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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  C04B
審判 全部申し立て 特174条1項  C04B
審判 全部申し立て 発明同一  C04B
管理番号 1065869
異議申立番号 異議2001-71965  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-01-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-18 
確定日 2002-07-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3126617号「高強度コンクリート組成物」の請求項1〜6に係る発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3126617号の請求項1〜5に係る発明の特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3126617号の出願は、平成7年2月22日(特許法第41条に基づく優先権主張:平成6年4月26日)に出願されたものであって、平成12年11月2日に特許の設定登録がなされ、その後、中村正實より、本件請求項1〜6に係る発明の特許につき、特許異議の申立がなされ、これに基づいて、取消理由通知がなされ、特許権者よりその指定期間内である平成14年5月7日に明細書の訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否
II-1.訂正事項
本件明細書につき、訂正請求書に添付された訂正明細書に記載されるとおりの次の(イ)〜(ハ)の訂正を求めるものである。
(イ)特許請求の範囲の請求項1における、
「片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと (メタ) アクリル酸とのエステル化で得られ下記の一般式(A)で表される単量体(a)と、下記の一般式(B)及び(C)で表される化合物の中から選ばれる1種以上の単量体(b)とを重合して得られる共重合体を必須成分とするコンクリート混和剤」を、
「片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと (メタ) アクリル酸とのエステル化で得られ下記の一般式(A)で表される単量体(a)と、下記の一般式(B)及び(C)で表される化合物の中から選ばれる1種以上の単量体(b)とを重合して得られる共重合体(オキシアルキレン系消泡剤の存在下に重合して得られたものを除く)を必須成分とするコンクリート混和剤」と訂正する。
(ロ)特許請求の範囲の請求項1における、
「n :50〜100の整数」を、
「n :60〜90の整数」と訂正する。
(ハ)特許請求の範囲の請求項6を削除する。

II-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、拡張・変更の存否
上記(イ)の訂正について
上記(イ)の訂正では、単量体(a)と単量体(b)とを重合して得られる共重合体から、「オキシアルキレン系消泡剤の存在下に重合して得られたもの」が除かれ、当該共重合体の規定するものが限定されることになるのであるので、この訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、当該(イ)の訂正は、先願明細書(後述)に記載の発明との同一を避けるためになされたものであって、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でなされるものであり、新規事項の追加には該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当しない。
上記(ロ)の訂正について
上記(ロ)の訂正では、一般式(A)で表される単量体(a)のCOO(AO)nX基におけるnの採る範囲を50〜100の整数から、60〜90の整数へと限定するものであって、この訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、当該(ロ)の訂正は、明細書の「本発明においては、オキシアルキレン基の鎖長が60〜90モルの範囲が特に硬化特性に優れるものである。」(段落0013)及び旧請求項6の記載から、直接的及び一義的に導き出されるものであって、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でなされるものであり、新規事項の追加には該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当しない。
上記(ハ)の訂正について
上記(ハ)の訂正は、請求項を削除するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、この訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でなされるものであり、新規事項の追加には該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当しないことは明らかなことである。

II-3.訂正の適否の結論
よって、上記訂正請求は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.本件発明
本件特許第3126617号の請求項1〜5に係る発明は、上記するように平成14年4月26日付で訂正請求がなされ、その請求どおり訂正された明細書の特許請求の範囲に記載される次のとおりのものである。
(以下、訂正後の請求項1〜5に係る発明を、それぞれ、必要に応じて、「本件発明1」〜「本件発明5」という)
【請求項1】片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと (メタ) アクリル酸とのエステル化で得られ下記の一般式(A)で表される単量体(a)と、下記の一般式(B)及び(C)で表される化合物の中から選ばれる1種以上の単量体(b)とを重合して得られる共重合体(オキシアルキレン系消泡剤の存在下に重合して得られたものを除く)を必須成分とするコンクリート混和剤をセメントに対して0.01〜0.5 重量%(固形分)添加してなる高強度コンクリート組成物。

《一般式(A)省略》

(式中、R1,R2 :水素、メチル基
m1 :0
AO :炭素数2〜3のオキシアルキレン基
n :60〜90の整数
X :炭素数1〜3のアルキル基
を表す。)

《一般式(B)省略》 《一般式(C)省略》

(式中、R3〜R5:水素、メチル基、(CH2)m2COOM2 R6 :水素、メチル基
M1,M2,Y:水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルキルアンモニウム
m2 :0〜2の整数
を表す。)
【請求項2】共重合体を構成する単量体(a)、単量体(b)の反応単位が単量体(a)/単量体(b)=1/99〜80/20(モル比) である請求項1記載の高強度コンクリート組成物。
【請求項3】共重合体の平均分子量が、重量平均分子量 (ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法/標準物質ポリスチレンスルホン酸ナトリウム/水系) で1,000〜500,000である請求項1又は2記載の高強度コンクリート組成物。
【請求項4】更に、公知のセメント混和剤を併用してなる請求項1〜3の何れか1項に記載の高強度コンクリート組成物。
【請求項5】併用する公知のセメント混和剤が、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸塩、フェノール・スルファニル酸塩ホルムアルデヒド縮合物、及び (メタ) アクリル酸・ (メタ) アクリル酸エステル共重合物塩の中から選ばれる1種以上である請求項4記載の高強度コンクリート組成物。

