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審決分類 審判 全部申し立て 出願日、優先日、請求日  F23C
審判 全部申し立て 2項進歩性  F23C
管理番号 1064373
異議申立番号 異議2001-72727  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-10-01 
確定日 2002-07-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3153091号「廃棄物の処理方法及びガス化及び熔融燃焼装置」の請求項1ないし22に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3153091号の請求項1ないし22に係る特許を維持する。 
理由 1. 手続の経緯
本件特許第3153091号の請求項1〜22に係る発明についての出願は、出願日が平成6年3月10日である平成6年特許願第65439号及び出願日が平成6年4月15日である平成6年特許願第101541号を先の出願とする優先権の主張を伴って、平成7年2月9日に出願され、平成13年1月26日にそれら発明についての特許の設定登録がされ、その後、平成13年10月1日に、川崎重工業株式会社より特許異議の申立がなされ、平成13年10月3日に、谷内啓子より特許異議の申立がなされるとともに、同日佐藤喜久雄より特許異議の申立がなされ、そして、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年2月25日に訂正請求がなされたものである。

2. 訂正の適否についての判断
2-1 特許権者の求めている訂正
特許権者が求めている訂正は、平成14年2月25日付け訂正請求書に記載された、以下のとおりのものである。

2-1-1 特許請求の範囲の記載に関して
訂正事項1
請求項1に記載の、「・・炉内を450℃〜650℃に維持し、ガス化してガスとチャーを生成し、該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを旋回熔融炉に供給して・・」を「・・炉内を450℃〜650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して・・」と訂正する。

訂正事項2
請求項10に記載の、「・・炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し、前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスとチャーを燃焼して・・」を「・・炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して・・」と訂正する。

訂正事項3
請求項16に記載の、「・・該廃棄物を該流動層炉に供給し、ガス化してガスとチャーを生成し、該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを旋回熔融炉に供給して・・」を「・・該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して・・」と訂正する。

訂正事項4
請求項19に記載の「・・該廃棄物を該流動層炉に供給し、ガス化してガスとチャーを生成し、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを旋回熔融炉に供給して・・」を「・・該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して・・」と訂正する。

2-1-2 発明の詳細な説明の記載に関して
訂正事項5
段落番号【0009】に記載の「【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明の廃棄物の処理方法の1態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、炉内を450℃〜650℃に維持し、ガス化してガスとチャーを生成し、該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
更に、前記流動媒体の循環流は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成される。
前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは、ともに空気である。
また、前記流動層炉へ供給される流動化ガスは、廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含む。
また、前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出する。
更に、前記流動媒体は砂である。
本発明のガス化及び熔融燃焼装置は、廃棄物をガス化する流動層炉と、該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において、前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え、該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し、炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し、前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスとチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成される。
前記流動化ガス供給手段は、質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と、質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなる。
更に、前記熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり、該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ、該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され、前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出する。
本発明の廃棄物の処理方法の他の態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、ガス化してガスとチャーを生成し、該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
本発明の廃棄物の処理方法の更に他の態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり、該廃棄物を該流動層炉に供給し、ガス化してガスとチャーを生成し、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉の炉内は、450℃〜650℃に維持される。
また、前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
更に、前記不燃物と流動媒体は、前記炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、該不燃物と該流動媒体は分別される。
本発明においては、可燃物が流動層炉で可燃ガスにガス化される。本発明の方法において、流動層炉の水平断面がほぼ円形にされ、流動層炉へ供給される流動化ガスが、炉底中央部付近から炉内へ供給される中央流動化ガス及び炉底周辺部から炉内へ供給される周辺流動化ガスから成り、中央流動化ガスの質量速度が、周辺流動化ガスの質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように傾斜壁により転向され、それによって、炉の中央部に流動媒体(一般的には、硅砂を使用)が沈降拡散する移動層が形成されると共に炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成され、炉内へ供給される可燃物が、移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ、流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化され、中央流動化ガスの酸素含有量が、周辺流動化ガスの酸素含有量以下であり、流動層の温度が450〜650℃に維持される。」を「【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明の廃棄物の処理方法の1態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、炉内を450℃〜650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
更に、前記流動媒体の循環流は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成される。
前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは、ともに空気である。
また、前記流動層炉へ供給される流動化ガスは、廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含む。
また、前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出する。
更に、前記流動媒体は砂である。
本発明のガス化及び熔融燃焼装置は、廃棄物をガス化する流動層炉と、該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において、前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え、該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し、炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成される。
前記流動化ガス供給手段は、質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と、質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなる。
更に、前記熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり、該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ、該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され、前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出する。
本発明の廃棄物の処理方法の他の態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
本発明の廃棄物の処理方法の更に他の態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり、該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉の炉内は、450℃〜650℃に維持される。
また、前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
更に、前記不燃物と流動媒体は、前記炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、該不燃物と該流動媒体は分別される。
本発明においては、可燃物が流動層炉で可燃ガスにガス化される。本発明の方法において、流動層炉の水平断面がほぼ円形にされ、流動層炉へ供給される流動化ガスが、炉底中央部付近から炉内へ供給される中央流動化ガス及び炉底周辺部から炉内へ供給される周辺流動化ガスから成り、中央流動化ガスの質量速度が、周辺流動化ガスの質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように傾斜壁により転向され、それによって、炉の中央部に流動媒体(一般的には、硅砂を使用)が沈降拡散する移動層が形成されると共に炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成され、炉内へ供給される可燃物が、移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ、流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化され、中央流動化ガスの酸素含有量が、周辺流動化ガスの酸素含有量以下であり、流動層の温度が450〜650℃に維持される。」と訂正する。

2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
特許明細書の請求項1、10,16,19には、それら発明を特定する構成の一部として「ガス化」と記載されており、同明細書の段落番号【0021】には、「ガス化」に係る技術的事項として、「本発明においては、・・炉内へ供給された可燃物は、移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ、流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化される。可燃物は、最初に、炉中央の下降する移動層の中で、主として揮発分が流動媒体(一般的には、硅砂を使用)の熱によりガス化される。そして、移動層を形成する中央流動化ガスの酸素含有量が、小さため、移動層内で生じた可燃ガスは、ほとんど燃焼されずに中央流動化ガスと共にフリーボードへ上昇され、発熱量の高い良質の生成ガスとなる。」と記載されているのであるから、それら各請求項の「ガス化」なる構成を「流動層炉内の循環流中で」なる技術的事項で限定することは、特許明細書中に記載された技術的事項により、特許請求の範囲に記載された構成を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮に該当するものであって、新規事項を追加するものではなく、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、同じく特許明細書の請求項1、10,16,19には、それら発明の構成の一部として「チャー」と記載されており、同明細書の【請求項1】に「廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、炉内を450℃〜650℃に維持し、ガス化してガスとチャーを生成し、・・」と流動層炉の循環流中で「チャー」が生成されることが記載されている。一方、特許明細書の段落番号【0023】に、「本発明においては、流動層炉において生成されたガス及び灰分その他の微粒子を熔融燃焼炉において燃焼させる場合、生成ガスが高可燃分を含むので、加熱用燃料を必要とすることなく、・・」と流動層炉において生成されるものとして、「ガス」、「灰分」及び「その他の微粒子」と記載されるとともに、段落番号【0019】に、「本発明の装置は、流動層炉において発生された可燃ガス及び微粒子を高温燃焼させ灰分を熔融させる熔融燃焼炉を含むことができる。・・」、及び、段落番号【0015】に、「・・流動層炉で生成された可燃ガス及び微粒子が熔融燃焼炉で1300℃以上で高温燃焼され、灰分が熔融される。・・」と記載され、同一のものに対して、「チャー」と「微粒子」と統一を欠く用語が用いられていることから、明細書中の記載が一部不明瞭であるところ、本件特許明細書中に記載の「チャー」は、循環流中で微粒子となったもののみが旋回熔融炉に供給されるものとしてのみ開示されていることを明瞭とするために、各請求項に記載の「チャー」を、「該チャーを該循環流中で微粒子とし、」及び「該微粒子となったチャー」とすることは、不明瞭な記載を単に釈明するものであり、新規事項を追加せず、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1〜4は、特許明細書の請求項1、10、16,19に記載された構成を、特許明細書に記載された技術的事項事項により限定することにより、特許請求の範囲を減縮するとともに、不明瞭な記載を釈明するものであり、新規事項を追加せず、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

また、訂正事項5は、上記の訂正事項1〜4に合わせ、不明瞭となる記載を釈明するものであり、新規事項を追加せず、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-3 むすび
上記訂正は、特許異議の申立がなされていない請求項に係るものではなく、以上のとおり、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3 特許異議申立に対する判断
3-1 申立て理由の概要
3-1-1 異議申立人川崎重工業株式会社の申立て理由の概要
3-1-1-1 異議申立人川崎重工業株式会社の申立て理由1
異議申立人川崎重工業株式会社は、特許明細書の請求項1,10,16に記載の「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、」、及び、特許明細書の請求項3,12,17,19に記載の「流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する」は、平成12年10月5日付け手続補正書による補正により新たに記載された事項であり、「循環流」なる概念及び、「流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する」なる事項は、願書に添付された明細書又は図面に記載された事項から直接的、かつ、一義的に導き出せる事項ではないので、それら請求項の発明に係る特許は、特許法第17条第2項に規定する要件を満たしていない補正がなされた特許出願として拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。

