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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61L
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A61L
審判 全部申し立て 特29条の2  A61L
管理番号 1064334
異議申立番号 異議1999-74794  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-12-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-22 
確定日 2002-07-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2909116号「補強型生体機能材料用重合体フィルム」の請求項1〜11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2909116号の請求項1〜8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2909116号発明は、平成1年6月12日(パリ条約による優先権主張、昭和63年7月5日、フィンランド国)を国際出願日とする特許出願であって、平成11年4月2日に特許権の設定登録がされた。その後、相沢さつき及び内田照和により特許異議申立てがされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成12年12月7日に訂正請求(後日取下げ)がなされた後、再度取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年6月17日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正請求について
(1)訂正の内容
訂正事項a
請求項1の
「重合体フィルムであって、該フィルムは生体に吸収可能であって、その少なくとも一部が生体に吸収可能な配向された構造補強要素で補強されており、該構造補強要素は、配向された分子鎖もしくはその部分、配向された結晶薄層、球晶、フィブリルもしくはその部分、繊維、フィルム、糸、コード、不織構造物、網織物、網、ニットもしくは織物または対応する構造補強要素の中の1または2以上のものから選ばれたものであることを特徴とする重合体フィルム。」を、
「手術用重合体フィルムであって、該フィルムは生体に吸収可能であって、その少なくとも一部が生体に吸収可能な配向された構造補強要素で補強されており、織布によって補強されたフィルム、片面が溶融されたメリヤスからなるフィルム、及び、片面が溶融されたフェルトからなるフィルムのいずれかであることを特徴とする縫合糸により固定する手術用重合体フィルム。」と訂正する。

訂正事項b
請求項2、請求項7及び請求項8を削除する。

訂正事項c
請求項3の
「前記フィルムの最大厚さが2000μmである請求の範囲第1項または第2項記載の重合体フィルム。」を
「前記フィルムの最大厚さが2000μmである請求の範囲第1項記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項2とする。

訂正事項d
請求項4の
「前記フィルムの少なくとも一部が、次の吸収性および(または)可溶性重合体:ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLLA、PDLLAのような)、グリコリド/ラクチド共重合体(PGA/PLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネート共重合体(PGA/TMC)、ポリーβ-ヒドロキシ酪酸(PHBA)、ポリ-β-ヒドロキシプロピオン酸(PHPA)、ポリ-δ-ヒドロキシ吉草酸(PHVA),PHBA/PHVA共重合体、ポリ-p-ジオキサン(PDS)、ポリ-1,4-ジオキサノン-2,5-ジオン、ポリエステルアミド(PEA)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ-δ-バレロラクトン、ポリカーボネート、シュウ酸のポリエステル、グリコールエステル、ジヒドロピラン重合体、ポリエーテルエステル、シアノ-アクリレートまたはキチン重合体の少なくとも1つで製造されている請求の範囲第1項乃至第3項のいずれか記載の重合体フィルム。」を、
「前記フィルムの少なくとも一部が、次の吸収性および(または)可溶性重合体:ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLLA、PDLLAのような)、グリコリド/ラクチド共重合体(PGA/PLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネート共重合体(PGA/TMC)、ポリーβ-ヒドロキシ酪酸(PHBA)、ポリ-β-ヒドロキシプロピオン酸(PHPA)、ポリ-δ-ヒドロキシ吉草酸(PHVA),PHBA/PHVA共重合体、ポリ-p-ジオキサン(PDS)、ポリ-1,4-ジオキサノン-2,5-ジオン、ポリエステルアミド(PEA)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ-δ-バレロラクトン、ポリカーボネート、シュウ酸のポリエステル、グリコールエステル、ジヒドロピラン重合体、ポリエーテルエステル、シアノ-アクリレートまたはキチン重合体の少なくとも1つで製造されている請求の範囲第1項または第2項に記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項3とする。

訂正事項e
請求項5の
「前記フィルムの少なくとも一部が配向された構造補強要素で補強されており、該構造補強要素は次の重合体:ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLLA,PDLLAのような)、グリコリド/ラクチド共重合体(PGA/PLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネート共重合体(PGA/TMC)、ポリーβ-ヒドロキシ酪酸(PHBA)、ポリ-β-ヒドロキシプロピオン酸(PHPA)、ポリ-δ-ヒドロキシ吉草酸(PHVA),PHBA/PHVA共重合体、ポリ-p-ジオキサン(PDS)、ポリ-1,4-ジオキサノン-2,5-ジオン、ポリエステルアミド(PEA)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ-δ-バレロラクトン、ポリカーボネート、シュウ酸のポリエステル、グリコールエステル、ジヒドロピラン重合体、ポリエーテルエステル、シアノ-アクリレートまたはキチン重合体の少なくとも1つから成る請求の範囲第1項乃至第4項のいずれか記載の重合体フィルム。」を、
「前記フィルムの少なくとも一部が配向された構造補強要素で補強されており、該構造補強要素は次の重合体:ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLLA,PDLLAのような)、グリコリド/ラクチド共重合体(PGA/PLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネート共重合体(PGA/TMC)、ポリーβ-ヒドロキシ酪酸(PHBA)、ポリ-β-ヒドロキシプロピオン酸(PHPA)、ポリ-δ-ヒドロキシ吉草酸(PHVA),PHBA/PHVA共重合体、ポリ-p-ジオキサン(PDS)、ポリ-1,4-ジオキサノン-2,5-ジオン、ポリエステルアミド(PEA)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ-δ-バレロラクトン、ポリカーボネート、シュウ酸のポリエステル、グリコールエステル、ジヒドロピラン重合体、ポリエーテルエステル、シアノ-アクリレートまたはキチン重合体の少なくとも1つから成る請求の範囲第1項乃至第3項のいずれか記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項4とする。

訂正事項f
請求項6の
「前記フィルムが、抗生物質、成長ホルモン、薬剤等の生理活性化学薬品(biofunctional chemical)、化学療法物質を含有する請求の範囲第1項乃至第5項のいずれか記載の重合体フィルム。」を、
「前記フィルムが、抗生物質、成長ホルモン、薬剤等の生理活性化学薬品(biofunctional chemical)、化学療法物質を含有する請求の範囲第1項乃至第4項のいずれか記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項5とする。

訂正事項g
請求項9の
「生体組織もしくは器官またはこれらの部分の支持またはこれらを相互に結合するための請求の範囲第1項乃至第8項のいずれか記載の重合体フィルム。」を、
「生体組織もしくは器官またはこれらの部分の支持またはこれらを相互に結合するための請求の範囲第1項乃至第5項のいずれか記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項6とする。

訂正事項h
請求項10の
「生体組織もしくは器官またはこれらの部分を互に分離するための請求の範囲第1項乃至第8項のいずれかに記載の重合体フィルム。」を、
「生体組織もしくは器官またはこれらの部分を互に分離するための請求の範囲第1項乃至第5項のいずれかに記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項7とする。

訂正事項i
請求項11の
「歯根膜の靱帯および(または)セメント質組織の管理成長を保護するための請求の範囲第1項乃至第8項のいずれか記載の重合体フィルム。」を、
「歯根膜の靱帯および(または)セメント質組織の管理成長を保護するための請求の範囲第1項乃至第5項のいずれか記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項8とする。

(2)訂正の適否
訂正事項aは、「重合体フィルム」の用途を「縫合糸により固定する手術用重合体フィルム。」に限定すると共に、その構造補強要素を願書に添付した明細書(以下「特許明細書」という)の実施例3〜5の記載等に基いて限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また特許明細書に記載された事項の範囲内のものである。
訂正事項bは、請求項2、7及び8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項c〜iは、訂正事項aによって、重合体フィルムの用途が限定されたことに伴い、他の請求項に記載の用途を限定するとともに、訂正事項bによって、請求項2、7及び8が削除されたことに伴い、請求項の番号を繰り上げ、引用する請求項の番号を訂正したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正事項a〜iのいずれの訂正も、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、後記「3.(4)対比・判断」の項に記載したとおり、訂正後における特許請求の範囲に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについて
(1)申立ての理由の概要
特許異議申立人相沢さつきは、甲第1及び2号証を提出し、訂正前の本件特許の請求項1〜11に係る発明は特許法第29条の2の規定に違反してなされ、また、甲第3〜12号証及び参考資料1〜6を提出して、訂正前の本件特許の請求項1〜11に係る発明は特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に違反してなされ、また、本件明細書は特許法第36条に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされた旨を主張している。
また、特許異議申立人内田照和は、甲第1及び2号証を提出し、訂正前の本件特許の請求項1、3〜5、8及び9に係る発明は特許法第29条の2の規定に違反してなされ、また、甲第3〜8号証を提出して、訂正前の本件特許の請求項1、3〜5、7〜9に係る発明は特許法第29条第2項の規定に違反してなされれた旨を主張している。

(2)本件特許発明
本件特許第2909116号の請求項1〜8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1〜8」という。)は、平成14年6月17日付け訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜8に記載されたとおりのものである。(上記2.(1)訂正事項a、c〜i参照)

(3)申立人が提出した甲各号証拠の記載
(i) 特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第1〜12号証及び参考資料1〜6には、それぞれ、以下の事項が記載されている。

