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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01R
管理番号 1065940
異議申立番号 異議2001-71909  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-12 
確定日 2002-07-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3124751号「ICカード用コネクタ」の請求項1乃至6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3124751号の請求項1乃至4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3124751号(請求項の数6)は、平成10年5月14日の出願に係り、平成12年10月27日に設定登録がなされ、その後、全請求項に係る発明について坂本聡及び池野耕司よりそれぞれ特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年12月7日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断

(1)訂正の内容
特許権者は本件特許明細書の記載を訂正明細書のとおりに訂正することを求めており、その具体的内容は以下の通りのものと認める。
A.【特許請求の範囲】の【請求項1】における、
「接触条片を有するICカード用コネクタにおいて」を、
「接触条片を有し、更に上記ベースの前方に設けられたICカードの前辺と対向する前部規制壁と上記ベース間にベース下方へ開放せるコンタクトピン変位スペースを設け、上記接触条片の自由端に設けた接点部がICカードの電極パッドと加圧接触した時に同接点部を上記接触条片の弾力に抗し上記ベース下方へ開放されたコンタクトピン変位スペース内へ変位せしめるICカード用コネクタにおいて」に、
「上記各コンタクトピンの接触条片はICカードの前半部下面に配された複数の電極パッドと加圧接触すると共に、上記各コンタクトピンの表面実装端子が上記オープンスペース内域において配線回路基板へ接続される構成である」を、
「上記各コンタクトピンの接触条片の上記接点部は上記コンタクトピン植設部の前方においてICカードの前半部下面に配された複数の電極パッドと加圧接触すると共に、上記各コンタクトピンの表面実装端子が上記オープンスペース内域において配線回路基板へ接続される構成とし、更に上記トッププレートを金属から成る導電プレートにて形成し、該導電プレートは上記オープンスペースを覆わずに上記ベースと接触条片とコンタクトピン変位スペースを覆うように被嵌し、上記接触条片の加圧接触力にて上記ICカードの前半部を押し上げ同前半部上面を上記導電プレートで受け止める構成とした」に、それぞれ訂正する。
B.【特許請求の範囲】の【請求項4】及び【請求項5】を削除する。
C.【特許請求の範囲】の【請求項6】における、
「請求項1又は2又は3又は4又は5記載のICカード用コネクタ」を、
「請求項1又は2又は3記載のICカード用コネクタ」と訂正するとともに、【請求項6】を【請求項4】に繰り上げる。
D.明細書の段落【0006】【課題を解決するための手段】における、
「このICカード用コネクタは小形の略方形のベースを有し」を、
「このICカード用コネクタはトッププレートにて覆われた小形の略方形のベースを有し」と訂正する。
E.明細書の段落【0013】における、
「又上記隔壁の前端面に隣接してコンタクトピン変位スペースを形成し、」を、
「又上記隔壁の前端面に隣接してコンタクトピン変位スペースを形成し、即ち上記ベースの前方に設けられたICカードの前辺と対向する前部規制壁と上記ベース間にコンタクトピン変位スペースを設け、」と訂正する。
F.明細書の段落【0014】における、
「変位可能にする。これにより」を、
「変位可能にする。他方上記トッププレートを金属から成る導電プレートにて形成し、該導電プレートは上記オープンスペースを覆わずに上記ベースと接触条片とコンタクトピン変位スペースを覆うように被嵌し、上記接触条片の加圧接触力にて上記ICカードの前半部を押し上げ同前半部上面を上記導電プレートで受け止める構成とする。これにより」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項Aは、ベースについて、特許明細書の【特許請求の範囲】の【請求項3】及び【請求項4】、段落【0020】、【0021】、【0038】、【0048】、【0049】及び【0052】に記載された事項に基いて限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。
訂正事項Bは、請求項の削除であり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。
訂正事項Cは、訂正事項Bによる請求項の削除に伴い、請求項の項番を繰り上げ、引用項番から削除した請求項の項番を削除したものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。
訂正事項D、E及びFは、訂正事項Aの訂正に伴い、対応する明細書の記載を、特許請求の範囲の記載に整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。
そして、上記いずれの訂正事項も、搭載スペースを有効に確保し得るICカード用コネクタの提供という課題に変更を及ぼすものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正の適否についての結論
したがって、上記の訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断

(1)異議の申立ての理由の概要
