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審決分類 審判 全部無効 1項1号公知 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B28B
審判 全部無効 1項2号公然実施 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B28B
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B28B
管理番号 1071156
審判番号 無効2001-35217  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-01-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-05-17 
確定日 2002-11-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3171327号発明「L字型タイル形成用の連結紙貼着装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3171327号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
出願 平成10年6月10日
(特願平10-179627号:平成8年12月2日
に出願した特願平8-337529号の分割出願)
設定登録 平成13年3月23日
(特許第3171327号)
無効審判請求 平成13年5月17日
答弁書 平成13年8月10日
訂正請求書 平成13年8月10日
審尋(対被請求人) 平成14年1月28日付け
弁駁書 平成14年3月19日
審尋(対被請求人) 平成14年5月9日付け

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
(a)特許請求の範囲の
「【請求項1】 端縁の裏面に面取りの施された一対のタイルの面取りされた端縁同士を接着してL字型タイルを形成するのに先立ち、前記一対のタイルを前記端縁同士の間に隙間をあけて向き合わせて表面に連結紙を貼着する装置において、
前記一対のタイルを前記端縁と平行な方向に搬送する無端コンベアと、
該無端コンベアを支持する水平フレームに立設された縦フレームに取り付けられて前記無端コンベア上に吊り下げられされ、該無端コンベアの搬送方向に細長く、かつ、該無端コンベアの幅方向における厚さが前記隙間に一致するスペーサーと、
前記無端コンベアにより搬送される前記一対のタイルを前記スペーサーに押し付けることにより該一対のタイルに該スペーサーの厚さに対応する隙間を保たせる押圧部材と、
からなるL字型タイル形成用の連結紙貼着装置。」を、
「【請求項1】 端縁の裏面に面取りの施された一対のタイルの面取りされた端縁同士を接着してL字型タイルを形成するのに先立ち、前記一対のタイルを前記端縁同士の間に隙間をあけて向き合わせて表面に連結紙を貼着する装置において、
前記一対のタイルを前記端縁と平行な方向に搬送する無端コンベアと、
該無端コンベアを支持する水平フレームに立設された縦フレームに取り付けられて前記無端コンベア上に吊り下げられ、該無端コンベアの搬送方向に細長く、かつ、該無端コンベアの幅方向における厚さが前記隙間に一致するスペーサーと、
前記無端コンベアにより搬送される前記一対のタイルを前記スペーサーに押し付けることにより該一対のタイルに該スペーサーの厚さに対応する隙間を保たせる押圧部材と、
間欠的に搬送する前記無端コンベアにより前記隙間を保って次々に搬送されてくる前記一対のタイルにロールから繰り出された連結紙を前記隙間を跨ぐように押し付ける押圧ローラーと、
前記連結紙により搬送方向に連なるタイルを前記無端コンベアに押さえ付ける押さえ板と、
前記タイルが前記押さえ板により押さえ付けられた状態において前記連結紙を搬送方向と直角に切断するカッターと、
からなるL字型タイル形成用の連結紙貼着装置。」と訂正する。
(b)明細書の段落【0006】の
「このような課題を解決するための手段として、本発明は、一対のタイルを接合すべき端縁と平行な方向に搬送する無端コンベアと、その無端コンベアを支持する水平フレームに立設された縦フレームに取り付けられて無端コンベア上に吊り下げられ、その無端コンベアの搬送方向に細長く、かつ、その無端コンベアの幅方向における厚さが一対のタイルの端縁同士の隙間に一致するスペーサーと、無端コンベアにより搬送される一対のタイルをスペーサーに押し付けることによりその一対のタイルにそのスペーサーの厚さに対応する隙間を保たせる押圧部材と、からなる構成としたから、連続的に一対のタイルの連結を行うことができて、作業能率が著しく向上する効果がある。」を、
「このような課題を解決するための手段として、本発明は、一対のタイルを接合すべき端縁と平行な方向に搬送する無端コンベアと、その無端コンベアを支持する水平フレームに立設された縦フレームに取り付けられて無端コンベア上に吊り下げられ、その無端コンベアの搬送方向に細長く、かつ、その無端コンベアの幅方向における厚さが一対のタイルの端縁同士の隙間に一致するスペーサーと、無端コンベアにより搬送される一対のタイルをスペーサーに押し付けることによりその一対のタイルにそのスペーサーの厚さに対応する隙間を保たせる押圧部材と、間欠的に搬送する無端コンベアにより隙間を保って次々に搬送されてくる一対のタイルにロールから繰り出された連結紙を隙間を跨ぐように押し付ける押圧ローラーと、連結紙により搬送方向に連なるタイルを無端コンベアに押さえ付ける押さえ板と、タイルが押さえ板により押さえ付けられた状態において連結紙を搬送方向と直角に切断する切断するカッターと、からなる構成としたから、連続的に一対のタイルの連結を行うことができて、作業能率が著しく向上する効果がある。」と訂正する。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記(a)の訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載されたL字型タイル形成用の連結紙貼着装置を特定する事項として、「間欠的に搬送する前記無端コンベアにより前記隙間を保って次々に搬送されてくる前記一対のタイルにロールから繰り出された連結紙を前記隙間を跨ぐように押し付ける押圧ローラーと、前記連結紙により搬送方向に連なるタイルを前記無端コンベアに押さえ付ける押さえ板と、前記タイルが前記押さえ板により押さえ付けられた状態において前記連結紙を搬送方向と直角に切断するカッターと、」を付加すると共に、明らかな誤記である「吊り下げられされ、」を「吊り下げられ、」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものである。そして、付加された事項は、明細書段落【0007】の「タイルaが前後の仕切り板7の間に余裕をもって載置されて矢印の方向に間欠的に搬送される無端コンベア8が構成されている。」との記載、明細書段落【0024】の「一定の間隙cを空けて整列された2枚のタイルaは無端コンベア8により前方へ搬送されつつロールeから繰り出された連結紙dが押圧ローラー51により押し付けられ、ブラシ53でこすり付けられた後、押さえ板54で押さえ付けられた状態でカッター57により切断される。」との記載、及び、図面の図6,7の記載に基づくものであるから、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
上記(b)の訂正は、上記(a)の訂正により特許請求の範囲が減縮されることに伴い、これに整合するように発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、しかも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
2-3.訂正の適否についての結論
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条第2項及び同条第5項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
上記2.で述べたとおり訂正が認められるから、本件請求項1に係る発明は、平成13年8月10日付けで提出された訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(上記「2-1.訂正の内容」参照、以下、「本件発明」という)。

4.当事者の主張及び証拠方法
4-1.請求人の主張
請求人は、本件発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり(無効理由1)、また、本件発明は、日本国内において公然知られ又は公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当し、特許を受けることができないものであるから(無効理由2)、本件発明の特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである旨を主張し、証拠方法として甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証の1〜5、甲第4号証、甲第5号証の1、2を提出している。
4-2.被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、本件発明は、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないし、また、日本国内において公然知られ又は公然実施された発明でもない旨を主張している。
4-3.証拠方法
甲第1号証:特開平7-195343号公報
甲第2号証:実願平5-71199号(実開平7-34134号)のCD-ROM
甲第3号証の1:坂本製作所(岐阜県土岐市肥田町浅野809-1)の「全自動テープ張り機プレスト-1」に関するカタログ謄本
甲第3号証の2:平成13年4月3日に請求人代理人が撮影した写真
甲第3号証の3:坂本製作所が製造、販売した「全自動テープ張り機プレスト-1」をリース物件とする、賃貸人十六リース(株)と賃借人ユニセラム佐藤修とのリース契約書謄本
甲第3号証の4:別紙写真の装置が坂本製作所製造の「プレスト-1」であり、十六リース(株)のリース物件に相違ないこと等の事項を証明する旨がユニセラム佐藤修の記名、押印と共に記載された請求人作成の証明願
甲第3号証の5:十六リース(株)のユニセラム佐藤修宛のリース料の領収書謄本
甲第4号証 :特開平2-198803号公報
甲第5号証の1:平成13年4月3日に請求人代理人が撮影した写真
甲第5号証の2:平成13年3月に請求人代表者が撮影した写真

5.無効理由1について
5-1.請求人の主張の概要
