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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E06B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E06B
審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正  E06B
管理番号 1068947
異議申立番号 異議2000-74065  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-08-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-11-08 
確定日 2002-09-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3039415号「衛生設備室の出入口構造」の請求項1ないし16に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3039415号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3039415号の請求項1ないし16に係る発明(平成9年1月23日出願、平成12年3月3日設定登録。)は、その特許について、特許異議申立人 ワイ ケイ ケイ アーキテクチュラル プロダクツ株式会社(以下、「申立人1」という。)、特許異議申立人 池野耕司(以下、「申立人2」という。)、特許異議申立人 斉藤敬三(以下、「申立人3」という。)より、特許異議の申し立てがなされ、平成13年10月10日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年12月17日付けで訂正請求がなされた後、平成14年2月22日付けで再度取消理由が通知され、その指定期間内である平成14年5月7日付けで、平成13年12月17日付けの訂正請求が取り下げられるとともに、新たな訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(2-1)訂正の内容
訂正事項1:登録時の明細書(以下、「特許明細書」という。)の【特許請求の範囲】の欄の請求項7〜12、15、16を削除し、請求項1〜3、5、13、14を、それぞれ次の請求項1〜3、5、7、8のように訂正する。
「【請求項1】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記戸枠が扉式ドア取り付け用のドア枠であるとともに、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、上記戸枠の下枠部の、上記防水床パンの外周端側方に設け、かつ、上記排水溝に上記衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続したことを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項2】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、上記戸枠の下枠部の、上記防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、上記排水溝に上記衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続し、かつ、上記戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、上記隣室側に流れ出そうとする排水を上記排水溝に流し込む、この排水溝への排水流入部を、上記出入り戸が閉じられた場合の上記衛生設備室の最も内方側にある上記止水材の位置より、上記衛生設備室の内方側には設けずに、上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ設けていることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項3】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、上記戸枠の下枠部の、上記防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、上記戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、上記隣室側に流れ出そうとする排水を上記排水溝に流し込む、この排水溝への排水流入部を、上記出入り戸が閉じられた場合の上記衛生設備室の最も内方側にある上記止水材の位置より、上記衛生設備室の内方側には設けずに、上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ設け、かつ、上記排水溝を形成する上記下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けていることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項5】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンの外方の、上記戸枠の上記下枠部に設け、かつ、上記排水溝を形成する上記下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けているとともに、上記下枠部本体に、上記排水樋を落とし込んで設置するための開口を形成していることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項7】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、上記防水床パンの上記床面端部側方の、上記戸枠の下枠部に設けるとともに、上記排水流入部を、上記戸枠に設けられた出入り戸の閉じ位置の下方から上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ位置させ、かつ、上記排水流入部からの排水を上記衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設けたことを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項8】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、上記防水床パンの上記床面端部側方の、上記戸枠の下枠部に設けるとともに、上記排水流入部からの排水を上記衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設け、かつ、上記戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、上記出入り戸が閉じられた場合の上記衛生設備室の最も内方側にある上記止水材の位置より、上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ、上記排水流入部を位置させていることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。」
訂正事項2:
(1)特許明細書の【発明の名称】の欄を、次のとおりに訂正する。
「衛生設備室の出入口構造」
(2)特許明細書の【発明の詳細な説明】の欄の段落【0028】〜【0033】を削除し、段落【0034】〜【0039】を、それぞれ段落【0028】〜【0033】とし、段落【0040】、段落【0041】を削除し、段落【0042】〜【0093】を、それぞれ段落【0034】〜【0085】と訂正する。
(3)特許明細書の【発明の詳細な説明】の欄の段落【0001】、段落【0010】〜段落【0014】、段落【0018】、段落【0020】、段落【0024】、段落【0025】、段落【0028】、段落【0029】、段落【0032】、段落【0033】、段落【0074】〜段落【0085】をそれぞれ次のとおりに訂正する。
「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、浴室やシャワー室のような衛生設備室の出入口構造に関するものである。」、
「【0010】この発明は、以上の点に鑑み、出入口部周りの床面段差を小さくするために、この出入口部周りに排水流出防止用の排水溝を設けた場合でも、使用者に内部を狭く感じさせることのない衛生設備室の出入口構造を提供することを目的とする。
【0011】また、この発明は、上記目的とともに、使用者に清掃時の負担を増大させることのない衛生設備室の出入口構造を提供することを目的とする。
【0012】さらに、この発明は、出入口部周りの床面段差を小さくした場合でも、使用者に内部を狭く感じさせることがないとともに、使用者に清掃時の負担を増大させることのない衛生設備室の出入口構造を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、戸枠が扉式ドア取り付け用のドア枠であるとともに、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、戸枠の下枠部の、防水床パンの外周端側方に設け、かつ、排水溝に衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続したこことである。
【0014】この発明では、衛生設備室と隣室の床面間に段差を設けないか又は小段差しか設けていない場合でも、隣室側に向かう衛生設備室の床面上の排水は、戸枠の排水溝中に流し込まれ、隣室側に流れ出すことはない。したがって、排水流出防止用の排水溝を、衛生設備室内に設ける必要はない。また、この発明では、戸枠の設置とともに排水溝が形成できるので、排水流出防止用の排水溝の形成の容易化を図ることができる。さらに、この発明では、排水溝を防水床パンの外方(外周端側方)に設けているため、防水床パンの形状に左右されることなく、自由な大きさの排水溝を形成できるとともに、この排水溝中の排水が防水床パン側に排出されない構造となり、例えば、防水床パン側の排水口の目皿に詰まりが生じた場合でも、防水床パン上の排水をこの排水溝から衛生設備室外に速やかに排出できる。」、
「【0018】この発明の請求項2記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、戸枠の下枠部の、防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、排水溝に衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続し、かつ、戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、隣室側に流れ出そうとする排水を排水溝へ流し込む、この排水溝への排水流入部を、出入り戸が閉じられた場合の衛生設備室の最も内方側にある止水材の位置より、衛生設備室の内方側には設けずに、戸枠の下枠の隣室側にのみ設けていることである。」、
「【0020】この発明の請求項3記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、戸枠の下枠部の、防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、隣室側に流れ出そうとする排水を排水溝へ流し込む、この排水溝への排水流入部を、出入り戸が閉じられた場合の衛生設備室の最も内方側にある止水材の位置より、衛生設備室の内方側には設けずに、戸枠の下枠部の隣室側にのみ設け、かつ、排水溝を形成する下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けていることである。」、
「【0024】この発明の請求項5記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンの外方の、戸枠の下枠部に設け、かつ、排水溝を形成する下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けているとともに、下枠部本体に、排水樋を落とし込んで設置するための開口を形成していることである。」、
「【0025】この発明では、建物側に戸枠を組み込む場合に、下方に突出する排水樋を後から下枠部本体の開口に落とし込めばよく、戸枠の組み込みの容易化を図ることができる。特に、衛生設備室の排水部につながる連絡排水管とこの排水樋とを接続する場合に、例えば、この排水管の一部にフレキシブル管を使用することにより、これらの接続を床下でなく床上で行なうことができる。」、
「【0028】この発明の請求項7記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、防水床パンの床面端部側方の、戸枠の下枠部に設けるとともに、排水流入部を、戸枠に設けられた出入り戸の閉じ位置の下方から戸枠の下枠部の隣室側にのみ位置させ、かつ、排水流入部からの排水を衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設けたことである。」
「【0029】この発明では、衛生設備室と隣室の床面間に段差を設けないか又は小段差しか設けていない場合でも、隣室側に向かう衛生設備室の床面上の排水は、戸枠の排水流入部中に流し込まれ、隣室側に流れ出すことはない。したがって、排水流出防止用の排水溝を、衛生設備室内に設ける必要はない。また、この発明では、排水流入部を防水床パンの外方(床面端部側方)に設けているため、この排水流入部に入った排水が防水床パン側に排出されない構造となり、例えば、防水床パン側の排水口の目皿に詰まりが生じた場合でも、防水床パン上の排水をこの排水流入部から衛生設備室外に速やかに排出できる。」、
