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関連判例 | 平成12年(行ケ)65号審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1067344 |
審判番号 | 審判1998-18303 |
総通号数 | 36 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-11-24 |
確定日 | 2002-05-27 |
事件の表示 | 昭和63年特許願第504700号「外科手術を再生可能に光学的に表示するための方法及び装置」拒絶査定に対する審判事件〔(昭和63年12月1日国際公開WO88/09151、平成2年10月25日国内公表特許出願公表平2-503519号)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
〔1〕本願は、1987年5月27日に独国に出願された特許出願を優先権の基礎として、1988年5月21日を国際出願日とする出願であって、その請求項1〜18に係る発明は、手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 「1.外科器具(31)を用いて行われる手術を再現可能に光学的に表示するための方法であって、外科手術を行う人体一部分の断層写真情報をデータ処理装置(21)のデータメモリに記憶させ、断層写真情報から手術個所の位置データを特定し、外科器具(31)を三次元的に自在に可動な担持体(16)に取り付け、外科器具(31)の位置データを座標測定位置(1;50)を用いて決定してデータ処理装置(21)に送り、外科器具(31)の位置データを手術個所の位置データに関連付け、この関連付けに基づいて外科器具(31)を手術個所に対して指向させるようにした前記方法において、 a)外部から接近しやすい少なくとも3つの測定点(42)を参照点として人体一部分に特定または配置すること、 b)人体一部分から、測定点(42)を含む断層写真(41)を作成して、データメモリにファイルすること、 c)座標測定装置(1;50)を用いて測定点(42)の空間的位置を検出し、その測定データをデータメモリにファイルすること、 d)データ処理装置(21)が、断層写真(41)に含まれる測定点(42)の画像データと座標測定装置(1;50)によって検出した測定点(42)のデータとの関係を求めること、 e)座標測定装置(1;50)を用いて、三次元的に自在に可動な外科器具(31)の空間的位置を連続的に検出し、その位置データをデータ処理装置(21)に送ること、 f)データ処理装置(21)が、断層写真(41)の画像情報に外科器具(31)に位置データを重畳させること、 g)データ処理装置(21)が、断層写真(41)の画像内容と人体一部分内部での外科器具(31)のその都度の位置とを重畳させた重ね合わせ画像(43)を生じさせること、 h)出力装置(22)上に、人体一部分内部での外科器具(31)のその都度の位置を、外科器具(31)が存在している領域の断層写真(41)とともに重ねあわせ画像(43)として表示させること、 i)外科器具(31)がその変位により表示されている断層写真(41)を離れたときに、データ処理装置(21)により出力装置上に、それまで表示されていた断層写真の代わりに外科器具(31)が変位したところの断層写真を生じさせること、 を特徴とする方法。 2.外科器具(31)を担持する担持する担持体(16)を三次元的に自在に可動な枢着アーム装置(20;72)に取り付け、外科器具(31)の位置データを、枢着アーム装置(20;72)と結合される座標測定装置(1;50)の回転報知器によって特定することを特徴とする、請求の範囲第1項に記載の方法。 3.外科器具(31)の位置データを、位置測定装置として形成された座標測定装置によって無接触に特定することを特徴とする、請求の範囲第1項に記載の方法。 4.出力装置の異なる窓に、鉛直面内で縦方向及び横方向に延びる断層写真と水平方向の断層写真(41)とにより形成されている重ねあわせ画像(43)を同時に表示させることを特徴とする、請求の範囲第1項から第3項までのいずれか1つに記載の方法。 5.外科手術を記録するため重ねあわせ画像(43)をデータメモリに記憶させることを特徴とする、請求の範囲第1項から第3項までのいずれか1つに記載の方法。 6.重ねあわせ画像(43)の作成のため、人体一部分内部での外科器具(31)のその都度の位置に相当する断層写真(41)を常に用いることを特徴とする、請求の範囲第1項から第5項までのいずれか1つに記載の方法。 7.座標測定装置(1;50)により測定点(42)をある時間間隔で反復走査することによって人体一部分の空間的位置を調べ、その際得られた測定データをデータ処理装置に入力して該データ処理装置により最初の測定データと比較し、違いがある場合には出力装置に表示される断層写真(41)の位置修正を行なうことを特徴とする、請求の範囲第1項から第6項までのいずれか1つに記載の方法。 8.人体一部分の切除されるべき領域の周囲で、座標測定装置(1;50)と結合されるスキャナーまたは外科器具(31)を包絡線状に周回させ、その際得られた前記領域の位置データをデータ処理装置(21)により断層写真(41)の対応する画像情報と比較し、人体一部分の前記領域の体積変化または位置変化によってデータにずれが生じた場合には、修正した画像を作成してデータメモリに記憶させることを特徴とする、請求の範囲第1項から第7項までのいずれか1つに記載の方法。 9.