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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1065773
審判番号 審判1997-10227  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-05-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-06-26 
確定日 2001-03-28 
事件の表示 平成1年特許願第29601号「フレキシブル配線基板及び電子部品」拒絶査定に対する審判事件(平成7年12月25日出願公告、特公平7-122713)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯等
本願は、平成1年2月10日〔優先権主張昭和63年7月11日〕の出願であって、その請求項(1)〜(3)に係る発明は、出願公告後平成8年12月16日付けの手続補正書により補正された明細書と図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項(1)〜(3)に特定された次のとおりのものである。
「(1)平板状のフレキシブル絶縁基板上に複数の導体パターンが形成され、前記フレキシブル絶縁基板にこれら導体パターンと交叉する方向の切り欠き部が複数列形成されてなる折り曲げ部を有するフレキシブル配線基板において、少なくとも前記切り欠き部から露出する前記導体パターンの一表面に前記フレキシブル基板よりも曲げ強さが低い保護用樹脂が隣接する前記切り欠き部間で不連続の形状に形成されてなることを特徴とするフレキシブル配線基板。(以下、「第1発明」という。)
(2)平板状のフレキシブル絶縁基板上に複数の導体パターンが形成され、前記フレキシブル絶縁基板にこれら導体パターンと交叉する方向の切り欠き部が複数列形成されてなる折り曲げ部を有するフレキシブル配線基板において、前記フレキシブル絶縁基板上の所定の領域にICチップを搭載してなるとともに、少なくとも前記切り欠き部から露出する前記導体パターンの一表面に前記フレキシブル基板よりも曲げ強さが低い保護用樹脂が隣接する前記切り欠き部間で不連続の形状に形成されてなることを特徴とするフレキシブル配線基板。(以下、「第2発明」という。)
(3)互いに離間して設けられた一方の電極端子群と他方の電極端子群を電気的に接続してなる接続手段を具備する電子部品において、前記接続手段として請求項1又は2記載のフレキシブル配線基板を用いたことを特徴とする電子部品。(以下、「第3発明」という。)」
2.原査定の拒絶理由
これに対して、原査定の拒絶の理由の概要は、本願第3発明は、本願出願前に頒布された実願昭57-86391号(実開昭58-188684号)のマイクロフイルム(昭和58年12月15日公開、以下、「第1引用例」という。)及び特開昭61-6832号公報(昭和61年1月13日公開、以下、「第2引用例」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というにある。
3.引用例
そして、上記第1引用例には、「本考案は電子表示装置に関し、特に集積回路を実装した半導体部品の取付構造に関する。」(第1頁第16行乃至第17行)、「フレキシブルプリント基板(以下FPCと云う)9,9’の集積回路からの出力端子10,10’はメタライズされた液晶表示素子11の外付け端子に直接、半田付け又は接着等により接続されている。更にFPC9,9’は集積回路8,8’が液晶表示素子の裏面にくる様に折り曲げられ、FPC9,9’の他の端子12,12’は液晶表示素子1の裏面に配置された、前記集積回路8、8’への信号入力用基板の端子へ接続されている。」(第4頁第2行乃至第11行)、及び「第4図ではFPCの基材にA・B部においてスリット穴が設けられている。よってA・B部においては、配線パターンがスリット穴部でブリッヂを形成している。本考案の様にFPCに直接集積回路を実装する方法をとると、FPCの基材は製造上3ミル厚以上必要となる。この厚みで配線パターンが外側になる様にFPCを折り曲げると、曲げ方により配線パターンが伸びて断線する事がある。又、厚いと完全に曲げきれない為基材の戻り力により、他の接続部に力がかかり、不良発生の原因にもなる。第4図は、その危険性を回避した方法である。‥‥‥第4,5図ではスリット穴、溝が2カ所ある事で説明したが、何カ所でもさしつかえない。‥‥‥以上本考案によると、液晶テレビ等、多端子を有し、製品をコンパクトにまとめたい様な製品に対し、製品外観、コスト、信頼性に於いて、非常に有効な手段である。」(第4頁第20行乃至第6頁第2行)との記載があり、結局、(i)平板状のフレキシブルプリント基板9上に複数の導体パターンが形成され、前記フレキシブルプリント基板9にこれら導体パターンと交叉する方向のスリット穴部A・Bが複数列形成されてなる折り曲げ部を有するフレキシブルプリント基板9。(ii)平板状のフレキシブルプリント基板9上に複数の導体パターンが形成され、前記フレキシブルプリント基板9にこれら導体パターンと交叉する方向のスリット穴部A・Bが複数列形成されてなる折り曲げ部を有するフレキシブルプリント基板9において、前記フレキシブルプリント基板9上の所定の領域に集積回路8,8’を搭載してなるもの。及び、(iii)互いに離間して設けられた出力端子10,10’と他の端子12,12’を電気的に接続してなる接続手段を具備する電子表示装置において、前記接続手段として上記(i)又は(ii)項記載のフレキシブルプリント基板9を用いたことを特徴とする電子表示装置。が記載されている。
