽量な素材で作ったものを好適に用いることができ、」との記載があると共に、願書に最初に添付した図面の図5には、可動受圧体41が中実体から構成されることが示されているものと認められる。 したがって、請求項1及び段落【0006】において、可動受圧体を、「前記筒体の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形に形成された」とする補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものと認められるので、この補正が、「新規事項を追加するものであり、特許法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。」とすることはできない。 (4)本件請求項1に係る発明と特許異議申立人が提出した甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明における「密閉状内筒4」、「芯糸3」は、それぞれ、機能上本件請求項1に係る発明の「可動受圧体」、「引紐」に相当するものと認められ、甲第1号証に記載された発明は、「可動受圧体」と「引紐」とを繋いだ構成を備えるものと認められるが、同号証には、「可動受圧体」の移動限界位置、「引紐」の長さ、消音又は煙や臭いの閉じ込めに関する記載は一切ない一方で、「芯糸3には瘤3′が設けてあると芯糸を引っ張り過ぎても芯糸が蝋体より抜けてしまう事はない。」と記載されていることから、「可動受圧体」と「引紐」とを繋いだ構成は、「爆風で押し出された上記可動受圧体が筒体の先端部から飛び出すことを筒体の先端部付近で阻止する」ものではないものと認められる。 したがって、甲第1号証に記載された発明は、本件特許の請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項である「爆風で押し出された上記可動受圧体(41)が筒体(11)の先端部から飛び出すことを筒体(11)の先端部付近で阻止する位置規制手段を備えている」点を備えていない。 また、特許異議申立人が提出した甲第2号証、甲第3号証に記載された発明も、本件特許の請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項である「爆風で押し出された上記可動受圧体(41)が筒体(11)の先端部から飛び出すことを筒体(11)の先端部付近で阻止する位置規制手段を備えている」点を備えていない。 そして、クラッカーにおいて「爆風で押し出された上記可動受圧体が筒体の先端部から飛び出すことを筒体の先端部付近で阻止する位置規制手段を備えている」構成が本件特許の出願前に周知の事項であったものとも認められない。 よって、本件請求項1に係る発明を、特許異議申立人が引用した甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明とすることはできないばかりでなく、甲第1〜3号証にそれぞれ記載された発明を総合しても、これらに基づいて容易に発明することができたものとすることはできない。 【7】むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1に係る特許は、特許異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 クラッカー (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 円筒もしくは多角形筒形の筒体(11)の内部に引玉受座(21)が設けられ、この引玉受座(21)と筒体(11)の先端部との間の筒体(11)内部に、前記筒体(11)の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形に形成された可動受圧体(41)が火薬体(31)の爆発時に筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され、該可動受圧体(41)と前記引玉受座(21)との間の筒体(11)内部の空間に、引紐(32)の引張り操作で爆発しかつ爆発時の爆風で上記可動受圧体(41)を筒体(11)の先端部側に押し出す火薬体(31)が配備され、筒体(11)内部における上記可動受圧体(41)と筒体(11)の先端部との間の空間に、爆風で押し出された上記可動受圧体(41)に押されて筒体(11)の先端部から放出される被放出物(51)が装填されていると共に、爆風で押し出された上記可動受圧体(41)が筒体(11)の先端部から飛び出すことを筒体(11)の先端部付近で阻止する位置規制手段を備えていることを特徴とするクラッカー。