異議申立人・坂本聡は、甲第1号証[特開平9-73949号公報(以下、「刊行物a」という。)]及び甲第2号証[実開平7-27059号公報(以下、「刊行物b」という。)]を提出すると共に、本件の訂正前の請求項1乃至6に係る発明は、刊行物a及びbに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとし、また、異議申立人・池野耕司は、甲第1号証[特開平10-112350号公報(以下、「刊行物c」という。)]、甲第2号証[特開平10-106674号公報(以下、「刊行物d」という。)]、甲第3号証[実用新案登録第3019448号公報(以下、「刊行物e」という。)]及び甲第4号証[特開平10-74568号公報(以下、「刊行物f」という。)]を提出すると共に、本件の訂正前の請求項1乃至6に係る発明は、刊行物c乃至fに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとして、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり同法第113条第2項の規定により取り消されるべきである旨、それぞれ主張している。

(2)本件発明
上記の訂正が認められたので、本件請求項1乃至4に係る発明(以下、「本件発明1乃至4」という。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された以下の事項により特定されるものである。
「【請求項1】トッププレートにて覆われたベースの後辺の両端から後方へ向け互いに間隔を置いてICカードの挿入を案内する一対のガイドアームを並行に延出し、該両ガイドアーム間に上下に開放せるオープンスペースを形成し、該オープンスペースを画成するベース後辺に沿いコンタクトピン植設部をベースと一体に設け、該コンタクトピン植設部には複数のコンタクトピンがICカード挿入方向と直交する方向に並列するように植設されており、各コンタクトピンは上記コンタクトピン植設部から前方へ延びる上下に弾性変位可能な接触条片を有し、更に上記ベースの前方に設けられたICカードの前辺と対向する前部規制壁と上記ベース間にベース下方へ開放せるコンタクトピン変位スペースを設け、上記接触条片の自由端に設けた接点部がICカードの電極パッドと加圧接触した時に同接点部を上記接触条片の弾力に抗し上記ベース下方へ開放されたコンタクトピン変位スペース内へ変位せしめるICカード用コネクタにおいて、上記コンタクトピン植設部から後方へ突出されてベースの後辺に沿い並置されつつ上記上下に開放せるオープンスペース内に並置される表面実装用端子を有し、上記ICカードは上記両ガイドアームを案内として同カード前半部が上記ベース上に挿入されると同時に、同カード後半部が上記両ガイドアーム間のオープンスペース内に挿入され、上記各コンタクトピンの接触条片の上記接点部は上記コンタクトピン植設部の前方においてICカードの前半部下面に配された複数の電極パッドと加圧接触すると共に、上記各コンタクトピンの表面実装端子が上記オープンスペース内域において配線回路基板へ接続される構成とし、更に上記トッププレートを金属から成る導電プレートにて形成し、該導電プレートは上記オープンスペースを覆わずに上記ベースと接触条片とコンタクトピン変位スペースを覆うように被嵌し、上記接触条片の加圧接触力にて上記ICカードの前半部を押し上げ同前半部上面を上記導電プレートで受け止める構成としたことを特徴とするICカード用コネクタ。
【請求項2】上記コンタクトピン植設部の前端に各コンタクトピンの接触条片間を隔絶する隔壁をベースと一体に連設し、上記コンタクトピン植設部又は/及び隔壁の上面にてICカードの挿入を案内するランド面を形成していることを特徴とする請求項1記載のICカード用コネクタ。
【請求項3】上記コンタクトピンの接触条片の自由端(前端)が上記隔壁の前端面より前方へ突出し且つ隔壁上面より上方へ突出し、該突出部にてICカードの電極パッドとの接触に供される接点部を形成していることを特徴とする請求項2記載のICカード用コネクタ。
【請求項4】上記接触条片の長手に亘り両端を閉鎖端としたスリットを形成し、該スリットの一端を含む位置に接触条片の弾性変位支点を設定したことを特徴とする請求項1又は2又は3記載のICカード用コネクタ。」

(3)証拠の開示事項

A)上記刊行物a(当審が取消しの理由に引用した刊行物1)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
・「本発明はエッジコネクタに関し、特に、コネクタの接続相手側たるICカードや回路基板など(以下「相手側基板」という)の板厚方向に、複数のスロットが平行に配置されており、各スロットに対応するイジェクトボタンの操作により、夫々のスロット内に装填された基板等を強制排出することのできるエッジコネクタに関するものである。」(【0001】【発明の属する技術分野】)
・「本実施の形態におけるエッジコネクタ1は、インシュレータ基部10と、該インシュレータ基部10の両端側から平行に延在する側部11,13を有する。」(【0010】)
・「インシュレータ基部10には、長手方向に上下2列の相手側基板B1,B2を受容するスロット15,17が形成されている。」(【0011】)
・「これらのスロット15,17の奥壁部には、相手側基板B1,B2の端子と導通接続するコンタクト21,23,25,27が取付けられている。(【0012】)
・「側部11,13には、上記スロット15,17に相手側基板B1,B2を導くための案内溝31,35と、相手側基板B1,B2を固定保持するための係止部材33,37が設けられている。」(【0013】)
・図面には、インシュレータ基部10の両端から相手側基板の挿入側に向け互いに間隔を置いて一体的に延在する側部11、13間に上下に開放せるオープンスペースが形成され、インシュレータ基部10にコンタクト21、23、25、27が相手側基板の挿入方向と直交する方向に並列するように植設されている態様(【図1】【図4】【図6】【図7】)が示され、特に、【図3】及び【図6】には、コンタクト21はその相手側基板に下方から接触する端部と反対側の端部が、インシュレータ基部10の相手側基板挿入側の辺に沿ってオープンスペース内に並置され、各コンタクト21は上下に弾性変位可能な接触条片を有している態様が、また【図4】には、相手側基板を挿入したときその先端部はインシュレータ基部10上に、残りの部分がオープンスペース上に位置することが、それぞれ示されている。

