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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  E04D
管理番号 1073226
異議申立番号 異議2000-74668  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-02-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-27 
確定日 2002-12-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3064264号「防水シートおよびその敷設施工に用いる熱風融着機」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3064264号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3064264号(平成10年8月21日出願、平成12年5月12日設定登録、請求項の数5)の請求項1〜3に係る特許に対して、筒中プラスチック工業株式会社から特許異議の申立があったので、取消理由を通知したところ、その指定期間内である平成14年4月26日に特許異議意見書とともに訂正請求書が提出された。
II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
訂正事項は次のとおりである。
a.特許請求の範囲請求項1〜2に係る記載「【請求項1】防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面に固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法に用いられる防水シートであって、少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、樹脂成分とゴム成分の共通原料であるモノマーガスを反応器中にコントロールして導入し、樹脂成分とゴム成分を同時に混合状態で生成させたものであることを特徴とする防水シート。
【請求項2】 防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面に固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法に用いられる防水シートであって、少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリプロピレン/エチレン-プロピレン共重合ゴムブレンド部分架橋体であって、その成分比が60/40〜90/10に設定されているものであることを特徴とする防水シート。」を
「【請求項1】防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面にアンカーで固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法に用いられる防水シートであって、中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、樹脂成分とゴム成分の共通原料であるモノマーガスを反応器中にコントロールして導入し、樹脂成分とゴム成分を同時に混合状態で生成させたものであることを特徴とする防水シート。
【請求項2】 防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面にアンカーで固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法に用いられる防水シートであって、中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリプロピレン/エチレン-プロピレン共重合ゴムブレンド部分架橋体であって、そのブレンド比が60/40〜90/10に設定されているものであることを特徴とする防水シート。」と訂正する。
b.段落0006における「・・・・防水シートであって、少なくとも表裏面が・・・・」の記載を「・・・・防水シートであって、中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面が・・・・」と訂正する。
c.段落0007における「・・・・その成分比が・・・・」の記載を「・・・・そのブレンド比が・・・・」と訂正する。
d.段落0012における「「・・・・の成分比は、・・・・」の記載を「・・・・のブレンド比は、・・・・」と訂正する。
e.段落0014における「・・・・したがって、全体が、TPOシートのみからなる単層シートであってもよいし、あるいは表裏面が上記TPOシートからなり、その間に、TPOシート以外のシートが一層以上積層された積層シートであってもよい。・・・・」の記載を「・・・・したがって、表裏面が上記TPOシートからなり、その間に、TPOシート以外のシートが一層以上積層された積層シートの構造を成す。・・・・」と訂正する。