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、引紐を引張ることによって火薬体が爆発し、そのときの爆風の影響で紙片やテープといった被放出物が空中に放出されるクラッカーに関する。 【0002】 【従来の技術】 この種の従来のクラッカーがたとえば実開昭59-174898号公報に記載されている。このクラッカーは、図7のように、先拡がり円錐状の筒体1の内部に仕切り2と受圧板3とを設け、仕切り2と受圧板3との間の空間に、引紐4の引張り操作で爆発する火薬体5を配備し、受圧板3と蓋6との間の空間、すなわち受圧板3と筒体1の先端部との間の空間に小巻テープや紙片といった被放出物7を装填した構成になっている。 【0003】 このクラッカーは、筒体1を一方の手で持って筒体1の先端を空中に向け、他方の手で引紐4を引張って火薬体5を爆発させると、そのときの爆風で大きな破裂音が発生し、同時に受圧板3と被放出物7と蓋6とが吹き飛ばされて被放出物7が筒体1から空中に放出される。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 ところで、近時においては、劇場やホールなどでは、小巻テープや紙片を遠方まで飛ばしてクラッカーを楽しみたいという要求がある。 【0005】 本発明は、上記要望に応えるべく小巻テープや紙片などの被放出物を遠くに飛ばして楽しむことのできるクラッカーを提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明のクラッカーは、円筒もしくは多角形筒形の筒体の内部に引玉受座が設けられ、この引玉受座と筒体の先端部との間の筒体内部に、前記筒体の内周形状に合わせた断面形状を有し軸線方向に延びる外周面とこの外周面の軸線方向両端に形成される両端面とを有する形に形成された可動受圧体が火薬体の爆発時に筒体の軸線方向に移動可能に配備され、該可動受圧体と前記引玉受座との間の筒体内部の空間に、引紐の引張り操作で爆発しかつ爆発時の爆風で上記可動受圧体を筒体の先端部側に押し出す火薬体が配備され、筒体内部における上記可動受圧体と筒体の先端部との間の空間に、爆風で押し出された上記可動受圧体に押されて筒体の先端部から放出される被放出物が装填されていると共に、爆風で押し出された上記可動受圧体が筒体の先端部から飛び出すことを筒体の先端部付近で阻止する位置規制手段を備えていることに特徴を有するものである。 【0007】 【作用】 上記構成のクラッカーにおいて、引紐を引張って火薬体を爆発させると、その爆発に伴う爆風によって可動受圧体が筒体の中を勢いよく瞬時に先端部側へ移動し、そのような可動受圧体の瞬間的な移動により被放出物が押されて筒体の先端部から勢いよく放出される。その際、筒体は円筒もしくは多角形筒形に形成されているので、可動受圧体が筒体の先端部に移動するまでの間においては、火薬体の爆発に伴う爆風が可動受圧体の筒体の内面との摺動面間の隙間から逃げることが少なくて筒体の内部における引玉受座と可動受圧体との間の空間に閉じ込められ続ける。そのため、被放出物を遠方にまで飛ばすことができる。 【0008】 【発明の実施の形態】 図1は本発明に係るクラッカーCの概略断面図、図2は図1のクラッカーCの火薬体31を爆発させた後の状態を示す概略断面図、図3は図1のIII-III線に沿う拡大断面図である。 【0009】 図1において、11は厚紙やプラスチックなどで作られる筒体であり、この筒体11は基部が把手部12となされ、先端部13に複数の花びら状の突片14が一体に連設されていく。そして、筒体11の先端部13は、複数の上記突片14…を内方に折り曲げてそれらの先端同士を相互に互いに噛み合わせることより形成された蓋部15により塞がれている。 【0010】 筒体11の内部には、把手部12に対応する個所に引玉受座21が設けられ、この引玉受座21によって筒体11の内部が先端部側空間と基部側空間とに仕切られている。この引玉受座21は、筒体11に嵌め合わされて固定されている尾栓22により容易に動かないように保持されていると共に、その中央の孔部23に火薬体31に連設された引紐32が通されている。 