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審決分類 審判 査定不服 5項3号及び6項 請求の範囲の記載形式不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41M
管理番号 1072908
審判番号 審判1999-14607  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-07-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-09-09 
確定日 2003-02-26 
事件の表示 平成5年特許願第246436号「画像記録方法」拒絶査定に対する審判事件[平成6年7月19日出願公開、特開平6-199042]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明の要旨
本願は、平成5年9月7日(国内優先権主張 平成4年9月11日)の出願であって、その特許を受けようとする発明は、平成11年3月8日付手続補正書、平成12年11月21日付手続補正書及び平成13年6月25日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】樹脂母材及び有機低分子物質を含有する感熱層、又は電子供 与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の発色反応による(又は発色 剤と顕色剤からなる)感熱層上に保護層を設けてなる可逆性感熱記録材料 からなる記録媒体の記録領域を加熱することにより、発色、及び消色する ことによる画像記録方法において、透明度または色調を同一記録領域であ らかじめ定められた回数変化させた後、別の記録領域で変化させる(但し 、記録領域を2つ設けこれらを交互に用いること、印刷時には、カード情 報の使用状況を読み出して、該情報に基いて印刷処理が全印刷エリアに対 し均等処理となるように分割印刷エリアを選定してリライト印刷を実行す ること、及び、判読性低下処理を施すことを除く)ことを特徴とする画像 記録方法。
【請求項2】可逆性感熱材料よりなる記録媒体が、複数の画像記録面を有 し、かつ、記録領域が該記録面である請求項1記載の画像記録方法。
【請求項3】記録領域の大きさが画素である請求項1記載の画像記録方法 。
【請求項4】一定回数ごとに記録領域を変更する請求項1〜3のいずれか
に記載の画像記録方法。
【請求項5】同一記録領域に繰り返し記録した後、この記録領域にはその 後記録せず、別の記録領域に記録する請求項2記載の画像記録方法。
【請求項6】前記記録媒体が情報記憶部を有し、その情報記憶部に繰り返 し回数を記録する請求項1〜5のいずれかに記載の画像記録方法。
【請求項7】可逆性感熱材料の劣化を検知し、領域を変更する請求項5記 載の画像記録方法。

2.拒絶理由の概要
これに対し、当審において平成13年4月16日付けで通知した拒絶の理由の概要は、
(その1)
本願の請求項1ないし7に係る発明は、その出願前に国内において頒布された下記の刊行物1ないし16に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開昭63-132089号公報
刊行物2:特開平2-566号公報
刊行物3:特開平4-85077号公報
刊行物4:特開平4-107190号公報
刊行物5:特開昭63-317385号公報
刊行物6:国際公開第90/11898号パンフレット(1990)
刊行物7:特開昭63-229625号公報
刊行物8:特開平2-297210号公報
刊行物9:特開昭64-580号公報
刊行物10:特開平4-24684号公報
刊行物11:特開平2-240862号公報
刊行物12:特開平4-111587号公報
刊行物13:特開平2-125777号公報
刊行物14:特開昭63-187499号公報
刊行物15:特開平4-191062号公報
刊行物16:特開平4-60651号公報
(その2)
本願の請求項1ないし6に係る発明は、上記刊行物1〜6に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(その3)
本願の請求項1の記載に関し、本願明細書の特許請求の範囲には構成に欠くことのできない事項のみが記載されておらず、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。
というものである。

3.対比・判断
(1)理由(その1)について
(1-1)刊行物1に記載された発明との対比
樹脂母材及び有機低分子物質を含有する感熱層上に保護層を設けてなる可逆性感熱記録材料からなる記録媒体の記録領域を加熱することにより、発色及び消色することによる画像記録方法は、刊行物2ないし6に記載されているごとく、本願の出願前に既に周知であって、この点については、本願明細書にも記載されているとおりである。
