ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
関連判例 | 平成14年(行ケ)78号審決取消請求事件 |
---|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない A47G 審判 全部無効 1項1号公知 無効としない A47G 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A47G |
---|---|
管理番号 | 1072660 |
審判番号 | 無効2001-35339 |
総通号数 | 40 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-11-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-07-31 |
確定日 | 2003-03-11 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3096040号発明「ポスト用異物収集装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、これを8分し、その1を被請求人の負担とし、その余を請求人の負担とする。 |
理由 |
〔1〕本件特許及び本件無効審判事件の手続の経緯 本件特許は、平成9年2月28日に特許法第30条第2項の適用を受けようとする特許出願として出願された特願平9-46655号(以下「原出願」という。)の分割出願として、平成12年4月19日に出願されたものであり、本件特許第3096040号(以下「本件特許」という。)及び本件審判事件に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 1)本件特許の出願日:平成9年2月28日(原出願の出願日) 2)特許権の設定登録:平成12年8月4日 3)本件無効審判の請求:平成13年7月31日 4)審判事件答弁書:平成13年10月23日付け 5)審判請求補充書(請求人):平成13年11月27日付け 6)口頭による審尋:平成13年11月27日 7)口頭審理:平成13年11月27日 8)上申書(被請求人):平成13年11月29日付け 9)特許権の一部抹消登録申請書(被請求人)(請求項第7項に係る特許権の放棄):平成13年12月1日付け 10)審判請求補充書(2)(請求人):平成13年12月11日付け 11)上申書(請求人):平成13年12月11日 12)特許権の一部(請求項第7項)抹消登録:平成13年12月18日 〔2〕当事者の主張 1.請求人は、「第3096040号特許はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」(請求の趣旨)ものであって、請求の理由として、平成13年11月27日期日の口頭審理において、審判請求書の記載に加えて、以下のように陳述した。 「本件特許発明は、甲第2号証、甲第4号証、甲第10号証、甲第11号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第1号又は第3号の規定に該当する。甲第10号証及び甲第11号証による当該発明の第1の公知日は平成8年6月11日、第2の公知日は平成8年8月24日であり、甲第2号証による当該発明の第3の公知日は平成8年10月7日である。 第1及び第2の公知については特許法第30条第2項の適用はない。第3の公知については、特許を受ける権利を有する者の意に反しない公知であるため特許法第30条第2項は適用されない。 被請求人は本件について特許法第29条第1項各号の例外規定である特許法第30条第2項の適用を主張するが、特許法第30条第2項は例外規定であるから限定的に解釈適用すべきである。 特許法第30条第2項適用についての立証責任はすべて権利者にある。被請求人は、推定云々と主張して請求人に「意に反しない」旨の立証責任がある旨主張するようだが、かかる推定規定は、特許法中に全く存在しない。 本件の場合の立証は、被請求人又は発明者の陳述書があるのみである。 本件は、郵政省の注文により発明されたものであり且つ郵政省が旧火気防止装置について先に競争入札制度を採用していることを知りながら、被請求人は全くこれを考慮しないで郵政省に競争入札をせしめ、これを公知ならしめたものでありこれを意に反するとは言えない。」 そして、請求人は以下の証拠方法を提出した。 