本件発明は、甲第1号証記載の役物用タイル片の自動接着装置における当接部を甲第2号証記載の突き当て板に単に置き換えた程度のものであるか、又は、甲第2号証記載のL字型タイル形成用の連結紙貼着装置に甲第1号証記載の発明を適用して完全自動化した程度のものであり、また、訂正により追加された技術的事項は、甲第4号証に記載されているから、本件発明は、甲第1,2,4号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5-2.被請求人の主張の概要
訂正により追加された本件発明の特定事項は、甲第1、2号証に全く記載されていない。しかも、本件発明は、甲第1号証記載の役物用タイル片の自動接着装置における当接部を甲第2号証記載の突き当て板に置き換えたものではないし、また、甲第2号証記載の発明に甲第1号証記載の発明を適用することは考えられない。
5-3.甲第1、2、4号証記載の発明
甲第1号証には、役物用タイル片の自動接着装置に関して、
「【請求項1】 一対の役物用タイル片をそれらの接着側端縁を互いに突合せ状態に連結テープによりつないだ上、一方のタイル片の斜めにカットされた形態の接着面に接着剤を塗布する役物用タイル片の自動接着装置であって
(イ)前記一対のタイル片を、それらの接着側端縁を向き合せる状態に載置するタイル片載置台と
(ロ)該タイル片の搬送路に沿って複数の前記タイル片載置台を搬送する第一コンベヤと
(ハ)該搬送路の途中に設けられ、該タイル片載置台上の一対のタイル片を該タイル片載置台上で水平2軸方向に微動させてそれらの各接着側端縁が互いに当接し且つ所定の水平方向位置に位置するようにそれらタイル片を位置決めする第一位置決装置と
(ニ)一方の面が接着面とされた連結テープを反対側の面において吸着ヘッドにより吸着し且つ該吸着ヘッドを移動させることによって、該連結テープを前記位置決装置により位置決めされた状態の一対のタイル片の表面に且つ各タイル片にまたがるようにして載置する連結テープ載置装置と
(ホ)前記搬送路における前記位置決装置及び連結テープ載置装置による位置決工程及び連結テープ載置工程の下流部位において、第一圧着ローラを前記連結テープに押圧するとともにその表面に沿って移動させ、該連結テープを一対のタイル片の表面に圧着する第一圧着装置と
(ヘ)該連結テープにて連結された一対のタイル片を吸着して持ち上げた上反転させ、裏面を上向きとして第二コンベヤ上に載置する反転装置と
(ト)該反転工程の下流部位に設けられ、該第二コンベヤにて搬送されてきた一対のタイル片を接着剤塗布のための塗布位置に位置決めする第二位置決装置と
(チ)接着剤の注出ノズルを前記位置決状態の一対のタイル片の一方の接着面に向かって前進させた上、該接着面に沿って移動させ、以て該接着面に接着剤を塗布した後、該注出ノズルを後退させる接着剤塗布装置とを含むことを特徴とする役物用タイル片の自動接着装置。
【請求項2】 前記反転装置による反転工程の前又は後において、第二圧着ローラを前記連結テープ上に押圧してこれを前記第一圧着ローラの移動方向と直角方向に移動させる第二圧着装置を設け、該連結テープのタイル片への圧着を2段階で行うように成したことを特徴とする請求項1に記載の役物用タイル片の自動接着装置。
【請求項3】 前記一対のタイル片が前記接着側端縁と直角方向に延びる溝を裏面に有しているとともに、前記タイル片載置台に該溝内に入り込む突条と前記斜めにカットされた形態の接着面に当接する当接部とが突出状に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の役物用タイル片の自動接着装置。」(特許請求の範囲:摘示1-A)、
「図1において10,12は役物タイルを構成するための長短一対のタイル片であって、・・・タイル片10,12には、全幅に亘って45°にカットされた形態の接着面16が予め形成されている。」(【0023】:摘示1-B)、
「一対のタイル片10,12を90°に接着して成る役物タイル22が得られる。」(【0026】:摘示1-C)、
「図4に前記チェーンコンベヤ24の要部及びタイル片載置台26の構成が示してある。同図において52はタイル片載置台26のベースであって、長手方向両端部が一対のチェーン28に固定されている。
このタイル片載置台26のベース52上には、タイル片10,12の溝14に所定の隙間を介して嵌合する突条54が形成されており、更にタイル片10,12の接着面16に当接する断面山形状の当接部56が形成されている。この山形状を成す当接部56の一対の傾斜面は、接着面16に対応する傾斜角度とされている。」(段落【0033】〜【0034】:摘示1-D)、
「位置決装置30は、タイル片10,12を幅方向と直角方向、即ちその長手方向に位置決めする機構も有している。図6はこのための装置構成を示したもので、図示のようにタイル片10,12の長手方向の位置決機構は、タイル片10,12の長手方向に対向する状態で設けられた一対のシリンダ70,72と、各シリンダ70,72に設けられた押圧部74,76とを有している。
これら押圧部74,76は、各タイル片10,12を長手方向に押圧して各タイル片10,12の接着面16をタイル片載置台26の当接部56に当接させ、以てタイル片10,12の長手方向の位置決作用を行う。
このときタイル片10,12の突合せ部が自由状態にあると、押圧部74,76による押圧力によって突合せ部が上方に浮上がる不具合を生じる。このため本装置では、タイル片10,12を下向きに押えるための押え装置75が設けられている。
この押え装置75は、押えシリンダ77と、これに連結されたアーム78と、その先端に設けられた押えローラ80とを有しており、この押えローラ80がタイル片10,12の表面に接触して下向きの押圧力を各タイル片10,12に及ぼす。
図8,図9に連結テープ18の載置装置36の構成が示してある。先ず図8において32は連結テープ18の供給装置で、この供給装置32は、長尺の連結テープ18を巻いたロール82から連結テープ18を取り出してカッターにより一定寸法に切断し、吸着ヘッド34にこれを供給する。
連結テープ載置装置36は、図9にも示しているようにこの吸着ヘッド34とこれを昇降運動させる昇降シリンダ84と、それらを水平方向に移動させるロッドレスシリンダ86とを含んでおり、吸着ヘッド34により連結テープ18を、接着面を下向きにして吸着した上、これを移動させ、タイル片載置台26上のタイル片10,12の表面に載置する。」(段落【0037】〜【0042】:摘示1-E)、
「この第一圧着装置38においては、昇降シリンダ92によって枠体90が下降させられ、押え爪88が一対のタイル片10,12を下向きに押圧する。そしてその状態で第一圧着ローラ98が押圧シリンダ99によってタイル片10,12の上に載置された連結テープ18上に押圧され、更にシリンダ100によって第一圧着ローラ98がタイル片10,12の長手方向に往復運動させられる。これにより連結テープ18がタイル片10,12の表面に貼着され、以て一対のタイル片10,12が連結テープ18を介して連結された状態となる。」(段落【0045】:摘示1-F)と記載され、また、図8、9の記載からみて、ロール82から取り出された連結テープ18は、タイル片の搬送方向と直角に切断されることが読み取れる(摘示1-G)。そして、これらの記載からみて、甲第1号証には、
「全幅に亘って45°にカットされた形態の接着面が予め形成されている長短一対の役物用タイル片であって、90°に接着することにより役物タイルとなる一対の役物用タイル片をそれらの接着側端縁を互いに突合せ状態に連結テープによりつないだ上、一方のタイル片の斜めにカットされた形態の接着面に接着剤を塗布する役物用タイル片の自動接着装置であって
(イ)前記一対のタイル片を、それらの接着側端縁を向き合せる状態に載置し、タイル片の接着面に当接する断面山形状の当接部が形成されたタイル片載置台と
(ロ)該タイル片の搬送路に沿って複数の前記タイル片載置台を搬送する第一コンベヤとしてのチェーンコンベヤと
(ハ)該搬送路の途中に設けられ、タイル片の長手方向に対向する状態で設けられた一対の押圧部を有するシリンダを含み、該タイル片載置台上の一対のタイル片を該タイル片載置台上で水平2軸方向に微動させてタイル片の接着面をタイル片載置台の当接部に当接させると共に、それらの各接着側端縁が互いに当接し且つ所定の水平方向位置に位置するようにそれらタイル片を位置決めする第一位置決装置と
(ニ)一方の面が接着面とされた連結テープをロールから取り出してカッターによりタイル片の搬送方向と直角にかつ一定寸法に切断し、反対側の面において吸着ヘッドにより吸着し且つ該吸着ヘッドを移動させることによって、該連結テープを前記位置決装置により位置決めされた状態の一対のタイル片の表面に且つ各タイル片にまたがるようにして載置する連結テープ載置装置と
(ホ)前記搬送路における前記位置決装置及び連結テープ載置装置による位置決工程及び連結テープ載置工程の下流部位において、第一圧着ローラを前記連結テープに押圧するとともにその表面に沿って移動させ、該連結テープを一対のタイル片の表面に圧着する第一圧着装置と
(ヘ)該連結テープにて連結された一対のタイル片を吸着して持ち上げた上反転させ、裏面を上向きとして第二コンベヤ上に載置する反転装置と
(ト)該反転工程の下流部位に設けられ、該第二コンベヤにて搬送されてきた一対のタイル片を接着剤塗布のための塗布位置に位置決めする第二位置決装置と
(チ)接着剤の注出ノズルを前記位置決状態の一対のタイル片の一方の接着面に向かって前進させた上、該接着面に沿って移動させ、以て該接着面に接着剤を塗布した後、該注出ノズルを後退させる接着剤塗布装置とを含むことを特徴とする役物用タイル片の自動接着装置。」の発明が記載されていると認められる。
甲第2号証には、L字型タイル形成用の連結紙貼着装置に関して、
「【請求項1】 一対のタイルの面取りされた端縁同士を接着してL字型タイルを形成するのに先立ち、両タイルを一定の位置関係で保持するのに両端縁の裏面にわたって連結紙を予め貼るための連結紙貼着装置であって、
略水平な面上においてガイドに沿って往復移動可能に装置されるとともに、その移動方向と直角方向の中央部に逃がし溝を設けてその両側にタイルの載置面を設けたテーブルと、
該テーブルが往動の始端側にある場合において該テーブルの前記逃がし溝を通って前記タイルの載置面の上に突出し、両側の載置面に載置された一対のタイルの面取りされた端縁を両面に突き当てる一定の厚さを有する突き当て板と、
一面に粘着面を設けて一定長さずつ供給される連結紙の他面を真空吸引力により先端側から巻き取るように吸引するローラと、
該ローラを回転自由に軸支するとともに、該ローラが、往動開始前の前記テーブル上に載置された一対のタイルの往動方向の前端側に対応する位置において、前記テーブルの前記逃がし溝を通って前記一対のタイルの突き合わせ端縁の裏面に押し付けられる貼付位置と、下方の待機位置との間での移動し得るようにそれ自身が移動可能に支持された支持部材と、
該支持部材を常には前記ローラが前記待機位置に位置するように移動付勢する付勢部材と、
前記テーブルの往動時に前記支持部材と係合して該支持部材を前記ローラが前記貼付位置に位置するように前記付勢力に抗して移動させる作動部材と、
を設けたことを特徴とするL字型タイル形成用の連結紙貼着装置。
