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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A61F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61F
管理番号 1071724
異議申立番号 異議2002-70930  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-06-01 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-04-09 
確定日 2002-11-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3217822号「生理用ナプキンおよびその製造方法」の請求項1〜8に係る特許に対する特許異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3217822号の請求項1〜8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3217822号の請求項1〜8に係る発明は,平成3年11月21日に特許出願され,平成13年8月3日にその特許権の設定登録がなされたところ,その後,吉川郁子より特許異議の申立てがなされ,当審より取消しの理由が通知がなされ,その指定期間内である平成14年8月12日に特許異議意見書とともに訂正請求書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1) 訂正の内容
上記訂正請求書による訂正事項は下記のとおりである。
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項3を次のとおりに訂正する。
「横漏れ防止片は,不織布シートとは別体に形成したものを表面シートに固定した事を特徴とする請求項2記載の生理用ナプキン。」
イ.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項4を次のとおりに訂正する。
「横漏れ防止片は,不織布シートの吸収層側を折り返して形成した事を特徴とする請求項2記載の生理用ナプキン。」
ウ.訂正事項c
特許請求の範囲の請求項7を次のとおりに訂正する。
「横漏れ防止片は,不織布シートとは別体に形成したものを表面シートに固定した事を特徴とする請求項6記載の生理用ナプキンの製造方法。」
エ.訂正事項d
特許請求の範囲の請求項8を次のとおりに訂正する。
「横漏れ防止片は,不織布シートの吸収層側を折り返して形成した事を特徴とする請求項6記載の生理用ナプキンの製造方法。」

(2) 訂正の目的の適否,新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a〜dは,いずれもその引用する請求項に関する誤記の訂正に該当するものであり,引用する請求項の数を減ずるものであるから,結果として形式的にも特許請求の範囲の減縮に該当するものである。また,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(3) むすび
したがって,上記訂正は特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項において準用する同法第126条第2項及び第3項に規定する要件を満たすので,当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1) 申立ての理由の概要
特許異議申立人吉川郁子の申立ての理由の概要は次のとおりである。
本件特許の請求項1〜8に係る発明は,甲第1号証〜甲第8号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,該請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,また,本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項3,4,7及び8の記載に不備があるから,該請求項に係る特許は特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるので,本件特許は取り消されるべきものである。
なお,特許異議申立人は特許異議申立書にて特許法第36条第6項第2号違反を指摘しているが,本件は上記したように平成3年11月21日の出願であるので,特許異議の申立ての理由については平成2年改正特許法における拒絶の査定の理由が適用されることになるから(平成7年政令第205号第4条第1項の規定による),適用条文についての特許異議申立人の指摘は明らかな誤記であると認め,上記のとおり判断した。

(2) 本件特許に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから,本件特許に係る発明は,上記訂正請求書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された下記のとおりのものである。

〔請求項1〕透水性の表面シートと非透水性の防漏シートとの間に,表面シートおよび防漏シートよりも幅狭な体液吸収性の吸収層を介装して,吸収層の外周にフラップを突出し,この吸収層の長さ方向の両側部の一部に幅狭なクビレ部を設け,このクビレ部の両側に,防漏シートを両側部の外方に延長突出して,ショーツ外面に折り返し止着可能なウイングを突設し,このウイングの吸収層側の両側を吸収層方向に切り欠いて切欠部とするとともに吸収層の両側位置に,熱可塑性不織布間に弾性体を挿入した横漏れ防止片を固定し,この横漏れ防止片の外側縁をウイングの切欠部よりも外方に突出するとともに横漏れ防止片を弾性体により収縮方向に付勢して吸収層の両側で立ち上げた事を特徴とする生理用ナプキン。
〔請求項2〕防漏シートにより形成したウイングの表面は,不織布シートで被覆した事を特徴とする請求項1記載の生理用ナプキン。
〔請求項3〕横漏れ防止片は,不織布シートとは別体に形成したものを表面シートに固定した事を特徴とする請求項2記載の生理用ナプキン。
〔請求項4〕横漏れ防止片は,不織布シートの吸収層側を折り返して形成した事を特徴とする請求項2記載の生理用ナプキン。
〔請求項5〕長さ方向の両側に幅狭なクビレ部を設けた吸収層を,非透水性の防漏シートの表面に位置した後,吸収層の表面に透水性の表面シートを位置し,この表面シートの表面側から加熱して吸収層の外周を防漏シートと一体に熱シールするとともに吸収層のクビレ部の両側を外方山型に膨出して熱シールすることによりウイング部を形成し,この膨出した熱シール部の外側に沿って生理用ナプキン本体の両側をカットする事により,クビレ部の両側にウイングを突出するとともにこのウイングの基部両側を吸収層側に同時にカットして切欠部を設けた後,熱可塑性不織布を二つ折りにし折曲部に弾性体を挟み込んだ横漏れ防止片を,折曲部側を切欠部よりも外方に位置して表面シートの表面に位置するとともに横漏れ防止片の吸収層側を表面シートに熱シールし,この熱シール後に生理用ナプキン本体の長さ方向の両端をカットして行う事を特徴とする生理用ナプキンの製造方法。
〔請求項6〕防漏シートにより形成したウイングの表面は,不織布シートで被覆した事を特徴とする請求項5記載の生理用ナプキンの製造方法。
〔請求項7〕横漏れ防止片は,不織布シートとは別体に形成したものを表面シートに固定した事を特徴とする請求項6記載の生理用ナプキンの製造方法。
〔請求項8〕横漏れ防止片は,不織布シートの吸収層側を折り返して形成した事を特徴とする請求項6記載の生理用ナプキンの製造方法。