3-1-1-2 異議申立人川崎重工業株式会社の申立て理由2
異議申立人川崎重工業株式会社は、
甲第1号証として、特公昭62-35004号公報を、
甲第2号証として、特開昭57-124608号公報を、
甲第3号証として、特開平2-147692号公報を、
甲第4号証として、特開昭54-43902号公報を、
甲第5号証として、特開平3-36413号公報を、
甲第6号証として、「マルチソリッド型循環流動層ボイラにおけるデンスベッドの特性について」循環流動層に関するシンポジウム論文集(1987) 第56〜59頁
を提出して、概略以下の主張をなしている。
甲第1号証(特公昭62-35004号公報)には、実質的に、都市ごみ、廃プラスチック等の廃棄物を流動層炉に供給し、炉内で熱分解(ガス化)してガスとチャーを生成させ、流動層炉より排出されたガスとチャーを旋回溶融炉に供給して灰分を溶融してスラグ化することが示されており、
甲第2号証(特開昭57-124608号公報)には、流動層炉内の中央部に下降移動層が形成され、炉内周辺部に流動層が形成され、流動媒体が炉内周辺部上方で反射転向して炉中央部の頂部に落下し、炉中央部の移動層を流動媒体が沈降して炉周辺部の流動層に移動し、流動媒体が炉周辺部を上昇して循環すること、炉底の両側縁部における流動化ガスの質量速度を流動層を形成するのに十分な大きさとし、炉底中央部付近における流動化ガスの質量速度をそれより小さくし、炉底中央部に流動媒体が沈降する移動層を形成させ、両側縁部には流動媒体が活発に流動化している流動層を形成させ、流動媒体を両側縁流動層の上方において炉中央に転向させて移動層内を沈降させ、移動層の下部で両側縁流動層に移行させて循環させること、流動層炉底部の不燃物排出装置12から不燃物と流動媒体を排出し、振動篩13で不燃物と流動媒体を分別した後に流動媒体をエレベータ15で流動層炉に戻すこと、及び、流動層炉底部の不燃物排出装置(スクリューコンベヤ)12から不燃物と流動媒体を排出し、振動篩13で不燃物と流動媒体を分別することが記載され、
甲第3号証(特開平2-147692号公報)には、流動層を用いた石炭等のガス化炉において、流動層炉内の中央部に下降移動層が形成され、炉内周辺部に流動層が形成され、流動媒体が炉内周辺部上方で反射転向して炉中央部の頂部に落下し、炉中央部の移動層を流動媒体が沈降して炉周辺部の流動層に移動し、流動媒体が炉周辺部を上昇して循環すること、炉底の両側縁部における流動化ガスの質量速度を流動層を形成するのに十分な大きさとし、炉底中央部付近における流動化ガスの質量速度をそれより小さくし、炉底中央部に流動媒体が沈降する移動層を形成させ、両側縁部には流動媒体が活発に流動化している流動層を形成させ、流動媒体を両側縁流動層の上方において炉中央に転向させて移動層内を沈降させ、移動層の下部で両側縁流動層に移行させて循環させること、流動層ガス化炉に空気とスチームの混合物等を流動化ガスとして供給すること、及び、流動層炉底部のスクリューコンベヤ32から不燃物と流動媒体を排出することが記載され、
甲第4号証(特開昭54-43902号公報)には、「流動層内は所定温度500℃ないし650℃に保たれており」と記載され、かつ、「都市ごみ等の固形廃棄物の熱分解温度は一般に400〜800℃の領域にあると言われる。しかしチャーの生成率は温度が低い程大きい。このためチャーの生成率を考慮すると、500〜650℃の領域が本発明における好ましい分解温度域と言える。」と記載されている。
また、甲第5号証(特開平3一36413号公報)には、ストレート状円筒部の接線方向に開ロする被溶融物供給ロと燃焼用空気吹込ロを上部に備え且つ出ロ部を下部に備えた第1段旋回溶融室、該第1段旋回溶融室の下端部に傾斜して配置し且つ前記出口部と連通する入ロ部とストレート状円筒部の接線方向に燃焼用空気吹込ロとを上部に及び該円筒部の出口部を下部に設けた第2段旋回溶融室、並びに前記各旋回溶融室の各上部に前記各円筒部の接線方向にそれぞれ配備した各燃焼用バーナからなる多段式旋回溶融炉が記載されており、
甲第6号証(「マルチソリッド型循環流動層ボイラにおけるデンスベッドの特性について」循環流動層に関するシンポジウム論文集 1987)には、「図に示すようにデンスベッド内に壁際に下降流、中央部に上昇流となる内部循環流が生ずる。
一方、デンスベッド上部の壁際に形成される循環粒子のダウンフローが、この内部循環流に同伴されて下降し、デンスベッド内で激しく、撹拌・混合される。」と記載されている。
そして、本件特許の請求項1、10、16に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件特許の請求項1、10の「炉内を450℃〜650℃に維持し」という構成は、甲第4号証に「500〜650℃」と記載されているように、周知の事項であり格別のものではく、請求項1、10の「1300℃以上にて灰分を熔融し」という構成は、灰分を溶融するのに必要な温度から必然的に導き出せる事項であって何ら格別のものでなく、さらに、甲第1号証の「サイクロン燃焼炉」は、構成及び作用・機能等から判断して「旋回溶融炉」といえるものであり、旋回溶融炉自体も甲第5号証に「多段式旋回溶融炉」が開示されているように公知であることを前提とすれば、甲第1号証には、本件特許の請求項1、10、16に係る発明を特定する事項のうち、「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、」という構成を除くすべての構成が開示されている。
そして、この構成については、甲第2号証に、流動層を用いた都市ごみ等の焼却炉、熱分解炉において、流動層炉内の中央部に下降移動層が形成され、炉内周辺部に流動層が形成され、流動媒体が炉内周辺部上方で反射転向して炉中央部の頂部に落下し、炉中央部の移動層を流動媒体が沈降して炉周辺部の流動層に移動し、流動媒体が炉周辺部を上昇して循環するということが記載され、甲第3号証に、流動層を用いた石炭等のガス化炉において、流動層炉内の中央部に下降移動層が形成され、炉内周辺部に流動層が形成され、流動媒体が炉内周辺部上方で反射転向して炉中央部の頂部に落下し、炉中央部の移動層を流動媒体が沈降して炉周辺部の流動層に移動し、流動媒体が炉周辺部を上昇して循環するということが記載され、また、甲第6号証にも、流動層炉内の周辺部に下降流、炉内中央部に上昇流となる内部循環流が記載されているので、本件特許の請求項1、10、16に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証〜甲第6号証に記載されたものを適用して、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件の請求項19に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件の請求項19に係る発明は、「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり、」という構成(構成要件a)、及び「該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、」という構成(構成要件b)を有する点で甲第1号証のものと相違するが、構成要件aについては、甲第2号証、甲第3号証に記載されており、公知の事項に過ぎないものであり、構成要件bについては、甲第2号証(第1図)に「流動層炉底部の不燃物排出装置12から不燃物と流動媒体を排出し、振動篩13で不燃物と流動媒体を分別した後に流動媒体をエレベータ15で流動層炉に戻す」という構成が開示されており、公知の事項に過ぎないものであから、本件の請求項19に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証に記載されたものを適用して、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、残余の請求項に係る発明も、以下のとおり、甲各号証に記載されたのものから、当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件特許の請求項20に係る発明は、「流動層炉の炉内は、450℃〜650℃に維持される」という構成を有するが、甲第4号証に「500〜650℃」と記載されていることからもわかるように、周知事項であるから、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証〜甲第5号証に記載されたものを適用して、当業者が容易をすることができたものである。
本件請求項2、11、21に係る発明は、「流動層温度が450℃〜650℃に維持される」という構成を有するが、甲第4号証には「流動層内は500〜650℃に保たれており」と記載されており、上記構成は何ら格別のものでない。
本件請求項3、12、17に係る発明は、「流動媒体の循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が移動層及び流動層を通り循環する」という構成を有するが、甲第2号証、甲第3号証に記載されるものであり、同構成は何ら格別のものではない。
本件請求項4、5、13、14、18に係る発明は、流動媒体の循環流を質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスとで形成させるという構成を有するが、甲第2号証、甲第3号証に記載されており、上記構成が何ら格別のものでない。
本件請求項6に係る発明は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスをともに空気とする構成を有するが、これは甲第2号証、甲第3号証等の記載によるまでもなく、周知・慣用の事項に過ぎない。
本件特許の請求項7に係る発明は、「流動層炉へ供給される流動化ガスは、廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含む」という構成を有するが、甲第1号証に「流動化ガスが部分燃焼に必要な空気量以上の場合は燃焼排ガスの一部を用いてもよい」ことが記載されているように、廃棄物を流動層炉でガス化する際に、流動化ガスを廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量より少ない空気量とすることは、周知・慣用の技術であり、「30%以下」という数値にも特別な臨界的意義は見いだせない。また、甲第3号証には、流動層ガス化炉に空気とスチームの混合物等を流動化ガスとして供給することが記載されており、これは流動化ガスを燃焼に必要な理論燃焼空気量より少ない空気量とすることとなる。
このように、本件特許の請求項7に係る同構成は、廃棄物を流動層炉でガス化するための手段として、当業者が適宜なし得る事項に過ぎない。
本件請求項8に係る発明は、「不燃物を流動層炉の炉底部より排出する」という構成を有するが、これは甲第1号証〜甲第3号証等の記載によるまでもなく、周知・慣用の技術手段に過ぎない。
本件請求項9に係る発明は、流動媒体が砂であるという構成を有するが、これも甲第1号証〜甲第4号証等の記載によるまでもなく、周知・慣用の事項に過ぎない。
本件請求項22に係る発明は、「不燃物と流動媒体を炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、不燃物と流動媒体を分別する」という構成を有するが、上述したように、甲第2号証の第1図には、「流動層炉底部の不燃物排出装置(スクリューコンベヤ)12から不燃物と流動媒体を排出し、振動篩13で不燃物と流動媒体を分別する」という構成が開示されており、スクリューコンベヤにより不燃物と流動媒体は水平方向に定量排出されるから、上記の構成は公知技術に過ぎないものである。また、甲第3号証の第2図にも、「流動層炉底部のスクリューコンベヤ32から不燃物と流動媒体を排出する」という構成が開示されている。
本件特許の請求項15に係る発明は、「前記熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり、該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ、該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され、前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出する」という構成を有するが、このような旋回溶融炉は甲第5号証に記載されており、本件特許の請求項15の旋回溶融炉が何ら新規な装置でないことは明らかである。

3-1-2 異議申立人谷内啓子の申立て理由の概要
異議申立人谷内啓子は、本件各発明中の「炉内を450℃〜650℃に維持し」、及び、「ガスとチャーを熔融炉で燃焼する」との構成は、平成6年特許願第65439号及び平成6年特許願第101541号の願書に最初に添付された明細書に記載される構成ではないから、それらを構成として含む発明の出願日は、平成7年2月9日となるところ、全ての請求項が、これらの構成の少なくとも一方を含むので、本件特許の全ての発明の出願日は、平成7年2月9日となるとし、
甲第1号証として、特開平6-307614号公報を、
甲第2号証として、特開平2-147692号公報を、
甲第3号証として、特公昭62-35004号公報を、
甲第4号証として、特開昭57-170991号公報を、
甲第5号証として、特開平5-64736号公報を、
甲第6号証として、特開平7-35322号公報を、
甲第7号証として、特開昭55-7883号公報を、
甲第8号証として、特開昭56-42009号公報を、
甲第9号証として、「化学工学論文集」第10巻第5号(1984) 第545〜550頁を、
甲第10号証として、「化学工学協会第16回秋季大会 研究発表講演要旨集」1982年 第74頁
を提出して、概略以下の主張をなしている。

甲第1号証(特開昭6-307614号公報)には、「ガラス繊維を含む廃棄プラスチック中のプラスチックを流動層熱分解炉で熱分解して分解ガスとするために、プラスチックが500℃以上で熱分解を起こす特性を有するのを利用して、流動層熱分解炉内の温度を500〜600℃に温度制御して、廃棄プラスチック中のプラスチックを燃焼させ分解ガスとする。」との記載があり(段落【0008】参照)、甲第1号証の発明では、供給機3から流動層熱分解炉1に廃棄プラスチック等が送り込まれ、プラスチックが熱分解炉1cで燃焼され加熱分解され分解ガス1aとなり、残ったガラス繊維や充填材などは流動床1bで流動中の珪砂により粉砕微粒化され飛灰となる。
同発明の流動床1bには、珪砂が入れられ空気ブロア4aから送られる予熱空気で流動化されて、飛灰は分解ガス1aに同伴され、1300℃に加熱された旋回式溶融炉2の旋回燃焼室2aに送られ、燃焼用空気とともに旋回混合され燃焼されるとともに、飛灰は、旋回溶融炉2内で燃焼されて溶融し、溶融スラグとなって炉壁を流下してスラグ溜まり2bに到達し、回収されている。
また、段落【0010】には、旋回式溶融炉の燃焼室の温度を1200〜1600℃に保つことが記載されている。
甲第2号証(特開平2-147692号公報)には、流動層炉を用いて、石炭、廃木材、廃プラスチック、粗大不燃物を含む燃焼不適ごみ等をガス化する流動層ガス化方法および流動層ガス化炉が開示されており、第2図に示されているように、甲第2号証のガス化炉3では、珪砂などの流動媒体に向けて、流動化ガスが、導入部の室21、22、23を経て分岐板20から上方に噴出させられる。甲第2号証のガス化炉3では、両側縁部の室21、23から噴出する流動化ガスの質量速度が、中央の室22から噴出する流動化ガスの質量速度より大きく設定され、また、中央に向かって傾斜した傾斜壁24が設けられているので、流動媒体は、第2図において矢印で示されるように、循環流となり、中央の室22から噴出する流動化ガスは、両側縁部の室21、23からの流動化ガスより酸素濃度が低くなるように、または、スチームのみにしても良い旨が記載されている。
さらに、ガス化炉3の両側縁部には、不燃物及び灰分排出ロ30が接続されされている。
甲第3号証(特公昭62-35004号公報)には、固形物原料を、流動層熱分解炉において熱分解を行い、熱分解生成物をサイクロン燃焼炉に導入し、該サイクロン燃焼炉の中で加圧空気により可燃分を燃焼せしめ、灰分の分離を行う固形物の燃焼方法に関する発明が開示され、同発明は、都市ごみ等を熱分解して、チャー、灰分等の微細粒子を含むガスを発生させる流動層3を収容する流動層熱分解炉2を備え、この流動層熱分解炉2では、第1図に示されているように、上方に向かって拡がる円錐形状の分散板6が配置され、この分散板6の下方のガス室5から、流動化ガスである空気がブロア21によって分散板6から噴出させられ、砂を熱媒体とする流動層3が形成される。
また、流動層熱分解炉2は、上部に原料供給装置1を、下部に不燃物取り出し用の二重排出弁22と備えている。流動層熱分解炉2の頂部は、サイクロン燃焼炉11の頂部とガス流路(熱分解生成物移送路)24で接続され、サイクロン燃焼炉11は、下部に溶融スラグの排出ロ14を備えている。
このような構成を有する甲第3号証の発明では、原料供給装置1から流動層熱分解炉2に供給された都市ごみなどの原料が、流動層3内で、一部分が燃焼されると共に熱分解され、チャー、可燃性ガス、灰分、燃焼排ガスが、生成され、生成されたチャー、可燃性ガス等は、サイクロン燃焼炉11に送られ、旋回流にのせられて燃焼される。このとき、流動層熱分解炉2での燃焼で生じた灰分は、融けて、サイクロン燃焼炉11の壁面を、第1図に矢印13で示すように、溶融スラグとして流下する。従って、サイクロン燃焼炉11内の温度は、具体的には特定されていないが、灰分が溶融する温度まで上昇していることとなる。
甲第4号証(特開昭57-170991号公報)には、都市ごみを、流動層炉などの熱分解炉で熱分解し、熱分解生成ガスを得ること、および、熱分解温度が550℃以上であることが開示されている。
甲第5号証(特開平5-64736号公報)には、その従来の技術として、約1300℃〜1600℃の温度範囲で溶融スラグを生成することが開示されている。
甲第6号証(特開平7-35322号公報)には、理論燃焼空気量の15%〜50%に相当する一次空気比が0.15〜0.5の還元雰囲気において、450〜650℃の温度範囲で流動層12内で廃棄物を部分燃焼させることが開示されている。
甲第7号証(特開昭55一7883号公報)には、砂等の粒度の細かい耐熱材料による渦流層(流動層)を内部に設けた反応器14を使用した、ごみ等の処理装置が開示されている。この装置では、篩別装置26により、細かい砂と粗大な成分が分離される。粗大成分は、くず容器27に入り、細かい砂は、バケットホイール25によってニューマチックコンベア装置28に送られ、さらに、戻し管路29を経て反応器14に戻される(第5頁右上欄第19行ないし左下欄第5行、第1図参照)。従って、不燃物と流動媒体を分別した後、流動媒体が流動炉(反応器)に戻されている。
甲第8号証(特開昭56-42009号公報)には、炉体の内部下部に流動化用のガスを多数の小孔より噴出する散気管2が設けられた流動床熱反応装置が開示されている、この流動床熱反応装置は、流動媒体の炉内循環機構を備え、さらに、この炉内循環機構は、散気管の小孔より噴出するガスの速度を炉体の内部の中心に近い小孔におけるよりも周辺に近い小孔においてより大として、ほぼ垂直面内の旋回流を形成し、第4図に矢印で示されているような「循環する流動媒体の旋回流」が生じるている。
甲第9号証(化学工学論文集第10巻第5号(1984))には、円筒形の流動層において、平坦な底部から均一にガスを噴出させると、流動床の周辺部で上昇し中央部で下降する循環流が生じることが開示されている。
甲第10号証(化学工学協会第16回秋季大会1982年)には、理論燃焼空気量の30%以下の空気量でごみの熱分解を行うことが開示されている。