「【0032】この発明の請求項8記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、防水床パンの床面端部側方の、戸枠の下枠部に設けるとともに、排水流入部からの排水を衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設け、かつ、戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、出入り戸が閉じられた場合の衛生設備室の最も内方側にある止水材の位置より、戸枠の下枠部の隣室側にのみ、排水流入部を位置させていることである。
【0033】この発明では、請求項7記載の発明と同様な作用効果を得ることができる。また、この発明では、戸枠とこの戸枠に設けられる出入り戸との間の隙間が止水材によって塞がれるため、衛生設備室の床面上の排水が、戸枠の排水流入部に流入することはほとんどない。このため、戸枠の排水流入部内方が排水で汚れることはほとんどない。」、
「【0074】この発明の請求項1記載の発明によれば、出入口部周りの床面段差を小さくするために、この出入口部周りに排水流出防止用の排水溝を設けた場合でも、清掃時の負担を増大させることがないとともに、使用者に衛生設備室内を狭く感じさせてしまうこともない。
【0075】また、この発明によれば、防水床パンの形状に左右されることなく、自由な大きさの排水溝を形成できるとともに、排水溝中の排水が防水床パン側に排出されない構造となり、例えば、防水床パン側の排水口の目皿に詰まりが生じた場合でも、防水床パン上の排水をこの排水溝から衛生設備室外に速やかに排出できる。
【0076】さらに、この発明によれば、防水床パンが樹脂成形等によって一体的に形成される場合に、その成形型の種類を減らすことができ、この衛生設備室の低コスト化を図ることができる。また、これらの発明によれば、防水床パンを使用した既存の衛生設備室に対する出入口部周りの床面の段差をなくす改造も、容易にできるようになる。
【0077】この発明の請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様な効果を得ることができるとともに、排水溝にほとんど排水が流れ込まなくなり、この排水溝の清掃が不要になる分、使用者に清掃時の負担を増大させることもない。また、この発明では、戸枠の排水溝のサイズを小さくできる分、戸枠のサイズを従来の戸枠に近づけることができる。
【0078】この発明の請求項3記載の発明によれば、連絡排水管を設けることによる効果を除けば、請求項1記載の発明と同様な効果を得ることができるとともに、戸枠の取り付けの容易化をも図ることができる。
【0079】この発明の請求項4記載の発明によれば、排水溝中の排水の処理の容易化を図ることができる。
【0080】この発明の請求項5記載の発明によれば、戸枠の取り付けの容易化を図ることができる。
【0081】この発明の請求項6記載の発明によれば、排水溝等の清掃の容易化や排水溝上の歩行の容易化を図ることができる。
【0082】この発明の請求項7記載の発明によれば、出入口部周りの床面段差を小さくした場合でも、衛生設備室内に排水溝を設ける必要がなく、使用者に衛生設備室内を狭く感じさせることがない。
【0083】また、この発明によれば、排水溝中の排水が防水床パン側に排出されない構造となり、例えば、防水床パン側の排水口の目皿に詰まりが生じた場合でも、防水床パン上の排水をこの排水流入部から衛生設備室外に速やかに排出できる。
【0084】さらに、この発明によれば、防水床パンが樹脂成形等によって一体的に形成される場合に、その成形型の種類を減らすことができ、この衛生設備室の低コスト化を図ることができる。また、この発明によれば、防水床パンを使用した既存の衛生設備室に対する出入口部周りの床面の段差をなくす改造も、容易にできるようになる。さらに、この発明によれば、出入り戸によって、衛生設備室内の排水が、排水流入部に流れ込むのを抑えることができるので、排水流入部内方が排水で汚れるのを抑えることができる。
【0085】この発明の請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の発明と同様な効果を得ることができるとともに、排水流入部にほとんど排水が流れ込まなくなり、この排水流入部内方の清掃が不要になる分、使用者に清掃時の負担を増大させることもない。」。
訂正事項3:特許明細書の段落【0031】を次のとおりに訂正する。
「【0031】さらに、この発明では、戸枠の排水流入部に入った排水を、連絡排水管を介して、衛生設備室の既存の排水部(例えば、排水トラップ)に容易に排出できる。また、この発明では、出入り戸によって、衛生設備室内の排水が、隣室側、すなわち、排水流入部側へ流出するのを抑えることができるため、排水流入部に流れ込む排水の量を抑えることができ、排水流入部内方が排水で汚れるのを抑えることができる。」。
訂正事項4:特許明細書の段落【0016】を次のとおりに訂正する。
「【0016】さらに、この発明では、戸枠の排水溝に集められた排水を、連絡排水管を介して、衛生設備室の既存の排水部(例えば、排水トラップ)に容易に排出できる。」。
(2-2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項1の訂正は、訂正前の請求項7〜12、15および16を削除し、その削除に伴い、訂正前の請求項13および14を、項番を繰り上げて、訂正後の請求項7および8としたものであり、訂正後の請求項1〜3、5、7、8は、特許明細書に記載された事項の範囲内において限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項2の訂正は、訂正事項1との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項3の訂正は、訂正事項1との整合を図るための明りょうでない記載の釈明、及び、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項4の訂正は、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2-4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(3-1)申立て理由の概要
異議申立人1〜3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜16に係る発明(以下、この項において、「本件請求項1〜16に係る発明」という。)について次のように主張する。
(3-1-1)異議申立人1は、甲第1号証(特開平8-284442号公報)、甲第2号証(特開平7-3914号公報)、甲第3号証(実願平1-50344号(実開平3-54863号)のマイクロフィルム)、甲第4号証(特開平6-316954号公報)、甲第5号証(特開平5-272160号公報)、甲第6号証(特開平8-189209号公報)、甲第7号証(特開平8-105272号公報)、甲第8号証(特開平8-303125号公報)、甲第9号証(実願平4-66517号(実開平6-30394号)のCD-ROM)及び参考資料(特開平7-26608号公報)を提出し、本件請求項1、7,13,15に係る発明は、甲第7号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件請求項9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、仮にそうでないとしても同号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本件請求項1、2,6,7,8,10,12,13,14,15に係る発明は、甲第1号証、甲第7号証に記載された発明及び従来周知の事項、のいずれか又は全てに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許を取り消されるべきものと主張している。
(3-1-2)異議申立人2は、甲第1号証(特開平8-105272号公報)、甲第2号証(特開平8-303143号公報)、甲第3号証(特開平7-26608号公報)を提出し、本件請求項1、3,4及び13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項2,6,8,12,14及び16に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本件請求項5及び11に係る発明は、甲第1号証記載の発明に基いて当業者が容易に想到し得るものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項7,9,10及び15に係る発明は、甲第1号証及び甲第3号証記載の発明に基いて容易に想到し得るものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、本件請求項1に係る発明は、特許法第17条の2第3項の規定により特許を受けることができないものであり、特許を取り消されるべきものと主張している。
(3-1-3)異議申立人3は、甲第1号証(特開平8-105272号公報)、甲第2号証(特開平5-272160号公報)、甲第3号証(実願平4-66517号(実開平6-30394号)のCD-ROM)、甲第4号証(特開平5-272276号公報)、甲第5号証(特開平8-189209号公報)、甲第6号証(実公平6-20472号公報)、甲第7号証(実願平4-68697号(実開平6-32671号)のCD-ROM)及び甲第8号証(特開平8-284442号公報)を提出し、本件請求項1、2,3,7,8,9,13,14,15、16に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証ないし甲第8号証に記載された周知例に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許を取り消されるべきものと主張している。
(3-2)本件発明
上記2.で示したように本件訂正が認められるから、本件の請求項1ないし8に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ、「本件発明1ないし8」という。)。
「【請求項1】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記戸枠が扉式ドア取り付け用のドア枠であるとともに、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、上記戸枠の下枠部の、上記防水床パンの外周端側方に設け、かつ、上記排水溝に上記衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続したことを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項2】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、上記戸枠の下枠部の、上記防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、上記排水溝に上記衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続し、かつ、上記戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、上記隣室側に流れ出そうとする排水を上記排水溝に流し込む、この排水溝への排水流入部を、上記出入り戸が閉じられた場合の上記衛生設備室の最も内方側にある上記止水材の位置より、上記衛生設備室の内方側には設けずに、上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ設けていることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項3】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、上記戸枠の下枠部の、上記防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、上記戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、上記隣室側に流れ出そうとする排水を上記排水溝に流し込む、この排水溝への排水流入部を、上記出入り戸が閉じられた場合の上記衛生設備室の最も内方側にある上記止水材の位置より、上記衛生設備室の内方側には設けずに、上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ設け、かつ、上記排水溝を形成する上記下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けていることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項4】 前記排水樋に、外部に排水を排出する連絡排水管を接続したことを特徴とする請求項3記載の衛生設備室の出入口構造。
【請求項5】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンの外方の、上記戸枠の上記下枠部に設け、かつ、上記排水溝を形成する上記下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けているとともに、上記下枠部本体に、上記排水樋を落とし込んで設置するための開口を形成していることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項6】 前記排水溝が、隣接部との間で排水流入部を形成するか、又は自身に排水流入部が形成された、着脱自在な溝蓋によって覆われていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の衛生設備室の出入口構造。
