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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60K
管理番号 1068843
異議申立番号 異議2001-72364  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-04-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-09-05 
確定日 2002-09-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3139792号「建設車両の直進走行回路」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3139792号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1、手続の経緯
特許第3139792号の請求項1に係る発明は、平成3年10月8日に特許出願され、平成12年12月15日に特許権の設定の登録がなされたが、その後、株式会社ナブコより特許異議の申立てがなされ、平成13年11月5日に取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年1月15日に訂正請求がなされた後、再度平成14年4月4日に取消しの理由が通知されたところ、その指定期間内に何らの応答もなされていない経緯をたどっているものである。

2、訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア、訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の第6行目〜第7行目(公報の第1頁左欄第9行目〜第11行目)の「上記左右走行用切換弁の下流側に作業用切換弁をタンデムに接続する一方」とある記載を、「上記右走行用切換弁の下流側および左走行用切換弁の下流側に、それぞれ作業用切換弁をタンデムに接続する一方」と訂正する。
同じく、段落【0007】の第8行目〜第9行目(公報の第2頁右欄第12行目〜13行目)の、「上記左右走行用切換弁の下流側に作業用切換弁をタンデムに接続する一方」とある記載を、「上記右走行用切換弁の下流側および左走行用切換弁の下流側に、それぞれ作業用切換弁をタンデムに接続する一方」と訂正する。
イ、訂正事項b
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の第10行目〜第11行目(公報の第1頁左欄第15行目〜右欄第1行目)の「一方の回路系統の作業用切換弁に接続してなり」とある記載を、「一方の回路系統における右走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁と左走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁とにそれぞれ接続してなり」と訂正する。
同じく、段落【0007】の第12行目〜第13行目(公報の第2頁右欄第18行目〜第19行目)の、「一方の回路系統の作業用切換弁に接続してなり」とある記載を、「一方の回路系統における右走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁と左走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁とにそれぞれ接続してなり」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、発明を特定する事項である 「上記左右走行用切換弁の下流側に作業用切換弁をタンデムに接続する一方」を、これに含まれる事項である「上記右走行用切換弁の下流側および左走行用切換弁の下流側に、それぞれ作業用切換弁をタンデムに接続する一方」に変更し、しかも、「上記右走行用切換弁の下流側および左走行用切換弁の下流側に、それぞれ作業用切換弁をタンデムに接続する一方」については、願書に添付された明細書の段落【0012】に記載されているから、これらは特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正または特許請求の範囲と詳細な説明との整合を図ることに伴う明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、何れも、新規事項の追加には該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