甲第1号証(特表平1-501847号公報)
甲第1号証の対応する特許公報(特公平7-96024号公報)の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
請求項1 生体組織に吸収されるポリマー、生体組織に吸収されるコポリマー及びそれらの混合物の群から選ばれ、更に、配向し、少なくとも部分的にフィブリル化した構造単位を含み、該フィブリル化した構造単位はフィブリル化していない出発物質を固定状態で延伸したときに得られるものであることを特徴とする骨または関節用外科用材料。
請求項2 ロッド、板、ねじ、釘、管そしてクランプからなる群の中から選択された器具の形状を有することを特徴とする請求項1記載の骨または関節用外科用材料。
請求項3 上記外科用材料が、超配向した構造単位を少なくとも部分的に有することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の骨または関節用外科用材料。
請求項4 上記外科用材料の剪断強度値が少なくとも200MPaで、剪断弾性値が少なくとも4GPaであることを特徴とする特許請求の範囲第1項、第2項又は第3項記載の骨または関節用外科用材料。
請求項5 上記外科用材料の曲げ強度値が少なくとも200MPaで、曲げ弾性値が少なくとも4GPaであることを特徴とする特許請求の範囲第1項、第2項又は第3項記載の骨または関節用外科用材料。
請求項6 マトリックスと補強繊維が化学的に同じであることを特徴とする特許請求の範囲第1項、第2項、第3項、第4項又は第5項記載の骨または関節用外科用材料。
(請求項7〜11に係る発明は製造方法に関するものであるので省略する)

甲第2号証(特開平1-198553号公報)
・「ポリ乳酸又は乳酸とグリコール酸との共重合体よりなる延伸された成形物であって、その圧縮曲げ強度が1.6×103kg/cm2以上、圧縮曲げ弾性率が5.0×102kg/mm2以上、溶融成形後の粘度平均分子量が20万以上であることを特徴とする生体内分解吸収性外科用材料。」(特許請求の範囲第1項)
・「粘度平均分子量が30万以上のポリ乳酸又は乳酸とグリコール酸との共重合体を、その融点以上、220℃以下の温度条件下に溶融成形し、更に、そのガラス転移点(60℃)以上融点(180℃)以下の温度条件下に延伸することを特徴とする生体内分解吸収性外科用材料の製造法。」(特許請求の範囲第2項)
・「本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、粘度平均分子量が30万以上のポリ乳酸又は乳酸とグリコール酸との共重合体を、その融点以上、220℃以下の温度条件下に溶融成形、例えば押出成形、プレス成形すれば、溶融成形後の粘度平均分子量を20万以上に保つことができ、更にこれを60〜180℃の温度条件下に延伸すれば、圧縮曲げ強度が1.6×103kg/cm2以上、圧縮曲げ弾性率が5.0×102kg/mm2以上と強靱で、耐加水分解性にも優れたポリ乳酸系外科用材料を得ることができるという新規な事実を見出すに至った。」(2頁左下欄2〜13行)
・「溶融押出成形によって得られた成形物は…まだ目的とする強度には及ばない。そこで、本発明では、この成形物を更に流動パラフィン等の媒体中で長軸方向(押出方向)に一軸延伸することにより、ポリマー分子を配向させて強度を向上させる。」(3頁左下欄9〜15行)
・「…延伸倍率については、2倍もしくはそれ以上とするのが望ましい。これより小さい延伸倍率では、分子配向が不充分となり、満足に強度を向上させることが困難となるからである。このように一軸延伸された成形物は、適当な寸法に切断され、最終的に種々のサイズ及び形状の骨接合プレート、ピン、ビス、スクリュー等に切削加工され、整形外科、口腔外科、胸部外科等の領域で臨床に使用される。」(3頁右下欄6〜14行)
・「…本発明の生体内分解吸収性外科用材料は…高い圧縮曲げ強度及び圧縮曲げ弾性率を具備する高強度材料であり、且つ耐加水分解性にも優れるものである…」(5頁左下欄2〜6行)

甲第3号証(特公昭41-2734号公報)
・「…ポリ乳酸を…溶融紡糸し、得られたフイラメントを…延伸して配向させ、配向したフイラメントを…加熱して…焼なますことを特徴とする吸収可能な外科用縫合糸の製造法。」(特許請求の範囲第2項)
・「紡糸した後フイラメントを延伸して配向させる。これは…フイラメントを延伸(永久的に伸長)させることにより達成される。…。延伸により引張強さおよびX線配向角によって示される分子配向が著しく増大する。」(3頁左欄31〜38行)
・「ポリ乳酸を紡糸してフイラメントにする代りに、これを押出成形または流込成形してフイルムにし、これを延伸し焼なましをすることができる。このように処理したフイルムは細い細片に切つて縫合用糸として使用することができる。」(3頁右欄1〜5行)

甲第4号証(特公昭43-5192号公報)
・「取り扱い易く、染色性良く一般に固体の伸張され配向されたポリヒドロキシ酢酸エステルから成ることを特徴とする良好なる結び特性および結び目強度を有する1乃至4000デニールの無菌性外科用縫合糸。」(特許請求の範囲第1項)
・「ポリヒドロキシ酢酸エステルは外科治療用の管またはシートに作り得る。そしてまた、細い繊条として紡いだり、吸収性のスポンジまたは吸収性のガーゼを作る為に織つたり、縮絨したり、あるいは人体または動物体内で構成物が短時間の強度と吸収性とを必要とする時に他の構成物と共に用いたり補綴物として使用したりすることが可能である。有用なる具体例としては…破損した腎臓や肝臓および他の腸器管をしばつて保持したり、擦過傷特に大擦過傷のような破損表面または、皮膚およびその下の組織が破損または外科的に除去された部分を保護する為のシート等がある。」(2頁左欄15〜29行)
・「実施例1
再結晶したグリコリド…100部がメトキシ酢酸0.02部、二硫化フェノール…0.03部および三弗化アンチモン0.03部と直接に混合される。…。これを冷却すると…ポリヒドロキシ酢酸エステルが…得られる。重合体は再度加熱され…繊維に紡がれる。製造された繊維は冷却され、約55℃で引張られる。初めの長さの5倍に伸ばされると丈夫な繊維が出来る。」(3頁右欄25〜40行)
・「同じ重合体はシートに成型され、皮膚表面または内部用にも使われる。…。本発明の重合体はもし伸張すれば強靱であるが、使用し得る為に必ずしも伸ばすことは必要ではない。」(4頁左欄8〜20行)

甲第5号証(特開昭56-83337号公報)
・「親水性の単位と疎水性の単位とで構成される無毒で分解可能な重合体のマトリツクス、および体内において分解可能な無毒の繊維で作られた強化成分からなることを特徴とする骨固定要素用の生物的破壊性物質。」(特許請求の範囲第1項)
・「負傷した際に医学的幇助を与えるための結合要素(connecting element)を製造するための、生物的破壊性物質を医学的技術において使用することができる。この種の要素は、例えば、骨折した骨の固定用に意図された各種のピン、ステープル、ロッド、プレート等である。」(1頁右下欄17行〜左上欄2行)
・「マトリツクス重合体中に入りこむ親水性の単位は、例えば、N-ビニルピロリドン、アクリルアミド…である。マトリツクス重合体中に入りこむ疎水性の単位は、例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート…である。骨固定要素のための強化材として用いられる繊維は、例えば、ポリアミド、オキシセルローズ、ポリビニルアルコール、またはそれらの混合物の合成無毒性繊維または糸、および天然の無毒で分解可能な繊維および糸、例えば腸糸(catgut)、コラーゲン、デキストラン繊維および糸、その他である。」(2頁左下欄9行〜右下欄8行)
・「ピン、ロッド、ステープルのごとき種々の結合要素を、提案された生物的破壊性物質から製造できる。圧縮成形用の型の中にそれを入れ、200℃の温度および300kg/cm2までの圧力強さでプレスする。次に成形型を冷却し、そして再終製品を型から抜出す。」(3頁右上欄10〜15行)

甲第6号証(特開昭61-259674号公報)
・「組織状態で少なくとも部分的に吸収可能である外科的接骨用複合材料において、上記接骨用材料は自己補強している、すなわちマトリックスとほぼ同じ化学成分百分組成を有している可吸収性ポリマー補強ユニットで補強した可吸収性ポリマーまたはコポリマーマトリックスで形成されていることを特徴とする接骨用器具の材料。」(特許請求の範囲第1項)
・「上記補強ユニットは繊維、糸、撚糸、紐、膜、リボン、織物または類似の形態になっていることを特徴とする、特許請求の範囲第1項に記載の材料。」(特許請求の範囲第2項)
・「上記材料は3次元立体の形状の板、ピン、釘、骨髄ロッド、ねじ、角材等の接骨用内植体を全体として形成したか、あるいは上記材料は接骨用内植体の少なくとも一部を形成したものであることを特徴とする、特許請求の範囲第1項〜第9項のいずれかに記載の材料。」(特許請求の範囲第10項)
・「可吸収性の繊維、糸、撚糸、紐、膜、リボン、織物または類似の材料を、上記材料が軟化または溶融し少なくとも部分的に融合するような態様で加熱し、上記材料を圧力によって所望の形状に成形し冷却することを特徴とする特許請求の範囲第11項に記載の製法。」(特許請求の範囲第13項)
・「また本発明の自己補強構造は、可吸収性ポリマーの融成物と同じ材料の繊維、糸または類似の補強ユニットとを結合させ、ポリマー融成物および補強ユニットの混合物を所望の形状に成形し、補強ユニットがそれらの配向内部構造を著しく緩めないように迅速に成形したポリマー複合材を冷却することによっても得られる。」(4頁右上欄11〜17行)
・「本発明の自己補強材料は幾つかの他の態様でも他の可吸収性材料および(または)生体安定材料と組合せて適用することができる。例えば自己補強材料の機械的性質は、その中に自己補強材料の加水分解特性とは別の加水分解特性を有する可吸収性補強ユニットを埋込むことによって修正することができる。」(5頁左上欄7〜13行)