(3) 刊行物
特許異議申立人が証拠として提示した下記各甲号証刊行物には,それぞれ,以下のような発明が記載されている。
甲第1号証:特開昭63-186645号公報(昭和63年8月2日公開)
甲第2号証:特開平2-11137号公報(平成2年1月16日公開)
甲第3号証:実願昭62-40474号(実開昭63-148323号)のマイクロフィルム(昭和63年9月29日発行)
甲第4号証:実願昭60-155035号(実開昭62-64521号)のマイクロフィルム(昭和62年4月22日発行)
甲第5号証:実願昭62-6396号(実開昭63-114628号)のマイクロフィルム(昭和63年7月23日発行)
甲第6号証:実願昭62-166563号(実開平1-69521号)のマイクロフィルム(平成元年5月9日発行)
甲第7号証:実願平1-148985号(実開平3-88511号)のマイクロフィルム(平成3年9月10日発行)
甲第8号証:特開平3-236838号公報(平成3年10月22日公開)

なお,特許異議申立人はさらに甲第9,10号証も提出しているが,これらはそれぞれ本件特許に係る特許出願の審査の過程で審査官が起案した拒絶理由通知書及びそれに対して特許出願人が提出した意見書であり,進歩性の判断の基礎となる刊行物には当たらない。

○甲第1号証は,「フラップつき衛生ナプキン」に関するものである。
○第4a図及び第4b図には,液体透過性カバー材料116と体液不透過性障壁118との間に,液体透過性カバー材料116及び体液不透過性障壁118よりも幅狭な吸収要素112を介装した状態のナプキン110が開示されている。(6頁右下欄11-16行及び7頁左上欄8-11行)
○第4a図にはさらに次の事項が開示されている。
・吸収要素112の外周にフラップに相当する外周フラップを突出した状態
・吸収要素112の長さ方向の両側部の一部を幅狭なクビレ部を設けた状態
・クビレ部の両側に,体液不透過性障壁118を両側部の外方に延長突出して,ショーツ外面に折返し可能なフラップ122,124を突設した状態
・吸収要素112のクビレ部に沿って液体透過性カバー材料116が形成され,このクビレ部の両側に体液不透過性障壁118を両側部の外方に延長突出してフラップ122,124を設けている状態(フラップ122,124の吸収要素側に切欠部が必然的に形成された状態)
○「ナプキン10はヒートシーリングによって都合良く集成される。フラップの吸収層表面は,これと向かい合ったカバー16の縦方向の端に熱によってシールされ,フラップの障壁材料20はこれと向かい合った障壁18の端にヒートシールされる。」(5頁左下欄19行〜右下欄4行),及び「ナプキンの周辺でヒートシールすることができる。」(7頁右上欄1-2行)

○甲第2号証は「薄い,柔軟性のある生理用ナプキン」に関するものである。
○第4図には次の事項が開示されている。
・液体透過性トップシート25と液体不透過性バリヤーシート16との間に,トップシート25及びバリヤーシート16よりも幅狭な吸収材芯34を介装した状態
・吸収材芯34の外周に外周フラップを突出した状態
・吸収材芯34の長さ方向の両側部の一部に幅狭なクビレ部を設けた状態
・クビレ部の両側に,バリヤーシート16を両側部の外方に延長突出して,ショーツ外面に折返し止着可能なフラップ70を突設した状態
・フラップ70の吸収材芯34側の両側を吸収材芯34側方向に切り欠いて切欠部とした状態

○甲第3号証は生理用ナプキンを含む「吸収性物品」に関するものである。
○「第1図〜第4図に示すように,吸収性物品Aは,透水性上面シート1と,不透水性下面シート2と,半剛性吸収体3と,該吸収体の対向側へりから外側へ延出するとともに側へりに弾性部材4を取り付けた可撓性側面フラップ5とを含む。 上面シート1と下面シート2は,吸収体3の外周へりから延出している。」(6頁4-10行。特に第2図参照)
○「上下面シート部分1b,2bは,上面シート1と同効素材,好ましくは,幅方向に二つ折りしその折り目内に縦方向へ伸縮する弾性部材4を張設した通気防水性の帯状シート7の内側部と互いに狭持する状態で接合してある。このようにして,側面フラップ5を形成し,これを内側へ折り返し,その折り返し線5aと凹部6の側へりとを実質的に一致させてある。」(6頁14行〜7頁1行。第1図及び第4図参照)
○「上面シート1,帯状シート7は公知の不織布など,下面シート2はプラスチックフィルムなど,吸収体3は綿状パルプ・紙綿の単独または組み合せ・これに高吸水ポリマー粒子を混在させたものなど,公知の素材を用いることができる。」(7頁17行〜8頁1行)
○第1図には,帯状シート7を弾性部材4により収縮方向に付勢して吸収体3の両側で立ち上げた状態が開示されている。
○「着用時に股下区域に形成されるポケットに排泄物が受止されるから漏れを防止することができる」(8頁9-11行)

○甲第4号証は,「生理用ナプキン」に関するものである。
○第1図には,透水性表面シート2と不透水性裏面シート3との間に,透水性表面シート2及び不透水性裏面シート3よりも幅狭な吸収体4を介装した状態,及び吸収体4の外周にフラップ7を突出した状態が開示されている。
○「ナプキン1は,対向側のフラップ6の一端方向に偏記し縦方向に間隔をおいて切り込み7を弧状に設け,縦方向に対向する切り込み7間の部分6aを肌当接面へ折り返してある。この折り返し部分6aの内側縁6bは吸収体4が位置する領域の側縁に熱溶着・接着剤などの手段で接着してある。このように折り返しその内側縁のみを接着することにより,縦方向対向端が開口する実質的に中空状態部分8を形成してある。」(5頁5-13行。第2図参照)

○甲第5号証は生理用ナプキンを含む「吸収性物品」に関するものである。
○第1図及び第2図には,液透過性表面材1と防漏シート2との間に,吸収体3を介装した状態が,また,防漏シート2が吸収体3の裏面から長手方向側部にかけて液体透過性表面材1を被覆しており,液体透過性表面剤1を被覆した部分では防漏シート2が横漏れ防止片としての機能を担っている状態が開示されている。