【請求項2】 前記テーブルの往動方向の前記ローラの前方に、該テーブルの前記逃がし溝を通って前記一対のタイルの突き合わせ端縁の裏面に触転する回転ブラシを設けたことを特徴とする請求項1記載のL字型タイル形成用の連結紙貼着装置。」(実用新案登録請求の範囲:2-A)、
「図1、2において、符号1は、上面開放の箱型をなす本体であって、・・・テーブル3が前後方向の往復移動可能に嵌装されている。
そのテーブル3は、左右方向の中央部に一定幅の逃がし溝4が形成され、その前後両端が門型の連結部5で連結されて一体化された形状となっており、逃がし溝4の左右両側がそれぞれタイルaの載置面6となっている。また、テーブル3の後端にはタイルaの側面を当てて位置決めする位置決め板7が突設されている。
本体1の後面板1aには、上記したテーブル3の逃がし溝4内に後方から水平に進入可能なブラケット9が取り付けられ、そのブラケット9の上面に、タイルaの幅に略等しい長さで一定の厚みを有する突き当て板10が、載置面6の上方に突出して立設されている。」(段落【0015】〜【0017】:摘示2-B)、
「上記のローラ21の下方位置には連結紙cの供給装置27が設置されている。この供給装置27は公知のものであって、一面側を粘着面とした一定幅の連続した連結紙cがロール状に巻回されて供給軸28上に嵌装され、先端側の非粘着面がローラ21の外周に吸引されたのちそのローラ21の回転に伴って一定寸法繰り出されるとカッタにより切断されるようになっている。この連結紙cの切断長は、連結するタイルaの幅に合わせて調整できるようになっている。」(段落【0022】:摘示2-C)、
「端縁を45°で面取りした一対のタイルaを、その斜面bを上側に向け、また、面取りした端縁を向き合わせた姿勢で左右の載置板6上に載せ、後方に引き寄せてテーブル3の位置決め板7に側面を当てて真直姿勢に直しつつその位置決め板7に沿って滑らせて、面取りされた端縁を、逃がし溝4から突出している突き当て板10の両面に突き当てる。それにより、両タイルaはその突き合わせ端縁の間に突き当て板10の厚さに相当する一定の隙間を設けて配置される。
その間、ローラ21は、連結紙cの先端部の非粘着面を吸引した状態で待機位置で待機している。
続いてテーブル3をガイド2に沿って前方に移動させると、少し前進したところでテーブル3に設けた作動板33の屈曲部33aがレバー15の被押圧部30のカム面31に当たってそれを押すことにより、レバー15が図3に示すように引っ張りばね25の弾力に抗して反時計方向に揺動し、作動板33が被押圧部30の上に乗り上げたところで最大角度揺動して、ローラ21が連結紙cを吸引したまま逃がし溝4を通って貼付位置に移動する。そのとき、ローラ21の上方にはテーブル3に設けられた補助板12の下端が対応していて、連結紙cの先端の粘着面が補助板12の下端に押し付けられて貼り付けられる。
引き続きテーブル3を前進させると、作動板33の水平な延出部33bが引き続きレバー15の被押圧部30の上に乗り上げることによってローラ21が継続して貼付位置に位置し、ローラ21の上面側が両タイルaの突き合わせ端縁の裏面にわたって押し付けられつつ転動し、連結紙cがローラ21に巻き込まれるようにして繰り出されながら、図5に示すように、両タイルaの突き合わされた端縁の間にわたって後方側に向かい順次に貼り付けられる。その間に、連結紙cがタイルaの幅よりも一定寸法長い切断長分だけ繰り出されたところで切断される。
そののち、タイルaがローラ21の位置を通過したところで連結紙cの貼り付けが終わる。そのとき、連結紙cの後端側がタイルaの移動方向の後端から一定寸法突出して残される。その突出した連結紙cは、図6に示すように、その上面側からテーブル3に設けた吸引管40で吸引される。作動板33がレバー15の被押圧部30から外れたところで、レバー15は一旦元位置に揺動する。
さらに、テーブル3を前進させると、図6に示すように、タイルaに貼られた連結紙cが回転している回転ブラシ35の上方を通過し、ブラシ35で擦られてさらに強固に貼り付けられる。」(段落【0027】〜【0031】:摘示2-D)、
「上記実施例では、タイルaのテーブル3上への載置、テーブル3の移動及びタイルaの抜き取りを手作業で行う場合を例示したが、これらを機械的に行って完全自動化を図るようにしても良い。」(段落【0035】:摘示2-E)と記載され、また、図1,2,7の記載からみて、繰り出された連結紙は、タイルの搬送方向に直角に切断されることが読み取れる(摘示2-F)。そして、これらの記載からみて、甲第2号証には、
「一対のタイルの面取りされた端縁同士を接着してL字型タイルを形成するのに先立ち、両タイルを一定の位置関係で保持するのに両端縁の裏面にわたって連結紙を予め貼るための連結紙貼着装置であって、
上面開放の箱型をなす本体に嵌装され、略水平な面上においてガイドに沿って往復移動可能に装置されるとともに、その移動方向と直角方向の中央部に逃がし溝を設けてその両側にタイルの載置面を設けたテーブルと、
該テーブルが往動の始端側にある場合において該テーブルの前記逃がし溝を通って前記タイルの載置面の上に突出し、両側の載置面に載置された一対のタイルの面取りされた端縁を両面に突き当てることにより、両タイルの突き合わせ端縁の間に突き当て板の厚さに相当する一定の隙間を形成する、タイルの幅に略等しい長さで一定の厚さを有する突き当て板と、
一面に粘着面を設け、ロール状に巻回された連結紙から一定長さずつ繰り出されタイルの搬送方向に直角にカッタにより切断されて供給される連結紙の他面を真空吸引力により先端側から巻き取るように吸引するローラと、
該ローラを回転自由に軸支するとともに、該ローラが、往動開始前の前記テーブル上に載置された一対のタイルの往動方向の前端側に対応する位置において、前記テーブルの前記逃がし溝を通って、突き合わせ端縁の間に突き当て板の厚さに相当する一定の隙間が形成された前記一対のタイルの突き合わせ端縁の裏面に押し付けられる貼付位置と、下方の待機位置との間での移動し得るようにそれ自身が移動可能に支持された支持部材と、
該支持部材を常には前記ローラが前記待機位置に位置するように移動付勢する付勢部材と、
前記テーブルの往動時に前記支持部材と係合して該支持部材を前記ローラが前記貼付位置に位置するように前記付勢力に抗して移動させる作動部材と、
を設けたことを特徴とするL字型タイル形成用の連結紙貼着装置。」の発明が記載されていると認められる。
甲第4号証には、タイル配列ユニット板の成形装置に関して、
「配列すべきタイル群の行と列に整列され、かつ、タイルの下半部分を個別に受け入れる凹所を表面に有するタイルトレイを、進行方向に配列した間欠作動のコンベアーからなると共に、各停止位置を加工ステーションとなして
・タイル移載機構を有して、ワークボックスから一群のタイルを該タイルトレイに供給する供給ステーション、
・バイブレーター部を有して該タイルトレイに振動を付与し、該タイルトレイの凹所にタイルを収納する収納ステーション、
・方向規制機構を有し、該凹所内のタイルの収納姿勢を整えて目地幅を設定するタイル整列ステーション、
・目地枠マガジン機構と目地枠押え機構を有し、該タイルトレイのタイル群に目地枠を供給挿着する目地枠供給挿着ステーション、
・フィルム供給部と貼着ローラーを有し、通過する該タイルトレイのタイル群の上面に粘着フィルムを貼着するフィルム貼着ステーション、
以上で構成され、前記供給ステーションでタイルトレイに供給されたタイル群に目地幅を設定した後、目地枠を供給挿着して粘着フィルムを貼着し、タイル配列ユニット板を順次連続的に成形する構造を特徴とするタイル配列ユニット板の成形装置。」(特許請求の範囲第1項:摘示4-A)、
「つぎに、フィルム貼着ステーション105は、第6図参照、支柱41の上部に粘着フィルムロール40を保持するフィルムロール供給部42と、支柱41の中間に設けられて強制スイングするスイングアームロール43と、コンベアー6のトレイ5の上方に横設されて通過するトレイ5のタイル群に粘着フィルム3を押付け貼着する貼着ローラー44と、貼着ローラー44の後方に設けられコンベアー6の横断方向に作動する切断刃45を有するフィルム切断機構からなっている。そしてスイングアームロール43は、粘着フィルム3の非接着面にロールを接すると共に、図示矢印Aの強制前進スイングと、図示矢印Bの弾性後退スイングする構造になっており、その強制前進スイングによって相互接着している粘着フィルムロール40の粘着フィルム3を剥がして引き伸ばし、その伸ばされた粘着フィルム3を貼着ローラー44を押付けながら、通過移動するトレイ5のタイル群の上面に順次貼着し、最終位置において切断刃45が作動し、トレイ5の縁から貼着フィルム3を切断分離するようになっている。」(第4頁右下欄第19行〜第5頁左上欄第19行:摘示4-B)と記載され、また、第6図(A),(B)から、コンベアー6により搬送されている複数のタイル群の隣接するものが相互に連なるようにタイル群に貼着された粘着フィルムを、最終位置において切断刃45で搬送方向と直角に切断することが読み取れる(摘示4-C)。

5-4.当審の判断
(i)本件発明(前者)と甲第1号証記載の発明(後者)とを対比する。
後者における「全幅に亘って45°にカットされた形態の接着面が予め形成されている長短一対の役物用タイル片」は、前者における「端縁の裏面に面取りの施された一対のタイル」に、後者における「役物タイル」は、長短一対の役物用タイル片を90°に接着してなるものであるから、前者における「L字型タイル」に、後者における「第一コンベヤとしてのチェーンコンベヤ」は、前者における「無端コンベア」に、後者における「第一圧着ローラ」は、前者における「押圧ローラー」に、後者における「押圧部を有するシリンダ」は、前者における「押圧部材」に、後者における「接着装置」は、前者における「貼着装置」に、それぞれ相当する。また、タイルを連結するのにテープ状の紙を用いることは通常のことであるから、後者における「連結テープ」は、前者における「連結紙」に相当する(以下、後者の用語の代わりに、それに相当する前者の用語を用いることがある。)。さらに、前者における「スペーサー」は、一対のタイルの接着される端縁が押し付けられることにより、一対のタイル間にスペーサーの厚さに対応する隙間を形成するためのものであり(段落【0006】参照)、また、後者における「断面山形状の当接部」は、一対のタイルの接着面が当接させられて一対のタイルの長手方向の位置決作用を行うものであるから(摘示1-E参照)、前者における「スペーサー」と後者における「断面山形状の当接部」は、どちらも、一対のタイルの端縁同士の位置決めを行うための手段ということができる。そうすると、両者は、「端縁の裏面に面取りの施された一対のタイルの面取りされた端縁同士を接着してL字型タイルを形成するのに先立ち、前記一対のタイルを前記端縁同士を位置決めし向き合わせて表面に連結紙を貼着する装置において、前記一対のタイルを前記端縁と平行な方向に搬送する無端コンベアと、前記一対のタイルの前記端縁同士の位置決めを行うための手段と、前記無端コンベアにより搬送される前記一対のタイルを前記位置決めを行うための手段に押し付けることにより該一対のタイルの端縁同士が位置決めされた状態に保たせる押圧部材と、間欠的に搬送する前記無端コンベアにより端縁同士が位置決めされた状態を保って次々に搬送されてくる前記一対のタイルにロールから繰り出された連結紙を一対のタイル間を跨ぐように押し付ける押圧ローラーと、前記連結紙を搬送方向と直角に切断するカッターと、を含むL字型タイル形成用の連結紙貼着装置。」である点で一致するが、次の点で相違する。