B)上記刊行物b(同じく引用した刊行物2)には、「半田結線後に、半田不良箇所を容易に再半田できるサーフェイスマウント電気コネクタ」(【要約】【目的】参照)について、絶縁ハウジング1の前方に、上下二層をなし前方(X正方向)に開口せる上凹所2と下凹所3が形成され、該上凹所2及び下凹所3の前方開口部は、相手方接続体たる回路基板Q,Rをそれぞれ受け入れ(【0013】)、下凹所3に挿入される接触子13,14のうち、接触子14は接続部14Aが後方(X負方向)にあって、そこから前方に延び、その前方端部に結線部14Bが設けられ(【0017】)ることなどが記載されている。

C)上記刊行物c(同じく引用した刊行物3)には、ICカードとプリント基板等の電子部品との電気的接続を行うカード用コネクタ(【0001】【発明の属する技術分野】)に関して、該カード用コネクタが、コンタクト30と、ベースインシュレータ20と、カバーインシュレータ10と、板ばね(付勢部材)40とを備えている(【0021】)こと、コンタクト30は、ベースインシュレータ20に固定される固定部30aと、ICカード50のランド51に接触可能な接点部30bと、接点部30bを上方へ付勢するばね部30cと、図示しないプリント基板に接続される端子部30dとで構成されており、上記固定部30a、接点部30b、ばね部30c及び端子部30dは一体に形成されている(【0022】)こと、ベースインシュレータ20には、カバーインシュレータ10の平面形状にほぼ対応する開口21が形成されている(【0023】)ことなどが記載されている。

D)上記刊行物d(同じく引用した刊行物4)には、電極接点部を有する接片部材が設けられたベースの後端部に横向きに突出する左右一対の軸体に、上記電極接点部に対応する面電極を備えたカードを保持するためのカード保有部を有するカバーの後端部に設けられた左右一対のアーム部の嵌合孔部が嵌合されてなるカードコネクタ(【特許請求の範囲】【請求項1】)に関して、ベースの底壁に横に並んだ弾性を備えた接片部材のそれぞれの先端の電極接点部が底壁から少し浮き上がるように傾斜していると共にそれらの接片部材のそれぞれに配線基板の回路に半田付けされる端子が設けられ、これらの端子がベースの前方あるいは後方へ突き出ていること(【0031】)、カバーは金属板に曲げ加工や打抜き加工を施して形成されること(【0035】)が記載され、図1及び2には、端子32がベース前方左右両側に設けられたリブ状の側壁の間に形成されたオープンスペース内に突き出ており、電極接点部31側の接片部材に対応するベースの底面に接片部材が侵入可能な空所が形成されている態様が示され、図2及び11には、ベースにカバーを被嵌したとき、該カバーが上記オープンスペースを覆わずに接片部材と上記空所の部分を覆うことが示されている。

E)上記刊行物eには、「平面コ字状のハウジングの中央部分の内部に複数のコンタクトが並列され、この中央部分の内側に長手方向に沿って平板回路基板の接続端縁部を挿入可能とした挿入溝が形成されていると共に、前記各コンタクトに連設したソルダーテールが前記中央部分の挿入溝側側壁を通して前方に導かれていることを特徴とする平板回路基板用ソケット。」(【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】)が図面とともに記載されている。
F)上記刊行物f(同じく引用した刊行物5)には、「接触端子における機器との接触部位にはスリットが形成されてなることを特徴とするコネクタの接触端子。」(【請求項1】)及び「前記接触端子は屈曲させて形成した突出部を有し、前記突出部を前記接触部位としてなることを特徴とする請求項1記載のコネクタの接触端子。」(【請求項2】)が記載され、スリットの実施例として、図1(a)には長方形状に抜かれた長穴形状のものが、図2(a)には更にそれを屈曲させたものが、それぞれ示されている。

(4)対比・判断

A)本件発明1について
本件発明1と上記刊行物aに記載された発明とを対比する。
上記刊行物aに記載されたエッジコネクタ1は、「相手側基板」と称する接続相手としてICカードを例示していることから、本件発明1の「ICカード用コネクタ」を含むものである。
また、刊行物aに記載された「コンタクト21,23」、「インシュレータ基部10」、「インシュレータ基部10の両端側から平行に延在する側部11,13」は、本件発明1の「コンタクトピン」、「ベース」、「ベースの後辺の両端から後方へ向け互いに間隔をおいてICカードの挿入を案内する一対のガイドアーム」にそれぞれ相当する。
さらに、刊行物aに記載されたエッジコネクタ1は上記「側部11,13」の間に上下に開放せるオープンスペースが形成され、上記インシュレータ基部10にコンタクトが相手側基板の挿入方向と直交する方向に並列するように植設されており、該コンタクトは、その一方が相手側基板に接触し、他方はオープンスペース内に位置し実装端子として、配線回路基板等へ接続されるものと認められ、相手側基板は、その先端部がインシュレータのスロットに挿入されたとき後方の部分が側部11,13の間のオープンスペース上に位置するものと認められる。
してみると、刊行物aには、本件発明1の構成のうちの「ベースの後辺の両端から後方へ向け互いに間隔を置いてICカードの挿入を案内する一対のガイドアームを並行に延出し、該両ガイドアーム間に上下に開放せるオープンスペースを形成し、該オープンスペースを画成するベース後辺に沿いコンタクトピン植設部をベースと一体に設け、該コンタクトピン植設部には複数のコンタクトピンがICカード挿入方向と直交する方向に並列するように植設されており、各コンタクトピンは上下に弾性変位可能な接触条片を有し(た)ICカード用コネクタにおいて、上記コンタクトピン植設部から後方へ突出されてベースの後辺に沿い並置されつつ上記上下に開放せるオープンスペース内に並置される表面実装用端子を有し、上記ICカードは上記両ガイドアームを案内として同カード前半部が上記ベース上に挿入されると同時に、同カード後半部が上記両ガイドアーム間のオープンスペース内に挿入され、上記各コンタクトピンの上記接点部は上記コンタクト植設部の前方においてICカードの前半部下面に接触すると共に、上記各コンタクトピンの表面実装端子が上記オープンスペース内域において配線回路基板へ接続される構成としたICカード用コネクタ」が記載されているということができる。
そして、上記刊行物aには、コンタクトが「コンタクトピン」であること、及び弾性変位可能な接触条片を有することについて明記されていないが、カードコネクタのコンタクトとして弾性変位可能な接触条片を有するコンタクトピンは本件出願前周知のものであるので刊行物aに記載されたコンタクトを上記のようなものと規定することに格別の技術的意義は認められない。