本件請求項1〜9に係る発明について
甲第1号証は、本件請求項1に係る発明の構成中「ガス化してガスとチャーを生成し」及び「該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを旋回熔融炉に供給して」との構成を開示していないものの、流動層(流動床)炉でプラスチックを熱分解すれば、チャーは分解ガスととも当然に生成され、また、このチャーは分解ガスに同伴される飛灰とともに旋回燃焼炉に送られることになる。従って、甲第1号証には、チャーに関する直接的な記載はないが、それら各構成をを実質的に開示しているといえる。
したがって、甲第1号証は、本件請求項1に係る発明の「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」との構成以外の各構成を開示しており、同構成は、甲第2号証に開示されている。
本件請求項1に係る発明の全ての構成は、甲第1号証、甲第2号証に開示されてので、同発明は、甲第1号証および甲第2号証から容易に発明できたものである。なお、「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」なる事項は、甲第8号証および甲第9号証にも開示されている周知技術である。

また、甲第3号証は、流動層が循環することを間接的に開示し、上述のように、石炭、ごみ等をガス化する甲第2号証は、「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」を直接的に開示し、さらに、甲第1号証には、内部温度が500〜600℃に制御された流動層炉で分解ガスを発生させるとの記載がある。
都市ごみ等をガス化する甲第4号証のガス化方法でも、流動層炉などを用いて、550℃以上の熱分解温度で、都市ごみ等から熱分解生成ガスを得ているので、甲第4号証も「炉内を450℃〜650℃に維持し」なる事項を開示している。
さらに、甲第1号証には、「旋回式溶融炉の燃焼室の温度を1200〜1600℃に保つ」との記載があり、甲第5号証には、約1300℃〜1600℃の温度範囲で溶融スラグを生成するとの記載がある。
このように、本件請求項1に係る発明の全ての構成要件は、少なくとも甲第1号証ないし甲第3号証、又は、甲第2号証ないし甲第5号証に開示されている。したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜3号証、または、甲第2〜5号証のもから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件請求項2に係る発明の「前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される」なる構成は、甲第1号証に実質的に開示されているので、同発明は、甲第1号証および甲第2号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。

本件請求項3に係る発明の「前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され」、および、「流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する」との構成は、甲第2号証にを開示されているから、同発明も、甲第1号証および甲第2号証のものから、または、甲第2号証ないし甲第5号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件請求項4に係る発明の「前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され」、および、「前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される」との構成は、甲第2号証にを開示されているから、同発明も、甲第1号証および甲第2号証から、または、甲第2号証ないし甲第5号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件請求項5に係る発明の「前記流動媒体の循環流は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成されること」との構成は、甲第2号証にを開示されているから、同発明も、甲第1号証および甲第2号証のものから、または、甲第2号証ないし甲第5号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件請求項6に係る発明に関し、甲第1号証に「・・珪砂を入れ、空気ブロア4aから送り込まれた予熱空気と流動層熱分解炉1に付設された補助バーナー11aにより加熱、流動化させて・・」との記載があるから、同発明も、甲第1号証および甲第2号証のものから、または、甲第2号証ないし甲第5号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件請求項7に係る発明の空気量は、甲第6号証及び甲第10号証にも記載されるごく一般的に使用される空気量であるから、同発明は、甲第1号証、甲第2号証および甲第6号証のものから、または、甲第2号証ないし甲第6号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件請求項8に係る発明の構成である「前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出すること」は、甲第2号証に開示されている。よって、同発明も、甲第1号証および甲第2号証のものから、または、甲第2号証ないし甲第5号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件請求項9に係る発明の構成である「前記流動媒体は砂であること」は甲第1号証に開示されている。よって、請求項9の本件発明も、少なくとも甲第1号証および甲第2号証のものから、又は、甲第2号証ないし甲第5号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件請求項10〜14に係る発明には、請求項1〜9に係る方法発明を実施する装置に関する発明であり、これら発明と実質的に同一の内容を有するものであるから、請求項1〜9に係る発明と同様の理由により、甲第1号証および甲第2号証のものから、または、甲第2号証ないし甲第5号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件請求項15に係る発明の構成である「前記熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり」、及び、「該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ」なる事項は、甲第3号証に開示されており、「該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され」、及び、「前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出する」なる事項は、設計上の事項にすぎない。よって、同発明は、甲第1号証ないし甲第3号証のものから、または、甲第2号証ないし甲第5号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件請求項16に係る発明は、請求項1の発明から温度に関する2つ条件が削除された発明であり、甲第1号証が、「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」以外の全構成を開示しており、「流動層炉内の循環流」は、上述したように甲第2号証に開示されていので、同発明は、甲第1号証および甲第2号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件請求項17に係る発明および請求項18に係る発明は、請求項3に係る発明および請求項4に係る発明と同様の理由により、甲第1号証および甲第2号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件請求項19に係る発明の「該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し」との構成は、砂等の粒度の細かい耐熱材料による渦流層(流動層)を内部に設けた反応器14を使用した、ごみ等の処理装置に関する甲第7号証に記載されている。したがって、同発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第7号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
請求項20及び請求項21に記載の流動層炉内の温度条件は、甲第1号証に開示されているから、それら請求項に係る発明も、甲第1号証、甲第2号証および甲第7号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。
本件請求項22に係る発明の「前記不燃物と流動媒体は、前記炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、該不燃物と該流動媒体は分別されること」との構成は、甲第7号証に開示されているので、同発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第7号証のものから当業者が容易に発明ををすることができたものである。

3-1-3 異議申立人佐藤喜久雄の申立て理由の概要
異議申立人佐藤喜久雄は、
甲第1号証として、特公昭62-35004号公報を、
甲第2号証として、特開平2-147692号公報を、
甲第3号証として、「流動床式ごみ焼却炉設計の実務」 工業出版社 昭和62年6月15日 第20,21頁を、
甲第4号証として、特開昭52-155603号公報を、
甲第5号証として、特開平2-298713号公報を、
甲第6号証として、「流動層の反応工学(ケミカルエンジニアリングシリーズ8)」 株式会社培風館 昭和59年2月25日 第252,253,268,269頁)を、
甲第7号証として、特開平6-2831号公報
を提出して、概略以下の主張をなしている。
甲第1号証(特公昭62-35004号公報)には、都市ごみ、スラッジなどの廃棄物を、流動層熱分解炉2に供給して、砂を流動媒体とする流動層により流動化させて熱分解を行い、ガスとチャーとを生成し、そしてこれらをサイクロン燃焼炉11内に導き、ここで灰分が燃焼により溶融スラグ化されて、排出ロ14から取り出されるようにした旨の記載があり、甲第1号証には、廃棄物を流動層炉にてガス化するとともに、この流動層炉にて発生したガス及びチャーを旋回熔融炉にて溶融スラグ化するという構成が開示されている。
また、甲第1号証には、「砂を熱媒体とする流動層3」という記載があり、「空気はガス入口4からガス室5に入りガス分散板6を通って砂を流動化させ」と記載されているので、流動媒体として砂を使用するとともに、流動化ガスとして空気を用いた構成が開示されている。
さらに、この甲第1号証に記載された燃焼炉はサイクロン式であり、当然、その燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形状をしている
甲第2号証(特開平2-147692号公報)には、ガス化炉内の流動層を形成する珪砂などの流動媒体は、垂直面内で旋回流とされ、詳細には、炉内中央に下降流動層が形成され、炉の周壁部には上方に向う旋回流動層が形成され、また中央部から噴出されるガス化剤の質量速度は、側縁部(周壁部である)から噴出されるガス化剤の質量速度よりも小さくされている旨記載されているから、甲第2号証には、流動媒体を炉内で鉛直面内にて循環させて循環流を形成するという構成が開示されるとともに、この循環流を発生させるための流動化ガスの供給速度についての開示がなされている。
甲第3号証(「流動床式ごみ焼却炉設計の実務」)には、流動媒体である流動砂の循環機構の循環機構を示す図面が記載され、流動媒体を炉底部より排出するとともに、不燃物を除去し、この不燃物が除去された流動媒体を流動層炉に戻す構成が開示されている。
甲第4号証(特開昭52-155603号公報)には、流動層反応器10内における流動層の温度を、400℃〜600℃に調整する旨記載されている。
甲第5号証(特開平2-298713号公報)には、1300℃以上の温度にて灰分を熔融スラグ化するという構成が開示されている。
甲第6号証(「流動層の反応工学(ケミカルエンジニアリングシリーズ8)」)には、流動層による低温熱分解プロセスについての記載があり、流動層ガス化炉の運転に際して、チャー供給量とガス化用の空気供給量との関係を示すグラフが記載されており、これらの記載及び、都市ごみなどの廃棄物の焼却炉内は常圧にされており、0.4MPa(4kg/cm2)より低い値であることから、流動化ガス中には、「チャー化するための必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含む」ことは、当業者が導き出し得る事項である。
甲第7号証(特開平6-2831号公報)には、「予熱室5と溶融室6との間には連通空間部7が設けられるとともに、この連通空間部7を含む炉本体2の底壁部2aが溶融灰の排出ロ4に向って傾斜されている」ことが記載されている。
そして、本件各請求項に係る発明に対して以下の主張をなしている。
【請求項16〜18に係る発明に対して】
本件請求項16に係る発明は、同発明が「流動媒体の循環流を形成する」点で、甲第1号証のものと相違するが、その点は、甲第2号証に開示されている。
また、請求項17及び請求項18に記載の構成は、甲第2号証に開示されており、請求項16〜18に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき、当業者なら容易に発明をすることができたものである。
【請求項19〜22に係る発明に対して】
本件請求項19に係る発明は、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、循環流を、沈降する移動層と上昇する流動層とにより形成し、流動媒体の分別再使用する点で、甲第1号証のものと相違するが、流動層における循環流については、甲第2号証に開示されており、流動媒体の分別再利用については、甲第3号証に開示されている。
また、請求項20及び請求項21に記載された「流動層炉内及び流動層の温度が450℃〜650℃である」という構成については、甲第1号証に開示される、廃棄物を熱分解させるだけに見合った発熱量が得られればよい旨の事項に基づいて、通常の燃焼温度より低い温度、すなわち甲第4号証に開示された「400℃〜600℃の温度」を適用することにより、当業者が当然に成し得ることである。
請求項22に記載された「流動媒体の水平方向での取り出し」の構成については、甲第2号証の第2図に開示されている。
したがって、請求項19〜22に係る発明は、甲各号証に記載されたものに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
【請求項1〜9に係る発明に対して】
本件請求項1に係る発明は、流動層を循環流とする構成、流動層炉におけるガス化温度、及び、熔融炉におけるスラグ化温度に係る点で甲第1号証のものと相違するが、循環流については甲第2号証に開示されており、また流動層炉内のガス化温度については甲第4号証に、さらに熔融炉におけるスラグ化の温度については甲第5号証に開示されている。
また、請求項2の構成は、甲第4号証に開示されている。
次に、請求項3〜5の構成については、甲第2号証に全て開示されており、請求項6の構成は、甲第1号証に開示されている。
さらに、請求項7にいう、流動化ガスが、理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含むことは、、甲第6号証から明らかに導き出されるものであり、請求項8の構成は、甲第1号証(又は甲第3号証)に開示されており、請求項9の構成についても、甲第1号に開示されている。
したがって、請求項1〜9に係る発明は、甲各号証に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【請求項10〜15に係る発明に対して】
本件請求項10に係る発明は、流動層を循環流とした点、ガス化温度が450℃〜650℃である点、及びスラグ化温度が1300℃であるという点で甲第1号証のものと相違するが、流動層を循環流とした構成については、甲第2号証に開示されており、またガス化温度が450℃〜650℃であるという構成については、甲第4号証に開示されており、さらにスラグ化温度が1300℃であるという構成については、甲第5号証に開示されている。
請求項11の構成は、甲第4号証に開示され、請求項12〜14の構成は、甲第2号証に開示されている。
さらに、請求項15は、甲第1号証に開示されたサイクロン燃焼炉と同一のものであり、また燃焼室の底部が傾斜されるとともにその端部から熔融スラグが排出されるという構成は、甲第7号証に開示されたものと同一である。
したがって、請求項10〜15に係る発明は、甲各号証に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-2 判断
3-2-1 本件発明
上記のとおり、特許権者の請求した訂正は認められたので、本件請求項1〜22に記載された発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明22」)は、訂正された特許請求の範囲に記載された以下の事項により特定されるものである。
【請求項1】 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、 流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、炉内を450℃〜650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項2】 前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】 前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】 前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】 前記流動媒体の循環流は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】 前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは、ともに空気であることを特徴とする請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】 前記流動層炉へ供給される流動化ガスは、廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】 前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】 前記流動媒体は砂であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】 廃棄物をガス化する流動層炉と、該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において、前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え、該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し、炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするガス化及び熔融燃焼装置。
【請求項11】 前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持されることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】 前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項10又は11記載の装置。
【請求項13】 前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成されることを特徴とする請求項12記載の装置。
【請求項14】 前記流動化ガス供給手段は、質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と、質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなることを特徴とする請求項10又は11記載の装置。
【請求項15】 前記熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり、該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ、該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され、前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項17】 前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】 前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり、該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項20】 前記流動層炉の炉内は、450℃〜650℃に維持されることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】 前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持されることを特徴とする請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】 前記不燃物と流動媒体は、前記炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、該不燃物と該流動媒体は分別されることを特徴とする請求項19記載の方法。
したがって、請求項1、10、16、19には、それら発明を特定する構成として、「・・該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、・・」と記載されており、それら発明は、「・・該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、・・」なる事項をそれら発明の構成の一部とするものである。