(1)連結紙を搬送方向と直角に切断するカッターが、本件発明においては、連結紙により搬送方向に連なるタイルを押さえ板により無端コンベアに押さえ付けた状態において切断するものであるのに対し、甲第1号証記載の発明においては、連結紙がロールから取り出された状態において一定寸法に切断するものである点。
(2)一対のタイルの端縁同士の位置決めを行うための手段が、本件発明においては、無端コンベアを支持する水平フレームに立設された縦フレームに取り付けられて前記無端コンベア上に吊り下げられ、該無端コンベアの搬送方向に細長く、かつ、該無端コンベアの幅方向における厚さが、表面に連結紙を貼着する際の一対のタイルの端縁同士の間の隙間に一致するスペーサーであるのに対し、甲第1号証記載の発明においては、無端コンベアのタイル片載置台のベース上に形成された断面山形状の当接部である点。
以下、これらの相違点について検討する。
相違点(1)について
ロールから繰り出された接着テープ等を貼着する際に、ロールから繰り出された接着テープを所定寸法に切断した後、貼着すること、及び、接着テープを貼着した後、接着テープの貼着された部分をロールの接着テープから切断することの両方とも、本件特許の出願前において周知ないし慣用のことである(後者の切断に関し、摘示4-B、4-C参照)。また、物体に貼着された接着テープを切断する際に、切断しやすいように物体を押さえておくようなことも、本件特許の出願前において周知ないし慣用のことといえる。してみれば、甲第1号証記載の発明において、連結紙がロールから取り出された状態において一定寸法に切断するカッターを設ける代わりに、連結紙貼着後、無端コンベア上にあって連結紙により搬送方向に連なるタイルを押さえ板により無端コンベアに押さえ付けた状態において切断するカッターを設けることは、当業者が容易に想到し得たものといえる。
相違点(2)について
甲第2号証には、L字型タイル形成用の連結紙貼着装置において、タイルの搬送方向に細長く、かつ、該搬送方向と直角方向における厚さが表面に連結紙を貼着する際の一対のタイルの端縁同士の間の隙間に一致する突き当て板を設ける旨が記載され、該突き当て板は、本件発明における「スペーサー」に相当するものといえる。しかしながら、その設置のための構造については、タイルの搬送手段として、移動方向と直角方向の中央部に逃がし溝を設けてその両側にタイルの載置面を設けた往復移動可能なテーブルを前提とし、該テーブルが往動の始端側にある場合において該テーブルの前記逃がし溝を通って前記タイルの載置面の上に突出するように設けることが記載されているだけで、甲第1号証記載の発明における「断面山形状の当接部」のように、無端ベルトと共に移動するものではないから、甲第1号証記載の発明において、甲第2号証記載の発明を適用し、「断面山形状の当接部」の代わりに「タイルの搬送方向に細長く、かつ、該搬送方向と直角方向における厚さが表面に連結紙を貼着する際の一対のタイルの端縁同士の間の隙間に一致するスペーサー」を設けることができたとしても、スペーサーが水平フレームに立設された縦フレームに取り付けられて無端コンベア上に吊り下げられているという、本件発明の特定事項を当業者が容易に想到し得たとすることはできない。また、甲第4号証には、間欠作動のコンベアーに、配列すべきタイル群の行と列に整列され、かつ、タイルの下半部分を個別に受け入れる凹所を表面に有するタイルトレイを進行方向に配列し、一群のタイルを該タイルトレイに供給し、凹所にタイルを収納し、凹所内のタイルの収納姿勢を整えて目地幅を設定し、タイル群の上面に粘着フィルムを貼着すること等からなるタイル配列ユニット板の成形装置が記載されているが、タイルの搬送方向に細長く、かつ、該搬送方向と直角方向における厚さが表面に連結紙を貼着する際の一対のタイルの端縁同士の間の隙間に一致するスペーサーや、スペーサーの設置のための構造については、記載も示唆もない。それ故、甲第4号証の記載を併せ考慮しても、前述のようなスペーサーの設置のための構造に関する本件発明の特定事項を当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
(ii)本件発明(前者)と甲第2号証記載の発明(後者)とを対比する。
後者における「上面開放の箱型をなす本体」は、前者における「水平フレーム」に、後者における「ローラ」は、前者における「押圧ローラー」に、後者における「カッタ」は、前者における「カッター」に、それぞれ相当する。また、前者における「無端コンベアの搬送方向に細長く、かつ、該無端コンベアの幅方向における厚さが前記隙間に一致するスペーサー」と、後者における「一対のタイルの面取りされた端縁を両面に突き当てることにより、両タイルの突き合わせ端縁の間に突き当て板の厚さに相当する一定の隙間を形成する、タイルの幅に略等しい長さで一定の厚さを有する突き当て板」は、どちらも、「タイルの搬送方向に細長く、かつ、該搬送方向と直角方向における厚さが前記隙間に一致するスペーサー」といえる。そうすると、両者は、「端縁の裏面に面取りの施された一対のタイルの面取りされた端縁同士を接着してL字型タイルを形成するのに先立ち、前記一対のタイルを前記端縁同士の間に隙間をあけて向き合わせて表面に連結紙を貼着する装置において、前記一対のタイルを前記端縁と平行な方向に搬送する手段と、タイルの搬送方向に細長く、かつ、該搬送方向と直角方向における厚さが前記隙間に一致するスペーサーと、搬送される前記一対のタイルを前記スペーサーに押し付けることにより該一対のタイルにスペーサーの厚さに対応する隙間に保たせる手段と、前記隙間を保って前記一対のタイルにロールから繰り出された連結紙を前記隙間を跨ぐように押し付ける押圧ローラーと、連結紙を搬送方向と直角に切断するカッターと、からなるL字型タイル形成用の連結紙貼着装置。」である点で一致するが、次の点で相違する。
(1)連結紙を搬送方向と直角に切断するカッターが、本件発明においては、連結紙により搬送方向に連なるタイルを押さえ板により無端コンベアに押さえ付けた状態において切断するものであるのに対し、甲第2号証記載の発明においては、ロール状に巻回された連結紙が一定寸法繰り出された状態において切断するものである点。
(2)搬送される前記一対のタイルを前記スペーサーに押し付けることにより該一対のタイルにスペーサーの厚さに対応する隙間に保たせる手段が、本件発明においては、押圧部材であるのに対し、甲第2号証記載の発明においては、そのような押圧部材を設けることについて規定していない点。
(3)本件発明においては、一対のタイルを端縁と平行な方向に次々に間欠的に搬送する無端コンベアが水平フレームに支持され、スペーサーが水平フレームに立設された縦フレームに取り付けられて無端コンベア上に吊り下げられているのに対し、甲第2号証記載の発明においては、搬送方向と直角方向の中央部に逃がし溝を設けてその両側にタイルの載置面を設けたテーブルが搬送方向に往復移動可能に水平フレームに支持され、該テーブルが往動の始端側にある場合において該テーブルの前記逃がし溝を通って前記タイルの載置面の上にスペーサーが突出する点。
相違点(1)については、前記(i)の「相違点(1)について」で述べたように、当業者が容易に想到し得たものといえるので、以下では、相違点(2)、(3)について検討する。
相違点(2)について
甲第1号証には、一対のタイルの端縁の位置決めを行うために、押圧部を有するシリンダにより、一対のタイルの接着面を断面山形状の当接部に当接させることが記載されており、「押圧部を有するシリンダ」は、位置決めを行うための手段としての断面山形状の当接部に一対のタイルを押し付けることにより該一対のタイルを端縁同士が位置決めされた状態に保たせる点で、本件発明における「押圧手段」に相当するものといえる。そして、甲第2号証には、一対のタイルをスペーサーに押し付けることにより該一対のタイルにスペーサーの厚さに対応する隙間に保たせること、すなわち、一対のタイルの端縁の位置決めを行うことが記載されているから、一対のタイルを押し付けて位置決めを行うために、甲第1号証記載の「押圧部を有するシリンダ」を設けることは、当業者が容易に想到し得たものといえる。
相違点(3)について
刊行物2には、テーブルの移動等を機械的に行って完全自動化を図っても良い旨が記載され(摘示2-E参照)、また、タイル等の物品の搬送手段として無端コンベアは、甲第1号証の記載にみられるように、本件特許の出願前において周知のものであるから、甲第2号証記載の発明において、搬送手段としての往復移動可能なテーブルの代わりに無端コンベアを用いようとすることは、当業者であれば普通に考慮する程度のことといえる。しかしながら、甲第2号証記載の発明は、往復移動可能なテーブルの搬送方向と直角方向の中央部に逃がし溝が形成され、テーブルが往動の始端側にある場合において、その逃がし溝の下方からテーブルの載置面の上方に突出するようにスペーサーがその逃がし溝内を貫通している点で特殊な構造のものであるから、甲第2号証記載の発明において、甲第1号証記載の発明を適用し、搬送手段としての往復移動可能なテーブルの代わりに通常の無端コンベアを用いることが直ちに可能であるとはいえないし、まして、スペーサーが水平フレームに立設された縦フレームに取り付けられて無端コンベア上に吊り下げられているという、本件発明の特定事項を当業者が容易に想到し得たとすることはできない。また、甲第4号証には、前記(i)で述べたような記載が存在するだけで、タイルの搬送方向に細長く、かつ、該搬送方向と直角方向における厚さが表面に連結紙を貼着する際の一対のタイルの端縁同士の間の隙間に一致するスペーサーや、スペーサーの設置のための構造については、記載も示唆もないから、甲第4号証の記載を併せ考慮しても、前述のようなスペーサーの設置のための構造に関する本件発明の特定事項を当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
以上の検討から、本件発明は、甲第1、2、4号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

6.無効理由2について
6-1.請求人の主張の概要
甲第3号証の1の実機の写真と説明、及び、甲第3号証の2と甲第5号証の1、2の「プレスト-1」の写真を総合すると、「プレストー1」は、本件発明の特定事項を全て備えたものである。そして、甲第3号証の3〜5によれば、「プレスト-1」の構成ないし構造について、秘密保持義務を有しない賃貸人又は賃借人が本件特許の出願前において知ることができたといえるし、また、「プレスト-1」は、本件特許の出願前において公然と使用されていたのであるから、本件発明は、その出願前に公然知られていたか、又は、公然実施されていた。