したがって、本件発明1の「ICカード用コネクタ」と刊行物aに記載された「エッジコネクタ」とは、実質的に以下の点で相違するものと認められる。
[相違点1]本件発明1の「ICカード用コネクタ」は、ベースが「トッププレートにて覆われ」ており、更に「上記トッププレートを金属から成る導電プレートにて形成し、該導電プレートは上記オープンスペースを覆わずに上記ベースと接触条片とコンタクトピン変位スペースを覆うように被嵌し、上記接触条片の加圧接触力にて上記ICカードの前半部を押し上げ同前半部上面を上記導電プレートで受け止める構成」としているのに対し、刊行物aに記載された「エッジコネクタ」は、インシュレータ基部にスロットを形成し、該スロット内にコンタクト植設部を設けているもので、上記「トッププレート」に相当する部材を備えていない点。
「相違点2]本件発明1の「ICカード用コネクタ」は、ベースのコンタクトピン植設部から前方に延びる接触条片の接点部を、電極パッドと加圧接触した時に、接触条片の弾力に抗して変位せしめるコンタクトピン変位スペースを、ベースの前方に設けられた規制壁とベース間にベース下方に開放せるように設けているのに対し、刊行物aには、上記の「規制壁」及び「コンタクトピン変位スペース」に相当する部分についての記載も示唆もされていない点。
そこで上記の相違点について検討する。
相違点1について、上記の刊行物b、e及びfには、上記相違点1に係る「トッププレート」に相当する部材については記載も示唆もされていない。
上記刊行物cに記載された「カード用コネクタ」のカバーインシュレータ10は、ベースインシュレータ20に重ねられる点、及び挿入されたICカードを(下方からではあるが)受け止める点で、上記の相違点1に係る「トッププレート」と共通するが、「インシュレータ」である以上、「導電プレート」とはなり得ず、また、本件発明1のオープンスペースに対応するベースインシュレータ20の開口21が、カバーインシュレータ10の平面形状にほぼ対応する開口21が形成されているので、該カバーインシュレータは、「オープンスペースを覆わずに」被嵌されるものとはなり得ない点で、上記の相違点1に係る「トッププレート」の構成を具備していない。
上記刊行物dに記載されたカードコネクタの「カバー」は、本件発明1の「コンタクトピン変位スペース」と同様の機能が認められる空所と、オープンスペースとを有するベースに対し、上記オープンスペースを覆わずに、接片部材と上記空所を覆うように該ベースに被嵌される金属製のカバーである点で、上記相違点1に係る構成と共通しているが、刊行物dに記載されたカードコネクタは、ベースに対して開閉自在のカバーに、開状態の時にカードを装着し、閉状態でカードはベースとカバーの間に収納されるような形式のものであり、上記オープンスペースは本件発明1のもののようにICカードを案内する一対のガイドアームにより画成されるものではなく、また、ICカードの後半部がそこに位置するものでもないのであるから、刊行物dに記載されたカバーを刊行物aに記載されたエッジコネクタにトッププレートとして適用することは、当業者と雖も容易に想到しうる事項ではなく、仮に、組み合わせたとしても本件発明1に至らないことは明らかである。
そして、本件発明1は、上記相違点1に記載したような構成を具備することにより、金属板を可及的に薄肉化して所定の強度を得ることができ、ICカード用コネクタ全体の薄形化を適切に達成できるという作用効果を奏するものと認められるので、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、上記刊行物a乃至fに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

B)本件発明2乃至4について
本件発明2乃至4は、何れも本件発明1にさらなる構成を付加して特定するものであるので、本件発明1について述べたと同じ理由により、上記刊行物a乃至fに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

C)異議申立人の主張について
異議申立人・坂本聡は、上記刊行物aに記載されたスロットを形成するインシュレータ基部10が一体的なトップ部とベース部を有するものとし、ベース部と別体のトップ部を設けることが本件出願前公知であることをもって、これを本件発明1のようにすることは容易である旨主張するが、刊行物aに記載されたインシュレータ基部のトップ部を本件発明1の「トッププレート」に相当するものとしても、インシュレータである以上、金属から成る導電プレートとはなり得ないので上記異議申立人の主張は採用できない。
また、異議申立人・池野耕司は、本件発明1の構成は、上記刊行物c乃至eに記載された発明の構成を組み合わせたものに過ぎないと主張するが、ICカードの装着形式の異なるもの同士を組み合わせること自体、当業者と雖も容易に想到しうる事項ではなく、仮に、組み合わせたとしても本件発明1に至らないことは明らかであるので、該異議申立人の主張も採用できない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1乃至4についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1乃至4についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ICカード用コネクタ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】トッププレートにて覆われたベースの後辺の両端から後方へ向け互いに間隔を置いてICカードの挿入を案内する一対のガイドアームを並行に延出し、該両ガイドアーム間に上下に開放せるオープンスペースを形成し、該オープンスペースを画成するベース後辺に沿いコンタクトピン植設部をベースと一体に設け、該コンタクトピン植設部には複数のコンタクトピンがICカード挿入方向と直交する方向に並列するように植設されており、各コンタクトピンは上記コンタクトピン植設部から前方へ延びる上下に弾性変位可能な接触条片を有し、更に上記ベースの前方に設けられたICカードの前辺と対向する前部規制壁と上記ベース間にベース下方へ開放せるコンタクトピン変位スペースを設け、上記接触条片の自由端に設けた接点部がICカードの電極パッドと加圧接触した時に同接点部を上記接触条片の弾力に抗し上記ベース