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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G03G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G03G
審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
管理番号 1068830
異議申立番号 異議2001-70455  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-06-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-02-14 
確定日 2002-10-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3075242号「トナー担持体及び画像形成装置」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3075242号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
特許第3075242号の請求項1ないし5に係る発明は、平成9年11月28日に特許出願され、平成12年6月9日にその特許権の設定登録がなされ、その後、竹内清親、山口雅行、伊藤壽朗より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成13年7月16日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正事項
・訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1、5に「画像形成体に接触又は近接して」とあるのを、「画像形成体に接触して」と訂正する。
・訂正事項b
明細書の段落【0015】、【0016】、【0041】に「画像形成体に接触又は近接して」とあるのを、「画像形成体に接触して」と訂正する。
・訂正事項c
明細書の段落【0041】に「例えば、紙やOHP用紙等の紙葉類を画像形成体とし、これらにトナー担持体上に担持させたトナーを制御電極に形成した孔を通して直接飛翔せしめ、紙やOHP用紙に直接画像を形成するものであってもよい。」とあるのを削除する。
・訂正事項d
明細書の段落【0015】に「表面にに」とあるのを、「表面に」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項aは、トナー担持体と画像形成体との位置関係を、「接触」するものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、該訂正は、願書に添付された明細書の段落【0002】〜【0004】に、【従来の技術】として、加圧現像法が挙げられ、「例えば図2に示したように、トナー塗布用ローラ5と画像形成体(感光体)6との間に、トナー担持体(現像ローラ)1が配設され、これらトナー担持体1、画像形成体6及びトナー塗布用ローラ5がそれぞれ図中矢印方向に回転することにより、トナー7がトナー塗布用ローラ5によりトナー担持体1の表面に供給され、このトナーが成層ブレード8により均一な薄層に整えられ、この状態でトナー担持体1が画像形成体6と接触しながら回転することにより、薄層に形成されたトナーがトナー担持体1から画像形成体6の潜像に付着して、該潜像が可視化するようになっている。」と記載され、また段落【0054】では、実施例1として、「【図2】に示した現像ユニットに現像ローラ1として装着し・・・反転現像で画像出しを行い、・・・」と記載され、【図2】には、現像ローラ1であるトナー担持体が、感光体である画像形成体6に接触した構造が示されているから、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項b、cは、明細書の発明の詳細な説明の項の記載を、訂正事項aの訂正に整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項dは、「表面ににトナーを担持して該トナーの薄層を形成し、」における「表面にに」とあるのを「表面に」と訂正するものであるが、「表面にに」は「表面に」の誤記と認められるので、誤記の訂正を目的とする訂正に該当し、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立について
3-1.本件発明
上記2.で示したように訂正が認められるから、本件の請求項1ないし5に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】表面にトナーを担持して該トナーの薄層を形成し、この状態で画像形成体に接触して、該画像形成体表面に該トナーを供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成するトナー担持体において、良導電性シャフトの外周に導電性弾性層が形成されていると共に、部材表面に架橋性の樹脂層が形成されたローラ状のトナー担持体であり、温度15℃,湿度10%RHの低温低湿環境下と温度32.5℃,湿度85%RHの高温高湿環境下とでのローラ外径の変化をAとし、ローラのJIS B0621における円筒度をBとしたときに、AとBとの和が0.17mm以下であることを特徴とするトナー担持体。
【請求項2】上記樹脂層を形成する架橋性の樹脂が、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びシリコーン樹脂から選ばれた1種又は2種以上の混合物である請求項1記載のトナー担持体。
【請求項3】部材表面に形成された上記樹脂層の平均層厚が1〜50μmである請求項1又は2記載のトナー担持体。
【請求項4】上記導電性弾性層が、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びエピクロルヒドリンゴムの1種又は2種以上の混合ゴムである請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナー担持体。
【請求項5】表面にトナーを担持して該トナーの薄層を形成し、この状態で画像形成体に接触して、該画像形成体表面に該トナーを供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成するトナー担持体を具備してなる画像形成装置において、前記トナー担持体として請求項1〜4のいずれか1項に記載のトナー担持体を用いたことを特徴とする画像形成装置。」

3-2.特許異議の申立ての概要
3-2-1.異議申立人竹内清親は、証拠として、下記の甲第1ないし5号証を提出して、
請求項1ないし5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであり、甲第2〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、また甲第1号証の記載を参酌すると本件明細書の記載には不備があるので、特許法第36条第4項の規定に違反して特許されたものであるから、その特許は取り消されるべきである旨主張する。 記
甲第1号証:改訂「特許・実用新案審査基準」第I部 明細書 第1章 明細書の記載要件(PDF 103KB)(平成12年12月28日公表)第16頁第14〜30、36、37行、第17頁第第10〜13、21〜30行、第20頁第9〜14、18〜20行
甲第2号証:特開平9-171299号公報(以下「刊行物1」という)
甲第3号証:特開平4-247478号公報(以下「刊行物2」という)
甲第4号証:特開昭62-138874号公報(以下「刊行物3」という)
甲第5号証:「電子写真学会誌」第33巻、第1号、第7〜14頁(以下「刊行物4」という)

3-2-2.異議申立人山口雅行は、証拠として、下記の甲第1号証を提出して、請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであり、また本件明細書の記載には不備があるので、特許法第36条第4、6項の規定に違反して特許されたものであるから、その特許は取り消されるべきである旨主張する。

甲第1号証:特開平9-171299号公報(刊行物1と同一)

3-2-3.異議申立人伊藤壽朗は、証拠として、下記の甲第1ないし5号証を提出して、
請求項1ないし5に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、また本件明細書の記載には不備があるので、特許法第36条第4項の規定に違反して特許されたものであるから、その特許は取り消されるべきである旨主張する。

甲第1号証:特開平9-222788号公報(以下「刊行物5」という)
甲第2号証:特開平4-247478号公報(刊行物2と同一)
甲第3号証:特開平1-178986号公報(以下「刊行物6」という)
甲第5号証:高分子学会、高分子辞典編集委員会編集「新版高分子辞典」第534、536頁(付録 III.高分子の一般的性質)朝倉書店(1991年8月10日発行)(以下「刊行物8」という)