そして、刊行物1には、樹脂母材及び有機低分子物質を含有する感熱層を有する可逆性感熱記録材料に関し、「ところで感熱表示体への画像形成は通常サーマルヘッドで行なわれるが、画像形成-消去を繰返し行なうにつれて、画像形成に関与する主成分の一つである樹脂母材が熱で収縮して消去後も画像の痕として薄く残り、これが次第に累積して画像の鮮明性及びコントラストが低下して来る。そこで本発明者らはこの問題を解決するため、感熱表示体に印字を行なう際の加熱手段及び加熱時間を種々検討したところ閃光放電管による短時間の加熱と輻射による伝熱性を利用した印字方法は画像記録後の画像痕が殆んどなく、繰返し画像の形成方法として優れていることを見出した。」(第2頁左下欄下から第6行〜右下欄第7行)と記載されている。
該記載から明らかなように、該刊行物1には、樹脂母材及び有機低分子物質を含有する感熱層からなる周知の可逆性感熱記録材料を用いた記録媒体においては、画像形成-消去を繰返し行なうにつれて、その可逆性感熱記録材料が次第に劣化して画像の鮮明性及びコントラストが低下してくるという課題があることが記載されている。
なお、刊行物1には、感熱層上に保護層を設けることまでは記載がないものの、前述の如く保護層を設けることは周知であって、保護層を有するものであっても、刊行物1に記載されたと同様の課題があることは、当然に理解されるところである。
そこで、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と刊行物1に記載された発明とを比較すると、本願明細書の段落【0005】には、「また、前述の樹脂母材中に有機低分子物質を分散したタイプの記録材料ではサーマルヘッド等のように熱と圧力を同時に加える加熱方式を用いると記録回数が増えるにつれ有機低分子物質粒子が凝集し、コントラスト(白濁度)が低下してしまうという欠点があった。」と記載されており、本願明細書に記載された従来技術の課題と、引用例1に記載された課題とは同一である。
しかしながら、該課題の解決手段として、本願発明では、
「透明度または色調を同一記録領域であらかじめ定められた回数変化させた後、別の記録領域で変化させる」という手段を用いるものであるのに対し、刊行物1には、このような手段については記載がない点で相違している。
(1-2)相違点についての判断
そこで、該相違点について検討する。
本願明細書段落番号【0008】〜【0009】には「図1は、記録媒体が複数の画像記録面を有し、かつ、記録領域が該記録面である例を示している。・・・複数の画像記録面を設ける場合には(イ)ある回数毎に記録面を変更する方法と、(ロ)同一記録面に繰り返し記録した後、この記録面にはその後記録せず、別の記録面に記録する方法、の二つがある。」と記載され、また同【0014】には、「図2は記録領域の大きさが画素である記録方法の三例を表わしており、こうした方法は集中して一箇所に記録が施されることを防ぎ、結果として、記録材料の劣化を防止するものである。・・・この方法では、通常一定回数毎に記録面を変更し、回数を情報記録部に予め設定しておき、記録面を画素単位で変更していく方法がとられることが望ましい。」と記載されている。
これらの記載からみて、本願発明の「透明度または色調を同一記録領域であらかじめ定められた回数変化させた後、別の記録領域で変化させる」という構成には、(1)複数の画像記録面を設け、該記録面をあらかじめ定められた回数毎に変更する方法と、(2)あらかじめ定められた回数毎に画像記録面を、画素単位で変更する方法とが包含されるものと認められる。
しかしながら、一般に繰返し使用させる材料においては、同じ領域を何度も繰返して使用すると、繰り返し使用による材料の劣化が生じるため、何度か繰返し使用して劣化が生じたら、その領域を変更し、別の領域を用意してその領域を使用することにより、実質的に有効寿命を延ばすことは、通常広く行われている慣用手段にすぎない。
すなわち、刊行物7には、「光ディスク装置」に関し、「セクタ内での記録開始点をランダムに可変にし、同じ場所を繰り返して使用することを防止することによって、ディスク材の疲労を平均化して軽減し、結果的に繰り返し使用回数を向上させる」(第2頁右上欄第9〜13行)と記載され、
また、刊行物8には、「表示画面付電子機器」に関し、「ソフトキーは、その性質上長時間にわたり画面の特定領域に表示される場合が多く、画面の部分的な劣化を招く不利益がある。」(第2頁左上欄末行〜右上欄3行)及び「この課題を解決するために、・・・表示経過時間が所定長を越えたとき、前記表示画面上のソフトキー表示位置を変更する」(同頁右上欄第11〜末行)と記載されている。
さらに、刊行物12には、「電子スチルカメラ」に関し、「EEPROM等の不揮発性メモリは記録データの書換え回数が有限である。・・・記録・消去を繰り返すことで絶縁膜の特性が劣化し、使用できなくなる。」(第1頁右下欄第9〜17行)、「複数の記録領域では画像データの書換え回数に大きな 差が生じる可能性高く、記録領域間の寿命に大きな差が生じる。そのため、メモリ内の特定の記録領域が寿命となった場合には、まだ使用可能な領域まで使用できなくなるといった欠点がある。」(第2頁左上欄第4〜10行)及び「複数の記録領域の書換え回数が平均化手段によって平均化されて、記録領域間の寿命が平均化されるので、メモリチップ全体の寿命が延ばされてメモリの有効利用が図られる。」(第2頁右上欄第9〜12行)と記載されている。