f.段落0016における「・・・・本発明の防水シートの厚みは、それが単層シートであっても、積層シートであっても、通常、0.7〜5.0mm、なかでも1.0〜3.0mmに設定することが好適である。・・・・」の記載を「・・・・本発明の防水シートの厚みは、通常、0.7〜5.0mm、なかでも1.0〜3.0mmに設定することが好適である。・・・・」と訂正する。
2.判断
(1)訂正事項aについて
訂正事項aにおける、防水シートの材料を、a-1「中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料」に限定する訂正は、特許明細書の段落0014における記載「・・・・表裏面が上記TPOシートからなり、その間に、TPO以外のシートが一層以上積層された積層シートであってもよい。・・・・そして、このような積層構造において、中間部に、ポリエステルクロス等の繊維補強材層を設けるようにしてもよい。」、同書の段落0015における記載「図1に示すような構造のものを示すことができる。この防水シートは、2種類のTPOシート1,2を、ポリエステルクロス3を挟んで融着したもので」を根拠とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
訂正事項aにおける、防水シートに係るシート防水工法において、a-2「・・・・アンカーで固定・・・・」なる限定を付す訂正は、特許明細書の段落0020における記載「・・・・防水シート12の他端縁を、所定間隔で、通常のディスク鋼板13およびアンカー14で固定する。・・・・」、同書段落0034における記載「図1に示す構成の防水シート・・・・を準備し、図3にしたがって、実際に防水施工を行った。」を根拠とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
訂正事項aにおける、ポリプロピレン/エチレン-プロピレン共重合体ゴムブレンド部分架橋体の組成に関する規定について、a-3「成分比」を「ブレンド比」とする訂正は、「成分」は単量体の「成分」に誤解されることがあるので、対象物は、ポリマーブレンドの架橋物であり、「その成分比」とは、ポリマーブレンドの「ブレンド比」を意味することを明らかにしたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的する訂正に該当する。
したがって、訂正事項aにおける、a-1乃至a-3は、特許請求の範囲の減縮、及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項b〜fによる訂正について
訂正事項b〜fによる訂正は、訂正事項aによる訂正に伴って、明細書の記載の不整合を正すものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する同法第126条第2項〜第4項の規定に適合するので、訂正請求を認める。
III.本件発明
訂正は認められるので、本件請求項1〜3に係る発明は、訂正後の請求項1〜3に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。
「【請求項1】防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面にアンカーで固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法に用いられる防水シートであって、中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、樹脂成分とゴム成分の共通原料であるモノマーガスを反応器中にコントロールして導入し、樹脂成分とゴム成分を同時に混合状態で生成させたものであることを特徴とする防水シート。
【請求項2】防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面にアンカーで固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法に用いられる防水シートであって、中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリプロピレン/エチレン-プロピレン共重合ゴムブレンド部分架橋体であって、そのブレンド比が60/40〜90/10に設定されているものであることを特徴とする防水シート。
【請求項3】全体が、オレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなる表面層と、同じくオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなる裏面層と、上記表面層と裏面層の間に設けられている繊維補強層とで構成されている請求項1または2記載の防水シート。」
IV.特許異議の申立理由について
1.取消理由通知の概要