6-2.被請求人の主張の概要
(1)甲第3号証の1は、本件発明を製品化した「プレスト-1」の製品カタログの謄本であるとしているが、説明文中には作用の説明が記載されているものの、物の発明である本件発明の特定事項は全く記載されていない。写真の中に、「縦フレーム」、「押圧部材」および「スぺーサー」なる手書きの語句が存在するが、これらは、請求人が想像により記入したものであって根拠のないものであり、本件発明の特定事項が総て表されているとすることはできず、また、頒布された期日が記載されておらず、証拠としての価値の無いものである。(答弁書第4頁第7〜14行)
(2)甲第3号証の2は、請求人代理人が撮影した「プレスト-1」の写真であるとしているが、本件発明の特定事項がどこに表されているのか全く不明である。(同第4頁15〜16行)
(3)甲第3号証の3は「プレスト-1」のリース契約書の謄本であるとしているが、リース物件である「プレスト-1」がどのような構成になるものであるか不明である。(同第4頁第17〜19行)
(4)甲第3号証の4は「プレストー1」の賃借人たる佐藤修氏の証明書であるとしているが、添付の写真では「プレスト-1」が本件発明の特定事項との関係においてどのような構成になっているのか不明である。(同第4頁第20〜22行)
(5)甲第3号証の5は「プレスト-1」の賃貸人の発行した領収書の謄本であるとのことであるが、何に関する領収書であるのか全く不明である。(同第4頁第23〜24行)
(6)請求人が甲第3号証の1をもって特定した「プレスト-1」は請求人が公然実施されたと主張する「プレスト-1」とは別のものである。すなわち、甲第3号証の1の写真には制御盤が1個のみ表されているのに対し、甲第3号証の2、4の写真には互いに連結された大小2個の制御盤が表されており、スイッチ及び表示灯の数が多くなって複雑化している。請求人は、リース物件の「プレスト-1」の押圧部材は「プッシャー」と呼ばれるシリンダー方式であったがうまく作動しなかったため、スプリング方式に変更した経緯があると述べているが、スプリング方式にすれば電気的制御は不要になるのであって、制御盤は単純化することはあっても2個にして複雑化することなどあり得ない。(第5頁第2〜13行)
(7)訂正により追加された事項は、甲第3号証の1ないし5に全く記載されていない。(同第3頁末行〜第4頁第2行)

6-3.当審の判断
6-3-1.「全自動テープ張り機プレスト-1」の販売、賃貸借について
甲第3号証の3のリース契約書(契約No.9602216)謄本には、住所が「土岐市肥田町浅野809-1」である「坂本製作所 坂本芳敬」を売主とし、十六リース(株)が買い受けた、坂本製作所製造の「全自動テープ張り機プレスト-1」を岐阜県多治見市旭ヶ丘6丁目45のユニセラム佐藤修に賃貸する旨、物件の引渡場所は、多治見市根本町12丁目81-4である旨、リース期間は、物件引渡日から84か月、ただし平成8年10月18日から平成15年10月17日までである旨、リース料の支払日は、第1月分が物件引渡日で、それ以降は毎月21日である旨、リース料は、1か月当り104300円、消費税額が3129円である旨、第82月分から第84月分のリース料に充当する物件引渡日に支払う前払リース料が312900円、消費税相当額が9387円である旨が記載されている。そして、
(ア)甲第3号証の5の十六リース株式会社名のユニセラム佐藤修宛の領収書には、契約No.9602216による初回リース料104300円、消費税額3129円、前受リース料312900円、消費税相当額9387円を内訳とする金額429716円を平成8年10月18日に小切手で領収した旨が記載されていて、甲第3号証の3のリース契約書と契約No.、賃貸借当事者名、金額、引渡ないし支払の日時などの内容において一致していること、
(イ)甲第3号証の5の領収書について、何に関する領収書であるのか全く不明である旨の被請求人の主張(6-2.被請求人の主張の概要(5)参照)は、根拠がなく、妥当なものとはいえないこと、
(ウ)本件特許無効事件に関して第三者であると認められる賃借人ユニセラム佐藤修が、甲第3号証の4の証明願において、別紙写真の装置は、坂本製作所が製造した「プレスト-1」であり、十六リース株式会社のリース物件(契約No.9602216)に相違ないこと等について証明していること、
(エ)甲第3号証の3のリース契約書謄本、及び、甲第3号証の4の賃貸人ユニセラム佐藤修の証明を含む証明願には、リース物件の製造、販売者として被請求人ないし被請求人の個人企業と認められる坂本製作所(以下、「被請求人等」という。)が該リース契約に関与していることが記載されているが、被請求人は、甲第3号証の3、4について、リース物件である「プレスト-1」がどのような構成であるか不明である旨を主張しているだけで(6-2.被請求人の主張の概要(3)(4)参照)、甲第3号証の3のリース契約書謄本や甲第3号証の4の賃貸人ユニセラム佐藤修の証明を含む証明願に記載されたリース物件の製造、販売者としての被請求人等の関与を否認していないこと、
(オ)販売、賃貸借の対象物である「プレスト-1」の構成ないし構造等に関し、販売者と購入者(賃貸人)や賃借人との間に秘密を保持すべき約定がなされたとの主張、立証が全くなされていないこと、
を考慮すると、甲第3号証の3のリース契約書謄本に記載され、被請求人等が製造した「全自動テープ張り機プレスト-1」は、本件特許の出願前の平成8年10月18日の物件引渡日までに被請求人等から賃貸人十六リース株式会社に対し公然と販売(譲渡)され、前記物件引渡日に、多治見市根本町12丁目81-4において、賃貸人から賃借人ユニセラム佐藤修に公然と貸し渡されたものと認められる。

6-3-2.「全自動テープ張り機プレスト-1」の構造について
前記6-3-1.で述べたとおり、本件特許の出願前に、被請求人等から賃貸人十六リース株式会社に対し公然と譲渡され、賃借人ユニセラム佐藤修に公然と貸し渡されたものと認められる「全自動テープ張り機プレスト-1」について審理するため、当審は、平成14年1月28日付け、及び、平成14年5月9日付けで被請求人に対し下記の内容の審尋(以下、それぞれ、「第1回審尋」、「第2回審尋」という。)を行い、期間を指定して回答書を提出する機会を与えたが、被請求人からは何らの応答もない。
i)第1回審尋
「(1)甲第3号証の1は、その成立について被請求人が否認していないこと等からみて、被請求人の製造・販売に係るL字型タイル形成用の連結紙貼着装置の製品カタログであると認められるが、この認定に意見がありましたら、回答して下さい。
(2)甲第3号証の2の写真において「Presto」と表示された物件と甲第3号証の4の証明願に添付された写真に示された物件との類似性からみて、甲第3号証の2の写真において「Presto」と表示された物件は、甲第3号証の3に記載された、坂本製作所坂本芳敬を売主とし十六リース(株)が買い受けた「全自動テープ張り機プレスト-1」であると認められるが、この認定に意見がありましたら、回答して下さい。
(3)職権による調査からみて、タイルに連結紙を貼着する装置に関し、被請求人が発明者(考案者)、出願人、ないし、特許権者(実用新案権者)である特許出願、実用新案登録出願は、特願平8-337529号(特許第3019201号)、特願平10-179627号(特許第3171327号)、実願平5-71199号(実用新案登録第2577649号)の3件のみと認められるが、この認定に意見がありましたら、回答して下さい。」
ii)第2回審尋
「(A)請求人が提出した下記書面を送付します。これについて意見がありましたら、回答してください。

1.弁駁書 副本 1通
(B)甲第5号証の1の写真O〜Rに示された物件は、甲第3号証の2の写真A〜Fにおいて「Presto」と表示された物件や甲第3号証の4の証明願に添付された写真1〜2に示された物件との類似性からみて、甲第3号証の3に記載された、坂本製作所坂本芳敬を売主とし十六リース(株)が買い受けた「全自動テープ張り機プレスト-1」であると認められるが、この認定に意見がありましたら、回答して下さい。
(C)甲第5号証の2の写真S〜Vに示された物件は、甲第3号証の2の写真A〜Fにおいて「Presto」と表示された物件や甲第3号証の4の証明願に添付された写真1〜2に示された物件との類似性からみて、甲第3号証の3に記載された、坂本製作所坂本芳敬を売主とし十六リース(株)が買い受けた「全自動テープ張り機プレスト-1」であると認められるが、この認定に意見がありましたら、回答して下さい。
(D)平成14年1月28日付けの審尋における(1)〜(3)の認定及び前記(B)、(C)の認定に立脚すると共に、甲第5号証の1の写真Q、Rないし甲第5号証の2の写真Uに、ロールから繰り出された連結テープがクリアランスゲージ(突き当て板)(本件発明におけるスペーサーに相当するもの)の下流でコンベヤーとローラーとの間に導かれていること、及び、該ローラーと連結テープとがほぼ同等の幅であることが示されていることを勘案すると、該ローラーは、「コンベアーにより隙間を保って次々に搬送されてくる一対のタイルにロールから繰り出された連結テープを前記隙間を跨ぐように押し付ける」ものと認められるが、この認定に意見がありましたら、回答して下さい。
(E)平成14年1月28日付けの審尋における(1)〜(3)の認定及び前記(B)〜(D)の認定に立脚すると、甲第5号証の1の写真Rないし甲第5号証の2の写真S、U、Vに示された、押圧ローラーの下流側に存在し、コンベヤーの上方から下方に伸びその先端が下流側となるように弧状に湾曲した一対の板状物、及び、該板状物の下流に近接して存在し、中心軸がコンベヤーの移動方向と略平行な円盤状物は、それらの構造からみて、それぞれ、「連結テープにより搬送方向に連なるタイルをコンベヤーに押さえ付ける押さえ板」、「タイルが押さえ板により押さえ付けられた状態において連結テープを搬送方向と直角に切断するカッター」と認められるが、この認定に意見がありましたら、回答して下さい。
(F)平成14年1月28日付けの審尋における(1)〜(3)の認定及び前記(B)〜(E)の認定に立脚すると共に、甲第5号証の1の写真O,Pないし甲第5号証の2の写真S、Tに、連結テープ貼着後のタイルをコンベヤー上から持ち上げ、コンベヤーの搬送方向と略直角方向に移送する移載機が示されていて、該移載機をコンベヤーと同期してコンベヤーの搬送方向に移動する機構が見あたらないことを勘案すると、該コンベヤーは、タイルを間欠的に搬送するものと認められるが、この認定に意見がありましたら、回答して下さい。」

そして、このような審理の経過を併せ考慮して、甲第3号証の1〜5、及び甲第5号証の1,2を検討すると、次の(ア)〜(ケ)で述べる事項が認められる。
(ア)甲第3号証の2の写真A〜Nにおいて「Presto」と表示された物件、甲第3号証の4の証明願に添付された写真1,2に示された物件、甲第5号証の1の写真O〜Rに示された物件、及び、甲第5号証の2の写真S〜Vに示された物件は、それらの類似性、及び、後記(エ)で述べる押圧部材の変更の経緯からみて、押圧部材の部分を除き、甲第3号証の3に記載され、被請求人等が賃貸人十六リース(株)に譲渡し、賃貸人が賃借人ユニセラム佐藤修に貸し渡した「全自動テープ張り機プレスト-1」であると認められる。