【請求項7】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、上記防水床パンの上記床面端部側方の、上記戸枠の下枠部に設けるとともに、上記排水流入部を、上記戸枠に設けられた出入り戸の閉じ位置の下方から上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ位置させ、かつ、上記排水流入部からの排水を上記衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設けたことを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項8】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、上記防水床パンの上記床面端部側方の、上記戸枠の下枠部に設けるとともに、上記排水流入部からの排水を上記衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設け、かつ、上記戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、上記出入り戸が閉じられた場合の上記衛生設備室の最も内方側にある上記止水材の位置より、上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ、上記排水流入部を位置させていることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。」
(3-3)各刊行物の記載事項
(3-3-1)異議申立人1の提出した甲第1号証(特開平8-284442号公報)(以下、「刊行物1」という。)には、段落【0001】、段落【0008】〜【0014】、段落【0021】、段落【0024】〜【0025】の記載及び図面の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「段差がないか又は小段差しか有さない浴室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、枠体の下枠で仕切られている浴室の出入口構造において、枠体が扉式ドア取り付け用のドア枠であるとともに、浴室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、枠体の下枠に設け、浴室は、防水パンの底板上にすの子板が乗載され、すの子板の上面が浴室の床面をなし、防水パンの底板より立ち上がる周壁上部の突出部上に、枠体の下枠の浴室側の側壁が位置するものであり、この枠体の下枠は、上方を開放する下枠排水溝を有する下枠本体と、下枠排水溝を上方から覆う下枠用すの子とを有し、隣室側には樋体が一体的に設けられて排水溝をなすもので、樋体用すの子が上方を覆い、下枠本体の浴室側の側壁に浴室と連通する透孔が形成され、透孔を介して排水溝内の排水を浴室内の防水パンに排出する浴室の出入口構造。」。
(3-3-2)異議申立人1の提出した甲第2号証(特開平7-3914号公報)(以下、「刊行物2」という。)には、段落【0007】〜【0011】の記載及び図面の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「浴室ユニットの床と、この浴室ユニットに隣接する隣接ユニットの床との間に出入り枠の敷居を設け、前記敷居の両側に敷居に沿って浴室ユニットの床と隣接ユニットの床とに排水溝が形成されており、この排水溝が目皿状蓋で覆われ、排水溝に排水管を接続し、両ユニットの床面と敷居の上面と目皿状蓋の上面が同一レベルになるようにした浴室ユニットと隣接ユニットとの接続部構造。」。
(3-3-3)異議申立人1の提出した甲第3号証(実願平1-50344号(実開平3-54863号)のマイクロフィルム)(以下、「刊行物3」という。)には、【実用新案登録請求の範囲】、明細書2頁17行〜3頁8行の記載及び図面の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「浴室の床と、この浴室に隣接する脱衣室の床との間に敷居を設け、浴室の床面を形成する床パンの敷居側端部に排水溝を設け、この排水溝に着脱自在に止水蓋を取り付け、かつ、排水溝に浴室の排水部につながる接続管を接続し、両室の床面と敷居の上面と止水蓋の上面が略同一高さとなるようにした浴室の排水構造。」。
(3-3-4)異議申立人1の提出した甲第4号証(特開平6-316954号公報)(以下、「刊行物4」という。)には、段落【0010】〜【0013】の記載及び図面の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「浴室の側壁の一つの面には出入口が設けられ、出入口には折曲開閉式のドアが取付けられ、出入口の下縁部と洗場床との間には段差がなく面一に設けられ、洗場床の出入口側には、止水用床排水部が設けられ、止水用床排水部は、床排水枡を有しており、床排水枡の開口部には、蓋体が装着されており、床排水枡は、浴槽の排水部に通じる通水管と連結されている浴室構造。」
(3-3-5)異議申立人1の提出した甲第5号証(特開平5-272160号公報)(以下、「刊行物5」という。)には、段落【0008】の記載及び図面の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「浴室内に設ける洗い場用床パンの底面と浴室外の床面とを略面一にし、浴室の出入り口に沿って洗い場用床パンに排水溝を凹設し、この排水溝に、洗い場用床パンの底面と浴室外の床面と略面一になる排水蓋を着脱自在に被着し、かつ、排水溝を排水管路にて連通させて成る浴室の排水構造。」。
(3-3-6)異議申立人1の提出した甲第6号証(特開平8-189209号公報)(以下、「刊行物6」という。)には、段落【0020】〜【0024】及び図2の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「防水床パン上に浴槽を設置し、洗い場と隣室とを出入り口の扉で仕切った浴室において、前記洗い場の扉側及び隣室の床面の扉側の一部に透水部を設け、この透水部は防水床パンとこの防水床パン上に載置した透水性の高い素材から成る透水板とで構成し、この透水板と、洗い場と、出入り口の扉の下枠と、隣室の床面とが略面一であり、隣室の防水床パンに排水口を設け、排水口に浴室の排水部につながる排水管を接続した浴室の床面構造。」。
(3-3-7)異議申立人1の提出した甲第7号証(特開平8-105272号公報)(以下、「刊行物7」という。)には、段落【0003】〜【0006】、段落【0010】〜【0014】、段落【0017】、段落【0019】の記載及び図面の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「段差がないか又は小段差しか有さない浴室の床面端部と浴室外の床面端部との間に、溝型材からなる排水溝の両上端をそれぞれに支持するように設けられ、排水溝内に、吊り戸用の敷居が設けられて、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのないようにしている浴室の出入口構造において、敷居、及び、敷居と溝型材の側壁上端との間には間隙が設けられて、浴室床の湯水が排水溝内に至るとともに、排水溝に排水管を接続して、室外に排水を排出する浴室の出入口構造。」。
(3-3-8)異議申立人1の提出した甲第8号証(特開平8-303125号公報)(以下、「刊行物8」という。)には、段落【0010】、段落【0018】〜【0021】、段落【0029】の記載及び図面の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「衛生設備室内の床面端部と隣の部屋の床面端部とが衛生設備室出入口の敷居で仕切られ、衛生設備室出入口の敷居の上面と衛生設備室内の床面と隣の部屋の床面とがほぼなだらかな面で連続した衛生設備室出入口において、衛生設備室の床面上の排水が隣の部屋側に流れ出すのを防止するために、衛生設備室の床面を構成する防水床パンの、浴室出入口付近の簀の子板が被せられた排水溝、及び、衛生設備室出入口の敷居に溝を設け、敷居の溝には、隣接部との間に隙間を形成するか、又は自身に孔が開いたキャップが着脱可能に設けられるとともに、衛生設備室出入口の敷居に設ける溝からの排水を、浴室出入口付近の簀の子板が被せられた排水溝に排出し、衛生設備室出入口に衛生設備室側に回動させて開く扉が設けられており、衛生設備室出入口の縦枠に、前記扉の閉時に前記扉の側部と密着して縦枠と扉との間を密閉可能な縦パッキンが設けられ、前記扉の下端部に、扉の閉時に前記敷居の上面ならびに前記縦パッキンの下端部と密着して敷居と扉との間を密閉可能な下パッキンが設けられ、前記敷居の上面の前記下パッキンと密着する部分よりも衛生設備室外側の位置に、溝が設けられている衛生設備室の出入口構造。」。
(3-3-9)異議申立人1の提出した甲第9号証(実願平4-66517号(実開平6-30394号)のCD-ROM)(以下、「刊行物9」という。)には、【実用新案登録請求の範囲】、段落【0006】、段落【0008】の記載及び図面の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「浴室と脱衣室を仕切り、脱衣室側へ開放可能な浴室ドアの下框とこれに対向する開口枠の下枠からなり、下框には浴室ドアの閉鎖時に下枠の上側の見込み片に密着する気密材が見込み方向に並列し、下框の長さ方向に連続して敷設された浴室ドアユニット。」。
(3-3-10)異議申立人2の提出した甲第1号証(特開平8-105272号公報)は、異議申立人1の提出した甲第7号証(刊行物7)と同じである。
(3-3-11)異議申立人2の提出した甲第2号証(特開平8-303143号公報)(以下、「刊行物10」という。)には、段落【0005】、【0006】の記載及び図面の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「浴室1の簀子部材の上面及び脱衣室の床面と略同一の高さにレールを設けて段差をなくした開口枠に建込む浴室の中折れ扉の止水構造において、中折れ扉の浴室側の下端に、開口枠に設けたレールに押接する止水部材を設けると共に、開口枠の下枠の脱衣室側のアングル部に止水部材を取付けて、浴室からの浸水を2箇所で阻上するようにした浴室の中折れ扉の止水構造。」。
(3-3-12)異議申立人2の提出した甲第3号証(特開平7-26608号公報)(以下、「刊行物11」という。)には、段落【0009】〜【0010】の記載及び図面の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「浴室内床パンの脱衣室側の端部に、ドア枠が設置されるドア枠設置部が設けられ、ドア枠設置部よりもさらに脱衣室側の端部に排水溝が設けられると共に、排水溝の上面には脱衣室の床面と略面一となるように簀の子が配置されて成ることを特徴とする浴室の排水構造」。
(3-3-13)異議申立人3の提出した甲第1号証(特開平8-105272号公報)は、異議申立人1の提出した甲第7号証(刊行物7)と同じである。
(3-3-14)異議申立人3の提出した甲第2号証(特開平5-272160号公報)は、異議申立人1の提出した甲第5号証(刊行物5)と同じである。
(3-3-15)異議申立人3の提出した甲第3号証(実願平4-66517号(実開平6-30394号)のCD-ROM)は、異議申立人1の提出した甲第9号証(刊行物9)と同じである。
(3-3-16)異議申立人3の提出した甲第4号証(特開平5-272276号公報)(以下、「刊行物12」という。)には、段落【0010】〜【0013】の記載及び図面の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「脱衣室床面と、それと段差のない浴室床面間に片開きドアとそのドア枠を設け、このドア枠の下枠下部には排水溝を設け、その上部の開口部には浴室床面の一部及びその延長上にそれぞれすのこ(簀子)が敷設されており、ドア枠開口幅に亘って下枠両側部に枢支されて排水溝の深さ中途より浴室床面上面に亘って連続する湾曲断面を有する止水板を備えると共に、ドアの下端に立設固定したドア回転軸上に、前記止水板に当接してこのドアの閉鎖方向回転動作と共にこの止水板を上方に回動させるための止水板駆動手段を備えた浴室ドア。」。
(3-3-17)異議申立人3の提出した甲第5号証(特開平8-189209号公報)は、異議申立人1の提出した甲第6号証(刊行物6)と同じである。
(3-3-18)異議申立人3の提出した甲第6号証(実公平6-20472号公報)(以下、「刊行物13」という。)には、【実用新案登録請求の範囲】、2頁4欄31〜45行、3頁5欄7行〜14行の記載及び図面の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「床パンの浴室と化粧室の境界となる部分にはレール用凹溝が凹設されており、レール用凹溝に隣接して浴室側には浴室の排水部となる排水溝が凹設されており、排水溝の底はレール用凹溝の底よりも低くなっていてレール用凹溝内の水は排水溝内に流れ込むようにしてあり、排水溝には孔あきすのこが嵌められ、レール用凹溝内には下レールが嵌合固定されており、化粧室の床部の表面と下レール表面とすのこ表面と浴室の床部表面とは互いに面一に形成されており、下レールのスリット溝の底等にはレール用凹溝内に連通する排水口が穿孔されており、下レールの上に流れた水はスリット溝内に入って排水口からレール用凹溝に流れ込み、更に、排水溝内に流れ、主排水口の下方には排水トラップが設けられており、排水溝は排水用配管により排水トラップに接続されている。」。
(3-3-19)異議申立人3の提出した甲第7号証(実願平4-68697号(実開平6-32671号)のCD-ROM)(以下、「刊行物14」という。)には、段落【0011】〜【0018】の記載及び図面の記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「浴室の床に防水パンが設けられ、この防水パン上に簀子が載置され、簀子の上面は脱衣室の床面とほぼ同一平面内にあり、簀子の上面と脱衣室の床面とが下枠で仕切られ、下枠は上面に開口部を有する下枠本体と、下枠本体に対して着脱可能に内設され、下枠本体の上面とほぼ同じ高さであってかつ通水孔を有する簀子部材とから成り、その下枠の上面に、長溝が形成されており、扉の閉止時に前記長溝を封止するための止水部材が、前記扉の下端部に設けられていおり、下枠の上面と脱衣室の床面とほぼ同一平面内にあることを特徴とする浴室の扉の止水構造。」。
(3-3-20)異議申立人3の提出した甲第8号証(特開平8-284442号公報)は、異議申立人1の提出した甲第1号証(刊行物1)と同じである。