IV.特許異議申立の概要
特許異議申立人は、証拠として
甲第1号証:特開平7-53249号公報
甲第2号証:特開平6-64956号公報
甲第3号証:「コンクリート技術の要点’93」、1993年9月24日
、社団法人日本コンクリート工学協会、第23頁、
を引用し、(イ)本件請求項1〜6(訂正後の本件請求項1〜5)の記載は、平成12年3月17日付け手続補正書により、その末尾が「コンクリート混和剤」から「高強度コンクリート組成物」に補正されたものであるが、当該補正の「高強度」との事項は、願書に最初に添付した明細書に記載された事項の範囲内でなされたものではなく、本件請求項1〜6に係る発明(訂正後の本件請求項1〜5に係る発明)の特許は、特許法第17条の2第2項で準用する第17条第2項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであり(理由-イ)、(ロ)本件請求項1〜6に係る発明(訂正後の本件請求項1〜5に係る発明)は、甲第1号証をもって提示された特願平6-122808号(特開平7-53249号)の願書に最初に添付した明細書〔以下、「先願明細書」という〕に記載された発明と同一であって、それらの特許は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり(理由-ロ)、(ハ)本件請求項1〜6に係る発明(訂正後の本件請求項1〜5に係る発明)は、必要に応じ甲第3号証の記載を参照すると甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、それらの特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり(理由-ハ)、(ニ)本件請求項1〜6に係る発明(訂正後の本件請求項1〜5に係る発明)の特許は特許法第36条第5項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してなされたものであり(理由-ニ)、したがって、それらの特許は取り消されるべきものである、旨主張する。

V.証拠の記載内容
先願明細書には、セメント分散剤およびその製造方法に関し、以下のことが記載される(記載箇所の特定は甲第1号証表示方法により示す)。
(A-1)「水溶性重合体(I)およびオキシアルキレン系消泡剤(II)を含む水性組成物からなるセメント分散剤であって、該消泡剤が水性媒体中に溶解もしくは粒子径20μm以下の粒子で分散しており、かつ該水性組成物が静置状態で24時間以上安定であることを特徴とするセメント分散剤。」(特許請求の範囲第1項)
(A-2)「オキシアルキレン系消泡剤存在下に、不飽和カルボン酸系単量体を必須成分とする単量体混合物(III)を重合することを特徴とするセメント分散剤の製造方法。」(特許請求の範囲第6項)
(A-3)「セメント分散剤(1)を製造するための実施例1
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水1695部を仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで加熱した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数10個)750部、メタクリル酸250部、オキシアルキレン系消泡剤であるプルロニックL?64(旭電化株式会社製のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン付加物)7部および水1500部からなる単量体水溶液と5%過硫酸アンモニウム水溶液672部とのそれぞれを4時間で滴下し、滴下終了後さらに5%過硫酸アンモニウム水溶液168部を1時間で滴下した。その後1時間引き続いて95℃に温度を維持し、重合反応を完結させ、平均分子量35,000の共重合体水溶液からなる本発明のセメント分散剤(1)を得た。
・・・・〈中略〉・・・・
セメント分散剤(7)を製造するための実施例7
実施例1で得られたセメント分散剤(1)に、50%NaOH水溶液185部を滴下してpH8まで中和して、本発明のセメント分散剤(7)を得た。
セメント分散剤(8)〜(21)を製造するための実施例8〜21
以下、実施例7と同様の操作を行なって製造した本発明の共重合体(B)からなるセメント分散剤(8)〜(21)の内容を表3および表4にまとめて示す。」(段落0061〜0065)
(A-4)消泡剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンの存在下で、メタクリル酸とメトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(オキシエチレン基の繰り返し数n=75)とを共重合させて分子量34000のセメント分散剤(13)を得たこと(表3及び表4)
(A-5)「[コンクリート試験]
セメントとして普通ポルトランドセメント(3銘柄等量混合:比重3.16)、細骨材として大井川水系産陸砂と木更津産山砂との混合砂(比重:2.62、FM2.71)、粗骨材として東京都青梅産硬質砂岩砕石(比重2.64、MS20mm)を用いた。
一方、セメント分散剤としては、表1〜6に示した28種類の本発明のセメント分散剤、および・・・を用いた。・・・それ以外の本発明のセメント分散剤(1)〜(17)、・・・を表9および表10に示した添加量で用いて連行空気量の調整を適宜行った。・・・、セメント分散剤を配合したコンクリートの配合条件は、単位セメント量320kg/m3 、単位水量166kg/m3(水/セメント比51.9%)および細骨材率47%である。
上記条件下に、コンクリートを製造し、スランプ値および空気量の経時変化を測定しスランプロスおよび空気連行性を評価した。また、コンクリートの凝結時間および材令28日圧縮強度についても測定した。・・・結果を表9〜14に示す。」(段落0085〜0090)
(A-6)セメント分散剤(13)のセメントに対する固形分の添加重量%は0.15であり、セメント分散剤(13)を添加して得られたコンクリートの28日圧縮強度は455kgf/cm2である(表9及び表13)。