外科手術の際に人体一部分の特定領域を切除したことによって生じた中空部を、座標測定装置(1;50)と結合されるスキャナーまたは外科器具(31)を用いて包絡線状に走査し、その際得られた中空部の位置データを対応する断層写真の画像情報と重ねあわせ、その際生じる手術後の断層写真のデータをデータメモリに記憶させることを特徴とする、請求の範囲第1項から第8項までのいずれか1つに記載の方法。 10.重ねあわせ画像(43)と手術後の断層画像とを最初の断層写真(41)と比較可能であることを特徴とする、請求の範囲第1項から第9項までのいずれか1つに記載の方法。 11.請求の範囲第1項から第10項までのいずれか1つに記載の方法を実施するための装置であって、データ処理装置(21)と、人体一部分の断層画像情報を一連の断層写真(41)として記憶している、データ処理装置(21)のデータメモリと、データ処理装置(21)のデータメモリと、データ処理装置(21)に接続され、断層画像情報から成る断層写真(41)を選択的に再生するスクリーン(22)と、外科器具(31)を担持する、三次元的に可動な担持体(16)と、担持体(16)及びデータ処理装置(21)に接続され、断層画像情報内の位置データをデータ処理装置(21)により関連付け可能な外科器具(31)の位置データを特定するための座標測定装置(31)と、を有している前記装置において、 a)外部から接近可能な人体一部分に少なくとも3個設定される測定点(42)と、 b)測定点(42)を含んでいる断層画像情報と、 c)座標測定装置(1;50)によって走査された測定点(42)の位置データと断層画像情報に含まれている測定点(42)の位置データとの関連付け、即ち断層画像情報の位置データと座標測定装置(1;50)によって検出された外科器具(31)の位置データとの関連付けを行うようにデータ処理装置(21)に設けられた関連付け手段と、 d)外科手術中に前記関連付け手段により検出された外科器具(31)の位置データと断層画像情報とを重ねあわせて重ねあわせ画像(43)を発生させるようにデータ処理装置(21)に設けられた重ねあわせ手段と、 e)スクリーン(22)に重ねあわせ画像を連続的に再生させるとともに、断層画像情報(41)における外科器具(31)の位置を連続的に表示するようにデータ処理装置(21)に接続された手段と、 f)外科器具(31)がその変位により表示されている断層写真(41)を離れたときに、出力装置上に、それまで表示されていた断層写真の代わりに外科器具(31)が変位したところの断層写真を生じさせるようにデータ処理装置(21)に設けられる手段と、を有していることを特徴とする装置。 12.外科器具(31)を担持する担持体(16)が三次元的に自在に可動な枢着アーム装置(20;72)に取り付けられ、座標測定装置(1;50)が枢着アーム装置(20;72)と結合される回転報知器を有していることを特徴とする、請求の範囲第11項に記載の装置。 13.座標測定装置が、外科器具(31)の位置データを無接触に特定する位置測定装置として形成されていることを特徴とする、請求の範囲第11項に記載の装置。 14.枢着アーム装置(20;72)が6個の回転軸を有していることを特徴とする、請求の範囲第12項に記載の装置。 15.枢着アーム装置(72)が重量補償機構(73)を有していることを特徴とする、請求の範囲第14項に記載の装置。 16.枢着アーム装置(72)の、水平軸(62;66)のまわりに旋回可能な構成要素(61;65,68,69)が、歯付きベルト伝動装置(85,86;87,88,90)を介してそれぞれ1つの固有の補償錘(79,81)と結合されていることを特徴とする、請求の範囲第15項に記載の装置。 17.外科器具(31)及び/またはスキャナーが連結部(32)を介して座標測定装置(1;50)と結合可能であり、且つ特性コード(34)を具備していることと、連結部(32)の領域にコードスキャナー(36)が配置され、該コードスキャナー(36)は、コード情報を伝送するためデータ処理装置(21)に接続されていることを特徴とする、請求の範囲第11項から第16項までのいずれか1つに記載の装置。 18.座標測定装置(1;50)の、個々の枢着部に付設される測定器が、中央のケーシング内に配置され、且つ引張り手段及び歯車装置により前記枢着部と結合されていることを特徴とする、請求の範囲第12項または請求の範囲第14項から第17項までのいずれか1つに記載の装置。」 〔2〕原査定の拒絶の理由の概要は、請求項1〜8に係る発明は、手術のための予備的処置及び画像診断のための人体処置方法であって、人間を手術及び診断する方法と認められるから特許法第29条第1項はしら書に規定する要件を満たしていない(理由1)というものであり、また、請求項1〜12、14に係る発明は、本願出願前に頒布された特開昭62-327号公報、特開昭57-122858号公報、特開昭57-177738号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができない(理由2)というものである。 〔3〕これに対して、請求人は、理由1について「本願発明は、人間を手術及び診断する方法でもないし、また人体の手術中のみ利用(実施)される発明でもない。 人間を手術する方法とは、例えば苦痛の緩和とか体力の回復とかに直接的に用いられ、処置が直接人体に影響を及ぼすような方法であるが、本願発明による方法はこのような意味での手術方法も含んでいない。また人間を診断する方法とは、検査方法として診断の基礎を提供し、診断に対してなんらかの示唆を含んでいる方法である。