また、上記訂正事項bは、発明を特定する事項である 「一方の回路系統の作業用切換弁に接続してなり」を、これに含まれる事項である「一方の回路系統における右走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁と左走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁とにそれぞれ接続してなり」に変更し、しかも、「一方の回路系統における右走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁と左走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁とにそれぞれ接続してなり」については、願書に添付された明細書の段落【0015】に記載されているから、これらは特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に、または、特許請求の範囲と詳細な説明との整合を図ることに伴う明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、何れも、新規事項の追加には該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3、特許異議申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
特許異議申立人株式会社ナブコは、特許第3139792号の請求項1に係る特許発明は、下記の甲第1〜3号証に記載されるものから当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであると共に、上記特許発明は甲第4号証に記載される発明と同一でもあるから、特許法第29条の2の規定にも違反して特許されたものであって、特許法第113条第2項の異議理由に該当するため、その特許は特許法第114条第2項の規定により、取り消されるべきであると主張している。
甲第1号証:特開昭57-184136号公報
甲第2号証:特開昭63-7424号公報
甲第3号証:特開昭61-31536号公報
甲第4号証:特願平2-238092号(特許第2635206号公報参 照)
(2)請求項1に係る特許発明
上記2で示したように、上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は上記訂正に係る平成14年1月15日付全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「右走行用切換弁、左走行用切換弁、及び作業用切換弁を有する一方の回路系統と、作業用切換弁のみを備えた他方の回路系統とからなる建設車両の直進走行回路において、上記一方の回路系統には、右走行用切換弁に接続した第1ポンプと、左走行用切換弁に接続した第2ポンプとを設け、これら第1,2ポンプは、吐出容量を同じにし、しかも、お互いの回転数も等しくなるように駆動可能に連係するとともに、上記右走行用切換弁の下流側および左走行用切換弁の下流側に、それぞれ作業用切換弁をタンデムに接続する一方、上記他方の回路系統には、作業用切換弁に接続する第3ポンプと、この他方の回路系統の最下流に接続した合流切換弁と、この合流切換弁のパイロット室にパイロット圧を導く信号発生用ポンプとを設け、上記合流切換弁の下流側を、パラレル通路を介して一方の回路系統における右走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁と左走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁とにそれぞれ接続してなり、上記一方の回路系統の右走行用切換弁、左走行用切換弁、及び作業用切換弁のいずれかが中立位置にある場合、上記パイロット室に導くパイロット圧がタンク圧となって合流切換弁がノーマル位置を保ち、他方の回路系統の中立流路をタンク通路に連通させる一方、上記一方の回路系統の右走行用切換弁、左走行用切換弁、及び作業用切換弁の全てを切り換えた場合、上記パイロット室に導くパイロット圧が上昇して合流切換弁が切り換わり、他方の回路系統の中立流路を、上記パラレル通路を介して一方の回路系統の走行用切換弁以外の作業用切換弁に連通させる構成にした建設車両の直進走行回路。」
(3)対比・判断
一方、当審が発した平成14年4月4日付取消理由の概要は、請求項1に係る発明は刊行物1〜3に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違背してなされたものであって、その特許を取り消すべきものと認められる、というものである。
刊行物1、特開昭63-7424号公報(異議申立人株式会社ナブコが提 示した甲第2号証刊行物)
刊行物2、特開昭61-31536号公報(同じく甲第3号証刊行物)
刊行物3、特開昭57-184136号公報(同じく甲第1号証刊行物)
これに対して、特許権者カヤバ工業株式会社からはその指定期間内に何らの応答もなされていない。