4.4.各刊行物の記載事項
4-1.刊行物1(特開平9-171299号公報)には、
(1a)「【請求項1】良導電性シャフトの外周に導電性を有する弾性層を形成してなり、前記弾性層表面に現像剤を担持して該現像剤の薄層を形成し、この状態で静電潜像を表面に保持した潜像保持体に接触又は近接して、潜像保持体表面に前記現像剤を供給することにより、前記静電潜像を可視化する現像ローラにおいて、前記弾性層が、その表面に尿素樹脂及び/又はメラミン樹脂を含有する樹脂成分を有し、しかもこの樹脂成分を有さない場合のローラ抵抗をR1、この樹脂成分を有する場合のローラ抵抗をR2としたとき、
log(R2/R1)≦4.5
なる関係を満たすことを特徴とする現像ローラ。
・・・・・・
【請求項4】上記樹脂成分が、尿素樹脂及び/又はメラミン樹脂と、アルキッド樹脂、変性アルキッド樹脂、オイルフリーアルキッド樹脂及びアクリル樹脂から選ばれる1種又は2種以上とを含有するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像ローラ。
【請求項5】上記樹脂成分に、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、シリコン系カップリング剤及びシリカ粉体から選ばれる摩擦低下剤を上記樹脂成分100重量部に対して1〜100重量部配合した請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像ローラ。
・・・・・・
【請求項8】弾性層がポリウレタンエラストマー又はEPDMを主材とするものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の現像ローラ。
【請求項9】表面に静電潜像を保持する潜像保持体と、外周面に現像剤を担持した状態で上記潜像保持体表面に当接又は近接して、回転することにより、前記現像剤を潜像保持体表面の静電潜像に付着させて該静電潜像を可視化する現像ローラとを具備してなる現像装置において、前記現像ローラとして請求項1〜8のいずれか1項に記載の現像ローラを用いたことを特徴とする現像装置。」(請求項1、4、5、8、9)、
(1b)「【0009】即ち、感光体への汚染は、現像ローラ表面と感光体表面との間に現像剤がない状態、つまり使用前の初期状態で発生し易いが、上記樹脂成分の付与がかかる汚染防止に効果的であること、また特に、尿素樹脂及び/又はメラミン樹脂による表面処理がローラ表面の摩擦低減に有効であり、ローラの駆動性、トナー搬送性を改良できること、しかも上記ローラ抵抗R1とR2との関係を上記の如く調整することにより、ローラ表面上の現像剤帯電量を適正化し得、濃度むらや地かぶり等のない高品位の画像を得ることができると共に、長期の使用においても画質の劣化を生じることもないことを知見し、本発明をなすに至ったものである。」、
(1c)「【0011】また、本発明者は、上記知見に基づいて更に検討を進めた結果、上記本発明の現像ローラは、弾性層表面の樹脂成分にカーボンブラックなどの導電性粉体が含まれていない方が、より良好なトナー帯電性が得られること、一方、例えば高速性を必要とするプリンタ等に用いる場合には、汚染性及びトナー帯電性に加えて感光体電位と現像ローラ電位との電位差が小さい場合に生じる、所謂低圧かぶりの発生を防止することが要求されるが、この要求に対しては、上記通常の場合とは逆に上記樹脂成分中にカーボンブラック等の導電性粉体を含有させることにより低圧かぶりの発生を効果的に低減させることができ、このように導電性粉体を含有される場合には上記ローラ抵抗R1とR2とが、log(R2/R1)≦3.5の関係を満足するように構成することが好ましく、これにより汚染性及びトナー帯電性を改善した上で、低圧かぶりの発生を低減させることができることを見出した。」、
(1d)「【0015】次に、このシャフト2の外周に形成する弾性層3は、ポリウレタン又はEPDM等のエラストマーやフォーム材料を基材として用い、それにカーボンブラック、金属、金属酸化物粉などの導電性粉体や、過塩素酸ナトリウムの如きイオン性導電物質を配合することにより、導電性を用途に応じて最適な中抵抗領域103〜101OΩcm、特に104〜108Ωcmに調整したものが好適である。
【0016】この場合、上記基材として具体的には、ポリウレタン、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、及びこれらの混合物等が挙げられるが、特にポリウレタンとEPDMが好ましい。」、
(1e)「【0025】また、弾性層3の硬度は、特に制限されるものではないが、JIS-Aスケールで60°以下、特に25〜55°とすることが好ましい。この場合、硬度が60°を超えると感光ドラム等との接触面積が小さくなり、良好な現像が行えなくなるおそれがあるが、逆にあまり低硬度にすると圧縮永久歪が大きくなり、なんらかの理由で現像ローラに変形や偏心が生じた場合、画像の濃度むらが発生することとなる。このため、弾性層の硬度を低硬度に設定する場合でも、圧縮永久歪をなるべく小さくすることが好ましく、具体的には20%以下とすることが好ましい。」、
(1f)「【0028】この場合、上記樹脂成分は、尿素樹脂及び/又はメラミン樹脂を含有してなるものであればよく、これら必須樹脂成分のみ又はこれら必須樹脂成分と他の樹脂とを架橋させたり、必要に応じて必須樹脂成分と他の樹脂とを混合して使用することができ、特に、上記必須樹脂成分と後述する他の樹脂とを架橋させたものの使用が実機耐久性を向上させる上で好ましい。この場合、出発原料として用いる尿素樹脂としては、ジメチロール尿素、ジアルコキシメチル,アルコキシルメチル尿素環状トリマー等、また、メラミン樹脂としては、トリメチロールメラミン、へキサメトキシメチルメラミン等を好適に使用することができ、これら必須樹脂成分は1種を単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0029】また、この樹脂成分に配合される上記他の樹脂としては、感光ドラム等の潜像保持体に対して非汚染性であればよく、特に制限されるものではないが、特に水酸基を有する樹脂を好適に使用することができ、具体的には、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等の変性アルキッド樹脂、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。これらの中では、特に成膜性、密着性の観点から、各種変性アルキッド樹脂、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂が好ましく使用される。」、
(1g)「【0048】[実施例1]グリセリンにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを付加して、分子量5000としたポリエーテルポリオール(OH値33)100部(重量部、以下同じ)に、1,4-ブタンジオール1.0部、シリコーン界面活性剤1.5部、ニッケルアセチルアセトネート0.5部、ジブチルチンジラウレート0.01部及びアセチレンブラック2.0部を添加し、混合機を用いて予備混合した後、ペイントロールで混練してアセチレンブラックを均一に分散させ、ポリオール組成物を調製した。
【0049】このポリオール組成物を減圧下に撹拌して脱泡した後、ウレタン変性したMDIを17.5部加えて2分間撹拌し、次いで110℃に加熱した金型に注型し、2時間硬化させて金属性シャフトの外周に弾性層を形成して図1に示した構造のローラを得た。得られたローラの表面を研摩して表面をJIS10点平均粗さ7μmRzに調整し、現像ローラを作成した。
【0050】次に、上記現像ローラを、トルエン中にオイルフリーアルキッド樹脂及びメラミン樹脂をそれぞれ10重量%溶解した溶液中に浸漬した後、これを引き上げ、加熱乾燥して、表面処理を行った。
【0051】[実施例2]分子量2500のポリイソプレンポリオール(OH価=47.1)100部に、アセチレンブラックを3.32部配合し、30分間撹拌した。その後、クルードMDI(NCO%=31.7)を13.33部、ジブチル錫ジラウレートを0.001部加え、3分間撹拌した。次に、シャフトを配置し、予め90℃に加熱したモールドにこの反応混合物を流し込み、90℃で12時間硬化反応を行って図1に示した構造のローラを得た。得られたローラ表面を研磨してJIS10点平均粗さ7μmRzに調整し、現像ローラを作成した。この現像ローラを実施例1と同様にして表面処理した。」、
と記載されている。

4-2.刊行物2(特開平4-247478号公報)には、
(2a)「【0010】・・・しかし、このように接触して配置された場合には担持体82の円筒度、偏芯、或いは感光体PCの円筒度、偏芯の問題があり、現像領域の接触状態が大きく変わり画質に影響を与える。」、
(2b)「【0030】現像ローラ3は弾性ローラ31の表面にフィルム32を被覆したものであり、該フィルムは結晶性ポリアミド樹脂中に非晶質ポリアミド樹脂を重量比で50%添加した混合樹脂から形成されており、厚さは約100μmである。この実施例ような構成の場合、現像ローラ全体としての弾性が必要となり、フィルム膜厚としては30〜150μm、非晶質ポリアミド樹脂の添加量は40〜65%が望ましい。」、
と記載されている。

4-3.刊行物3(特開昭62-138874号公報)には、
(3a)「電子複写機、プリンタ、ファクシミリ等の作像装置に採用される上記形式の現像装置は従来より周知である。この形式の現像装置においてはトナー担持体と潜像担持持体をトナー薄層を介して互いに圧接させて所定の現像ニップ幅を維持する必要がある。現像ニップ幅とは潜像担持体の移動方向ないしは回転方向におけるトナー担持体と潜像担持体の接触幅であり、このニップ幅が小さすぎると現像された可視像の濃度が薄くなり、逆に大きすぎても潜像担持体に付着したトナーがトナー担持体によって擦り取られ、可視像に濃度むらができる恐れがある。このため従来は、トナー担持体と潜像担持体の組付ないしはその位置調整時に、これらを相対的に動かしながら両者を圧接させ、所定の現像ニップ幅が得られたところで両者の相対位置を固定していた。ところがこの方法では適正なニップ幅が得られるようにトナー担持体と潜像担持体を粗付ける作業が容易でないだけでなく、トナー担持体あるいは潜像担持体の表面にわずかな凹凸があったり、製作上の誤差等によってこれらの形態が理想的な形からわずかにずれているだけで、両者の均一な当たりが阻害され、適正な現像ニップ幅が得られなくなる恐れがある。そこでトナー担持体を支持する支持部材(通常はトナーを収容するトナー容器)自体をばね等の押圧手段によって潜像担持体に向けて押圧し、トナー担持体を潜像担持体に弾性的に押圧させる構成が提案されている。ところがこの構成によってもトナー担持体や潜像担持体表面のわずかな凹凸や偏心等によって、両者の均一な圧接が阻害され、現像ニップ幅が不均一となったり、この幅が周期的に変動したりし、現像された可視像に濃度むらや白抜け現象が発生する恐れを免れなかった。」(第1頁右下欄第16行〜第2頁右上欄第8行)、
(3b)「そこで本例では現像ローラ5が導電性金属等から成るローラ軸5aと、その外側のゴム等から成る弾性体層5bとから構成され、・・・」(第2頁右下欄第18行〜第3頁左上下第1行)、
(3c)「実験では、ゴム硬度46°の弾性体層5bを有し、片側フレ50μ(第4図(a)参照)、円筒度のむら10μ(第5図参照)の現像ローラと・・・」(第4頁左下欄第19行〜右下欄第1行)、
と記載されている。