下方へ開放されたコンタクトピン変位スペース内へ変位せしめるICカード用コネクタにおいて、上記コンタクトピン植設部から後方へ突出されてベースの後辺に沿い並置されつつ上記上下に開放せるオープンスペース内に並置される表面実装用端子を有し、上記ICカードは上記両ガイドアームを案内として同カード前半部が上記ベース上に挿入されると同時に、同カード後半部が上記両ガイドアーム間のオープンスペース内に挿入され、上記各コンタクトピンの接触条片の上記接点部は上記コンタクトピン植設部の前方においてICカードの前半部下面に配された複数の電極パッドと加圧接触すると共に、上記各コンタクトピンの表面実装端子が上記オープンスペース内域において配線回路基板へ接続される構成とし、更に上記トッププレートを金属から成る導電プレートにて形成し、該導電プレートは上記オープンスペースを覆わずに上記ベースと接触条片とコンタクトピン変位スペースを覆うように被嵌し、上記接触条片の加圧接触力にて上記ICカードの前半部を押し上げ同前半部上面を上記導電プレートで受け止める構成としたことを特徴とするICカード用コネクタ。
【請求項2】上記コンタクトピン植設部の前端に各コンタクトピンの接触条片間を隔絶する隔壁をベースと一体に連設し、上記コンタクトピン植設部又は/及び隔壁の上面にてICカードの挿入を案内するランド面を形成していることを特徴とする請求項1記載のICカード用コネクタ。
【請求項3】上記コンタクトピンの接触条片の自由端(前端)が上記隔壁の前端面より前方へ突出し且つ隔壁上面より上方へ突出し、該突出部にてICカードの電極パッドとの接触に供される接点部を形成していることを特徴とする請求項2記載のICカード用コネクタ。
【請求項4】上記接触条片の長手に亘り両端を閉鎖端としたスリットを形成し、該スリットの一端を含む位置に接触条片の弾性変位支点を設定したことを特徴とする請求項1又は2又は3記載のICカード用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子機器内に挿入されるICカードと電子機器内配線回路基板との接続媒体となるICカード用コネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
USP5334034号、同5334827号は電話用カードやクレッジト用カードと同様の大きさを有する名刺大のICカード適用されるコネクタとして開発されており、携帯電話やカメラ等の小形の電子機器には適用困難な仕様を有している。
【0003】
これら携帯電話等の小形の電子機器に適用されるICカードは上記クレッジトカード等の略2分の1程度の大きさしか有しておらず、しかも配線回路基板とICカード用コネクタとは小形電子機器内の極めて限定されたスペース内に重畳して設置することが求められる。
【0004】
前記従来例は何れもこの条件を満たすことが困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記小形電子機器の限定されたスペース内にICカード用コネクタと配線回路基板とをコンパクトに挿入し両者間の接続、並びに配線回路基板上へのIC等の搭載スペースも有効に確保し得るように構成されたICカード用コネクタを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このICカード用コネクタはトッププレートにて覆われた小形の略方形のベースを有し、該ベースの後辺の両端から後方へ向け互いに間隔を置いて並行に延出したICカードの挿入を案内する一対のガイドアームを有し、該両ガイドアーム間に上下に開放せるオープンスペースを形成している。
【0007】
このオープンスペースを画成するベース後辺に沿いコンタクトピン植設部をベースと一体に設け、該コンタクト植設部に複数のコンタクトピンをICカード挿入方向と直交する方向に並列するように植設する。
【0008】
各コンタクトピンは、上記コンタクト植設部から前方へ延びる上下に弾性変位可能な接触条片を有すると共に、同コンタクト植設部から後方へ突出されて上記オープンスペース内に並置される表面実装用端子を有する。
【0009】
上記ICカードは上記両ガイドアームを案内として同カード前半部が上記ベース上に挿入されると同時に、同カード後半部が上記両ガイドアーム間のオープンスペース内に挿入される。そして上記各コンタクトピンの接触条片は上記ベース上に挿入されたICカードの前半部下面に押圧されて下方へ弾性変位し、その反力でICカードの前半部下面に配された複数の電極パッドと加圧接触し、更に上記各コンタクトピンの表面実装端子が上記オープンスペース内域において配線回路基板へ接続される構成である。
【0010】
上記ICカード用コネクタは上記構成によって同コネクタの小形化を達成し、小形電子機器内の限定されたスペース内にコネクタと配線回路基板とを重畳して搭載する条件を満たしつつ、コンタクトピンと配線回路基板の接続を適正に行なうことができると共に、配線回路基板上へのIC等の電子部品の実装スペースも有効に確保できる。
【0011】
上記コンタクトピン植設部の前端には各コンタクトピンの接触条片間を隔絶する隔壁をベースと一体に連設し、上記コンタクトピン植設部又は/及び隔壁の上面にてICカードの挿入を案内するランド面を形成する。
【0012】
即ちコンタクトピン植設部又は/及び隔壁の上面はICカードの挿入ガイド面を兼用する。好ましくは上記各コンタクトピンの接触条片の自由端(前端)は上記隔壁の前端面より前方へ突出し且つ隔壁上面より上方へ突出し、該突出部にてICカードの電極パッドとの接触に供される接点部を形成する。
【0013】
又上記隔壁の前端面に隣接してコンタクトピン変位スペースを形成し、即ち上記ベースの前方に設けられたICカードの前辺と対向する前部規制壁と上記ベース間にコンタクトピン変位スペースを設け、上記接点部がICカードの電極パッドと加圧接触した時に、上記接点部が接触条片の弾力に抗し上記コンタクトピン変位スペース内へ下方変位できるようにして、接点部の変位量を確保する。
【0014】
又上記コンタクトピン変位スペースはベース下方へ開放し、上記接点部は該開放部内へ変位可能にする。他方上記トッププレートを金属から成る導電プレートにて形成し、該導電プレートは上記オープンスペースを覆わずに上記ベースと接触条片とコンタクトピン変位スペースを覆うように被嵌し、上記接触条片の加圧接触力にて上記ICカードの前半部を押し上げ同前半部上面を上記導電プレートで受け止める構成とする。これにより、コネクタの薄形化を達成しつつ、接点部の下方変位量を確保する。
