ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G09G 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 G09G |
---|---|
管理番号 | 1070542 |
異議申立番号 | 異議2002-72339 |
総通号数 | 38 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2001-04-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-09-25 |
確定日 | 2003-01-20 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3269501号「表示装置の表示オン制御方法及び駆動装置」の請求項1ないし11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3269501号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第3269501号の請求項1ないし11に係る発明についての出願は、平成2年6月18日にした特許出願(特願平2-159416号)の優先権を主張して平成3年(1991年)6月11日にした国際特許出願(特願平3-509945号)の一部を分割して平成12年1月17日にした特許出願(特願2000-10249号)の一部を再度分割して同年2月16日にした特許出願(特願2000-38816号)の一部を再々度分割して同年8月28日に特許出願したものであり、平成14年1月18日にその発明について特許権の設定登録がされ、同年3月25日にその特許公報が発行されたところ、同年9月25日にその請求項1ないし11に係る特許に対して栗原美穂子より特許異議の申立てがされたものである。 2 本件発明 本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明11」という。)は、その特許明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】電気光変換されて表示がなされる表示素子と、前記表示のための電源を生成する表示電源と、前記表示電源と前記表示素子との間に設けられた表示素子駆動手段と、前記表示素子駆動手段と前記表示電源とを連携制御する表示制御手段とを有する表示装置の表示オン制御方法であって、 前記表示制御手段の電源供給後、表示オンシーケンスの開始を指示する信号の入来を前記表示制御手段が受信処理する第1のステップと、 前記表示制御手段からの信号に基づいて、前記表示素子駆動手段が前記表示素子への印加電位を特定状態に設定し表示をブランクにする第2のステップと、 前記表示制御手段からの信号に基づいて、前記表示電源を動作させて表示のための電源を前記表示素子駆動手段に印加する第3のステップと、 前記表示制御手段からの信号に基づいて、前記表示素子駆動手段を表示データに基づいて動作させ前記表示素子を電気的に駆動する第4のステップと、 を有することを特徴とする表示装置の表示オン制御方法。 【請求項2】請求項1において、前記第3のステップの後、少なくとも第1の遅延時間を経た後に前記第4のステップに移行することを特徴とする表示装置の表示オン制御方法。 【請求項3】請求項1又は2において、前記第2のステップの後、少なくとも第2の遅延時間を経た後に前記第3のステップに移行することを特徴とする表示装置の表示オン制御方法。 【請求項4】請求項2において、前記第1の遅延時間が可変であることを特徴とする表示装置の表示オン制御方法。 【請求項5】請求項3において、前記第2の遅延時間が可変であることを特徴とする表示装置の表示オン制御方法。 【請求項6】請求項1乃至5いずれか一項において、前記表示素子は受光型表示体であることを特徴とする表示装置の表示オン制御方法。 【請求項7】請求項1乃至5いずれか一項において、前記表示素子は自発光型表示体であることを特徴とする表示装置の表示オン制御方法。」 【請求項8】請求項1乃至7いずれか一項の表示装置の表示オン制御方法を提供する駆動装置。 【請求項9】請求項8において、前記駆動装置は半導体集積回路であることを特徴とする駆動装置。 【請求項10】請求項9において、前記半導体集積回路はXドライバであることを特徴とする駆動装置。 【請求項11】請求項10において、前記Xドライバはソースドライバであることを特徴とする駆動装置。」 