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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  G08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  G08G
審判 全部申し立て 特174条1項  G08G
管理番号 1064488
異議申立番号 異議2000-72963  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-05-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-31 
確定日 2002-08-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第3003518号「ナビゲーション装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、平成13年8月30日付でされた異議の決定に対し、東京高等裁判所において決定取消の判決(平成13年(行ケ)第451号、平成14年6月4日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり決定する。 
結論 特許第3003518号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第3003518号の請求項1,2に係る特許は、平成6年10月17日に出願され、平成11年11月19日に設定の登録がなされた。
これに対し、桜井美恵子より特許異議の申し立てがあり、異議2000-72963号事件(本件異議事件)として当審において審理され、取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年2月9日に訂正請求書が提出された。前記本件異議事件に対し、平成13年8月30日付で「訂正を認める。特許第3003518号の請求項1に係る特許を取り消す。」との異議の決定がなされ、その謄本は同年9月17日特許権者等に送達されたが、特許権者はこれを不服として東京高等裁判所に出訴すると共に、本件特許について訂正審判の請求をした。同訂正審判の請求は訂正2002-39015号として審理され、平成14年3月20日、当該訂正を認める旨の審決がさなされ、その謄本は同年4月1日に特許権者に送達され、訂正審決は確定した。その後、本件に係る前記異議の決定について、東京高等裁判所において上記の決定取消の判決があったものである。

【2】訂正審決の内容
前記平成14年3月20日付訂正審決の内容は以下のとおりである。
「 結 論
特許第3003518号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。
理 由
1.訂正の内容
本件審判の訂正の要旨は、特許第3003518号(平成6年10月17日出願、平成11年11月19日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである。
(a)訂正事項a
請求項1における「地図画像を生成する地図画像生成手段と、」を「パース処理を行って地図画像を生成する地図画像生成手段と、」に訂正し、同じく請求項1の「具備したナビゲーション装置。」を「具備し、前記表示画面生成手段で生成された表示画面上では、前記立体情報画像は、前記地図画像に施されたパース処理の奥行き方向に進むに従って小さくして配置されていることを特徴とするナビゲーション装置。」と訂正し、請求項2を削除する。
(b)訂正事項b
特許明細書の段落【0007】の「地図画像を生成する地図画像生成手段と、」を「パース処理を行って地図画像を生成する地図画像生成手段と、」に訂正し、同段落の「具備したものである。」を「具備し、前記表示画面生成手段で生成された表示画面上では、前記立体情報画像は、前記地図画像に施されたパース処理の奥行き方向に進むに従って小さくして配置されていることを特徴とするものである。」と訂正し、段落【0008】を削除する。
(c)訂正事項c
特許明細書の段落【0031】の末尾に「図6と図9を比較すると明らかなように、図9に示す表示画面では、パース処理の奥行き方向にある立体情報画像(例えば「○○北」の交差点名)は、パース処理の手前方向にある立体情報画像(例えば「○○南」の交差点名)に比べて小さく表示されている。」を追加する。

2.当審の判断
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の有無
訂正事項aは、特許明細書の段落【0031】に「例えば図9に示すように鳥瞰図等のパース処理された地図上で立体情報表示を実現することによって、より立体感があり、地図全体が実世界に近い形で表現された把握しやすい地図を実現することもできる。」と記載され、図9に鳥瞰図上に立体情報を表示した地図が記載され、同地図においてパース処理の奥行き方向にある立体情報画像が手前にある立体情報画像よりも小さく表示されていることに基づいて、請求項1に「パース処理を行って地図画像を生成する地図画像生成手段と、」及び「具備し、前記表示画面生成手段で生成された表示画面上では、前記立体情報画像は、前記地図画像に施されたパース処理の奥行き方向に進むに従って小さくして配置されていることを特徴とするナビゲーション装置。」との構成を付加し、請求項2を削除するものであるから、該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではない。
訂正事項bは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、該訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではない。
訂正事項cは、図9に記載されていた事項を発明の詳細な説明に加えることにより特許請求の範囲の記載との整合を図るものであるから、該訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではない。