(3-4)対比・判断
(3-4-1)特許法第17条の2第3項違反について
異議申立人2は、特許明細書の請求項1に係る発明の「排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンの外方の、上記戸枠の上記下枠部に設け」という事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした補正ではなく、特許法第17条の2第3項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許は取り消されるべき旨主張しているが、上記したように、平成14年5月7日付けで、特許明細書の請求項1に係る発明の上記事項は、「排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、上記戸枠の下枠部の、上記防水床パンの外周端側方に設け」と訂正されており、この訂正された事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に違反していない。
(3-4ー2)特許法第29条第1項3号、同条第2項違反について
(3-4-2ー1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1〜14記載の発明とを対比する。
出入口部周りの床面段差を小さくするために、開き戸によって開閉される浴室の場合、この開き戸を防水床パンの洗い場側3辺のいずれの位置にでも設置できるようにする必要があるが、防水床パンの成形型を1種類で済ますためには、防水床パンの洗い場側3辺全体に排水溝を設ける必要が生じる。このような浴室は、使用者に内部を狭く感じさせ、清掃時の負担を増大させることになるが、本件発明は、そのような欠点のない衛生設備室の出入口構造を提供することを発明の目的の1つとし(段落【0005】、段落【0006】、段落【0010】、段落【0011】参照)、その目的を達成するために、本件発明1は、「戸枠が扉式ドア取り付け用のドア枠であるとともに、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、戸枠の下枠部の、防水床パンの外周端側方に設ける」という構成を、発明を特定する事項の1部としている。
これは要するに、床面を防水床パンで形成した衛生設備室内において、出入口部周りの床面段差を小さくしても、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止するために、床面に排水溝を設けることなく、扉式ドアを閉じることで防止しようとするものであり、それでも流れ出てしまう少量の排水は、防水床パンの外周端側方に設けた下枠部の排水溝で処理しようというものである。
一方、刊行物1〜14記載の発明のうち、刊行物7記載の発明は、浴室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を浴室の床面には設けないで、浴室の床面と浴室外の床面の間に設けたものであるものの、溝型材からなる排水溝の上端を両床面に支持し、排水溝内に、吊り戸用の敷居を設け、敷居、及び、敷居と溝型材の側壁上端との間には間隙が設けられたものであり、また、刊行物8記載の発明は、戸枠が扉式ドア取り付け用のドア枠であって、浴室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、敷居の上面の下パッキンと密着する部分より室外側の位置に設けられているものの、従来のように、衛生設備室の床面を形成する防水床パンにも排水溝を設けたものであるから、これらは、本件発明1とは異なるものである。
同じように、本件発明1の上記特定事項は、刊行物1〜6,9〜14記載の発明のいずれにも存在しないし、示唆もない。
そして、本件発明1は、上記特定事項により、訂正明細書に記載されたような格別の作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明1は、各特許異議申立人の提出した各刊行物記載の発明であるとも、各刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3-4-2ー2)本件発明2、3、4、6について
本件発明2、3、4、6と刊行物1〜14記載の発明とを対比すると、本件発明2、3、4、6を特定する事項の一部は、要するに、床面を防水床パンで形成した衛生設備室内において、出入口部周りの床面段差を小さくしても、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを、床面に排水溝を設けることで防止するものでなく、出入り戸を閉じることで防止しようとするものであり、それでも流れ出てしまう少量の排水は、排水流入部を下枠部の、閉じた出入り戸より隣室側にのみ設けて流下させ、防水床パンの外周端側方に設けた排水溝で処理しようというもの、すなわち、「衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、戸枠の下枠部の、防水床パンの外周端側方の位置に設け」、かつ、「隣室側に流れ出そうとする排水を排水溝に流し込む、この排水溝への排水流入部を、出入り戸が閉じられた場合の衛生設備室の最も内方側にある止水材の位置より、衛生設備室の内方側には設けずに、戸枠の下枠部の隣室側にのみ設けている」というものであるが、上記「本件発明1について」で示したことと同様に、そのようなものは、刊行物1〜14記載の発明のいずれにも存在しないし、示唆もない。
そして、本件発明2、3、4、6は、上記特定事項により、訂正明細書に記載されたような格別の作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明2、3、4、6は、各特許異議申立人の提出した各刊行物記載の発明であるとも、各刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3-4-2ー3)本件発明5について
本件発明5と刊行物1〜14記載の発明とを対比すると、本件発明5は、「段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、排水溝を形成する下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けているとともに、下枠部本体に、排水樋を落とし込んで設置するための開口を形成している」という構成を、発明を特定する事項の1部としているが、そのような事項は、刊行物1〜14記載の発明のいずれにも存在しないし示唆もない。
そして、本件発明5は、上記特定事項により、訂正明細書に記載されたような格別の作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明5は、各特許異議申立人の提出した各刊行物記載の発明であるとも、各刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3-4-2ー4)本件発明7について
本件発明7と刊行物1〜14記載の発明とを対比すると、本件発明7を特定する事項の一部は、要するに、床面を防水床パンで形成した衛生設備室内において、出入口部周りの床面段差を小さくしても、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを、床面に排水流入部を設けることで防止するのでなく、出入り戸を閉じることで防止しようとするものであり、それでも流れ出てしまう少量の排水は、出入り戸の閉じ位置より隣室側で、床面端部側方に設けた下枠部の排水流入部から流下させ、排水溝で処理しようというもの、すなわち、「衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、上記防水床パンの上記床面端部側方の、戸枠の下枠部に設け」、かつ、「排水流入部を、戸枠に設けられた出入り戸の閉じ位置の下方から戸枠の下枠部の隣室側にのみ位置させる」というものであるが、そのようなものは、上記「本件発明1について」で示したことと同様に、刊行物1〜14記載の発明のいずれにも存在しないし、示唆もない。
そして、本件発明7は、上記特定事項により、訂正明細書に記載されたような格別の作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明7は、各特許異議申立人の提出した各刊行物記載の発明であるとも、各刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3-4-2ー5)本件発明8について
本件発明8と刊行物1〜14記載の発明とを対比すると、本件発明8を特定する事項の一部は、要するに、床面を防水床パンで形成した衛生設備室内において、出入口部周りの床面段差を小さくしても、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを、床面、及び、出入り戸の閉じ位置に存在する止水材より室内側の下枠部に排水流入部を設けることで防止するのでなく、閉じられた出入り戸と止水材によって防止しようとするものであり、それでも流れ出てしまう少量の排水は、出入り戸の閉じ位置にある最も内方側の止水材より隣室側で、床面端部側方に設けた下枠部の排水流入部から流下する排水溝で処理しようというもの、すなわち、「衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、防水床パンの床面端部側方の、戸枠の下枠部に設け」、かつ、「出入り戸が閉じられた場合の衛生設備室の最も内方側にある止水材の位置より、戸枠の下枠部の隣室側にのみ、排水流入部を位置させている」というものであるが、そのようなものは、上記「本件発明1について」で示したことと同様に、刊行物1〜14記載の発明のいずれにも存在しないし、示唆もない。
そして、本件発明8は、上記特定事項により、訂正明細書に記載されたような格別の作用効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明8は、各特許異議申立人の提出した各刊行物記載の発明であるとも、各刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3-5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明1ないし8についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし8についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
衛生設備室の出入口構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、
上記戸枠が扉式ドア取り付け用のドア枠であるとともに、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、上記戸枠の下枠部の、上記防水床パンの外周端側方の位置に設け、かつ、上記排水溝に上記衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続したことを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項2】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、
上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、上記戸枠の下枠部の、上記防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、上記排水溝に上記衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続し、
かつ、上記戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、上記隣室側に流れ出そうとする排水を上記排水溝へ流し込む、この排水溝への排水流入部を、上記出入り戸が閉じられた場合の上記衛生設備室の最も内方側にある上記止水材の位置より、上記衛生設備室の内方側には設けずに、上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ設けていることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項3】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、
上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、上記戸枠の下枠部の、上記防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、
上記戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、上記隣室側に流れ出そうとする排水を上記排水溝へ流し込む、この排水溝への排水流入部を、上記出入り戸が閉じられた場合の上記衛生設備室の最も内方側にある上記止水材の位置より、上記衛生設備室の内方側には設けずに、上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ設け、
かつ、上記排水溝を形成する上記下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けていることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項4】 前記排水樋に、外部に排水を排出する連絡排水管を接続したことを特徴とする請求項3記載の衛生設備室の出入口構造。
【請求項5】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、
上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンの外方の、上記戸枠の上記下枠部に設け、
かつ、上記排水溝を形成する上記下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けているとともに、