取消理由通知の概要は、(1)訂正前の請求項1に係る発明は、刊行物1(実用新案登録第2503392号公報)及び刊行物2(「コンバーテック」第26巻第3号(1998年3月15日、加工技術研究会発行)第12頁〜第14頁)に記載された発明であるから、訂正前の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである、(2)訂正前の請求項2〜3に係る発明は、刊行物1(実用新案録第2503392号公報)、刊行物2(「コンバーテック」第26巻第3号(1998年3月15日、加工技術研究会発行)第12頁〜第14頁)及び刊行物3(「工業材料」第45巻第2号(平成9年2月1日、日刊工業新聞社発行)第72頁)の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項2〜3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、というものである。
2.刊行物1〜3の記載
a.刊行物1には次の記載がなされている。
1-1.「エチレン-αオレフィン系ゴム層を2層配し、その一方のゴム層の架橋度を他方ゴム層のそれよりも小さくし、かつ補強用繊維部材をゴム中に埋設したことを特徴とする防水シート。」(実用新案登録請求の範囲請求項1)
1-2.「上記補強用繊維部材を2層のエチレン-αオレフィン系ゴム層の間に介在させたことを特徴とする請求項1記載の防水シート。」(実用新案登録請求の範囲請求項2)
1-3.「上記補強用繊維部材をエチレン-αオレフィンゴム層の2層のうちいずれか一方のゴム層に埋設したことを特徴とする請求項1記載の防水シート。」(実用新案登録請求の範囲請求項3)
1-4.「熱融着可能な防水シートとしてポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル(EVA)のようなポリオレフィン樹脂をシート状にしたもの、あるいは上記樹脂に部分架橋もしくは完全架橋させたモノオレフィン系共重合ゴムをブレンドして柔軟性、耐熱性そして反撥弾性を付与したものが注目されている。」(第1頁右欄第4行〜第10行)
1-5.「夏場に施工したシートは軟化し膨張した状態で敷設されるため、冬場においては収縮してその末端が固定具からはずれたり、また法尻部では緊張して無理な応力をうけるといった問題が発生した。」(第2頁左欄第10〜14行)
1-6.「本考案はこのような問題点を改善するものであり、熱融着性を高め、また熱融着後の接合部分における境界付近の強度を十分に保持し、かつ接合作業を容易に実施できる防水シートを提供することを目的とする。」(第2頁左欄第30〜34行)
1-7.「本考案では補強用繊維部材が介在しているために、たとえ接合部分のシートが塑性流動してシート厚みが減少して、接合部分の境界付近に応力が集中してもこの部分から切断することがない。しかも、この補強用繊維部材は接合部分のシートの剛性を付与するとともにシートのたれを阻止することが出来るため、シートの接合作業が容易に遂行できる。」(第2頁右欄第9〜15行)
1-8.「前記エチレン-αオレフィン系ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(ただし、非共役ジエンを含む)にポリオレフィン樹脂を含む混合物に加硫剤、加硫助剤を含む部分架橋したものも含まれる。このポリオレフィン樹脂はエチレン、プロピレン、1-ブテン等であり、該ゴムに成形時の流動性をもたせ、施工時におけるシート接合部の熱融着を容易にする。」(第3頁左欄第13〜19行)
1-9.「前記ゴム分とポリオレフィン樹脂の添加量はゴム分10〜90重量部に対してポリオレフィン樹脂90〜10重量部であり、好ましくはゴム分20〜80重量部に対してポリオレフィン樹脂80〜20重量部である。もし、ゴム成分が10重量部未満の場合には、ポリオレフィン樹脂の性質が支配し、柔軟性に欠ける。又、ゴム成分が90重量部以上の場合には、熱融着性が劣ることになる。」(第3頁左欄第20行〜第27行)
1-10.「また、本考案において使用する補強用繊維部材4は、厚さ0.05〜0.50mm程度を有し、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維あるいはポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、アラミド等を有機繊維を素材とするもので、織物あるいは不織布であってもよい。」(第3頁右欄第8〜13行)
1-11.「本考案の防水シートが熱融着性に優れ、しかも接合作業が容易であることは前述の通りであるが、これについて図3を用いて詳述する。図3は防水シ-トの接合部分の断面図であるが、この接合作業ではシートのラップ部間の熱風を吹き込んで、架橋度の低いゴム層3の表面を積極的に溶融させた後、他のシートと圧着することにより、架橋度の低いエチレン-αオレフィン系ゴム層3と架橋度の高いエチレン-αオレフィン系ゴム層2とが容易に接合する。架橋度の低いゴム層3は、例えばエチレン含有量を多くすれば熱融着性が更に優れる。」(第3頁右欄第26〜36行)
1-12.「本考案の防水シートは、架橋度の異なるエチレン-αオレフィン系ゴム層を有し、かつ補強用繊維部材を含有しているために、前記防水シートの重ね合わせ部を熱融着によって容易に接合でき、また接合部分付近における強度低下もなく、また防水シートの加熱時の変形を阻止して接合作業を容易にする効果を有している。」(第3頁右欄第46行〜第4頁左欄第2行)
b.刊行物2には次の記載がなされている。
2-1.「キャタロイ(CATALLOY)はMontell Polyolefins社が開発したポリオレフィン重合プロセス技術であり、従来のブレンド法によるアロイ化とは異なる重合リアクター中でのアロイ化を可能にしたプロセスである。」(第12頁左欄第2〜7行)