甲第1号証:平成8年10月7日発行の官報(号外政府調達第185号第1面)甲第2号証:平成8年10月7日付けの郵便差出箱(十号)についての指名競争入札通知及び仕様書 甲第3号証:平成8年11月26日付け指名競争入札通知 甲第4号証:郵便差出箱(十号)についての指名競争入札に関する仕様書 甲第5号証:平成9年1月21日発行の官報(号外政府調達第8号)第49面、第54面 甲第6号証:郵政省大臣官房財務部資材課契約室宛の承認書 甲第6号証の1:火気防止装置部詳細図 甲第6号証の2:火気防止装置本体、他 甲第6号証の3:火気防止装置ガイド板、支持板 甲第6号証の4:火気防止装置シャッター板、他 甲第7号証:被請求人が原出願について平成9年3月8日に提出し、本件特許に係る特許出願において援用した新規性喪失の例外証明書 甲第8号証:被請求人の出願に係る平成9年特許出願公開第47354号公報 甲第9号証:名古屋簡易裁判所宛の平成9年2月28日付け調停申立書 (以上は、審判請求書に添付して提出) 甲第10号証の1〜9:1996年8月26日付けの社団法人郵政ニューオフィス研究会(金井)から郵務局輸送企画課企画調整係(松川次席)宛書面、及び同書面に添付された設計図 甲第11号証の1〜8:郵便差出箱十号乃至十四号の仕様書 (以上は、平成13年11月27日付け審判請求補充書に添付して提出) 甲第12号証の1〜53:社団法人郵政ニューオフィス研究会の「郵便差出箱」の設計図面 甲第13号証:後藤浩介の陳述書 甲第14号証:平成8年4月5日発行の官報(号外政府調達第60号第9面) 甲第15号証:平成8年5月21日発行の官報(号外政府調達第188号第18面) (以上は、平成13年12月11日付け審判請求補充書(2)に添付して提出) 2.一方、被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」(答弁の趣旨)ものであって、請求の理由として、平成13年11月27日期日の口頭審理において、審判請求書の記載に加えて、以下のように陳述した。 「特許法第30条第2項の適用について、学説、中山教授によれば、「意に反して」とは、かなり広く、不注意によって公知となった場合も含まれる。メルクマークとしては、本人に公表という事実を容認する意思があったか否かという点である。発明者であり、かつ本出願当時の東海理研株式会社の代表取締役であった山田由博の陳述書を乙第9号証として提出している。これによれば、山田由博に公表という事実を容認する意思がなかったことは明らかである。 第1回目の製品は旧郵政省のアドバイスによって、入札書類配布前に出願し、権利を取得している。今回もそのつもりでいたら、意に反して入札書類が配布されたものである。 甲第10号証等は、いずれも守秘義務のある者であり、公知の証拠とはならない。」 そして、被請求人は以下の証拠方法を提出した。 乙第1号証:山田由博の陳述書 乙第2号証:平成8年5月21日付けのFAX送信通知書 乙第3号証:平成8年5月22日付けのFAX送信通知書 乙第4号証:平成8年5月22日付けのFAX送信通知書 乙第5号証:平成8年6月13日付けのFAX送信通知書 乙第6号証:稲田勝秋氏及び土岐力氏に対する平成13年9月19日付けの事情聴取書 乙第7号証の1〜8:社団法人郵政ニューオフィス研究会の「郵便差出箱用火気防止装置」の設計図面 乙第8号証の1〜79:社団法人郵政ニューオフィス研究会の「郵便差出箱用火気防止装置」の設計図面 〔3〕本件特許に係る発明 本件特許に係る発明は、訂正された明細書及び図面からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至請求項6及び請求項8に記載された以下のものにある。 「請求項1 ポスト本体の差入口の内側下方で、かつ、ポスト本体内の郵袋の上方に位置し、前記差入口から投函された郵便物のみを選択して前記郵袋に導く選択手段と、前記選択手段で選択された前記差入口から投函された郵便物を除く異物を収容する異物収容手段と、少なくとも、揺動自在に配設し、前記差入口から投函された運動エネルギーを低減させる差入口より広い幅を有し、略く字状に折曲した規制板を有し、前記差入口から投函された郵便物を郵袋に導く投函物案内手段とを具備し、 前記選択手段は、前記異物収容手段を構成する収容箱の上面及び前記収容箱の前記規制板側の前面から前記収容箱の底部まで異物を導くポスト用異物収集装置において、 前記選択手段は、前記異物収容手段を構成する収容箱の上面に、前記差入口に近い位置を高く、前記差入口から離れるに従って低く形成し、前記差入口の方向に対して直角に所定の間隔で複数の線材を配設し、前記規制板との間に間隙を形成し、収容箱の立上前面との間にも間隙を形成して収容箱の底部まで異物を導くことを特徴とするポスト用異物収集装置。 