甲第2号証には、セメント混和剤に関し、以下のことが記載される。
(B-1)「(A) 下記の(1) 、(2) に示された単量体を重合して得られる共重合体及び/又は該共重合体の金属塩と(B) ポリエチレングリコールを必須成分とするセメント混和剤。
(1) 不飽和結合を有するポリアルキレングリコールモノエステル系単量体
(2) アクリル酸系単量体及び/又は不飽和ジカルボン酸系単量体」(特許請求の範囲第1項)
(B-2)上記(1)で示される単量体が、-COO(AO)n1X1で表されるポリアルキレングリコールモノエステル基を有し、該AO:炭素数2〜3のオキシアルキレン基、該n1:3〜500の整数、該X1:水素、炭素数1〜3のアルキル基である、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールモノエステル単量体であること(特許請求の範囲第2項)。
(B-3)「本発明者らは、以上の問題点を考慮し、通常の形態のコンクリート用混和剤によりスランプロス防止方法及び強度や耐久性の向上方法を研究した結果、本発明品を完成するに至った。」(段落0012)
(B-4)「然るに本発明の混和剤が従来公知のものより優れた分散性、スランプロス抑制効果を発現する理由としては、共重合体(A) による立体的、静電的反発力に加え、分子間の摩擦低減効果を有するポリエチレングリコール(B) を混入することによる相乗効果により経時的な分散剤の供給が可能になる為であると考えられる。」(段落0030)
(B-5)「本発明のセメント混和剤をコンクリート分散剤として使用する際の添加量は、成分(A)の共重合体及び/又は該共重合体の金属塩のセメントへの添加量が固形分量として0.05〜0.5重量%、ポリエチレングリコールのセメントへの添加量が固形分量として0.005〜0.2 重量%が良い。」(段落0033)
(B-6)「製造例(2)
攪拌機付き反応容器に水150部を仕込み、攪拌しながら窒素置換し、窒素雰囲気中60℃迄昇温した。ポリエチレングリコールモノアクリレート(92E-A)60部、メタクリル酸ナトリウム(MA-Na)40部を仕込み、30%水酸化ナトリウム水溶液2部で溶液のpHを9.0に調整した。窒素置換後、15%過硫酸アンモニウム水溶液20部を添加し重合を開始する。6時間反応させ重合を完了後、30%水酸化ナトリウム水溶液3部で完全中和させ、分子量32,500の共重合物を得た(以下、共重合物(2)とする)。
製造例(3)
攪拌機付き反応容器にイソプロピルアルコール(IPA と略す)265 部を仕込み、攪拌しながら窒素置換し、窒素雰囲気中沸点迄昇温した。ポリエチレングリコールモノメタクリレート(92E-MA)80部、アクリル酸ナトリウム(AA-Na)20部を仕込み、30%水酸化ナトリウム水溶液2部で溶液のpHを8.0に調整した。窒素置換後、ベンゾイルパーオキサイドの10% IPA溶液30部を添加し重合を開始する。5時間反応させ重合を完了後、30%水酸化ナトリウム水溶液3部で完全中和させ、分子量460,000の共重合物を得た(以下、共重合物(3)とする)。
製造例(4)
攪拌機付き反応容器に水100部及びIPA70部を仕込み、攪拌しながら、窒素置換し、窒素雰囲気中沸点迄昇温した。ポリエチレングリコールモノアクリレート(14E-A)50部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(14E-MA)20部、アクリル酸ナトリウム(AA-Na)15部、メタクリル酸ナトリウム(MA-Na)15部を仕込み、25%水酸化ナトリウム水溶液1部で溶液のpHを7.5に調製した。窒素置換後、20%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し重合を開始する。6時間反応させ重合を完了後、30%水酸化ナトリウム水溶液3部を完全中和させ、分子量69,000の共重合物を得た(以下、共重合物(4) とする)。」(段落0045〜0047)
(B-7)「セメント混和剤としての評価
(1) コンクリート配合は以下のように行った。
(一般強度用)・・・
(高強度用)
W/C=20% S2/A2=43% C=750kg/m3 ここで、Cはセメントを、Wは水を、S1,S2は細骨材を、A1,A2は全骨材をそれぞれ示す。
・・・〈中略〉・・・
コンクリート硬化後、JISA1108に準拠して圧縮強度試験を行った。」(段落0048及び0049)
(B-8)セメント重量に対して共重合体(2)0.30重量%とポリエチレングリコール(分子量10,000)0.05重量%添加した場合、同じく共重合体(3)0.20%とポリエチレングリコール(分子量100,000)0.20重量%添加した場合、同じく共重合体(4)とポリエチレングリコール(分子量500,000)は、28日後の圧縮強度(kg/cm2)が、それぞれ、963、965、950となる(段落0052〜0057)。

甲第3号証には、「表1.3-3高性能減水剤を用いたコンクリートの圧縮強度」が掲載されており、同表から、
(C-1)W/C(%)が小さくなると、7日及び28日の圧縮強度(kgf/cm2)が大きくなることが読みとれる。

V.異議申立に対する当審の判断
V-1.理由-イ(第17条第2項に規定する要件)について
本件の願書に最初に添付した明細書には、「本発明はコンクリート混和剤に関する。更に詳しくは、セメントペースト、モルタル及びコンクリート等の水硬性組成物の流動性を発現させ、硬化時間を遅延させないコンクリート混和剤に関するものである。」(段落0001)と記載されており、そこには、コンクリート混和剤だけでなく、コンクリート組成物に関する発明も記載されるものである。
そして、本件の願書に最初に添付した明細書には、「これらの混和剤はそれぞれ優れた特徴もある反面、問題点を有している。例えばナフタレン系やメラミン系は硬化特性に優れるものの流動保持性 (スランプロスと称す) に問題点を有し、ポリカルボン酸系は硬化遅延が大きいという問題点を抱えている。・・・〈中略〉・・・近年、優れた流動性を発現するポリカルボン酸系の開発により、低添加量で分散性を得ることが可能となり、硬化遅延が改善されつつある。・・・〈中略〉・・・しかしながら、これらのアルキレン鎖を持つポリカルボン酸系においても、添加量が多く必要な高強度領域においては解決されておらず、コンクリート打設面の仕上げ工程の遅れや型枠の脱型が大幅に遅れることから解決が望まれている。」(段落0004及び0005)と記載され、ここでの記載では、硬化特性やスランプロスというように、コンクリート混和剤を添加した場合のコンクリート組成物につき説明されるものであり、そして、そのコンクリート混和剤が多量に必要な高強度領域、すなわち、高強度コンクリート組成物では、硬化遅延の問題が解決されていないとされるものである。
このように、本件の願書に最初に添付した明細書には、コンクリート組成物に関する発明が記載され、そして、その発明の課題として、高強度コンクリート組成物の場合の問題が示される。
しかして、これを受けて、本件の願書に最初に添付した明細書の段落0007等では、硬化時間は従来のオキシアルキレン基を有する水溶性ビニル共重合体に比べ飛躍的に改善される、ということが記載され、したがって、同混和剤が多量に用いられる高強度コンクリート組成物の上記課題についても、それを解決し得ると解されるものである。
してみれば、本件の願書に最初に添付した明細書には、高強度コンクリート組成物につき、それが、直接的、一義的に導き出せないということはできず、したがって、コンクリート混和剤との記載を高強度コンクリート組成物との記載に置き換えることが、本件の願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内でなされたものと認められる。
そうすると、上記高強度コンクリート組成物に関し、本件請求項1〜5に係る発明の特許は、特許法第17条の2第2項で準用する第17条第2項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであるとはいえない。