○甲第6号証は,「生理用ナプキン」に関するものである。
○第1図及び第2図に,透水性表面シート1とバックシート2との間に,吸収体3を介装した状態が,また,透水性表面シート1の両側にバックシート2で囲まれた空洞部を有するフラップ5が立ち上がった状態で形成されている状態が開示されている。

○甲第7号証は生理用ナプキンを含む「吸収性物品」に関するものである。
○第2図に,表面材2と防水材3との間に,吸収体4を介装した状態が,また,表面材2の両側に弾性シート5の一部をなす傾斜フラップ5Aが形成された状態が開示されている。

○甲第8号証は,「生理用ナプキン」に関するものである。
○第1図及び第2図に,表面シート1と第2防漏シート3との間に,吸収体4を介装した状態が,また,表面シート1の両側に弾性伸縮部材9を有する起立したバリヤーカフスBが形成された状態が開示されている。
○「弾性伸縮部材を有する起立したバリヤーカフスにより,経血の横漏れを確実に防止できるとともに,着用者の動きがあってもバリヤーカフスは常に正規の位置で起立するので,安定的に横漏れを防止することができる。」(5頁左下欄6-11行)

(4) 対比・判断
A.請求項1に係る発明
まず,請求項1に係る発明の構成を分説する。
A:透水性の表面シートと非透水性の防漏シートとの間に,表面シートおよび防漏シートよりも幅狭な体液吸収性の吸収層を介装して,
B:吸収層の外周にフラップを突出し,
C:この吸収層の長さ方向の両側部の一部に幅狭なクビレ部を設け,
D:このクビレ部の両側に,防漏シートを両側部の外方に延長突出して,ショーツ外面に折り返し止着可能なウイングを突設し,
E:このウイングの吸収層側の両側を吸収層方向に切り欠いて切欠部とするとともに
F:吸収層の両側位置に,熱可塑性不織布間に弾性体を挿入した横漏れ防止片を固定し,
G:この横漏れ防止片の外側縁をウイングの切欠部よりも外方に突出するとともに
H:横漏れ防止片を弾性体により収縮方向に付勢して吸収層の両側で立ち上げた事を特徴とする生理用ナプキン。

請求項1に係る発明と甲第1号証刊行物に記載された発明とを対比すると,甲第1号証刊行物に記載の発明は,請求項1に係る発明の必須の構成要件の一つである「吸収層の両側位置に,熱可塑性不織布間に弾性体を挿入した横漏れ防止片を固定し,この横漏れ防止片の外側縁をウイングの切欠部よりも外方に突出するとともに横漏れ防止片を弾性体により収縮方向に付勢して吸収層の両側で立ち上げた事」との要件(上記構成F〜H。以下,「相違点」ということがある。)を備えていない。

ところで,甲第8号証刊行物において特許異議申立人が「横漏れ防止片」であると主張する構成は「バリヤーカフスB」であるが,この「バリヤーカフスB」の構成については,「バリヤーカフスBの内方縁部に長手方向に沿って装着時収縮可能に弾性部材9を固定し,少なくともフラップ部Fの前記バリヤーカフスBの基部の表面が裏部に対して固着されているので,この固着により前記バリヤーカフスBが起立するようになる。」(同号証2頁右下欄1-6行)と記載されていることからすれば,同号証には構成F,Hについて記載されているということはできる。
しかし,「バリヤーカフスB」は,吸収体4の凹部4aの位置において,吸収体4に対する包皮材を構成する「第1防漏シート2」と「第2防漏シート3」をそのまま転用するものであり(第6図に示すように,バリヤーカフスBを該防漏シートとは別材料とする別の態様の場合であっても,バリヤーカフスB形成材料を「第1防漏シート2に接合する」(同号証5頁左上欄17行)限りは,本質的に変わるところはない),これらの「第1防漏シート2」及び「第2防漏シート3」は,「バリヤーカフスB」を形成しない部分(凹部4a以外の位置)においては吸収要素上面に固着されるものであるから(同号証3頁右上欄7行〜左下欄1行及び第1図,第3図参照),「バリヤーカフスB」は生理用ナプキンの幅方向の外側へ向くことはあり得ないものと認められる。(なお,第8図においては,「凹部4a位置以外のバリヤーカフス形成材料を,たとえば第1防漏シート2を外側に折り返し,その折り返し部分を相互にホットメルト接着剤などにより固着する」(同号証5頁右上欄7-10行)という別の態様の構成が記載されているが,このような構成でも「バリヤーカフスB」の端部は生理用ナプキンの幅を超えて外方へ延出することはない。)
したがって,同号証には,少なくとも構成Gについて開示または示唆されているとは言えない。

次に,甲第3号証刊行物において,特許異議申立人は「横漏れ防止片」に相当するものは「側面フラップ5」と主張するものであるが,この「側面フラップ5」は内側へ折り返されているものであり(上記摘記事項参照。なお,該文献の実用新案登録請求の範囲第1項においても「側面フラップを前記上面シートの上面へ折り返す」との構成が記載されている),このような構成では「側面フラップ5」の自由端は内側を向いているのであるから,「横漏れ防止片の外側縁がウイングの切欠部よりも外方に突出する」という構成Gは到底想定できるものではない。したがって,同号証には,少なくとも構成Gについて開示または示唆されているとは言えない。
なお,同号証の「側面フラップ5」は「吸収体の対向側へりから外側へ延出するとともに側へりに弾性部材4を取り付けた可撓性側面フラップ5」(上記摘記事項参照)であるから,請求項1に係る発明でいう「フラップ」に該当するものまたはその変形物といえ,そうすると,同号証の「側面フラップ5」は請求項1に係る発明における「フラップ」とは別に存在する「横漏れ防止片」に該当すると判断すること自体にも疑問が残る。