4-4.刊行物4(「電子写真学会誌」第33巻、第1号、第7〜14頁)には、
(4a)「現像部における感光体への圧接量(Fig.10のDに対応)と接触圧力の関係について弾性ゴムローラの場合と比較した結果を、Fig.11に示す.また,このときの適正な画像領域との対応についても合わせて示す.
ニップ部における圧接力の小さい領域では,現像スリーブが感光体と安定した接触とはならず,画像欠損が発生し,大きすきる場合は,現像トナーのかきとりによる画像乱れが起こる.この図から,FMT現像方式においては画像ノイズの生じない圧接量領域を広く取ることができる.即ち,許容幅の広い安定した接触条件を確保できることがわかる.」第9頁右欄下から3行目〜第10頁右欄8行)と記載され、
(4b)Fig.11には、現像部における、弾性ゴムローラの感光体への圧接量と接触圧力の関係のグラフが示され、0.4〜0.8g/mmの範囲の接触圧力が適正な画像範囲となって、そのときの圧接量が約0.2mm程度であることが示されている。

4-5.刊行物5(特開平9-222788号公報)には、
(5a)「【請求項1】良導電性シャフトの外周に導電性を有する弾性層を形成してなり、表面に一成分現像剤を担持して該現像剤の薄層を形成し、この状態で静電潜像を表面に保持した潜像保持体に当接又は近接し、前記現像剤を潜像保持体表面に供給して前記静電潜像を可視化する現像ローラにおいて、前記弾性層の表面に、吸油量80ml/100g以下、比表面積150m2/g以下のカーボンブラックを含有してなる導電層を形成したことを特徴とする現像ローラ。
・・・・・・
【請求項6】表面に静電潜像を保持する潜像保持体と、外周面に現像剤を担持した状態で上記潜像保持体表面に当接又は近接し、前記現像剤を潜像保持体表面の静電潜像に付着させて該静電潜像を可視化する現像ローラとを具備してなる現像装置において、前記現像ローラとして請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像ローラを用いたことを特徴とする現像装置。」(請求項1、6)、
(5b)「【0017】この場合、基材としてはポリウレタン、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、及びこれらの混合物等が挙げられるが、特にポリウレタンとEPDMが好ましく用いられる。」、
(5c)「【0031】導電層4を形成する樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、自己膜補強性、カーボン分散安定性、トナー帯電性等の観点から特に可溶性共重合ナイロン又はフェノール樹脂が好ましく用いられる。・・・また、レゾールタイプのフェノール樹脂は、架橋剤を要することなく加熱のみでウレタン弾性層上に良好な硬化皮膜を形成することができる点で有利である。更に、これら可溶性共重合ナイロンやフェノール樹脂にシリコーン樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、アルキッド樹脂及びそれらの変性樹脂の1種又は2種以上を混合して用いることもでき、この場合にも良好な性能を発揮することができる。」、
(5d)「【0034】なお、この導電層4の厚さは特に制限されず、適宜選定し得るが、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは1〜5μmとすることができる。」、
と記載されている。

4-6.刊行物6(特開平1-178986号公報)には、
(6)「現像ローラ5と感光体ドラム18の接触幅を0〜12mmの範囲で変化させたところ0〜0.3mmの範囲では画像にムラを生じやすく、またシャープネスも不満足なものとなった。一方6mmを越えるとカブリや尾引きが発生した。従って、0.3〜6mmの範囲が良好であった。現像ローラ5および感光体ドラムの外径がおのおの20mm、60mmのとき、この接触幅を接触深さに置きかえると0.1〜2.0mmが適正範囲であった。」(第5頁左上欄第15行〜右上欄第3行)、
と記載されている。

(7)「線膨張係数をαとすると,体積膨張係数はほぼ3αとなるように,ゴムロールは芯金にしっかり接着させてあるので,体積が増加しても円周方向と長さ方向の2次元の自由度が失われてしまい,厚み方向の変形しか許されない.したがって,直径への影響はほぼ3倍となる.ゴムの線膨張係数をα,厚み方向の膨張係数をβとすると,
β≒3α(1-b/D)
b:ゴム厚さ
D:ゴムロールの外径」(第843頁左欄第10〜20行)、
と記載されている。

4-8.刊行物8(高分子辞典編集委員会編集「新版高分子辞典」第534、536頁(付録 III.高分子の一般的性質の一覧表)朝倉書店(1991年8月10日発行)には、
(8)天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、プチルゴムの線膨張係数は、それぞれ22×10-5℃-1、23×10-5℃-1、18×10-5℃-1、27×10-5℃-1、であると記載されている。

5.対比・判断
5-1.特許法第29条第1項3号違反ついて
5-1-1.請求項1に係る発明について
異議申立人竹内清観、山口雅行は、刊行物1の実施例2の現像ローラは、本件明細書の実施例1のトナー担持体であるローラと、実質的に同一であるので、前者の現像ローラは、本件請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という)と同じようにAとBとの和が0.17mm以下である蓋然性が高く、本件発明1は刊行物1に記載された発明であると主張している。
そこで、本件明細書の実施例1のローラ(段落【0043】〜【0045】)と、刊行物1の実施例2の現像ローラ(記載事項(1g)参照)の導電性弾性層の樹脂組成を比較すると、ポリイソプレンポリオール、アセチレンブラック、クルードMDI、ジブチルチンジラウレートの成分では一致するが、配合量ではアセチレンブラックが前者では2.85重量部に対して、後者では3.32重量部である点で相違し、また樹脂層の樹脂組成では、オイルフリーアルキッド樹脂、メラミン樹脂の成分では一致するが、カーボンブラックを前者が含むのに対して、後者は含まない点で相違するので、樹脂組成の点では多少の相違があるものである。
さらに、両ローラの製造方法をみると、導電性弾性層について、前者では、ポリオールとアセチレンブラックとの混合において、「減圧下に撹拌して脱泡」しているのに対して、後者では単に「30分間撹拌した」ものであり、また、前者では、イソシアネートを添加し2分間攪拌混合してから続いて触媒のジブチルチンジラウレートを加えて更に3分間攪拌しているのに対して、後者ではイソシアネート及び触媒のジブチルチンジラウレートを添加して3分間攪拌しているのである。研磨についても、前者では22℃、湿度50%RHと環境条件を一定にして行っているに対して、後者では示しておらず、環境条件にも相違がある。
してみると、両ローラには、導電性弾性層、樹脂層の樹脂組成の相違に加えて、製造方法にも相違があり、その相違がAとBとの和に影響するものではないとも認められないので、後者の刊行物1の実施例2のローラのAとBとの和が0.17mm以下であると直ちにいうことはできない。
したがって、本件発明1が、刊行物1に記載された発明であるとすることはできない。
5-1-2.請求項2ないし4に係る発明について
本件発明1が、刊行物1に記載された発明ではない以上、本件発明1の構成をすべて引用してさらに限定を加える、請求項2ないし4に係る発明についても、請求項1に係る発明と全く同じ理由で、刊行物1に記載された発明であるとすることはできない。
5-1-3.請求項5に係る発明について
本件発明1が、刊行物1に記載された発明ではない以上、本件発明1のトナー担持体、もしくは本件発明1の構成をすべて引用してさらに限定を加える請求項2ないし4に係る発明のトナー担持体を具備する画像形成装置も、本件発明1と全く同じ理由で、刊行物1に記載された発明であるとすることはできない。

