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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F15D
管理番号 1069920
審判番号 不服2000-6851  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-08 
確定日 2002-12-26 
事件の表示 平成10年特許願第264490号「流動抵抗低減方法」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 3月28日出願公開、特開2000- 87921]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年9月18日の出願(特許法第30条第1項の規定による新規性喪失例外適用。基準日平成10年5月29日)であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成11年7月14日(受付日)に提出された手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものであると認める。
「固体と液体との間の流動抵抗低減方法において、微細凹凸を固体の界面に施して表面エネルギを小さくし、該微細凹凸により固体の界面を超撥水面としてなることを特徴とする流動抵抗低減方法」

なお、請求項1の「微細凸凹」なる用語は、後出の「微細凹凸」なる用語及び発明の詳細な説明中の「微細凹凸」なる用語と整合していないので「微細凸凹」は「微細凹凸」の誤記と認め、さらに、請求項1には「小さし」と記載されているが、本願の発明の詳細な説明【0005】の「鏡面であると、固体の表面エネルギが増大し」なる記載及び請求項1の文脈からみて「小さし」は「小さくし」の誤記と認め、本願の請求項1に係る発明を上記のように認定した。

2.引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成5年6月15日に頒布された特開平5-147572号公報(以下、「引用例」という。)には次の事項が記載されている。
(1)「物体表面に微細毛状突起体を分布配置することを特徴とする流体摩擦抵抗を低減させる方法」(請求項1)
(2)「微細毛状突起体の材質としては、金属繊維、金属箔、絹や木綿等の天然繊維、ナイロンやテフロン等の合成高分子繊維や薄膜を用いることができる。また、これらの素材に、印象加工して、表面に微細溝列様の表面模様を作り出すこと、及び、部分的な剛性を付与することも有効である。」(発明の詳細な説明【0009】)
(3)「本願発明の方法は、広い流動条件で低減効果が保持され、低速流で層流を維持する効果も得られる。」(発明の詳細な説明【0013】)
これらの記載事項によると、引用例には、
「物体と流体との間の流体摩擦抵抗を低減させる方法において、微細毛状突起体を物体の表面に施して表面エネルギを小さくする流体摩擦抵抗を低減させる方法」なる発明(以下、「引用例に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、引用例に記載された発明の「物体」は本願発明の「固体」に相当し、以下同様に「流体」は「液体」に、「流体摩擦抵抗」は「流動抵抗」に、「微細毛状突起体」は「微細凹凸」に、「物体の表面」は「固体の界面」にそれぞれ相当すると認められる。
よって、両者は、「固体と液体との間の流動抵抗低減方法において、微細凹凸を固体の界面に施して表面エネルギを小さくしてなることを特徴とする流動抵抗低減方法」で一致し、
前者は微細凹凸により固体の界面を「超撥水面」としているのに対し、後者は微細凹凸により固体の界面を「超撥水面」としているか否かが判然としない点で相違する。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例に記載された発明は、流体摩擦抵抗を低減するために、微細凹凸を物体の表面に施して表面エネルギを小さくしていると認められるので、自ずと、物体の表面を鏡面とした場合のように濡れ性が増大したり、粗い凹凸を物体の表面に施した場合のように流体が凹所に隙間無く入り込むことがないものと認められる。その結果、引用例に記載された発明に係る物体の表面は、微細凹凸の凹所に空気がトラップされる作用を期待できるので、微細凹凸を施す以前と比べて、少なからず撥水性が増大していると認められる。
さて、本願発明の「超撥水面」なる用語であるが、この用語の意味は、「通常の撥水面よりも、撥水性が優れている面」であると認められる。
そして、通常の撥水面の基準を、微細凹凸を施す以前の物体の表面(例えば、引用例に記載された「テフロン」の、微細凹凸を設ける前の素材表面)に置き、これより撥水性が優れている面を「超撥水面」とすることについて、否定されるべき特段の理由は存在しない。
とすれば、微細凹凸を施す以前の固体表面を基準とした通常の撥水面と比較することで、引用例に記載された発明が、超撥水面を有すると認識することにより本願発明を案出することは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

なお、請求人は審判請求理由補充書において、本願発明は微細凹凸のみによって固体界面を超撥水面としている旨主張しているが、「のみ」の部分は、特許請求の範囲に記載されている事項ではないし、発明の詳細な説明【0006】の「PTFE(ポリテトラフルオロエチレン 登録商標テフロン)」という撥水性物質を使用する旨の記載とも矛盾するし、
疎水性表面における粗面の凹部に空気層がトラップされることで、接触角がより高い値になり撥水性が向上する、という技術常識
(例えば、森田 正道, 久保 元伸「最もよく水をはじく高分子材料は」高分子, 45, 566(1996)ダイキン工業(株)化学事業部
http://www.daikin.co.jp/chm/pro/sinsozai/unidyne/lit/lit-t/topics2/topics2.html
の「3.表面形態の制御」の記載参照)とも矛盾するから、この主張は採用できない。

また、本願発明の微細凹凸は弾性変形不可能な凹凸構造である旨主張しているが、特許請求の範囲には「弾性変形不可能な凹凸構造」という事項も、その旨の記載、例えば固体表面自体が凹凸構造となるものにあっては当該固体自体が弾性体ではないこと、別の物質を固体表面に付着させることにより凹凸構造を構成するものにあっては当該別の物質自体が弾性体ではないこと等の記載もないので、この主張も根拠がない。

5.むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-10-22 
結審通知日 2002-10-29 
審決日 2002-11-11 
出願番号 特願平10-264490
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F15D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸田 耕太郎佐藤 健人  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 町田 隆志
内田 博之
発明の名称 流動抵抗低減方法  
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