さらに,甲第7号証刊行物において特許異議申立人が「横漏れ防止片」であると主張する構成は「傾斜フラップ5A」であるが,これは「熱可塑性不織布間に弾性体を挿入した」ものでもなく,したがって「弾性体により収縮方向に付勢して吸収層の両側で立ち上げた」ものでもないことから,同号証には構成F〜Hに関する記載は全くないといえる。
しかし,仮にそのような構成は「横漏れ防止片」の構成として周知のものであるとしたとしても,同号証には,「生理用ナプキン1の幅は,生理時に着用される下着のクロッチ幅が主として80〜65mmであることより,上記傾斜フラップ5Aを常に防護壁として機能させるためには該クロッチ幅以下であることが必要であるが,幅を小さくし過ぎるとその吸収体4の吸収容量が不足してしまう。そのため生理用ナプキン1の幅W3としては,80〜60mmであることが好ましく,75〜65mmであることが更に好ましい。」(12頁5-13行)と記載されており,この記載は,傾斜フラップ5A(横漏れ防止片に相当)幅を含めた生理用ナプキンの幅が下着のクロッチ幅以下であることを必須とするものと認められ,そうすると,少なくとも構成Gを想起する際の阻害要因となるものである。

なお,この上記相違点ついては,甲第2,4〜6号証刊行物にも記載されていない。
すなわち,甲第2号証刊行物には,「横漏れ防止片」に相当する構成について何ら記載されていない。
甲第4,5号証刊行物において特許異議申立人が「横漏れ防止片」であると主張する構成は,それぞれ「折り返し部分6a」,「防漏シート2」であるが,いずれも「熱可塑性不織布間に弾性体を挿入した」ものでもなく,したがって「弾性体により収縮方向に付勢して吸収層の両側で立ち上げた」ものでもないことから,同号証には構成F〜Hに関する記載は全くないといえる。
甲第6号証刊行物において特許異議申立人が「横漏れ防止片」であると主張する構成は,「フラップ5」であり,そして,同号証の第6図に「フラップ5の中にフラップ内層材7が設けられ」(同号証5頁9-10行)た構成が記載されている。同号証においては,この「フラップ内層材7」がどのようなものか明示されていないが,「肌との密着性をよくするため,フラップ5の空洞部6の内壁に,発泡シートやクレープ紙などを接着剤などで積層しておくことが望ましい。」(同号証6頁8-11行)との記載が「フラップ内層材7」の説明であるとすれば,同号証には「熱可塑性不織布間に弾性体を挿入した」記載はあるということはできる。しかし,このような構成の「フラップ内層材7」では,「弾性体により収縮方向に付勢して吸収層の両側で立ち上げ」ることができるものではない。したがって,同号証には少なくとも構成Hに関する記載も示唆もない。
また,仮に構成F,Hは「横漏れ防止片」の構成として周知のものであるとしても,甲第4〜6号証における「折り返し部分6a」,「防漏シート2」及び「フラップ5」の構成は,いずれも吸収層の両側から吸収層の吸収面に向かって折り返す構成のものであるため,上記した甲第8号証刊行物または甲第3号証刊行物において示したのと同様の理由により,甲第4〜6号証には,少なくとも構成Gについて開示または示唆されているとは言えない。

したがって,甲第2〜8号証刊行物には,構成F〜H,少なくとも構成Gについての記載がなく,またこれらの構成について示唆する記載もないのである。

そして,請求項1に係る発明は,「透水性の表面シートと非透水性の防漏シートとの間に,表面シートおよび防漏シートよりも幅狭な体液吸収性の吸収層を介装し」(構成A)た「生理用ナプキン」において,「吸収層の外周にフラップを突出し,この吸収層の長さ方向の両側部の一部に幅狭なクビレ部を設け,このクビレ部の両側に,防漏シートを両側部の外方に延長突出して,ショーツ外面に折り返し止着可能なウイングを突設し,このウイングの吸収層側の両側を吸収層方向に切り欠いて切欠部とする」構成(構成B〜E)と,上記相違点の構成(構成F〜H)を組み合わせることにより,「ナプキンを装着した場合,間隔が狭いショーツの股部分の幅に対応してウイングを折返し止着可能とするため,ショーツの股部に一体的にフィットして固定し,激しい運動等によってもズレる事がなく,ネジレ,ヨレ等を防止して,安定した装着が可能となる。」(本件特許明細書段落0044:効果(a)),また,「使用者の局部の両側で,ウイングの切欠部よりも幅広い間隔で立ち上がった横漏れ防止片によって,幅狭なクビレ部から体液の拡散が生じても,体液の横漏れを阻止し,ショーツ等への汚染防止を行って,衛生的な装着が可能となるものである。」(同段落0045:効果(b))という顕著な効果を奏するものである。

そうすると,請求項1に係る発明を甲第1〜8号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたとすることはできない。

なお,特許異議申立人は,上記相違点のうち構成F,Hについては甲第3号証刊行物に記載されているか,あるいは甲第4〜8号証刊行物にそれに類似する構成が記載されており,本件特許明細書には「構成Gによって特定される該ウイングと該横漏れ防止片との位置関係に関する特徴的構成によって奏される特有の効果は特に記載されていない」し,「そもそも,構成Gは構成B〜Eによって特定されたウイングに関する特徴的構成と,構成F,Hによって特定された横漏れ防止片に関する特徴的構成とを同時に具備した場合に必然的に導出された構成に過ぎない。」旨主張するとともに,上記効果(a)は,「構成B〜Eによって特定されたウイングに関する特徴的構成によって奏される特有の効果であ」り,上記効果(b)は,ウイングの有無とは関係なく,「構成F,Hによって特定された横漏れ防止片に関する特徴的構成によって奏される特有の効果である」から,請求項1に係る発明は,単なる組み合わせ(単なる寄せ集め)の発明であるから,当業者が容易に想到し得たものである旨主張している。