5-2. 特許法第29条第2項違反について
5-2-1.請求項1に係る発明について
5-2-1-1.刊行物1に記載された発明との対比
本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、
後者における「良導電性シャフトの外周に導電性を有する弾性層を形成してなり、前記弾性層表面に現像剤を担持して該現像剤の薄層を形成し、この状態で静電潜像を表面に保持した潜像保持体に接触又は近接して、潜像保持体表面に前記現像剤を供給することにより、前記静電潜像を可視化する現像ローラにおいて、前記弾性層が、その表面に尿素樹脂及び/又はメラミン樹脂を含有する樹脂成分を有し、・・・現像ローラ」(記載事項(1a)参照)の「尿素樹脂及び/又はメラミン樹脂」は架橋性の樹脂であるから、後者の、「現像ローラ」、「導電性を有する弾性層表面に尿素樹脂及び/又はメラミン樹脂を含有する樹脂成分を有すること」、「潜像保持体」はそれぞれ、前者の、「ローラ状のトナー担持体」、「架橋性の樹脂層」、「画像形成体」に相当する。
よって、両者は、「表面にトナーを担持して該トナーの薄層を形成し、この状態で画像形成体に接触して、該画像形成体表面に該トナーを供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成するトナー担持体において、良導電性シャフトの外周に導電性弾性層が形成されていると共に、部材表面に架橋性の樹脂層が形成されたローラ状のトナー担持体」である点で一致し、前者は、「温度15℃、湿度10%RHの低温低湿環境下と温度32.5℃,湿度85%RHの高温高湿環境下とでのローラ外径の変化をAとし、ローラのJIS B0621における円筒度をBとしたときに、AとBとの和が、0.17mm以下である」のに対して、後者はこのような特定はなされていない点で相違する。

5-2-1-2.刊行物5に記載された発明との対比
本件発明1と刊行物5に記載された発明とを対比すると、
刊行物5には、導電層に用いられる樹脂に関して、「特に可溶性共重合ナイロン又はフェノール樹脂が好ましく用いられる。・・・また、レゾールタイプのフェノール樹脂は、架橋剤を要することなく加熱のみでウレタン弾性層上に良好な硬化皮膜を形成することができる点で有利である。更に、これら可溶性共重合ナイロンやフェノール樹脂にシリコーン樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、アルキッド樹脂及びそれらの変性樹脂の1種又は2種以上を混合して用いることもでき・・・」(記載事項(5c)参照)と、レゾールタイプのフェノール樹脂、メラミン樹脂を例示しており、架橋性の樹脂が用いられることは明らかであるから、後者の、「現像ローラ」、「導電層」、「潜像保持体」はそれぞれ、前者の、「ローラ状のトナー担持体」、「架橋性の樹脂層」、「画像形成体」に相当する。
よって、両者は「表面にトナーを担持して該トナーの薄層を形成し、この状態で画像形成体に接触して、該画像形成体表面に該トナーを供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成するトナー担持体において、良導電性シャフトの外周に導電性弾性層が形成されていると共に、部材表面に架橋性の樹脂層が形成されたローラ状のトナー担持体」である点で一致し、前者は、「温度15℃、湿度10%RHの低温低湿環境下と温度32.5℃,湿度85%RHの高温高湿環境下とでのローラ外径の変化をAとし、ローラのJIS B0621における円筒度をBとしたときに、AとBとの和が、0.17mm以下である」のに対して、後者はこのような特定はなされていない点で相違する。

5-2-1-3.相違点について
本件発明1と刊行物1に記載された発明との相違点、及び本件発明1と刊行物5に記載された発明との相違点は、前述のとおり同じである。
そこで上記相違点について以下に検討する。なお、「温度15℃、湿度10%RHの低温低湿環境下と温度32.5℃,湿度85%RHの高温高湿環境下とでのローラ外径の変化A」を単に「特定の環境変化による外径変化A」といい、「ローラのJIS B0621における円筒度をB」を、単に「ローラの円筒度B」という。
刊行物1の「・・・なんらかの理由で現像ローラに変形や偏心が生じた場合、画像の濃度むらが発生することとなる。このため弾性層の硬度を低硬度に設定する場合でも、圧縮永久歪をなるべく小さくすることが好ましく、・・・」(記載事項(1e)参照)、及び刊行物2の「しかし、このように接触して配置された場合には担持体82の円筒度、偏芯、或いは感光体PCの円筒度、偏芯の問題があり、現像領域の接触状態が大きく変わり画質に影響を与える。」(記載事項(2a)参照)の記載は、トナー担持体である現像ローラは変形、偏芯がなく、円筒度が高いこと、即ち、本件発明1におけるBを小さくする方が好ましいことを意味している。
また、刊行物3の「この形式の現像装置においてはトナー担持体と潜像担持持体をトナー薄層を介して互いに圧接させて所定の現像ニップ幅を維持する必要がある。現像ニップ幅とは潜像担持体の移動方向ないしは回転方向におけるトナー担持体と潜像担持体の接触幅であり、このニップ幅が小さすぎると現像された可視像の濃度が薄くなり、逆に大きすぎても潜像担持体に付着したトナーがトナー担持体によって擦り取られ、可視像に濃度むらができる恐れがある。」(記載事項(3a)参照)の記載は、トナー担持体をトナー薄層を介して圧接させて所定の現像ニップ幅を維持する必要があることであり、さらに「実験では、ゴム硬度46°の弾性体層5bを有し、片側フレ50μ(第4図(a)参照)、円筒度のむら10μ(第5図参照)の現像ローラと・・・」(記載事項(3c)参照)と記載されているが、この「円筒度のむら10mμ」は本件発明1の円筒度Bに相当し、その値が0.01mm程度にまで低くすることではある。
しかしながら、これらの刊行物1ないし3には、本件発明1における「ローラの円筒度B」に相当する記載はあっても、本件発明1における「特定の環境変化による外径変化A」に関する記載はない。
また、刊行物4の、0.4〜0.8g/mmの範囲の接触圧力が適正な画像範囲であり、そのときの圧接量が約0.2mm程度である(記載事項(4b)参照)ということは、圧接量を約0.2mmにすることが好ましいことを意味している。
同様の記載は刊行物6にもあり、該刊行物6には、「接触幅を・・・0.3〜6mmの範囲が良好であった。現像ローラ5および感光体ドラムの外径がおのおの20mm、60mmのとき、この接触幅を接触深さに置きかえると0.1〜2.0mmが適正範囲であった。」(記載事項(6)参照)と、接触深さを0.1〜2.0mmにすることが好ましいことが記載されている。
しかしながら、本件発明1のAとBとの和は、環境変化による外径の変化Aとローラ自体の円筒度Bの和である物性値であって、刊行物4に記載された「接触量」或いは刊行物6に記載されたこの「接触深さ」とは全く異なる物性値であるから、刊行物4の「接触量を0.01mm以下にまで小さくする」及び刊行物6の「接触幅0.1〜2.0mmとする」という記載があっても、これらの値を、本件発明1のAとBとの和の値に適用することが、当業者にとって容易になし得ることである想到することができたとすることはできない。
一方、刊行物7及び刊行物8には、ゴムローラ及びゴムの線膨張に関する記載がある。すなわち、刊行物7には、ゴムロールの厚み方向の膨張は線膨張係数をα、厚み方向の膨張係数をβとすると、
β≒3α(1-b/D)
b:ゴム厚さ
D:ゴムロールの外径
の関係が成り立って、厚み方向の膨張は線膨張のほぼ3倍となり(記載事項(7)参照)、さらに、刊行物8には、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、プチルゴムの線膨張係数は、それぞれ22×10-5℃-1、23×10-5℃-1、18×10-5℃-1、27×10-5℃-1、である(記載事項(8)参照)と記載されている。
これらの記載に関し、異議申立人伊藤壽朗は、以下のように主張している。
“ローラの外径を20mm、ゴムの厚さを5mm、ゴムの線膨張係数を22×10-5℃-1(天然ゴム)、温度変化を17.5℃(15℃〜32.5℃)としてローラの外径変化を計算すると、ロールの外径変化は0.087mm(天然ゴム)となり、これは本件明細書の実施例1、2、3の環境外径変化A0.08mmとほぼ一致する。
このことは通常のゴム材料を使用してゴムロールを作製すれば、本件発明1の実施例の環境外径変化Aを有していることを示しており、ロールの外径変化を限定することは格別の意味を有しないものである。”
しかしながら、本件発明1のAは、温度15℃、湿度10%RHの低温低湿環境下と温度32.5℃,湿度85%RHの高温高湿環境下という、静電潜像をトナーで現像する画像形成装置に要求されるトナー担持体のローラ外径の変化であるのに対し、刊行物7に記載されたものは、ゴムの厚さに依存して変化するゴムローラの単なる温度変化に伴うローラ外径の変化であって、該刊行物7には、「低温低湿度環境下」と「高温高湿度環境下」での外径変化に関する記載はない。
したがって、本件発明におけるAとBの和が、計算上の一般的なゴムローラの外径変化と重なるような値であっても、その値を直ちに本件発明1のA、あるいは、本件発明1のAとBの和とに適用することが、当業者にとって容易になしうることであるとすることはできない。
以上のとおり、刊行物1ないし8のいずれにも、本件発明1における特定の環境変化による外径の変化Aについては記載されていないばかりでなく、「特定の環境変化による外径の変化A」と「ローラ自体の円筒度B」のと和を、特定の値以下にすることを示唆する記載もない。そして、本件請求項1に係る発明は、AとBの和を0.17mm以下と特定したことにより、明細書記載の、環境の変動に対しても画質の低下を生じることなく、良好な画像を安定的に得ることができるという効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、刊行物1乃至8に記載された発明の基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5-2-2-2.請求項2ないし4に係る発明について
本件発明1が、刊行物1〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1の構成をすべて引用してさらに限定を加える、請求項2ないし4に係る発明についても、請求項1に係る発明と全く同じ理由で、刊行物1〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5-2-2-3.請求項5に係る発明について
本件発明1が、刊行物1〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1のトナー担持体、もしくは本件発明1の構成をすべて引用してさらに限定を加える請求項2ないし4に係る発明のトナー担持体を具備する画像形成装置も、本件発明1と全く同じ理由で、刊行物1〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

