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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G08G
管理番号 1062926
異議申立番号 異議1998-71272  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-01-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-03-16 
確定日 2002-01-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第2653541号「情報表示システム」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2653541号の特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2653541号は平成2年5月16日に出願され、平成9年5月23日に設定登録されたものである。
これに対して、平成10年3月16日に特許異議申立人 中村 吉孝より特許異議の申立てがなされ、平成10年7月3日付で当審より取消理由を通知したところ、平成10年9月22日付で訂正請求がなされた。これに対して、平成11年1月29日付で当審より訂正拒絶理由を通知したところ、平成11年4月20日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。
II.訂正及び補正の適否
1.訂正の内容
前記平成10年9月22日付訂正請求の請求の趣旨は本件特許明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり次のように訂正することを求めるものである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1を次のように訂正することを求めるものである。
「【請求項1】電柱、信号機、ビルの看板等に設置され、アドレス信号とともに渋滞状況等の有用な情報を発信する情報発信手段と、
前記アドレス信号、および前記有用な情報を受信し、かつ、地図データ、および必要とする情報の種類を入力されることにより情報処理を実行する情報処理手段と、
前記情報処理手段の前記情報処理の結果に基づいて前記必要とする情報の種類に対応した情報を表示する表示手段を備え、
前記情報処理手段は、現在地より目的地まで到達するのに複数のルートがあるとき、前記複数のルートから時間帯や曜日別の渋滞状況のデータに基づいて最短時間で目的地まで到達するルートを決定する構成を有し、
前記表示手段は、前記複数のルートを表示し、かつ、前記最短時間で目的地まで到達するルートによってドライバーを誘導することを特徴とする情報表示システム。」。
(2)訂正事項b
前記訂正事項に合わせて明細書全文を平成10年9月22日付提出の訂正請求書のとおりに訂正する。
2.補正の内容
前記平成11年4月20日付手続補正書による補正は、前記訂正請求の請求書を補正するものであり、その内容は前記訂正請求の請求書に添付した訂正明細書を次のように補正するものである。
(1)補正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正する。
「【請求項1】電柱、信号機、ビルの看板等に設置され、アドレス信号とともに渋滞状況等の有用な情報を発信する情報発信手段と、
前記アドレス信号、および前記有用な情報を受信し、かつ、地図データ、および必要とする情報の種類を入力されることにより情報処理を実行する情報処理手段と、
前記情報処理手段の前記情報処理の結果に基づいて前記必要とする情報の種類に対応した情報を表示する表示手段を備え、
前記情報処理手段は、現在地より目的地まで到達するのに複数のルートがあるとき、前記複数のルートから曜日別と時間帯の渋滞状況のデータに基づいて最短時間で目的地まで到達するルートを決定する構成を有し、
前記表示手段は、前記複数のルートを表示し、かつ、前記最短時間で目的地まで到達するルートによってドライバーを誘導することを特徴とする情報表示システム。」。
(2)補正事項b
平成10年9月22日に提出した訂正請求書によって訂正した明細書の第2頁1 1行から下8行の記載を以下のように訂正する。
「〔課題を解決するための手段〕
本発明は上記目的を達成するために、電柱、信号機、ビルの看板等に設置され、アドレス信号とともに渋滞状況等の有用な情報を発信する情報発信手段と、前記アドレス信号、および前記有用な情報を受信し、かつ、地図データ、および必要とする情報の種類を入力されることにより情報処理を実行する情報処理手段と、前記情報処理手段の前記情報処理の結果に基づいて前記必要とする情報の種類に対応した情報を表示する表示手段を備え、前記情報処理手段は、現在地より目的地まで到達するのに複数のルートがあるとき、 前記複数のルートから曜日別と時間帯の渋滞状況のデータに基づいて最短時間で目的地まで到達するルートを決定する構成を有し、前記表示手段は、前記複数のルートを表示し、かつ、前記最短時間で目的地まで到達するルートによってドライバーを誘導することを特徴とする情報表示システムを提供するものである。」。