請求項2 請求項1に記載するポスト用異物収集装置において、 前記選択手段の複数の線材上で前記異物を導いた際は、前記異物が前記規制板で反射されることにより、前記異物収容手段の収容箱の立上前面との間に形成された間隙を介して、前記異物収容手段の収容箱の底部まで前記異物を導くことを特徴とするポスト用異物収集装置。 請求項3 請求項1又は請求項2に記載するポスト用異物収集装置において、 前記異物収容手段の収容箱の立上前面との間に形成された間隙は、たばこの外径よりも大きいことを特徴とするポスト用異物収集装置。 請求項4 請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載するポスト用異物収集装置において、 前記異物収容手段は、前記ポスト本体の構成部材に一端から摺動させて挿着する係合部を具備することを特徴とするポスト用異物収集装置。 請求項5 請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載するポスト用異物収集装置において、 前記投函物案内手段は、前記ポスト本体の差入口の上部から前記差入口の反対側に彎曲させて配設した弾性に富むガイド板と、前記ガイド板に対して揺動自在に配設し、前記差入口から投函されたものに衝突し、運動エネルギーを低減させる差入口より広い幅を有し、略く字状に折曲した規制板を具備することを特徴とするポスト用異物収集装置。 請求項6 請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載するポスト用異物収集装置において、 前記投函物案内手段の規制板は、両端部に案内板を配設したことを特徴とするポスト用異物収集装置。 請求項7(放棄) 請求項8 請求項1乃至請求項7のいずれか一つに記載するポスト用異物収集装置において、 前記投函物案内手段のガイド板と揺動自在に配設した規制板との接続部は、その差入口側にカバー体を配設したことを特徴とするポスト用異物収集装置。」 〔4〕当審の判断 1.特許法30条2項の適否について 被請求人は、原出願について平成9年3月8日付けで新規性喪失の例外証明書を提出し本件特許に係る特許出願において援用した。 被請求人が、新規性を喪失したとする事実は、平成8年10月7日付け郵政大臣官房財務部長名の「指名競争入札の通知について」に本件発明が図面として添付され第三者に通知されることによって公知になったというにあるものと認められる。 そして、被請求人は、上記の新規性喪失の例外証明書のほか、本件審判手続において、発明者であり同時に出願人(特許権者)の代表者である山田由博自身が「意に反して」公知にされたこと(すなわち、本人に公表という事実を容認する意思がなかったこと)を陳述し(乙第9号証)することによって、本件が特許法第30条第2項の「意に反して第29条第1項各号の一に該当するに至った発明」であると主張、立証している。 これに対して、請求人の主張は、当該図面は公示する為に作成されたものであるから、「意に反して」公知になったものではないというにあるものと認められる。 しかしながら、上記図面が、仮にいずれ公示されるという性格のものであったとしても、何時の時点で公示されるのかは特許を受けようとする者においては必ずしも明らかではない場合もあり得ると考えられ、少なくとも特許を受けようとする者の「意に反して」早期に公知にされてしまうこともあり得るから、請求人のように、本件発明が「意に反して」公知になったものではないと断ずることはできないというべきである。 従来から、学説・判例とも、特段の事情のない限り、「意に反して」は厳格に解釈されておらず、不注意や公表の時期の見込み違いによって特許法第29条第1項各号の一に該当するに至った場合も「意に反して」に当たると認めている(東京高裁昭和47年4月26日判決(取消集昭和47年第113頁)、東京高裁昭和56年10月28日判決(取消集昭和56年第179頁)参照)。 したがって、それでもなお、請求人において本件が「意に反して」に当らないと主張するのであれば、特段の事情について請求人に立証の責任があるというべきである。 2.