5-3. 特許法第36条違反について
5-3-1.異議申立人竹内清親の主張について
本件明細書には、ローラ状のトナー担持体のAとBとの和が0.17mm以下とすることについて、Aの円筒度は研磨条件によって変化し0に近似することができるものであるが、Bは低温低湿環境下と高温高湿環境下での外径の変化であり、これを0.17mm以下とするために、ローラ状のトナー担持体をどう製造するかは何ら開示も示唆もされていないから、甲第1号証として提出した審査基準刊行物5(記載事項(5a)〜(5c)参照)を参酌すると、実施可能要件を満たしていないと主張している。
しかしながら、本件明細書の実施例1〜3には、シャフトの外周に、樹脂の組成成分と反応工程を示して導電性弾性層を硬化させて形成し、研磨してから、架橋性樹脂を浸漬塗布して加熱硬化して架橋層を形成して、AとBとの和がそれぞれ0.10mm、0.12mm、0.14mmという0.17mm以下であるものを製造しているのであるから、これは0.17mm以下となる製造方法が工程に即して記載されているといえることであっから、本件明細書にはて、製造方法について、何らの開示も示唆もされていないとすることはできない。
そして、異議申立人は、実施可能要件についての審査基準を示すのみで、該実施例1〜3の記載の製造方法ではAとBとの和が0.17mm以下とはならないことは具体的に何も立証していない。
したがって、異議申立人竹内清親の主張は採用できない。

5-3-2.異議申立人山口雅行の主張について
本件明細書の実施例1と、刊行物1の実施例2とにおける材料及び工程の製造方法の差異によって、本件請求項1の、外径変化Aと円筒度Bの和の相違が生じるのかについては、本件明細書に記載は全くなく、当業者が本件請求項1ないし5係る発明を容易に実施することができないと主張している。
しかしながら、上記5-3-1.で述べたように、本件明細書の実施例1〜3には、AとBとの和がそれぞれ0.10mm、0.12mm、0.14mmという0.17mm以下であるものを製造することが記載されているのであり、外径変化Aと円筒度Bの和の相違が生じることに関する記載がないからといって、必ずしも当業者が容易に実施することができないとすることはできない。
したがって、異議申立人山口雅行の主張は採用できない。