3-2-2 新規事項の有無について
訂正された本件明細書の請求項1,16には、「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、」と、請求項10には、「炉内に流動媒体の循環流を形成し、」と記載されるとともに、訂正された本件明細書の請求項3,12,17には、「流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する」と、請求項19には、「該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり、」と記載されている。
これらの記載と関連して、願書に最初に添付された明細書の記載を検討すると、
【請求項1】 に、「・・流動層炉へ供給される流動化ガスが、炉底中央部付近から炉内へ上向き流として供給される中央流動化ガス、及び炉底周辺部から炉内へ上向き流として供給される周辺流動化ガスから成り、中央流動化ガスの質量速度が、周辺流動化ガスの質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように傾斜壁により転向され、それによって、炉の中央部に流動媒体が沈降拡散する移動層が形成されると共に、炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成され、炉内へ供給される可燃物が、移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ、流動媒体と共に循環する・・」と、
【請求項14】 に、「・・流動化ガス分散機構の中央部付近から炉内へ流動化ガスを垂直方向上方へ流動するように供給する中央供給手段、流動化ガス分散機構の周辺部から炉内へ流動化ガスを垂直方向上方へ流動するように供給する周辺供給手段、周辺供給手段の上方において垂直方向上方へ流動する流動化ガスを炉中央部へ転向させる傾斜壁、及び傾斜壁の上方に配置されるフリーボードを含み、・・」と、
段落番号【0009】に、「【課題を解決するための手段】本発明は、可燃物が流動層炉で可燃ガスにガス化される方法を提供する。本発明の方法において、流動層炉の水平断面がほぼ円形にされ、流動層炉へ供給される流動化ガスが、炉底中央部付近から炉内へ供給される中央流動化ガス及び炉底周辺部から炉内へ供給される周辺流動化ガスから成り、中央流動化ガスの質量速度が、周辺流動化ガスの質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように傾斜壁により転向され、それによって、炉の中央部に流動媒体(一般的には、硅砂を使用)が沈降拡散する移動層が形成されると共に炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成され、炉内へ供給される可燃物が、移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ、流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化され、・・」と、
【0016】に、「・・本発明の装置において、流動層炉は、水平断面がほぼ円形の側壁、炉内底部に配置される流動化ガス分散機構、流動化ガス分散機構の外周に配置される不燃物取出口、流動化ガス分散機構の中央部付近から炉内へ流動化ガスを垂直方向上方へ流動するように供給する中央供給手段、流動化ガス分散機構の周辺部から炉内へ流動化ガスを垂直方向上方へ流動するように供給する周辺供給手段、周辺供給手段から垂直方向上方へ流動する流動化ガスを炉中央部へ転向させる傾斜壁、及び傾斜壁の上方に配置されるフリーボードを含み、・・」と、
【0021】に、「本発明においては、流動層炉へ供給される中央流動化ガスの質量速度が、周辺流動化ガスの質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように転向され、それによって、流動媒体の沈降拡散する移動層が炉の中央部に形成されると共に、炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成される。炉内へ供給された可燃物は、移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ、流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化される。・・」と、
【0027】に、「中央流動化ガス7の質量速度は、周辺流動化ガス8の質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流がデフレクタ6により炉の中央部へ向うように転向される。それによって、炉の中央部に流動媒体(一般的には硅砂を使用)が沈降拡散する移動層9が形成されると共に炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層10が形成される。流動媒体は、矢印118で示すように、炉周辺部の流動層10を上昇し、次にデフレクタ6により転向され、移動層9の上方へ流入し、移動層9中を下降し、次に矢印112で示すように、ガス分散機構106に沿って移動し、流動層10の下方へ流入することにより、流動層10と移動層9の中を矢印118及び112で示すように循環する。」と、
【0034】に、「図1のガス化装置の場合と同様に、図3のガス化装置において、炉の中央部に流動媒体が沈降する移動層9が形成され、炉の周辺部に流動媒体が上昇する流動層10が形成される。流動媒体が、矢印112及び118で示すように移動層及び流動層を通り循環する。移動層9と流動層10の間においては、流動媒体が、主として横方向に拡散する中間層9’が形成される。移動層9及び中間層9’がガス化ゾーンGを形成し、流動層10が酸化ゾーンSを形成する。」と
記載されており、この記載の範囲においては、異議申立人川崎重工業株式会社が主張するように、「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成」なることを直接記載する記載はないものの、異議申立人川崎重工株式会社も認めるように、願書に最初に添付された明細書の段落番号【0056】には、「【発明の効果】(1)本発明のガス化装置は、流動層炉の循環流により熱が拡散されるので・・」と段落番号【0058】には、「(3)本発明においては、流動層炉の循環流により大きな不燃物も容易に排出できる。・・」と記載されており、願書に最初に添付された明細書は、特定の概念を「循環流」なる用語で直接的に記載するものである。
また、上記の通り段落番号【0034】には、「・・流動媒体が、矢印112及び118で示すように移動層及び流動層を通り循環する。・・」と、「流動媒体が・・該移動層及び流動層を通り循環する」なる記載により、循環する流れを記載しているのであるから「流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する」なる事項は、願書に最初に添付された明細書に記載される事項である。
したがって、「循環流」なる概念及び、「流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する」なる事項を、願書に最初に添付された明細書に記載されていないことを論拠とする異議申立人川崎重工業株式会社の理由1の主張は採用できない。

3-2-3 優先権について
本件発明1〜22は、3-2-1に記載したとおり特定されるものであるから、本件発明1は、「炉内を450℃〜650℃に維持し、・・該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して」なる事項をそれらの構成の一部とするものであり、本件発明10は、「炉内を450℃〜650℃に維持して・・該チャーを該循環流中で微粒子とし、前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して・・」なる事項をそれらの構成の一部とするものであり、本件発明16は、「該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給し」なる事項をそれらの構成の一部とするものであり、本件発明19は、「該チャーを該循環流中で微粒子とし、・・該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給し」なる事項を構成の一部とするものである。
そして、それら構成は、優先権を主張する各先の出願の願書に添付された明細書等に記載される構成ではなく、本件発明1,10,16,19については、先の出願に記載された発明とは認められない。また、残余の請求項に係る発明は、本件発明1,10,16,19のいずれかの発明の全構成をその構成の一部とするものであるから、同様に、先の出願に記載された発明とは認められない。
したがって、本件発明1〜22に対する、特許法第29条等の規定の適用に関しては、本件出願を主張する何れの先の出願の出願日になされたものとすることはできない。

3-2-4 異議申立人川崎重工業株式会社の提出した刊行物に記載された発明との対比判断
異議申立人川崎重工業株式会社が引用した甲第1号証の刊行物である特公昭62-35004号公報(以下「刊行物1」という。)には、異議申立人川崎重工業株式会社が主張するように、実質的に、「都市ごみ、廃プラスチック等の廃棄物を流動層炉に供給し、炉内で熱分解(ガス化)してガスとチャーを生成させ、流動層炉より排出されたガスとチャーを旋回溶融炉に供給して灰分を溶融してスラグ化する」ことが記載されるものと認められ、第2頁第3欄第32〜36行に、「熱分解過程を流動層により行い、熱分解の生成ガス中に含まれるチャー及び灰分が微細粒子となる事実を利用して、このガスをサイクロン燃焼炉に導入し、此処で加圧空気によって可燃分(ガス及びチャー)を燃焼せしめる」と、第2頁第4欄第22行に、「砂を熱媒体とする流動層3」と、第3頁第5欄第2〜18行に、「都市ごみ、スラジなどの原料は原料供給装置1から流動層熱分解炉2に供給され、流動層3内で部分燃焼によって残部が加熱されて熱分解される。
空気はガス入口4からガス室5に入りガス分散板6を通って砂を流動化させ且つ原料の一部を燃焼する。熱分解により生成したチャーと可燃性ガス及び部分燃焼により発成した灰分と燃焼排ガスは、全て塔頂部フリーボード7から分解炉出口8に出て、空気エジェクタ9においてブロワ10により供給される加圧空気によって、吸引加速され、空気とガスとの混合ガスはサイクロン燃焼炉11に接線方向に高速で送られ、矢印12の方向に強力な旋回流を生ぜしめられて熱分解生成物(ガス及びチャー)は燃焼される。即ちフリーボード部では還元性雰囲気、サイクロン部では酸化性雰囲気となっている。」と、第3頁第6欄第35〜39行に、「サイクロン燃焼炉に供給される固体は熱分解で生成したチャーと部分燃焼で生成した灰分などの微細な粒子であるから、従来のサイクロン燃焼法に不可欠であった原料の微破砕処理が不要となる。」と、流動層において、チャーを生成すること及び、チャーが微細な粒子として生成される旨の開示はあるが、燃焼に係るチャーは、生成された状態で粒子である以上にさらに微粒子とすることを何等言うものではなく、生成されたチャーを流動層炉内の循環流中で微粒子とすることを開示するものではない。

ここで、本件発明1と刊行物1のものとを比較すると、本件発明1が、流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とするものである(以下、「相違点の構成」という。)のに対して、刊行物1のものは、流動層炉内の中でガス化してガスと微粒子としてのチャーを生成するものの、チャーを循環流中で微粒子とすることを開示していない点
で両発明は、少なくとも相違している。
この点について提出された他の刊行物に記載される発明を検討すると、甲第2号証の刊行物である特開昭57-124608号公報(以下「刊行物2」という。)には、異議申立人川崎重工業株式会社が主張するように、流動層炉内の中央部に下降移動層が形成され、炉内周辺部に流動層が形成され、流動媒体が炉内周辺部上方で反射転向して炉中央部の頂部に落下し、炉中央部の移動層を流動媒体が沈降して炉周辺部の流動層に移動し、流動媒体が炉周辺部を上昇して循環すること、炉底の両側縁部における流動化ガスの質量速度を流動層を形成するのに十分な大きさとし、炉底中央部付近における流動化ガスの質量速度をそれより小さくし、炉底中央部に流動媒体が沈降する移動層を形成させ、両側縁部には流動媒体が活発に流動化している流動層を形成させ、流動媒体を両側縁流動層の上方において炉中央に転向させて移動層内を沈降させ、移動層の下部で両側縁流動層に移行させて循環させることが記載されるものの、刊行物2は、廃棄物の熱分解ないしガス化を流動媒体の循環流が形成された流動層炉内でおこなうことを示すものであって、生成したチャーを流動層炉内の循環流中で微粒子とすることを開示、または、示唆するものではない。
次に、甲第3号証の刊行物である特開平2-147692号公報(以下「刊行物3」という。)には、異議申立人が主張するように、炉内中央部に下降移動層が形成され、炉内周辺部に流動層が形成され、流動媒体が炉内周辺部上方で反射転向して炉中央部の頂部に落下し、炉中央部の移動層を流動媒体が沈降して炉周辺部の流動層に移動し、流動媒体が炉周辺部を上昇して循環することが記載されているものの、生成したチャーを流動層炉内の循環流中で微粒子とすることを開示、または、示唆するものではない。
また、甲第4号証の刊行物である特開昭54-43902号公報(以下「刊行物4」という。)には、流動層内の温度に係る開示、都市ごみ等の固形廃棄物の熱分解温度に係る開示は認められ、甲第5号証の刊行物である特開平3-36413号公報(以下「刊行物5」という。)には、「多段式旋回溶融炉」が記載されており、甲第6号証の刊行物である「マルチソリッド型循環流動層ボイラにおけるデンスベッドの特性について 循環流動層に関するシンポジウム論文集(1987)」(以下「刊行物6」という。)には、内部循環流に係る技術が記載されるものの、刊行物4〜6は、生成したチャーを流動層炉内の循環流中で微粒子とすることを開示、または、示唆するものではない。
そして、本件発明1は、同構成を有することにより、流動層炉内にチャーが堆積するという問題が解決されると同時に、廃棄物中の可燃分の大部分が熔融炉において熱源として有効に利用されるという効果を奏するものであり、同相違点の構成を設計上の事項とすることはできない。
したがって、本件発明1をその構成の一部を開示も示唆もなさない異議申立人川崎重工業株式会社の提出した各刊行物に記載された発明とすることはできないばかりではなく、それらに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

また、本件発明10,16,19は、上記のとおり特定されるものであるから、上記相違点の構成をそれら発明の構成の一部とするものであり、本件発明2〜9,11〜15、17、18、20〜22は、本件発明1、10、16または19を直接間接に引用することにより、上記相違点の構成をそれら発明の構成の一部とするものである。
したがって、本件発明2〜22をその構成の一部を開示も示唆もなさない異議申立人川崎重工業株式会社の提出した各刊行物に記載された発明とすることはできないばかりではなく、それらに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