そして、その取消理由は妥当なものと認められる。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ないものである。
したがって、本件特許発明についてなした特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
建設車両の直進走行回路
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 右走行用切換弁、左走行用切換弁、及び作業用切換弁を有する一方の回路系統と、作業用切換弁のみを備えた他方の回路系統とからなる建設車両の直進走行回路において、上記一方の回路系統には、右走行用切換弁に接続した第1ポンプと、左走行用切換弁に接続した第2ポンプとを設け、これら第1,2ポンプは、吐出容量を同じにし、しかも、お互いの回転数も等しくなるように駆動可能に連係するとともに、上記右走行用切換弁の下流側および左走行用切換弁の下流側に、それぞれ作業用切換弁をタンデムに接続する一方、上記他方の回路系統には、作業用切換弁に接続する第3ポンプと、この他方の回路系統の最下流に接続した合流切換弁と、この合流切換弁のパイロット室にパイロット圧を導く信号発生用ポンプとを設け、上記合流切換弁の下流側を、パラレル通路を介して一方の回路系統における右走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁と左走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁とにそれぞれ接続してなり、上記一方の回路系統の右走行用切換弁、左走行用切換弁、及び作業用切換弁のいずれかが中立位置にある場合、上記パイロット室に導くパイロット圧がタンク圧となって合流切換弁がノーマル位置を保ち、他方の回路系統の中立流路をタンク通路に連通させる一方、上記一方の回路系統の右走行用切換弁、左走行用切換弁、及び作業用切換弁の全てを切り換えた場合、上記パイロット室に導くパイロット圧が上昇して合流切換弁が切り換わり、他方の回路系統の中立流路を、上記パラレル通路を介して一方の回路系統の走行用切換弁以外の作業用切換弁に連通させる構成にした建設車両の直進走行回路。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、例えばショベルを上下させながら走行する際に、車両の直進走行を保証する直進走行回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2に示した従来の直進走行回路は、第1〜3ポンプP1〜P3を備えている。第1、2ポンプP1、P2は、お互いの回転数が等しくなるように連係するとともに、その吐出容量も同じにしている。第1ポンプP1には、右走行用切換弁1と、アームシリンダを制御するアーム用切換弁2とを接続し、第2ポンプP2には、左走行用切換弁3と、ブームシリンダを制御するブーム用切換弁4と、バケットシリンダを制御するバケット用切換弁5とを接続している。そして、これら切換弁1〜5で一方の回路系統aを構成する。
【0003】
上記一方の回路系統aの切換弁1〜5はそれが図示の中立位置にあるとき、中立流路6、7を開放するが、この中立流路6、7はアーム用切換弁2とバケット用切換弁5を挟んで互いに合流する。そして、この合流点からタンク通路8を介してタンクTに連通する構成にしている。上記右走行用切換弁1とアーム用切換弁2とはパラレル通路9を介してパラレルに接続されるとともに、左走行用切換弁3、ブーム用切換弁4及びバケット用切換弁5のそれぞれもパラレル通路10を介してパラレルに接続している。
【0004】
第3ポンプP3には、旋回モータを制御する旋回用切換弁11と、ドーザを制御するドーザ用切換弁12と、予備の切換弁13とを接続している。そして、これら切換弁11〜13で他方の回路系統bを構成する。これら切換弁11〜13はそれが図示の位置にあるとき、中立流路14を開放し、第3ポンプP3をタンク通路8を介してタンクTに連通させる。そして、上記旋回用切換弁11、ドーザ用切換弁12及び予備切換弁13のそれぞれは、パラレル通路15を介して連通する。
【0005】