甲第7号証(特開昭61-293445号公報)
・「(a)接続交差部品の同じ側から延びている1対の脚を有する締め付け部材、該締め付け部材は脚が組織を貫通した状態で接合すべき組織の一方の側に位置するようになっており、該締め付け部材は配向した結晶性の重合体材料であり、それによって締め付け部材は脚が締め付けるべき組織を貫通し得るように充分な固有の強さ及び硬直性を有している、及び(b)該締め付け部材を所定位置に固定するための受け部材を具備し、それによって37℃、pH7.2の生理学的塩溶液中に21日間浸漬後に測定し得る分離強さを保持することを特徴とする組織用フアスナー。」(特許請求の範囲第1項)

甲第8号証(特開昭60-88543号公報)
・「骨折部を越えるかあるいは貫通する少なくとも1つの器官を備えている骨折部固定用の外科用器具において、該器官は骨折部の対向する側にある骨の部分と関連しており、(a)少なくとも1つの、少なくとも外科的取付手術の直後は本質的に剛性の、骨折部(6)を越えるかあるいは貫通する少なくとも部分的に吸収可能な骨接合板またはビーム(7)、および(b)少なくとも1つの、少なくとも取付け中は可撓性の、骨(5)に締付け且つ(または)邁所に締付けて上記骨折部(6)を越えるかあるいは貫通し且つ(または)上記骨接合板(7)を越えるかあるいは貫通する取付素子(8,8',8'')を備えており、上記骨接合板(7)、締付けた取付素子(8,8',8'')および上記骨折部(6)が存在する固定した骨(5)の側域によって剛性が上記骨折部(6)の治療を確実にするのに十分高い組立体を形成するようにし、上記骨折部(6)の治療中上記骨接合板(7)の吸収の結果、別の後続の手術で上記外科用器具またはその一部を除去する必要性が排除されるように上記外科用器具の剛性および機械的強度が低減することを特徴とする上記外科用器具」(特許請求の範囲第1項)

甲第9号証(特開昭61-181469号公報)
・「重量平均分子量が40,000以上であるL-乳酸の重合体、あるいはL-乳酸とヒドロキシカルボン酸またはL-乳酸とラクトンとの共重合体より成り、適用時に加熱により任意の形状に変形し、もしくは成型できるよう板状に成型して成ることを特徴とする胸郭支持材。」(特許請求の範囲第1項)

甲第10号証(特開昭63-68155号公報)
・「生体内分解吸収性の熱可塑性高分子材料を成型して成ることを特徴とする骨接合ピン」(特許請求の範囲第1項)
・「(実施例1) …単軸スクリュー紡糸機を用い…ハイドロキシアパタイト含有のP-L-LA棒を押し出した。この棒を…長軸方向に2倍延伸した後…肋骨固定ピンを作製した。このようにして構成した肋骨固定ピンはハイドロキシアパタイトを含有させ、また、延伸することにより長軸方向の弾性、強度が向上した。」(2頁右下欄4〜15行)
・「(実施例2) …P-L-LA…にハイドロキシアパタイト…を…加え…た材料を調製し、ホットプレス機でプレート状に成型した後…延伸し…円柱状の骨接合ピンを作成した。…。ハイドロキシアパタイトを…含有させたP-L-LAは延伸することにより長軸方向の弾性、強度を向上させることができ…た。」(3頁右上欄4行〜左下欄13行)
・「長軸方向に延伸され、力学的強度が向上がされていることを特徴とする特許請求の範囲第3項記載の骨接合ピン。」(5頁右上欄16〜18行)

甲第11号証(人工臓器、第16巻、第3号(昭和62年6月15日発行)、1419-1422頁)
・「[はじめに] 肋骨離断時や胸部外傷時の肋骨の固定には…非吸収性の材料が現在臨床で使われている。我々は生体内で安全に分解するポリ乳酸を用いた吸収性髄内固定用肋骨接合ピンの開発を行っている。」(1419頁左欄1〜6行)
・「[材料と方法] 重合精製したP-L-LAに…HAを加え均質に混合した材料を調製し熱圧縮法によりプレート状に成形した…。この試料を…延伸し、…円柱状ピンを作製した。」(1419頁右欄4〜10行)
・「[結論] 肋骨骨折や離断時に用いる生体内吸収性肋骨接合ピンをポリ-L-乳酸で作製した。骨との親和性を高めるためのハイドロキシアパタイトを含有させ、長軸方向へ延伸し分子の配向性を高めることにより強度を向上させた。」(1422頁右欄17〜21行)

甲第12号証(特開昭60-14861号公報)
・「全部または大部分が生体分解吸収性高分子から構成されてなることを特徴とする癒着防止材。」(特許請求の範囲第1項)
・「本発明の癒着防止材は、フィルム状、シート状など目的に応じて任意の形状とすることができ、その形態についても、非多孔質体だけでなく、多孔質体、織物、編物など任意に選択することができる。」(3頁左下欄14〜18行)
・「本発明の癒着防止材は、生体内の癒着の発生する恐れのある部位に挿入しておくだけで癒着を防止することができ、きわめて簡単な操作で確実に癒着を防止することができる。」(3頁右下欄2〜5行)
・「実施例2
…D,L-ラクチドとグリコリド(グリコール酸の環状縮合物)とを…反応させ…乳酸-グリコール酸共重合体を得た。そして、得られた共重合体から、160℃のホットプレスにて厚さ100μの膜を作製した。」(4頁右上欄12〜18行)

参考資料1(特開昭59-139318号公報)
・「ポリ乳酸またはその共重合物を基材に用いた徐放性成形薬材の製造方法において、溶媒を用いてポリ乳酸または乳酸共重合物の濃度が3〜30重量%になるよう溶液を調整し、これに薬剤粉末を添加、混合し、ついでフイルム状またはシート状にして取り出された成形薬材を…常圧乾燥させ、その後加熱して減圧乾燥させることにより、実質的に溶媒を完全に除去させた、ポリ乳酸またはその共重合物を基材に用いたフイルム状またはシート状の成形薬材の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)

参考資料2(特開昭60-153868号公報)
・「(a)生物分解性合成重合体のマトリックスに有効量の再吸収性繊維を組み込んで、複合物を形成する工程と;
(b)前記複合物を所望の人工装具の形状に形成する工程;
からなることを特徴とする生物分解性人工装具の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
・「…先行技術の欠点は、再吸収性繊維、特にリン酸カルシウム繊維で補強した生物分解性重合体の複合物で成形された生物分解性、高強度、剛性固定装具かならる本発明によって解決される。」(4頁右上欄2〜5行)
・「補強繊維はセラミツクまたは望ましいガラスの形のリン酸カルシウムを含む。セラミツク繊維はβ-リン酸三カルシウムからなるものを含む。…。同一の方法で製造したリン酸塩を含まないアルミ酸カルシウム(CaAl)の繊維も、もろくて容易に破断するけれども、使用することができる。…本発明の望ましい繊維はガラス繊維である。メタリン酸カルシウム…。」(4頁右上欄16行〜左下欄15行)
・「本発明は、全体的に被吸収性の骨折-固定板または器具を形成するために生物分解性重合体に高強度、高モジユラス、生物分解性繊維を合体することに関する。」(4頁右下欄3〜6行)
・「3.複合物の製造
繊維は重合体マトリツクスに2、3の方法で合体さすことができる。1つの方法は、繊維を小片に切断し、溶融重合体と混合し、射出成形、圧縮成形または押出によって所望の形状に成形する方法である。もう1つの方法では、切断した繊維を重合体の溶液と混合し、その混合体をフィルムに鋳込んで溶媒を蒸発さすことができる。…。これらのシートは次に同一組成の他のシートまたは繊維を含まない重合体シートで積層して固定板を製造する。」(10頁左下欄18行〜右下欄18行)

参考資料3(特開昭63-255068号公報)
・「ポリ-p-ジオキサノン…のような再吸収性のポリエステルに基いた連続気泡性のフォーム状プラスチック材料の移植片であって、再吸収性のプラスチックから形成された織物状の一種又は多種の補強要素が…連続気泡性プラスチックマトリックス中に埋め込まれていることを特徴とする移植片。」(特許請求の範囲第1項)

参考資料4(高分子加工、1981年6月号、5-11頁)
・「b.骨接合用材料
…KulkarniとかCutrightらによって下がく骨の骨折接合および損傷眼穿床の修復のための動物実験が行われたが、結果は良好である。彼らは…もっぱらP-L-LAの成型品を用いている。」(6頁左欄2行〜右欄1行)
・7頁右欄の表7には射出成型したP-L-LAの機械的性質が記載されている。
・「表7の試料片は、射出成型によって加工されたものであり、圧縮成型すれば、力学的性質は向上するだろうとSedelらは述べている。」(7頁右欄3〜5行)

参考資料5(筏義人著「バイオマテリアル 人工臓器へのアプローチ」日刊工業新聞社(昭和63年4月15日発行)、62-65、234-239頁)
・「骨が折れると、骨折部を整復し…固定しておかなければならない。それには外固定と内固定とがあり、後者においては材料が体内埋込みとなる。それに用いる材料は、現在、すべて金属であり…種々の形態のプレート、ネジ、ボルト、ステープル、ワイヤー、髄内釘などが臨床的に用いられている。」(62頁2〜6行)
・「…強化材もマトリクス材も生体吸収性材料から作るという研究が最近行われはじめた。その一つは、強化繊維としてメタリン酸カルシウム、マトリックス材料としてポリD、L-乳酸を用いる研究である。」(64頁下から9〜6行)
・「生体分解吸収性材料は…必ず体内に埋め込んで用いられる。その一般的な用途は、外科用と薬剤放出制御用である。」(237頁下から6〜5行)