3-2-5 異議申立人谷内啓子の提出した刊行物に記載された発明との対比判断
異議申立人谷内啓子の提出した甲第1号証の刊行物である特開平6-307614号公報(以下「刊行物7」という。)には、異議申立人が主張するように、流動層(流動床)炉でプラスチックを熱分解すれば、チャーは分解ガスととも当然に生成されので、実質的流動層(流動床)炉でチャーを生成することが記載されるとしても、循環流中でチャーを微粒子とすることに係る特段の記載も示唆も認められないので、本件発明1と刊行物7に記載された発明とを比較すると、
本件発明1が上記相違点の構成を有するものであるのに対して、刊行物7にはその点が記載も示唆もなされていない点で少なくとも相違している。
さらに提出された刊行物を見ると、甲第2号証は、特開平2-147692号公報であるから、上記刊行物3であり、甲第3号証は、特公昭62-35004号公報であるから、刊行物2であり、上述のとおり、相違点の構成を開示又は示唆するものではない。
次に、甲第4号証の特開昭57-170991号公報(以下「刊行物8」という。)には、都市ごみを、流動層炉などの熱分解炉で熱分解し、熱分解生成ガスを得ること、および、熱分解温度が550℃以上であることが開示されているものの、循環流中でチャーを微粒子とすることに係る特段の記載も示唆も認められない。
また、甲第5号証の刊行物である特開平5-64736号公報(以下「刊行物9」という。)には、溶融スラグを生成に係る温度範囲の開示があり、甲第6号証の刊行物である特開平7-35322号公報(以下「刊行物10」という。)には、流動層内で廃棄物を部分燃焼させる一次空気比・温度に係る開示があり、甲第7号証の刊行物である特開昭55-7883号公報(以下「刊行物11」という。)には、砂等の粒度の細かい耐熱材料による流動層を内部に設けた反応器を使用した、ごみ等の処理装置において、不燃物と流動媒体の取出し・分別に係る開示があり、甲第8号証の刊行物である特開昭56-42009号公報(以下「刊行物12」という。)には、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成することの開示があり、甲第9号証の刊行物である「化学工学論文集 第10巻第5号 1984」(以下「刊行物13」という。)には、円筒形の流動層において、流動床の周辺部で上昇し中央部で下降する循環流が生じることの開示があり、甲第10号証の刊行物である「化学工学協会第16回秋季大会 研究発表講演要旨集 1982年」(以下「刊行物14」という。)には、理論燃焼空気量の30%以下の空気量でごみの熱分解を行うことの開示がなされているが、刊行物9〜14には、循環流中でチャーを微粒子とすることに係る特段の記載も示唆も認められない。

そして、本件発明1は、同構成を有することにより、3-2-4に述べた効果を奏するものであり、同相違点の構成を設計上の事項とすることはできない。
したがって、本件発明1をその構成の一部を開示も示唆もなさない異議申立人谷内啓子の提出した各刊行物に記載された発明とすることはできないばかりではなく、それらに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

また、本件発明10,16,19は、上記相違点の構成をそれら発明の構成の一部とするものであり、本件発明2〜9,11〜15、17、18、20〜22は、本件発明1、10、16または19を直接間接に引用することにより、上記相違点の構成をそれら発明の構成の一部とするものである。
したがって、本件発明2〜22をその構成の一部を開示も示唆もなさない異議申立人谷内啓子の提出した各刊行物に記載された発明とすることはできないばかりではなく、それらに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

3-2-6 異議申立人佐藤喜久雄の提出した刊行物に記載された発明との対比判断
異議申立人佐藤喜久雄の提出した甲第1号証の刊行物である特公昭62-35004号公報は、すでに検討した刊行物1であり、3-2-4に述べたように、循環流中でチャーを微粒子とすることに係る特段の記載も示唆も認められない。
そして、本件発明1と刊行物1に記載された発明とを比較すると、
本件発明1が上記相違点の構成を有するものであるのに対して、刊行物1にはその点が記載も示唆もなされていない点で少なくとも相違している。
また、甲第2号証の刊行物である特開平2-147692号公報は、同じく検討した刊行物3であり、それら各文献には、3-2-4に述べたように、循環流中でチャーを微粒子とすることに係る特段の記載も示唆も認められない。
さらに提出された刊行物を見ると、甲第3号証の刊行物である「流動床式ごみ焼却炉設計の実務」(以下「刊行物15」という。)には、流動媒体を炉底部より排出、及び、不燃物を除去、分別に係る開示があり、甲第4号証の刊行物である特開昭52-155603号公報(以下「刊行物16」という。)には、流動層反応器内における流動層の温度に係る記載があり、甲第5号証の刊行物である特開平2-298713号公報(以下「刊行物17」という。)には、灰分の熔融スラグ化に係る温度の記載があり、甲第6号証の刊行物である「流動層の反応工学(ケミカルエンジニアリングシリーズ8)」(以下「刊行物18」という。)には、流動層による低温熱分解プロセスについての記載があり、流動層ガス化炉の運転に際して、チャー供給量とガス化用の空気供給量との関係が記載されているが、何れも、循環流中でチャーを微粒子とすることに係る特段の記載も示唆も認められず、さらに、甲第7号証の刊行物である特開平6-2831号公報(以下「刊行物19」という。)には、予熱室と溶融室との間には連通空間部が設けられるとともに、この連通空間部を含む炉本体の底壁部が溶融灰の排出ロに向って傾斜する構成が記載されるものの、上記相違点の構成を開示も示唆もなすものではない。
そして、本件発明1は、相違点の構成を構成として有するものであり、このことにより、3-2-4に述べた効果を奏するものであるから、同相違点の構成を設計上の事項とすることはできない。
したがって、本件発明1をその構成の一部を開示も示唆もなさない異議申立人佐藤喜久雄の提出した各刊行物に記載された発明とすることはできないばかりではなく、それらに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

また、本件発明10,16,19は、上記相違点の構成をそれら発明の構成の一部とするものであり、本件発明2〜9,11〜15、17、18、20〜22は、本件発明1、10、16または19を直接間接に引用することにより、上記相違点の構成をそれら発明の構成の一部とするものである。
したがって、本件発明2〜22をその構成の一部を開示も示唆もなさない異議申立人佐藤喜久雄の提出した各刊行物に記載された発明とすることはできないばかりではなく、それらに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

3-2-7 取消理由に引用した刊行物について
当審において通知した取消理由は、上記刊行物1〜3,5,7を引用するものであり、3-2-4〜7に述べたようにそれら刊行物には、循環流中でチャーを微粒子とすることに係る特段の記載も示唆も認められず、本件発明1〜22をその構成の一部を開示も示唆もなさないそれら各刊行物に記載された発明とすることはできないばかりではなく、それらに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

3-3 むすび
上述のとおり、各異議申立人の提出した何れの証拠にも上述の相違点の構成についての開示も示唆もなく、各異議申立人の提出した証拠及び理由によっては、本件発明1〜22を取り消すことはできない。また、この点が周知であるとする何らの客観的証拠はなく、他に、本件発明1〜22を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
廃棄物の処理方法及びガス化及び熔融燃焼装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、
流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、炉内を450℃〜650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項2】 前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】 前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】 前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】 前記流動媒体の循環流は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】 前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは、ともに空気であることを特徴とする請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】 前記流動層炉へ供給される流動化ガスは、廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】 前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】 前記流動媒体は砂であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】 廃棄物をガス化する流動層炉と、該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において、
前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え、該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し、炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、
前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするガス化及び熔融燃焼装置。
【請求項11】 前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持されることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】 前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項10又は11記載の装置。
【請求項13】 前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成されることを特徴とする請求項12記載の装置。
【請求項14】 前記流動化ガス供給手段は、質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と、質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなることを特徴とする請求項10又は11記載の装置。
【請求項15】 前記熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり、該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ、該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され、前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、
流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項17】 前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】 前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、
流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり、
該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、
該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項20】 前記流動層炉の炉内は、450℃〜650℃に維持されることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】 前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持されることを特徴とする請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】 前記不燃物と流動媒体は、前記炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、該不燃物と該流動媒体は分別されることを特徴とする請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、流動層炉において可燃物をガス化し、生成された可燃ガス及び微粒子を熔融燃焼炉において高温燃焼させ灰分を熔融する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、多量に発生する都市ごみ、廃プラスチック等の廃棄物を焼却し減量化すること、及びその焼却熱を有効利用することが望まれている。廃棄物の焼却灰は、通常、有害な重金属を含むので、焼却灰を埋め立てにより処理するためには、重金属成分を固化処理する等の対策が必要である。これらの課題に対応するため、特公昭62-35004号公報の固形物の燃焼方法及びその装置が提案された。この公報の燃焼方法においては、固形物原料が流動層熱分解炉において熱分解され、熱分解生成物、即ち、可燃ガス及び粒子、がサイクロン燃焼炉に導入される。サイクロン燃焼炉の中で加圧空気により可燃分が高負荷燃焼され、旋回流により灰分が壁面に衝突し溶けて壁面を流下し、熔融スラグとなって排出口から水室へ落下し固化される。
【0003】
特公昭62-35004号公報の方法においては、流動層全体が活発な流動化状態であるため、生成ガスに同伴して炉外へ飛散する未反応可燃分が多いため、高いガス化効率が得られない等の短所があった。また、従来、流動層炉が使用できるガス化原料としては、石炭等の場合は、粒径0.5〜3mmの粉炭、廃棄物の場合は、数十mmの細破砕物とされてきた。これより大きいと流動化を阻害するし、これより小さいと完全にガス化されないまま未反応可燃分として生成ガスに同伴して炉外へ飛散してしまう。従って、これまでの流動層炉では、ガス化原料を炉に投入する前の前処理として、予め粉砕機等を用いて破砕・整粒することが不可欠であり、所定の粒径範囲に入らないガス化原料は、利用できず、歩留まりをある程度犠牲にせざるをえなかった。
【0004】
上記の問題を解決するため、特開平2-147692号公報の流動層ガス化方法及び流動層ガス化炉が提案された。この公報の流動層ガス化方法においては、炉の水平断面が矩形にされ、炉底中央部から炉内へ上向きに噴出される流動化ガスの質量速度が、炉底の2つの側縁部から供給される流動化ガスの質量速度より小さくされ、炉底側縁部の上方で流動化ガスの上向き流が炉中央部へ転向され、炉中央部に流動媒体が沈降する移動層が形成され、炉の両側縁部に流動媒体が活発に流動化する流動層が形成され、移動層に可燃物が供給される。流動化ガスは、空気と蒸気の混合物、又は酸素と蒸気の混合物であり、流動媒体は、珪砂である。
【0005】
しかしながら、この特開平2-147692号公報の方法は、次の短所を有する。即ち、(1)移動層及び流動層の全体において、ガス化吸熱反応と燃焼反応が同時に生じ、ガス化し易い揮発分がガス化すると同時に燃焼され、ガス化困難な固定炭素(チャー)やタール分等は、未反応物として生成ガスに同伴して炉外へ飛散し、高いガス化効率が得られない。(2)生成ガスを燃焼させ蒸気及びガスタービン複合発電プラントに使用する場合、流動層炉を加圧型とすることが必要であるが、炉の水平断面が矩形のため、加圧型とすることが困難である。好ましいガス化炉の内圧は、生成ガスの用途によって決定される。一般の燃焼用ガスとして使用する場合は、数千mmAq程度で良いが、ガスタービンの燃料として使用する場合は、数kgf/cm2以上が必要であり、更に、高効率ガス化複合発電用の燃料として使用する場合には十数数kgf/cm2以上が適当である。
【0006】
都市ごみ等の廃棄物処理については、依然として可燃性ごみの燃焼による減量化が、重要な役割を担っており、それに付随して、近年、ダイオキシン対策、媒塵の無害化、エネルギー回収効率の向上等、環境保全型のごみ処理技術の必要性が増大している。我が国の都市ごみの焼却量は、約100,000トン/日であり、都市ごみ全量のエネルギーは、我が国の消費電力量の約4%に相当する。現在、都市ごみのエネルギーの利用率は、約10%に止まっているが、利用率を高めることができれば、それだけ化石燃料の消費量が少なくなり、地球温暖化防止にも寄与できる。
【0007】
しかしながら、現在の焼却システムは、次の問題を含んでいる。即ち、▲1▼HClによる腐食の問題があり、発電効率を高くできない。▲2▼HCl、NOx、SOx、水銀、ダイオキシン等に対する公害防止設備が複雑化してコスト及びスペースが増大している。▲3▼法規制の強化、最終処分場の用地難等により、焼却灰の熔融設備の設置が増大しているが、そのため別設備の建設が必要であり、また電力等を多量に消費している。▲4▼ダイオキシンを除去するには、高価な設備が必要である。▲5▼有価金属の回収が困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術の前記の問題点を解消することにあり、都市ごみ、廃プラスチック等の廃棄物や石炭等の可燃物から多量の可燃分を含む可燃ガスを高効率で生成し、生成された可燃ガスの自己熱量により燃焼灰を熔融することができる処理方法及びガス化及び熔融燃焼装置を提供することにある。本発明においては、熔融炉へ供給される生成ガスは、自己熱量により1300°C以上の高温を発生するような充分な熱量を持ち、チャー、タールを含む均質なガスであるようにされ、またガス化装置から不燃物の排出が支障なく行われるようにされる。本発明の別の目的は、廃棄物中の有価金属を還元雰囲気の流動層炉内から酸化しない状態で取出し回収できるガス化方法及び装置を提供することにある。本発明の更に別の目的は、図面を参照する実施例の説明において明らかにされる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明の廃棄物の処理方法の1態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、炉内を450℃〜650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
更に、前記流動媒体の循環流は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成される。
前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは、ともに空気である。
また、前記流動層炉へ供給される流動化ガスは、廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含む。
また、前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出する。
更に、前記流動媒体は砂である。
本発明のガス化及び熔融燃焼装置は、廃棄物をガス化する流動層炉と、該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において、前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え、該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し、炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成される。
前記流動化ガス供給手段は、質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と、質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなる。
更に、前記熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり、該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ、該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され、前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出する。
本発明の廃棄物の処理方法の他の態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
本発明の廃棄物の処理方法の更に他の態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり、該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉の炉内は、450℃〜650℃に維持される。
また、前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
更に、前記不燃物と流動媒体は、前記炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、該不燃物と該流動媒体は分別される。
本発明においては、可燃物が流動層炉で可燃ガスにガス化される。本発明の方法において、流動層炉の水平断面がほぼ円形にされ、流動層炉へ供給される流動化ガスが、炉底中央部付近から炉内へ供給される中央流動化ガス及び炉底周辺部から炉内へ供給される周辺流動化ガスから成り、中央流動化ガスの質量速度が、周辺流動化ガスの質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように傾斜壁により転向され、それによって、炉の中央部に流動媒体(一般的には、硅砂を使用)が沈降拡散する移動層が形成されると共に炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成され、炉内へ供給される可燃物が、移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ、流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化され、中央流動化ガスの酸素含有量が、周辺流動化ガスの酸素含有量以下であり、流動層の温度が450〜650℃に維持される。
【0010】
本発明において、中央流動化ガスは、水蒸気、水蒸気と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つである。また、周辺流動化ガスは、酸素、酸素と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つである。それ故、中央流動化ガスと周辺流動化ガスの組合せは、第1表に示すように、9通りある。どの組合せを選定するかは、ガス化効率を重視するか、経済性を重視するかにより、決められる。
【0011】
【表1】