上記下枠部本体に、上記排水樋を落とし込んで設置するための開口を形成していることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項6】 前記排水溝が、隣接部との間で排水流入部を形成するか、又は自身に排水流入部が形成された、着脱自在な溝蓋によって覆われていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の衛生設備室の出入口構造。
【請求項7】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、
上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、上記防水床パンの上記床面端部側方の、上記戸枠の下枠部に設けるとともに、上記排水流入部を、上記戸枠に設けられた出入り戸の閉じ位置の下方から上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ位置させ、かつ、上記排水流入部からの排水を上記衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設けたことを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項8】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、
上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、上記防水床パンの上記床面端部側方の、上記戸枠の下枠部に設けるとともに、上記排水流入部からの排水を上記衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設け、
かつ、上記戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、上記出入り戸が閉じられた場合の上記衛生設備室の最も内方側にある上記止水材の位置より、上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ、上記排水流入部を位置させていることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、浴室やシャワー室のような衛生設備室の出入口構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高齢化社会の到来にともない、例えば、浴室の出入口部には、戸枠の下枠部を含めて、浴室の洗い場床面と脱衣室の床面との間で、段差を小さくすることが求められるようになる。かくすれば、足腰の弱った高齢者であっても、つまずくことなく容易に浴室に出入りでき、入浴時の安全性を高めることができるからである。ところが、洗い場の床面と脱衣室の床面間の段差が小さくなると、浴室側の排水が脱衣室側に流出しやすいという問題が生じる。
【0003】
このため、例えば、従来の浴室では、防水床パンの浴室の出入口部側に排水溝を設け、この排水溝を、上面が脱衣室の床面と略面一に配置される溝蓋(例えば、グレーチング)で覆うことにより、浴室内の排水が脱衣室内に流れ出さないようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の浴室では、浴室の洗い場内に溝蓋で覆われる排水溝が配置されるため、入浴者が洗い場を狭く感じてしまうという問題がある。
【0005】
特に、出入口部が開き戸によって開閉される浴室の場合、この開き戸を防水床パンの洗い場側3辺のいずれの位置にでも設置できるようにする必要があるが、防水床パンの成形型を1種類で済ますためには、この防水床パンの洗い場側3辺(浴槽側を含めると4辺)全体に排水溝を設ける必要が生じる。このため、このような浴室では、出入口部以外の場所にも溝蓋で覆われる排水溝が配置されることとなり、入浴者はますます洗い場を狭く感じてしまうこととなる。
【0006】
また、上記従来の浴室では、出入口部の段差を無くすために設けられた排水溝中に、石鹸水混じりの汚れを含んだ湯水が流れ込むため、この排水溝や溝蓋が汚れ易いという問題がある。このため、上記従来の浴室では、この排水溝や溝蓋から悪臭が発生するのを防止する必要上、この排水溝や、重たく清掃が困難な溝蓋を頻繁に清掃しなければならないという問題がある。そして、この清掃作業は、浴室を使用する高齢者にとって大きな負担になっている。
【0007】
特に、上述のように、防水床パンの洗い場側3辺(浴槽側を含めると4辺)に排水溝を設ける場合には、出入口部以外の場所に設けられた排水溝や溝蓋の清掃も必要となり、高齢者の負担は上記の場合の3〜4倍に跳ね上がる。
【0008】
したがって、上記従来の浴室に対しては、高齢者向けの浴室であるにもかかわらず、通常の浴室に比べて掃除がしにくいという声も上がっている。
【0009】
なお、これらの問題は、浴室だけでなく、例えば、シャワー室のように、室内の床面上に排水が流される他の衛生設備室でも同様に生じる。
【0010】
この発明は、以上の点に鑑み、出入口部周りの床面段差を小さくするために、この出入口部周りに排水流出防止用の排水溝を設けた場合でも、使用者に内部を狭く感じさせることのない衛生設備室の出入口構造を提供することを目的とする。
【0011】
また、この発明は、上記目的とともに、使用者に清掃時の負担を増大させることのない衛生設備室の出入口構造を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、この発明は、出入口部周りの床面段差を小さくした場合でも、使用者に内部を狭く感じさせることがないとともに、使用者に清掃時の負担を増大させることのない衛生設備室の出入口構造を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、戸枠が扉式ドア取り付け用のドア枠であるとともに、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、戸枠の下枠部の、防水床パンの外周端側方の位置に設け、かつ、排水溝に衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続したことである。
【0014】
この発明では、衛生設備室と隣室の床面間に段差を設けないか又は小段差しか設けていない場合でも、隣室側に向かう衛生設備室の床面上の排水は、戸枠の排水溝中に流し込まれ、隣室側に流れ出すことはない。したがって、排水流出防止用の排水溝を、衛生設備室内に設ける必要はない。また、この発明では、戸枠の設置とともに排水溝が形成できるので、排水流出防止用の排水溝の形成の容易化を図ることができる。さらに、この発明では、排水溝を防水床パンの外方(外周端側方)に設けているため、防水床パンの形状に左右されることなく、自由な大きさの排水溝を形成できるとともに、この排水溝中の排水が防水床パン側に排出されない構造となり、例えば、防水床パン側の排水口の目皿に詰まりが生じた場合でも、防水床パン上の排水をこの排水溝から衛生設備室外に速やかに排出できる。
【0015】
また、発明では、防水床パン側に排水流出防止用の排水溝を設ける必要がないため、防水床パンが樹脂成形等によって一体的に形成される場合に、出入口部の位置によって防水床パンの形状を変える必要がなく、この防水床パンの成形型を1種類のものですますことができる。さらに、この発明では、例えば、既存の浴室を改造して、この浴室の出入口部周りの床面の段差を無くす場合でも、防水床パン側に新たな排水溝を設ける必要がないため、この段差を無くす改造工事を容易に行なうことができる。なお、防水床パンには、例えば、浴槽と洗い場とが一体的に形成される洗い場付き浴槽も含むものとする。
【0016】
さらに、この発明では、戸枠の排水溝に集められた排水を、連絡排水管を介して、衛生設備室の既存の排水部(例えば、排水トラップ)に容易に排出できる。
【0017】
ここで、段差がないとは、実質上段差がないと見なされる数mm程度の段差も含むものとし、小段差とは、衛生設備室内の排水が隣室側に流れ出し易い程度のものを言い、例えば、最大20mm程度の段差を言うものとする。また、戸枠の下枠部が、2つの床面間の段差より大きい段差を生じさせないとは、実質的な状態を言い、下枠部側に、高い方の床面より数mm程度高くなった部分が形成される場合もあり得るものとする。
【0018】
この発明の請求項2記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、戸枠の下枠部の、防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、排水溝に衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続し、かつ、戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、隣室側に流れ出そうとする排水を排水溝へ流し込む、この排水溝への排水流入部を、出入り戸が閉じられた場合の衛生設備室の最も内方側にある止水材の位置より、衛生設備室の内方側には設けずに、戸枠の下枠部の隣室側にのみ設けていることである。
【0019】
この発明では、請求項1記載の発明と同様な作用効果を得ることができる。また、この発明では、戸枠とこの戸枠に設けられる出入り戸との間の隙間が止水材によって塞がれるため、衛生設備室の床面上の排水が、戸枠の排水溝内に流入することはほとんどない。このため、戸枠の排水溝内が排水で汚れることはほとんどなく、かつ、戸枠の排水溝も止水材の劣化等の緊急時に備えたものであればよく、比較的小さなものですますことができる。なお、止水材は戸枠と出入り戸の両方に設けられていてもよいのはもちろんである。
【0020】
この発明の請求項3記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、戸枠の下枠部の、防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、隣室側に流れ出そうとする排水を排水溝へ流し込む、この排水溝への排水流入部を、出入り戸が閉じられた場合の衛生設備室の最も内方側にある止水材の位置より、衛生設備室の内方側には設けずに、戸枠の下枠部の隣室側にのみ設け、かつ、排水溝を形成する下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けていることである。
【0021】
この発明では、排水溝を形成する排水樋が、戸枠の下枠部本体とは別体に形成されているため、建物側に戸枠を組み込む場合に、戸枠の組み込み時に排水樋の部分が下方に突出して、この戸枠を建物側に取り付けにくいといった不都合は生じない。
【0022】
この発明の請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の場合において、排水樋に、外部に排水を排出する連絡排水管を接続したことである。
【0023】
この発明では、排水樋に集められた排水を、連絡配水管を介して、衛生設備室の床面を形成する防水床パン外部に容易に排出できる。
【0024】
この発明の請求項5記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンの外方の、戸枠の下枠部に設け、かつ、排水溝を形成する下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けているとともに、下枠部本体に、排水樋を落とし込んで設置するための開口を形成していることである。
【0025】
この発明では、建物側に戸枠を組み込む場合に、下方に突出する排水樋を後から下枠部本体の開口に落とし込めばよく、戸枠の組み込みの容易化を図ることができる。特に、衛生設備室の排水部につながる連絡排水管とこの排水樋とを接続する場合に、例えば、この排水管の一部にフレキシブル管を使用することにより、これらの接続を床下でなく床上で行なうことができる。
【0026】
この発明の請求項6記載の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の発明の場合において、排水溝が、隣接部との間で排水流入部を形成するか、又は自身に排水流入部が形成された、着脱自在な溝蓋によって覆われていることである。
【0027】
この発明では、排水溝内の清掃や溝蓋の清掃を容易に行なうことができる。
【0028】
この発明の請求項7記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、防水床パンの床面端部側方の、戸枠の下枠部に設けるとともに、排水流入部を、戸枠に設けられた出入り戸の閉じ位置の下方から戸枠の下枠部の隣室側にのみ位置させ、かつ、排水流入部からの排水を衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設けたことである。
【0029】
この発明では、衛生設備室と隣室の床面間に段差を設けないか又は小段差しか設けていない場合でも、隣室側に向かう衛生設備室の床面上の排水は、戸枠の排水流入部中に流し込まれ、隣室側に流れ出すことはない。したがって、排水流出防止用の排水溝を、衛生設備室内に設ける必要はない。また、この発明では、排水流入部を防水床パンの外方(床面端部側方)に設けているため、この排水流入部に入った排水が防水床パン側に排出されない構造となり、例えば、防水床パン側の排水口の目皿に詰まりが生じた場合でも、防水床パン上の排水をこの排水流入部から衛生設備室外に速やかに排出できる。
【0030】
また、この発明では、防水床パン側に排水流出防止用の排水溝を設ける必要がないため、防水床パンが樹脂成形等によって一体的に形成される場合に、出入口部の位置によって防水床パンの形状を変える必要がなく、この防水床パンの成形型を1種類のものですますことができる。さらに、この発明では、例えば、既存の浴室を改造して、この浴室の出入口部周りの床面の段差を無くす場合でも、防水床パン側に新たな排水溝を設ける必要がないため、この段差を無くす改造工事を容易に行なうことができる。なお、防水床パンには、例えば、浴槽と洗い場とが一体的に形成される洗い場付き浴槽も含むものとする。