いま、すべての弁が図示の中立位置にあると、各ポンプP1〜P3からの吐出流体がタンクTに戻される。そして、一方の回路系統aの両走行用切換弁1、3を同方向に切換えると、第1、2ポンプP1、P2の吐出流体が両走行用モータに供給されるので、車両は直進走行する。この状態で、例えば、切換弁2を切換えると、第1ポンプP1の吐出流体の一部が、アームシリンダに供給されるが、その分、右走行用モータに供給される流量が、左走行用モータに供給される流量よりも少なくなる。そのために、車両の直進走行が損なわれることになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにした従来の回路では、車両の走行中に、他のアクチュエータを駆動させると、その直進走行が損なわれるという問題があった。この発明の目的は、車両の走行中に、他のアクチュエータを駆動しても、その直進走行が損なわれない回路を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、右走行用切換弁、左走行用切換弁、及び作業用切換弁を有する一方の回路系統と、作業用切換弁のみを備えた他方の回路系統とからなる建設車両の直進走行回路を前提にするものである。上記の回路を前提にしつつ、この発明は、上記一方の回路系統には、右走行用切換弁に接続した第1ポンプと、左走行用切換弁に接続した第2ポンプとを設け、これら第1,2ポンプは、吐出容量を同じにし、しかも、お互いの回転数も等しくなるように駆動可能に連係するとともに、上記右走行用切換弁の下流側および左走行用切換弁の下流側に、それぞれ作業用切換弁をタンデムに接続する一方、上記他方の回路系統には、作業用切換弁に接続する第3ポンプと、この他方の回路系統の最下流に接続した合流切換弁と、この合流切換弁のパイロット室にパイロット圧を導く信号発生用ポンプとを設け、上記合流切換弁の下流側を、パラレル通路を介して一方の回路系統における右走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁と左走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁とにそれぞれ接続してなり、上記一方の回路系統の右走行用切換弁、左走行用切換弁、及び作業用切換弁のいずれかが中立位置にある場合、上記パイロット室に導くパイロット圧がタンク圧となって合流切換弁がノーマル位置を保ち、他方の回路系統の中立流路をタンク通路に連通させる一方、上記一方の回路系統の右走行用切換弁、左走行用切換弁、及び作業用切換弁の全てを切り換えた場合、上記パイロット室に導くパイロット圧が上昇して合流切換弁が切り換わり、他方の回路系統の中立流路を、上記パラレル通路を介して一方の回路系統の走行用切換弁以外の作業用切換弁に連通させる構成にした点に特徴を有する。
【0008】
【作用】
この発明は、上記のように構成したので、両走行用切換弁を中立位置以外の位置に切換えると、第1、2ポンプの吐出流体が、この走行用切換弁に別々に供給される。しかも、この状態では、走行用切換弁とその下流側に位置する作業用切換弁との連通が遮断されるので、両走行用切換弁には第1、2ポンプの吐出流体が、同量供給されることになる。したがって、この状態において建設車両は直進走行を保証される。また、上記の状態で、走行用切換弁の下流側の作業用切換弁を切換えると、内部に形成した第1、2パラレル通路を介して、第3ポンプの吐出流体が供給される。
【0009】
【発明の効果】
この発明によれば、走行中に他のアクチュエータを駆動しても、車両の直進走行が保証される。
【0010】
【実施例】
図1に示した実施例において、一方の回路系統aと他方の回路系統bとを設けるとともに、一方の回路系統aには第1、2ポンプP1、P2を接続し、他方の回路系統bには第3ポンプP3を接続している。第1、2ポンプP1、P2は、お互いの回転数が等しくなるように連係するとともに、その吐出容量も同じにしている。
【0011】
そして、第1ポンプP1には、右走行用切換弁51と、アームシリンダを制御するアーム用切換弁52とを接続し、第2ポンプP2には、左走行用切換弁53と、ブームシリンダを制御するブーム用切換弁54と、バケットシリンダを制御するバケット用切換弁55とを接続している。上記一方の回路系統の切換弁51〜55はそれが図示の中立位置にあるとき、中立流路56、57を開放するが、この中立流路56、57はアーム用切換弁52とバケット用切換弁55を挟んで互いに合流する。そして、この合流点からタンク通路58を介してタンクTに連通する構成にしている。
【0012】
上記右走行用切換弁51とアーム用切換弁52とは中立流路56を介してタンデムに接続している。また、左走行用切換弁53とブーム用切換弁54とも中立流路57を介してタンデムに接続している。そして、ブーム用切換弁54とバケット用切換弁55とは第1パラレル通路59を介してパラレルに接続されている。したがって、両走行モータを駆動させるために切換弁51、53を切換えると、これら切換弁51、53よりも下流側に位置するアーム用切換弁52、ブーム用切換弁54、バケット用切換弁55には、第1、2ポンプP1、P2の吐出流体が供給されなくなる。そして、右走行用切換弁51を中立位置に保っていれば、第1ポンプP1の吐出流体は、中立流路56を介してアーム用切換弁52に流れる。また、左走行用切換弁53を中立位置に保っているときは、第2ポンプP2の吐出流体が中立流路57を介して第1パラレル通路59に流れる。
【0013】