ガス化効率の最も高い組合せは、No.1の組合せであるが酸素消費量が多いのでコスト高である。酸素消費量、次に水蒸気消費量を少なくする順に、ガス化効率が低下するが、コストも低くなる。本発明において使用される酸素は、高純度のものでも良く、また酸素富化膜を使用して得られる低純度のものでも良い。No.9の空気と空気の組合せは、従来の焼却炉の燃焼空気として公知であるが、流動層炉の水平断面を円形とした本発明においては、炉内周辺部上方に設けられる傾斜壁の下方投影面積が、流動層炉の水平断面を矩形とする場合の傾斜壁の下方投影面積より大きいので、周辺流動化ガスの流量を増大し、従って、酸素供給量を増大できるので、ガス化効率を向上させることができる。
【0012】
好ましくは、本発明の方法は、流動化ガスが炉底中央部と炉底周辺部の間の炉底中間部から炉内へ供給される中間流動化ガスを更に含む。中間流動化ガスの質量速度は、中央流動化ガスの質量速度と周辺流動化ガスの質量速度の間にある。中間流動化ガスは、水蒸気と空気の混合気体、及び空気の2種の気体の内の1つである。それ故、中央流動化ガス、中間流動化ガス、及び周辺流動化ガスの組合せは、18通りとなるが、酸素含有量は、炉の中心部から周辺部へ順に増加することが好都合であり、好適な組合せは、第2表の15通りである。
【0013】
【表2】