3 特許異議の申立ての理由の要点 (1)理由1 本件発明1は、甲第1号証(特開昭61-238026号公報)、甲第2号証(特開平1-209496号公報)及び甲第3号証(実願昭63-33722号(実開平1-139296号)のマイクロフィルム)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明2ないし7は、甲第1号証ないし甲第3号証及び甲第4号証(特開平2-16594号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明8ないし11は、甲第1号証ないし甲第4号証及び甲第5号証(特開平1-253798号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本件請求項1ないし11に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 (2)理由2 本件発明9については、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、駆動装置の一部を半導体集積回路とすることは記載されているが、その全体を半導体集積回路とすることは記載されておらず、本件発明9は発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 本件発明10については、同様に、本件特許明細書の発明の詳細な説明に駆動装置の全体を半導体集積回路とすることは記載されておらず、また、Xドライバである走査電極駆動回路によって本件請求項1ないし7いずれか1項の表示装置の表示オン制御方法を提供することができることも記載されておらず、本件発明10は発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 本件発明11については、本件特許明細書の発明の詳細な説明においては、本件特許に係る表示オン制御方法をもっぱらゲートドライバに適用すべきことを述べており、本件発明11は発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 したがって、本件請求項9ないし11に係る特許は、特許法36条5項1号の規定に違反してされたものである。 4 甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明 (1)甲第1号証 甲第1号証には、「表示などを行うための液晶素子2は、マトリクス上に複数の列電極l1、l2、・・・、liと、複数の列電極(注 「行電極」の誤記と認める。)a1、a2、・・・、ajとが相互に間隔をあけて対向して配置され、・・・列駆動回路1および行駆動回路3には・・・電圧V1〜V4をそれぞれ有するライン4、5、6、7が接続されるとともに、これらの列駆動回路1及び行駆動回路3を電力付勢するための電圧VDD、VSSがそれぞれ導出されるライン8、9が接続される。ライン8、9はまた、マイクロコンピュータなどによって実現される処理回路10に接続されており、これによって処理回路10が電力付勢される。処理回路10から列駆動回路1および行駆動回路3には表示すべき内容をあらわす直列データが導出される。」(2頁左上欄13行ないし右上欄12行)、「スイッチング回路16には・・・V1、V2、V3、V4を有する電圧がそれぞれ与えられる。」(2頁左下欄6行ないし11行)、「スイッチング回路16はラツチ回路14のストアセルC1〜Ciのストア内容に応答し、選択的に・・・アナログスイッチA11〜A14・・・Ai1〜Ai4を介する電力を導出する。」(2頁右下欄2行ないし6行)、「アナログスイッチ23、24、25、26は、電源50のライン8、9に電圧VDD、VSSが印加されて処理回路10およびシフトレジスタ12に正常に動作状態となって、直列データがライン11からシフトレジスタ12にストアされ、そのデータが、ラッチ回路14に正常にストアされてラッチされるまて遮断状態となっている。このようにして制御回路17によってライン4、5、6、7の電圧V1、V2、V3、V4がスイッチング回路16に与えられず、したがって、ラッチ回路14のストア内容にかかわらず列電極l1〜liに直流電圧が印加されることが防がれる。・・・本発明に従う制御手段17は・・・ラインl1〜liに直流電圧が印加されたままになることを防ぐ。」(2頁右下欄10行ないし3頁左上欄16行)、「注目すべきは、この実施例ではリセット回路28が設けられる。電源50が投入されるとき、・・・ライン33からラッチ回路14にリセット信号を与える。そのためストアセルC1〜Ciが一旦リセット状態となって列電極l1〜liと行電極m1〜mjとの間に電圧が印加されないストア内容となる。その後、・・・スイッチング回路16は列電極l1〜liにライン4、5、6、7からの電圧V1、V2、V3、V4をライン22からの交流化信号に基づいて交流化された信号を導出する。」(3頁右上欄2行ないし17行)との記載がされ、第1図〜第3図には、液晶素子2、電源50、列駆動回路1、行駆動回路3、処理回路10、制御回路17、リセット回路28が示されている。 (2)甲第2号証 甲第2号証には、「メインスイッチ・・・を投入すると、・・・ロジック用電圧VCC及び液晶表示用電圧VEEが出力される。・・・メインスイッチ・・・を投入した時は、・・・液晶表示用電圧VEEは液晶モジュール4に印加されず、表示はしないことになる。・・・マイクロコンピュータは、液晶コントローラ2をイニシャライズした後VRAM3をイニシャライズする。この後、・・・液晶モジュール4に液晶表示用電圧VEEが印加され、液晶モジュール4はイニシャライズされたVRAM・・・の内容を表示できる。」