第3ポンプP3には、旋回モータを制御する旋回用切換弁65と、ドーザを制御するドーザ用切換弁66と、予備の切換弁67と、合流切換弁68とを接続している。これら切換弁65〜68はそれが図示の位置にあるとき、中立流路69を開放し、第3ポンプP3をタンク通路58を介してタンクTに連通させる。そして、上記旋回用切換弁65とドーザ用切換弁66とはパラレル通路70を介して連通するとともに、ドーザ用切換弁66と予備切換弁67とは中立流路69を介してのみタンデムに接続されている。
【0014】
また、合流切換弁68も、予備切換弁67と中立流路69を介してタンデムに接続されている。この合流切換弁68はパイロット室71を設け、このパイロット室71とは反対側にスプリング72のバネ力を作用させている。上記パイロット室71はパイロットライン73を介して信号発生用ポンプP4に接続しているが、このパイロットライン73には絞り74を設けている。このようにした合流切換弁68は、スプリング72の作用で、通常は、図示のノーマル位置を保つが、パイロット室71の圧力上昇にともなって切換わる。そして、図示のノーマル位置においては、他方の回路系統bの中立流路69をタンク通路58に連通させ、その切換え位置においては中立流路69を、第2パラレル通路75に連通するようにしている。
【0015】
上記第2パラレル通路75は、第1パラレル通路59に連通しているが、この第1パラレル通路59は、前記のようにブーム用切換弁54とバケット用切換弁55とをパラレルに接続する外に、アーム用切換弁52の流入側にも接続している。ただし、この第1パラレル通路59には、チェック弁76、77を互いに向きを反対にして設けるとともに、上記第2パラレル通路75をこれらチェック弁76、77の間に接続している。そして、一方のチェック弁76は、第2パラレル通路75からアーム用切換弁52への流通のみを許容し、他方のチェック弁77は、第2パラレル通路75からブーム用切換弁54及びバケット用切換弁55への流通のみを許容する構成にしている。
【0016】
上記パイロットライン73の最下流の第1分岐通路78は、右走行用切換弁51に接続している。そして、この右走行用切換弁51が図示の中立位置にあるとき、第1分岐通路78は、この右走行用切換弁51を介してタンクTに連通する。ただし、右走行用切換弁51を中立位置以外の位置に切換えたとき、タンクTへの連通が遮断される。また、パイロットライン73の最上流の第2分岐通路79は、左走行用切換弁53に接続している。そして、この左走行用切換弁53が図示の中立位置にあるとき、第2分岐通路79は、この左走行用切換弁53を介してタンクTに連通する。ただし、左走行用切換弁53を中立位置以外の位置に切換えたとき、タンクTへの連通が遮断される。
【0017】
上記第1、2分岐通路78、79の間に設けた第3分岐通路80は、ブーム用切換弁54に接続している。このブーム用切換弁54に接続した分岐通路80は、切換弁55、52にもタンデムに接続している。したがって、切換弁55、52が図示の中立位置にあると、第3分岐通路80がタンクTに連通するが、切換弁52、54、55のいずれかが中立位置以外の位置に切換わると、第3分岐通路80とタンクTとの連通が遮断される。なお、上記アーム用切換弁52、ブーム用切換弁54、およびバケット用切換弁55が、この発明における一方の回路系統の作業用切換弁に相当し、旋回用切換弁65、ドーザ用切換弁66、および予備の切換弁67が、この発明における他方の回路系統の作業用切換弁に相当する。
【0018】
次に、この実施例の作用を説明する。いま、すべての弁が図示の中立位置にあると、各ポンプP1〜P4からの吐出流体がタンクTに戻される。すなわち、第1ポンプP1の吐出流体は、中立流路56及びタンク通路58を介してタンクTに戻される。第2ポンプP2の吐出流体は、中立流路57及びタンク通路58を介してタンクTに戻される。第3ポンプP3の吐出流体は中立流路69から合流切換弁68を通過し、タンク通路58を介してタンクTに戻される。さらに、信号発生ポンプP4は、パイロットライン73から第1〜3分岐通路78〜80から、各切換弁51〜55及びタンク通路58を介してタンクTに戻される。
【0019】
上記の状態から左右の走行用切換弁51、53を切換えると、第1、2ポンプP1、P2の吐出流体が走行用モータにのみ流れ、これら切換弁51、53の下流側にタンデムに接続した切換弁52、54、55には流体が流れない。そして、この時には走行用切換弁51、53に接続した第1、2分岐通路78、79も閉じられる。上記の状態から切換弁52、54、55のいずれかを切換えると、それにともなって第3分岐通路80も閉じられる。したがって、上記のように第1、2分岐通路78、79が閉じられていることと相まって、パイロットライン73とタンク通路58との連通が遮断される。
【0020】