また、上記第2引用例には、「第2の開孔部領域において折曲げた後、前記開孔部領域に樹脂層を形成したことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の実装体。」(特許請求の範囲第4項)及び「第3図の構成は、開口部4の折曲げたリード群6’の領域に樹脂10を塗布したものであって、リード群6’を電気的および機械的に保護せんとするものである。」(第2頁右下欄第10行乃至第13行)との記載がある。
4-1.対比・判断
そこで、本願第1発明と上記第1引用例に記載の考案とを対比すると、本願第1発明の「フレキシブル絶縁基板」、「切り欠き部」は、夫々第1引用例記載の考案の「フレキシブルプリント基板9」、「スリット穴部A・B」に相当するから、両者は、平板状のフレキシブル絶縁基板上に複数の導体パターンが形成され、前記フレキシブル絶縁基板にこれら導体パターンと交叉する方向の切り欠き部が複数列形成されてなる折り曲げ部を有するフレキシブル配線基板。の点で一致し、(1)本願第1発明では、少なくとも前記切り欠き部から露出する前記導体パターンの一表面に保護用樹脂が形成されるのに対して、第1引用例では、その点に関する記載が無い点、(2)本願第1発明では、保護用樹脂がフレキシブル基板よりも曲げ強さが低いのに対して、第1引用例では、そのような記載が無い点、(3)本願第1発明では、保護用樹脂が隣接する前記切り欠き部間で不連続の形状に形成されるのに対して、第1引用例では、そのような記載が無い点で相違する。
そこで、先ず、相違点(1)について検討すると、第2引用例の「開口部4」、「リード群6’」、「樹脂10」は、夫々本願第1発明の「切り欠き部」、「導体パターン」、「保護用樹脂」に相当するから、第2引用例には、「少なくとも前記切り欠き部から露出する前記導体パターンの一表面に保護用樹脂が形成される」点が記載されている。
そして、両引用例とも、同一技術分野に属するものであるから、第2引用例記載の保護用樹脂を第1引用例記載のものに適用することは、当業者であれば容易に為し得るものと認められる。
次いで、相違点(2)について検討すると、第2引用例記載の保護用樹脂には、「フレキシブル基板よりも曲げ強さが低い」との記載がないから、「フレキシブル基板よりも曲げ強さが低い」ものと、それ以外のものとが含まれ得ることになる。
そして、数多くある保護用樹脂の中から、必要に応じて任意のもの、例えば、「フレキシブル基板よりも曲げ強さが低い」ものを選択することは、当業者が適宜決定できる設計的な事項に過ぎない。
最後に、相違点(3)について検討すると、第2引用例の保護用樹脂10は、「開孔部4の折り曲げたリード群6’の領域」に塗布されるものであるから、第1引用例記載のスリット穴が一カ所であれば、第2引用例記載のように塗布され、第1引用例記載のスリット穴が2カ所であれば、第2引用例記載のように塗布されるところが2カ所(例えば、特開昭60-216573号公報第15図の折り曲げ穴18,接着剤23を参照。)生ずるに過ぎない。
してみれば、スリット穴が非常に接近して、塗布された塗料が混じり合う状況にでもならない限り、通常は、本願第1発明の「切り欠き部間で不連続」なものになる。
それゆえ、相違点(3)には、実質的な差異が、見いだせない。
4-2.対比・判断
そこで、本願第2発明と上記第1引用例に記載のものとを対比すると、本願第2発明の「フレキシブル絶縁基板」、「切り欠き部」、「ICチップ」は、夫々第1引用例記載の発明の「フレキシブルプリント基板9」、「スリット穴部A・B」、「集積回路8,8’」に相当するから、両者は、平板状のフレキシブル絶縁基板上に複数の導体パターンが形成され、前記フレキシブル絶縁基板にこれら導体パターンと交叉する方向の切り欠き部が複数列形成されてなる折り曲げ部を有するフレキシブル配線基板において、前記フレキシブル絶縁基板上の所定の領域にICチップを搭載してなるもの。の点で一致し、(1’)本願第2発明では、少なくとも前記切り欠き部から露出する前記導体パターンの一表面に保護用樹脂が形成されるのに対して、第1引用例では、その点に関する記載が無い点、(2’)本願第2発明では、保護用樹脂がフレキシブル基板よりも曲げ強さが低いのに対して、第1引用例では、そのような記載が無い点、(3’)本願第2発明では、保護用樹脂が隣接する前記切り欠き部間で不連続の形状に形成されるのに対して、第1引用例では、そのような記載が無い点で相違する。
そこで、先ず、相違点(1’)について検討すると、第2引用例の「開口部4」、「リード群6’」、「樹脂10」は、夫々本願第2発明の「切り欠き部」、「導体パターン」、「保護用樹脂」に相当するから、第2引用例には、「少なくとも前記切り欠き部から露出する前記導体パターンの一表面に保護用樹脂が形成される」点が記載されている。
そして、両引用例とも、同一技術分野に属するものであるから、第2引用例記載の保護用樹脂を第1引用例記載のものに適用することは、当業者であれば容易に為し得るものと認められる。