【0011】 筒体11の先端部と引玉受座21との間の筒体11内部には可動受圧体41が筒体11の軸線方向に移動可能に配備されている。そして、引玉受座21と可動受圧体41との間の筒体内部の空間に、上記引紐32の先端部に装備された上記火薬体31が配備されている。この実施例では火薬体31が引玉受座21に受け止められた状態になっており、引紐32が引っ張られると爆発する。可動受圧体41と引玉受座21とは糸あるいはそれに類似する柔軟で軽い係索42で連結されている。この係索42は可動受圧体41が筒体11の把手部12付近の位置(以下、初期位置という)に配備されているときには図1のように弛んで伸び代を持っており、可動受圧体41が上記初期位置から図2に実線で示したように筒体11の先端部13の位置(以下、突出位置という)まで移動したときには、係索42の弛みが解消して緊張し、それによって可動受圧体41が筒体11の先端部13から飛び出さないように可動受圧体41を筒体11の先端部13付近で阻止する役割を担っている。 【0012】 図1において、初期位置の可動受圧体41と筒体11の先端部13との間の空間に被放出物51が装填されている。被放出物51には、薄い紙テープやプラスチックフィルムのテープなどを巻いた所謂小巻テープ52、様々に着色された紙片53、その他の空中に飛ばしたい小片などが用いられる。 【0013】 このようなクラッカーCにおいて、筒体11の把手部12を片手で持ち、他方の手で引紐32を引張って火薬体31を爆発させると、その爆発に伴う爆風によって図2に矢印Xで示したように可動受圧体41が筒体11の中を勢いよく瞬時に先端部側へ移動し、そのような可動受圧体41の瞬間的な移動により被放出物51が押され、また、複数の突片14…でなる蓋部15が瞬時に開いて、被放出物51が筒体11の先端部13から勢いよく空中に放出される。可動受圧体41は係索42が緊張することによって筒体11の先端部付近の突出位置で停止し、その可動受圧体41が筒体11の先端部14から飛び出すことはない。なお、図2には初期位置の可動受圧体41を二点鎖線で示してある。 【0014】 このように、被放出物51を押し出して空中に飛ばした可動受圧体41が筒体11の先端部付近の突出位置で停止することにより、火薬体31の爆発に伴って発生した煙や臭いは筒体11の内部の引玉受座21と可動受圧体41との間の空間に閉じ込められたままになり、また、爆発に伴う音も筒体11の中にこもって消音されるので、破裂音が聞こえず静音が聞こえるに過ぎなくなる。 【0015】 上記クラッカーCにおいて、火薬体31の火薬量を増やしたり火薬体31の数を増やしたりして爆発に伴う爆風の風圧を増大させると、それだけ可動受圧体41が筒体11内で速く移動して被放出物51が遠方まで飛ばされる。そして、そのようにして被放出物51が遠方に届くようにしても、上述したように、火薬体31の爆発に伴って発生する煙や臭いは筒体11の内部に閉じ込められたままになり、また、爆発に伴う音も筒体11の中にこもって消音されて外では静音が聞こえるに過ぎなくなって破裂音は聞こえなくなるので、劇場やホール、家庭などの大きな音を発することが嫌われるような場所や、火薬体の爆発によって発生する煙やその臭いが嫌われるような場所でも、小巻テープや紙片を遠方まで飛ばしてクラッカーCを楽しむことができる。 【0016】 上記クラッカーCにおいて、筒体11の軸線に直交する仮想直線Lにおける上記筒体11の内面11aの相反する側の2つの位置との交差点a,bの相互間の長さをD1、上記仮想直線における上記可動受圧体の外面の相反する側の2つの位置との交差点a’,b’の相互間の長さをD2としたときのD1-D2の寸法値Aを、 A=(4×D2/1000)〜(4×D2/50)mm ……(1) にしておくことが望まれる(図3および図4参照)。 上記D1とD2との長さの関係がこのようになっていると、火薬体31が爆発したときに可動受圧体41が筒体11の内面とあまり擦れ合わずに動くようになり、そのために、被放出物51が遠くに飛びやすくなった。これは、爆風によって可動受圧体41が筒体11の中を先端部側へ移動するときに、筒体11と可動受圧体41との隙間に薄い空気層が発生し、その空気層が筒体と可動受圧体との擦れ合いを抑制するからであろうと推察される。この場合において、Aが(4×D2/1000)mmよりも小さいと、上記の空気層が形成されにくくなって筒体11と可動受圧体41とが擦れ合いやすくなり、その逆に、上記寸法差が(4×D2/50)mmよりも大きいと、隙間が広くなりすぎ、火薬体31の爆発によって発生する爆風が筒体11と可動受圧体41との隙間から逃げやすくなり、いずれの場合も被放出物51を遠方まで飛ばす上で好ましくないことが判っている。 