(2)独立特許要件
(2-1)訂正発明
訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「訂正発明」という。)は、次のとおりのものである。
「地図および地図に付随する情報を記憶する地図情報記憶手段と、現在位置または指定された位置を基準として地図の表示範囲を決定する表示範囲決定手段と、上記表示範囲決定手段によって決定された表示範囲に存在する地図データを上記地図情報記憶手段から読み出しパース処理を行って地図画像を生成する地図画像生成手段と、上記表示範囲決定手段によって決定された表示範囲に存在する情報を上記地図情報記憶手段から読み出し、実物を連想させる立体情報画像データベースから対応する立体情報画像を読み出して立体情報画像を生成する立体情報画像生成手段と、上記地図画像生成手段により生成された地図画像と上記立体情報画像生成手段によって生成された立体情報画像を組み合わせて表示画面を生成する表示画面生成手段と、上記表示画面生成手段によって生成された画面を表示する画面表示手段を具備し、前記表示画面生成手段で生成された表示画面上では、前記立体情報画像は、前記地図画像に施されたパース処理の奥行き方向に進むに従って小さくして配置されていることを特徴とするナビゲーション装置。」

(2-2)引用例
本件特許について、異議2000-72963号における特許異議の決定で引用された特開平4-366881号公報(以下、「引用例1」という。)には、「地図および地図に付随する情報を記憶する地図情報記憶手段1と、現在位置を含むエリアの地図データを上記地図情報記憶手段1から読み出して地図(画像)を生成する制御手段2と、上記現在位置を含むエリア内に存在する背景データ7の背景種別を上記地図情報記憶手段1から読み出し、少なくとも(一種類の)立体図形データを記録した手段から一種類の立体図形を読み出して立体図形を生成し、この立体図形に背景種別に対応する記号を重畳表示する制御手段2と、上記制御手段2により生成された地図(画像)と上記制御手段2によって生成された立体図形を組み合わせて表示画面を生成する上記制御手段2と、上記制御手段2によって生成された画面を表示する表示手段3を具備した交通情報提示装置。」との発明が記載されている。
同じく引用された、特開昭62-274469号公報(以下、「引用例2」という。)には、景観画像合成処理方式において「少なくとも標準的な形状で表わすべき景観要素、又は、実際に近い状態を表わすのが望ましい景観要素について、3次元構造を表わすデータを蓄積した手段(景観画像合成処理部内の景観要素標準形状データテーブル41の手段、又は、情報記憶装置1内の手段)から対応する3次元形状データを読み出して景観要素の3次元形状データを生成する」技術が記載されている。
同じく引用された、特開平2-244188号公報(以下、「引用例3」という。)、特開平3-26917号公報(以下、「引用例4」という。)には、ナビゲーション装置において、地図データに(鳥瞰図等の)パース処理を行って表示すべき地図を生成するとの周知技術が示されている。

(2-3)対比・判断
訂正発明の「前記表示画面生成手段で生成された表示画面上では、前記立体情報画像は、前記地図画像に施されたパース処理の奥行き方向に進むに従って小さくして配置されている」との構成は、引用例1乃至4の何れにも記載されていないものである。
そこで、前記構成の容易推考性につき検討すると、地図データにパース処理を行って表示すべき地図を生成すること自体は、引用例3、引用例4に示されるように周知技術であるから、この周知技術を引用例1に記載された発明に適用することにより、パース処理を行って生成した地図画像に立体情報画像を組み合わせて表示画面を生成するとの構成は、当業者が容易に想到し得たものということができる。
しかしながら、引用例3、引用例4は、パース処理を行って生成した地図画像と組み合わせるべき立体情報画像については何ら示すものではなく、また、引用例2には景観要素の3次元形状データを生成する技術が記載されており、実際に近い景観画像を得るとの目的に照らせば、画像の奥行き方向の景観要素は小さく表示されると解する余地もあるが、しかし、この景観要素は、パース処理を行って生成した地図画像に組み合わせて表示されるものではないから、そうすると、引用例2にも、パース処理を行って生成した地図画像と組み合わせるべき立体情報画像をパース処理の奥行き方向に進むに従って小さくすることが示唆されているとはいえない。
そうすると、訂正発明の「前記表示画面生成手段で生成された表示画面上では、前記立体情報画像は、前記地図画像に施されたパース処理の奥行き方向に進むに従って小さくして配置されている」との構成は、これを示唆する証拠が見当たらないのであるから、当業者が容易に想到し得たものとすることができない。
したがって、訂正発明は、引用例1乃至4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

3.むすび
以上のとおり、本件審判の請求は、平成六年法改正前の特許法126条第1項ただし書き第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項ないし第3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。」