(イ)甲第3号証の1には、被請求人の個人企業と認められる「坂本製作所 岐阜県土岐市肥田町浅野809-1」の「全自動テープ張り機プレスト-1」に関するカタログである旨が記載されているが、被請求人は、甲第3号証の1について、説明文中には作用の説明が記載されているが、物の発明である本件発明の特定事項は記載されていない旨、「縦フレーム」等の手書きの語句は、請求人が想像により記入したものである旨、頒布された期日が記載されておらず、証拠としての価値が無い旨を主張しているだけで(6-2.被請求人の主張の概要(1)参照)、甲第3号証の1の成立について、手書きの部分を除き否認していないことからみて、甲第3号証の1は、手書きの部分を除き、被請求人等の製造・販売に係る「全自動テープ張り機プレスト-1」の製品カタログであると認められる。
(ウ)職権による調査からみて、タイルに連結紙を貼着する装置に関し、被請求人が発明者(考案者)、出願人、ないし、特許権者(実用新案権者)である特許出願、実用新案登録出願は、特願平8-337529号(特許第3019201号、本件特許に係る出願のもとの出願に係る特許であるので、以下、「原特許」という。)、特願平10-179627号(特許第3171327号、本件特許)、実願平5-71199号(実用新案登録第2577649号、甲第2号証に係る出願の実用新案登録)の3件のみであると認められる。
(エ)甲第3号証の1の「全自動テープ張り機プレスト-1」に関するカタログには、「コンベヤー上にタイルを乗せるだけで、〔タイルとタイルのスキマ自動調整〕→〔センターリング〕(タイル幅の、大、小、振り分け)→〔テープ貼付け〕→〔ブラシッング(「ブラシッング」は「ブラッシング」の誤記と認める。)〕→〔テープカット〕と順次加工して、出てきますからどなたにもテープ貼作業ができます。」、「クリアランスゲージ(突き当て板)の採用〔実用新案申請済〕当製作所、前機種テープ貼り機〔卓上型〕より採用済のクリアランスゲージによりタイルとタイルのテープ貼り付け時のスキマ調整はゲージ鋼鈑の交換により自由に替えることができます。」、「センターリング機構の採用〔特許申請済〕当機械は、センターリング機構を採用していますので接着しようとするタイル幅に大、小、があっても振り分けてテープを貼りますから、仕上がりが良くなりました。」、「コンベヤー部スポンジの採用〔特許申請済〕コンベヤー部には、スポンジを貼り付けてありますから、湿式タイルのように、裏足が凹凸であっても比較的、影響も無くタイルとタイルのスキマは一定に保たれます。」、「コンベヤーワンピッチ多重使用〔特許申請済〕コンベヤー上に、45二丁曲がり、45二丁マグサ、小口マグサ、二丁掛曲がり、二丁掛マグサ、等の各スペースを設けて、それぞれのスペース上で加工を行いますので、当機械、一台でほとんどのテープ貼加工ができます。又、寸法替えによるサンの取り付け、取はずし、等のわずらわしさもありません。」、「ダイヤモンドカッターとブラシの採用 テープカット部には、ダイヤモンドカッターを使用し、且つ、毎分3万回転のエヤーモーターを採用していますから、長い間の使用でも綺麗に切れます。又、テープはナイロンブラシでこすり付けるので、接着剤のモレは全くありません。」、「警告! 当機械は数箇所、特許並びに実用新案申請・・・(数文字判読不能)ています、類似機種製作については充分ご注意下さい。」と記載され、また、前記(ウ)で述べたように、被請求人が発明者(考案者)、出願人、ないし、特許権者(実用新案権者)である特許出願、実用新案登録出願は、原特許、本件特許、及び、甲第2号証に係る出願の実用新案登録の3件のみであって、実用新案申請済とされる「クリアランスゲージ(突き当て板)」は、甲第2号証に記載された「突き当て板」に対応し、特許申請済とされる「センタリング機構」、「コンベヤーワンピッチ多重使用」は、それぞれ、本件特許の明細書に記載された「前後の水平板41が接近し、その下面に突設された爪44がタイルaを前後から挟持し、さらに、エアーシリンダ42が作動してタイルaを押圧体43で押さえる。この動作はスペーサー52の両側において独立して行われるため、両側のタイルaの幅が異なっていても中心に寄せられて幅の差は前後に振り分けられて目立たない。」(段落【0020】〜【0021】)、「左右の無端チェーン3のリンク4に差し渡された平板5にゴム板6が張り付けられてその間から平板5に固着された長さの異なる仕切り板7が突出していて(図5参照)、横方向において順次に搬送方向の長さが異なる4種類のタイルaが前後の仕切り板7の間に余裕を持って載置されて矢印の方向に間欠的に搬送される無端コンベヤ8が構成されている。」(段落【0007】)に対応しているといえる。そして、
(エ-a)本件特許は、原特許に係る出願の分割出願に係る特許であって、明細書に記載された連結紙貼着装置の全体構造は、原特許に係る出願のものと大略同じであること、
(エ-b)甲第3号証の3に記載された「全自動テープ張り機プレスト-1」は、甲第3号証の1のカタログに記載されたものと機種名が一致しているし、また、甲第3号証の2等の写真からみて(前記(ア)の認定参照)、該カタログに記載されたものと外観も類似し、さらに、「特許申請済」、「実用新案申請済」の表示が付されていること(写真L参照)、
(エ-c)甲第3号証の1のカタログの「クリアランスゲージ(突き当て板)の採用〔実用新案申請済〕当製作所、前機種テープ貼り機〔卓上型〕より採用済のクリアランスゲージにより・・・」という記載における「当製作所、前機種テープ貼り機〔卓上型〕」は、甲第2号証に記載されたような往復移動可能なテーブルを有する「L字型タイル形成用の連続紙貼着装置」と認められるところ、甲第3号証の3に記載された「全自動テープ張り機プレスト-1」は、甲第3号証の2の写真、甲第3号証の4の証明願に添付された写真からみて(前記(ア)の認定参照)、往復移動可能なテーブルを有するものとは全く異なること、
を併せ考慮すると、甲第3号証の3に記載された「全自動テープ張り機プレスト-1」は、甲第3号証の1のカタログに記載された「全自動テープ張り機プレスト-1」や、本件特許明細書に記載された「L字型タイル形成用の連続紙貼着装置」と同様の、
「コンベヤー上にタイルを乗せるだけで、〔タイルとタイルのスキマ自動調整〕→〔センターリング〕(タイル幅の、大、小、振り分け)→〔テープ貼付け〕→〔ブラッシング〕→〔テープカット〕と順次加工」するというテープ貼作業を全自動で行うものとして、販売、賃貸借されたと認められる。
この点に関し、被請求人は、甲第3号証の1の写真には制御盤が1個のみ表されているのに対し、甲第3号証の2の写真には大小2個の制御盤が表されており複雑化していることを根拠として、甲第3号証の1のカタログに記載された「プレスト-1」は請求人が公然実施されたと主張する「プレスト-1」とは別のものである旨を主張している(6-2.被請求人の主張の概要(6)参照)。しかしながら、
(エ-d)請求人は、リース物件のプレスト-1の押圧部材は、当初「プッシャー」と呼ばれるシリンダー方式で本件発明の実施例と同じであったがうまく作動しなかったため、坂本製作所がスプリング方式に変更した経緯があると主張し(審判請求書第7頁第16行〜第8頁第4行)、前記賃借人ユニセラム佐藤修は、その主張に沿った証明をしていること、
(エ-e)請求人の前記(エ-d)の主張に対し、被請求人は、スプリング方式にすれば電気的制御は不要になるのであって、制御盤は単純化することはあっても2個にして複雑化することなどあり得ないと主張しているが(6-2.被請求人の主張の概要(6)参照)、「プッシャー」と呼ばれるシリンダー方式からスプリング方式に押圧部材を変更する際に、シリンダー方式を含む制御盤をそのまま取り去らずに残して、新たにスプリング方式を含む制御盤を付加することなど、各種の変更の態様が考えられるから、制御盤を2個にすることはあり得ない旨の被請求人の主張は、妥当なものとはいえないこと、
(エ-f)前述したように、甲第3号証の1のカタログに記載された「プレスト-1」も、甲第3号証の3に記載された「プレスト-1」も、被請求人等の製造、販売に係るものであり、また、前述の押圧部材の変更を被請求人等が行った旨の請求人の主張に対し、被請求人は、該変更への関与を否認していないことからみて、被請求人は、それら両方の「プレスト-1」の構造に通暁していると認められるにも拘わらず、それらが別のものである旨を主張しているだけで、それらの具体的な構造の差異について、主張、立証していないし、そのような差異を明らかにできないとする特段の事情が存在する旨についても、主張、立証していないこと、
を考慮すると、甲第3号証の1のカタログに記載された「プレスト-1」と、甲第3号証の3に記載された「プレスト-1」とが別のものであるという被請求人の主張は、採用できない。
(オ)前記(ア)〜(エ)の認定に立脚し、甲第3号証の2の写真A〜N、及び、甲第3号証の4の証明願に添付された写真1,2を見ると、甲第3号証の3に記載された「全自動テープ張り機プレスト-1」は、写真A、E、F等からみて、水平なフレームの一端から他端に向けてタイルを搬送する水平に設置された無端コンベヤーを有し、写真A、E、F、G、I、J、2等からみて、無端コンベヤーの搬送面のすぐ上に、フレーム状物体に固定して設けられた垂直で搬送方向に細長いクリアランスゲージ(突き当て板)(以下、単に「クリアランスゲージ」ということがある。)を有すると認められる。
この点に関し、被請求人は、本件発明の特定事項との関係においてどのような構成になっているのか不明である旨を主張しているが(6-2.被請求人の主張の概要(2)(4)参照)、前述のように、前記(ア)〜(エ)の認定に立脚すると、被請求人の前記主張は、妥当なものとはいえない。
(カ)前記(ア)〜(オ)の認定に立脚し、甲第3号証の2の写真A〜N、及び、甲第3号証の4の証明願に添付された写真1,2を見ると、同写真に示された「全自動テープ張り機プレスト-1」は、写真F、I、J、2等からみて、無端コンベヤーの搬送面のすぐ上であって、クリアランスゲージの両側に存在し、搬送方向におけるクリアランスゲージとの間隔が漸次狭くなるようにスプリングで付勢された細長い板状部材が設けられ、無端コンベヤーで搬送される一対のタイルをクリアランスゲージの両側面に突き当て、一対のタイルの対向端面の隙間をクリアランスゲージの厚みに保つ一対の押圧部材を有すると認められるが、前記(エ)で述べた押圧部材の変更の経緯からみて、甲第3号証の3に記載された「全自動テープ張り機プレスト-1」は、同写真に示されたスプリング方式と同様の機能を奏するシリンダ方式の押圧手段を有していたと認められる。
(キ)前記(ア)〜(カ)の認定に立脚すると共に、甲第5号証の1の写真Q、Rないし甲第5号証の2の写真Uに、ロールから繰り出された連結テープがクリアランスゲージ(突き当て板)の下流でコンベヤーとローラーとの間に導かれていること、及び、該ローラーと連結テープとがほぼ同等の幅であることが示されていることを勘案すると、該ローラーは、「コンベアーにより隙間を保って次々に搬送されてくる一対のタイルにロールから繰り出された連結テープを前記隙間を跨ぐように押し付ける」ものであると認められる。