第2表の組合せにおいて、どれを選定するかは、ガス化効率を重視するか、経済性を重視するかにより、決められる。第2表の組合せの内、ガス化効率の最も高い組合せは、No.1の組合せであるが、酸素消費量が多いのでコスト高である。酸素消費量、次に水蒸気消費量を少なくする順に、ガス化効率が低下するが、コストも低くなる。第1表及び第2表において使用される酸素は、高純度のものでも良く、また酸素富化膜を使用して得られる低純度のものでも良い。
【0014】
流動層炉が大型となる場合、中間流動化ガスは、炉底中央部と炉底周辺部の間に設けた複数の同心状の中間部から供給される複数の流動化ガスであることが好ましい。この場合、流動化ガスの酸素濃度は、炉中央部において最も低く、周辺部に近づくに従ってより高くするのが好適である。
【0015】
本発明の方法において、好ましくは、流動層炉へ供給される流動化ガスは、可燃物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含む。流動層炉の炉底周辺部付近から不燃物が取出され、分級され、得られた砂が流動層炉内へ戻される。流動層炉で生成された可燃ガス及び微粒子が熔融燃焼炉で1300℃以上で高温燃焼され、灰分が熔融される。熔融燃焼炉からの排ガスによりガスタービンが駆動される。流動層炉内の圧力は、用途に応じて大気圧以下又は大気圧以上に維持される。可燃物は、廃棄物、石炭、その他である。
【0016】
本発明は、また流動層炉において可燃物がガス化される装置を提供する。本発明の装置において、流動層炉は、水平断面がほぼ円形の側壁、炉内底部に配置される流動化ガス分散機構、流動化ガス分散機構の外周に配置される不燃物取出口、流動化ガス分散機構の中央部付近から炉内へ流動化ガスを垂直方向上方へ流動するように供給する中央供給手段、流動化ガス分散機構の周辺部から炉内へ流動化ガスを垂直方向上方へ流動するように供給する周辺供給手段、周辺供給手段から垂直方向上方へ流動する流動化ガスを炉中央部へ転向させる傾斜壁、及び傾斜壁の上方に配置されるフリーボードを含み、中央供給手段は、質量速度が比較的小さく、酸素濃度が比較的低い流動化ガスを供給し、周辺供給手段は、質量速度が比較的大きく、酸素濃度が比較的高い流動化ガスを供給する。
【0017】
本発明の装置においては、流動化ガス分散機構の中央部と周辺部の間のリング状中間部から炉内へ流動化ガスを垂直方向上方へ供給する中間供給手段が設けられる。中間供給手段は、中央供給手段と周辺供給手段から供給される流動化ガスの質量速度の中間の質量速度、及び中央供給手段と周辺供給手段から供給される流動化ガスの酸素濃度の中間の酸素濃度の流動化ガスを供給する。周辺供給手段は、リング状の供給ボックスにより形成されることができる。可燃物入口が流動層炉の上方に配置され、可燃物入口は、可燃物を中央供給手段の上方へ落下させ、流動化ガス分散機構は、中央部よりも周辺部が低く形成されることができる。
【0018】
不燃物取出口は、分散機構の外周に配置されるリング部分とリング状部分から下方へ向かって縮小する円錐状部分を有することができる。不燃物取出口は、直列に配列される定量排出器、第1シール用スイング弁、スイングカット弁、及び第2シール用スイング弁を有することができる。
【0019】
本発明の装置は、流動層炉において発生された可燃ガス及び微粒子を高温燃焼させ灰分を熔融させる熔融燃焼炉を含むことができる。熔融燃焼炉は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形一次燃焼室、円筒形一次燃焼室へ前記流動層炉で発生された可燃ガス及び微粒子を軸線のまわりに旋回するように供給する可燃ガス入口、円筒形一次燃焼室に連通される二次燃焼室、二次燃焼室の下方部分に設けられ熔融灰分を排出可能な排出口を有する。熔融燃焼炉の二次燃焼室の排ガスが、廃熱ボイラ及び空気予熱器導入され、廃熱が回収される。熔融燃焼炉の二次燃焼室の排ガスによりガスタービンを駆動させることができる。排ガスは、集塵器に導入され塵埃が除去された後に大気中へ放出されることができる。熔融燃焼炉の二次燃焼室の排ガスは、廃熱ボイラ及び空気予熱器導入され、廃熱が回収され得る。熔融燃焼炉の二次燃焼室の排ガスによりガスタービンを駆動させることができる。排ガスは、集塵器に導入され塵埃が除去された後に大気中へ放出される。
【0020】
【作用】
本発明のガス化装置は、流動層炉の循環流により熱が拡散されるので、高負荷とすることができ、炉を小型にすることができる。
本発明においては、流動層炉が少量の空気で燃焼を維持できるので、流動層炉を低空気比低温度(450〜650°C)とし、発熱を最小限に抑えて、ゆるやかに燃焼させることにより、可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得ることができ、ガス、タール、チャーの可燃分の大部分を次段の熔融燃焼炉において利用できる。
本発明の方法又は装置においては、流動層炉の水平断面がほぼ円形にされるから、炉を耐圧構造とし、流動層炉を大気圧以上の加圧状態とし、炉内へ供給される可燃物から生成される可燃ガスの圧力を高圧とすることが容易である。高圧の可燃ガスは、高効率で運転できるガスタービンやボイラ・ガスタービン複合プラント用の燃料として使用可能であり、それ故、そのようなプラントにおいて可燃ガスを使用することにより、可燃物からのエネルギ回収の効率を向上できる。本発明の方法又は装置において、ごみ処理を主体とする場合は、臭気や有害燃焼ガスが流動層炉から漏れるのを防止するため、炉内圧を大気圧以下とすることが好ましいが、この場合にも流動層炉の水平断面が円形であることにより、炉壁は、容易に外圧に耐えることができる。
【0021】
本発明においては、流動層炉へ供給される中央流動化ガスの質量速度が、周辺流動化ガスの質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように転向され、それによって、流動媒体の沈降拡散する移動層が炉の中央部に形成されると共に、炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成される。炉内へ供給された可燃物は、移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ、流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化される。可燃物は、最初に、炉中央の下降する移動層の中で、主として揮発分が流動媒体(一般的には、硅砂を使用)の熱によりガス化される。そして、移動層を形成する中央流動化ガスの酸素含有量が、小さため、移動層内で生じた可燃ガスは、ほとんど燃焼されずに中央流動化ガスと共にフリーボードへ上昇され、発熱量の高い良質の生成ガスとなる。
【0022】
移動層において揮発分が失われ加熱された可燃物、即ち、固定炭素(チャー)やタール分等は、次に流動層内へ循環され、流動層内の比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガスと接触し燃焼され、燃焼ガス及び灰分に変わると共に炉内を450〜650℃に維持する燃焼熱を発生する。この燃焼熱により流動媒体が加熱され、加熱された流動媒体が炉周辺部上方で炉中央部へ転向され移動層内を下降することにより移動層内の温度を揮発分のガス化に必要な温度に維持する。可燃物が投入される炉中央部ほど低酸素状態であるので、高い可燃分を有する生成ガスを発生することができる。また、可燃物中の金属が不燃物取出口から未酸化の有価物として回収することができる。
【0023】
本発明においては、流動層炉において生成されたガス及び灰分その他の微粒子を熔融燃焼炉において燃焼させる場合、生成ガスが高可燃分を含むので、加熱用燃料を必要とすることなく、熔融炉内を1300℃以上の高温にすることができ、熔融炉内で灰分を充分熔融させることができる。熔融した灰は、熔融炉から取り出し水冷等の周知の方法により容易に固化させ得る。それ故、灰分の体積は、著しく減少され、また灰分中の有害金属は、固化されるので、灰分は、埋め立て処理可能な形態となる。本発明のその他の作用は、特許請求の範囲及び図面を参照する実施例の説明から明らかにされる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明するが、本発明は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定義されるものである。また、図1から図14において、同一の符号が付された部材は、同一部材又は対応する部材であり、各図面の説明において、重複した説明は、省略される。
【0025】
図1は、本発明のガス化方法を実施する第1実施例のガス化装置の主要部の図解的な縦断面図、図2は、図1のガス化装置の図解的な水平断面図である。図1に示されるガス化装置において、流動層炉2内へ炉底に配置される流動化ガス分散機構106を介し供給される流動化ガスは、炉底中央部4付近から炉内へ上向き流として供給される中央流動化ガス7及び炉底周辺部3から炉内へ上向き流として供給される周辺流動化ガス8から成る。
【0026】
第1表に示すように、中央流動化ガス7は、水蒸気、水蒸気と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つであり、周辺流動化ガス8は、酸素、酸素と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つである。中央流動化ガスの酸素含有量は、周辺流動化ガスの酸素含有量以下とされる。流動化ガス全体の空気量が、可燃物11の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下とされ、炉内は、還元雰囲気とされる。
【0027】
中央流動化ガス7の質量速度は、周辺流動化ガス8の質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流がデフレクタ6により炉の中央部へ向うように転向される。それによって、炉の中央部に流動媒体(一般的には硅砂を使用)が沈降拡散する移動層9が形成されると共に炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層10が形成される。流動媒体は、矢印118で示すように、炉周辺部の流動層10を上昇し、次にデフレクタ6により転向され、移動層9の上方へ流入し、移動層9中を下降し、次に矢印112で示すように、ガス分散機構106に沿って移動し、流動層10の下方へ流入することにより、流動層10と移動層9の中を矢印118及び112で示すように循環する。
【0028】
可燃物供給口104から移動層9の上部へ供給された可燃物11は、流動媒体と共に移動層9中を下降する間に、流動媒体の持つ熱により加熱され、主として揮発分がガス化される。移動層9には、酸素が無いか少ないため、ガス化された揮発分から成る生成ガスは燃焼されないで、移動層9中を矢印116のように抜ける。それ故、移動層9は、ガス化ゾーンGを形成する。フリーボード102へ移動した生成ガスは、矢印120で示すように上昇し、ガス出口108から生成ガス29として排出される。
【0029】
移動層9でガス化されない、主としてチャー(固定炭素分)やタール114は、移動層9の下部から、流動媒体と共に矢印112で示すように炉内周辺部の流動層10の下部へ移動し、比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガス8により燃焼され、部分酸化される。流動層10は、可燃物の酸化ゾーンSを形成する。流動層10内において、流動媒体は、流動層内の燃焼熱により加熱され高温となる。高温になった流動媒体は、矢印118で示すように、傾斜壁6により反転され、移動層9へ移り、再びガス化の熱源となる。流動層9の温度は、450〜650℃に維持され、抑制された燃焼反応が継続するようにされる。
【0030】
図1及び図2に示すガス化炉1によれば、流動層炉2にガス化ゾーンGと酸化ゾーンSが形成され、流動媒体が両ゾーンにおいて熱伝達媒体となることにより、ガス化ゾーンGにおいて、発熱量の高い良質の可燃ガスが生成され、酸化ゾーンSにおいては、ガス化困難なチャーやタール114を効率良く燃焼させることができる。それ故、可燃物のガス化効率を向上させることができ、良質の可燃ガスを生成することができる。
【0031】
図2に示される流動層炉1の水平断面において、ガス化ゾーンGを形成する移動層9は、炉中心部において円形であり、酸化ゾーンSを形成する流動層10は、移動層9のまわりにリング状に形成される。流動層10の外周にリング状の不燃物排出口5が配置される。ガス化炉1を円筒形とすることにより、高い炉内圧を容易に支持することができる。ガス化炉自体により炉内圧を受ける構造に代えて、ガス化炉の外部に別途圧力容器(図示しない)を設けるができる。
【0032】
図3は、本発明のガス化方法を実施する第2実施例のガス化装置の主要部の図解的な縦断面図、図4は、図3のガス化装置の図解的な水平断面図である。図3に示される第2実施例のガス化装置において、流動化ガスは、中央流動化ガス7及び周辺流動化ガス8に加え、炉底中央部と炉底周辺部の問の炉底中間部から炉内へ供給される中間流動化ガス7’を含む。中間流動化ガス7’の質量速度は、中央流動化ガス7の質量速度と周辺流動化ガス8の質量速度の間に選定される。中間流動化ガスは、水蒸気、水蒸気及び空気の混合気体、又は空気の3種の気体の内のいずれか1つである。
【0033】
図3のガス化装置において、図1のガス化装置の場合と同様に、中央流動化ガス7は、水蒸気、水蒸気と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つであり、周辺流動化ガス8は、酸素、酸素と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つである。中間流動化ガスの酸素含有量は、中央流動化ガスの酸素含有量と周辺流動化ガスの酸素含有量の間に選定される。それ故、流動化ガスの好適な組合せは、第2表の15通りである。各組合せにおいて、流動層炉の中央部から周辺部へ拡がっていくにつれて、酸素供給量が増加することが重要である。流動化ガス全体の空気量が、可燃物11の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下とされ、炉内は、還元雰囲気とされる。
【0034】
図1のガス化装置の場合と同様に、図3のガス化装置において、炉の中央部に流動媒体が沈降する移動層9が形成され、炉の周辺部に流動媒体が上昇する流動層10が形成される。流動媒体が、矢印112及び118で示すように移動層及び流動層を通り循環する。移動層9と流動層10の間においては、流動媒体が、主として横方向に拡散する中間層9’が形成される。移動層9及び中間層9’がガス化ゾーンGを形成し、流動層10が酸化ゾーンSを形成する。
【0035】
移動層9の上部へ投入された可燃物11は、流動媒体と共に移動層9中を下降する間に加熱され、その揮発分がガス化する。移動層9中でガス化されなかったチャー及びタール並びに一部の揮発分は、流動媒体と一緒に中間層9’及び流動層10へ移動し、部分的にガス化し部分的に燃焼される。中間層9’でガス化されない主としてチャー及びタールは、流動媒体と共に、炉周辺部の流動層10内へ移動し、比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガス8中で燃焼される。流動媒体は、流動層10中で加熱され、移動層9へ循環し、移動層9中の可燃物を加熱する。中間層の酸素濃度については、可燃物の種類(揮発分が多いか、チャー、タール分が多いか)等により、酸素濃度を低くしてガス化を主体にするか、酸素濃度を高くして酸化燃焼を主体にするかが選定される。
【0036】
図4に示す流動層炉の水平断面おいて、ガス化ゾーンを形成する移動層9は、炉中心部において円形であり、その外周に沿って中間流動化ガス7’により形成される中間ゾーン9’があり、酸化ゾーンを形成する流動層10は、中間ゾーン9’のまわりにリング状に形成される。流動層10の外周にリング状の不燃物排出口5が配置される。ガス化炉1を円筒形とすることにより、高い炉内圧を容易に支持することができる。炉内圧は、ガス化炉自体で受けるか、またはガス化炉の外部に別途圧力容器を設けてそれにより受けることができる。
【0037】
図5は、本発明の第3実施例のガス化装置の図解的な垂直断面図である。図5のガス化装置1において、ごみ等の可燃物からなるガス化原料11は、ダブルダンパー12、圧縮フィーダ13、及び給塵フィーダ14により、ガス化装置1の流動層炉2へ供給される。圧縮フィーダ13は、ガス化原料をプラグ状に圧縮し、これにより炉内圧がシールされる。プラグ状に圧縮されたごみは、図示しないほぐし器によりばらばらにされ、給塵フィーダ14により炉内へ送られる。
【0038】
図5のガス化装置において、中央流動化ガス7及び周辺流動化ガス8は、図1の実施例と同様に供給され、それ故、図1の実施例と同様に、流動層炉2に還元雰囲気のガス化ゾーンと酸化ゾーンが形成される。流動媒体が両ゾーンにおいて熱伝達媒体となり、ガス化ゾーンにおいて、発熱量の高い良質の可燃ガスが生成され、また酸化ゾーンにおいて、ガス化困難なチャーやタール114が効率良く燃焼され、高いガス化効率と良質の可燃ガスが得られる。図5の実施例において、ダブルダンパー12とガス化炉1のフリーボード102に連通するルーツブロア15が設けられ、ごみの圧縮が不十分な場合に炉内から圧縮フィーダを通りダブルダンパ12へリークするガスを炉内へ戻す。好ましくは、ルーツブロア15は、ダブルダンパ12の上段部分が大気圧になるように、適当な量の空気及びガスをダブルダンパ12から吸引し炉内へ戻す。
【0039】
図5のガス化装置にいて、流動層炉2から不燃物を排出するため、不燃物排出口5、円錐形シュート16、定量排出器17、シール用第1スイング弁18、スイングカット弁19、シール用第2スイング弁20、トロンメル付き排出器23が、順に配置され、次のように作動される。
【0040】
(1)シール用第1スイング弁18が開にされ、第2スイング弁20が閉にされて炉内圧が第2スイング弁20でシールされる状態において、定量排出器17が運転され、流動媒体の砂を含む不燃物が、円錐形シュート16内からスイングカット弁19へ排出される。(2)スイングカット弁19が所定量の不燃物を受けると、定量排出器17がOFFされ、第1スイング弁18が閉にされて炉内圧が第1スイング弁18でシールされる。そして排出弁22が開にされスイングカット弁19内が大気圧に戻される。次に第2スイング弁20が完全に開にされ、そしてスイングカット19が開にされることにより、不燃物がトロンメル付き連続排出器23へ排出される。(3)第2スイング弁20が完全に閉にされた後に、均圧弁21が開にされ、第1スイング弁18の内部と円錐形シュート16の内部が均圧にされてから、第1スイング弁18が開にされ、最初の工程(1)へ戻る。これらの工程(1)〜(3)は、自動的に繰り返し運転される。
【0041】
トロンメル付き連続排出器23は、連続運転され、大きな不燃物27をトロンメルにより系外へ排出し、砂と小さな不燃物を砂循環エレベータ24により輸送し、分級器25により微細な不燃物28を除去した後、砂は、ロックホッパ26を介しガス化炉1へ戻される。このような不燃物排出機構は、2台のスイング弁が不燃物を受けずに圧力シール機能だけ有するので、第1及び第2スイング弁18、20のシール部における不燃物の噛込みを避けることができる。炉内圧が若干負圧でよい場合は、シール機能は不要である。
【0042】
図6は、本発明の第4実施例のガス化装置の図解的な垂直断面図である。図6のガス化装置において、ガス化原料11の供給とそれに関係する炉内圧のシールは、図5の不燃物の排出のための機構と同様に、スイングカット弁19、19’及びシール用第1及び第2スイング弁18の組合せを使用して行われる。圧縮フィーダ13は、除かれている。図6の実施例において、炉内から第1スイング弁18内へ漏れたガスは、排出弁22’及びブロア(図示しない)を介し、炉内へ戻される。また、第1スイング弁18を完全に閉じた後に均圧弁21が開とされ、スイングカット弁19内の圧力が炉内圧と同じにされる。
【0043】
図7は、本発明のガス化装置により製造される生成ガスの精製工程の1例を示すフロー図である。図7の精製工程において、ガス化装置1へガス化原料11及び流動化ガス7、8がガス化炉1へ供給される。ガス化装置1において生成された可燃生成ガスは、廃熱ボイラ31で熱が回収され冷却されて、サイクロン分離器32へ送られ、固形分37、38が分離される。その後、生成ガスは、水洗浄塔33において水により洗浄され冷却され、アルカリ洗浄塔34において硫化水素を除去され、その後、ガスホルダー35に貯留される。サイクロン分離器32で分離された固形分の内の未反応チャー37は、ガス化装置1へ戻され、残りの固形分38は、系外へ排出される。図5の実施例と同様に、ガス化装置1から排出された不燃物の内、大きな不燃物27は、系外へ排出され、砂は、ガス化装置1へ戻される。洗浄塔33、34から出る廃水は、廃水処理器36へ導入され、無害化処理される。
【0044】
図8は、ガス化装置1において発生した可燃生成ガス及び微粒子が、熔融燃焼炉41に導入されて高温燃焼され、灰が熔融される工程の1例を示すフロー図である。図8の工程において、ガス化装置1で製造された可燃分の多い生成ガスが、熔融燃焼炉41へ導入される。熔融燃焼炉41には、酸素、酸素と空気の混合気体、又は空気が吹き込まれ、生成ガス及び微粒子が1300°C以上で燃焼され、灰が熔融され、またダイオキシン、PCB等の有害物質が分解される。熔融燃焼炉41で熔融された灰44は、急冷されスラグとされ減量化される。熔融燃焼炉41で発生した燃焼排気ガスは、スクラバー42で急冷され、ダイオキシンの再合成が防止される。スクラバー41で急冷された排気ガスは、フィルター43において更に塵埃38が除去され、排気塔55から大気へ排出される。
【0045】
図9は、本発明の第5実施例のガス化及び熔融燃焼装置の垂直断面斜視図である。図9において、ガス化装置1は、図1の実施例とほぼ同一であるが、ガス出口108は、熔融燃焼炉41の可燃ガス入口142に連通されている。熔融燃焼炉41は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形一次燃焼室140、及び水平方向に傾斜する二次燃焼室150を含む。流動層炉2で発生された可燃ガス120及び微粒子は、可燃ガス入口142を介し一次燃焼室140へその軸線のまわりに旋回するように供給される。
【0046】
一次燃焼室140は、上端に始動バーナを備えると共に、燃焼用空気を軸線のまわりに旋回するように供給する複数の空気ノズル134を備える。二次燃焼室150は、、一次燃焼室140とその下端で連通されると共に、二次燃焼室の下方部分に配置され熔融灰分を排出可能な排出口152、排出口152の上方に配置される排気口154、一次燃焼室と連通する部分の付近に配置される助燃バーナ136、及び燃焼用空気を供給する空気ノズル134を備える。排気口154は、輻射板162を備え、輻射により排気口154から失われる熱量を減少させている。
【0047】
図10は、廃熱ボイラ及びタービンと組み合わせて使用される本発明の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図である。図10において、ガス化装置1は、排出器23から排出された大きな不燃物27及び分級器25から排出された微細な不燃物28を一緒に搬送するコンベヤ172を具備する。流動層炉2の下部から不燃物を取り出す円錐形シュート16のまわりに空気ジャケット185が配置され、高温の抜き出し砂により空気ジャケット185内の空気が加熱される。補助燃料Fが、熔融燃焼炉41の一次及び二次燃焼室140、150へ供給される。熔融燃焼炉41の排出口152から排出される熔融状態の灰44は、水室178に受け入れられ急冷されて、スラグ176として排出される。
【0048】
図10において、熔融燃焼炉41から排出される燃焼ガスは、廃熱ボイラ31、エコノマイザ183、空気予熱器186、集塵器43、誘引通風機54を経て大気へ排出される。空気予熱器186から出た燃焼ガスは、集塵器43に入る前に、消石灰等の中和剤Nを添加される。水Wがエコノマイザ183へ供給され、予熱された後、ボイラ31で加熱されて蒸気にされ、蒸気タービンSTを駆動する。空気Aが空気予熱器186へ供給され、加熱された後、空気ジャケット185で更に加熱され、空気管184を介し、熔融燃焼炉41、及び必要に応じてフリーボード102へ供給される。
【0049】
廃熱ボイラ31、エコノマイザ183、及び空気予熱器186の底部に溜まる微粒子180、190は、砂循環エレベータ24で分級器25へ搬送され微細な不燃物28が除去され、流動層炉2へ戻される。フィルター43において分離される飛灰38は、高温で揮散したNa、Kなどのアルカリ金属塩を含むので、処理器194において薬品により処理される。
【0050】
図10の装置においては、流動層炉2の燃焼が低空気比による低温部分燃焼とされ、流動層温度が450°C〜650°Cに維持されることにより、高熱量の可燃ガスを発生させることができる。また、低空気比により還元雰囲気で燃焼が行われるので、不燃物中に鉄、アルミが未酸化の有価物として得られる。流動層炉2で発生された高熱量の可燃ガス及びチャーは、熔融燃焼炉41において、1300°C以上の高温燃焼することができ、灰を熔融させ、ダイオキシンを分解させることができる。
【0051】
図11は、ガス冷却室280と組み合わせて使用される本発明の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図である。図11において、ガス化装置1、熔融燃焼炉41、水室178、集塵器43、誘引通風機54等は、図10と同様である。図11においては、廃熱ボイラに代えて、ガス冷却器280、独立空気予熱器188が設けられ、熔融燃焼炉41から高温燃焼排ガスを耐火断熱被覆された高温ダクト278を介してガス冷却器280に導入する。ガス冷却器280において、燃焼ガスは、微細水噴霧により、瞬時に減温され、ダイオキシンの再合成が防止される。高温ダクト278の排ガス流速は、5m/秒以下の低速とされる。ガス冷却器280の上部に温水発生器283が配置される。空気予熱器188で加熱された空気がガス化炉1のフリーボード102及び熔融燃焼炉41へ供給される。
【0052】
図12は、廃熱ボイラ31及び反応塔310と組み合わせて使用される本発明の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図である。図12において、ガス化装置1、熔融燃焼炉41、水室178、廃熱ボイラ31、蒸気タービンST、エコノマイザ183、空気予熱器186、集塵器43、誘因通風機54等は、図10と同様である。図12においては、廃熱ボイラ31とエコノマイザ183の間に、反応塔310、スーパーヒータ加熱燃焼器320が配置される。反応塔310において、消石灰スラリー等の中和剤Nが燃焼排ガスに添加され、HClが除去される。反応塔310から排出される固体微粒子312は、廃熱ボイラ31から排出される固体微粒子312と一緒に砂循環エレベータ24により分級器25へ送られる。加熱燃焼器320において、未燃焼ガス及び補助燃料Fを燃焼させ、蒸気温度を500°C程度に上げる。図12の装置においては、蒸気が高温高圧であることと、空気比が小さく排ガスの持ち出し顕熱が小さいことにより、発電効率を約30%とすることができる。
【0053】
図13は、本発明の実施例のガス化コジェネレーション型の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図である。図13において、ガス化装置1、熔融燃焼炉41、水室178、廃熱ボイラ31、集塵器43、誘引通風機54等は、図10の装置と同様である。図13においては、廃熱ボイラ31と集塵器43の間に反応塔310が配置され、反応塔310において、消石灰スラリー等の中和剤Nが燃焼排ガスに添加され、HClが除去される。反応塔310の排ガスが、集塵器43を経てガスタービン420で使用される。ガスタービン420においては、空気Aが圧縮機Cにより圧縮され燃焼器CCに供給され、燃焼器CCおいて燃料Fが燃焼され、この燃焼ガス及び圧縮機410で圧縮されて燃焼器CCへ供給され排ガスが、タービンTの作動流体となる。ガスタービン420の排気ガスは、スーパーヒータ430、節炭器440、及び空気予熱器450を順に通過され、誘因通風機54により大気へ放出される。廃熱ボイラ31において発生された蒸気が、スーパーヒータ430において、ガスタービン420の排気ガスにより加熱され、蒸気タービンSTへ供給される。
【0054】
図14は、本発明の実施例の加圧ガス化複合発電型の流動層ガス化及び熔融燃焼方法の工程を示すフロー図である。加圧型のガス化炉1で生成された高温高圧の生成ガス29は、廃熱ボイラ31’へ導入され、蒸気を発生させると共にそれ自体は冷却される。廃熱ボイラを出た生成ガスは、2分され、一方が熔融燃焼炉41へ他方が中和剤Nを添加されHClが中和されて集塵器43’へ導入される。集塵器43’において、温度低下により固化した生成ガス中の低融点物質が、生成ガスから分離されて熔融燃焼炉41へ送られ、熔融される。低融点物質が除去された生成ガスが、ガスタービンGTにおいて燃料ガスとして利用される。ガスタービンGTの排気ガスは、スーパーヒータSH、エコノマイザECoで熱交換され、その後、排ガス処理器510で処理され、大気中へ放出される。熔融燃焼炉41の排気ガスは、熱交換器EX、集塵器43を経て、排ガス処理器510へ導入される。熔融炉から排出された熔融灰44は、急冷しスラグにされる。集塵器43から排出された固形分38は、処理器194において薬品処理される。
【0055】
図14の工程によれば、廃棄物から生成されたガスが、HCl及び固形分が除去された後、燃料として使用されるから、ガスタービンを腐食させるることがなく、また、HClが除去されているので、ガスタービン排気ガスにより高温の蒸気を発生させることができる。
【0056】
【発明の効果】
(1)本発明のガス化装置は、流動層炉の循環流により熱が拡散されるので、高負荷とすることができ、炉を小型にすることができる。
【0057】
(2)本発明においては、流動層炉が少量の空気で燃焼を維持できるので、流動層炉を低空気比低温度(450〜650°C)とし、発熱を最小限に抑えて、ゆるやかに燃焼させることにより、可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得ることができ、ガス、タール、チャーの可燃分の大部分を次段の熔融燃焼炉において利用できる。
【0058】
(3)本発明においては、流動層炉の循環流により大きな不燃物も容易に排出できる。また、不燃物中の鉄、アルミが、未酸化の有価物として利用できる。
【0059】
(4)本発明によれば、ごみ処理を無害化し、高いエネルギ利用率を有する方法又は設備が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施例のガス化装置の主要部の図解的な垂直断面図。
【図2】
図1のガス化装置の流動層炉の図解的な水平断面図。
【図3】
本発明の第2実施例のガス化装置の主要部の図解的な垂直断面図。
【図4】
図2のガス化装置の流動層炉の図解的な水平断面図。
【図5】
本発明の第3実施例のガス化装置の図解的な垂直断面図。
【図6】
本発明の第4実施例のガス化装置の図解的な垂直断面図。
【図7】
生成ガスの精製工程の1例を示すフロー図。
【図8】
灰が熔融される工程の1例を示すフロー図。
【図9】
本発明の第5実施例のガス化及び熔融燃焼装置の図解的な垂直断面斜視図。
【図10】
廃熱ボイラ及びタービンと組み合わせて使用される本発明の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図。
【図11】
ガス冷却室と組み合わせて使用される本発明の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図。
【図12】
廃熱ボイラ及び反応塔と組み合わせて使用される本発明の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図。
【図13】
本発明のガス化コジェネレーション型の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図。
【図14】
本発明の加圧ガス化複合発電型の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼方法の工程を示すフロー図。
【符号の説明】
1;ガス化装置、2;流動層炉、3;炉底周辺部、4;炉底中央部、5;不燃物排出口、6;傾斜壁、7;中央流動化ガス、7’;中間流動化ガス、8;周辺流動化ガス、9;移動層、9’;中間層、10;流動層、11;ガス化原料(可燃物)、12;ダブルダンパー、13;圧縮フィーダ、14;給塵フィーダ、15;ルーツブロア、16;円錐形シュート、17;定量排出器、18、20;スイング弁、19、19’;スイングカット弁、22;排出弁、23;トロンメル付き連続排出器、24;砂循環エレベータ、25;分級器、27、28;不燃物、29;生成ガス、31、31’;廃熱ボイラ、32;サイクロン分離機、36;廃水処理器、37;未反応チャー、38;固形分、41;熔融燃焼炉、43、43’;集塵器、44;熔融灰、54;誘引通風機、55;排気塔、102;フリーボード、104;可燃物供給口、106;ガス分散機構、108;ガス出口、114;チャー・タール、134;助燃バーナ、140;一次燃焼室、142;可燃ガス入口、150;二次燃焼室、162;輻射板、176;スラグ、178;水室、183;エコノマイザ、185;空気ジャケット、186、188;空気予熱器、194、510;処理器、280;ガス冷却器、310;反応塔、320;スーパーヒータ加熱燃焼器、420;ガスタービン、A;空気、C;圧縮機、CC;燃焼器、ECo;エコノマイザ、F;補助燃料、G;ガス化ゾーン、N;中和剤、S;酸化ゾーン、SH;スーパーヒータ、ST;蒸気タービン、T;タービン、W;水。
 