さらにまた、実願昭59-143326号(実開昭61-57420号)のマイクロフィルムには、記録に関するものではないが、タッチパネルの表面に設けられた汚染防止用の薄層透明フィルムを複数枚積層しておき、該フィルムを順次1枚ずつ剥がしていくことが記載されている。
してみれば、前述のとおり、刊行物2ないし6に記載された如き保護層を有する記録媒体を用いた記録方法においても、刊行物1に記載されている「繰返し記録による記録媒体の劣化」という課題があることは当然に理解されるところであるから、該課題を解決するために前記慣用手段を適用し、「透明度を同一記録領域であらかじめ定められた回数変化させた後、別の記録領域で変化させる」ようにする程度のことは、当業者であれば容易に想到しうる事項であって、格別な創意を要するものではない。
よって、本願発明は、刊行物1ないし6に記載された発明及び本願の出願前に既に良く知られた慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)理由(その3)について
拒絶理由で通知した、本願明細書の記載が不備であるとする、具体的な理由は、次のとおりである。
“本願明細書の特許請求の範囲の請求項1には、「(但し、記録領域を2つ設けこれらを交互に用いること、印刷時には、カード情報の使用状況を読み出して、該情報に基いて印刷処理が全印刷エリアに対し均等処理となるように分割印刷エリアを選定してリライト印刷を実行すること、及び、判読性低下処理を施すことを除く)」という記載がある。しかし本願明細書中には、「均等処理」、「リライト印刷」、「判読性低下処理」をはじめ、請求項1で用いられる用語及び処理方法の意味内容について何等記載されていないから、該請求項1の括弧書きの記載中、(a)「印刷時には、カード情報の使用状況を読み出して、該情報に基いて印刷処理が全印刷エリアに対し均等処理となるように分割印刷エリアを選定してリライト印刷を実行すること」、及び(b)「判読性低下処理を施すこと」の何れも、どのような内容で、どのような範囲の技術につき規定するものか明らかでなく、このため、請求項1に係る発明ではどのような構成が除かれるのか不明である。”
この通知に対して、出願人は意見書において、「平成12年9月4日付けの特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない旨の拒絶理由が通知されたことにより、それに対応するべく所謂除くクレームとしたものであり、プラクティスとして「除くクレーム」は認められているところである」と主張している。
しかしながら、プラクティスとして所謂除くクレームを認めているのは、特許法第39条第1項第3号及び同第29条の2の規定の適用を回避するためであれば、除かれる技術的事項が、出願当初に願書に添付された範囲内の事項でなくても、例外として新規事項の追加とはみなさないこととしたものであって、該補正の結果、該特許出願の明細書の記載が特許法第36条に規定する要件を満たしていなければならないこととは、別の問題である。すなわち、除くクレームを採用している本願明細書の記載が、特許法第36条に規定する要件を満たしていなければならないことは、当然のことである。
よって、出願人の該主張は採用できない。
そして、本願明細書は上記通知に対しては補正をしておらず、依然として本願の請求項1の記載は、その構成が不明瞭であって、結果的に構成に欠くことのできない事項のみが記載されているとすることはできない。
また、請求項2ないし請求項7の記載も、請求項1を引用して記載しているから、同様の理由により、構成に欠くことのできない事項のみが記載されているとすることができない。
よって、本願は、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。

4.結び
以上のとおり、本願発明は、刊行物1ないし6に記載された発明及び本願の出願前に既に良く知られた慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の請求項2ないし請求項7に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
また、本願は、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-12-06 
結審通知日 2002-12-17 
審決日 2003-01-09 
出願番号 特願平5-246436
審決分類 P 1 8・ 535- WZ (B41M)
P 1 8・ 121- WZ (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿久津 弘  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 鐘尾 みや子
六車 江一
発明の名称 画像記録方法  
代理人 池浦 敏明  

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