【0015】
又上記コンタクトの接触条片にはその長手に亘り両端を閉鎖端としたスリットを形成し、該スリットの一端を含む位置に接触条片の弾性変位支点を設定した。
上記により接触条片のバネ長を短くし且板厚を薄くしてもバネが変位した時の応力が低く適切な接触力を得る設計が可能となり、又座屈変形のし難いコンタクトを形成できる。又これにより接触条片を短くできるから、ベースの小形化に寄与できる。
【0016】
上記ICカードの「前半部」と「後半部」の用語は2分の1だけを意味するものではなく、ICカードの全長を任意の位置で二分した場合の各部分を意味する。
【0017】
【発明の実施の形態】
コネクタ本体は絶縁材にて一体形成した略方形のベース1と一対のガイドアーム2とを有する。
【0018】
上記ベース1の後辺の両端から上記一対のガイドアーム2を並行に延出し、該両ガイドアーム間に上下に開放し、且つ前方に開放されたオープンスペース4を形成する。ICカード3は両ガイドアーム2の後方開放端(両アームの自由端)から挿入される。
【0019】
上記オープンスペース4を画成するベース1の後辺に沿いコンタクトピン植設部6を合成樹脂にてベース1と一体成形し、該植設部6に複数のコンタクトピン5を植設してICカード挿入方向と直交する方向に並列するように配置する。
【0020】
上記各コンタクトピン5は上記植設部6から前方へ延びる細長い接触条片7を有する。
【0021】
この接触条片7は上記接触部付近から前方へ向け上り傾斜となるように、即ち前上りとなるように傾斜しており、その前端(自由端)に上向きに突成した接点部8を有する。この接点部8はICカード3の電極パッド9との接触に供される。
【0022】
又上記各コンタクトピン5は上記植設部6から後方へ僅かに突出されて上記オープンスペース4内に並置される、換言するとベース1の後辺に沿って並置される短小片から成る表面実装端子10を有する。この表面実装端子10はコンタクトピン5を上記オープンスペース4内において配線回路基板11に接続する手段である。
【0023】
上記配線回路基板11とICカード用コネクタとは電子機器内に重畳して設置され、配線回路基板11は上記オープンスペース4の下面を閉鎖するように広がる。このオープンスペース4内に広がる配線回路基板上の電極パッドと上記表面実装端子10とをハンダ等を介して接続するのである。
【0024】
ICカード3は既述の通り、上記両ガイドアーム2に案内されて同カード前半部が上記ベース1上に挿入されると同時に、同カード後半部が上記両ガイドアーム2間のオープンスペース4内に挿入され、該オープンスペース4内に広がる配線回路基板11と対向し、両者2と11間に間隔12を形成し、配線回路基板11上に搭載した電子部品の一部はこの間隔12内に配置し得る。
【0025】
即ち、配線回路基板11上に搭載されるIC等の電子部品の全部又は一部は上記オープンスペース4の内域に配置し得る。従ってこれら電子部品はICカード3によって隠閉される。
【0026】
上記各コンタクトピン5の接触条片7は上記ベース1上に挿入されたICカード3の前半部下面に押圧されて下方へ弾性変位し、その反力でICカード3の前半部下面に配された複数の電極パッド9と加圧接触される。よってコンタクトピン5を介してICカード3と配線回路基板11とが電気的に接続される。
【0027】
上記コンタクトピン植設部6の前端に各コンタクトピン5の接触条片7間を隔絶する隔壁13を合成樹脂にて一体成形する。従ってベース1上の後部にコンタクト植設部6を同前部に隔壁13を一体に連設する。
【0028】
上記コンタクトピン植設部6及び隔壁13の上面にてICカード3の挿入を案内するランド面を形成する。
【0029】
上記隔壁13を設けない場合には、上記コンタクトピン植設部6の上面にて上記ランド面を形成する。
【0030】
図3乃至図5は上記隔壁13を設けたICカード用コネクタを示し、図6乃至図8は上記隔壁13を設けないICカード用コネクタを示しており、図1、図2は上記各例に共通なICカード用コネクタを示している。
【0031】
上記各例におけるガイドアーム2は図5、図8に示すように、ICカード挿入方向と直交する方向の断面形状において、ICカード3の左右端縁の下面を案内するボトムガイド定規14と同左右端面を案内するサイドガイド定規15とを有する。従ってボトムガイド定規14とサイドガイド定規15とは断面視L形に形成される。
【0032】
上記各例におけるサイドガイド定規15は図4等に示すように、ベース1の左右端縁に沿い直線的に延びる。従ってサイドガイド定規15の前半部はベース1の左右両端縁から上方へ立上がるようにベース1と一体成形されている。
【0033】
上記ボトムガイド定規14の上面と、上記コンタクトピン植設部6の上面と、隔壁13の上面とは同一平面にしてICカード3の挿入を案内するランド面を形成する。
【0034】
隔壁13を設けない場合にはコンタクトピン植設部6の上面がICカード3の挿入を案内するランド面を形成する。
【0035】
上記コンンタクトピン5を形成する接触条片7の自由端(前端)は上記ボトムガイド定規14の上面より突出する。従ってこのボトムガイド定規14の上面と同一平面に存するコンタクトピン植設部6の上面と隔壁13の上面より上方へ突出する。
【0036】
詳述すると、上記隔壁13を設けた場合には、上記接触条片7の自由端(前端)が、上記隔壁13の前端面より前方へ突出すると同時に、コンタクトピン植設部6及び隔壁13の上面並びにボトムガイド定規14の上面より上方へ突出し、該突出部にてICカード3の前半部下面に配された電極パッド9との加圧接触に供される前記接触部8を形成する。
【0037】
又隔壁13を設けない場合には、上記接触条片7の自由端(前端)が、上記コンタクトピン植設部6の前端面より前方へ突出すると同時に、コンタクト植設部6の上面及びボトムガイド定規14の上面より上方へ突出し、該突出部にてICカード3の前半部下面に配された電極パッド9との加圧接触に供される接点部8を形成する。
【0038】
上記隔壁13の前端面に隣接して上記コンタクトピン5の接点部8の変位スペース16を形成する。ベース1の前方には該ベース1及びガイドアーム2と合成樹脂にて一体形成されたICカード3の前辺と対向する前部規制壁17が設けられており、この前部規制壁17とベース1間に上記コンタクトピン変位スペース16を形成している。