(3)補正事項c
平成1 0年9月2 2日に提出した訂正請求書によって訂正した明細書の第5頁7行から1 1行の記載を以下のように訂正する。
「〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明の情報表示システムによれば、現在地より目的地まで到達するのに複数のルートがあるとき、曜日別と時間帯の渋滞状況のデータに基づいてルートを決定するようにしたため、複数のルートから最短時間で目的地まで到達するルートを決定することができる。」。
3.補正の適否についての判断
補正事項aは、特許請求の範囲の減縮に該当するものと認められる。
補正事項b、cは補正事項aの補正に伴う補正で、明瞭でない記載の釈明であると認められる。そして、これらの補正事項は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
したがって、補正事項a、b、cは請求書の要旨を変更するものとは認められない。
4.訂正の適否についての判断
【1】訂正明細書の請求項1に係る発明
訂正明細書の請求項1に係る発明は、平成11年4月20日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されている次のとおりのものと認める。
「【請求項1】電柱、信号機、ビルの看板等に設置され、アドレス信号とともに渋滞状況等の有用な情報を発信する情報発信手段と、
前記アドレス信号、および前記有用な情報を受信し、かつ、地図データ、および必要とする情報の種類を入力されることにより情報処理を実行する情報処理手段と、
前記情報処理手段の前記情報処理の結果に基づいて前記必要とする情報の種類に対応した情報を表示する表示手段を備え、
前記情報処理手段は、現在地より目的地まで到達するのに複数のルートがあるとき、前記複数のルートから曜日別と時間帯の渋滞状況のデータに基づいて最短時間で目的地まで到達するルートを決定する構成を有し、
前記表示手段は、前記複数のルートを表示し、かつ、前記最短時間で目的地まで到達するルートによってドライバーを誘導することを特徴とする情報表示システム。」。
「【2】引用刊行物
訂正明細書の請求項1に係る発明に対し、当審が訂正拒絶理由通知において示した刊行物1(実願昭62ー201096号(実開平1ー103000号)のマイクロフィルム))には、次の発明が記載されている。
信号機に設置され、現在位置情報とともに渋滞状況等の情報を発信する外部情報送信機7と、
前記現在位置情報、および前記渋滞状況等の情報を受信し、かつ、地図データ、および表示を希望する項目を入力されることにより情報処理を実行する中央処理装置13と、
前記中央処理装置13の前記情報処理の結果に基づいて前記表示を希望する項目に対応した情報を表示するディスプレイ装置5を備える情報表示システム。
同じく当審が訂正拒絶理由通知において示した刊行物2(特開平1ー156619号公報)には、次の発明が記載されている。
「移動体の移動経路に沿って要所に設けられた発信設備(サインポスト)から発せられる移動経路に関するデータを取り入れ、このデータを適宜に使用することで、自己の現在位置や移動方位を知る」(第2頁左上欄第17行〜第2頁右上欄第1行)ようにした移動体用ナビゲーション装置。
【3】対比
そこで、請求項1に係る発明と刊行物1の発明とを対比すると、刊行物1中の
「現在位置情報」、「渋滞状況等の情報」、「外部情報送信機7」、「表示を希望する項目」、「中央処理装置13」、「ディスプレイ装置5」は、それぞれ請求項1に係る発明の、
「アドレス信号」、「渋滞状況等の有用な情報」、「情報発信手段」、「必要とする情報の種類」、「情報処理手段」、「表示手段」に相当し、刊行物1における「信号機」も請求項1に係る発明における「電柱、信号機、ビルの看板等」も共に「道路に面した高所」であるから、両者は、
道路に面した高所に設置され、アドレス信号とともに渋滞状況等の有用な情報を発信する情報発信手段と、
前記アドレス信号、および前記有用な情報を受信し、かつ、地図データ、および必要とする情報の種類を入力されることにより情報処理を実行する情報処理手段と、
前記情報処理手段の前記情報処理の結果に基づいて前記必要とする情報の種類に対応した情報を表示する表示手段を備える情報表示システム、である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1.
請求項1に係る発明では電柱、信号機、ビルの看板等、刊行物1よりもより広い設置個所を設置対象としているに対し、刊行物1では情報発信手段は信号機に設置する点。
相違点2.
請求項1に係る発明では、情報処理手段は、「現在地より目的地まで到達するのに複数のルートがあるとき、前記複数のルートから曜日別と時間帯の渋滞状況のデータに基づいて最短時間で目的地まで到達するルートを決定する構成を有」するに対し、刊行物1における情報処理手段はそのような構成を有しない点。
相違点3.