V-2.理由-ロ(第29条の2に規定する要件)について
本件発明1について
先願明細書に記載の発明では、セメント分散剤(13)は、前記(A-4)により、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンの消泡剤の存在下で、メタクリル酸とメトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(オキシエチレン基の繰り返し数n=75)とを共重合させて得られ、そして、当該セメント分散剤(13)は、前記(A-5)及び(A-6)により、セメントに対し、0.15重量%添加され、その結果得られたコンクリートの28日圧縮強度は455kgf/cm2を示すものである。
してみれば、先願明細書に記載の発明は、
本件発明1の「一般式(A) で表される単量体(a) と、一般式(B)で表される化合物の単量体(b)とを重合して得られる共重合体を必須成分とするコンクリート混和剤をセメントに対して0.01〜0.5 重量%(固形分)添加してなる高強度コンクリート組成物」という構成を満たすものである。
しかし、先願明細書に記載の発明では、セメント分散剤は、オキシアルキレン系消泡剤の存在下に重合して得ることを必須の要件とするものであり、この点で、本件発明1の構成を満たさないものである。
他に、オキシアルキレン系消泡剤が存在しない条件で本件発明1のコンクリート混和剤を製造し、それをコンクリート組成物に添加することことも示唆されない。
したがって、本件発明1は、先願明細書に記載された発明と同一であるということができず、よって、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないとはいえない。
本件発明2〜5について
本件発明2〜5は、本件発明1に対して、共重合体における単量体の共重合比、共重合体の平均分子量、及び、公知のセメント混和剤の併用に関する構成を、それぞれ、付加するものであって、本件発明1の構成を全て具備するものである。
したがって、本件発明2〜5は、本件発明1について説示した上記の理由と同じ理由により、先願明細書に記載された発明と同一であるということができず、よって、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないとはいえない。

V-3.理由-ハ(第29条第2項に規定する要件)について
本件発明1について
本件明細書の記載によれば、ポリカルボン酸系コンクリート混和剤を添加したコンクリート組成物において、従来、硬化遅延が大きいという問題があったところ、本件発明1のコンクリート組成物において、その構成として、コンクリート混和剤の必須成分である共重合体につき、その共重合に供される一般式(A)で表される単量体(a)として、ポリアルキレングリコールのオキシアルキレン基の繰り返し数nを、「60〜90の整数」とすることにより、その余の構成と相俟って、コンクリート組成物の硬化遅延性が改善されたとするものである。
そして、このことは、本件実施例において確認されるものである。
すなわち、本件実施例のコンクリート組成物の性能を示す表2において、オキシアルキレン基の繰り返し数nに着目した場合、nが60〜90の整数のAB-2、AB-4〜AB-7の混和剤を用いた場合には、その数値範囲から外れるAB-1、AB-3、AB-8及びAB-9の混和剤を用いたものよりも、そのコンクリート組成物の硬化時間が大幅に改善されるものである。
一方、甲第2号証には、前記(B-1)により、特定の共重合体とポリエチレングリコールを必須成分とするセメント混和剤に関し、該特定の共重合体が、前記(B-1)及び(B-2)により、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールモノエステル単量体とアクリル酸系単量体とを重合して得られたものを含み得ることが記載される。
しかし、甲第2号証では、当該(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールモノエステル単量体の具体的構成としては、広範囲のものを含み、前記(B-2)により、そのオキシアルキレン基の繰り返し数については甲第2号証のものでも本件発明1のものを含みうる可能性が示されるものの、そこでの発明は、前記(B-3)及び(B-4)により、スランプロス、分散性等を改善することを意図するだけであり、本件発明1のようなコンクリート組成物の硬化遅延性につき配慮するところは何もないものである。
(なお、甲第2号証に記載の発明ではポリエチレングリコールという特殊な成分を併用するものであるが、この成分についての判断を措くものとして、検討を進める)
そして、具体的には、甲第2号証では、前記(B-6)により、ポリエチレングリコールモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し数92)、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し数92)又は、ポリエチレングリコールモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し数14)及びポリエチレングリコールモノメタクリレート(オキシエチレン基の繰り返し数14)を用いることが示されるだけで、コンクリート組成物の硬化遅延性を改善するために、当該オキシアルキレン基の繰り返し数nを60〜90とすることについては記載されないものである。
してみると、甲第2号証には、本件発明1の構成である、コンクリート混和剤の必須成分である共重合体につき、その共重合に供されるされる一般式(A)で表される単量体(a)として、ポリアルキレングリコールのオキシアルキレン基の繰り返し数nを、「60〜90の整数」とする発明が、実質上、記載されているといえず、また、硬化遅延性を改善するための当該構成が当業者の容易に想到できるものであるということができない。
次に、甲第3号証に記載のものをみると、そこには、コンクリート組成物の水セメント比と、コンクリートの7日及び28日の圧縮強度との関係等が示されるだけで、コンクリート組成物の硬化遅延性するために、当該オキシアルキレン基の繰り返し数nを60〜90とすることにつき示唆するものは何もない。
したがって、本件発明1は、甲第2号証(必要に応じて甲第3号証の記載をみても)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。
本件発明2〜5について
本件発明2〜5は、本件発明1に対して、共重合体における単量体の共重合比、共重合体の平均分子量、及び、公知のセメント混和剤の併用に関する構成を、それぞれ、付加するものであって、本件発明1の構成を全て具備するものである。
したがって、本件発明2〜5は、本件発明1について上記した理由と同じ理由により、甲第2号証(必要に応じて甲第3号証の記載をみても)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