しかし,構成Gは,ウイングの折り返し位置と横漏れ防止片の外側端との位置関係を規定するものであり,この関係は,幅狭なクビレを設けたヒョウタン型のナプキンを「間隔が狭いショーツの股部分の幅に対応してウイングを折り返し止着可能とする」ことによる効果(上記効果(a))と,幅狭なクビレ部における体液吸収能力の低下を補うための「ウイングの切欠部よりも幅広い間隔で立ち上がった横漏れ防止片」の効果(上記効果(b))を同時に達成させるために欠くことのできない構成と認められ,このような効果について上記各刊行物に開示も示唆もない状況において,各構成をどのように組み合わせるかについて容易に想起し得ず,そうすると構成Gを「必然的に導出された構成」と認めることができないばかりでなく,そもそも上記各刊行物に記載された構成を組み合わせること自体当業者が容易に想到し得るものではないものである。したがって,特許異議申立人の上記主張は受け入れられない。

B.請求項2〜4に係る発明
請求項2〜4に係る発明はその請求項の引用形式から見て請求項1に係る発明のすべての特徴を含むものであり,そして,上記したように請求項1に係る発明に進歩性があるのであるから,請求項2〜4に係る発明も当然進歩性を有する。

C.請求項5〜8に係る発明
請求項5〜8に係る発明は,それぞれ請求項1〜4に係る発明の「生理用ナプキン」の製造方法の発明である。そして,上記したように請求項1〜4に係る発明に進歩性があるのであるから,その製造方法の発明の請求項5〜8に係る発明も当然進歩性を有する。

(5) 特許請求の範囲の記載不備について
上記2.で示したように上記訂正が認められる結果,特許異議申立人の主張する特許明細書の特許請求の範囲の記載不備は解消した。

