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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23G 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23G |
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管理番号 | 1064471 |
異議申立番号 | 異議2000-70878 |
総通号数 | 34 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-09-02 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-02-23 |
確定日 | 2002-08-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2974204号「γ-リノレン酸含有ゼリー状キャンディー及びその製造法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2974204号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第2974204号の請求項1乃至請求項5に係る発明についての出願は、平成8年2月20日に特願平8-58455号として出願され、平成11年9月3日にその特許の設定登録がなされ、押谷泰紀より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年2月18日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、訂正拒絶理由通知に対して手続補正書が提出されたものである。 II.訂正の適否についての判断 1.訂正請求に対する補正の適否について 特許権者は、平成14年2月18日付訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の項の請求項1及び請求項2における「ゲル化剤0.3〜15重量%」を「ゲル化剤0.5〜15重量%」と、並びに、段落【0004】、【0005】及び【0017】における「ゲル化剤0.3〜15重量%」を「ゲル化剤0.5〜15重量%」と補正することを求めている。 しかし、上記補正は、いずれも「ゲル化剤0.3〜15重量%」を「ゲル化剤0.5〜15重量%」と訂正事項を変更するものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものと認められ、特許法120条の4,3項において準用する同法131条2項の規定に違反するものであり、採用しない。 2.訂正請求について 訂正明細書によると、「特許請求の範囲」の請求項1及び請求項2において、「ゲル化剤」を「ゲル化剤0.3〜15重量%」と、並びに「発明の詳細な説明」の段落【0004】、【0005】及び【0017】中の「ゲル化剤」について「ゲル化剤0.3〜15重量%」と訂正することを求めている。 しかし、「ゲル化剤」の配合量を「0.3〜15重量%」とすることは、願書に添付した明細書に記載されておらず、また、これが出願時の技術常識であるともいえないので、上記訂正は、願書に添付した明細書の範囲内においてした訂正ではない。 そうすると、上記訂正は、特許法120条の4、3項で準用する同法126条2項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 III.特許異議申立について 1.本件発明 本件請求項1乃至請求項5に係る発明(以下、「本件発明1乃至5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1乃至請求項5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】γ-リノレン酸を含有する油脂0.3〜15重量%、ゲル化剤0.5〜13重量%、水及び糖類からなることを特徴とするγ-リノレン酸含有ゼリー状キャンディー。 【請求項2】γ-リノレン酸を含有する油脂0.3〜15重量%、ゲル化剤0.5〜13重量%、水及び糖類、風味添加剤からなることを特徴とするγ-リノレン酸含有ゼリー状キャンディー。 【請求項3】請求項1記載のγ-リノレン酸含有ゼリー状キャンディーを製造するにあたり、糖類、ゲル化剤及び水の混合物にγ-リノレン酸を含有する油脂を添加することを特徴とするγ-リノレン酸含有ゼリー状キャンディーの製造法。 