(2頁左上欄2行ないし末行)との記載がされている。 (3)甲第3号証 甲第3号証には、「電源スイッチを入れた後、・・・異常な高電圧が液晶パネルに印加されることがなく、液晶分子の配向を乱れたり、また信頼性に悪影響を及ぼすことがない。」(4頁15行ないし5頁2行)、「液晶表示装置1は、・・・信号線駆動IC2と、・・・走査線駆動IC3と、・・・液晶パネル4と、駆動電圧発生回路5及び電圧調整回路11を有する。・・・なお、駆動電圧発生回路5は、VDDおよびV0から液晶パネルを交流駆動するために必要な複数の電圧を作る。」(5頁18行ないし6頁15行)、「この回路は、電源スイッチ18投入後、ロジック電源12のVDDが入り、駆動IC2、3のデータラッチ、シフトレジスタ等が正常に動作を始めた後に液晶駆動用電源14のV0である21Vが、駆動電圧発生回路5に入るように、遅延回路のR、Cによる時定数を設定することにより1秒遅延させた。・・・電源投入時に、液晶パネル4に印加される直流電圧はほぼ0Vであり、電源投入時の画面の乱れはもとより、配向欠陥の発生は全く現われなかった。」(7頁1行ないし10行)との記載がされ、第1図には、信号線駆動IC2、走査線駆動IC3、液晶パネル4、液晶駆動用電源14が示されている。 (4)甲第4号証について 甲第4号証には、「本発明装置では、電源投入後の画像メモリ(13)に画像データが格納される期間を含む垂直同期信号の1周期の間は表示許可手段(18)によって画像表示が禁止され、その後画像表示が行なわれるため、無意味な画像の表示を防止できる。」(2頁左下欄2行ないし7行)、「この画像表示装置は・・・プラズマディスプレイパネルを用いたものである。・・・許可信号ENは・・・端子23より行ドライブ回路16に供給される。」(2頁左下欄10行ないし3頁左上欄18行)との記載がされ、第1図には、表示制御回路12、プラズマディスプレイパネル15、行ドライブ回路16、列ドライブ回路17、許可信号生成回路18が示されている。 (5)甲第5号証について 甲第5号証には、「本発明は、アクティブマトリックス型の液晶表示パネルの駆動回路に関するものである。」(1頁左下欄14行ないし15行)との記載がされている。 5 当審の判断 (1)理由1について 本件発明1と甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明は本件発明1の構成要件である「前記表示素子駆動手段と前記表示電源とを連携制御する表示制御手段」を有し、「前記表示制御手段の電源供給後、表示シーケンスの開始を指示する信号の入来を前記表示制御手段が受信処理する第1のステップ」及び「前記表示制御手段からの信号に基づいて、前記表示素子駆動手段が前記表示素子への印加電位を特定状態に設定し表示をブランクにする第2のステップ」を有する点等について記載がなく、「表示制御手段」が第1のステップで「表示シーケンスの開始を指示する信号」を受信処理し、この「表示制御手段からの信号」に基づいて第2ないし第4のステップを行うことが示されていない。 特許異議申立人は、「第1のステップ」については甲第2号証に本件発明1の「表示制御手段」に相当する「液晶コントローラ2」が表示シーケンスの開始を指示する信号の入来を受信処理することが記載されており、「第2のステップ」については甲第3号証に表示素子への印加電位を特定の状態に設定する技術が開示されていると主張する。しかしながら、甲第2号証には液晶コントローラ2が「表示素子駆動手段と・・・表示電源とを連携制御」する旨の記載はなく、液晶コントローラ2が「表示制御手段」に相当するということはできず、また、甲第2号証には液晶コントローラ2への信号が明確に示されておらず、「表示シーケンスの開始を指示する信号の入来を・・・受信処理する」点が開示されているということもできない。甲第3号証には「表示制御手段からの信号」に基づいて「表示素子駆動手段が前記表示素子への印加電位を特定状態に設定」する点が示されていない。 そして、本件発明1は上記の構成を備えることにより本件特許明細書記載の顕著な作用、効果を奏するものであり、本件発明1が甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 本件発明2ないし11は、いずれも本件発明1を直接又は間接に引用する発明であり、上記のように本件発明1について甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものということができないから、本件発明2ないし11についても同様に甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 よって、本件請求項1ないし11に係る特許が、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 (2)理由2について ア 本件請求項9について 本件特許明細書には、「信号電極駆動回路24は複数の信号電極ドライバ半導体集積回路241〜24mのカスケード接続として構成され、例えば信号電極の総数M本に対し画面1ライン分ずつドライバ出力を供給する。