参考資料6(筏義人ほか編「高分子事典」株式会社高分子刊行会(1971年2月20日発行)、21-22、66-69、188-191頁)
・「延伸」の項には、「…無配向高分子をある方向に(一般には、ガラス転移温度以上の温度で)引き伸ばしてやると、その引き伸ばし方向にセグメントが配向し、その力学的性質が変化する。…。延伸には、1軸延伸と2軸延伸がある。…。2軸延伸とは…。分子鎖軸は、フィルム面に平行であるが、この面内にはランダムに配向している(2軸配向)。2軸配向フィルムは、未配向のものに比べて、引張り強さ、粘り強さ、衝撃強などが大きく、最近ますます重要視されている。」と記載されている。(21頁下から9〜22頁5行)
・「結晶化」の項には、「高分子物質のうちで、結晶性高分子とよばれるものは、適当な条件下では、分子の一部が規則正しく並んだ結晶を生ずる。すなわち、結晶化が起こる。結晶化を起こす適当な条件とは、希薄溶液を融点以下で放置するとか、溶融物(メルト)を冷却することなどである。また、特殊な場合として、天延ゴムやポリイソブチレンなどのように、伸長すると結晶化する場合がある。この現象を配向結晶化とよぶ。」と記載されている。(66頁下から10〜5行)
・「結晶性高分子」の項には、「適当な条件下(通常、常温常圧下)で結晶状態をとりうる高分子を結晶性高分子という。」と記載されている。(69頁2〜3行)
・「配向」の項には、「高分子物質を延伸したり圧延(ロール)したりすると分子鎖セグメントあるいは微結晶(クリスタリット)がある一定方向を向くようになる。このような現象を配向という。…。無定形高分子の場合に配向を決定するものは、分子鎖セグメントであり、…その向きによって無配向、1軸配向、2軸配向の3つに分類することができる。…。2軸配向とは、…シート状材料を互いに直角な方向に、同時に延伸するときに生ずる。」と記載されている。(189頁26行〜190頁7行)

(ii) 特許異議申立人内田照和が提出した甲第1〜8号証には、それぞれ、以下の事項が記載されている。
甲第1号証(特表平1-501847号公報)
特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第1号証参照

甲第2号証(特開平1-198553号公報)
特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第2号証参照

甲第3号証(特開昭63-68155号公報)
特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第10号証参照

甲第4号証(人工臓器、第16巻、第3号(昭和62年6月15日発行)、1419-1422頁)
特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第11号証参照

甲第5号証(特公昭41-2734号公報)
特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第3号証参照

甲第6号証(特開昭61-293445号公報)
特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第7号証参照

甲第7号証(特開昭59-97654号公報)
・「本発明は、L(-)ラクチドの非常に高分子量のポリマーから成る身体の骨固定用器具に関する。」(2頁右上欄4〜5行)
・「本発明の骨固定用器具は金属性骨固定用器具として通常用いられるものの形状乃至形態を有していればよい。それらは骨を嵌合し得るように近接して骨折を固定するために用いられるプレート、このプレートを骨に固着するために用いられるねじ、ワイヤー、棒、ピン、ステープル、ケーブルタイおよびクリップである。」(2頁右下欄5〜11行)

甲第8号証(筏義人ほか編「高分子事典」株式会社高分子刊行会(1971年2月20日発行)、21-22、66-67、189-191頁)
特許異議申立人相沢さつきが提出した参考資料6参照

(4)対比・判断
(a)特許異議の申立ての理由-特許法第29条第1項第3号又は第2項について
(i) 本件発明1について
特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第4号証(以下「刊行物4」という)に記載のシート、特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第12号証(以下「刊行物12」という)に記載のフィルム状又はシート状癒着防止材は、いずれも生体に吸収可能な重合体を材料とするものである。また、刊行物12のフィルム状又はシート状癒着防止剤において、ホットプレス法(実施例2)は、本件特許明細書の実施例1にいう「圧延」法に相当すると認められることから、「構造補強要素」が本件訂正前の請求項1にいう「配向された分子鎖もしくはその部分」に相当する。
すなわち、これらの刊行物には、重合体フィルムであって、該フィルムは生体に吸収可能であって、その少なくとも一部が生体に吸収可能な配向された構造補強要素で補強されており、該構造補強要素は、配向された分子鎖もしくはその部分、配向された結晶薄層、球晶、フィブリルもしくはその部分、繊維、フィルム、糸、コード、不織構造物、網織物、網、ニットもしくは織物または対応する構造補強要素の中の1または2以上のものから選ばれたものである重合体フィルムが記載されているものと認められ、訂正前の請求項1に係る発明は、刊行物4又は12に記載された発明といえる。
しかしながら、上述したように、訂正請求により、「重合体フィルム」の用途を「縫合糸により固定する手術用重合体フィルム」に限定すると共に、その構造補強要素が限定された結果、本件発明1は、特定の構造補強要素を有するフィルム、すなわち、織布によって補強されたフィルム、片面が溶融されたメリヤスからなるフィルム、又は、片面が溶融されたフェルトからなるフィルムであって、縫合糸により固定する手術用重合体フィルムとなった。
そして、刊行物4又は12のいずれにも、織布によって補強されたフィルム、片面が溶融されたメリヤスからなるフィルム、又は、片面が溶融されたフェルトからなるフィルムであって、縫合糸により固定する手術用重合体フィルムは記載も示唆もされていない。
また、特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第3号証(特許異議申立人内田照和が提出した甲第5号証に同じ。以下「刊行物3」という。)には、フィラメントを延伸して配向させた縫合糸が記載されているが、縫合糸により固定する手術用重合体フィルムは記載されていない。また、刊行物3には、フィラメントに代えてフィルムを延伸することもできるとの記載はあるが、これは、このように処理したフィルムを切って縫合糸とするものであり、フィルムを直接使用するものではないし、フィルムを更に構造補強要素で補強することは記載も示唆もされていない。
特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第5号証(以下「刊行物5」という)には、無毒で分解可能な重合体のマトリツクス及び体内において分解可能な無毒の繊維で作られた強化成分からなる骨固定要素用の生物的破壊性物質が記載されているが、刊行物5に記載された強化成分は繊維又は糸であって、織布、片面が溶融されたメリヤス、又は、片面が溶融されたフェルトではない。また、刊行物5にはピン、ステープル、ロッド、プレートといった骨固定要素は記載されているが、縫合糸により固定する手術用重合体フィルムは記載も示唆もされていない。
特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第6号証(以下「刊行物6」という)には、組織状態で少なくとも部分的に吸収可能である外科的接骨用複合材料において、上記接骨用材料はマトリックスとほぼ同じ化学成分百分組成を有している繊維、糸、撚糸、紐、膜、リボン、織物または類似の形態の可吸収性ポリマー補強ユニットで補強した可吸収性ポリマーまたはコポリマーマトリックスで形成されている接骨用器具の材料が記載されており、これらの材料で形成された接骨用複合材料は、3次元立体の形状の板、ピン、釘、骨髄ロッド、ねじ又は角材若しくはこれらの一部であることは記載されているが、縫合糸により固定する手術用重合体フィルムは記載も示唆もされていない。
特許異議申立人相沢さつきが提出した参考資料2(以下「刊行物14」という)には、生物分解性合成重合体のマトリックスを再吸収性繊維で補強した複合物からなる生物分解性人工装具が記載されており、また、特許異議申立人相沢さつきが提出した参考資料5(以下「刊行物16」という)には、強化繊維としてメタリン酸カルシウム、マトリックス材料としてポリD、L-乳酸を用いる繊維強化コンポジットからの骨折固定材が記載されているが、刊行物14に記載された構造補強要素はリン酸カルシウムの繊維、アルミ酸カルシウムの繊維等の再吸収性繊維であり、また、刊行物16に記載の構造補強要素も強化繊維であって、これらの刊行物に記載の構造補強要素は織布、片面が溶融されたメリヤス、又は、片面が溶融されたフェルトではない。
特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第7号証(特許異議申立人内田照和が提出した甲第6号証に同じ。以下「刊行物7」という。)に記載された発明は組織用フアスナーの発明であり、特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第8号証(以下「刊行物8」という)に記載された発明は骨接合板又はビーム及び取付素子を備えた骨折部を固定するための外科用器具の発明であり、特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第9号証(以下「刊行物9」という)に記載された発明は板状に成型して成る胸郭支持材の発明であり、甲第10号証(特許異議申立人内田照和が提出した甲第3号証に同じ。以下「刊行物10」という。)に記載された発明は骨接合ピンの発明であり、甲第11号証(特許異議申立人内田照和が提出した甲第4号証に同じ。以下「刊行物11」という。)には、肋骨骨折や離断時に用いる生体内吸収性肋骨接合ピンが記載されており、特許異議申立人相沢さつきが提出した参考資料1(以下「刊行物13」という)には、フイルム状またはシート状の徐放性成形薬材が記載されており、特許異議申立人相沢さつきが提出した参考資料4(以下「刊行物15」という)には、骨接合用材料として用いられるP-L-LAは、圧縮成形すれば力学的性質は向上するだろうと述べていることが記載されており、特許異議申立人相沢さつきが提出した参考資料6(特許異議申立人内田照和が提出した甲第8号証に同じ。以下「刊行物17」という。)には、高分子物質を延伸又は圧延すると分子鎖セグメント又は微結晶が配向することが記載されており、特許異議申立人内田照和が提出した甲第7号証(以下「刊行物18」という)に記載された発明は、非常に高分子量のL(-)ラクチドポリマーから成る骨固定用器具の発明である。しかし、これらの刊行物には縫合糸により固定する手術用重合体フィルムは記載も示唆もされていない。
これに対して、本件発明1は、縫合糸により固定する手術用重合体フィルムとして特定の構造補強要素を有するフィルム、すなわち、織布によって補強されたフィルム、片面が溶融されたメリヤスからなるフィルム、又は、片面が溶融されたフェルトからなるフィルムという構成を採用することにより、フィルムの引っ張り強度及び引き裂き強度の点において優れた効果を有するものである。(本件特許明細書の実施例3〜5参照)
したがって、本件発明1は、特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第3〜12号証及び参考資料1、2、4〜6に記載された発明ではなく、特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第3〜12号証及び参考資料1、2、4〜6、特許異議申立人内田照和が提出した甲第3〜8号証に記載された発明に基いてその出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、特許異議申立人相沢さつきが提出した参考資料3は、昭和63年10月21日に発行された公開特許公報であり、本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物ではないことから、特許法第29条第1項第3号にいう特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に該当しない。