【0039】
上記前部規制壁17にはベース1に隔壁13を設ける場合と、設けない場合の各例において、ICカード前縁の下面を案内するボトムガイド定規18とICカード前端面を衝接する定規19とを設けることができる。従ってボトムガイド定規18と前当て定規19とはICカード挿入方向の断面形状においてL形に一体形成されている。
【0040】
上記ボトムガイド定規18の上面とボトムガイド定規14の上面とコンタクトピン植設部6の上面と、隔壁13の上面とは同一平面内に存する。
【0041】
上記コンタクトピン5の接触条片7の自由端に形成した接点部8はICカード3の電極パッド9と加圧接触した時に、上記接触条片7の弾力に抗し、該接触条片7と一緒に上記コンタクトピン変位スペース16内へ弾性変位する。好ましくは上記コンタクトピン変位スペース16をベース下方へ開放する。20は該コンタクトピン変位スペース16の下部開放部を示す。
【0042】
上記接点部8はこの下部開放部20内へ変位可能であり、これによりICカード用コネクタの薄形化を図りつつ、接点部8の変位量を充分に確保する。
【0043】
上記コンタクトピン5の接触条片7は、その長手に亘り開放したスリット21を有する。このスリット21は両端が閉鎖端とされ、該スリット21の一端を含む部位に接触条片7及び接点部8の弾性変位支点22を形成する。
【0044】
再述すると、上記スリット21の一端はコンタクトピン植設部6付近に達し、他端は接点部8付近、又は接点部8を超える位置に達する。従って接点部8はスリット21によって分離された二点接触構造である。
【0045】
本発明は上記スリット21を設ける場合と、設けない場合とを含むが、上記スリット21を設けた場合には、接触条片7のバネ長をできるだけ短くし且つ板厚を薄くでき、そのようにしても接触条片7の応力が低く適切な接触力が得られ、加えて座屈変形のし憎いコンタクトピンの設計が可能であり、これによりコンタクトピン5の短小化、ICカード用コネクタの小形化が有利に達成できる。
【0046】
上記スリット21の一端はコンタクトピン植設部6の前端面に近接した位置まで達し、このスリット21の一端が存在する部位をベース1の上面に支持し、上記支点22を形成する。
【0047】
隔壁13を設けた場合には上記支点22は隔壁13間の底壁(ベース)に支持される。
【0048】
上記ベース1の上方に対向してトッププレート23を被嵌する。好ましくは上記トッププレート23を金属から成る導電プレートにて形成する。
【0049】
上記トッププレート23はオープンスペース4を覆わずに、ベース1及びコンタクトピン変位スペース16を覆い、カード前半部の電極パッド9と接点部8を有する接触条片7を覆う。上記トッププレート23の後縁部はオープンスペース4内において上方へ反り曲げ、カード挿入ガイド部24を形成する。
【0050】
上記トッププレート23をコネクタ本体に組付ける手段として、上記トッププレート23の前端に上記前当て定規19の外側面に被嵌される前部側板25とサイドガイド定規15の前半部外側面に被嵌される左右側板26を一体に連設し、これら側板25、26に開設した係合孔27を定規19、15に突設した爪28にパッチン係合する。
【0051】
斯くしてトッププレート23はサイドガイド定規15と前当て定規19の上面に座着されると共に、これら15、19に固装され、ベース1とコンタクトピン変位スペース16とトッププレート23間にICカード3の前半部を受け入れるカード挿入室29を形成する。
【0052】
上記トッププレート23は、ICカード3の前半部上面を規制し、コンタクトピン5の接触条片7の反力にて押上げられるICカード3の上面を受け止めてそれ以上の浮上りを阻止し、接点部8と電極パッド9との加圧接触を維持する。
【0053】
【発明の効果】
本発明によればICカード用コネクタのICカード挿入方向の長さを縮小でき、縮小してもICカードの挿入及び挿入に伴なうコンタクトピンとの加圧接触が適正に得られる。
【0054】
上記ICカード用コネクタは上記構成によって同コネクタの小形化を達成し、小形電子機器内の限定されたスペース内にコネクタと配線回路基板とを重畳して搭載する条件を満たしつつ、コンタクトピンと配線回路基板の接続を適正に行なうことができると共に、配線回路基板上へのIC等の電子部品の実装スペースも有効に確保できる等の作用効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
ICカードとICカード用コネクタの平面図。
【図2】
上記ICカードをICカード用コネクタに挿入した状態を示す平面図。
【図3】
上記ICカード用コネクタの第1例をトッププレートが無い状態で示す平面図。
【図4】
AはICカード挿入前の状態、BはICカード挿入後の状態を夫々示すICカード用コネクタの縦断面図。
【図5】
Aは図3におけるA-A線断面図、Bは同B-B線断面図、Cは同C-C線断面図。
【図6】
上記ICカード用コネクタの第2例をトッププレートが無い状態で示す平面図。
【図7】
Aは上記ICカードの挿入前の状態、BはICカード挿入後の状態を夫々示すICカード用コネクタの縦断面図。
【図8】
Aは図6におけるA′-A′線断面図、Bは同B′-B′線断面図、Cは同C′-C′線断面図。
【符号の説明】
1 ベース
2 ガイドアーム
3 ICカード
4 オープンスペース
5 コンタクトピン
6 コンタクトピン植設部
7 弾性条片
8 接点部
9 電極パッド
10 表面実装端子
11 配線回路基板
13 隔壁
16 コンタクトピン変位スペース
20 開放部
21 スリット
22 支点
23 トッププレート
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)訂正事項a
【特許請求の範囲】の【請求項1】の、
