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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1068971
異議申立番号 異議1998-72049  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-09-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-04-28 
確定日 2002-08-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第2670560号「プラズマ処理装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2670560号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許2,670,560号(平成5年8月20日出願、平成9年7月11日設定登録)は、異議申立人佐々木茂之により特許異議の申立てがなされ、その後、平成12年2月3日に「特許第2,670,560号の特許を取り消す。」との取消決定がなされたものである。
これに対し、本件特許の特許権者により、当該取消決定の取消を求める訴えの提起(平成12年(行ケ)第100号)がなされるとともに訂正審判の請求がなされ、その後、同訂正審判の請求の取り下げがなされるとともに新たに訂正審判の請求がなされたところ、平成13年3月5日に「訂正明細書のとおり訂正することを認める。」との訂正審決がなされ、さらに、平成13年4月23日に東京高等裁判所において、「平成12年2月3日にした決定を取り消す。」との判決の言渡しがなされたことにより、差し戻されたものである。

なお、二以上の発明を包含する原出願(特願昭61-186203号(昭和61年8月8日出願))の一部を新たな特許出願として出願したとする 本件特許に係る出願の、当該原出願の願書に最初に添付した明細書または図面には、上記訂正審判の訂正審決により確定した訂正明細書の請求項1に記載された、「高周波電力を、反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように放電の弱いまたは無い時が得られるように、振幅変調せしめる手段」については何も記載されておらず、しかも上記手段が原出願当時、自明の事項であったとも認められない。
したがって、本件特許に係る出願は、二以上の発明を包含する原出願の一部を新たな特許出願として出願したものとは認められないから、本件特許に係る出願の出願日を、上記のとおり現実の出願日として認定した。

[2]本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、上記訂正審判の訂正審決により確定した訂正明細書の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「1.減圧状態で被膜形成用基板を保持する反応空間と、
高周波電力を発生させる手段と、
前記高周波電力を、反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように放電の弱いまたは無い時が得られるように、振幅変調せしめる手段と、
前記反応空間における一対の電極間に前記振幅変調した高周波電力を供給する手段と、
から構成されたことを特徴とするプラズマ処理装置。」

なお、取消理由通知に対してなされた平成10年11月4日付け訂正請求、及び訂正拒絶理由通知に対してなされた平成11年7月12日付け手続補正については、上記のとおり、本件特許に係る訂正審判の訂正審決が確定したことにより、審理の対象は平成12年12月27日付け訂正明細書となるから、審理の対象ではなくなった。

[3]異議申立ての理由の概要
異議申立人佐々木茂之は、証拠として以下に示す甲第1号証を提出して、本件特許の請求項1に記載された発明は、特許法第29条第1項第3号または同条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張している。

甲第1号証:特開昭60-86831号公報

[4]甲第1号証の記載事項
上記甲第1号証の特開昭60-86831号公報には、成膜速度と膜質やエッチングレート、選択比とエッチング精度など相反するプラズマ処理特性を共に向上させる、半導体装置の製造に好適なプラズマ処理方法及びその装置に関する発明が、第1〜11図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。

「プラズマ処理は真空に排気した処理室に、処理ガスを導入し、処理室内に設けた平行平板電極に高周波電圧を印加してプラズマを発生させ、処理を行うものである。処理内容としては・・・プラズマにより処理ガスを分解し膜を形成するプラズマCVD・・・などである。」(1頁右下欄11行〜2頁左上欄1行)