(6) むすび
以上のとおりであるから,特許異議申立人の主張する特許異議申立の理由及び証拠によっては,本件請求項1〜8に係る特許を取り消すことができない。
また,ほかに本件請求項1〜8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
生理用ナプキンおよびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 透水性の表面シートと非透水性の防漏シートとの間に、表面シートおよび防漏シートよりも幅狭な体液吸収性の吸収層を介装して、吸収層の外周にフラップを突出し、この吸収層の長さ方向の両側部の一部に幅狭なクビレ部を設け、このクビレ部の両側に、防漏シートを両側部の外方に延長突出して、ショーツ外面に折返し止着可能なウイングを突設し、このウイングの吸収層側の両側を吸収層方向に切り欠いて切欠部とするとともに吸収層の両側位置に、熱可塑性不織布間に弾性体を挿入した横漏れ防止片を固定し、この横漏れ防止片の外側縁をウイングの切欠部よりも外方に突出するとともに横漏れ防止片を弾性体により収縮方向に付勢して吸収層の両側で立ち上げた事を特徴とする生理用ナプキン。
【請求項2】 防漏シートにより形成したウイングの表面は、不織布シートで被覆した事を特徴とする請求項1記載の生理用ナプキン。
【請求項3】 横漏れ防止片は、不織布シートとは別体に形成したものを表面シートに固定した事を特徴とする請求項2記載の生理用ナプキン。
【請求項4】 横漏れ防止片は、不織布シートの吸収層側を折り返して形成した事を特徴とする請求項2記載の生理用ナプキン。
【請求項5】 長さ方向の両側に幅狭なクビレ部を設けた吸収層を、非透水性の防漏シートの表面に位置した後、吸収層の表面に透水性の表面シートを位置し、この表面シートの表面側から加熱して吸収層の外周を防漏シートと一体に熱シールするとともに吸収層のクビレ部の両側を外方山型に膨出して熱シールする事によりウイング部を形成し、この膨出した熱シール部の外側に沿って生理用ナプキン本体の両側をカットする事により、クビレ部の両側にウイングを突出するとともにこのウイングの基部両側を吸収層側に同時にカットして切欠部を設けた後、熱可塑性不織布を二つ折りにし折曲部に弾性体を挟み込んだ横漏れ防止片を、折曲部側を切欠部よりも外方に位置して表面シートの表面に位置するとともに横漏れ防止片の吸収層側を表面シートに熱シールし、この熱シール後に生理用ナプキン本体の長さ方向の両端をカットして行う事を特徴とする生理用ナプキンの製造方法。
【請求項6】 防漏シートにより形成したウイングの表面は、不織布シートで被覆した事を特徴とする請求項5記載の生理用ナプキンの製造方法。
【請求項7】 横漏れ防止片は、不織布シートとは別体に形成したものを表面シートに固定した事を特徴とする請求項6記載の生理用ナプキンの製造方法。
【請求項8】 横漏れ防止片は、不織布シートの吸収層側を折り返して形成した事を特徴とする請求項6記載の生理用ナプキンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は吸収部にクビレ部を設けてヒョウタン型に形成した生理用ナプキンに係るものであって、装着時の体液の横漏れを防止するとともに良好な使用感を得ようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、長方形型のナプキンではなく、吸収層に幅狭なクビレを設けたヒョウタン型のナプキンが存在する。このヒョウタン型のナプキンは、装着状態に於て装着者の幅狭な股部にフイットし、ネジレ、ヨレ等の変形を防止するのに有効であった。
【0003】
しかしながら、ヒョウタン型のナプキンは、吸収層のクビレ部を幅狭に形成するため、幅方向に拡散する体液の吸収能力が低く、クビレ部の両側から体液が横漏れを生じ易い欠点を有していた。
【0004】
また、上記ヒョウタン型のナプキンで横漏れを防止する目的で提案されたものに、特開昭60-193461号公報記載の発明が存在する。この発明は、クビレ部の両側に位置するフラップに弾性体を介装し、この部分のフラップを立ち上げようとしている。
【0005】
しかしながら、この提案のナプキンは、クビレ部の両側に突出した幅狭なフラップを立ち上げようとするものであるため、充分な立ち上げができず、体液の吸収量が多いと、やはり横漏れを生じる欠点があった。
【0006】
また、従来、長方形型のナプキンは、ショーツ外面への止着を目的として、両側のフラップから防漏層をウイング状に延長突出する事が行われている。しかしながら、この長方形型のナプキンは、図16に示す如くウイング(1)の吸収層(2)側の両側を切り欠いていないため、ウイング(1)の折返し間隔(3)が広く、ショーツ(4)の幅に対応してウイング(1)を折り返す事ができないため、ナプキン(5)は局部からズレたり、ヨレ等を生じ横漏れを生じる虞れがあった。
【0007】
また、ヒョウタン型のナプキンに上記構成のウイングを転用しようとすると、クビレ部から拡散し易い体液がウイングを伝わって、ショーツの外面側に漏れる虞れを生じた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述のごとき課題を解決しようとするものであって、ヒョウタン型のナプキンに於て、ウイングによるショーツヘの確実な止着を可能にするとともに装着時のネジレ、ヨレ等の変形を防止し、体液の吸収量が多い場合にも、体液の横漏れを防止して、衛生的な装着を行う事を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述のごとき課題を解決するため、透水性の表面シートと非透水性の防漏シートとの間に、表面シートおよび防漏シートよりも幅狭な体液吸収性の吸収層を介装して、吸収層の外周にフラップを突出し、この吸収層の長さ方向の両側部の一部に幅狭なクビレ部を設け、このクビレ部の両側に、防漏シートを両側部の外方に延長突出して、ショーツ外面に折返し止着可能なウイングを突設し、このウイングの吸収層側の両側を吸収層方向に切り欠いて切欠部とするとともに吸収層の両側位置に、熱可塑性不織布間に弾性体を挿入した横漏れ防止片を固定し、この横漏れ防止片の外側縁をウイングの切欠部よりも外方に突出するとともに横漏れ防止片を弾性体により収縮方向に付勢して吸収層の両側で立ち上げて成るものである。
【0010】
また、上記発明を実施する方法は、長さ方向の両側に幅狭なクビレ部を設けた吸収層を、非透水性の防漏シートの表面に位置した後、吸収層の表面に透水性の表面シートを位置し、この表面シートの表面側から加熱して吸収層の外周を防漏シートと一体に熱シールするとともに吸収層のクビレ部の両側を外方山型に膨出して熱シールする事によりウイング部を形成し、この膨出した熱シール部の外側に沿って生理用ナプキン本体の両側をカットする事により、クビレ部の両側にウイングを突出するとともにこのウイングの基部両側を吸収層側に同時にカットして切欠部を設けた後、熱可塑性不織布を二つ折りにし折曲部に弾性体を挟み込んだ横漏れ防止片を、折曲部側を切欠部よりも外方に位置して表面シートの表面に位置するとともに横漏れ防止片の吸収層側を表面シートに熱シールし、この熱シール後に生理用ナプキン本体の長さ方向の両端をカットして行うものである。
【0011】
また、防漏シートにより形成したウイングの表面は、不織布シートで被覆しても良い。
【0012】
また、横漏れ防止片は、不織布シートとは別体に形成したものを表面シートに固定しても良い。
【0013】
また、横漏れ防止片は、不織布シートの吸収層側を折り返して形成しても良い。
【0014】
【作用】
本発明は上述のごとく構成したものであるから、ナプキンを使用者が装着するには、まず、股下まで降ろしたショーツの内面に、防漏シート側を臨ませて位置し、この状態のままショーツを引き上げて着用し、このショーツの股側の両側から露出するウイングを、ショーツの外面側に折り返す。
【0015】
このウイングは、吸収層側の両側に、吸収層方向に切り欠いた切欠部を形成している。そして、この切欠部間でウイングを折り返す事ができる。そのため、クビレ部の前後方向に位置する外周フラップの外側縁よりも内方位置でウイングを折曲する事が可能となる。
【0016】
このため、ナプキンは、間隔が狭いショーツの股部分の幅に対応してウイングを折返し止着可能とするため、ナプキンがショーツの股部に一体的にフィットして固定でき、激しい運動等によってもズレるような事がなく、ネジレ、ヨレ等を防止して、安定した装着が可能となる。
【0017】
また、ナプキンは、吸収層のクビレ部を幅狭に形成しているため、体液の吸収能力が多少低下している。しかし、ナプキンは、吸収層の両側の表面側に、横漏れ防止片をサイドフラップとは別個に固定している。この横漏れ防止片は、外側縁をウイングの切欠部よりも外方に突出するとともに弾性体の復元収縮力によって収縮方向に付勢し、吸収層の両側で立ち上がる。
【0018】
このため、ナプキンは、使用者の局部の両側で、ウイングの切欠部よりも幅広い間隔で立ち上がった横漏れ防止片によって、幅狭なクビレ部から体液の拡散が生じても、体液の横漏れを阻止し、ショーツ等への汚染防止を行って、衛生的な装着が可能となる。
【0019】
また、防漏シートにより形成したウイングの表面を、不織布シートで被覆すれば、手触りが良く、肌への接触も柔軟となり、快適な装着感を得る事が可能となる。
【0020】
また、横漏れ防止片には、不織布シートとは別体に形成したものを表面シートに固定すれば、撥水性の優れた高品質の材料を少量使用しながら横漏れ防止片を形成でき、廉価な製造が可能となる。
【0021】
また、横漏れ防止片は、不織布シートの吸収層側を折り返して形成すれば、横漏れ防止片の形成位置がズレる虞れがなく、簡便な製造が可能となる。
【0022】
【実施例】