(ii) 本件発明2〜8について
本件発明2〜8は、本件発明1をさらに限定するものであるから、上記(i)に述べた理由から明らかなように、特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第3〜12号証及び参考資料1、2、4〜6に記載された発明ではなく、特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第3〜12号証及び参考資料1、2、4〜6、特許異議申立人内田照和が提出した甲第3〜8号証に記載された発明に基いてその出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(b)特許異議の申立ての理由-特許法第29条の2について
(i)特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第1号証(特許異議申立人内田照和が提出した甲第1号証に同じ。以下「先願1」という。)について
先願1に掲載された特許出願人の名称は「マテリアルス コンサルタンツ オーワイ」であるが、当該出願人は1988年2月に改称により「ビオコン オーワイ」となった(平成14年1月25日付け「意見書(訂正拒絶理由通知)」に添付された企業登記簿謄本 参照)。すなわち、本件発明の出願の時点において、本件発明の特許出願人と先願1の特許出願人は同一の者であった。そうしてみると、特許法第29条の2但書きの規定により、先願1は特許法第29条の2にいう他の特許出願に該当しない。
そこで、本件発明1は先願1と同一であり、特許法第39条第1項の規定に違反してなされれたものであるかについて検討する。
先願1は、甲第1号証の対応する特許公報(特公平7-96024号公報)の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるが、先願1の特許請求の範囲中には、織布によって補強されたフィルム、片面が溶融されたメリヤスからなるフィルム、又は、片面が溶融されたフェルトからなるフィルムであって、縫合糸により固定する手術用重合体フィルムは記載されていない。(なお、先願1の明細書中にも、織布によって補強されたフィルム、片面が溶融されたメリヤスからなるフィルム、又は、片面が溶融されたフェルトからなるフィルムであって、縫合糸により固定する手術用重合体フィルムは記載されていない。)そうすると、本件発明1と先願1とは同一の発明であるとはいえない。また、本件発明2〜8は、本件発明1をさらに限定するものであるので、前記に述べた理由から明らかなように先願1とは同一ではない。

(ii)特許異議申立人相沢さつきが提出した甲第2号証(特許異議申立人内田照和が提出した甲第2号証に同じ。以下「先願2」という。)について
先願2の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された発明は、上記に摘記したように「粘度平均分子量が30万以上のポリ乳酸又は乳酸とグリコール酸との共重合体を、その融点以上、220℃以下の温度条件下に溶融成形、例えば押出成形、プレス成形すれば、溶融成形後の粘度平均分子量を20万以上に保つことができ、更にこれを60〜180℃の温度条件下に延伸すれば、圧縮曲げ強度が1.6×103kg/cm2以上、圧縮曲げ弾性率が5.0×102kg/mm2以上と強靱で、耐加水分解性にも優れたポリ乳酸系外科用材料」であるが、先願2の願書に最初に添付した明細書及び図面には、本件発明1を特定する事項である織布によって補強されたフィルム、片面が溶融されたメリヤスからなるフィルム、又は、片面が溶融されたフェルトからなるフィルムであって、縫合糸により固定する手術用重合体フィルムは記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は、先願2の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された発明と同一ではない。また、本件発明2〜8は、本件発明1をさらに限定するものであるので、前記に述べた理由から明らかなように、先願2の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された発明とは同一ではない。

(c)特許異議の申立ての理由-特許法第36条について
特許異議申立人相沢さつきは、明細書の記載不備について、本件特許明細書の10欄26〜29行の「本発明のフィルムを生安定繊維、繊維構造物、フィルム等の他の物質と組み合わせおよび(または)結合して、種々の異なる外科手術において所望の効果を得るようにすることもできる。」なる記載の技術内容が不明である旨の主張を行っているが、フィルムを他の物質を組み合わせたり結合する例は本件特許明細書の実施例3〜5に記載されているので、この記載が、本件発明1〜8を不明確にするものとは認められず、特許異議申立人相沢さつきの前記主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜8の特許を取り消すことはできない。