【0031】
さらに、この発明では、戸枠の排水流入部に入った排水を、連絡排水管を介して、衛生設備室の既存の排水部(例えば、排水トラップ)に容易に排出できる。また、この発明では、出入り戸によって、衛生設備室内の排水が、隣室側、すなわち、排水流入部側へ流れ出すのを抑えることができるため、排水流入部に流れ込む排水の量を抑えることができ、排水流入部内方が排水で汚れるのを抑えることができる。
【0032】
この発明の請求項8記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、防水床パンの床面端部側方の、戸枠の下枠部に設けるとともに、排水流入部からの排水を衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設け、かつ、戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、出入り戸が閉じられた場合の衛生設備室の最も内方側にある止水材の位置より、戸枠の下枠部の隣室側にのみ、排水流入部を位置させていることである。
【0033】
この発明では、請求項7記載の発明と同様な作用効果を得ることができる。また、この発明では、戸枠とこの戸枠に設けられる出入り戸との間の隙間が止水材によって塞がれるため、衛生設備室の床面上の排水が、戸枠の排水流入部に流入することはほとんどない。このため、戸枠の排水流入部内方が排水で汚れることはほとんどない。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1はこの発明の一実施の形態に係る浴室の出入口構造を示している。
【0035】
浴室Yは、図1で示されるように、脱衣室Dに隣接して設けられており、この浴室Yの洗い場A側に、脱衣室Dに通じる出入口部Kが形成されている。この浴室Yは、組立式浴室である浴室ユニットから形成されており、樹脂材によって一体的に形成された防水床パン1の浴槽設置部(図示せず)上には、浴槽(図示せず)が設置され、この浴槽設置部に隣接する洗い場部10上には洗い場Aが形成されている。そして、この防水床パン1の外縁部には、壁パネル2等を設置するための壁載せ部11が形成されている。この場合、洗い場A側の壁載せ部11は、防水床パン1の洗い場部10より一段低く形成されている。
【0036】
なお、防水床パン1の洗い場部10上面(以下この面を洗い場面S1という)は、浴槽横の排水口(図示せず)に向かって下り勾配で傾斜されており、かつ、この排水口は防水床パン1の下面側に取り付けられた浴室の排水部である、排水トラップ(図示せず)に連通している。
【0037】
出入口部Kは、図1で示されるように、戸枠であるドア枠3と、このドア枠3に取り付けられる出入り戸としてのドア4とから構成されている。ドア枠3は、右枠部3Aと左枠部(図示せず)の下端側に下枠部3Bが形成され、上端側に上枠部(図示せず)が形成されたもので、下枠部3Bが、浴室Yの洗い場面S1端部と脱衣室Dの床面S2端部との間を段差なく仕切っている。なお、図3で示されるように、洗い場面S1端部と脱衣室Dの床面S2端部との間には微小(例えば数mm)の段差Hはあるが、この場合、下枠部3Bの上面は、高い位置にある脱衣室Dの床面S1と面一となるように配置されている。
【0038】
下枠部3Bは、図1で示されるように、アルミ材によって右枠部3A等と一体的に形成される下枠部本体30と、この下枠部本体30とは別体に形成された排水樋31及び溝蓋32とから構成されている。下枠部本体30には、図2で示されるように、略長手方向一杯に亘って、浴室Yの洗い場A側に突状の傾斜部300が形成されているとともに、脱衣室D側に平らなフラット部301が形成され、かつ、傾斜部300とフラット部301との間に一段低い凹状部302が形成されている。そして、この凹状部302には、外周部のみを残した状態で、排水樋31設置用の落とし込み開口302aが形成されている。
【0039】
この場合、図3で示されるように、フラット部301の上面は脱衣室Dの床面S2と略同一レベルに配置されている。また、傾斜部300の上面Tは、脱衣室D側に向かって上り勾配で傾斜されており、洗い場A側端部が洗い場面S1と略同一レベルに配置されているとともに、脱衣室D側の端部が脱衣室Dの床面S2と略同一レベルに配置されている。
【0040】
なお、下枠部本体30は、傾斜部300側が防水床パン1の壁載せ部11上に支持され、フラット部301側が脱衣室Dの床部材D1側に支持されている。また、下枠部本体30の傾斜部300側には、防水床パン1との間にシール材Pが充填されていて、洗い場A側の排水が防水床パン1との間を通って下方へ漏れ出すのが防止されている。
【0041】
排水樋31は、ドア枠3とドア4との間の隙間を通って流出した排水等を浴室Yの排水トラップ側に排出するためのものであり、図1で示されるように、長さと幅は下枠部本体30の凹状部302のそれと略同一に形成されている。この排水樋31には、図4で示されるように、排水溝Eを形成する溝部310の上端縁に、外方に延びる平らな縁部311が形成されているとともに、溝部310の端部に、溝部310中の排水を外部に排出するためのノズル部312が形成されている。この排水樋31を下枠部本体30に組み付けるには、浴室Yの排水トラップにつながる連絡排水管であるフレキシブル管Qとノズル部312とを連結した状態で、溝部310を下枠部本体30の開口310aから、防水床パン1外方の、下方に落とし込み、縁部311を下枠部本体30の凹状部302に係止させればよい。この場合、縁部311と凹状部302との合せ部から排水が漏れ出さないように、これらの合せ部にはシール材を充分に塗布する。
【0042】
溝蓋32は、排水樋31の上方を覆って、入浴者がドア枠3の下枠部3B上を支障なく通行できるようにするとともに、排水樋31側に流出する排水を、この排水樋31に導くためのものである。この溝蓋32は、図3で示されるように、断面が(コ)の字形をしており、上面が脱衣室Dの床面S2と面一になるように、排水樋31の縁部311上に載置される。また、この溝蓋32は、両端部側に突起部32aが形成されており、この突起部32aを下枠部本体30の傾斜部300側とフラット部301側とに突き当てることにより、この傾斜部300とフラット部301との間で、排水溝Eに排水を流し込む排水流入部R1,R2を形成している。なお、溝蓋32の下端には切欠部32bが形成されていて、排水流入部R1,R2を通った排水が、この切欠部32bを通って、排水樋31の溝部310中に流れ込むようになっている。
【0043】
ドア枠3の右枠部3Aは、図2で示されるように、断面が略(L)字状をしており、ドア4側に面する側壁部33に上下方向に延びる突条34が形成され、この突条34と洗い場Aに面する内壁部35の端部との間に、凹凸状のシール部Fが形成されている。また、内壁部35にはドア4を取り付けるためのヒンジ36が設けられているとともに、側壁部33や下枠部3Bのフラット部301は、脱衣室Dの床部材D1や額縁部材G側にネジJによって固定されている。なお、ドア4のノブ側に配置されるドア枠3の左枠部も、右枠部3Aと略同様な形状に形成されている。
【0044】
ドア4はドア枠3に取り付けられて、浴室Yの出入口部Kを開閉するものであり、図1で示されるように、ドア枠40と、透光板41と、1次パッキン42と、2次パッキン43と、外周パッキン44とから構成されている。ドア枠40は、内周部に溝部40aが形成され、この溝部40aに樹脂製の透光板41が嵌め込まれているとともに、下部ドア枠40Aの下端面の、浴室Yの洗い場A側に突起部40bが形成され、中程に溝部40cが形成されている。また、外面がドア枠3の突条34に接するように位置決めされる右部ドア枠40Bには、浴室Yの洗い場A側に、ドア枠3の内壁部35に沿って突状部40dが形成され、この突状部40dの外面側がドア枠3のヒンジ36に固定されている。
【0045】
なお、ドア4は、浴室Yの洗い場A側に向かって開けられるが、開けられた場合に、下端が浴室Yの洗い場面S1に当らないように、下部又は全体が幾分上方へ持ち上げられるようになっている。
【0046】
1次パッキン42は、図3で示されるように、中空状に形成されたもので、下部ドア枠40Aの突起部40b横に、一部がこの突起部40bから下方に突出するように取り付けられている。この1次パッキン42は、ドア枠3の傾斜部300と略同一長さを有していて、ドア4が閉じた場合に、下面が傾斜部300の上面Tに加圧されて、ドア4の下端とドア枠3との間の隙間を塞ぐ止水材としての働きを有している。また、2次パッキン43は、ドア枠3の傾斜部300(1次パッキン42)と略同一長さの板状のものであり、ドア枠40下方に突出するように、上端側が溝部40c内に取り付けられている。この2次パッキン43は、ドア4が閉じる場合に、下部がドア枠3の傾斜部300の上面Tに当接しつつ移動し、ドア4が閉じた場合には、下部が溝蓋32の上端角部に突き当てられる。
【0047】
外周パッキン44は、ドア4の下端側以外の外周部に取り付けられる中空状のものであり、例えば、右部ドア枠40Bの突状部40dの内角に取り付けられ、ドア4が閉じた場合に、ドア枠3のシール部Fに突き当てられて、ドア4とドア枠3との間の隙間を塞ぐ止水材としての働きを有している。
【0048】
なお、1次パッキン42、2次パッキン43、外周パッキン44とも、ゴム弾性を有した変形容易な材料から形成されているとともに、1次パッキン42と外周パッキン44とは、隙間なく連続的に接続されているものとする。
【0049】
つぎにこの浴室の出入口構造の作用について説明する。
浴室Yの洗い場A側の排水の大部分のものは、直接洗い場面S1の傾斜に沿って、浴槽横の排水口に流れ込んだ後、排水トラップを通って浴室Y外に排出されるが、一部のものは、出入口部Kのドア4側に流れる。ところが、入浴時にはドア4は閉じており、ドア4の下端側は、1次パッキン42がドア枠3の傾斜部300に加圧されているとともに、ドア4の他の外周端側も、外周パッキン44がドア枠3のシール部F等に突き当てられているため、ドア4とドア枠3との隙間から排水が脱衣室D側に漏れ出すことはない。したがって、ドア4側に流れた排水も、洗い場面S1に沿って、浴室Y内の排水口に流れ込む。このことは、浴槽から多量の排水が短時間の内にあふれ出た場合でも同様である。
【0050】
一方、1次パッキン42や外周パッキン44に劣化が進み、これらのシール性が充分に発揮されなくなった場合には、1次パッキン42や外周パッキン44を越えて、脱衣室D側に排水が流れ出そうとする。ところが、この場合でも、ドア枠3の傾斜部300を越えた排水は、溝蓋32横の排水流入部R1,R2を通って排水樋31内に流れ込んだ後、フレキシブル管Qを通って浴室Yの排水部に流れ込むため、この排水が脱衣室D側に流れ出してしまうことはない。このことは、ドア4を開けたまま、洗い場面S1上に排水を流した場合でも同様である。また、ドア4の外面に付着(結露)して流れ落ちた排水も、脱衣室D側に流出することなく、同様の経路を通って排出される。
【0051】
なお、ドア4が閉じている場合には、2次パッキン43が溝蓋32の上端に突き当てられているため、洗い場A側の排水が傾斜部300を越えても、この排水が排水流入部R2側に流れ出すことはほとんどない。
【0052】
また、ドア4を浴室Yの洗い場A側に回動させて、出入口部Kを開けた場合には、脱衣室Dの床面S2、ドア4の下枠部3B上面、及び浴室Yの洗い場面S1は、略面一に配置され、浴室Yの洗い場Aと脱衣室Dとの間に段差が無いため、高齢等によって足腰の弱った者でも、不自由なく浴室Yに入れ、かつ、浴室Yから出ることができる。
【0053】
さらに、ドア4を閉じていくと、2次パッキン43の下部がドア枠3の傾斜部300の上面Tに当接しつつ移動するため、傾斜部300の上面Tに水滴やゴミが付着していても、これらは、2次パッキン43によって、排水流入部R1側に移動される。このため、ドア4を閉じる場合に傾斜部300の上面Tは、水滴やゴミの付着のないクリーンな状態に保持されることとなり、1次パッキン42が傾斜部300に隙間なく密着して、ドア4の下端側からの水漏れが充分に防止される。
【0054】
以上のように、この浴室Yの出入口構造では、脱衣室Dの床面S2と浴室Yの洗い場面S1との間に段差を設けず、浴室Yに対する入浴者等の出入りを容易にした場合でも、排水流出防止用の排水溝Eを洗い場A側に設けることなく、洗い場A側の排水が脱衣室D側に流出するのを防止することができる。このため、浴室Yの洗い場A側に溝蓋で覆われる排水溝Eを設ける必要がなく、入浴者に浴室Yの洗い場Aを狭く感じさせてしまうことはない。
【0055】
また、この浴室Yの出入口構造では、排水溝Eをドア枠3の、防水床パン1外方に設けているため、防水床パン1の形状に左右されることなく、自由な大きさ(特に大きいサイズ)の排水溝Eを形成できるとともに、この排水溝E中の排水が防水床パン1側に排出されない構造となり、例えば、洗い場A側の排水口の目皿に詰まりが生じた場合でも、防水床パン1の洗い場部10上の排水を、脱衣室D側に流出させることなく、この排水溝Eからフレキシブル管Qを通って、排水トラップ側に速やかに排出できる。
【0056】
さらに、この浴室Yの出入口構造では、ドア枠3の設置とともに排水溝Eが形成できるため、この排水溝Eの形成の容易化をも図ることができる。
【0057】
また、この浴室Yの出入口構造では、排水溝Eをドア枠3側に設けているため、防水床パン1に排水溝を設ける場合に比べて、この防水床パン1の成形型の数を減らすことができる。すなわち、防水床パン1の出入口部K側に排水溝を設けて、浴室Y内の排水が脱衣室D側に流出するのを防止する場合には、通常洗い場部10の3つの外辺部のいずれにも、出入口部Kが設けられるようにする必要があるため、防水床パン1の成形型は3種類準備する必要がある。ところが、この浴室Yの出入口構造では、出入口部Kの位置によって防水床パンの形状を変える必要がないため、防水床パン1の成形型は1種類のものがあればよく、防水床パンに排水溝を形成する場合に比べ、浴室ユニット等の低コスト化を図ることができる。
【0058】
なお、防水床パン1側に排水溝を設けた場合、成形型の種類を1種類にするため、洗い場部10の3つの外辺部全体に排水溝を設け、これらを溝蓋で覆うことも一般になされているが、この場合、入浴者に、洗い場Aを極端に狭く感じさせてしまうとともに、溝蓋や排水溝の数が増える分、臭気の問題や清掃の問題が生じる。