(ク)前記(ア)〜(キ)の認定に立脚すると、甲第5号証の1の写真Rないし甲第5号証の2の写真S、U、Vに示された、押圧ローラーの下流側に存在し、無端コンベヤーの上方から下方に伸びその先端が下流側となるように弧状に湾曲した一対の板状物、及び、該板状物の下流に近接して存在し、中心軸がコンベヤーの移動方向と略平行な円盤状物は、それらの構造からみて、それぞれ、「連結テープにより搬送方向に連なるタイルを無端コンベヤーに押さえ付ける押さえ板」、「タイルが押さえ板により押さえ付けられた状態において連結テープを搬送方向と直角に切断するカッター」であると認められる。
(ケ)前記(ア)〜(ク)の認定に立脚すると、甲第5号証の1の写真O,Pないし甲第5号証の2の写真S、Tに、連結テープ貼着後のタイルを無端コンベヤー上から持ち上げ、コンベヤーの搬送方向と略直角方向に移送する移載機が示されていて、該移載機をコンベヤーと同期してコンベヤーの搬送方向に移動する機構が見あたらないことを勘案すると、該コンベヤーは、タイルを間欠的に搬送するものであると認められる。
以上の(ア)〜(ケ)の認定からみて、甲第3号証の3に記載され、平成8年10月18日の物件引渡日までに被請求人等から賃貸人十六リース株式会社に公然と譲渡され、前記物件引渡日に、多治見市根本町12丁目81-4において、賃貸人から賃借人ユニセラム佐藤修に公然と貸し渡された「全自動テープ張り機プレスト-1」は、
「コンベヤー上にタイルを乗せるだけで、〔タイルとタイルのスキマ自動調整〕→〔センターリング〕(タイル幅の、大、小、振り分け)→〔テープ貼付け〕→〔ブラッシング〕→〔テープカット〕と順次加工するテープ貼作業を全自動で行う全自動テープ張り機であって、水平なフレームの一端から他端に向けて一対のタイルを間欠的に搬送する水平に設置された無端コンベヤーと、無端コンベヤーの搬送面のすぐ上に、フレーム状物体に固定して設けられた垂直で搬送方向に細長いクリアランスゲージ(突き当て板)と、無端コンベヤーで搬送される一対のタイルをクリアランスゲージの両側面に突き当て、一対のタイル間の対向端面の隙間をクリアランスゲージの厚みに保つ一対の押圧部材と、間欠的に搬送する無端コンベアーにより隙間を保って次々に搬送されてくる一対のタイルにロールから繰り出された連結テープを前記隙間を跨ぐように押し付ける押圧ローラーと、連結テープにより搬送方向に連なるタイルを無端コンベヤーに押さえ付ける押さえ板と、タイルが押さえ板により押さえ付けられた状態において連結テープを搬送方向と直角に切断するカッターとを有する全自動テープ張り機。」(以下、「引用発明」という。)であるといえる。

6-3-3.対比・判断
本件発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「無端コンベヤー」は、水平なフレームの一端から他端に向けて一対のタイルを間欠的に搬送する水平に設置されたものであり、しかも、一対のタイルは、垂直で搬送方向に細長いクリアランスゲージ(突き当て板)により対向する端縁間に隙間が形成されると認められるから、本件発明における「一対のタイルを前記端縁と平行な方向に搬送する無端コンベア」に相当する(以下、引用発明における用語の代わりに、それに相当する本件発明における用語を使用することがある。)。
引用発明における「クリアランスゲージ(突き当て板)」は、一対のタイルのスキマを調整するための部材であって、無端コンベアの搬送方向に細長く、かつ、一対のタイルが両側面に突き当てられることにより、無端コンベアにより搬送される一対のタイルの対向端面間にクリアランスゲージの厚みに一致する隙間を形成するものであるから、本件発明における「無端コンベアの搬送方向に細長く、かつ、該無端コンベアの幅方向における厚さが前記隙間に一致するスペーサー」に相当し、しかも、該無端コンベアの移動する搬送面のすぐ上に、フレーム状物体に移動しないように固定されているから、固定の水平フレームから無端コンベアの搬送面上に伸びるフレームに取り付けられて、無端コンベア上に吊り下げられているといえる。
そして、甲第1,2号証の記載に見られるように、端縁の裏面に面取りの施された一対のタイルの面取りされた端縁同士を接着してL字型タイルを形成することが、本件特許の出願前において周知のことであるから、引用発明の「全自動テープ張り機プレスト-1」は、L字型タイルの形成のための、端縁の裏面に面取りの施された一対のタイルをもその対象としているといえること、及び、甲第2号証の記載にみられるように、タイルの連結にテープ状の紙を用いることが、本件特許の出願前において通常のことであって、引用発明における「連結テープ」は、「連結紙」に相当するといえることを考慮すると、本件発明と引用発明とは、実質的な差異がない。
被請求人は、訂正により追加された事項は、甲第3号証の1ないし5に全く記載されていない旨を主張しているが(6-2.被請求人の主張(7)参照)、第2回審尋の(D)、(E)、(F)で述べた認定について、期間を指定して意見を求めたにも拘わらず何らの応答もなかったこと、前記6-3-2.の(キ)、(ク)、(ケ)で述べた認定は正当であることからみて、そのような被請求人の主張は採用できない。
したがって、本件発明は、本件特許の出願前に日本国内おいて公然実施(譲渡、貸渡)をされた発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当する。

7.むすび
以上のとおりであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第1項第2号の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
L字型タイル形成用の連結紙貼着装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 端縁の裏面に面取りの施された一対のタイルの面取りされた端縁同士を接着してL字型タイルを形成するのに先立ち、前記一対のタイルを前記端縁同士の間に隙間をあけて向き合わせて表面に連結紙を貼着する装置において、
前記一対のタイルを前記端縁と平行な方向に搬送する無端コンベアと、
該無端コンベアを支持する水平フレームに立設された縦フレームに取り付けられて前記無端コンベア上に吊り下げられ、該無端コンベアの搬送方向に細長く、かつ、該無端コンベアの幅方向における厚さが前記隙間に一致するスペーサーと、
前記無端コンベアにより搬送される前記一対のタイルを前記スペーサーに押し付けることにより該一対のタイルに該スペーサーの厚さに対応する隙間を保たせる押圧部材と、
間欠的に搬送する前記無端コンベアにより前記隙間を保って次々に搬送されてくる前記一対のタイルにロールから繰り出された連結紙を前記隙間を跨ぐように押し付ける押圧ローラーと、
前記連結紙により搬送方向に連なるタイルを前記無端コンベアに押さえ付ける押さえ板と、
前記タイルが前記押さえ板により押さえ付けられた状態において前記連結紙を搬送方向と直角に切断するカッターと、
からなるL字型タイル形成用の連結紙貼着装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、図11に示すように、裏面の端縁に面取りbの施された一対のタイルa,aの面取りされた端縁同士を接着してL字型タイルを形成するのに先立ち、一対のタイルa,aを端縁同士の間に隙間cをあけて向き合わせて表面に連結紙dを貼着する装置に関する。
【0002】
なお、一対のタイルa、aの互いに突き合わせる端縁同士の間に隙間cを設けるのは面取りb,bに接着剤を塗って、図11に鎖線で示すように、一方のタイルaを90°曲げた場合に隙間cが無いと連結紙が引っ張られて破れるからである。
【0003】
【従来の技術】
本件特許出願人は上記L字型タイル形成用の連結紙貼着装置について実用新案登録出願をし、実開平7-34134号として出願公開された。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
陶磁製タイルの製造工程ほとんどが自動化され、L字形タイルの接着工程の自動化が望まれていた。
【0005】
しかしながら、上記公開公報に記載された考案においては、往復運動するテーブルにタイルを載せて連結紙を張り付けるようになっていたため、タイルのテーブルへの載置、テーブルの移動及びタイルの抜き取りを機械化しても、テーブルの1往復で1組のタイルしか連結することができず、作業能率が低いという課題があった。
【0006】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
このような課題を解決するための手段として、本発明は、一対のタイルを接合すべき端縁と平行な方向に搬送する無端コンベアと、その無端コンベアを支持する水平フレームに立設された縦フレームに取り付けられて無端コンベア上に吊り下げられ、その無端コンベアの搬送方向に細長く、かつ、その無端コンベアの幅方向における厚さが一対のタイルの端縁同士の隙間に一致するスペーサーと、無端コンベアにより搬送される一対のタイルをスペーサーに押し付けることによりその一対のタイルにそのスペーサーの厚さに対応する隙間を保たせる押圧部材と、間欠的に搬送する無端コンベアにより隙間を保って次々に搬送されてくる一対のタイルにロールから繰り出された連結紙を隙間を跨ぐように押し付ける押圧ローラーと、連結紙により搬送方向に連なるタイルを無端コンベアに押さえ付ける押さえ板と、タイルが押さえ板により押さえ付けられた状態において連結紙を搬送方向と直角に切断する切断するカッターと、からなる構成としたから、連続的に一対のタイルの連結を行うことができて、作業能率が著しく向上する効果がある。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1において、1は一定の間隔をあけて平行に配置された左右2本の水平フレームであって、その中に装置されたスプロケット2に無端チェーン3が掛け渡され、左右の無端チェーン3のリンク4に差し渡された平板5にゴム板6が張り付けられてその間から平板5に固着された長さの異なる仕切り板7が突出していて(図5参照)、横方向において順次に搬送方向の長さが異なる4種類のタイルaが前後の仕切り板7の間に余裕をもって載置されて矢印の方向に間欠的に搬送される無端コンベア8が構成されている。
【0008】
左右2本の水平フレーム1の長さ方向の中央部には縦フレーム9が立設されて2本の案内杆10とラック11が差し渡され、案内杆10に摺動自由に嵌合した摺動体23に取り付けられたモーター13により回転駆動されるピニオン14がラック11にかみ合っていて、モーター13の駆動により摺動体23が無端コンベア8を横切る方向に移動するようになっているとともに、摺動体23には、図2に示すように、可動フレーム24が上下摺動自由に取り付けられていて摺動体23を通してその上面板25に螺合されたねじ棒63をハンドル28により回転させることにより上下動するようになっており、上面板25に下向きに固定された2本のガイドバー26に箱体12が上下摺動自由に嵌合され、上面板25に下向きに取り付けられたモーター27により回転駆動されるねじ棒29に箱体12が螺合されてモーター27の駆動により上下動するようになっている。