・・・走査電極駆動回路26は複数の走査電極ドライバ半導体集積回路261〜26nのカスケード接続として構成され、例えば走査電極総数N本のうち1本だけに選択電圧を、他の(N-1)本の走査電極に非選択電圧を付与するように動作する。」(段落【0003】)、「前記表示素子の制御方法を提供する表示素子の駆動装置は、半導体集積回路で構成してもよく、」(段落【0012】)との記載がされている。 これによれば、表示素子の駆動装置を半導体集積回路で構成することは本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているところである。 特許異議申立人は、駆動装置の全体を半導体集積回路とすることは発明の詳細な説明に記載されていないと主張するが、本件請求項9の記載は上記のとおりであり、駆動装置の全体が半導体集積回路と記載されているものではない。 よって、本件発明9が発明の詳細な説明に記載された発明ではないということはできないから、本件請求項9に係る特許が特許法36条5項1号の規定に違反してされたものであるとすることはできない。 イ 本件請求項10について 本件特許明細書には、「液晶表示モジュール部20は、例えば単純マトリクス型の液晶表示パネル(マトリクス液晶表示素子)22と、このパネル22の周辺(額縁)領域にTAB実装された信号電極駆動回路(Xドライバ)24及び走査電極駆動回路(Yドライバ)26と、高圧の液晶駆動電圧(基準電圧)V0〜V5を発生する液晶電源回路28とを有している。」(段落【0003】)、「前記表示素子の制御方法を提供する表示素子の駆動装置は、半導体集積回路で構成してもよく、前記半導体集積回路はXドライバであることを特徴とする。」(段落【0012】)との記載がされている。 これによれば、半導体集積回路をXドライバとすることは本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているところである。 特許異議申立人は、Xドライバである走査電極駆動回路によって本件請求項1ないし7いずれか1項の表示装置の表示オン制御方法を提供することができることは記載されていないと主張するが、本件請求項10の記載は、単に「前記半導体集積回路はXドライバである」とするものであり、「半導体集積回路」、「Xドライバ」について走査電極駆動回路等の特定の限定を付すものでもない。 よって、本件発明10が発明の詳細な説明に記載された発明ではないということはできないから、本件請求項10に係る特許が特許法36条5項1号の規定に違反してされたものであるとすることはできない。 ウ 本件請求項11について 本件特許明細書には、「Xドライバはソースドライバであることを特徴とする。」(段落【0012】)、「本発明は・・・アクティブ・マトリクス型液晶表示装置に対しても適用することができる。かかる場合には、ゲートドライバLSI側に信号管理制御部を作り込むことが好ましい。その場合、クロックの停止時においてはすべてのゲートがオンするようにゲートドライバLSIを制御し、データ側でコモン側と同電位を出力するようにソースドライバが制御され、総ての画素電界が無印加状態になるように設定される。」(段落【0045】)との記載がされている。 これによれば、Xドライバをソースドライバとすることは、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているところである。 特許異議申立人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明においては、本件特許に係る表示オン制御方法をもっぱらゲートドライバに適用すべきことを述べていると主張するが、本件請求項11の記載は上記のとおりであり、単に「Xドライバはソースドライバである」とするものであり、Xドライバ、ソースドライバについて制御態様等の特定の限定を付すものではない。 よって、本件発明11が発明の詳細な説明に記載された発明ではないということはできないから、本件請求項11に係る特許が特許法36条5項1号の規定に違反してされたものであるとすることはできない。 6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件発明1ないし11についての特許を取り消すことはできない。また、他に本件発明1ないし11についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2002-12-26 |
出願番号 | 特願2000-257942(P2000-257942) |
審決分類 |
P
1
651・
534-
Y
(G09G)
P 1 651・ 121- Y (G09G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 江成 克己 |
特許庁審判長 |
瀧 廣往 |
特許庁審判官 |
服部 和男 山川 雅也 |
登録日 | 2002-01-18 |
登録番号 | 特許第3269501号(P3269501) |
権利者 | セイコーエプソン株式会社 |
発明の名称 | 表示装置の表示オン制御方法及び駆動装置 |
代理人 | 上柳 雅誉 |
代理人 | 須澤 修 |