5-3-3.異議申立人伊藤壽朗の主張について
本件発明1では、AとBとの和が0.17mm以下であると規定しているのに対して、本件明細書では、低温低湿環境下と高温高湿環境下とでのローラ外径の変化はゴムの厚さにより変化するものであるにもかかわらず、本件明細書ではローラの外径が記載されているだけで、ゴムの厚さ、金属シャフトの外径については記載されていないから、本件明細書の実施例1〜3には環境外径変化として0.08mmという数値が記載されているが、いかなるゴムの厚さでの測定結果であるのか不明であると主張している。
しかしながら、本件明細書の実施例1〜3には、ローラの外径を20.00mmに調整したことに加えて、表面をJIS10点平均粗さ7μmRzしたこと、さらにA、Bの値も記載されている。
トナー担持体は画像形成体と接触して回転するものであるから、ローラー外径の変化が画像形成体との関係で重要なのであって、外径の変化が該範囲にあれば、ゴム厚、シャフト径は適宜の範囲であればよいもので、ゴムにも弾性率、膨張率などの性質に様々のものがあるのであるから、単にゴム厚のみの規定が欠かせないととすることはできない。
したがって、異議申立人伊藤壽朗の主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおりであるから、各特許異議申立の理由及び証拠方法によっては、本件請求項1ないし5に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1ないし5に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
トナー担持体及び画像形成装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面にトナーを担持して該トナーの薄層を形成し、この状態で画像形成体に接触して、該画像形成体表面に該トナーを供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成するトナー担持体において、
良導電性シャフトの外周に導電性弾性層が形成されていると共に、部材表面に架橋性の樹脂層が形成されたローラ状のトナー担持体であり、温度15℃,湿度10%RHの低温低湿環境下と温度32.5℃,湿度85%RHの高温高湿環境下とでのローラ外径の変化をAとし、ローラのJIS B0621における円筒度をBとしたときに、AとBとの和が0.17mm以下であることを特徴とするトナー担持体。
【請求項2】 上記樹脂層を形成する架橋性の樹脂が、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びシリコーン樹脂から選ばれた1種又は2種以上の混合物である請求項1記載のトナー担持体。
【請求項3】 部材表面に形成された上記樹脂層の平均層厚が1〜50μmである請求項1又は2記載のトナー担持体。
【請求項4】 上記導電性弾性層が、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びエピクロルヒドリンゴムの1種又は2種以上の混合ゴムである請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナー担持体。
【請求項5】 表面にトナーを担持して該トナーの薄層を形成し、この状態で画像形成体に接触して、該画像形成体表面に該トナーを供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成するトナー担持体を具備してなる画像形成装置において、前記トナー担持体として請求項1〜4のいずれか1項に記載のトナー担持体を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター等の画像形成装置において、静電潜像を保持した感光体や紙等の画像形成体にトナーを供給して、これら画像形成体表面に可視像を形成するためのトナー担持体及び該トナー担持体を用いた画像形成装置に関する、更に詳述すると画像むらがない高品質の画像を得ることができるトナー担持体及び該トナー担持体を用いた画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、複写機、プリンター等の電子写真方式の画像形成装置等において、静電潜像を保持した感光体等の画像形成体に一成分トナーを供給し、該トナーを潜像に付着させて可視化する画像形成方法として、加圧現像法が知られている(米国3152012号、同第3731146号等)。
【0003】
この加圧現像法は、トナーを担持したトナー担持体を、静電潜像を保持した画像形成体(感光体)に接触させて、トナーを該画像形成体の潜像に付着させることにより画像形成を行うもので、このため上記トナー担持体を導電性と弾性を有する導電性弾性体で形成する必要がある。
【0004】
即ち、この加圧現像法では、例えば図2に示したように、トナーを供給するためのトナー塗布用ローラ5と静電潜像を保持した画像形成体(感光体)6との間に、トナー担持体(現像ローラ)1が配設され、これらトナー担持体1、画像形成体6及びトナー塗布用ローラ5がそれぞれ図中矢印方向に回転することにより、トナー7がトナー塗布用ローラ5によりトナー担持体1の表面に供給され、このトナーが成層ブレード8により均一な薄層に整えられ、この状態でトナー担持体1が画像形成体6と接触しながら回転することにより、薄層に形成されたトナーがトナー担持体1から画像形成体6の潜像に付着して、該潜像が可視化するようになっている。なお、図中9は転写部であり、ここで紙等の記録媒体にトナー画像を転写するようになっており、10はクリーニング部であり、そのクリーニングブレード11により転写後に画像形成体6表面に残存するトナーを除去するようになっている。
【0005】
この場合、トナー担持体1は、画像形成体6に密着した状態を保持しつつ回転しなければならず、このため図1に示したように、金属等の良導電性材料からなるシャフト2の外周にシリコーンゴム、NBR、EPDM、ポリウレタンゴム等の弾性ゴムやフォーム等に導電剤を配合して導電性を付与した導電性弾性体からなる導電性弾性層3を形成した構造となっている。更に、トナー7に対する帯電性や付着性の制御のため、画像形成体6および成層ブレード8との摩擦力制御のために、あるいは、弾性体による感光体の汚染防止等のため、樹脂等からなる表面層4が導電性弾性層3の表面に設けられている。
【0006】
また、特開昭58-116559号公報等に開示されているように、画像形成体(感光体)に近接して非接触状態に配設されたスリーブ状のトナー担持体の表面に、薄層に成層した非磁性トナーを担持し、これを感光体上に飛翔させて現像を行い画像を形成する方法も提案されている。
【0007】
更に、紙やOHP用紙等の紙葉類を画像形成体とし、これらにトナー担持体上に担持させたトナーを制御電極に形成した孔を通して直接飛翔せしめ、紙やOHP用紙に直接画像を形成する画像形成法も提案されている。
【0008】
これらスリーブ状のトナー担持体を用いる画像形成方法や制御電極を用いる画像形成方法においても、上記トナー担持体上には、トナーに対する帯電性や付着性の制御のため、あるいは感光体、成層ブレード、制御電極等の他の部材との摩擦力低減等のために、樹脂等からなる表面層が導電性弾性層の表面に設けられる。
【0009】
これらトナー担持体の表面に形成される表面層としては、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂が提案されており、これらの樹脂からなる表面層を形成することにより、トナー担持体の摩擦や画像の改良することが提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、プリンター等が高速化されたり、微細画像が要求されたり、カラー画像化されたりすることで、トナー担持体から画像形成体に、より均一でより薄層のトナー層を供給する要求が強くなってきている。また、温度22℃,湿度50%RH程度の通常環境(NN環境)に加えて、温度15℃,湿度10%RHといった低温低湿環境(LL環境)と温度32.5℃,湿度85%RHといった高温高湿環境(HH環境)でも安定した画像形成が得られるという環境依存性に関する要求、高耐久化に対する要求等が厳しくなり、従来のトナー担持体では、対応できない以下の間題が顕在化してきた。
【0011】
(1)トナー担持体をプリンター等に組み込み、長期間画像出しを繰り返すと、ハーフトーン画像において、用紙の進行方向と平行な方向に濃淡ムラのスジが入る。そして、HH環境で使用するとこの現象が著しくなる。
(2)トナー担持体をプリンター等に組み込み、長期間画像出しを繰り返すと、白地画像において、用紙の進行方向と平行な方向にカブリが生じる。そして、LL環境ではこの現象が著しくなる。
【0012】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、長期使用においても画像にハーフトーンムラや白地カブリを生じることがなく、かつ環境の変動に対しても画質の低下を生じることなく、良好な画像を安定的に得ることができるトナー担持体及び該トナー担持体を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、上記ハーフトーンムラや白地カブリの発生は、下記の通りトナー担持体の寸法のバラツキや変動が原因であることが見い出された。
ハーフトーンムラ
トナー担持体の寸法バラツキによって成層ブレードの押圧が強くなる部分が生じ、画像形成を繰り返すうちに成層ブレードのこの部分にトナーが固着し、ハーフトーン画像において、用紙の進行方向と平行な方向に濃淡ムラのスジが現れる。そして、HH環境ではトナー担持体が膨張し、さらに成層ブレードの押圧が強くなりこの現象が早期に著しく現れる。
白地カブリ
トナー担持体の寸法バラツキによって成層ブレードの押圧が弱くなる部分が生じ、この部分で成層されたトナー担持体上のトナー層が厚くなり、帯電の不十分なトナー及びトナー間の摩擦帯電により生じた逆帯電トナーの割合が増加して、白地画像において、用紙の進行方向と平行な方向のカブリが現れる。そして、LL環境ではトナー担持体が収縮し、さらに成層ブレードの押圧が弱くなりこの現象が著しく現れる。
【0014】
そこで、本発明者は、寸法のバラツキや変動による画像不良の発生を防止すべく更に検討を重ねた結果、良導電性シャフトの外周に導電性弾性層を形成したローラ状のトナー担持体表面に架橋性の樹脂層を形成し、該トナー担持体が、温度15℃,湿度10%RHの低温低湿環境下と温度32.5℃,湿度85%RHの高温高湿環境下とでのローラ外径の変化をAとし、ローラのJISB0621における円筒度をBとしたときのAとBとの和が0.17mm以下である場合に、温度や湿度が変動する環境下で長期間使用しても、ムラの無い良好なハーフトーン画像が得られると共に白地画像におけるカブリの発生も効果的に防止し得、良好な画像が長期に亘って安定的に得られることを見い出し、本発明を完成したものである。
【0015】
従って、本発明は、表面にトナーを担持して該トナーの薄層を形成し、この状態で画像形成体に接触して、該画像形成体表面に該トナーを供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成するトナー担持体において、良導電性シャフトの外周に導電性弾性層が形成されていると共に、部材表面に架橋性の樹脂層が形成されたローラ状のトナー担持体であり、温度15℃,湿度10%RHの低温低湿環境下と温度32.5℃,湿度85%RHの高温高湿環境下とでのローラ外径の変化をAとし、ローラのJIS B0621における円筒度をBとしたときに、AとBとの和が0.17mm以下であることを特徴とするトナー担持体を提供する。
【0016】
また、本発明は、表面にトナーを担持して該トナーの薄層を形成し、この状態で画像形成体に接触して、該画像形成体表面に該トナーを供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成するトナー担持体を具備してなる画像形成装置において、前記トナー担持体として上記本発明のトナー担持体を用いたことを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のトナー担持体は、例えば図1に示したローラのように、良導電性シャフト2の外側に導電性弾性層3を形成し、その表面に樹脂層4を形成したものである。
【0018】
上記導電性弾性層3としては、適宜なゴム材料に導電剤を添加して導電性を付与した弾性体が用いられる。ゴム材料としては特に限定されないが、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム等が例示され、これらの1種又は2種以上の混合ゴムを用いることができ、特に、ニトリルゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム及びエチレンプロピレンゴムが好ましく用いられる。
【0019】
また、この導電性弾性層に添加される導電剤としては、イオン導電剤および電子導電剤がある。イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム,テトラブチルアンモニウム,ラウリルトリメチルアンモニウム,ステアリルトリメチルアンモニウム,オクタデシルトリメチルアンモニウム,ドデシルトリメチルアンモニウム,ヘキサデシルトリメチルアンモニウム,ベンジルトリメチルアンモニウム,変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、アルキル硫酸塩、カルボン酸塩、スルフォン酸塩などのアンモニウム塩;リチウム,ナトリウム,カルシウム,マグネシウム等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルフォン酸塩などが挙げられる。
【0020】
電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したインク用カーボン、熱分解カーボン、グラファイト;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅等の金属等を例示することができる。
【0021】
これらの導電剤の添加量は、特に制限されるものではないが、上記イオン導電剤の場合、上記ゴム成分100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2重量部程度とすることができ、電子導電剤は、1〜50重量部、好ましくは5〜40重量部程度とすることができる。これにより、導電性弾性層3の抵抗を103〜1010Ω・cm程度、特に104〜108Ω・cmに調整することが好ましい。
【0022】
なお、この導電性弾性層3には、上記導電剤以外にも必要に応じて公知の充填剤、架橋剤等、その他のゴム用添加剤を適量添加することができる。
【0023】
この導電性弾性層3の硬度は、特に制限されるものではないが、JIS-Aで60以下とすることが好ましい。この場合、硬度が60を超えるとトナー担持体が硬くなり、感光体等との接触面積が小さくなって、良好な画像形成が行えなくなる場合があり、更にはトナーにダメッジを与えて感光体や成層ブレードへのトナー固着等が発生して画像不良となる場合もある。ただし、あまり低硬度になると、感光体や成層ブレードとの摩擦が大きくなり、ジッター等の画像不良が発生する虞があり、通常JIS-A硬度で25〜55程度とすることが特に好ましい。
【0024】