【0059】
さらに、この浴室Yの出入口構造では、排水溝Eをドア枠3側に設けているため、既存の浴室ユニットから形成される浴室の出入口部の段差を無くすことも簡単にできるようになる。すなわち、従来の浴室の出入口構造では、出入口部の段差を無くすために、防水床パンの出入口部側に排水溝を設ける必要があり、防水性を重んじる防水床パンのこのような改造は容易でないため、既存の浴室の出入口部の段差を無くす改造工事は非常に困難であった。ところが、この浴室Yの出入口構造では、防水床パン側に排水溝を設ける必要がなく、既存の防水床パンの不要部分(壁載せ部)をカットした後、防水上あまり問題とならないドア枠3支持用の支持部をこの防水床パンに取り付ければよいため、このような改造工事が簡単にできるようになる。
【0060】
また、この浴室Yの出入口構造では、排水溝Eを形成する排水樋31を下枠部本体30と別体に設けているため、ドア枠3の取付時に排水樋31の部分が下方に突出して、このドア枠3を建物側に取り付けにくいといった不都合は生じない。この場合、下枠部本体30と排水樋31とが別体になっているので、フレキシブル管Q(連絡排水管)と排水樋31の接続も、床下でなく床上(室内)で行なうことができ、排水樋31と連絡排水管との接続の容易化をも図ることができる。
【0061】
さらに、この浴室Yの出入口構造では、排水樋31の上方を排水流入部R1,R2を形成する着脱容易な溝蓋32で覆っているため、この溝蓋32や排水樋31内の清掃も簡単になすことができる。なお、排水流入部は溝蓋32自身に形成してもよい。
【0062】
また、この浴室Yの排水構造では、ドア4とドア枠3との間の隙間を1次パッキン42や外周パッキン44といった止水材で塞ぐとともに、ドア4が閉じられた場合のこの止水材の位置より、ドア枠3の脱衣室D側に、排水溝Eの排水流入部R1,R2を配置しているため、止水材の劣化時やドア4を開けて入浴した場合等を除いて、浴室Yの洗い場A側の排水が排水樋31側に流れ込むことはない。したがって、排水樋31や溝蓋32が排水(特に入浴時の汚れを含んだ石鹸水)で汚されることはほとんどなく、この排水樋31や溝蓋32の清掃をしなくても、この排水樋31等から臭気が発生することはほとんどない。
【0063】
この場合、ドア枠3側の排水溝Eは、浴室Y内に排水溝を形成する場合に比べて、排水量が少ない分、これを小さくできるため、排水樋31や溝蓋32も小さなものであればよい。したがって、このドア枠3は、排水樋31や溝蓋32を備えたものであっても、奥行きサイズが従来のものより僅かに大きくなるだけであり、その取り付けも、脱衣室D側との取合関係に変化を生じさせることなく、従来のドア枠と同様に行なうことができる。また、溝蓋32等の材質にも、これが水気の少ない浴室Y外に置かれるため、従来使用できなかった材質(例えば、木、植物繊維、布類)のものが使用できるようになる。もちろん、溝蓋32が小型になる分、従来のものに比べてコストを下げることもできる。
【0064】
なお、ドア4とドア枠3間に止水材を設けない場合でも、排水の流れがドア4により抑えられるため、浴室Yの洗い場A側の排水が排水溝Eに一気に流れ込んでしまうことはない。
【0065】
ここで、排水樋31や溝蓋32は、下枠部本体30と一体的に形成してもよいとともに、排水樋31は、図1等で示されるものより、奥行き(横幅)等が小さなものであってもよい。
【0066】
また、浴室Yの出入口部Kに設けられる出入り戸は、ドア4のほか、折り戸であっても同様な効果を得ることができる。また、ドア4のシール構造に関する効果を除けば、引戸であっても同様な効果を得ることができる。もちろん、引戸でも、この引戸と戸枠間に同様な止水材を設ければ、ドア4の場合と同様な効果を得ることができる。
【0067】
さらに、この実施の形態では、ドア4側に止水材を設けたが、この止水材はドア枠3側又はドア4とドア枠3の両方に設けてもよい。止水材の材料も、ゴム弾性を有して止水効果があるものであれば、ゴムやプラスチック等どのようなものでもよい。
【0068】
また、この実施の形態では、防水床パン1と浴槽とが別体になったものについて説明したが、この防水床パンには、浴槽と洗い場とが一体的に形成される洗い場付き浴槽も含むものとする。
【0069】
さらに、この実施の形態では、壁載せ部11が洗い場部10より一段低く形成されている防水床パン1について説明したが、この防水床パン1は、壁載せ部11が洗い場部10の上面S1より一段高い位置に設けられたものであってもよい。この場合、ドア枠3の設置部側の壁載せ部11をカットした後、この部分にドア枠3の支持部を取り付けるようにすれば、防水床パン1の成形型の種類を増やすことなく、防水床パン1上に、段差のない状態でドア枠3を設置できるからである。
【0070】
また、この実施の形態では、排水溝Eの排水流入部R1,R2がドア4より脱衣室D側に形成されている場合について説明したが、この排水溝Eの排水流入部R1,R2は、ドア4より浴室側に形成されていてもよい。
【0071】
さらに、この実施の形態では、浴室Yの出入口構造について説明したが、この出入口構造はシャワー室のように、室内の床面上に排水が流される衛生設備室についても適用できる。
【0072】
また、この実施の形態では、浴室Yの洗い場面S1、ドア枠3の下枠部3B上面、及び脱衣室Dの床面S2間に段差がなく(詳細には、数mm程度の段差しかなく)これらが略面一の状態にある場合について説明したが、この出入口構造は、図5で示されるように、浴室Yの洗い場面S1と脱衣室Dの床面S2との間に小さな段差H(例えば20mm程度)がある場合でも、同様な効果を得ることができる。段差Hが小さい場合には、浴室Y内の排水が脱衣室D側へ流出しようとするからである。
【0073】
【発明の効果】
この発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
【0074】
この発明の請求項1記載の発明によれば、出入口部周りの床面段差を小さくするために、この出入口部周りに排水流出防止用の排水溝を設けた場合でも、清掃時の負担を増大させることがないとともに、使用者に衛生設備室内を狭く感じさせてしまうこともない。
【0075】
また、この発明によれば、防水床パンの形状に左右されることなく、自由な大きさの排水溝を形成できるとともに、排水溝中の排水が防水床パン側に排出されない構造となり、例えば、防水床パン側の排水口の目皿に詰まりが生じた場合でも、防水床パン上の排水をこの排水溝から衛生設備室外に速やかに排出できる。
【0076】
さらに、この発明によれば、防水床パンが樹脂成形等によって一体的に形成される場合に、その成形型の種類を減らすことができ、この衛生設備室の低コスト化を図ることができる。また、この発明によれば、防水床パンを使用した既存の衛生設備室に対する出入口部周りの床面の段差をなくす改造も、容易にできるようになる。
【0077】
この発明の請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様な効果を得ることができるとともに、排水溝にほとんど排水が流れ込まなくなり、この排水溝の清掃が不要になる分、使用者に清掃時の負担を増大させることもない。また、この発明では、戸枠の排水溝のサイズを小さくできる分、戸枠のサイズを従来の戸枠に近づけることができる。
【0078】
この発明の請求項3記載の発明によれば、連絡排水管を設けることによる効果を除けば、請求項1記載の発明と同様な効果を得ることができるとともに、戸枠の取り付けの容易化をも図ることができる。
【0079】
この発明の請求項4記載の発明によれば、排水溝中の排水排水の処理の容易化を図ることができる。
【0080】
この発明の請求項5記載の発明によれば、戸枠の取り付けの容易化を図ることができる。
【0081】
この発明の請求項6記載の発明によれば、排水溝等の清掃の容易化や排水溝上の歩行の容易化を図ることができる。
【0082】
この発明の請求項7記載の発明によれば、出入口部周りの床面段差を小さくした場合でも、衛生設備室内に排水溝を設ける必要がなく、使用者に衛生設備室内を狭く感じさせることがない。
【0083】
また、この発明によれば、排水溝中の排水が防水床パン側に排出されない構造となり、例えば、防水床パン側の排水口の目皿に詰まりが生じた場合でも、防水床パン上の排水をこの排水流入部から衛生設備室外に速やかに排出できる。
【0084】
さらに、この発明によれば、防水床パンが樹脂成形等によって一体的に形成される場合に、その成形型の種類を減らすことができ、この衛生設備室の低コスト化を図ることができる。また、この発明によれば、防水床パンを使用した既存の衛生設備室に対する出入口部周りの床面の段差をなくす改造も、容易にできるようになる。さらに、この発明によれば、出入り戸によって、衛生設備室内の排水が、排水流入部に流れ込むのを抑えることができるので、排水流入部内方が排水で汚れるのを抑えることができる。
【0085】
この発明の請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の発明と同様な効果を得ることができるとともに、排水流入部にほとんど排水が流れ込まなくなり、この排水流入部内方の清掃が不要になる分、使用者に清掃時の負担を増大させることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明の一実施の形態に係る浴室の出入口構造を示す浴室の出入口部周りの斜視図である。
【図2】
図1で示される浴室の出入口部周りから、ドアと排水樋と溝蓋とを除いた図である。
【図3】
図1で示される浴室の出入口部周りの断面図である。
【図4】
排水樋等の外観斜視図である。
【図5】
この発明の他の実施の形態に係る浴室の出入口構造を示す浴室の出入口部周りの断面図である。
【符号の説明】
1 防水床パン
3 ドア枠(戸枠)
4 ドア(出入り戸)
31 排水樋
32 溝蓋
42 1次パッキン(止水材)
44 外周パッキン(止水材)
300 下枠部本体
302a 開口
D 脱衣室(隣室)
E 排水溝
H 段差
K 出入口部
R1 排水流入部
S1 洗い場面(衛生設備室の床面)
S2 脱衣室の床面(隣室の床面)
Y 浴室(衛生設備室)
 
訂正の要旨 訂正の要旨
1.特許請求の範囲の減縮を目的として、
特許明細書の特許請求の範囲のもとの請求項7〜12、15,16を削除し、請求項1〜3,5,13,14をそれぞれ次のように訂正する。
「【請求項1】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記戸枠が扉式ドア取り付け用のドア枠であるとともに、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、上記戸枠の下枠部の、上記防水床パンの外周端側方に設け、かつ、上記排水溝に上記衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続したことを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項2】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、上記戸枠の下枠部の、上記防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、上記排水溝に上記衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続し、かつ、上記戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、上記隣室側に流れ出そうとする排水を上記排水溝に流し込む、この排水溝への排水流入部を、上記出入り戸が閉じられた場合の上記衛生設備室の最も内方側にある上記止水材の位置より、上記衛生設備室の内方側には設けずに、上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ設けていることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項3】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、上記戸枠の下枠部の、上記防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、上記戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、上記隣室側に流れ出そうとする排水を上記排水溝に流し込む、この排水溝への排水流入部を、上記出入り戸が閉じられた場合の上記衛生設備室の最も内方側にある上記止水材の位置より、上記衛生設備室の内方側には設けずに、上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ設け、かつ、上記排水溝を形成する上記下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けていることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項5】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パンの外方の、上記戸枠の上記下枠部に設け、かつ、上記排水溝を形成する上記下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けているとともに、上記下枠部本体に、上記排水樋を落とし込んで設置するための開口を形成していることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項7】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、上記防水床パンの上記床面端部側方の、上記戸枠の下枠部に設けるとともに、上記排水流入部を、上記戸枠に設けられた出入り戸の閉じ位置の下方から上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ位置させ、かつ、上記排水流入部からの排水を上記衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設けたことを特徴とする衛生設備室の出入口構造。