【0009】
箱体12の無端コンベア8の搬送方向後ろ側の面には上下2本ずつのガイドバー15が水平に植設されていてその先端に結合板16が結合されている。
【0010】
上側のガイドバー15には、図3に示すように、摺動板17が摺動自由に差し渡されてその両側の垂下部に歯車箱18が一体に形成されている。
【0011】
両歯車箱18内には、図4に示すように、歯車箱18に回転のみを自由に支持されてその歯車箱18の外側にねじ19が切られて端部にノブ20が固定されたねじ軸21に固定された第1歯車22と、歯車箱18の反対側に回転のみを自由に支持されて歯車箱18の外側にねじ30が切られたねじ軸31に固定された第2歯車32とがかみ合っており、歯車箱18の外側に固定されたモーター33の出力軸34にキー35とキー溝36によって軸方向の退避位置に移動可能な駆動歯車37が取り付けられ、この駆動歯車37は中間歯車38とかみ合い、中間歯車38は第1歯車22とかみ合っている。
【0012】
歯車箱18の前後には左右ともに上下のガイドバー15に移動体39が摺動自由に嵌合していてその外側に突設された突片40に上記ねじ軸21、31のねじ19、30が螺合しているとともに、その下部に固定された水平板41の対向面に、図3に示すように、エアーシリンダ42が取り付けられてそのピストンロッドの先端に水平板41の下方に突出する押圧体43が固定され、さらに、水平板41の下面に、図2に示すように、爪44が突設されている。
【0013】
図2に示すように、箱体12に水平に固定されたモーター45の出力軸に固定されたスプロケット46と結合板16に支持されたスプロケット47に掛け渡されたタイミングベルト48が、図3に示すように、摺動板17に固定されてモーター45の駆動により歯車箱18及び移動体39がガイドバー15に沿って移動するようになっている。
【0014】
可動フレーム24には連結紙dのロールe、ロールeから繰り出された連結紙dを掛け回すローラー49、50、その連結紙dをタイルaに押し付ける押圧ローラー51、一対のタイルa、aの間に隙間cを設けるためのスペーサ52、連結紙dを一対のタイルa,aに張り付けるためのブラシ53、連結紙dを切断するために一対のタイルa、aを押さえる押さえ板54、この押さえ板54をタイルaに押し付けるエアーシリンダ55、モーター56によって回転駆動されるカッター57、このカッター57を上下動させるエアーシリンダ58が取り付けられている。
【0015】
両側の水平フレーム1の両端間に差し渡された2つのガイド59によって無端コンベア8上においてその搬送方向と平行に配置されることにより搬送方向と直交する方向に移動調節可能な2つのスライド板60の対向位置に、図3に示すように、タイルaをスペーサ52に押し付ける押圧板61とこれを進退駆動するエアーシリンダ62が取り付けられている。
【0016】
次に、本実施の形態の作動を説明する。
まず、図1に示すように、2本のスライド板60をガイド59に沿って移動させて、仕切り板7の間隔が接着しようとするタイルaの長さに合う無端コンベア8の幅方向の位置を定め、次に、モーター13を駆動してラック11とピニオン14とのかみ合いにより可動フレーム24を無端コンベア8の幅方向に移動させてスペーサー52が2枚のスライド板60の中間に位置させ、かつ、ハンドル28を回して可動フレーム24を上下動させることによりスペーサー52や押圧ローラー51などの高さををタイルaの厚さに応じて調節する。
【0017】
また、両側の歯車箱18のノブ20を握ってねじ軸21を回転させることにより移動体39をガイドバー15に沿って接離両方向に移動させて、前後の水平板41の間隔をタイルaの幅に合わせて調節する。
【0018】
このとき、駆動歯車37を出力軸34上でスライドさせて中間歯車38とのかみ合いを外しておくことによりねじ軸21が軽く回るようにしておき、調節が終わった後に駆動歯車37を戻して中間歯車38にかみ合わせる。
【0019】
次いで、タイルaをスペーサー52の両側において2枚ずつ無端コンベア8に載せ、仕切り板7で押しながら前方へ搬送する。
【0020】
タイルaが所定の位置に達すると、エアーシリンダ62が作動して押圧板61がタイルaをスペーサー52の両側に押し付けた後、モーター27の駆動により箱体12が下降すると同時に両側の歯車箱18のモーター33が回転し、ねじ軸21、31が回転して前後の水平板41が接近し、その下面に突設された爪44がタイルaを前後から挟持し、さらに、エアーシリンダ42が作動してタイルaを押圧体43で押さえる。
【0021】
この動作はスペーサー52の両側において独立して行われるため、両側のタイルaの幅が異なっていても中心に寄せられて幅の差は前後に振り分けられて目立たない。
【0022】
この間、摺動板17とその取り付け部品はタイミングベルト48に連結されてモーター45により駆動されることにより移動体39とともにガイドバー15に沿ってコンベア8と同速度で移動する。
【0023】
このようにして2枚のタイルaの整列が終わると、モーター27の逆転により箱体12がガイドバー15とともに上昇し、かつ、モーター45の逆転により摺動板17とその取り付け部品および移動体39がガイドバー15に沿って元の位置に戻る。
【0024】
一定の間隙cを空けて整列された2枚のタイルaは無端コンベア8により前方へ搬送されつつロールeから繰り出された連結紙dが押圧ローラー51により押し付けられ、ブラシ53でこすり付けられた後、押さえ板54で押さえ付けられた状態でカッター57により切断される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施の形態の斜視図である。
【図2】
その要部の断面図である。
【図3】
その要部の分解斜視図である。
【図4】
歯車箱の一部切欠斜視図である。
【図5】
無端コンベアの一部の拡大斜視図である。
【図6】
押圧ローラーの拡大斜視図である。
【図7】
カッターの拡大斜視図である。
【図8】
タイルaを位置決めする手順を示す正面図である。
【図9】
タイルaを位置決めする手順を示す側面図である。
【図10】
タイルaを位置決めする手順を示す平面図である。
【図11】
タイルaの連結状態の斜視図である。
【符号の説明】
1:水平フレーム
8:無端コンベア
9:縦フレーム
52:スペーサー
61:押圧板(本発明の押圧部材)
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(a)特許請求の範囲を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】 端縁の裏面に面取りの施された一対のタイルの面取りされた端縁同士を接着してL字型タイルを形成するのに先立ち、前記一対のタイルを前記端縁同士の間に隙間をあけて向き合わせて表面に連結紙を貼着する装置において、
前記一対のタイルを前記端縁と平行な方向に搬送する無端コンベアと、
該無端コンベアを支持する水平フレームに立設された縦フレームに取り付けられて前記無端コンベア上に吊り下げられ、該無端コンベアの搬送方向に細長く、かつ、該無端コンベアの幅方向における厚さが前記隙間に一致するスペーサーと、
前記無端コンベアにより搬送される前記一対のタイルを前記スペーサーに押し付けることにより該一対のタイルに該スペーサーの厚さに対応する隙間を保たせる押圧部材と、
間欠的に搬送する前記無端コンベアにより前記隙間を保って次々に搬送されてくる前記一対のタイルにロールから繰り出された連結紙を前記隙間を跨ぐように押し付ける押圧ローラーと、
前記連結紙により搬送方向に連なるタイルを前記無端コンベアに押さえ付ける押さえ板と、
前記タイルが前記押さえ板により押さえ付けられた状態において前記連結紙を搬送方向と直角に切断するカッターと、
からなるL字型タイル形成用の連結紙貼着装置。」と訂正する。
(b)明細書の段落【0006】の
「このような課題を解決するための手段として、本発明は、一対のタイルを接合すべき端縁と平行な方向に搬送する無端コンベアと、その無端コンベアを支持する水平フレームに立設された縦フレームに取り付けられて無端コンベア上に吊り下げられ、その無端コンベアの搬送方向に細長く、かつ、その無端コンベアの幅方向における厚さが一対のタイルの端縁同士の隙間に一致するスペーサーと、無端コンベアにより搬送される一対のタイルをスペーサーに押し付けることによりその一対のタイルにそのスペーサーの厚さに対応する隙間を保たせる押圧部材と、からなる構成としたから、連続的に一対のタイルの連結を行うことができて、作業能率が著しく向上する効果がある。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「このような課題を解決するための手段として、本発明は、一対のタイルを接合すべき端縁と平行な方向に搬送する無端コンベアと、その無端コンベアを支持する水平フレームに立設された縦フレームに取り付けられて無端コンベア上に吊り下げられ、その無端コンベアの搬送方向に細長く、かつ、その無端コンベアの幅方向における厚さが一対のタイルの端縁同士の隙間に一致するスペーサーと、無端コンベアにより搬送される一対のタイルをスペーサーに押し付けることによりその一対のタイルにそのスペーサーの厚さに対応する隙間を保たせる押圧部材と、間欠的に搬送する無端コンベアにより隙間を保って次々に搬送されてくる一対のタイルにロールから繰り出された連結紙を隙間を跨ぐように押し付ける押圧ローラーと、連結紙により搬送方向に連なるタイルを無端コンベアに押さえ付ける押さえ板と、タイルが押さえ板により押さえ付けられた状態において連結紙を搬送方向と直角に切断する切断するカッターと、からなる構成としたから、連続的に一対のタイルの連結を行うことができて、作業能率が著しく向上する効果がある。」と訂正する。
審理終結日 2002-09-10 
結審通知日 2002-09-13 
審決日 2002-09-25 
出願番号 特願平10-179627
審決分類 P 1 112・ 112- ZA (B28B)
P 1 112・ 121- ZA (B28B)
P 1 112・ 111- ZA (B28B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 近野 光知  
特許庁審判長 松本 悟
特許庁審判官 綿谷 晶廣
石井 良夫
登録日 2001-03-23 
登録番号 特許第3171327号(P3171327)
発明の名称 L字型タイル形成用の連結紙貼着装置  
代理人 野口 宏  
代理人 野口 宏  
代理人 武蔵 武  

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