V-3.理由-ニ(第36条第5項第2号に規定する要件)について
特許異議申立人のここでの主張は、本件請求項に記載される「高強度コンクリート組成物」における「高強度」が比較の基準や程度が不明瞭な表現であり、特許に受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項が不明瞭であるとするものである。
しかし、本件明細書の記載によれば、本件発明1は、コンクリート組成物に、「一般式(A)で表される単量体(a)と、下記の一般式(B)及び(C)で表される化合物の中から選ばれる1種以上の単量体(b)とを重合して得られる共重合体を必須成分とするコンクリート混和剤をセメントに対して0.01〜0.5 重量%(固形分)添加」することにより、その発明の目的を達成することができたものであって、本件発明1においては、必要な構成が特段欠落しているといえるものではない。
そして、本件発明1では、更に、コンクリート組成物が高強度であるということが付加して規定されるものであるが、その高強度自体、意味が解からない記載であるともいえない。
勿論、当該高強度につき、その比較の基準や程度が明確であれば、より一層、発明を明確に把握することができるものであるが、その基準ないしは程度が示されていないからといって、そのことだけから、訂正後の本件特許請求の範囲の請求項1には、発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていないということはできない。
また、本件発明2〜5についても、同じ理由により、訂正後のその請求項2〜5には、発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていないということはできない。

IV. まとめ
特許異議申立の理由及び証拠によっては、訂正後の本件請求項1〜5に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に訂正後の本件請求項1〜5に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高強度コンクリート組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化で得られ下記の一般式(A)で表される単量体(a)と、下記の一般式(B)及び(C)で表される化合物の中から選ばれる1種以上の単量体(b)とを重合して得られる共重合体(オキシアルキレン系消泡剤の存在下に重合して得られたものを除く)を必須成分とするコンクリート混和剤をセメントに対して0.01〜0.5重量%(固形分)添加してなる高強度コンクリート組成物。
【化1】

(式中、R1,R2:水素、メチル基
m1:0
AO:炭素数2〜3のオキシアルキレン基
n:60〜90の整数
X:炭素数1〜3のアルキル基
を表す。)
【化2】

(式中、R3〜R5:水素、メチル基、(CH2)m2COOM2
R6:水素、メチル基
M1,M2,Y:水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルキルアンモニウム
m2 :0〜2の整数
を表す。)
【請求項2】 共重合体を構成する単量体(a)、単量体(b)の反応単位が単量水(a)/単量体(b)=1/99〜80/20(モル比)である請求項1記載の高強度コンクリート組成物。
【請求項3】 共重合体の平均分子量が、重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法/標準物質ポリスチレンスルホン酸ナトリウム/水系)で1,000〜500,000である請求項1又は2記載の高強度コンクリート組成物。
【請求項4】 更に、公知のセメント混和剤を併用してなる請求項1〜3の何れか1項に記載の高強度コンクリート組成物。
【請求項5】 併用する公知のセメント混和剤が、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸塩、フェノール・スルファニル酸塩ホルムアルデヒド縮合物、及び(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合物塩の中から選ばれる1種以上である請求項4記載の高強度コンクリート組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はコンクリート混和剤に関する。更に詳しくは、セメントペースト、モルタル及びコンクリート等の水硬性組成物の流動性を発現させ、硬化時間を遅延させないコンクリート混和剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
コンクリート混和剤の中で、流動効果の大きい代表的なものに、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(以下ナフタレン系と称す)、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(以下メラミン系と称す)、ポリカルボン酸塩(以下ポリカルボン酸系と称す)等の高性能減水剤と呼ばれているものがある。
【0003】
これらの混和剤はそれぞれ優れた特徴もある反面、問題点を有している。例えばナフタレン系やメラミン系は硬化特性に優れるものの流動保持性(スランプロスと称す)に問題点を有し、ポリカルボン酸系は硬化遅延が大きいという問題点を抱えている。
【0004】
近年、優れた流動性を発現するポリカルボン酸系の開発により、低添加量で分散性を得ることが可能となり、硬化遅延が改善されつつある。例えば、不飽和結合を有するポリアルキレングリコールモノエステル系単量体とアクリル酸系及び/又は不飽和ジカルボン酸系単量体との共重合物類(特公昭59-18338号、特公平2-78978号、特公平2-7898号、特公平2-7901号、特公平2-11542号、特開平3-75252号、特開昭59-162163号)等の水溶性ビニル共重合体が挙げられる。
【0005】
しかしながら、これらのアルキレン鎖を持つポリカルボン酸系においても、添加量が多く必要な高強度領域においては解決されておらず、コンクリート打設面の仕上げ工程の遅れや型枠の脱型が大幅に遅れることから解決が望まれている。
【0006】
更に詳しくは、従来、オキシアルキレン基を有する水溶性ビニル共重合体の優れた分散機構はオキシアルキレン鎖のグラフト構造が立体障壁となり、粒子の付着を抑制する分散機構と推察されている。そして、このオキシアルキレン基について前述の共重合物特許はエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのモル数を2〜100モルと規定している。しかしながら、これらの公知特許の実施例においてはエチレンオキシドの23モル付加が上限(特公昭59-18338)であり23〜100モルについては何ら言及されておらず、しかも、硬化遅延性とアルキレン基との関係については触れられていない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、オキシアルキレン基の鎖長について種々検討した結果、ある特定領域の鎖長(付加モル数50〜100)範囲において、分散性はナフタレン系よりも優れ、硬化時間は従来のオキシアルキレン基を有する水溶性ビニル共重合体に比べ、飛躍的に改善されることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、下記の一般式(A)で表される単量体(a)と下記の一般式(B)及び(C)で表される化合物の中から選ばれる1種以上の単量体(b)とを重合して得られる共重合体を必須成分とするコンクリート混和剤に関する。
【0009】
【化3】