上記導電性弾性層3は、通常感光体等の画像形成体や成層ブレード等と当接して使用されることから、圧縮永久歪みが小さいことが好ましく、具体的には、20%以下、特に10%以下が好ましい、この場合ポリウレタンゴムは、圧縮永久歪みを比較的小さく設計できることから、特に好ましく用いられる。
【0025】
また、上記導電性弾性層3の表面粗さは、JIS10点平均祖さで、15μmRz以下とすることが好ましい。15μmRzを超えると、トナー担持体の表面に形成される樹脂層4を厚く形成する必要があり、その結果、トナー担持体表面が硬くなり、トナーにダメッジを与えて感光体や成層ブレードへのトナー固着等が発生して画像不良となる場合がある。ただし、Rzが小さ過ぎると、樹脂層4を形成した時にトナー担持体の表面のRzが小さくなり過ぎ、トナー担持量が少なくなって画像濃度が低下する場合があるため、通常3〜10μmRz程度とすることが特に好ましい。
【0026】
本発明のトナー担持体は、トナーに対する帯電性や付着性の制御のため、感光体および成層ブレード等との摩擦力低減のために、あるいは、弾性体による感光体の汚染防止等のため、部材表面に樹脂層4が設けられる。この樹脂層4を形成する樹脂は、主に架橋性の樹脂からなり、架橋が施され、溶剤に対する不溶部が70%以上とされていることが好ましい。この場合溶剤不溶部が70%を下回ると、長期放置により、感光体や成層ブレード等トナー担持体と接触している他の部材の圧接痕が生じ、画像に黒横線等の不具合を生じる場合があり、特に好ましくは、溶剤不溶部が80%以上である。
【0027】
この樹脂層4を形成する架橋性の樹脂とは、熱、触媒、空気(酸素)、湿気(水)、電子線等により自已架橋する樹脂、架橋剤や他の架橋性樹脂との反応により架橋する樹脂のいずれのものであってもよい。架橋性樹脂の例としては、水酸基,カルボキシル基,酸無水物基,アミノ基,イミノ基,イソシアネート基,メチロール基,アルコキシメチル基,アルデヒド基,メルカプト基,エポキシ基,不飽和基等の反応基を持つポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等およびそれらのブレンド物が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、およびそれらのブレンド物が、更にこれらの中でも、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、およびそれらのブレンド物が、トナーの帯電能、トナーに対する非汚染性、相手部材との摩擦力低減、感光体に対する非汚染性等の点から特に好ましいく用いられる。なお、これら樹脂を架橋させる上記触媒としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物等のラジカル触媒、酸触媒、塩基性触媒、アルカリ性触媒等が挙げられる。
【0029】
また、上記樹脂を架橋させる上記架橋剤としては、水酸基,カルボキシル基,酸無水物基,アミノ基,イミノ基,イソシアネート基,メチロール基,アルコキシメチル基,アルデヒド基,メルカプト基,エポキシ基,不飽和基等の反応基を1分子中に2個以上持つ分子量1000以下、好ましくは分子量500以下の化合物が好ましく用いられ、具体的には、ポリオール化合物、ポリイソシアナート化合物、ポリアルデヒド化合物、ポリアミン化合物、ポリエポキシ化合物等が挙げられる。
【0030】
上記樹脂層4は、上記架橋剤等により架橋された架橋性樹脂を主成分とするものであるが、その他に、更なるトナーへの帯電能の向上、他の部材との摩擦力低減や導電性付与等の目的で、荷電制御剤、滑材、導電剤、その他の樹脂等の種々の添加剤を加えることができる。ここで、特に制限されるものではないが、この樹脂層4の抵抗を、上記導電性弾性層3の抵抗より高くすることが、トナー担持体の抵抗を調整する上で好ましく、好ましい抵抗値の範囲は、109〜1016Ω・cmである。更に好ましくは、1010〜1013Ω・cmである。
【0031】
上記樹脂層4の形成法は、特に限定されないが、通常は架橋性樹脂、架橋剤およびその他の添加剤等を溶媒に溶解あるいは分散させてディップ法、ロールコーター法、ドクターブレード法、あるいはスプレー法等により上記導電性弾性層3上に塗布し、常温あるいは50〜170℃程度の高温下で乾燥し架橋硬化させて形成する方法が採られる。
【0032】
上記溶媒としては、メタノール,エタノール,イソプロパノール,ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、イソプロピルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ヂメチルスルフォアミド等のアミド系溶媒、クロロフォルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等、及びこれらの混合溶媒等が好ましく用いられる。
【0033】
この樹脂層4の厚みは、通常1〜50μm程度、特に2〜30μmとすることが好ましい。樹脂層4の厚さが薄すぎると、局所的な放電が起こり、画像に自横線が発生しやすくなり、逆に厚過ぎると、トナー担持体が硬くなり、トナーにダメッジを与えて感光体や成層ブレードへのトナー固着等が発生して画像不良となる場合がある。
【0034】
本発明のトナー担持体は、上記導電性弾性層3及び上記樹脂層4を有するものであるが、必要に応じて、上記導電性弾性層3と上記樹脂層4との間に適宜なゴム層や樹脂層を設けてもよい。また、本発明トナー担持体の抵抗は、用途にもよるが、通常106〜1012Ω・cm、特に107〜1010Ω・cm程度とされる。また、上記樹脂層を形成したトナー担持体の表面粗さは、JIS10点平均粗さで、10μmRz以下、特に1〜8μmRzとすることが好ましい。10μmRzを超えると、トナーの帯電量が小さくなったり逆帯電トナーが生じて、画像カブリを生じる場合があり、一方Rzが小さすぎるとトナー担持量が少なくなり、画像濃度が低下する場合がある。
【0035】
本発明のトナー担持体は、上記導電性弾性層3及び樹脂層4を有するローラ状のものであり、かつ温度15℃,湿度10%RHの低温低湿環境(LL環境)と温度32.5℃,湿度85%RHの高温高湿環境(HH環境)とでのローラ外径の変化をAとし、ローラのJIS B0621における円筒度をBとしたときに、AとBとの和が0.17mm以下のものである。
【0036】
ここで、上記LL環境/HH環境間の外径変化Aは、上記LL環境下に放置した際の平均外径と上記HH環境に放置した際の平均外径との差をmm又はμmで表したものである。この場合、LL環境/HH環境における放置時間は、それぞれの環境下においてローラの外径が安定するまでの時間であり、適宜設定されるものであるが、通常は300時間程度とすれば十分である。
【0037】
また、上記円筒度Bは、JIS B0621に示されているように、軸体(本発明トナー担持体)を2つの同軸の幾何学的円筒で挟んだ時、同軸の2円筒の間隔が最小となる場合の2円筒の半径の差をmm又はμmで表したものであり、具体的には、以下のようにして測定することができる。
【0038】
円筒度の測定
図3(A)に示したように、本発明のローラ(トナー担持体)を回転テーブルtに垂直に取り付け、シャフト2を軸にしてこれを所定速度で回転させ、画像形成部Lに軸方向に沿って等間隔に複数の測定点を設定し、回転するローラの各測定点に検出機sを当てて、図3(B)に示したように、検出機sの相対的な変動から略円形の計測線cを得る。そして、この計測線cを同軸の2つの幾何学的円筒p1,p2で挟み、その半径の差B(mm又はμm)を求めることにより得ることができる。なお、測定点の数は画像形成部Lの長さに応じて適宜選定されるが、通常は20〜40箇所程度とすることが好ましい。また、上記検出機s及び回転テーブルtとしては、これら双方を備えた東京精密社製の「ロンコム46A」などが好適に用いられる。なお、円筒度の測定環境は、温度22℃,湿度50%RH程度の通常環境(NN環境)で行われる。
【0039】
本発明のトナー担持体は、上記LL環境/HH環境間の外径変化Aと円筒度Bとの和が0.17mm以下であることにより、温度や湿度が変動する環境下で長期間使用しても、ムラの無い良好なハーフトーン画像が得られると共に白地画像におけるカブリの発生も効果的に防止し得、良好な画像が長期に亘って安定的に得られるものである。なお、A+B値のより好ましい範囲は0.14mm以下である。
【0040】
本発明のトナー担持体は、電子写真装置における現像装置などの画像形成装置に現像ローラ等のトナー担持体として用いられるものであり、例えば、図2に示したように、トナーを供給するためのトナー塗布用ローラ5と静電潜像を保持した感光ドラム(画像形成体)6との間に、本発明のトナー担持体を現像ローラ1として配設し、トナー塗布用ローラ5によりトナー7を本発明トナー担持体からなる現像ローラ1に供給してその表面に該トナー7を担持し、これを成層ブレード8により均一な薄層に整え、更にこの薄層からトナーを感光ドラム(画像形成体)6に供給し、該感光ドラム(画像形成体)6の静電潜像にトナーを付着させて潜像を可視化するものである。この図2に示した画像形成装置の詳細については従来技術において説明しているので、その説明は省略する。
【0041】
なお、本発明のトナー担自体を用いた画像形成装置は、上記図2に示したものに限定されず、表面にトナーを担持して該トナーの薄層を形成し、この状態で画像形成体に接触して、該画像形成体表面に該トナーを供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成するトナー担持体を具備してなる画像形成装置であればいずれのものでもよい。
【0042】
【実施例】
以下に実施例、比較例を示して、本発明を具体的に説明するが本発明は下記に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
分子量2500のポリイソプレンポリオール(OH価:47.1)100部(重量部、以下同じ)にアセチレンブラック2.85部を配合し、混合機を用いて混合してポリオール組成物を調製した。このポリオール組成物を減圧下に撹拌して脱泡した後、クルードMDI(NCO%:31.7)を13.33部加えて2分間撹拌し、ジブチルチンジラウレート0.001部を加え、3分間撹拌した。次に、これを金属シャフトを配置し予め90℃に加熱した金型に注型し、90℃で12時間硬化させて金属シャフトの外周に導電性弾性層を形成し、ローラを得た。
【0044】
得られたローラの表面を研磨して最適成層ブレード押圧が得られる外径をNN環境(温度22℃、湿皮50%RH)にて20.00mmに調節すると共に、表面をJIS10点平均粗さ7μmRzに調整した。なお、表面粗さは、表面粗さ計サーフコム590A(東京精密社製)を用いて測定した(以下の例においても同様)。
【0045】
次に、トルエン中にオイルフリーアルキッド樹脂及びメラミン樹脂をそれぞれ10重量%溶解し、更に樹脂成分100部に対して10部のカーボンブラックを添加し分散せしめた塗料液中に、上記ローラを浸漬して引き上げ、これを100℃にて5時間加熱し、架橋硬化した樹脂層を持つ図1に示した構造のローラを作成した。得られたローラの円筒度は0.02mmであった、なお円筒度は、ロンコム46A(東京精密社製)を用いローラの画像部に相当する範囲において等間隔(軸方向)に40箇所を測定した(以下の例においても同様)。
【0046】
[実施例2]
実施例1と同様にローラを作成したが、研磨条件を調整して円筒度0.04mmのローラとした。
【0047】
[実施例3]
実施例1と同様にローラを作成したが、研磨条件を調整して円筒度0.06mmのローラとした。
【0048】
[比較例1]
実施例1と同様にローラを作成したが、研磨条件を調整して円筒度0.08mmのローラとした。
【0049】
[比較例2]
グリセリンにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを付加して、分子量5000としたポリエーテルポリオール(OH価:33)100部(重量部、以下同じ)に1,4-ブタンジオール1.0部、シリコーン界面活性剤1.5部、ニッケルアセチルアセトネート0.5部、ジブチルチンジラウレート0.01部及びアセチレンブラック2.0部を添加し、混合機を用いて混合してポリオール組成物を調製した。
【0050】
このポリオール組成物を減圧下に撹拌して脱泡した後、ウレタン変性MDIを17.5部加えて2分間撹拌し、次いでシャフトを配置し予め110℃に加熱した金型に注型し、110℃で2時間硬化させて金属シャフトの外周に導電性弾性層を形成してローラを得た、得られたローラの表面を研磨して表面をJIS10点平均粗さ7μmRzに調節した。このローラに実施例1と同様な方法で樹脂層を形成してローラを作成した。作成したローラの円筒度は0.02mmであった。
【0051】
上記実施例1〜3及び比較例1,2で得た各ローラについて、以下の特性試験を行った。結果を表1に示す。
【0052】
(1)LL環境とHH環境のローラ外径測定
LL環境(温度15℃・湿度10%RH)とHH環境(温度32.5℃、湿度85%RH)の各々の環境室にローラを保管し、環境室内で寸法測定機(LSM3000、ミツトヨ社製)を用いローラの画像部に相当する範囲において等間隔(軸方向)に10箇所の外径の経時変化を測定し、全ての箇所で外径変化が認められなくなるまで測定した、最後の測定値の平均値をその環境の外径とした。
【0053】
(2)LL環境白地画像評価
LL環境の外径測定後の各ローラを図2に示した現像ユニットに現像ローラ1として装着し、現像バイアス-400V、ブレードバイアス-600Vとし、平均粒径7μmの非磁性一成分トナーを用い、線速60mm/secの周速で回転させながら反転現像でLL環境室内にて画像出しを行い、白地画像におけるカブリの発生の有無を評価した。
【0054】
(3)HH環境耐久後ハーフトーン画像評価
HH環境の外径測定後の各ローラを図2に示した現像ユニットに現像ローラ1として装着し、現像バイアス-400V、ブレードバイアス-600Vとし、平均粒径7μmの非磁性一成分トナーを用い、線速60mm/secの周速で回転させながら反転現像でHH環境室内にて画像出しを行い、5%印字パターンにて1000枚連続印刷した。その後、ハーフトーン画像における濃淡ムラの有無を評価し、現像ユニット内の成層ブレード11を観察した。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示されているように、LL環境/HH環境間の外径変化Aと円筒度Bとの和が0.17mm以下である実施例1〜3のローラ(トナー担持体)によれば、温度や湿度が変動する環境下で長期間使用しても、ムラの無い良好なハーフトーン画像が得られると共に白地画像におけるカブリの発生も効果的に防止し得、良好な画像が長期に亘って安定的に得られることが確認された。
【0057】
【発明の効果】
本発明のトナー担持体によれば、長期使用においても画像にハーフトーンムラや白地カブリを生じることがなく、かつ環境の変動に対しても画質の低下を生じることなく、良好な画像を安定的に得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例にかかるトナー担持体を示す概略断面図である。
【図2】
本発明の一実施例にかかる画像形成装置を示す概略図である。
【図3】
円筒度の求め方を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 トナー担持体(現像ローラ)
2 シャフト
3 導電性弾性層
4 樹脂層
5 トナー塗布用ローラ
6 画像形成体(感光体)
7 トナー
8 成層ブレード
9 転写部
10 クリーニング部
11 クリーニングブレード
 
