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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1067606
異議申立番号 異議2001-73383  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-02-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-12-18 
確定日 2002-10-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第3177629号「血中コレステロール上昇抑制作用を有する食肉製品」の請求項1、5、6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3177629号の請求項1、5、6に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯:
本件特許第3177629号は、特願平8-150175号の特許出願(優先日1995年5月21日、日本)に係り、平成13年4月13日に特許権が設定されたもので、その後山本尚平から特許異議の申立てがなされ、当審において取消理由が通知され、その指定期間内である平成14年6月10日に特許異議意見書が提出されたものである。

2.本件発明:
本件の請求項1、5および6に係る発明は、特許明細書の請求項1、5および6の記載により下記の如く特定されている。

「【請求項1】 ソーセージ類、ハム類、ベーコン類、コンビーフ類、ハンバーグ類、ミートボール類、ギョウザ及びシュウマイから選ばれた食肉製品であって、脂肪含量を従来製品の脂肪含量(日本食品標準成分表第4改訂版の記載に基づく)の1/2以下に低減すると共に分離大豆蛋白、繊維状大豆蛋白又は濃縮大豆蛋白を含有することを特徴とする血中コレステロール上昇抑制作用を有する食肉製品。
【請求項5】 大豆蛋白質を、製品100g当り1〜20g含有する請求項1記載の食肉製品。
【請求項6】 大豆蛋白質が、分離大豆蛋白である請求項5記載の食肉製品。」

3.引用文献との対比・判断:
引用文献1〜3(特に引用文献3第17頁)には、近年消費者が脂肪を嫌う傾向が強くなってきたこと、およびそのためにハム類等食肉製品において脂肪含量が低くなったことが記載されており、その低減の程度は、引用文献8からみて従来製品の1/2以下に相当するものであるといえる。
また、引用文献4、5および7〜11によれば、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白は従来からハム類などの畜肉練り製品に対して、食感等の品質改良剤、品質補強剤などとして(引用文献7,11など)広く添加されている食品素材であり、その際の配合割合は、製品100gあたり1〜20gの範囲に含まれる程度である(引用文献7〜11)といえる。特に、引用文献7に記載されるボンレスハムは、大豆蛋白約1.70〜17.78g/100gで、かつ脂肪含有量1.9%(脂肪含量1/2以下)に相当する。
そして、大豆タンパク質を摂取することで血清コレステロールが低下することが周知であったことは特許権者自身も特許明細書【0002】中で認めるところであるが、引用文献6には、分離大豆蛋白に血中のコレステロール濃度を低下させる作用があることが記載されている。
上述の消費者に脂肪が嫌われた原因がそもそも血中のコレステロール上昇も含めた健康上の理由であったことを考慮すれば、引用文献1〜3の如くハムなどの各種食肉製品においてその脂肪含量を従来製品の1/2以下に低減させるだけでなく、同時に引用文献6などで血中のコレステロール低減効果が公知の分離大豆蛋白などを積極的に配合することは、当業者にとってきわめて自然に発想されることにすぎない。
しかも、上述の如く大豆蛋白には食感などの品質改善効果があり、引用文献9第268頁によれば、抽出蛋白質(引用文献5によれば分離大豆蛋白質に相当)には脱脂大豆粉のような大豆特有の臭気が残る欠点が無いのであるから、脂肪含量を軽減した食肉製品に添加した場合に、「食肉製品本来の嗜好性を損なうことなく血中のコレステロールを低下させる」という効果が奏せられることは当業者にとって充分期待される範囲内の事柄である。
ところで、本件特許権者は、特許異議意見書において特許明細書【0019】〜【0021】のコレステロール上昇試験(表7)を根拠に、請求項1に記載された発明における「脂肪含量を従来製品の1/2以下に低減させること」と「分離大豆蛋白などを含有させること」との2つの構成要件の相乗効果を主張しているが、実施例のI群と比較しているII群、III群はいずれも脂肪の種類は異なるとはいえ「脂肪含量」としては同量(表6)であるから、表7の結果は両構成要件に基づく相乗効果を立証するものではない。むしろ、分離大豆蛋白自身の既知のコレステロール低減効果を追認したにすぎないものである。
また、同【0022】〜【0023】の実施例3で奏せられた効果は、表2の特定の脂肪酸組成を有する脂肪を用いた場合の分離大豆蛋白配合ソーセージにおける効果であるとはいえても、上記2つの構成要件の相乗効果を示すものではない点では同様である。
したがって、上記取消理由通知で指摘したように、請求項1、5および6に記載された発明は、引用文献1〜11の記載事項に基づいて当業者が容易に想到できたものである。


引用文献1:天野慶之他編「食肉加工ハンドブック」(株)光琳(昭和55年11月20日)第642〜643頁
引用文献2:「豚肉及び豚肉加工品の品質評価法確立のための調査研究事業報告書」社団法人 日本食肉加工協会(平成6年3月)第47頁
引用文献3:「試験成績書No.14」社団法人 日本食肉加工協会(1978年)第12〜21頁
引用文献4:小原哲二郎他監修「簡明 食辞林」(株)樹村房(昭和60年9月1日)第630頁
引用文献5:小原哲二郎他監修「簡明 食辞林」(株)樹村房(昭和60年9月1日)第736〜737頁
引用文献6:必須アミノ酸研究委員会「必須アミノ酸研究No.113」(1987年2月)第28〜31頁
引用文献7:Journal of Food Quality,Vol.18,No.2(April,1995)p.119〜130
引用文献8:科学技術庁資源調査会編「日本食品成分表<四訂>」医歯薬出版(株)(1988年1月20日)第152〜153頁
引用文献9:天野慶之他編「食肉加工ハンドブック」(株)光琳(昭和55年11月20日)第267〜268頁、第441〜442頁
引用文献10:渡辺篤二他著「大豆食品」(株)光琳(昭和55年6月20日)第251頁
引用文献11:「植物性たん白質食品の開発」社団法人 日本植物蛋白食品協会(昭和61年3月)第66〜72頁

4.むすび
以上のとおりであるから、請求項1、5および6に記載された発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-08-28 
出願番号 特願平8-150175
審決分類 P 1 652・ 121- Z (A23L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鈴木 恵理子上條 肇  
特許庁審判長 種村 慈樹
特許庁審判官 佐伯 裕子
斎藤 真由美
登録日 2001-04-13 
登録番号 特許第3177629号(P3177629)
権利者 日本ハム株式会社
発明の名称 血中コレステロール上昇抑制作用を有する食肉製品  
代理人 廣瀬 孝美  
代理人 角田 嘉宏  

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