【0010】
(式中、R1,R2:水素、メチル基
m1:0〜2の整数
AO:炭素数2〜3のオキシアルキレン基
n:50〜100の整数
X:水素又は炭素数1〜3のアルキル基
を表す。)
【0011】
【化4】

【0012】
(式中、R3〜R5:水素、メチル基、(CH2)m2COOM2
R6 :水素、メチル基
M1,M2,Y:アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルキルアンモニウム
m2 :0〜2の整数
を表す。)
本発明を凝結機構から考察すれば、オキシアルキレン基の鎖長が50〜100モルの限定領域において、セメントの水和反応が阻害されることなく進行するものと考察される。即ち、オキシアルキレン基の鎖長が50モル未満の領域では、混和剤構造中のカルボキシル基量が多く、カルシウムキレートによる水和反応の遅れが生じ、また、オキシアルキレン基の鎖長が100モルを超えると、セメント表面に吸着した混和剤のオキシアルキレン基鎖部分に水が強く束縛され、セメントとの水和反応を阻害しているものと推察する。
【0013】
更に、本発明においては、オキシアルキレン基の鎖長が60〜90モルの範囲が特に硬化特性に優れるものである。
【0014】
本発明において、一般式(A)で表される単量体(a)としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸又は脂肪酸の脱水素(酸化)反応物とのエステル化物や(メタ)アクリル酸又は脂肪酸の脱水素(酸化)反応物へのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物が用いられる。ポリアルキレングリコールの付加モル数が50〜100好ましくは60〜90であり、エチレンオキシド、プロピレンオキシドの両付加物については、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれでも用いることができる。
【0015】
また、一般式(B)で表される化合物としては、アクリル酸系単量体として、アクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸、並びにこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩等が挙げられる。また、不飽和ジカルボン酸系単量体として、無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸及びフマル酸、並びにこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩等が使用される。
【0016】
一般式(C)で表される化合物としては、アリルスルホン酸及びメタリルスルホン酸、並びにこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩等が使用される。
【0017】
本発明における共重合体を構成する単量体(a)、単量体(b)の反応単位が単量体(a)/単量体(b)=1/99〜80/20(モル比)の範囲が特に硬化時間が早く、優れる。1/99よりも小さい場合、80/20よりも大きい場合は分散性が低下して好ましくない。
【0018】
更に、本発明における共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲内で他の共重合可能な単量体を反応させてもよい。例えば、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、スチレンスルホン酸等が挙げられる。
【0019】
本発明における重合体の製造方法は公知の方法で製造することができる。例えば、特開昭59-162163号、特公平2-11542号、特公平2-7901号、特公平2-7897号公報等に記載の方法が挙げられる。
【0020】
容液重合に用いられる溶剤としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、脂肪族炭化水素、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。取扱いと反応設備から考慮すると水および炭素数1〜4のアルコールが好ましい。
【0021】
水系の溶液重合には、アンモニウムまたはアルカリ金属の過硫酸塩あるいは過酸化水素等の水溶性重合開始開始剤が使用される。また、水系以外の溶液重合にはベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が重合開始剤として使用される。
【0022】
尚、重合開始剤と併用して、亜硫酸水素ナトリウム、メルカプトエタノールやアミン化合物等を促進剤として使用することも可能であり、これら重合開始剤あるいは促進剤を適宜選択して用いることができる。
【0023】
本発明における共重合体の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリスチレンスルホン酸換算)は1,000〜500,000の範囲が良く、5,000〜100,000の範囲がより分散性に好ましい。重量平均分子量が大きすぎると分散性が充分でなく、また、重量平均分子量が小さすぎるとスランプ保持性が低下傾向を示すことから、混和剤として用いることは適当ではない。
【0024】
更に、本発明のコンクリート混和剤は公知のセメント混和剤と併用することが可能である。公知のセメント混和剤の一例を挙げれば、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸塩、フェノール・スルファニル酸塩ホルムアルデヒド縮合物、及び(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合物塩の中から選ばれる1種以上が挙げられる。添加量としては、セメントに対して0.01〜0.5重量%(固形分)が好ましい。
【0025】
また、本発明のコンクリート混和剤のコンクリートへの添加量はセメントに対して0.05〜1.0重量%(固形分)が好ましく、0.1〜0.5重量%(固形分)がより好ましい。
【0026】
尚、本発明のコンクリート混和剤は公知の添加剤(材)と併用することができる。例えば、AE剤、AE減水剤、流動化剤、高性能減水剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、増粘剤、防水剤、防泡剤や珪砂、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等が挙げられる。
【0027】
さらに本発明のコンクリート混和剤は水硬性のセメント類を組成とするセメントペーストやモルタル、コンクリート等に添加するものであり、その内容について限定されるものではない。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の例における「%」は、特にことわりのない限り、「重量%」である。
【0029】
重合に使用した単量体(a)の内容と記号及び単量体(a)の比較例の内容と記号を以下に示す。但し、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドを表す。
〈単量体(a)の内容〉
A-1:メトキシポリエチレングリコールメタクリル酸エステル(EO付加モル数=53)
A-2:メトキシポリエチレングリコールアクリル酸エステル(EO付加モル数=75)
A-3:メトキシポリエチレングリコールメタクリル酸エステル(EO付加モル数=95)
A-4:アクリル酸EO付加物(EO付加モル数=60)
A-5:アクリル酸PO・EO付加物(PO付加モル数=5、EO付加モル数=70のブロック付加物)
A-6:アクリル酸PO・EO付加物(PO付加モル数=10、EO付加モル数=60のランダム付加物)
A-7:メトキシポリエチレングリコールメタクリル酸エステル(EO付加モル数=90)
〈単量体(a)の比較例の内容〉
A-8:メトキシポリエチレングリコールメタクリル酸エステル(EO付加モル数=23)