【請求項4】請求項2記載のγ-リノレン酸含有ゼリー状キャンディーを製造するにあたり、糖類、ゲル化剤、水、風味添加剤の混合物にγ-リノレン酸を含有する油脂を添加することを特徴とするγ-リノレン酸含有ゼリー状キャンディーの製造法。 【請求項5】γ-リノレン酸の含有する油脂が分散液であることを特徴とする請求項3あるいは4記載のγ-リノレン酸含有ゼリー状キャンディーの製造法。」 2.特許法29条2項違反について 当審が、平成13年12月10日付で通知した取消理由において引用した刊行物1(「飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズNo.22 γ-リノレン酸(ガンマーリノレン酸)」(平成6年3月18日菓子総合技術センター発行)1〜10頁)には、(a)「バイオγ-リノレン酸油GLARO25とは世界に先駆けて、本邦で発酵法により工業生産されている機能性食品素材γ-リノレン酸油の商品名である。」(1頁右欄4行〜2頁左欄2行)、(b)「塚本らは、γ-リノレン酸のアルコール代謝への関与を見るために、ヒトおよび動物で実験を行い、影響を確認した。いずれの実験系においても、バイオγ-リノレン酸油GLARO25投与群はコントロール群に比較して、アルコールの消失速度の増加が認められ、またアルコールの代謝産物であるアセテートとアセトンの消失速度の増加も認められた。ヒトにおける試験では、γ-リノレン酸投与前後の血中アルコール濃度の変化(図3)とアルコール酸化能力の変化(表6)をみている。この結果、γ-リノレン酸の摂取により、アルコール消失速度及びアルコール酸化能力の増加が確認された。」(7頁右欄下9行〜8頁3行)、(c)「また水への溶解性はないので、乳化剤の併用も必要である。現在、清涼飲料、キャンデー、ゼリー、育児用粉乳などへの利用がはかられている。その利用例を表8,9,10に示した。」(9頁右欄9〜12行)、並びに、(d)「表9」には、「(1)ペクチンゼリーへの利用例」として、「原材料」及び「配合率(%)」の欄に、それぞれ、「水飴 48」、「ソルビット 25」、「マルチトール 19」、「ペクチン 2」、「バイオ-γ-リノレン酸油 1.8」、「クエン酸 0.8」、「香料 着色料 ビタミンC 若干量 」が記載され、また、「4g/粒とし、1粒あたりγ-リノレン酸(純品換算)15mg配合。」との記載もある。 同刊行物2(特開平6-169696号公報)には、(e)「グミ-と言われるゼリ-キヤンデ-は砂糖・水飴及びゼラチンを煮詰めた液に果汁・酸味料・色素・香料などを混合し、型に流し込み冷却、ゲル化させることにより製造される。・・・(略)・・・ゼリ-キヤンデ-のゼリ-化剤としてはゼラチン以外にペクチン・寒天・でん粉が知られている・・・」(2頁左欄18〜28行)、(f)「【実施例】以下本発明の実施例を示す。 試料製造方法 (1)グラニユ-糖25g、水飴35gを鍋に秤入する。 (2)ゼラチン又これと加工でん粉の混合物をビーカーに取り水20mlを加え温湯につけ攪拌しつつ70度Cに昇温させる。 (3)果汁20g、クエン酸0.5gを加え溶解させる。 (1)に(2)を加え攪拌しつつ加温し95-98度Cで約20分加熱しブリツクス70度の飴液を作る。液を85度Cに冷やし(3)を加え充分に混和する。85度Cに再加熱しモルデングスターチに形成された直径1.5cm深さ1.5cmの穴に注ぎ、スターチをかぶせ約48時間放置する。スターチからグミ-を取り出し物性測定、食味評価の試料とした。」(3頁左欄15〜30行)が記載されている。 同刊行物3(尾崎準一監修「食品加工法」(昭和42年11月20日朝倉書店発行)119〜129頁)には、「噛みキャンデーは口の中で噛みしゃぶるキャンデー類であって、キャラメル、ゼリー、ガム類のようなものである。砂糖、水飴の他に油脂、牛乳などを原料とするものであるが、水分は7〜15%の程度でこの種のものは、種々の原料を混和するので、乳化剤を使用する必要がある。」(121頁5〜8行)が記載されている。 (本件発明2について) 本件発明2と刊行物1の特に(d)に記載された事項とを対比するに、(d)に「水」の量の記載はないものの、ペクチンゼリ-には、ゼリー状を呈する程度の水分が含まれることは明らかであり、また、本件明細書の「実施例2」における「砂糖の量を36.1部に変更し、ゼラチンの替わりに、ペクチン1.2部を用いた以外は実施例1と同様にして、ゼリー状キャンディーを作成し」という記載を踏まえると、刊行物1の(d)に係る「γ-リノレン酸を含有する油脂」および「ゲル化剤」の量は、本件発明2におけるそれらの量に包含されるといえるから、結局、前者では「ゼリー状キャンディー」であるのに対して、後者では「ペクチンゼリ-」である点で相違しているものの、その余の点について両者は一致している。 