【3】特許異議の申し立てについて
ア.特許異議申し立ての理由の概要
特許異議申立人 桜井恵美子は、証拠として甲第1号証(特開昭62-274469号公報)及び参考資料1(特開平4-366881号公報)、参考資料2(特開昭62-151884号公報)、参考資料3(特開平3-75999号公報)を提出し、大略以下の理由(1),(2)により、本件特許は取り消されるべき旨主張している。
(1)本件請求項1乃至2に係る本件特許発明は甲第1号証に記載された技術内容(及び参考資料1乃至3に示された周知技術)から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反する。
(2)請求項1及び2の記載内容の中の「実物を連想させる」という出願後に追加した事項は、本件特許に係る願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された範囲内から逸脱するものであって、適用される旧特許法第17条第2項の規定に違反し、又、前記「実物を連想させる」なる記載事項は、本件特許明細書の中の発明の詳細な説明には、その外縁が明確に示されておらず、したがってその「実物を連想させる」なる事項は、発明の詳細な説明に記載されていないものであり、旧特許法第36条第5項第1項の規定に違反する。
イ.本件発明
本件発明は、前記訂正審判事件の審判請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(前記【2】訂正審決の内容の理由2.(2-1)訂正発明 の項参照。)と認める。
ウ.判断
a.旧特許法第17条第2項(現行特許法第17条の2第3項)及び旧特許法第36条第5項第1号(同第36条第6項第1号)違反について
まず、特許異議申立人の主張する前記【3】ア.の理由(2)について判断する。本件発明の「実物を連想させる(立体情報画像データベース)」という事項に関連し、本件出願当初の明細書中に例えば「【0012】【作用】上記手段によって、様々な文字情報が地図上に乱雑に表示されることを避けると同時に、地図情報を実際に近い形で情報種類別に立体表示や実写表示あるいは動画表示することにより、実際の風景との対応を把握し易い表示画面が実現できるため、ドライバーが地図情報全体を直観的に把握することができ、表示画面の注視時間を短縮し、運転時の安全性を向上させることができる。」(本件特許掲載公報2頁4欄22-28行)、「【0034】さらに、本実施例では通常の2次元平面地図上に立体情報画像表示を行う場合について述べたが、例えば図9に示すような鳥瞰図等のパース処理された地図上で立体情報表示を実現することによって、より立体感があり、地図全体が実世界に近い形で表現された把握しやすい地図を実現することもできる。」(同、3頁6欄25-30行)との記載、及び(出願当初の願書に最初に添付した図面の)図4乃至図9の記載が認められ、これらの記載によれば、前記「実物を連想させる立体情報画像データベース」は、その実施例として依然として前記図4乃至9に示された立体情報画像を提示するものであって、出願当初の本願発明の「立体情報画像(データベース)」という構成の実質的内容に何らの変更をもたらすものとは認められない。即ち、前記「実物を連想させる」との文言は、本願出願当初の明細書の発明の詳細な説明中に記載した前記の「(地図情報を)実際に近い形で(情報種類別に)立体表示させる」或いは「(地図全体が)実世界に近い形で表現された把握しやすい」と同義であり、単にこれを分かり易い(と意図する)表現に言い換えたものにすぎないものというべきである。したがって、前記「実物を連想させる」という出願後に追加した事項が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された範囲内から逸脱するものであるとも、又、発明の詳細な説明に記載されていないものであるとも認めることはできず、かかる補正事項が旧特許法第17条第2項及び第36条第5項第1号の規定に違反するものとはいえない。
b.特許法第29条第2項違反について
次に、本件発明と当審が平成12年11月28日付で通知した取消理由において引用した引用例1乃至4に記載された発明との対比・判断(前記【3】ア.の理由(1))については、上記【2】訂正審決の内容の理由2.(2-2),(2-3)における訂正発明(本件発明)に対する独立特許要件についての対比・判断の内容をここに引用する。
即ち、訂正審決における訂正発明(本件発明)に対する独立特許要件についての上記判断と同じ判断内容により、本件発明は、引用例1乃至4(甲第1号証、参考資料1乃至3)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

【4】むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申し立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-08-30 
出願番号 特願平6-250530
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G08G)
P 1 651・ 534- Y (G08G)
P 1 651・ 55- Y (G08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高橋 学  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 紀本 孝
岩本 正義
登録日 1999-11-19 
登録番号 特許第3003518号(P3003518)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 ナビゲーション装置  
代理人 小笠原 史朗  
代理人 岩橋 文雄  

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