また、他に本件発明1〜8の特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
補強型生体機能材料用重合体フィルム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 手術用重合体フィルムであって、該フィルムは生体に吸収可能であって、その少なくとも一部が生体に吸収可能な配向された構造補強要素で補強されており、織布によって補強されたフィルム、片面が溶融されたメリヤスからなるフィルム、及び、片面が溶融されたフェルトからなるフィルムのいずれかであることを特徴とする縫合糸により固定する手術用重合体フィルム。
【請求項2】 前記フィルムの最大厚さが2000μmである請求の範囲第1項記載の手術用重合体フィルム。
【請求項3】 前記フィルムの少なくとも一部が、次の吸収性および(または)可溶性重合体:ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLLA、PDLLAのような)、グリコリド/ラクチド共重合体(PGA/PLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネート共重合体(PGA/TMC)、ポリーβ-ヒドロキシ酪酸(PHBA)、ポリ-β-ヒドロキシプロピオン酸(PHPA)、ポリ-δ-ヒドロキシ吉草酸(PHVA),PHBA/PHVA共重合体、ポリ-p-ジオキサン(PDS)、ポリ-1,4-ジオキサノン-2,5-ジオン、ポリエステルアミド(PEA)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ-δ-バレロラクトン、ポリカーボネート、シュウ酸のポリエステル、グリコールエステル、ジヒドロピラン重合体、ポリエーテルエステル、シアノ-アクリレートまたはキチン重合体の少なくとも1つで製造されている請求の範囲第1項または第2項に記載の手術用重合体フィルム。
【請求項4】 前記フィルムの少なくとも一部が配向された構造補強要素で補強されており、該構造補強要素は次の重合体:ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLLA,PDLLAのような)、グリコリド/ラクチド共重合体(PGA/PLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネート共重合体(PGA/TMC)、ポリーβ-ヒドロキシ酪酸(PHBA)、ポリ-β-ヒドロキシプロピオン酸(PHPA)、ポリ-δ-ヒドロキシ吉草酸(PHVA),PHBA/PHVA共重合体、ポリ-p-ジオキサン(PDS)、ポリ-1,4-ジオキサノン-2,5-ジオン、ポリエステルアミド(PEA)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ-δ-バレロラクトン、ポリカーボネート、シュウ酸のポリエステル、グリコールエステル、ジヒドロピラン重合体、ポリエーテルエステル、シアノ-アクリレートまたはキチン重合体の少なくとも1つから成る請求の範囲第1項乃至第3項のいずれか記載の手術用重合体フィルム。
【請求項5】 前記フィルムが、抗生物質、成長ホルモン、薬剤等の生理活性化学薬品(biofunctional chemical)、化学療法物質を含有する請求の範囲第1項乃至第4項のいずれか記載の手術用重合体フィルム。
【請求項6】 生体組織もしくは器官またはこれらの部分の支持またはこれらを相互に結合するための請求の範囲第1項乃至第5項のいずれか記載の手術用重合体フィルム。
【請求項7】 生体組織もしくは器官またはこれらの部分を互に分離するための請求の範囲第1項乃至第5項のいずれかに記載の手術用重合体フィルム。
【請求項8】 歯根膜の靱帯および(または)セメント質組織の管理成長を保護するための請求の範囲第1項乃至第5項のいずれか記載の手術用重合体フィルム。
【発明の詳細な説明】
本発明は、吸収性および(または)可溶性の重合体フィルムに関する。
フィルム(または膜)のような重合体製の生体機能材料(biomaterials)は種々の外科処置に適用可能である。多孔性または非多孔性の重合体フィルムは、例えば手術した内部器官の周囲に支持フィルムを組織接着剤により固定しまたは縫合することにより、手術または損傷を受けた組織、器官またはそれらの部分を外部から支持するのに適用される。多孔性または非多孔性のフィルムはまた炎症を起こした組織、器官またはその部分を周囲から分離して感染が拡がるのを阻止するのにも使用される。分離フィルムはまた細胞組織を互に分離し、同時に細胞成長をコントロールするのにも適用される。典型的な適用例は重合体フィルムを使用して感染により外科的に清浄にした歯根を歯茎の結合組織および上皮から分離することである。すると、歯根膜の靱帯とセメント質組織が治療中の歯根の表面で冠状方向に成長して、歯が再固定される。このようにして歯根膜構造が再生される(J.Gottlow,S.Nyman,J.Lindhe,T.Karring and J.Wennstrom,J.Clin.Periodontol.,13(1986)204)。
歯根膜の外科手術後、歯根表面を被覆する細胞組織には4つのタイプがある。非コントロール時には、最初に上皮が歯根表面に沿って成長し、歯の再固定を妨げる。また、歯茎の結合組織が歯根表面に固定することも可能である。しかし、セメント質または歯根膜の靱帯がないと、固定は弱く、固定がくずれることになる ( S.Nyman,T.Karring,J,Lindhe,and S.Planten,J.Clin.Periodontol.,7( 1980 ) 394;T.Karrig,F.Isidol,S.Nyman and J.Lindhe,J.Clin.Periodontol.,12(1985)51)。
セメント質および歯根膜の靱帯をつくる細胞の成長は遅いので、通常は歯茎組織および上皮より先に感染した歯根表面には成長しない。しかしながら、導入組織再生の研究によれば、歯根の表面をその治療中他の組織から分離しておくと、セメント質をつくる細胞が歯根の表面に成長しうることがわかった(S.Nyman,J.Gottlow,T.Karring and J.Lindhe.J.Clin.Periodontol.,9(1982)275)。
外科的使用に際し、歯茎結合組織と歯根間の保護層として作用する生安定フィルムが知られている。このようなフィルムは歯根の患部に保護空間を形成する。この空間内では歯根膜の靱帯の残存細胞が歯根の表面を選択的に被覆する。例えばコアーテックス(Gore-Tex)はこのような生安定フィルム材料である。これはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムであって、PTFE結節と該結節を相互に結合する微小フィブリル(fine fibrils)とから成る。しかし、このような生安定フィルムまたは膜は歯根の治療が終った後、手術により除去しなければならない。除去手術は通常最初の手術から1〜3ケ月後にしなければならない。これは患者にとって可成りの経済的負担であり、他のリスク(例えば感染)を伴うことを意味する。
歯根上にはセメント質の歯根膜の靱帯をつくる細胞の成長を保護する理想的なフィルムまたは膜は、吸収性および(または)可溶性(生分解性)のフィルムまたは膜であって、治療を妨げるような組織反応を引き起すことなく、生体細胞の物質代謝および(または)溶解により消化されるものである。
バイオ材料の専門家の間では、組織、器官またはそれらの部分を互いに分離しまたは手術もしくは損傷を受けた組織、器官またはそれらの部分を外部表面から支持するために、溶融成形法または溶液蒸発法により製造した吸収性フィルムを使用することが知られている。
したがって、ポリラクチドのクロロホルム溶液から蒸発法により製造したポリラクチドフィルムを使用して、歯根の治療表面を歯茎結合組織と上皮とから分離することが知られている。このような場合、歯根膜の靱帯とセメント質組織はポリラクチドフィルムの保護の下に冠状方向に成長し、新たな結合組織の固定が行われる(I.Magnusson,C.Batich and B.R.Collins,J.Periodontol.,January,1988,P.1)。しかし、このような重合体フィルムはその機械的強度(典型的引っ張り強度40〜60MPa)が弱い。そのために外科的使用に供するのは実際には困難である。このような困難とは、
例えば: 機械的に弱いフィルムは、外科手術の際に生体組織に埋設するときに容易に破れるか避けてしまう。他方、外科医が手術の際にフィルムの破損を確実に避けたいときには、厚いフィルム(典型的な厚さ50〜500μm)を使用しなければならない。このようなフィルムは堅いから、歯根の表面に固く固定するのは困難である。一方、このようなフィルムがあると、組織中に可成りの量の異物質が存在することになるから、異常体内反応(foreign body reaction)を起こし、少なくとも一部は治療を遅延、妨害または阻止するおそれがある。
機械的に弱いフィルムを例えば該フィルムを突き通す縫合糸により歯根表面に固定するのは困難である。これは、縫合糸がフィルム中の孔を通って引き出されたときに弱いフィルムをたやすく切断するからである。これにより、フィルムが破損し、手術の際に縫合が緩むおそれがある。
溶融成形法または溶液蒸発法で製造した吸収性重合体フィルムの機械的強度特性が弱い主要な原因は、溶融物の固化または溶液蒸発の際に、結晶化中の重合体が部分的に結晶、球晶構造に変換することである。従って、溶融成形法または溶液蒸発法により製造した部分結晶状の吸収性フィルムは、典型的に褶曲分子鎖薄層(folded molecular chain lamellae)(厚さ100〜300Å、幅約1μm)を形成し、これは無定形重合体で囲まれている。一方、この薄層はモザイク-様の褶曲連鎖ブロック(幅数百Å)で形成されている。該薄層は結合して典型的にはリボン-様の構造をなし、結晶核から成長して三次元の球-様の球晶構造となる。球晶構造の重合体材料は通常重合体の連鎖がある特定の方向に配向されることはないから、このような重合体材料の強度特性は弱いものである(例えば典型的引っ張り強度20〜60MPa)。
本発明においては、予期せぬことながら、独立請求項の特徴部分に記載した如く、吸収性および(または)可溶性のフィルム(または膜)を、少なくとも部分的に吸収性および(または)可溶性の配向した構造要素で補強すると、新規の強くかつ丈夫な吸収性および(または)可溶性のフィルムを製造することができ、該フィルムは組織、器官またはその部分を支持または結合しおよび(または)これらを互に分離するのに使用する既知の材料よりも使いやすいことが見出された。このようなフィルムは、例えば歯根表面の分離フィルムとして歯根膜の靱帯とセメント質組織の管理成長を保護するのに使用することができる。
ここで、配向構造要素とは、少なくとも部分的に配向された重合体分子鎖、それらの部分、配向された結晶状薄層、球晶またはそれらの部分、フィブリルなど、形態学上の構造-要素またはそれらの部分および繊維、フィルラメント、フィルム-ファイバー、糸、くみひも、不織構造物、網織物、網、ニットまたは織物構造物または対応する繊維構成物を意味する。
また、本発明では、方法に関する独立請求項の特徴部分で述べているように、少なくとも部分的に配向された吸収性フィルムを製造する方法を記載しており、該配向吸収フィルムは、材料中の構造補強要素の少なくとも一部を該材料の流動によりおよび(または)機械的変形により、あるいは吸収性および(または)可溶性組織、フィルム-ファイバーまたはこれらのものから成る構造物でできた連続的または非連続的なマトリックスを補強することにより、所望の方向に配向させて製造される。フィラメント、フィブリル、糸、不織構造体、網織物と網、ニットまたは織物構成物などの材料も使用することができる。
さらに、本発明では、本発明によるフィルムを外科用移植材(surgical implants)として組織および(または)器官および(または)その部分を互いに分離しまたは支持するのに使用することについても記載している。
以下、本発明を次の記述により詳細に説明する。添加図面について参照すると、
第1a図は一団の薄層のフィブリル構造への変換を示し、
第1b図はミクロフィブリル内および該フィブリル間の分子構造を示し、
第1c図はフィブリル化重合体の構造を模式的に示し、
第2図はフィブリル化構造にみられる構造単位を模式的に示し、
第3図は本発明によるフィルムの一実施例を示す断面図であり、
第4図は実施例で用いた試験方法の説明図である。
球晶状重合体システムの配向およびフィブリル化の方法は、熱可塑性繊維の製造に関連して深く研究されて来た。例えば、米国特許第3161709号には、3相延伸プロセス(three phases drawing process)により溶融成形したポリプロピレンフィラメントを高機械的強度をもつ繊維に変換する発明が記載されている。
フィブリル化のメカニズムの主な特徴の一つは次のとおりである(C.L.Choy et al,Polym.Eng.Sci.,23 1983,P.910)。半結晶状重合体を延伸すると、結晶薄層中の分子鎖はその延伸方向に速やかに整列する。同時に球晶は延伸されて遂には崩壊する。結晶ブロックは薄層から引きはがされて連鎖の部分褶曲から生じた結合-分子(tie-molecules)により緊張状態で結合される。無定形領域と結晶領域が交互になって緊張した結合-分子と共にその延伸方向に整列した長く薄い(約100Å幅)ミクロフィブリルを形成する。フィブリル内の結合-分子は結合ブロック間の内部表面に形成されるから、これらは主にミクロフィブリルの境界の外側に位置する。最初に等方性材料中では異なる薄層を結合していた結合-分子は今や異なるミクロフィブリルを結合している。つまり、それらは隣接するミクロフィブリル間の境界層に位置する内部フィブリルの結合-分子となったわけである。第1a図は延伸によって一団の薄層がフィブリル構造(一団のミクロフィブリルから成るフィブリル)に変換する説明図であり、第1b図はミクロフィブリル内および該フィブリル間の分子構造の説明図である。第1c図はフィブリル化重合体の構造の説明図である。本図は長さ数ミクロンの幾つかのミクロフィブリルから成るフィブリルの集り(その一つは明瞭にするため灰色にしてある)を示す。
フィブリル構造は比較的低い延伸比λ(ここで、λ=試料の延伸後の長さ/試料の延伸前の長さ)をもつ。例えば、HD-ポリエチレンはλ値8で明らかにフィブリル化され、同様にポリアセタール(POM)はλ値3である。
フィブリル化構造物の延伸をさらに続けると(この段階のプロセスはしばしば超-配向と称する)、フィブリル化構造はフィブリルのずり変位によって変形し、伸長された内部フィブリルの結合-分子の容積フラクションが増加する。延伸を高温で行なうと、完全に整列した結合-分子が結晶化されて、結晶ブロックを結合する軸方向の結晶状ブリッジを形成する。
フィブリル化構造のすぐれた強度と弾性率の値は、重合体分子と分子セグメントがその延伸方向に(ミクロフィブリルの長軸方向に)強く配向されていることに基づく。
第2図は、重合体繊維のフィブリル化構造およびさおや管などの巨視的なフィブリル化重合体試料の構造にみられる構造単位を模式的に示したものである。すなわち、相互に無定形物質により分離された結晶ブロック(例えば、フリーの重合体連鎖、連鎖端、および分子褶曲)、結晶ブロックを互に結合する結合-分子(結合-分子の量と厚さは延伸比λの増加と共に増加する)および結晶ブロック間の結晶状ブリッジである。ブリッジは、結合-分子が配向され、これらを集合してブリッジとなるときに、延伸の際に形成される(C.L.Choy et al,J.Polym.Sci.,Polym.Phys.Bd.,19 1981,P.335-352)。配向構造にはその配向方向に重合体連鎖の原子間の強い共有結合が多量に含まれているので、このような材料は、その配向方向に非配向材料よりも可成り高い強度をもつ。
第1図と第2図に示した配向フィブリル化構造は、いわゆる自然延伸比λ<8で進展する。延伸を高温での超配向のようにこの後でも続行すると、結晶状ブリッジの量が非常に増大して、極端な場合、ブリッジおよび結晶ブロックが連続的な結晶構造を形成する。結合-分子とブリッジの効果はしばしば類似しており、したがってこれらを正確に区別するのは困難である。
配向およびフィブリル化はいくつかの方法により実験的に特徴づけられている。配向関数fc、これはX線回折により測定されるものであるが、結晶相の分子鎖の配向を特徴づける。一般に自然延伸比(λ<6)で得られるfcは最大1である。結晶構造の重合体材料はfc<<1を示す。
偏光顕微鏡で測定される複屈折(Δ)は、分子鎖中の分子配向の量を示す。一般にこれは自然延伸比(λ<6)では強くなる。従って、超配向ではより緩慢になる。これは結晶相中の分子鎖が自然延伸比のときにはその延伸方向に配向され、連続的にさらに高い延伸比にすると、無定形相に分子が配向することを示す(C.L.Choy et al,Polym.Eng.Sci.,23 1983,P.910-922)。
単一配向に配向したフィルムに典型的なことは、その配向方向に直交する方向の強度特性がその配向方向に比べて弱いことである。従って、本発明の好ましい態様では、フィルムの配向をその面方向に対して2軸性に形成することであり、(a)圧延および/または延伸によって厚いフィルムをロール間で薄くすることにより、または(b)フィルムを同時に2方向(通常互に直交する方向)に延伸することにより行う。二次元配向により、フィルムの面において異なる方向に配向された補強構造要素がつくられる。これはまたフィルムの直交方向における強度特性を改善する。
本発明のフィルムの製造には他の配向方法も適用できる。例えば溶融した重合体を急速流動状態で結晶化させ、少なくとも部分的にその流動方向で凍結して固定フィルムとし、これを補強する方法である。
上記の方法のほか、補強構造要素が重合体マトリックス中にその変形中につくり出される場合には、先に製造した補強要素を用いて本発明のフィルムを補強することも可能である。典型的な構造要素には、吸収性および(または)可溶性の繊維、フィラメント、フィブリル、フィルム-ファイバー、糸、コード、不織構造物、ウェブおよび網織物、ニット、織物構造物またはこれらに相当する物がある。これらの場合、吸収性および(または)可溶性のフィルムは種々の異なる方法で製造できる。例えば、補強繊維またはその対応品とマトリックス重合体を形成するフィルムとを加熱加圧により圧縮すると、該繊維または対応する構造体で補強されたフィルムが得られる。また、繊維を重合体溶液に浸漬して、溶媒を少なくとも部分的に蒸発させ、繊維を加圧およびできれば加熱して繊維補強フィルムを製造することもできる。また、繊維構造物を少なくとも部分的に溶融して、該材料を少なくとも部分的に圧縮して自己補強型フィルムとすることもできる。上記のフィルムはすべて、強くかつ配向された構造要素の故に非配向フィルムよりも一層良好な強さ(toughness)と機械的特性を有する。
無定形の吸収性および(または)可溶性重合体を配向しても部分的に結晶化したフィルムを比べて強度はそれ程大きくならない。しかしながら、無定形フィルムを機械的に変形すると、その変形方向の強さが増大する。これは分子鎖がその場合にも配向されるためである。しかし、本発明の実施例で示すように、無定形吸収性フィルムを吸収性フィルムまたは対応する構造体で補強したときは、とくに強い補強効果が得られる。
表1は本発明のフィルム製造に原料(配向構造要素およびフィルムマトリックスのいずれも可)として使用できる吸収性および(または)可溶性の重合体を示す。フィルムは有孔でなくとも有孔であってもよく、(a)重合体製造技術で既知の方法、例えば気体または易蒸発性溶媒などの異なる添加物を加える方法、(b)フィルムを主に繊維状構造ユニットで形成する方法または(c)フィルム穿孔方法(フィルムに孔をあける)によりつくることができる。