請求項1に係る発明では、表示手段は、「複数のルートを表示し、かつ、前記最短時間で目的地まで到達するルートによってドライバーを誘導する」のに対し、刊行物1では、表示手段はそのような構成を有しない点。
【4】当審の判断
そこで、前記相違点1〜3につき、以下に検討する。
相違点1.について、
刊行物2には、請求項1に係る発明及び刊行物1と同様の技術分野に属するナビゲーション装置において、発信設備(請求項1に係る「情報発信手段」に相当する。)を移動体の移動経路に沿って要所に設ける旨、記載されているから、刊行物1のものにおいても情報発信手段を信号機に限らず移動体の移動経路に沿って要所に設けるべく、その設置個所を拡大することは容易に想到し得るところと認められ、その際、情報発信手段の具体的な設置個所として、信号機と同じく道路に面した高所に設置し得る電柱、ビルの看板等に着目することに何ら格別の創意を要し得たものとは認められない。
相違点2.について、
車両用情報表示装置において、目的地まで到達するのに複数のルートがあるとき、前記複数のルートから走行時間帯別のデータに基づいて最短時間で目的地まで到達するルートを決定するようにしたものは本願出願前周知であり(例えば、実願昭55-165998号(実開昭57-88300号)のマイクロフィルム参照)、その際、走行時間帯別のデータに道路の渋滞状況が反映されていることは自明である。
一方、刊行物1のものにおいて、運転者が目的地までの最適経路を決定するにあたり、渋滞状況の情報を参考にすることは当然であり、渋滞状況は、前記した如く時間帯毎に異なるばかりでなく、通常曜日毎にも異なるものであることは、運転者に常識的な事項であるから、目的地までの最短時間ルートを決定するに際し、走行時間帯毎に加えて曜日別の渋滞状況のデータをも用意し、ルート決定の判断に供することは、当業者が容易に想起し得るところと認められる。
相違点3.について、
目的地までの走行にあたり、目的地まで到達するルートを複数表示し、そのなかの最適ルートによって、ドライバーを誘導することは、ナビゲーション装置において周知であり(例えば、特開昭63ー53700号公報 第6頁右上欄参照)、一方、「最短時間で目的地まで到達するルートによってドライバーを誘導すること」も、前記文献(実願昭55-165998号(実開昭57-88300号)のマイクロフィルム)において見られるように周知であるから、「複数のルートを表示し、かつ、前記最短時間で目的地まで到達するルートによってドライバーを誘導」し得るように表示した点に、格別の創意を要し得たものとは認められない。
【5】むすび
以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る発明は、刊行物1乃至刊行物2に記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、当該訂正請求は認められない。
III.特許異議申立てについての判断
【1】請求項1に係る発明
本件請求項1に係る発明は、特許明細書及び図面の記載から見て、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。
「【請求項1】電柱、信号機、ビルの看板等に設置され、アドレス信号とともに渋滞状況等の有用な情報を発信する情報発信手段と、
前記アドレス信号、および前記有用な情報を受信し、かつ、地図データ、および必要とする情報の種類を入力されることにより情報処理を実行する情報処理手段と、
前記情報処理手段の前記情報処理の結果に基づいて前記必要とする情報の種類に対応した情報を表示する表示手段を備えたことを特徴とする情報表示システム。」
【2】引用刊行物記載の発明
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(実願昭62ー201096号(実開平1ー103000号)のマイクロフィルム)には、次の発明が記載されている。
信号機に設置され、現在位置情報とともに渋滞状況等の情報を発信する外部情報送信機7と、前記現在位置情報、および前記渋滞状況等の情報を受信し、かつ、地図データ、および表示を希望する項目を入力されることにより情報処理を実行する中央処理装置13と、
前記中央処理装置13の前記情報処理の結果に基づいて前記表示を希望する項目に対応した情報を表示するディスプレイ装置5を備えた情報表示システム。
同じく当審が通知した取消理由に引用した刊行物2(特開平1ー156619号公報)には、「移動体の移動経路に沿って要所に設けられた発信設備(サインポスト)から発せられる移動経路に関するデータを取り入れ、このデータを適宜に使用することで、自己の現在位置や移動方位を知る」(第2頁左上欄第17行〜第2頁右上欄第1行)ようにした移動体用ナビゲーション装置、が記載されている。
【3】対比・判断
そこで、請求項1に係る発明と刊行物1に記載の発明とを比較すると、両者は、
道路に面した高所に設置され、アドレス信号とともに渋滞状況等の有用な情報を発信する情報発信手段と、
前記アドレス信号、および前記有用な情報を受信し、かつ、地図データ、および必要とする情報の種類を入力されることにより情報処理を実行する情報処理手段と、
前記情報処理手段の前記情報処理の結果に基づいて前記必要とする情報の種類に対応した情報を表示する表示手段を備えたことを特徴とする情報表示システム、である点で一致し、
刊行物1では情報発信手段は信号機に設置するに対し、請求項1に係る発明では電柱、信号機、ビルの看板等、刊行物1よりもより広い設置個所を設置対象としている点、で相違するが、該相違点については、前記II.4.【4】当審の判断の相違点1.について、で述べた理由により、当業者が容易になし得る範囲のものと認められる。
【5】むすび
以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、刊行物1及び2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、本件請求項1に係る発明は、旧特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
したがって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第4項及び第7項並びに第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-05-24 
出願番号 特願平2-125889
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (G08G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 田良島 潔  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 石川 好文
西川 一
登録日 1997-05-23 
登録番号 特許第2653541号(P2653541)
権利者 株式会社ハドソン
発明の名称 情報表示システム  
代理人 平田 忠雄  

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