「処理室10には処理用ガス供給口11、排気口12が設けてある。また処理室内には接地されたアース電極13と高周波電極14があり、高周波電極は絶縁ブッシュ15を介して処理室に固定し、周囲には処理室内壁との放電を防止するシールドケース16が設けてある。また、高周波電極14にはマッチングボックス18を介して高周波パワーアンプ19が接続してある。13.56MHZの標準信号発生器21の信号は、変調信号発生器22からの信号に従い、AM変調器20でAM変調され、高周波パワーアンプ19に供給される。
変調信号発生器22は、周期、振幅を変えた矩形波や正弦波など任意の波形を発生することができる。
変調信号発生器22でプラズマ処理対象に合わせた第3図や第7図に示す波形に変調する変調信号を発生し、13.56MHZの標準信号発生器21の信号を変調して高周波パワーアンプ19に入力する。
高周波パワーアンプ19からは第3図や第7図に示すような波形出力が出力され、マッチングボックス18を通って高周波電極14に印加される。AM変調の場合、周波数は同じであるため、13.56MHZ用のマッチングボックスでマッチングを取ることができる。以上によりプラズマ処理方法で述べた放電プラズマを発生し、プラズマ処理を行うことができる。
プラズマエッチングやプラズマCVDなどに用いるアノードカップリング形のプラズマ処理装置は本実施例のアース電極13と高周波電極14の位置を交換することで実現できる。」(4頁右上欄15行〜右下欄6行及び3、7、8図)

以上の記載をまとめると、甲第1号証には、真空に排気した処理室に処理用ガスを導入し、処理室内に設けた平行平板電極に高周波電圧を印加してプラズマを発生させ、そのプラズマにより処理用ガスを分解し、プラズマ処理対象の表面に被膜を形成するプラズマCVD装置において、処理用ガスを分解させる高周波電力を発生させる13.56MHZの標準信号発生器と、高周波電力を振幅変調せしめるAM変調器と、このAM変調器によって変調された高周波電力を増幅する高周波パワーアンプと、処理室に配設されると共に、振幅変調された高周波電力を供給する平行平板電極を構成するアース電極と高周波電極と、この平行平板電極によって振幅変調された高周波電力が平行な面内に供給されるようにプラズマ処理対象が配設されるように構成されているプラズマCVD処理装置が記載されているものと認める。

[5]対比・判断
本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載の「処理室」、「プラズマ処理対象」、「プラズマCVD、プラズマ処理装置」、「標準信号発生器」、「AM変調器」、「アース電極と高周波電極」は、それぞれ本件発明における「反応空間」、「被膜形成用基板」、「プラズマ処理装置」、「高周波電力を発生させる手段」、「振幅変調せしめる手段」、「一対の電極」に相当するものである。
してみると、本件発明と甲第1号証に記載された発明とは、「減圧状態で被膜形成用基板を保持する反応空間と、高周波電力を発生させる手段と、前記高周波電力を振幅変調せしめる手段と、前記反応空間における一対の電極間に前記振幅変調した高周波電力を供給する手段と、から構成されたプラズマ処理装置。」の点において一致するものの、振幅変調せしめる手段については、本件発明が「高周波電力を、反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように放電の弱いまたは無い時が得られるように」したものであるのに対し、甲第1号証に記載のAM変調器はそのようなものではない点で両者は相違する。
そこで、上記相違点について検討すると、放電の弱いまたは無い時が得られるように高周波電力を振幅変調せしめて、反応容器の内壁に発生するフレークが低減するように為すことは、本件特許の出願前周知の技術であるとはいえないから、甲第1号証に記載のAM変調器から本件発明の上記相違点を当業者が容易に想到することはできない。
そして、本件発明は、上記相違点の構成を採用することによって、「反応性気体のラジカルが存在する場合は、放電の有無の繰り返しとして振幅変調を行なってもよい。かくすると、変調がかけられた放電が弱いまたは無い時には、減圧CVDと同様の効果があり、たとえば凹凸のある基板表面であっても、その側面が上面と同じ厚さに形成されたり、あるいは反応容器の内壁に発生するフレークを低減する等」(訂正明細書【0012】)の顕著な効果を奏するものである。

したがって、本件発明は、甲第1号証に記載された発明ではないし、また甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

[5]むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない.
よって、平成6年法律第116号附則第14条の規定に基づく、平成7年政令第205号第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-02-03 
出願番号 特願平5-226681
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01L)
P 1 651・ 113- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 一正  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 市川 裕司
雨宮 弘治
大橋 賢一
中村 朝幸
登録日 1997-07-11 
登録番号 特許第2670560号(P2670560)
権利者 株式会社半導体エネルギー研究所
発明の名称 プラズマ処理装置  
代理人 加藤 恭介  

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