自明であるが、表1以外の吸収性および(または)可溶性重合体も本発明によるフィルムの製造に使用することができる。
本発明のフィルムまたはその一部を構成する構造のなかに、種々の生理活性添加剤、例えば抗生物質、成長ホルモン、薬剤、止血性化学物質および(または)歯の治療に有効な治療成分を含ませることができる。
また、本発明のフィルムを生安定繊維、繊維構造物、フィルム等の他の物質と組み合わせおよび(または)結合して、種々の異なる外科手術において所望の効果を得るようにすることもできる。
一つの好ましい態様として、本発明のフィルムは、非多孔性の外部表面と、少なくとも部分的に多数の閉鎖孔(closed porosity)をもつ中間層とからつくられる(第3図)。かかるフィルムは可撓性で機械的に強く、フィルム内部の孔は少なくとも一部に抗生物質、薬剤、成長ホルモン、止血性添加物、化学療法物質等の生理活性物質が充填され、これはフィルムから周囲の組織に吸収がコントロールされる。
以下、本発明を実施例により説明するが、これらに限定されるものではない。
実施例1
単軸スクリュー押出機(a single screw extruder)(スクリュー直径25mm)を用いて、吸収性および可溶性重合と重合体混合物とから平らなフィルムをスロット-ダイ(スロット幅20mm,高さ0.4mm)を使用することにより製造した。このフィルムを窒素気流中で冷却し、(a)加熱ロール間で厚さ2μm〜40μmあに圧延し、または(b)該フィルムを同時にフィルムの製造方向に直交して延伸することにより2軸配向した。圧延温度および延伸温度はガラス転移温度よりも高くかつ材料および材料混合物の融点よりも低い温度で行った。変形度は延伸比1.5〜4の間であった。吸収性および(または)可溶性材料でつくった配向フィルムを表2に掲げた。配向フィルムと対応する非配向フィルムの引っ張り強度を比較した。こえをベースにして配向フィルムの引っ張り強度を決定した。(R.T.S.=配向フィルムの配向方向での引っ張り強度/非配向フィルムの引っ張り強度)。

マルチフィラメント製縫合糸(デキソン(DexonR)、サイズO(USP)、製造社Davis & Geck,Gosport,英国)の引き裂き効果をその配向および非配向フィルムについて調べるため、該フィルムに端から10mmのところに針で小孔をあけ、この小孔に縫合糸を通し、これを結んで輪をつくり、この縫合糸の輪をフィルムから引き裂いて抜いた(第4図)。
配向フィルムの比引き裂き強度(R.Tr.S)は次式で定義される。

表2には、調べた材料、配向フィルムの厚さ、比引っ張り強度および比引き裂き強度が示してある。
表2は配向フィルムの引っ張りおよび引き裂き強度が非配向フィルムのそれよりもすぐれていることを示す。
実施例2
表2のPGA,PGA/PLLA,PGA/TMC,PLLAおよびPDS重合体を使用していわゆるブロー-フィルム法(blow-fillm technique)により、材料を単軸スクリュー押出機により溶融し、これを加圧して環状のダイを通して管状(直径60mm,壁の厚さ0.4mm)に成形し、材料を該材料の固化時に内部から加圧(internal over-pressure)して材料を2軸方向に配向(配向フィルムの厚さ40μ〜80μm)することによって配向吸収フィルムを製造した。
配向フィルムの比引き裂き強度は約3倍であった。
実施例3
くみひもに編んだ吸収性繊維または縫合糸(厚さ20μm〜400μm)を平織り状の粗い織物にした。この織物を細かく切って(20mm×80mm)、その細片を吸収性および(または)可溶性重合体の溶融または溶液蒸発法により製造した吸収性および(まはは)可溶性フィルムと一緒に圧縮した。圧縮中、圧力(80MPa)をかけ、加熱(もし必要であれば)した。圧縮条件は、フィルム材料が軟化しおよび(または)溶融して繊織を濡らすように選択した。繊維補強フィルム(厚さ30〜2000μm)の比引っ張り強度を測定し、非補強マトリックス重合体フィルム(実施例1による)と比較した。表3には、試験したマトリックス重合体、補強繊維および配向フィルムの比引っ張り強度(R.T.S)を示した。
補強および非補強型フィルムの引き裂き強度を実施例1の方法に従って測定した。PHBAおよびPHBA/HVA繊維で繊維補強を行なったものは、繊維-補強フィルムの比引き裂き強度が8〜20であった。PGA,PGA/TMC,PGA/PLLA,PLLAおよびPDS繊維で補強した吸収性フィルムの場合には、フィルム全体が破れる前に引き裂きを行っている縫合糸が切れた。
実施例3の測定結果は、補強フィルムの引っ張りおよび引き裂き強度が非補強フィルムよりもすぐれていることを示す。