【請求項8】 段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、上記衛生設備室の床面上の排水が上記隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、上記衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、上記防水床パンの上記床面端部側方の、上記戸枠の下枠部に設けるとともに、上記排水流入部からの排水を上記衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設け、かつ、上記戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、上記出入り戸が閉じられた場合の上記衛生設備室の最も内方側にある上記止水材の位置より、上記戸枠の下枠部の上記隣室側にのみ、上記排水流入部を位置させていることを特徴とする衛生設備室の出入口構造。」
2.上記1.の特許請求の範囲の訂正と整合させるため、明りょうでない記載の釈明を目的として、
(1)特許明細書の【発明の名称】の欄を、次のとおりに訂正する。
「衛生設備室の出入口構造」
(2)特許明細書の【発明の詳細な説明】の欄の段落【0028】〜【0033】を削除し、段落【0034】〜【0039】を、それぞれ段落【0028】〜【0033】とし、段落【0040】、段落【0041】を削除し、段落【0042】〜【0093】を、それぞれ段落【0034】〜【0085】と訂正する。
(3)特許明細書の【発明の詳細な説明】の欄の段落【0001】、段落【0010】〜【0014】、段落【0018】、段落【0020】、段落【0024】、段落【0025】、段落【0028】、段落【0029】、段落【0032】、段落【0033】、段落【0074】〜【0085】を、それぞれ、次のとおりに訂正する。
「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、浴室やシャワー室のような衛生設備室の出入口構造に関するものである。」、
「【0010】この発明は、以上の点に鑑み、出入口部周りの床面段差を小さくするために、この出入口部周りに排水流出防止用の排水溝を設けた場合でも、使用者に内部を狭く感じさせることのない衛生設備室の出入口構造を提供することを目的とする。
【0011】また、この発明は、上記目的とともに、使用者に清掃時の負担を増大させることのない衛生設備室の出入口構造を提供することを目的とする。
【0012】さらに、この発明は、出入口部周りの床面段差を小さくした場合でも、使用者に内部を狭く感じさせることがないとともに、使用者に清掃時の負担を増大させることのない衛生設備室の出入口構造を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項1記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、戸枠が扉式ドア取り付け用のドア枠であるとともに、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、戸枠の下枠部の、防水床パンの外周端側方に設け、かつ、排水溝に衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続したこことである。
【0014】この発明では、衛生設備室と隣室の床面間に段差を設けないか又は小段差しか設けていない場合でも、隣室側に向かう衛生設備室の床面上の排水は、戸枠の排水溝中に流し込まれ、隣室側に流れ出すことはない。したがって、排水流出防止用の排水溝を、衛生設備室内に設ける必要はない。また、この発明では、戸枠の設置とともに排水溝が形成できるので、排水流出防止用の排水溝の形成の容易化を図ることができる。さらに、この発明では、排水溝を防水床パンの外方(外周端側方)に設けているため、防水床パンの形状に左右されることなく、自由な大きさの排水溝を形成できるとともに、この排水溝中の排水が防水床パン側に排出されない構造となり、例えば、防水床パン側の排水口の目皿に詰まりが生じた場合でも、防水床パン上の排水をこの排水溝から衛生設備室外に速やかに排出できる。」、
「【0018】この発明の請求項2記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、戸枠の下枠部の、防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、排水溝に衛生設備室の排水部につながる連絡排水管を接続し、かつ、戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、隣室側に流れ出そうとする排水を排水溝へ流し込む、この排水溝への排水流入部を、出入り戸が閉じられた場合の衛生設備室の最も内方側にある止水材の位置より、衛生設備室の内方側には設けずに、戸枠の下枠の隣室側にのみ設けていることである。」、
「【0020】この発明の請求項3記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンには設けずに、戸枠の下枠部の、防水床パンの外周端側方の位置に設けるとともに、戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、隣室側に流れ出そうとする排水を排水溝へ流し込む、この排水溝への排水流入部を、出入り戸が閉じられた場合の衛生設備室の最も内方側にある止水材の位置より、衛生設備室の内方側には設けずに、戸枠の下枠部の隣室側にのみ設け、かつ、排水溝を形成する下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けていることである。」、
「【0024】この発明の請求項5記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水溝を、衛生設備室の床面を形成する防水床パンの外方の、戸枠の下枠部に設け、かつ、排水溝を形成する下枠部の排水樋をこの下枠部の下枠部本体とは別体に設けているとともに、下枠部本体に、排水樋を落とし込んで設置するための開口を形成していることである。
【0025】この発明では、建物側に戸枠を組み込む場合に、下方に突出する排水樋を後から下枠部本体の開口に落とし込めばよく、戸枠の組み込みの容易化を図ることができる。特に、衛生設備室の排水部につながる連絡排水管とこの排水樋とを接続する場合に、例えば、この排水管の一部にフレキシブル管を使用することにより、これらの接続を床下でなく床上で行なうことができる。」、
「【0028】この発明の請求項7記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、防水床パンの床面端部側方の、戸枠の下枠部に設けるとともに、排水流入部を、戸枠に設けられた出入り戸の閉じ位置の下方から戸枠の下枠部の隣室側にのみ位置させ、かつ、排水流入部からの排水を衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設けたことである。
【0029】この発明では、衛生設備室と隣室の床面間に段差を設けないか又は小段差しか設けていない場合でも、隣室側に向かう衛生設備室の床面上の排水は、戸枠の排水流入部中に流し込まれ、隣室側に流れ出すことはない。したがって、排水流出防止用の排水溝を、衛生設備室内に設ける必要はない。また、この発明では、排水流入部を防水床パンの外方(床面端部側方)に設けているため、この排水流入部に入った排水が防水床パン側に排出されない構造となり、例えば、防水床パン側の排水口の目皿に詰まりが生じた場合でも、防水床パン上の排水をこの排水流入部から衛生設備室外に速やかに排出できる。」、
「【0032】この発明の請求項8記載の発明は、段差がないか又は小段差しか有さない衛生設備室の床面端部と隣室の床面端部とが、これら2つの床面端部間の段差より大きい段差を生じさせることのない、戸枠の下枠部で仕切られている衛生設備室の出入口構造において、衛生設備室の床面上の排水が隣室側に流れ出すのを防止する排水流し込み用の排水流入部を、衛生設備室の床面を形成する防水床パン上には設けずに、防水床パンの床面端部側方の、戸枠の下枠部に設けるとともに、排水流入部からの排水を衛生設備室の排水部に排出する連絡排水管を設け、かつ、戸枠に設けられた出入り戸及びこの戸枠の、少なくともいずれか一方に、この出入り戸と戸枠との間の隙間を閉じる止水材を設けるとともに、出入り戸が閉じられた場合の衛生設備室の最も内方側にある止水材の位置より、戸枠の下枠部の隣室側にのみ、排水流入部を位置させていることである。
【0033】この発明では、請求項7記載の発明と同様な作用効果を得ることができる。また、この発明では、戸枠とこの戸枠に設けられる出入り戸との間の隙間が止水材によって塞がれるため、衛生設備室の床面上の排水が、戸枠の排水流入部に流入することはほとんどない。このため、戸枠の排水流入部内方が排水で汚れることはほとんどない。」、
「【0074】この発明の請求項1記載の発明によれば、出入口部周りの床面段差を小さくするために、この出入口部周りに排水流出防止用の排水溝を設けた場合でも、清掃時の負担を増大させることがないとともに、使用者に衛生設備室内を狭く感じさせてしまうこともない。
【0075】また、この発明によれば、防水床パンの形状に左右されることなく、自由な大きさの排水溝を形成できるとともに、排水溝中の排水が防水床パン側に排出されない構造となり、例えば、防水床パン側の排水口の目皿に詰まりが生じた場合でも、防水床パン上の排水をこの排水溝から衛生設備室外に速やかに排出できる。
【0076】さらに、この発明によれば、防水床パンが樹脂成形等によって一体的に形成される場合に、その成形型の種類を減らすことができ、この衛生設備室の低コスト化を図ることができる。また、これらの発明によれば、防水床パンを使用した既存の衛生設備室に対する出入口部周りの床面の段差をなくす改造も、容易にできるようになる。
【0077】この発明の請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様な効果を得ることができるとともに、排水溝にほとんど排水が流れ込まなくなり、この排水溝の清掃が不要になる分、使用者に清掃時の負担を増大させることもない。また、この発明では、戸枠の排水溝のサイズを小さくできる分、戸枠のサイズを従来の戸枠に近づけることができる。
【0078】この発明の請求項3記載の発明によれば、連絡排水管を設けることによる効果を除けば、請求項1記載の発明と同様な効果を得ることができるとともに、戸枠の取り付けの容易化をも図ることができる。
【0079】この発明の請求項4記載の発明によれば、排水溝中の排水の処理の容易化を図ることができる。
【0080】この発明の請求項5記載の発明によれば、戸枠の取り付けの容易化を図ることができる。
【0081】この発明の請求項6記載の発明によれば、排水溝等の清掃の容易化や排水溝上の歩行の容易化を図ることができる。
【0082】この発明の請求項7記載の発明によれば、出入口部周りの床面段差を小さくした場合でも、衛生設備室内に排水溝を設ける必要がなく、使用者に衛生設備室内を狭く感じさせることがない。
【0083】また、この発明によれば、排水溝中の排水が防水床パン側に排出されない構造となり、例えば、防水床パン側の排水口の目皿に詰まりが生じた場合でも、防水床パン上の排水をこの排水流入部から衛生設備室外に速やかに排出できる。
【0084】さらに、この発明によれば、防水床パンが樹脂成形等によって一体的に形成される場合に、その成形型の種類を減らすことができ、この衛生設備室の低コスト化を図ることができる。また、この発明によれば、防水床パンを使用した既存の衛生設備室に対する出入口部周りの床面の段差をなくす改造も、容易にできるようになる。さらに、この発明によれば、出入り戸によって、衛生設備室内の排水が、排水流入部に流れ込むのを抑えることができるので、排水流入部内方が排水で汚れるのを抑えることができる。
【0085】この発明の請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の発明と同様な効果を得ることができるとともに、排水流入部にほとんど排水が流れ込まなくなり、この排水流入部内方の清掃が不要になる分、使用者に清掃時の負担を増大させることもない。」。
3.上記1.の特許請求の範囲の訂正と整合させるため明りょうでない記載の釈明を目的とし、及び、誤記の訂正を目的として、特許明細書の【発明の詳細な説明】の欄の段落【0031】を次のとおりに訂正する。
「【0031】さらに、この発明では、戸枠の排水流入部に入った排水を、連絡排水管を介して、衛生設備室の既存の排水部(例えば、排水トラップ)に容易に排出できる。また、この発明では、出入り戸によって、衛生設備室内の排水が、隣室側、すなわち、排水流入部側へ流出するのを抑えることができるため、排水流入部に流れ込む排水の量を抑えることができ、排水流入部内方が排水で汚れるのを抑えることができる。」。
4.誤記の訂正を目的として、特許明細書の【発明の詳細な説明】の欄の段落【0016】を次のとおりに訂正する。
「【0016】さらに、この発明では、戸枠の排水溝に集められた排水を、連絡排水管を介して、衛生設備室の既存の排水部(例えば、排水トラップ)に容易に排出できる。」。
異議決定日 2002-09-10 
出願番号 特願平9-23107
審決分類 P 1 651・ 561- YA (E06B)
P 1 651・ 121- YA (E06B)
P 1 651・ 113- YA (E06B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 青山 敏
小山 清二
登録日 2000-03-03 
登録番号 特許第3039415号(P3039415)
権利者 東陶機器株式会社
発明の名称 衛生設備室の出入口構造  
代理人 小笠原 健治  
代理人 根本 恵司  
代理人 小笠原 健治  

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