A-9:メトキシポリエチレングリコールメタクリル酸エステル(EO付加モル数=122)
以下に共重合体の製造例を示す。
製造例1(混和剤の記号AB-1)
攪拌機付き反応容器に水70モルを仕込み、攪拌しながら窒素置換し、窒素雰囲気中で75℃まで昇温した。A-1を0.7モル、メタクリル酸を0.3モル(モル比=3/7)、水を30モル混合溶解したものと20%過硫酸アンモニウム水溶液0.01モル及び2-メルカプトエタノール6gの3者をそれぞれ同時に反応系に2時間かけて滴下する。次に20%過硫酸アンモニウム水溶液0.03モルを30分かけて滴下し、1時間同温度(75℃)で熟成する。熟成後95℃に昇温して、35%過酸化水素18gを1時間かけて滴下し、2時間同温度(95℃)で熟成する。熟成終了後、48%水酸化ナトリウム0.21モルを加えて中和、分子量25,000の共重合体を得た。
【0030】
製造例2(混和剤の記号AB-2)
攪拌機付き反応容器に水30モルを仕込み、攪拌しながら窒素置換し、窒素雰囲気中で75℃まで昇温した。A-2を0.3モル、アクリル酸ナトリウムを0.7モル(モル比=3/7)、水を15モル混合溶解したものと20%過硫酸アンモニウム水溶液0.01モル及び2-メルカプトエタノール5gの3者をそれぞれ同時に反応系に2時間かけて滴下する。次に20%過硫酸アンモニウム水溶液0.03モルを30分かけて滴下し、1時間同温度(75℃)で熟成する。熟成後95℃に昇温して、35%過酸化水素15gを1時間かけて滴下し、2時間同温度(95℃)で熟成する。熟成終了後、10%水酸化ナトリウムを加えてpH8に調整し、分子量42,000の共重合体を得た。
【0031】
製造例3(混和剤の記号AB-3)
攪拌機付き反応容器に水5モルを仕込み、攪拌しながら窒素置換し、窒素雰囲気中で75℃まで昇温した。A-3を0.02モル、マレイン酸モノナトリウムを0.98モル(モル比=2/98)、水を5モル混合溶解したものと20%過硫酸アンモニウム水溶液0.01モル及び2-メルカプトエタノール3gの3者をそれぞれ同時に反応系に2時間かけて滴下する。次に20%過硫酸アンモニウム水溶液0.03モルを30分かけて滴下し、1時間同温度(75℃)で熟成する。熟成後95℃に昇温して、35%過酸化水素15gを1時間かけて滴下し、2時間同温度(95℃)で熟成する。熟成終了後、10%水酸化ナトリウムを加えてpH8に調整し、分子量55,000の共重合体を得た。
【0032】
製造例4(混和剤の記号AB-4)
攪拌機付き反応容器に水20モルを仕込み、攪拌しながら窒素置換し、窒素雰囲気中で75℃まで昇温した。A-4を0.2モル、アクリル酸を0.7モル、アリルスルホン酸0.1モル(モル比=2/7/1)、水を10モル混合溶解したものと20%過硫酸アンモニウム水溶液0.01モル及び2-メルカプトエタノール6gの3者をそれぞれ同時に反応系に2時間かけて滴下する。次に20%過硫酸アンモニウム水溶液0.03モルを30分かけて滴下し、1時間同温度(75℃)で熟成する。熟成後95℃に昇温して、35%過酸化水素18gを1時間かけて滴下し、2時間同温度(95℃)で熟成する。熟成終了後、48%水酸化ナトリウム0.5モルを加えて中和、分子量9,500の共重合体を得た。
【0033】
製造例5(混和剤の記号AB-5)
攪拌機付き反応容器に水10モルを仕込み、攪拌しながら窒素置換し、窒素雰囲気中で75℃まで昇温した。A-5を0.1モル、アクリル酸を0.8モル、メタリルスルホン酸0.1モル(モル比=1/8/1)、水を10モル混合溶解したものと20%過硫酸アンモニウム水溶液0.01モル及び2-メルカプトエタノール5gの3者をそれぞれ同時に反応系に2時間かけて滴下する。次に20%過硫酸アンモニウム水溶液0.03モルを30分かけて滴下し、1時間同温度(75℃)で熟成する。熟成後95℃に昇温して、35%過酸化水素15gを1時間かけて滴下し、2時間同温度(95℃)で熟成する。熟成終了後、48%水酸化ナトリウム0.6モルを加えて中和、分子量14,000の共重合体を得た。
【0034】
製造例6(混和剤の記号AB-6)
攪拌機付き反応容器に水70モルを仕込み、攪拌しながら窒素置換し、窒素雰囲気中で75℃まで昇温した。A-6を0.3モル、メタクリル酸を0.7モル(モル比=3/7)、水を30モル混合溶解したものと20%過硫酸アンモニウム水溶液0.01モル及び2-メルカプトエタノール3gの3者をそれぞれ同時に反応系に2時間かけて滴下する。次に20%過硫酸アンモニウム水溶液0.03モルを30分かけて滴下し、1時間同温度(75℃)で熟成する。熟成後95℃に昇温して、35%過酸化水素15gを1時間かけて滴下し、2時間同温度(95℃)で熟成する。熟成終了後、48%水酸化ナトリウム0.21モルを加えて中和、分子量95,000の共重合体を得た。
【0035】
製造例7(混和剤の記号AB-7)
攪拌機付き反応容器に水80モルを仕込み、攪拌しながら窒素置換し、窒素雰囲気中で75℃まで昇温した。A-7を0.3モル、メタクリル酸を0.7モル(モル比=3/7)、水を42モル混合溶解したものと20%過硫酸アンモニウム水溶液0.01モル及び2-メルカプトエタノール5gの3者をそれぞれ同時に反応系に2時間かけて滴下する。次に20%過硫酸アンモニウム水溶液0.03モルを30分かけて滴下し、1時間同温度(75℃)で熟成する。熟成後95℃に昇温して、35%過酸化水素25gを1時間かけて滴下し、2時間同温度(95℃)で熟成する。熟成終了後、48%水酸化ナトリウム0.21モルを加えて中和、分子量57,000の共重合体を得た。
【0036】
比較製造例8(混和剤の記号AB-8)
攪拌機付き反応容器に水10モルを仕込み、攪拌しながら窒素置換し、窒素雰囲気中で75℃まで昇温した。A-8を0.3モル、メタクリル酸を0.7モル(モル比=3/7)、水を10モル混合溶解したものと20%過硫酸アンモニウム水溶液0.01モル及び2-メルカプトエタノール6gの3者をそれぞれ同時に反応系に2時間かけて滴下する。次に20%過硫酸アンモニウム水溶液0.03モルを30分かけて滴下し、1時間同温度(75℃)で熟成する。熟成後95℃に昇温して、35%過酸化水素18gを1時間かけて滴下し、2時間同温度(95℃)で熟成する。熟成終了後、48%水酸化ナトリウム0.21モルを加えて中和、分子量35,000の共重合体を得た。
【0037】
比較製造例9(混和剤の記号AB-9)
攪拌機付き反応容器に水12モルを仕込み、攪拌しながら窒素置換し、窒素雰囲気中で75℃まで昇温した。A-9を0.05モル、メタクリル酸を0.95モル(モル比=5/95)、水を10モル混合溶解したものと20%過硫酸アンモニウム水溶液0.01モル及び2-メルカプトエタノール5gの3者をそれぞれ同時に反応系に2時間かけて滴下する。次に20%過硫酸アンモニウム水溶液0.03モルを30分かけて滴下し、1時間同温度(75℃)で熟成する。熟成後95℃に昇温して、35%過酸化水素15gを1時間かけて滴下し、2時間同温度(95℃)で熟成する。熟成終了後、48%水酸化ナトリウム0.21モルを加えて中和、分子量65,000の共重合体を得た。
【0038】
実施例に使用した公知のセメント混和剤の内容と記号を以下に示す。
混和剤の記号NS:ナフタレン系混和剤(マイテイ150;花王(株)製)
混和剤の記号MS:メラミン系混和剤(マイテイ150V-2;花王(株)製)
混和剤の記号AA:(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合物塩(マイテイ2000WHZ;花王(株)製)。
【0039】
〈コンクリート混和剤としての評価〉
コンクリートの配合条件を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
コンクリートの製造は、表1に示すコンクリート配合により、材料と混和剤を傾胴ミキサーで25rpm×3分間混練りして調整した。流動性(スランプ値)と硬化時間を測定した結果を表2に示す。
尚、スランプ値はJIS-A1101法に準じて測定し、コンクリートの硬化時間は、ASTM-C-403法に準じて測定した。
【0042】
【表2】