ここで、本件発明2に係る「ゼリー状キャンディー」は、本件明細書の段落【0014】の「本発明でいうゼリー状とは、糖類、水の存在化でゲル化剤により、弾性、粘性、粘弾性、剛性などの物性をもつ状態のことであり、糖類を65重量%以上、水を10重量%以上、ゼラチンを含む場合は、弾力性のあるゼリー状(グミ状)になり、嗜好性の点、物をかむ能力を養う点からグミ状になるのが好ましい。」という記載に照らし、「ゲル化剤」として「ペクチン」を使用した場合、グミ状を呈するかは不明であるが、一応グミ状を示すとして上記相違点を検討する。 しかして、刊行物1の(c)に記載のように、γ-リノレン酸を含有する油脂は、「清涼飲料、キャンデー、ゼリー、育児用粉乳」など各種の食品への利用がはかられていること、及び、刊行物2に記載されているように、「グミ-キャンデー」は、普通の食品の形態であることを併せ考えると、刊行物1の「ペクチンゼリ-」に代えて「ゼリー状キャンディー」にしてみることは当業者にとって格別困難なことではない。 また、本件発明の効果として、「本発明のγ-リノレン酸含有ゼリー状キャンディーはオイルの漏出が少なく、摂取しやすく、又酒酔いの程度を緩和させるのに有用である。」(本件明細書段落【0036】)旨記載されているが、「摂取しやすい」ことは、その形態からして明らかであり、「酒酔いの程度を緩和させる」ことは、刊行物1の(b)に記載の効果である。 そして、「オイルの漏出が少ない」ことを検討するに、本件明細書の「表1」には、「オイルの漏出」として、本件実施例1乃至8に係る製品では、いずれも「○」の評価がなされているところ、「実施例1」には、「次いでγ-リノレン酸を20%含有する油脂5.9部に、グリセリン脂肪酸エステル(乳化剤)0.3部を加え撹拌して得られた、γ-リノレン酸を含有する油脂の乳化液を添加し、・・・」と記載され、実施例2乃至8は、いずれも実施例1を引用するものであるから、上記実施例での評価は、「乳化剤」を添加した場合のものである。 しかるに、刊行物1の(c)には、γ-リノレン酸を含有する油脂は、「水への溶解性はないので、乳化剤の併用も必要である」こと、また、刊行物3には、噛みキャンデーに関し、「砂糖、水飴の他に油脂、牛乳などを原料とするものであるが、水分は7〜15%の程度でこの種のものは、種々の原料を混和するので、乳化剤を使用する必要がある。」ことの記載があり、これらの記載を踏まえると、「オイルの漏出が少ない」ことは、「ゼリー状キャンデー」としたことよりも、むしろ「乳化剤」を添加したことに起因する効果であると解され、これを本件発明により奏される効果であるとはいえない。 そうすると、本件発明に係る効果は、刊行物1乃至刊行物3に記載の事項から当業者が予測されるところを超えて優れているとはいえない。 (本件発明1について) 本件発明1は、本件発明2から、「風味添加剤」という構成を除いたものに相当するから、本件発明2についての判断と同様の理由により、刊行物1乃至刊行物3に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたといえる。 (本件発明3乃至5について) 本件発明3及び本件発明4は、それぞれ本件発明1及び本件発明2の「物」の発明を「物を生産する方法」の発明として表現したものにすぎないから、本件発明1及び本件発明2についての判断と同様の理由により、刊行物1乃至刊行物3に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたといえる。 また、刊行物1の(c)及び刊行物3には、「乳化剤」の使用について言及されており、これを使用した場合には、「γ-リノレン酸を含有する油脂」が「分散液」となることは明らかであるから、本件発明5は、刊行物1乃至刊行物3に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたといえる。 3.まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1乃至本件発明5についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2002-06-19 |
出願番号 | 特願平8-58455 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZB
(A23G)
P 1 651・ 113- ZB (A23G) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 冨士 良宏、引地 進 |
特許庁審判長 |
徳廣 正道 |
特許庁審判官 |
田中 久直 佐伯 裕子 |
登録日 | 1999-09-03 |
登録番号 | 特許第2974204号(P2974204) |
権利者 | 日本合成化学工業株式会社 |
発明の名称 | γ-リノレン酸含有ゼリー状キャンディー及びその製造法 |