以下本発明の第1実施例を図面に於いて説明すれば、(10)は吸収層で、コットン、パルプ等の体液吸収性の吸収材により形成し、長さ方向の両側部の一部に幅狭なクビレ部(11)を設け、全体形状をヒョウタン型に形成している。そして、この吸収層(10)を、図1に示す如くポリエチレンフィルム等の非透水性の防漏シート(12)の表面に位置する。
【0023】
次に、吸収層(10)の表面に、図2に示す如く、吸収層(10)よりも幅広なメッシュシート等の透水性の表面シート(13)を位置する。そして、この表面シート(13)の両側およびこの表面シート(13)で被覆していない防漏シート(12)の両側表面を、ポリエチレン、ポリプロピレン等の繊維から成る熱可塑性の不織布シート(14)で被覆する。このように形成すると、防漏シート(12)だけを露出する場合に比し、手触りが良く、肌への接触も柔軟となり、快適な装着感を得る事が可能となる。
【0024】
そして、この不織布シート(14)の表面から、吸収層(10)の外周を一定の幅で加熱溶着し、この加熱溶着部(15)により不織布シート(14)と防漏シート(12)とを熱シール部で一体的に熱シールする。この場合、クビレ部(11)の両側を外方山型に膨出してウイング状のウイング部(16)を設けて熱シールする。
【0025】
次に、この熱シール後、カッターを用いて、熱シール部の外側に沿ってカットする事により、吸収層(10)の両側に図3に示す如くサイドフラップ(17)、およびクビレ部(11)の両側にウイング(18)を突出形成する。また、このウイング(18)の形成時に、ウイング(18)の基部両側を吸収層(10)側に同時にカットして切欠部(19)を凹設する。
【0026】
また、これまでの生理用ナプキン本体(20)の形成過程とは別個に横漏れ防止片(23)を形成する。この形成方法は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の繊維から成る帯状の熱可塑性不織布を二つに折って、この折曲部(21)にゴム等の弾性体(22)を伸張状態で挟み込み、この弾性体(22)を、ホットメルト等で適宜間隔で固定したり、また両端を除く中央部を一体的に固定する。
【0027】
また、横漏れ防止片(23)の折曲部(21)側を、図4に示す如くウイング(18)の切欠部(19)よりも外方に位置する。そして、横漏れ防止片(23)の吸収層(10)側を、吸収層(10)の外周形状に沿って不織布シート(14)の表面に熱シールし、吸収層(10)の両側に横漏れ防止片(23)を固定する。このように横漏れ防止片(23)は、不織布シート(14)とは別体に形成したものを表面シート(13)に固定すると、撥水性の優れた高品質の材料で横漏れ防止片(23)を形成でき、廉価な製造が可能となる。
【0028】
次に、生理用ナプキン本体(20)の長さ方向の両端を、図5に示す如く吸収層(10)から一定の間隔を介してカットし、吸収層(10)の前後方向にエンドフラップ(24)を突出形成する。
【0029】
また、防漏シート(12)の裏面には、図6に示す如くホットメルト等の塗布によりショーツ(25)内面への内面止着部(26)を形成する。またウイング(18)の裏面には、ショーツ(25)外面への外面止着部(27)を形成する。また、これらの内面止着部(26)および外面止着部(27)を、使用時に剥離する離型紙(28)で被覆している。
【0030】
上述のごとく構成したものに於て、ナプキン(29)を使用者が装着するには、まず、股下まで降ろしたショーツ(25)の内面に、防漏シート(12)側を臨ませて位置し、内面止着部(26)をショーツ(25)の内面に止着固定する。
【0031】
そして、この状態のままショーツ(25)を引き上げて着用し、このショーツ(25)の股部の両側から露出するウイング(18)を、図9に示す如くショーツ(25)の外面側に折り返し、ウイング(18)の裏面に設けた外面止着部(27)をショーツ(25)の外面に止着固定する。
【0032】
このウイング(18)は、吸収層(10)側の両側に、図5、図6に示す如く吸収層(10)方向に切り欠いた切欠部(19)を形成している。そして、この切欠部(19)間でウイング(18)を折り返す事ができる。そのため、クビレ部(11)の前後方向に位置するサイドフラップ(17)の外側縁よりも内方位置でウイング(18)を折曲する事が可能となる。
【0033】
このため、ナプキン(29)は、図9に示す如く、間隔が狭いショーツ(25)の股部分の幅に対応してウイング(18)を折返し止着可能とするため、ショーツ(25)の股部に一体的にフィットして固定でき、激しい運動等によってもズレるような事がなく、ネジレ、ヨレ等を防止して、安定した装着が可能となる。
【0034】
また、ナプキン(29)は、吸収層(10)のクビレ部(11)を幅狭に形成しているため、体液の吸収能力が多少低下している。しかし、ナプキン(29)は、吸収層(10)の両側を被覆する不織布シート(14)の表面側に、横漏れ防止片(23)を固定している。この横漏れ防止片(23)は、図5、図6に示す如く外側縁をウイング(18)の切欠部(19)よりも外方に突出するとともに弾性体(22)の復元収縮力によって収縮方向に付勢し、図9に示す如く吸収層(10)の両側で立ち上がる。
【0035】
このため、ナプキン(29)は、使用者の局部の両側で、ウイング(18)の切欠部(19)よりも幅広い間隔で立ち上がった横漏れ防止片(23)によって、幅狭なクビレ部(11)から体液の拡散が生じても、体液の横漏れを阻止し、ショーツ(25)等への汚染防止を行って、衛生的な装着が可能となる。
【0036】
また、上記第1実施例に於て、横漏れ防止片(23)は、不織布シート(14)とは別体に形成したものを、不織布シート(14)の表面側に固定した。しかし、第2実施例では、横漏れ防止片(23)を、不織布シート(14)の吸収層(10)側を折り返して形成した。以下その実施例を詳細に説明する。
【0037】
まず、吸収層(10)の表面に透水性の表面シート(13)を位置するまでは、第1実施例と同一である。
【0038】
次に、表面シート(13)の両側およびこの表面シート(13)で被覆していない防漏シート(12)の両側表面を、図10に示す如くポリエチレン、ポリプロピレン等の繊維から成る熱可塑性の不織布シート(14)で被覆する。この不織布シート(14)は、吸収層(10)側の内方を外面側に折返し、この折曲部(21)にゴム等の弾性体(22)を挟み込んでいる。
【0039】
次に、不織布シート(14)の表面から、吸収層(10)の外周を一定の幅で加熱溶着し、この加熱溶着部(15)により不織布シート(14)と防漏シート(12)とを熱シール部で一体的に熱シールする。この場合、クビレ部(11)の両側を外方山型に膨出してウイング状に熱シールする事によりウイング部(16)を形成する。
【0040】
そして、この熱シール後、カッターを用いて、熱シール部の外側に沿ってカットする事により、図11に示す如く吸収層(10)の両側にサイドフラップ(17)、およびクビレ部(11)の両側にウイング(18)を突出形成する。また、このウイング(18)の形成時に、ウイング(18)の基部両側を吸収層(10)側に同時にカットして切欠部(19)を凹設する。
【0041】
そして、不織布シート(14)の折曲部(21)を、図12に示す如く外方に折返し、折曲部(21)をウイング(18)の切欠部(19)よりも外方に位置する。そして横漏れ防止片(23)の吸収層(10)側を、吸収層(10)の外周形状に沿って不織布シート(14)の表面に熱シールし、吸収層(10)の両側に横漏れ防止片(23)を固定する。
【0042】
次に、生理用ナプキン本体(20)の長さ方向の両端を、図13に示す如く吸収層(10)から一定の間隔を介してカットし、吸収層(10)の前後方向にエンドフラップ(24)を突出形成する。
【0043】
このように、横漏れ防止片(23)を、不織布シート(14)の吸収層(10)側を折り返して形成する事により、横漏れ防止片(23)の形成位置がズレる虞れがなく、簡便な製造が可能となる。
【0044】
【発明の効果】
本発明は上述のごとく構成したものであるから、ナプキンを装着した場合、間隔が狭いショーツの股部分の幅に対応してウイングを折返し止着可能とするため、ショーツの股部に一体的にフィットして固定し、激しい運動等によってもズレるような事がなく、ネジレ、ヨレ等を防止して、安定した装着が可能となる。
【0045】
また、使用者の局部の両側で、ウイングの切欠部よりも幅広い間隔で立ち上がった横漏れ防止片によって、幅狭なクビレ部から体液の拡散が生じても、体液の横漏れを阻止し、ショーツ等への汚染防止を行って、衛生的な装着が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】吸収層を表面シートの表面側に位置した状態を示す第1実施例の平面図。
【図2】吸収層の表面に表面シート、不織布シートを位置した状態を示す第1実施例の平面図。
【図3】吸収層の両側をカットした状態を示す第1実施例の平面図。
【図4】吸収層の両側に横漏れ防止片を止着した状態を示す第1実施例の平面図。
【図5】第1実施例の完成品の表面側を示す平面図。
【図6】第1実施例の完成品の裏面側を示す平面図。
【図7】図5のA-A線拡大端面図。
【図8】図5のB-B線拡大端面図。
【図9】第1実施例のショーツヘの装着状態におけるウイングの端面図
【図10】表面シートの表面に表面シート、不織布シートを位置した状態を示す第2実施例の平面図。
【図11】吸収層の両側をカットした状態を示す第2実施例の平面図。
【図12】吸収層の両側に横漏れ防止片を固定した状態を示す第2実施例の平面図。
【図13】第2実施例の完成品の平面図。
【図14】図13のA-A線拡大端面図。
【図15】図13のB-B線拡大端面図。
【図16】従来ナプキンの装着状態に於けるウイングの端面図。
【符号の説明】
10 吸収層
11 クビレ部
12 防漏シート
13 表面シート
14 不織布シート
16 ウイング部
18 ウイング
19 切欠部
20 生理用ナプキン本体
22 弾性体
23 横漏れ防止片
 
