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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 B43K
管理番号 1065586
審判番号 不服2001-20396  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-11-15 
確定日 2002-10-04 
事件の表示 平成 6年特許願第317527号「シャ-プペンシル」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 6月11日出願公開、特開平 8-150798]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、昭和62年12月29日に出願された実願昭62-201469号の一部を、平成5年改正前の実用新案法第9条第1項で準用する平成5年改正前の特許法第44条第1項の規定により平成6年11月28日に出願された実願平6-15728号を、さらに、特許法第46条第1項の規定により同日に特許出願に変更したものであって、その発明は、平成13年12月17日付け手続補正書により全文補正された明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「先金3を有する軸筒1内に、芯タンクとその芯タンクの前方に連結されたチャックなどからなる芯繰り出し手段を有する筆記体Bをスプリングにより後方に付勢した状態で内設し、螺旋部材12の内面に螺旋溝13を設け、棒状体案内部材7の前方部分8内に、筆記体Bの芯タンク5に当接する受部9を設け、棒状体案内部材7の後方部分にスリット10を設け、このスリット10に棒状体受け部材16を摺動自在に配置し、棒状体受け部材16に突部16bを設け、突部16bを螺旋溝13に嵌合し、棒状体案内部材7の前方部分8が軸筒1の後方部内面にまで伸びて、棒状体案内部材7を軸筒1に対し着脱自在にかつ、前方部分を軸筒1に対し軸方向移動自在で、回転方向に回転不能にし、また、前記軸筒1の前端部近傍並びに、後端部近傍を除く軸筒の中間部分において肉厚をほぼ均一な状態に形成したことを特徴とするシャープペンシル。」(以下、「本願発明」という。)

2.先願明細書に記載された考案
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭62-155302号(実開平1-59686号公報)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という)には、以下の事項が記載されている。
「(1)先具1を有する筆記軸体2を先具1が突出する状態で外筒3内に収設し、筒状キャップ19の前部内面及び後部内面にそれぞれ環状突起4及び螺旋溝5を設け、筒状体6の外面にこの環状突起4が係合する係合部7を設け、この係合部7より前方の筒状体6の部分6a内に、筆記軸体2の芯タンク8に当接する受部9を設け、外筒3の後方部内面に対しこの筒状体6の前方部分6aを軸方向移動自在で、かつ回転方向にロックする構成とすると共に、筒状体6の後方部分6bにスリット10を設け、このスリット10に、消ゴム受台11を摺動自在に嵌め込んでなるシャープペンシル。」(実用新案登録請求の範囲)
「図中2は先具1を有する筆記軸体である。この筆記軸体2は、チャック21,バネ20,チャックリング23,クッション部24aを有するスリーブ24及びチャック21に連結された芯タンク8よりなる。先具1を外筒3の先端部に螺着することにより筆記軸体2は先具1が突出する状態で外筒3内に収設されている。
19は筒状キャップで、・・・筒状キャップ19の後方部内面には螺旋溝5が設けられている。
6は筒状キャップ19の後端から挿入される筒状体で、・・・・・筒状体6の前方部分6a内には筆記軸体2の芯タンク8に当接する受部,例えば受板9が設けられている。」(5頁7行〜6頁3行)
「外筒3の後方部内面には多角形部17が形成され、筒状体6の前方部分6aの外周には、多角形部17に嵌挿された多角形部18が形成されている。従って外筒3の後方部に対し筒状体6の前方部分6aが軸方向移動自在で、かつ回転方向にロックされることになる。」(6頁6〜11行)
「筒状体6の後方部分6bの対向する部分にはスリット10が設けられ、この両スリット10にはスリット10より挿入された消ゴム受台11の2つの挟持片12が後方に向くように摺動自在に嵌め込まれている。・・・筒状キャップ19の螺旋溝5には挟持片12に設けられた突起14が嵌合せしめられている。」(6頁16行〜7頁2行)
上記の記載及び図面の記載からみて、先願明細書には、
「先具1を有する外筒3内に、芯タンク8とその芯タンク8の前方に連結されたチャック21などからなる芯繰り出し手段を有する筆記軸体2をバネ20により後方に付勢した状態で内設し、筒状キャップ19の内面に螺旋溝5を設け、筒状体6の前方部分6a内に、筆記軸体2の芯タンク8に当接する受部9を設け、筒状体6の後方部分にスリット10を設け、このスリット10に消ゴム受台11を摺動自在に配置し、消ゴム受台11に突起14を設け、突起14を螺旋溝5に嵌合し、筒状体6の前方部分6aが外筒3の後方部内面にまで伸びて、筒状体6を外筒3に対し着脱自在にかつ、前方部分を外筒3に対し軸方向移動自在で、回転方向にロックした、シャープペンシル。」の考案が記載されていると認められる。