特許法29条1項1号・3号、同29条2項に基づく主張について 請求人は、本件特許が特許法第30条第2項の適用が受けられないことを前提として、本件特許に係る各発明が甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明であるか、それらの発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた、というにあるものと認められる。 しかしながら、甲第2号証及び甲第4号証に係る書面の通知や、同書面に添付された図面は、被請求人が新規性を喪失したとする事実そのものであるから、特許法第30条第2項の規定により、本件各発明の新規性、進歩性を判断する証拠とはならない。 なお、請求人は、本件特許の出願前の刊行物として甲第8号証:特開平9-47354号公報も提出しているが、甲第8号証には、本件各発明の「複数の線材と収容箱の立上前面との間にも間隙を形成して収容箱の底部まで異物を導くようにした」点の構成は記載されていないので、本件各発明が甲第8号証に記載された発明であるとすることはできず、甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない。 3.請求人は、平成13年11月27日付け審判請求補充書に添付して甲第10号証の1乃至9及び甲第11号証の1乃至8を提出し、さらに、平成13年12月11日付け審判請求補充書(2)に添付して甲第12号証乃至甲第15号証を提出し、本件発明は、甲第10号証の1乃至9により平成8年6月11日に(被請求人が新規性を喪失したとする平成8年10月7日より前に)公知となった、仮りにそうでなくとも甲第11号証の1乃至8により平成8年8月24日に公知になった、と主張する(平成13年12月11日付け審判請求補充書(2)第2頁第9〜11行)。 これは、当初の審判請求(平成13年7月31日付け審判請求書)における請求の理由として、要すれば、甲第2号証及び甲第4号証に係る平成8年10月7日付「指名競争入札通知」によって公知となったと主張したのに対して、平成13年12月11日付け審判請求補充書(2)における請求の理由は、要すれば、甲第10号証の1乃至9(甲第11号証は甲第10号証に関連した仕様書であると認められる)に係る1996年8月26日付けの社団法人郵政ニューオフィス研究会(金井)から郵務局輸送企画課企画調整係(松川次席)宛書面によって公知となったと主張するものであるから、審判請求の理由である具体的な事実、証拠を請求書の補正によって変更しようとするものであって、請求の理由を実質的に変更するものであるから、この補正は、特許法第131条第2項の規定に違反するものと認められる。 したがって、甲第10号証の1乃至9に基づく主張は本件審判請求においては採用できない。 なお、念のために付言すると、本件請求書の補正が要旨を変更する(請求の理由を実質的に変更する)ものであると認めて本件請求書の補正を採用しないとするものであって、請求書の一切の補正が特許法第131条第2項の規定によって認められないという解釈に立つものではない。また、もとより、甲第10号証を証拠として新たに無効審判を請求することが何ら妨げられるものではない。 〔5〕以上のとおりであるから、その余について判断するまでもなく、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件請求項1乃至請求項6及び8に係る発明の特許を無効とすることはできない。 また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条乃至第64条の規定を考慮し、これを8分し、その1を被請求人の負担とし、その余を請求人の負担する。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-12-17 |
結審通知日 | 2001-12-20 |
審決日 | 2002-01-07 |
出願番号 | 特願2000-117692(P2000-117692) |
審決分類 |
P
1
112・
113-
Y
(A47G)
P 1 112・ 111- Y (A47G) P 1 112・ 121- Y (A47G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 見目 省二 |
特許庁審判長 |
青山 紘一 |
特許庁審判官 |
和泉 等 井上 茂夫 |
登録日 | 2000-08-04 |
登録番号 | 特許第3096040号(P3096040) |
発明の名称 | ポスト用異物収集装置 |
代理人 | 奥田 誠 |
代理人 | 高良 尚志 |
代理人 | 富澤 孝 |
代理人 | 山中 郁生 |
代理人 | 岡戸 昭佳 |