訂正の要旨 1 特許請求の範囲の記載に関して
訂正事項1
請求項1に記載の、「・・炉内を450℃〜650℃に維持し、ガス化してガスとチャーを生成し、該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを旋回熔融炉に供給して・・」を「・・炉内を450℃〜650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して・・」と訂正する。
訂正事項2
請求項10に記載の、「・・炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し、前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスとチャーを燃焼して・・」を「・・炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して・・」と訂正する。
訂正事項3
請求項16に記載の、「・・該廃棄物を該流動層炉に供給し、ガス化してガスとチャーを生成し、該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを旋回熔融炉に供給して・・」を「・・該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して・・」と訂正する。
訂正事項4
請求項19に記載の「・・該廃棄物を該流動層炉に供給し、ガス化してガスとチャーを生成し、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを旋回熔融炉に供給して・・」を「・・該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して・・」と訂正する。
2 発明の詳細な説明の記載に関して
訂正事項5
段落番号【0009】に記載の「【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明の廃棄物の処理方法の1態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、炉内を450℃〜650℃に維持し、ガス化してガスとチャーを生成し、該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
更に、前記流動媒体の循環流は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成される。
前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは、ともに空気である。
また、前記流動層炉へ供給される流動化ガスは、廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含む。
また、前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出する。
更に、前記流動媒体は砂である。
本発明のガス化及び熔融燃焼装置は、廃棄物をガス化する流動層炉と、該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において、前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え、該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し、炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し、前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスとチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成される。
前記流動化ガス供給手段は、質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と、質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなる。
更に、前記熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり、該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ、該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され、前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出する。
本発明の廃棄物の処理方法の他の態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、ガス化してガスとチャーを生成し、該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
本発明の廃棄物の処理方法の更に他の態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり、該廃棄物を該流動層炉に供給し、ガス化してガスとチャーを生成し、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉の炉内は、450℃〜650℃に維持される。
また、前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
更に、前記不燃物と流動媒体は、前記炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、該不燃物と該流動媒体は分別される。
本発明においては、可燃物が流動層炉で可燃ガスにガス化される。本発明の方法において、流動層炉の水平断面がほぼ円形にされ、流動層炉へ供給される流動化ガスが、炉底中央部付近から炉内へ供給される中央流動化ガス及び炉底周辺部から炉内へ供給される周辺流動化ガスから成り、中央流動化ガスの質量速度が、周辺流動化ガスの質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように傾斜壁により転向され、それによって、炉の中央部に流動媒体(一般的には、硅砂を使用)が沈降拡散する移動層が形成されると共に炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成され、炉内へ供給される可燃物が、移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ、流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化され、中央流動化ガスの酸素含有量が、周辺流動化ガスの酸素含有量以下であり、流動層の温度が450〜650℃に維持される。」を「【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明の廃棄物の処理方法の1態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、炉内を450℃〜650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
更に、前記流動媒体の循環流は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成される。
前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは、ともに空気である。
また、前記流動層炉へ供給される流動化ガスは、廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含む。
また、前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出する。
更に、前記流動媒体は砂である。
本発明のガス化及び熔融燃焼装置は、廃棄物をガス化する流動層炉と、該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において、前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え、該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し、炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成される。
前記流動化ガス供給手段は、質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と、質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなる。
更に、前記熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり、該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ、該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され、前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出する。
本発明の廃棄物の処理方法の他の態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
本発明の廃棄物の処理方法の更に他の態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり、該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉の炉内は、450℃〜650℃に維持される。
また、前記流動層炉は、流動層温度が450℃〜650℃に維持される。
更に、前記不燃物と流動媒体は、前記炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、該不燃物と該流動媒体は分別される。
本発明においては、可燃物が流動層炉で可燃ガスにガス化される。本発明の方法において、流動層炉の水平断面がほぼ円形にされ、流動層炉へ供給される流動化ガスが、炉底中央部付近から炉内へ供給される中央流動化ガス及び炉底周辺部から炉内へ供給される周辺流動化ガスから成り、中央流動化ガスの質量速度が、周辺流動化ガスの質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように傾斜壁により転向され、それによって、炉の中央部に流動媒体(一般的には、硅砂を使用)が沈降拡散する移動層が形成されると共に炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成され、炉内へ供給される可燃物が、移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ、流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化され、中央流動化ガスの酸素含有量が、周辺流動化ガスの酸素含有量以下であり、流動層の温度が450〜650℃に維持される。」と訂正する。
異議決定日 2002-06-10 
出願番号 特願平7-22000
審決分類 P 1 651・ 121- YA (F23C)
P 1 651・ 03- YA (F23C)
最終処分 維持  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 岡本 昌直
原 慧
登録日 2001-01-26 
登録番号 特許第3153091号(P3153091)
権利者 株式会社荏原製作所
発明の名称 廃棄物の処理方法及びガス化及び熔融燃焼装置  
代理人 大野 聖二  
代理人 大野 聖二  
代理人 塩出 洋三  
代理人 塩出 真一  
代理人 渡邊 勇  
代理人 渡邊 勇  
代理人 佐藤 孝雄  

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