パイロットライン73とタンク通路58との連通が遮断されれば、合流切換弁68のパイロット室71の圧力が上昇し、合流切換弁68が図面左側位置に切換わる。これによって、第3ポンプP3の吐出流体が、第2パラレル通路75及び第1パラレル通路59を通過し、切換弁52、54、55内のいずれか切換えた切換弁を介してアクチュエータに供給される。つまり、他方の回路系統bに供給された第3ポンプP3の吐出流体が、一方の回路系統aに供給されることになる。したがって、両走行用モータを駆動しているときは、第1、2ポンプP1、P2の吐出流体が、すべて走行用切換弁51、53に供給されるので、当該車両の直進走行が可能となる。言い換えれば、第1、2ポンプP1、P2のいずれかのポンプの吐出流体の一部が、負荷の小さい他のアクチュエータに流れてしまって、両方の走行用モータの回転数が異なるようなことがなくなる。また、この実施例では、1つのポンプの吐出流量を分流させて左右の走行用モータに供給するのではなく、第1ポンプが右走行用モータ専用となり、第2ポンプが左走行用モータ専用となるので、路面状況などによって、いずれか一方の走行用モータに作用する負荷が大きくなったとしても、負荷の軽い走行用モータ側への供給流量が多くなったりしない。そのため、負荷の軽い走行用モータ側に多く流量が供給されることによって、直進走行ができなくなるという不都合も生じない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明の回路図である。
【図2】
従来の回路図である。
【符号】
a 一方の回路系統
b 他方の回路系統
P1 第1ポンプ
P2 第2ポンプ
P3 第3ポンプ
P4 信号発生用ポンプ
51 右走行用切換弁
52 アーム用切換弁
53 左走行用切換弁
54 ブーム走行用切換弁
55 バケット用切換弁
56 中立流路
58 タンク通路
59 第1パラレル通路
68 合流切換弁
69 中立流路
71 パイロット室
75 第2パラレル通路
 
訂正の要旨 ア、訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の第6行目〜第7行目(公報の第1頁左欄第9行目〜第11行目)の「上記左右走行用切換弁の下流側に作業用切換弁をタンデムに接続する一方」とある記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「上記右走行用切換弁の下流側および左走行用切換弁の下流側に、それぞれ作業用切換弁をタンデムに接続する一方」と訂正する。
特許明細書の段落【0007】の第8行目〜第9行目(公報の第2頁右欄第12行目〜13行目)の、「上記左右走行用切換弁の下流側に作業用切換弁をタンデムに接続する一方」とある記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「上記右走行用切換弁の下流側および左走行用切換弁の下流側に、それぞれ作業用切換弁をタンデムに接続する一方」と訂正する。
イ、訂正事項b
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の第10行目〜第11行目(公報の第1頁左欄第15行目〜右欄第1行目)の「一方の回路系統の作業用切換弁に接続してなり」とある記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「一方の回路系統における右走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁と左走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁とにそれぞれ接続してなり」と訂正する。
特許明細書の段落【0007】の第12行目〜第13行目(公報の第2頁右欄第18行目〜第19行目)の、「一方の回路系統の作業用切換弁に接続してなり」とある記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「一方の回路系統における右走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁と左走行用切換弁の下流側に設けた作業用切換弁とにそれぞれ接続してなり」と訂正する。
異議決定日 2002-07-31 
出願番号 特願平3-289161
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B60K)
最終処分 取消  
特許庁審判長 船越 巧子
特許庁審判官 秋月 均
町田 隆志
登録日 2000-12-15 
登録番号 特許第3139792号(P3139792)
権利者 カヤバ工業株式会社
発明の名称 建設車両の直進走行回路  
代理人 嶋 宣之  
代理人 嶋 宣之  
代理人 須原 誠  
代理人 梶 良之  

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