2-2.「キャタロイプロセスの概要を図1に示した。多段の気相重合リアクターから成り、おのおの独立に重合が行われ、それぞれのリアクターで得られたポリマーがアロイ化された状態で最終製品が得られる。一例として挙げると、1段目で高分子量のホモポリプロピレン、2段目でエチレン-プロピレンのランダムコポリマー、3段目でエチレン-プロピレンゴムを重合するというようなことが可能である。」(第12頁左欄第21行〜中欄第8行)
2-3.「遮水・ルーフィング用シート キャタロイのシートは破れにくく、柔軟で軽く施工しやすいという特徴を生かし、廃棄物処理用、灌漑用、貯水池用シートおよびルーフィングシートとして、欧米を中心に大きな実績を上げている。国内においても2、3年前から使われており、数量も徐々に増加している。キャタロイシートは熱融着可能な温度範囲が広いので、シート同士の接合に対する安全性が高い。また他のポリオレフィン系シートとの熱融着も可能である。」(第14頁中欄第22〜34行)
c.刊行物3には次の記載がなされている。
3-1.「遮水シート(ポリプロピレン)・・・主な特徴:柔軟性・熱融着性の向上」(第72頁 表題)
3-2.「モンテカチーニ社(現モンテル・ポリオレフィン社)が開発した「キャタロイ・ポリプロピレン」は、エチレン-プロピレンゴム(EPラバー)を高濃度、かつ均一にポリプロピレンに分散させた製品で、廃棄物処理シート、灌漑用シート、各種池用シート、トンネル用シート、護岸防砂シートなどへ、下記のような特徴を生かして実績が急伸している。」(第72頁左欄第2行〜第9行)
3-3.「ポリオレフィン系のため、使用後の焼却時に有害物質を出す恐れがない。」(第72頁右欄第8行〜第9行)
3-4.「・・・シートは工場および施工現場で熱融着されて大面積のシートになる。熱融着は、ホットエア、ホットウェッジ、押出融着が可能、熱融着温度範囲が広く、かつ融着速度が速いため、工期短縮、低コスト化が可能である。」(第72頁右欄第17〜22行)
3.対比・検討
3-1.請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、後者におけるエチレン-αオレフィン系ゴムには、「エチレンプロピレンゴム(ただし、非共役ジエンを含む)にポリオレフィン樹脂を含む混合物に加硫剤、加硫助剤を含む部分架橋したもの」、すなわち、オレフィン系熱可塑性エラストマーも含まれる(上記1-8参照)から、両者は、「シート防水工法に用いられる防水シートであって、中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリオレフィン/エチレン-プロピレン共重合ゴムブレンド部分架橋体である積層体構造の防水シート」で一致するが、次の点で相違する。
1.防水シートに係るシート防水工法について、前者が「防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面にアンカーで固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法」と特定しているのに対して、後者は、防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことを記載(上記1-11参照)するだけで、シート防水工法の詳細については、具体的に記載していない点、
2.本件請求項2に係る発明が、ポリオレフィンをポリプロピレンに限定しているのに対して、刊行物1に記載された発明は、ポリオレフィンをポリプロピレンに限定していない点、
3.本件請求項2に係る発明が、ブレンド比を60/40〜90/10に設定しているのに対して、刊行物1に記載された発明は、ブレンド比が10/90〜90/10であることしか示していない点。
まず、相違点2.及び相違点3.について検討する。
(相違点2.について)
ポリプロピレンは、ポリオレフィンの代表的なものの一つであり、刊行物1には「このポリオレフィン樹脂はエチレン、プロピレン、1-ブテン等であり・・・」と記載(上記1-8参照)されているので、ポリオレフィンとしてポリプロピレンを用いることは当業者が容易にできることである。
(相違点3.について)
刊行物1には、「もし、ゴム成分が10重量部未満の場合には、ポリオレフィン樹脂の性質が支配し、柔軟性に欠ける。又、ゴム成分が90重量部以上の場合には、熱融着性が劣ることになる。」及び「本考案の防水シートは・・・防水シートの重ね合わせ部を熱融着によって容易に接合でき、また接合部分付近における強度低下もなく、また防水シートの加熱時の変形を阻止して接合作用を容易にする効果を有している。」等の記載(上記1-12参照)がなされている。そして、当業者にとって、より好ましい防水シートを得るために、刊行物1に記載されたブレンド比の範囲の中で最適なものを選ぶことは容易にできることであるから、60/40〜90/10の範囲を選ぶことに困難性があったものとは認められない。
(相違点1.について)
請求項2に係る発明は、「防水シート」の発明であるから、上記相違点1の「シート防水工法」特定の点は、物の発明である「防水シート」について、直接的に、物の構成自体を特定するための要件としては、特段の意味を有するとは認められない。