次いで、相違点(2’)について検討すると、第2引用例記載の保護用樹脂には、「フレキシブル基板よりも曲げ強さが低い」との記載がないから、「フレキシブル基板よりも曲げ強さが低い」ものと、それ以外のものとが含まれ得ることになる。 そして、数多くある保護用樹脂の中から、必要に応じて任意のもの、例えば、「フレキシブル基板よりも曲げ強さが低い」ものを選択することは、当業者が適宜決定できる設計的な事項に過ぎない。
最後に、相違点(3’)について検討すると、第2引用例の保護用樹脂10は、「開孔部4の折り曲げたリード群6’の領域」に塗布されるものであるから、第1引用例記載のスリット穴が一カ所であれば、第2引用例記載のように塗布され、第1引用例記載のスリット穴が2カ所であれば、第2引用例記載のように塗布されるところが2カ所(例えば、特開昭60-216573号公報第15図の折り曲げ穴18,接着剤23を参照。)生ずるに過ぎない。
してみれば、スリット穴が非常に接近して、塗布された塗料が混じり合う状況にでもならない限り、通常は、本願第2発明の「切り欠き部間で不連続」なものになる。
それゆえ、相違点(3’)には、実質的な差異が、見いだせない。
4-3.対比・判断
そこで、本願第3発明と上記第1引用例に記載のものとを対比すると、本願第1発明の「フレキシブル絶縁基板」、「切り欠き部」、「ICチップ」、「一方の電極端子群」、「他方の電極端子群」、「電子部品」は、夫々第1引用例記載の発明の「フレキシブルプリント基板9」、「スリット穴部A・B」、「集積回路8,8’」、「出力端子10,10’」、「他の端子12,12’」、「電子表示装置」に相当するから、両者は、互いに離間して設けられた一方の電極端子群と他方の電極端子群を電気的に接続してなる接続手段を具備する電子部品において、前記接続手段として請求項1又は2記載のフレキシブル配線基板を用いたことを特徴とする電子部品。の点で一致し、(1”)本願第3発明で引用している本願第1又は第2発明では、少なくとも前記切り欠き部から露出する前記導体パターンの一表面に保護用樹脂が形成されるのに対して、第1引用例では、その点に関する記載が無い点、(2”)本願第3発明で引用している第1又は第2発明では、保護用樹脂がフレキシブル基板よりも曲げ強さが低いのに対して、第1引用例では、そのような記載が無い点、(3”)本願第3発明で引用している第1又は第3発明では、保護用樹脂が隣接する前記切り欠き部間で不連続の形状に形成されるのに対して、第1引用例では、そのような記載が無い点で相違する。
そこで、先ず、相違点(1”)について検討すると、第2引用例の「開口部4」、「リード群6’」、「樹脂10」は、夫々本願第1発明の「切り欠き部」、「導体パターン」、「保護用樹脂」に相当するから、第2引用例には、「少なくとも前記切り欠き部から露出する前記導体パターンの一表面に保護用樹脂が形成される」点が記載されている。
そして、両引用例とも、同一技術分野に属するものであるから、第2引用例記載の保護用樹脂を第1引用例記載のものに適用することは、当業者であれば容易に為し得るものと認められる。
次いで、相違点(2”)について検討すると、第2引用例記載の保護用樹脂には、「フレキシブル基板よりも曲げ強さが低い」との記載がないから、「フレキシブル基板よりも曲げ強さが低い」ものと、それ以外のものとが含まれ得ることになる。 そして、数多くある保護用樹脂の中から、必要に応じて任意のもの、例えば、「フレキシブル基板よりも曲げ強さが低い」ものを選択することは、当業者が適宜決定できる設計的な事項に過ぎない。
最後に、相違点(3”)について検討すると、第2引用例の保護用樹脂10は、「開孔部4の折り曲げたリード群6’の領域」に塗布されるものであるから、第1引用例記載のスリット穴が一カ所であれば、第2引用例記載のように塗布され、第1引用例記載のスリット穴が2カ所であれば、第2引用例記載のように塗布されるところが2カ所(例えば、特開昭60-216573号公報第15図の折り曲げ穴18,接着剤23を参照。)生ずるに過ぎない。
してみれば、スリット穴が非常に接近して、塗布された塗料が混じり合う状況にでもならない限り、通常は、本願第3発明の「切り欠き部間で不連続」なものになる。
それゆえ、相違点(3”)には、実質的な差異が、見いだせない。
5.むすび
以上のとおりであるから、本願第1〜第3発明は、上記第1、第2引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、本件請求項1〜3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-04-13 
結審通知日 1999-04-27 
審決日 1999-05-10 
出願番号 特願平1-29601
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 津田 俊明  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 横林 秀治郎
河原 英雄
発明の名称 フレキシブル配線基板及び電子部品  
代理人 外川 英明  

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