訂正の要旨 訂正要旨
特許第3075242号発明の特許明細書を下記のように訂正する。
a.特許請求の範囲の請求項1、5に「画像形成体に接触又は近接して」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として「画像形成体に接触して」と訂正する。
b.明細書の段落【0015】、【0016】、【0041】に「画像形成体に接触又は近接して」とあるのを、明りょうでない記載の釈明を目的として「画像形成体に接触して」と訂正する。
c.明細書の段落【0041】に「例えば、紙やOHP用紙等の紙葉類を画像形成体とし、これらにトナー担持体上に担持させたトナーを制御電極に形成した孔を通して直接飛翔せしめ、紙やOHP用紙に直接画像を形成するものであってもよい。」とあるのを、明りょうでない記載の釈明を目的として削除する。
d.明細書の段落【0015】に「表面にに」とあるのを、誤記の訂正を目的として「表面に」と訂正する。
異議決定日 2002-09-24 
出願番号 特願平9-344466
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G03G)
P 1 651・ 536- YA (G03G)
P 1 651・ 113- YA (G03G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 一宮 誠  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 植野 浩志
阿久津 弘
登録日 2000-06-09 
登録番号 特許第3075242号(P3075242)
権利者 株式会社ブリヂストン
発明の名称 トナー担持体及び画像形成装置  
代理人 小島 隆司  
代理人 西川 裕子  
代理人 西川 裕子  
代理人 小島 隆司  

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