実施例4
吸収性繊維とモノフィラメント縫合糸でくみひもにした縫合糸を用いて、針編み(knitting)によりコットンニットタイプのメリヤス(knit fabric)を製造した。このメリヤスの片面を熱した鉄板に押し付けて他の面が溶融しないで残るようにして溶融した。このようにして製造した自己補強型吸収性フィルムの比引っ張り強度と比引き裂き強度を測定して非配向の溶融-成形により製造した対応するフィルムのそれと比較した。後者のフィルムは、前記メリヤスを2つの加熱鉄板の間に挟んで全面的に溶融することにより製造した。試験した材料を表4に示した。自己補強型フィルムの比引っ張り強度と比引き裂き強度を表4に示した。

実施例5
PGA-,PGA/PLLA,PLLA-およびPDLLA-繊維(厚さ10〜80μm)を長さ20mmの片に切断した。切断した繊維を吸引して孔あき表面上に集めて厚さ約200μmの不織フェルトを形成した。このフェルトを機械的に圧縮(圧力80MPa)してタイトフィルム(または膜)(厚さ約100μm)に成形し、これらを加熱板により片面を溶融した。この補強フィルムの全面的に溶融した非配向の対応するフィルムに対する比引っ張り強度は1.5〜3であり、比引き裂き強度は4〜7であった。
実施例6
実施例5のPGA-,PGA/PLLA-およびPLLA-繊維を微粉砕したPDLLA-粉末(粒子径約1μm)に対して各10重量%となるように混合することにより一緒にして、繊維粉末混合物を150℃で圧縮することにより多孔性の不織フィルムをつくった。ここで、PLLAは結合材として作用し非連続的マトリックスを形成する。これらのフィルムの全面的に溶解した対応するフィルムに対する比引っ張り強度と比引き裂き強度は2と8の間にあった。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
・訂正事項1
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1が「重合体フィルムであって、該フィルムは生体に吸収可能であって、その少なくとも一部が生体に吸収可能な配向された構造補強要素で補強されており、該構造補強要素は、配向された分子鎖もしくはその部分、配向された結晶薄層、球晶、フィブリルもしくはその部分、繊維、フィルム、糸、コード、不織構造物、網織物、網、ニットもしくは織物または対応する構造補強要素の中の1または2以上のものから選ばれたものであることを特徴とする重合体フィルム。」とあるのを、「手術用重合体フィルムであって、該フィルムは生体に吸収可能であって、その少なくとも一部が生体に吸収可能な配向された構造補強要素で補強されており、織布によって補強されたフィルム、片面が溶融されたメリヤスからなるフィルム、及び、片面が溶融されたフェルトからなるフィルムのいずれかであることを特徴とする縫合糸により固定する手術用重合体フィルム。」と訂正する。
・訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2、請求項7及び請求項8を削除する。
・訂正事項3
特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項3が「前記フィルムの最大厚さが2000μmである請求の範囲第1項または第2項記載の重合体フィルム。」とあるのを、「前記フィルムの最大厚さが2000μmである請求の範囲第1項記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項2とする。
・訂正事項4
特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項4が「前記フィルムの少なくとも一部が、次の吸収性および(または)可溶性重合体:ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLLA、PDLLAのような)、グリコリド/ラクチド共重合体(PGA/PLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネート共重合体(PGA/TMC)、ポリーβ-ヒドロキシ酪酸(PHBA)、ポリ-β-ヒドロキシプロピオン酸(PHPA)、ポリ-δ-ヒドロキシ吉草酸(PHVA),PHBA/PHVA共重合体、ポリ-p-ジオキサン(PDS)、ポリ-1,4-ジオキサノン-2,5-ジオン、ポリエステルアミド(PEA)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ-δ-バレロラクトン、ポリカーボネート、シュウ酸のポリエステル、グリコールエステル、ジヒドロピラン重合体、ポリエーテルエステル、シアノ-アクリレートまたはキチン重合体の少なくとも1つで製造されている請求の範囲第1項乃至第3項のいずれか記載の重合体フィルム。」とあるのを、「前記フィルムの少なくとも一部が、次の吸収性および(または)可溶性重合体:ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLLA、PDLLAのような)、グリコリド/ラクチド共重合体(PGA/PLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネート共重合体(PGA/TMC)、ポリーβ-ヒドロキシ酪酸(PHBA)、ポリ-β-ヒドロキシプロピオン酸(PHPA)、ポリ-δ-ヒドロキシ吉草酸(PHVA),PHBA/PHVA共重合体、ポリ-p-ジオキサン(PDS)、ポリ-1,4-ジオキサノン-2,5-ジオン、ポリエステルアミド(PEA)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ-δ-バレロラクトン、ポリカーボネート、シュウ酸のポリエステル、グリコールエステル、ジヒドロピラン重合体、ポリエーテルエステル、シアノ-アクリレートまたはキチン重合体の少なくとも1つで製造されている請求の範囲第1項または第2項に記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項3とする。
・訂正事項5
特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項5が「前記フィルムの少なくとも一部が配向された構造補強要素で補強されており、該構造補強要素は次の重合体:ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLLA,PDLLAのような)、グリコリド/ラクチド共重合体(PGA/PLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネート共重合体(PGA/TMC)、ポリーβ-ヒドロキシ酪酸(PHBA)、ポリ-β-ヒドロキシプロピオン酸(PHPA)、ポリ-δ-ヒドロキシ吉草酸(PHVA),PHBA/PHVA共重合体、ポリ-p-ジオキサン(PDS)、ポリ-1,4-ジオキサノン-2,5-ジオン、ポリエステルアミド(PEA)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ-δ-バレロラクトン、ポリカーボネート、シュウ酸のポリエステル、グリコールエステル、ジヒドロピラン重合体、ポリエーテルエステル、シアノ-アクリレートまたはキチン重合体の少なくとも1つから成る請求の範囲第1項乃至第4項のいずれか記載の重合体フィルム。」とあるのを、「前記フィルムの少なくとも一部が配向された構造補強要素で補強されており、該構造補強要素は次の重合体:ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド(PLLA,PDLLAのような)、グリコリド/ラクチド共重合体(PGA/PLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネート共重合体(PGA/TMC)、ポリ-β-ヒドロキシ酪酸(PHBA)、ポリ-β-ヒドロキシプロピオン酸(PHPA)、ポリ-δ-ヒドロキシ吉草酸(PHVA),PHBA/PHVA共重合体、ポリ-p-ジオキサン(PDS)、ポリ-1,4-ジオキサノン-2,5-ジオン、ポリエステルアミド(PEA)、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ-バレロラクトン、ポリカーボネート、シュウ酸のポリエステル、グリコールエステル、ジヒドロピラン重合体、ポリエーテルエステル、シアノ-アクリレートまたはキチン重合体の少なくとも1つから成る請求の範囲第1項乃至第3項のいずれか記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項4とする。
・訂正事項6
特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項6が「前記フィルムが、抗生物質、成長ホルモン、薬剤等の生理活性化学薬品(biofunctional chemical)、化学療法物質を含有する請求の範囲第1項乃至第5項のいずれか記載の重合体フィルム。」とあるのを、「前記フィルムが、抗生物質、成長ホルモン、薬剤等の生理活性化学薬品(biofunctional chemical)、化学療法物質を含有する請求の範囲第1項乃至第4項のいずれか記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項5とする。
・訂正事項7
特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項9が「生体組織もしくは器官またはこれらの部分の支持またはこれらを相互に結合するための請求の範囲第1項乃至第8項のいずれか記載の重合体フィルム。」とあるのを、「生体組織もしくは器官またはこれらの部分の支持またはこれらを相互に結合するための請求の範囲第1項乃至第5項のいずれか記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項6とする。
・訂正事項8
特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項10が「生体組織もしくは器官またはこれらの部分を互に分離するための請求の範囲第1項乃至第8項のいずれかに記載の重合体フィルム。」とあるのを、「生体組織もしくは器官またはこれらの部分を互に分離するための請求の範囲第1項乃至第5項のいずれかに記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項7とする。
・訂正事項9
特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項11が「歯根膜の靱帯および(または)セメント質組織の管理成長を保護するための請求の範囲第1項乃至第8項のいずれか記載の重合体フィルム。」とあるのを、「歯根膜の靱帯および(または)セメント質組織の管理成長を保護するための請求の範囲第1項乃至第5項のいずれか記載の手術用重合体フィルム。」と訂正し、請求項8とする。
異議決定日 2002-06-20 
出願番号 特願平1-506539
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A61L)
P 1 651・ 16- YA (A61L)
P 1 651・ 531- YA (A61L)
P 1 651・ 113- YA (A61L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐野 整博河野 直樹  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 大宅 郁治

深津 弘
登録日 1999-04-02 
登録番号 特許第2909116号(P2909116)
権利者 ビオンクス インプランツ オーワイ
発明の名称 補強型生体機能材料用重合体フィルム  
代理人 瀧野 秀雄  
代理人 伊藤 穣  
代理人 越智 浩史  
代理人 瀧野 秀雄  
代理人 越智 浩史  

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