3.対比・判断
本願発明と上記先願明細書に記載された考案(以下、「先願考案」という。)を対比する。
先願考案の、「先具1」、「外筒3」、「筆記軸体2」、「バネ20」、「筒状キャップ19」、「筒状体6」、「消ゴム受台11」、「突起14」、「ロックした」は、それぞれ、本願発明の、「先金3」、「軸筒1」、「筆記体B」、「スプリング」、「螺旋部材12」、「棒状体案内部材7」、「棒状体受け部材16」、「突部16b」、「回転不能にした」に相当している。
そして、シャープペンシルにおいて、軸筒の前端部近傍並びに、後端部近傍を除く軸筒の中間部分において肉厚をほぼ均一な状態に形成する点は、周知(例えば、実願昭53-28207号(実開昭54-132339号)のマイクロフィルム、実願昭55-25504号(実開昭56-128290号)のマイクロフィルム、実願昭54-182260号(実開昭56-98490号)のマイクロフィルム。特に、図面を参照されたい。)であり、
先願明細書の図面第1図には、外筒(軸筒)の中間部分において、内方に突出した肉厚部を設ける点が記載されているが、先願明細書の10頁下から7、6行には、「第1図は本考案シャープペンシルの一実施例を示す縦断面図」と記載されているように、図面第1図は、先願考案の一実施例を記載したものにすぎず、先願明細書には、上記の点が必須であるとの記載も示唆もないから、先願考案は、「軸筒の前端部近傍並びに、後端部近傍を除く軸筒の中間部分において肉厚をほぼ均一な状態に形成」するものも包含する。
そうすると、本願発明は先願考案と同一であるということができる。

なお、出願人は、審判請求書において、
「(3)引用文献の説明
出願1には、外軸3の中間部内面に縮径部が形成されたシャープペンシルが開示されている。その縮径部は、芯タンクの曲がり、振れを防止するための縮径部と推測されます。
(4)本願発明と出願1との対比
一般的に、本願発明の軸筒1や出願1の外筒3は、生産性の向上の観点から、射出成形によって成形されています。また、肉厚の相違する部分がある成形を行うと、厚い部分の外周面に凹みが発生してしまうことも知られております。成形後における熱の収縮が均一にならないためであると言われています。いわいる、「ひけ」と称される現象であります。
即ち、審査官殿が引用した出願1の外筒3も例外ではなく、縮径部(言い換えると局部的に厚い部分)の外周面が成形終了後に極端に凹んでしまい、著しく見栄えを悪くし、その結果、製品としての価値を落としてしまうものであります。
これに対し、本願発明の軸筒1は、ほぼ均一な肉厚で成形されているため、その外周面には凹みなどが発生しないものであります。」と主張している。
しかしながら、本願発明は、前記のように、「軸筒1の前端部近傍並びに、後端部近傍を除く軸筒の中間部分において肉厚をほぼ均一な状態に形成した」点を構成要件として記載されているが、軸筒1の前端部近傍及び後端部近傍について、肉厚をほぼ均一な状態に形成したとは規定していないのであるから、上記「本願発明の軸筒1は、ほぼ均一な肉厚で成形されているため、その外周面には凹みなどが発生しない」との主張は、本願明細書の特許請求の範囲の記載に基づかないものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、先願明細書に記載された考案と同一であり、しかも、本願発明の発明者がその出願前の実用新案登録出願に係る上記の考案をした者と同一ではなく、また、本願の出願時において、その出願人が上記他の出願の出願人と同一でもないので、本願発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-07-19 
結審通知日 2002-07-30 
審決日 2002-08-13 
出願番号 特願平6-317527
審決分類 P 1 8・ 161- Z (B43K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原 光明砂川 充  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 白樫 泰子
鈴木 寛治
発明の名称 シャ-プペンシル  
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