即ち診断方法とは、検査に用いられた方法が具体的な診断結果に導くような方法、或いは得られたデータからなんらかの診断値を導出できるような方法であるが、本願発明による方法はこのような意味での診断方法も含んでいない。 本願の請求項1に記載のどの構成要件も、人体またはその器官との機能的に関係しているものはなく、即ちこれら構成要件を実施するために人体の特定の機能または特定の生理学的状態を要求するものはなく、さらに人体またはその器官に作用を及ぼす構成要件もない。つまり、本願発明の個々の構成要件と人体の間に相互作用はない。個々の構成要件或いはすべての構成要件を実施した後も人体の生理学的状態はこの方法を実施する前の状態と全く同一である。 この点は本発明の課題を参照しても明らかであり、即ち明細書の第5頁第4行から第8行までには、『従って本発明の課題は、手で自在に案内される手術器具の位置を連続的に表示すると共に、予め得られた断層写真を人体一部分の3次元モデルでスクリーンにより再生可能に表示させるような方法及び装置を提供することである。』と記載されており、診断の基礎を提供したり、診断結果または診断値を示唆したり、直接人体に影響を及ぼすことを課題としていない。 また、拒絶査定の中で言及されているように、請求項1に記載の発明は人体の手術中のみ利用(実施)される発明でもない。手術中以外にも種々適用できる。その適用例をいくつか挙げれば、本願発明による方法は、外科器具を用いて行われる手術を再現可能に光学的に表示し、これをデータとして保存することが可能であり、後で手術中の外科器具の運動軌跡を正確に追体験できるので、たとえば医学生、実習生等のトレーニング用の教材或いは教師の講義用の教材として活用でき、適性試験、医師試験等の判定にも適用できる。また、手術中にたとえば神経系が外科器具により誤った損傷を受けたか否かを訴訟で争う際の重要な証拠物件として損害賠償訴訟において使用することもできる。これらの適用例はいずれも業として利用できる可能性を含んでいるから、本願発明は産業上利用できる発明と思料する。」(平成10年11月24日付け訂正審判請求書第5頁第13行〜第7頁第10行)旨主張する。 〔4〕そこで、まず請求項1に係る発明について検討する。 請求項1に係る発明は、「外科器具(31)の位置データを座標測定位置(1;50)を用いて決定してデータ処理装置(21)に送り、外科器具(31)の位置データを手術個所の位置データに関連付け、この関連付けに基づいて外科器具(31)を手術個所に対して指向させるようにした方法において」、「外部から接近しやすい少なくとも3つの測定点(42)を参照点として人体一部分に特定または配置」し、「データ処理装置(21)が、断層写真(41)の画像内容と人体一部分内部での外科器具(31)のその都度の位置とを重畳させた重ね合わせ画像(43)を生じさせ」、「出力装置(22)上に、人体一部分内部での外科器具(31)のその都度の位置を、外科器具(31)が存在している領域の断層写真(41)とともに重ねあわせ画像(43)として表示させる」ことを、構成要件とする方法であって、身体の構造・状態を計測するなどして人間の健康状態を認識し、又はその病状を把握する方法であるから、実質的に「人間を診断する方法」に該当する。なお、明細書第16頁第4〜7行には「行なう手術の準備のため、患者を手術台の上に横たえて位置決めする。手術を行なう前にまず前記の座標測定装置1を介して、患者に取付けられ固定または設定される3つの測定点の位置を決める。…」、同第16頁第18〜21行の「コンピュータの適当な計算により、手術台でその位置を決定された測定点42を記憶された断層写真と患者、特に外科器具の具体的な空間的位置とを正確に関連づける。…」、同第17頁第5〜13行の「座標測定装置1を介して3つの測定点42に接近させ、外科器具と患者との空間的な位置関係を記憶されている断層写真41に一致させた後、手術を始めることができる。その結果外科器具の先端或いはその有効領域は運動及び対応する手術の際どんな小さな運動及び/または角度運動でも検知され、コンピュータにより設定される。この外科器具の検知された運動はコンピュータを介してスクリーン22で現時点での断層写真と共に写しだされ、重ねあわせ画像43が生じる。…」、同第17頁第22〜24行の「それによって、手術の間手術執刀者がどの程度正確な領域にあるかについての最大限の情報が執刀者に提供される。…」等の記載からみても、「人間を診断する方法」に該当するものというべきである。 そして、人間を診断する方法は、通常、医師又は医師の指示を受けた者が人間を診断する方法であって、いわゆる「医療行為」であるから、特許法第29条第1項はしら書にいう「産業」には該当しない。 そうすると、請求項1に係る発明が、特許法第29条第1項はしら書に規定する要件を満たしていないとした、原査定は、妥当というべきである。 〔5〕以上のとおりであるから、本願は、その他の請求項に係る発明及び拒絶の理由について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-09-24 |
結審通知日 | 1999-10-12 |
審決日 | 1999-10-08 |
出願番号 | 特願昭63-504700 |
審決分類 |
P
1
8・
14-
Z
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大橋 賢一 |
特許庁審判長 |
青山 紘一 |
特許庁審判官 |
和泉 等 長崎 洋一 |
発明の名称 | 外科手術を再生可能に光学的に表示するための方法及び装置 |
代理人 | 藤田 アキラ |
代理人 | 伊藤 武久 |