【0017】 ここで、筒体11が円筒である場合、図3に示すように、上記D1は筒体11の内径寸法に相当し、D2は可動受圧体41の円筒状の外周面の直径寸法に相当する。そして、たとえば可動受圧体41の外周面の直径寸法(D2)が25mmである場合には、上記(1)式により、 A=0.1〜2mm となり、Aが0.1mmよりも小さいと、上記の空気層が形成されにくくなって筒体11と可動受圧体41とが擦れ合いやすくなり、その逆に、上記寸法差が2mmよりも大きいと、隙間が広くなりすぎ、火薬体31の爆発によって発生する爆風が筒体11と可動受圧体41との隙間から逃げやすくなり、いずれの場合も被放出物51を遠方まで飛ばす上で好ましくない。そして、特に、A=0.2〜0.5mmであると、筒体11から煙や臭いがほとんど出ず、音を小さくなる割に、被放出物51を遠方に飛ばすことができた。 【0018】 ここで、筒体11が正六角形である場合、図4に示すように、上記D1は筒体11における相反する側で平行に対向する一対の内面11a,11aの相互間隔に相当し、上記D2は正六角形の可動受圧体41における相反する側で平行に対向する一対の外面41a,41aの相互間隔に相当する。筒体や可動受圧体が偶数個の出隅コーナ部を有する他の多角形に形成されている場合にも同様であり、筒体や可動受圧体が奇数個の出隅コーナ部を有する他の多角形についてはこれに準じる。 【0019】 可動受圧体41には中空の紙筒、コルクなどの木片、中空のプラスチック筒、発泡プラスチックといった軽量な素材で作ったものを好適に用いることができ、また、可動受圧体41と係索42との連結あるいは引玉受座21と係索42との連結には種々の方法を採用できる。すなわち、実施例のように係索42を可動受圧体41や引玉受座21に通してその端部に作った結び目43,44で抜け防止しておく方法のほか、係索42の端部を可動受圧体41や引玉受座21に接着剤で貼り付けたりそれらに結んでおくといった方法を採用することができる。また、筒体11の形状は実施例のように円筒であることが望ましいが、場合によっては三角形、六角形、その他の多角形の筒形にすることも可能であり、可動受圧体41の形状は筒体11の形状に合わせておくことが望ましく、そうしておくことにより、火薬体31の爆発に伴って発生する爆風の風圧が可動受圧体41に加わりやすくなる。さらに、蓋部15を図7で説明した蓋体6のようなキャップ型のものに置き換えることも可能である。 【0020】 上記実施例のクラッカーCにおいて、係索42は、爆風で押し出された可動受圧体41が筒体11の先端部13から飛び出すことを筒体11の先端部付近で阻止する位置規制手段の例示である。位置規制手段としては他にも種々のものを採用することができる。例えば、図5にクラッカーCの火薬体31を爆発させた後の状態を示すように、位置規制手段は、筒体11の内部に筒体11と同心状に配備した棒状体46である。詳しくは、棒状体46の基部47を引玉受座21で支持させ、かつ、可動受圧体41に具備させた中心孔49に相対摺動自在に挿通した棒状体46の先端部に鍔体48を設けてある。このような位置規制手段によると、火薬体31の爆発に伴う爆風の風圧で初期位置(図5に初期位置の可動受圧体41を二点鎖線で示してある)の可動受圧体41が押されると、その可動受圧体41が棒状体46と摺動して筒体11の先端部まで移動し、鍔体48に当たって停止する。この停止位置が可動受圧体41の突出位置になる。なお、第2実施例のクラッカーCにおいては、火薬体31を引玉受座21の偏心位置で受け止める構成にしてある。 【0021】 図6は他の実施例を示している。この実施例は、上記した実施例と同じ構成のクラッカーCを、円錐形のカバー9に収容したものである。91はカバー9の開口部を塞いでいる蓋を示しており、この蓋91は上記した蓋部15と同じ構成にすることが可能である。このものによると、カバー9によっても音が遮られれて消音効果が増大するという利点がある。その他の作用については図1〜図4で説明した実施例のものと同様である。 【0022】 本発明の係るクラッカーの他の好適な実施態様を次に列挙する。 (1)筒体の長さを可動受圧体の直径(可動受圧体が多角形の場合には上記したD2に相当する長さ)の2倍以下にする。このようにすると、筒体が短くなって全体が小型化される。 (2)火薬体を増量する代わりに、火薬体の数を増加する。このようにすると、火薬体を増量した場合と同様に、被放出物を遠方にまで飛ばすことができる。 (3)筒体をそれを巻き込んだ筒状の紙あるいはラベルで包み込み、その筒状の紙あるいはラベルの先端部を順次内側に折り込んでその折込み部分を蓋部(図1などに符号15で示した部分に相当する)として用いる。この場合、筒状の紙あるいはラベルの基端部(把手部側)は円形あるいは多角形の厚紙を入れて補強しておくことが望ましい。 【0023】 【発明の効果】 本発明によれば、小巻テープや紙片などの被放出物を遠くに飛ばしてクラッカーCを楽しむことができるという効果がある。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に係るクラッカーの概略断面図である。 【図2】 図1のクラッカーの火薬体を爆発させた後の状態を示す概略断面図である。 【図3】 図1のIII-III線に沿う拡大断面図である。 【図4】 筒体や可動受圧体が多角形である場合の図3に相応する説明図である。 【図5】 他の実施例によるクラッカーの火薬体を爆発させた後の状態を示す概略断面図である。 【図6】 更に他の実施例の一部縦断面図である。 【図7】 従来例のクラッカーの概略断面図である。 【符号の説明】 C クラッカー 11 筒体 21 引玉受座 31 火薬体 32 引紐 41 可動受圧体 51 被放出物 |
訂正の要旨 |
1.訂正事項(a) 願書に添付した明細書の特許請求の範囲における請求項1の「可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、 「可動受圧体(41)が火薬体(31)の爆発時に筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」と訂正する。 2.訂正事項(b) 願書に添付した明細書の特許請求の範囲における請求項1の「被放出物(51)が装填されている」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「被放出物(51)が装填されていると共に、爆風で押し出された上記可動受圧体(41)が筒体(11)の先端部から飛び出すことを筒体(11)の先端部付近で阻止する位置規制手段を備えている」と訂正する。 3.訂正事項(c) 願書に添付した明細書の段落番号【0006】【課題を解決するための手段】における「可動受圧体(41)が筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「可動受圧体(41)が火薬体(31)の爆発時に筒体(11)の軸線方向に移動可能に配備され」と訂正する。 4.訂正事項(d) 願書に添付した明細書の段落番号【0006】【課題を解決するための手段】における「被放出物(51)が装填されている」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「被放出物(51)が装填されていると共に、爆風で押し出された上記可動受圧体(41)が筒体(11)の先端部から飛び出すことを筒体(11)の先端部付近で阻止する位置規制手段を備えている」と訂正する。 |
異議決定日 | 2002-05-24 |
出願番号 | 特願平10-338914 |
審決分類 |
P
1
651・
531-
YA
(F42B)
P 1 651・ 534- YA (F42B) P 1 651・ 55- YA (F42B) P 1 651・ 832- YA (F42B) P 1 651・ 113- YA (F42B) P 1 651・ 121- YA (F42B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 島田 信一 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
ぬで島 慎二 鈴木 久雄 |
登録日 | 2000-12-22 |
登録番号 | 特許第3141155号(P3141155) |
権利者 | 株式会社カネコ |
発明の名称 | クラッカー |
代理人 | 中谷 寛昭 |
代理人 | 鈴江 正二 |
代理人 | 鈴江 孝一 |
代理人 | 鈴江 孝一 |
代理人 | 薬丸 誠一 |
代理人 | 鈴江 正二 |
代理人 | 鈴木 活人 |
代理人 | 藤本 昇 |
代理人 | 岩田 徳哉 |
代理人 | 大中 実 |