訂正の要旨 訂正の要旨
〔訂正事項a〕
誤記の訂正を目的として,特許請求の範囲の請求項3を次のとおりに訂正する。
「横漏れ防止片は,不織布シートとは別体に形成したものを表面シートに固定した事を特徴とする請求項2記載の生理用ナプキン。」
〔訂正事項b〕
誤記の訂正を目的として,特許請求の範囲の請求項4を次のとおりに訂正する。
「横漏れ防止片は,不織布シートの吸収層側を折り返して形成した事を特徴とする請求項2記載の生理用ナプキン。」
〔訂正事項c〕
誤記の訂正を目的として,特許請求の範囲の請求項7を次のとおりに訂正する。
「横漏れ防止片は,不織布シートとは別体に形成したものを表面シートに固定した事を特徴とする請求項6記載の生理用ナプキンの製造方法。」
〔訂正事項d〕
誤記の訂正を目的として,特許請求の範囲の請求項8を次のとおりに訂正する。
「横漏れ防止片は,不織布シートの吸収層側を折り返して形成した事を特徴とする請求項6記載の生理用ナプキンの製造方法。」
異議決定日 2002-10-15 
出願番号 特願平3-332415
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A61F)
P 1 651・ 534- YA (A61F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 上條 のぶよ  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 深津 弘
松浦 新司
登録日 2001-08-03 
登録番号 特許第3217822号(P3217822)
権利者 株式会社資生堂
発明の名称 生理用ナプキンおよびその製造方法  
代理人 清水 修  
代理人 清水 修  

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