【0043】
〈評価結果〉
表2で明らかなように、本発明のコンクリート混和剤は比較品に比べて流動性に優れ、硬化時間が早い。
【0044】
【発明の効果】
本発明によるコンクリート混和剤をセメント組成物に添加すれば、仕上げ工程から型枠の脱型時間の遅れがなくなることから、工事スケジュールの管理が容易となる。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第3126617号の明細書につき、訂正請求書に添付された訂正明細書に記載される次の(イ)〜(ハ)のとおり訂正する。
(イ)特許請求の範囲の請求項1における、
「片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化で得られ下記の一般式(A)で表される単量体(a)と、下記の一般式(B)及び(C)で表される化合物の中から選ばれる1種以上の単量体(b)とを重合して得られる共重合体を必須成分とするコンクリート混和剤」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化で得られ下記の一般式(A)で表される単量体(a)と、下記の一般式(B)及び(C)で表される化合物の中から選ばれる1種以上の単量体(b)とを重合して得られる共重合体(オキシアルキレン系消泡剤の存在下に重合して得られたものを除く)を必須成分とするコンクリート混和剤」と訂正する。
(ロ)特許請求の範囲の請求項1における、
「n :50〜100の整数」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「n :60〜90の整数」と訂正する。
(ハ)特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項6を削除する。
異議決定日 2002-06-25 
出願番号 特願平7-33399
審決分類 P 1 651・ 55- YA (C04B)
P 1 651・ 161- YA (C04B)
P 1 651・ 534- YA (C04B)
P 1 651・ 121- YA (C04B)
最終処分 維持  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 野田 直人
山田 充
登録日 2000-11-02 
登録番号 特許第3126617号(P3126617)
権利者 花王株式会社
発明の名称 高強度コンクリート組成物  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 古谷 聡  
代理人 持田 信二  
代理人 義経 和昌  
代理人 古谷 馨  
代理人 持田 信二  
代理人 義経 和昌  
代理人 古谷 馨  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 古谷 聡  
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