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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1071395
審判番号 不服2002-7280  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-25 
確定日 2003-02-12 
事件の表示 平成11年特許願第203572号「窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法」拒絶査定に対する審判事件〔平成12年 2月 8日出願公開、特開2000- 40841、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年改正前特許法第44条第1項の規定による特許出願であって(出願日:平成11年7月16日、原出願(特願昭63-232886号)の出願日:昭和63年9月16日)、その請求項1ないし9に係る発明は、平成14年5月24日付けで補正された明細書の特許請求の範囲に記載される次のとおりのものである。
「【請求項1】基板上に直接的又は間接的に、N型の窒化ガリウム系化合物半導体(AlXGa1-XN;X=0を含む)からなる膜厚の厚い第1N層をハライド気相成長法により形成し、
その第1N層の上にN型の窒化ガリウム系化合物半導体(AlXGa1-XN;X=0を含む)からなる膜厚の薄い第2N層を有機金属化合物気相成長法(MOVPE)により形成することを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法。
【請求項2】前記基板はサファイア基板であって、そのサファイア基板と前記第1N層との間に、バッファ層を形成することを特徴とする請求項1に記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法。
【請求項3】前記バッファ層は多結晶とすることを特徴とする請求項2に記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法。
【請求項4】前記バッファ層は室温から500℃の範囲で形成することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法。
【請求項5】前記バッファ層は、100〜1000Åの厚さとすることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法。
【請求項6】前記バッファ層は分子線エピタキシー法(MBE)により形成することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法。
【請求項7】前記バッファ層は窒化アルミニウム(AlN)であることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法。
【請求項8】前記サファイア基板の主面はc面(0001)とすることを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法。
【請求項9】前記第1N層、又は/及び、前記第2N層は窒化ガリウム(GaN)であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の記載の窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法。」

2.前置報告書
これに対して、前置報告書の内容は、次のとおりである。
「この審判請求に係る出願については、下記の通り報告する。

・請求項 1-9 に対して
・適用条文 特許法第29条第1項3号
・引用文献 1(原出願の公開公報)
・備考
本願特許請求の範囲の請求項1には基板の材料については何も記載されておらず、基板上に直接的または間接的にハライド気相成長法により膜厚の厚い窒化ガリウム系化合物半導体からなるN層を成長し、その上に有機金属気相成長法により膜厚の薄い窒化ガリウム系化合物半導体からなるN層を順次形成することのみが記載されている。この記載によれば、請求項1には基板材料としてサファイア以外のものも含まれ、基板上に直接的または間接的に前記2つのN型窒化ガリウム系化合物半導体を順に形成しさえすればいかなるものも含まれる。
しかし、本出願の原出願である特願昭63-23288の出願当初の明細書には、基板材料としてはサファイアのみが記載されており、サファイア基板上に直接的または間接的にハライド気相成長法により膜厚の厚い窒化ガリウム系化合物半導体からなるN層を成長し、その上に有機金属気相成長法により膜厚の薄い窒化ガリウム系化合物半導体からなるN層と窒化ガリウム系化合物半導体からなるI層を順次成長することのみが記載されている。
そして、基板材料としてサファイア以外のものを用い、I層を形成することなしに、単に基板上に直接的または間接的に前記2つのN型窒化ガリウム系化合物半導体を順に形成するという発明が前記原出願の出願当初の明細書の記載から明らかであるとはいえない。
すなわち、本出願の原出願の出願当初の明細書には、N層上に形成されるI層の膜厚を薄く均一に結晶性良く成長させるために、該I層成長に先立ってサファイア基板上に直接的または間接的に前記2つのN型窒化ガリウム系化合物半導体を順に形成することが記載されているのである。ここに記載されたI層成長を含む一連の工程のうち、基板上に直接的または間接的に前記2つのN型窒化ガリウム系化合物半導体を順に形成する部分のみを取りだしても、I層成長工程がないので膜厚が薄く均一な結晶性良いI層が得られるはずもなく、本出願の原出願の出願当初の明細書の記載全体を見てもこの取りだした部分が別の発明として存在しうるとは認められない。
従って、本願明細書には原出願の出願当初の明細書または図面に記載された事項の範囲内でないものを含むので、本願は適法な分割出願とは認められない。
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引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平2-81483号公報 」

3.当審の判断
本願が適法な分割出願であるかについて検討する。
原出願の出願当初の明細書又は図面(以下、「原明細書」という。)に、本願の請求項1ないし9に係る発明が記載されていることは明らかである。
例えば、本願請求項1に関していえば、原明細書には「サファイア基板」が記載されており、これが「基板」であることは文言上明らかであるから、原明細書に「基板上に…第1N層を…形成し、その第1N層の上に…第2N層を…形成する…窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法」が記載されていることは明らかである。
ここで、前置報告書は、原明細書には、基板といってもサファイア基板上に第1N層及び第2N層を形成することが記載されているのみであって、サファイア以外の基板上に第1N層及び第2N層を形成するについては記載されていないから、本願請求項1に係る発明は、原明細書に記載された事項の範囲内でないものを含むことになり、本願は適法な分割出願とは認められないというが、原明細書に「基板上に…第1N層を…形成し、その第1N層の上に…第2N層を…形成する…窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法」が記載されていることは前記のとおりであり、また、本願明細書又は図面には、サファイア以外の基板上に第1N層及び第2N層を形成するとの原明細書に記載のない事項についての記載はないのであるから、本願請求項1のように「基板上に…」との記載がなされた明細書について、原出願の出願時に提出されたとみなしてよいものであることは明らかである。
また、前置報告書におけるI層成長工程に関する議論も同様であり、原明細書に「基板上に…第1N層をハライド気相成長法により形成し、その第1N層の上に…第2N層を…(MOVPE)により形成する…窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法」が記載されていることは明らかであり、ここで、本願請求項1にI層についての記載がないにしても、原明細書の「従来のMOVPE法だけで結晶成長させると、結晶成長速度が遅く、厚いN層を形成するのに時間がかかるという問題がある。」との記載からみて、I層から離れて上記成長方法が把握可能であり、また、本願明細書又は図面において、原明細書に記載のないI層以外の層を成長させることやI層を成長させないことについての記載はないのであるから、本願請求項1に係る発明が原出願に包含されるものであることは明らかである。
同様に、本願請求項2ないし9に係る発明が原出願に包含されるものであることも明らかである。
以上のとおり、本願は適法な分割出願であると認められ、前置報告書に記載の理由により本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2003-01-28 
出願番号 特願平11-203572
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 近藤 幸浩  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 畑井 順一
稲積 義登
発明の名称 窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法  
代理人 藤谷 修  
代理人 藤谷 修  
代理人 藤谷 修  

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