「トッププレートにて覆われたベースの後辺の両端から後方へ向け互いに間隔を置いてICカードの挿入を案内する一対のガイドアームを並行に延出し、該両ガイドアーム間に上下に開放せるオープンスペースを形成し、該オープンスペースを画成するベース後辺に沿いコンタクトピン植設部をベースと一体に設け、該コンタクトピン植設部には複数のコンタクトピンがICカード挿入方向と直交する方向に並列するように植設されており、各コンタクトピンは上記コンタクトピン植設部から前方へ延びる上下に弾性変位可能な接触条片を有するICカード用コネクタにおいて、上記コンタクトピン植設部から後方へ突出されてベースの後辺に沿い並置されつつ上記上下に開放せるオープンスペース内に並置される表面実装用端子を有し、上記ICカードは上記両ガイドアームを案内として同カード前半部が上記ベース上に挿入されると同時に、同カード後半部が上記両ガイドアーム間のオープンスペース内に挿入され、上記各コンタクトピンの接触条片はICカードの前半部下面に配された複数の電極パッドと加圧接触すると共に、上記各コンタクトピンの表面実装端子が上記オープンスペース内域において配線回路基板へ接続される構成であることを特徴とするICカード用コネクタ。」を、
「トッププレートにて覆われたベースの後辺の両端から後方へ向け互いに間隔を置いてICカードの挿入を案内する一対のガイドアームを並行に延出し、該両ガイドアーム間に上下に開放せるオープンスペースを形成し、該オープンスペースを画成するベース後辺に沿いコンタクトピン植設部をベースと一体に設け、該コンタクトピン植設部には複数のコンタクトピンがICカード挿入方向と直交する方向に並列するように植設されており、各コンタクトピンは上記コンタクトピン植設部から前方へ延びる上下に弾性変位可能な接触条片を有し、更に上記ベースの前方に設けられたICカードの前辺と対向する前部規制壁と上記ベース間にベース下方へ開放せるコンタクトピン変位スペースを設け、上記接触条片の自由端に設けた接点部がICカードの電極パッドと加圧接触した時に同接点部を上記接触条片の弾力に抗し上記ベース下方へ開放されたコンタクトピン変位スペース内へ変位せしめるICカード用コネクタにおいて、上記コンタクトピン植設部から後方へ突出されてベースの後辺に沿い並置されつつ上記上下に開放せるオープンスペース内に並置される表面実装用端子を有し、上記ICカードは上記両ガイドアームを案内として同カード前半部が上記ベース上に挿入されると同時に、同カード後半部が上記両ガイドアーム間のオープンスペース内に挿入され、上記各コンタクトピンの接触条片の上記接点部は上記コンタクトピン植設部の前方においてICカードの前半部下面に配された複数の電極パッドと加圧接触すると共に、上記各コンタクトピンの表面実装端子が上記オープンスペース内域において配線回路基板へ接続される構成とし、更に上記トッププレートを金属から成る導電プレートにて形成し、該導電プレートは上記オープンスペースを覆わずに上記ベースと接触条片とコンタクトピン変位スペースを覆うように被嵌し、上記接触条片の加圧接触力にて上記ICカードの前半部を押し上げ同前半部上面を上記導電プレートで受け止める構成としたことを特徴とするICカード用コネクタ。」と訂正する。
(2)訂正事項b
【特許請求の範囲】の【請求項4】及び【請求項5】を削除する。
(3)訂正事項c
【特許請求の範囲】の【請求項6】の、
「上記接触条片の長手に亘り両端を閉鎖端としたスリットを形成し、該スリットの一端を含む位置に接触条片の弾性変位支点を設定したことを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5記載のICカード用コネクタ。」を、
「上記接触条片の長手に亘り両端を閉鎖端としたスリットを形成し、該スリットの一端を含む位置に接触条片の弾性変位支点を設定したことを特徴とする請求項1又は2又は3記載のICカード用コネクタ。」と訂正するとともに、【請求項6】を【請求項4】に繰り上げる。
(4)訂正事項d
明細書の段落【0006】【課題を解決するための手段】に記載の、
「このICカード用コネクタは小形の略方形のベースを有し、該ベースの後辺の両端から後方へ向け互いに間隔を置いて並行に延出したICカードの挿入を案内する一対のガイドアームを有し、該両ガイドアーム間に上下に開放せるオープンスペースを形成している。」を、
「このICカード用コネクタはトッププレートにて覆われた小形の略方形のベースを有し、該ベースの後辺の両端から後方へ向け互いに間隔を置いて並行に延出したICカードの挿入を案内する一対のガイドアームを有し、該両ガイドアーム間に上下に開放せるオープンスペースを形成している。」と訂正する。
(5)訂正事項e
明細書の段落【0013】に記載の、
「又上記隔壁の前端面に隣接してコンタクトピン変位スペースを形成し、上記接点部がICカードの電極パッドと加圧接触した時に、上記接点部が接触条片の弾力に抗し上記コンタクトピン変位スペース内へ下方変位できるようにして、接点部の変位量を確保する。」を、
「又上記隔壁の前端面に隣接してコンタクトピン変位スペースを形成し、即ち上記ベースの前方に設けられたICカードの前辺と対向する前部規制壁と上記ベース間にコンタクトピン変位スペースを設け、上記接点部がICカードの電極パッドと加圧接触した時に、上記接点部が接触条片の弾力に抗し上記コンタクトピン変位スペース内へ下方変位できるようにして、接点部の変位量を確保する。」と訂正する。
(6)訂正事項f
明細書の段落【0014】に記載の、
「又上記コンタクトピン変位スペースはベース下方へ開放し、上記接点部は核開放部内へ変位可能にする。これにより、コネクタの薄形化を達成しつつ、接点部の下方変位量を確保する。」を、
「又上記コンタクトピン変位スペースはベース下方へ開放し、上記接点部は該開放部内へ変位可能にする。他方上記トッププレートを金属から成る導電プレートにて形成し、該導電プレートは上記オープンスペースを覆わずに上記ベースと接触条片とコンタクトピン変位スペースを覆うように被嵌し、上記接触条片の加圧接触力にて上記ICカードの前半部を押し上げ同前半部上面を上記導電プレートで受け止める構成とする。これにより、コネクタの薄形化を達成しつつ、接点部の下方変位量を確保する。」と訂正する。
異議決定日 2002-07-10 
出願番号 特願平10-132403
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01R)
最終処分 維持  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 千壽 哲郎
平上 悦司
登録日 2000-10-27 
登録番号 特許第3124751号(P3124751)
権利者 山一電機株式会社
発明の名称 ICカード用コネクタ  
代理人 中畑 孝  
代理人 中畑 孝  

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