発明の対象となる「防水シート」との関係で、上記相違点1の「シート防水工法」特定の意味を検討しておくと、請求項2に係る発明の「防水シート」は、「防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面にアンカーで固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法」に用いることができる物性を有すること意味していると解釈される。
刊行物1記載の積層体構造の防水シートにおいて、積層体の中間層を構成する材料である繊維補強材は、「ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維あるいはポリエステル・・・、アラミド等を有機繊維を素材とするもので、織物・・・・であってもよい」とされ、補強用繊維部材としてポリエステル織物が開示されること、そして、上記相違点2及び3で述べたように、刊行物1記載の積層体構造の防水シートにおいて、ポリオレフィンとして、ポリプロピレンを選定し、ポリオレフィンとエチレンプロピレンゴムの配合割合(ブレンド比)の範囲として、60/40〜80/20の範囲を選ぶことに困難性はないから、「中間層に繊維補強材層(ポリエステル織物層)を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリプロピレン/エチレン-プロピレン共重合ゴムブレンド部分架橋体であって、そのブレンド比が60/40〜90/10に設定された積層体構造の防水シート」は、刊行物1の記載から、当業者が容易に想到し得るものと認められる。
刊行物1の記載から当業者が容易に想到し得る上記積層体構造の防水シートは、本件請求項2に係る発明である「中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリプロピレン/エチレン-プロピレン共重合ゴムブレンド部分架橋体であって、そのブレンド比が60/40〜90/10に設定された」を要件とする積層体構造の防水シートに、積層体の材料構成上、一致するから、本件請求項2に係る発明で特定される「シート防水工法」に用いることができる物性を有していると判断できる。
そうすると、上記相違点1のシート防水工法の特定の点は、「防水シート」における実質的な相違点とはいえないと認められる。
したがって、請求項2に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものと認められる。
(なお、本件発明は「防水シート」であって、「シート防水工法」の発明ではないから、上記相違点1の「シート防水工法」特定は、上記したように、「防水シート」の特許性を左右するとは認められないが、アンカーを使用して防水シートを下地面に固定することは、構造物に適用される防水シートを用いる防水構造形成の施工法において、通常行われていることにすぎないと認められる(たとえば、特開昭61-172947号公報、特開平1-247610号公報第1頁右下欄第3〜7行の記載を参照されたい。)から、「シート防水工法」の発明としても、特許性を有するとは認められない。)
3-2.請求項3に係る発明について
本件請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の防水シートについて、「全体が、オレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなる表面層と、同じくオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなる裏面層と、上記表面層と裏面層の間に設けられる繊維補強層とで構成されている」旨の限定を付した発明である。
ところが、防水シートを、全体が、オレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなる表面層と、同じくオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなる裏面層と、上記表面層と裏面層の間に設けられる繊維補強層(=補強用繊維部材)とで構成することは、刊行物1に記載されている。(上記1-1.、1-2.及び1-4.参照。)
上記したように、オレフィン系熱可塑性エラストマーの表面層と裏面層の間に繊維補強層を設ける構成は、刊行物1に示されているから、上記請求項2に係る発明で述べた理由と同様の理由により、本件請求項3に係る発明の防水シートは、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
3-3.請求項1に係る発明について
訂正前の請求項1に係る発明について通知した取消理由の内容は、特許法第29条第1項第3号に該当するというものである。しかし、訂正後の請求項1に係る発明は、訂正前の請求項1における、防水シートの材料を、「中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料」と限定すると共に、訂正前の請求項1における、防水シートに係るシート防水工法に、「・・・・アンカーで固定・・・・」なる限定を付すものであるから、訂正後の請求項1に係る発明は、訂正前の請求項1を引用した上で表面層と裏面層の間に繊維補強層を構成することを限定していた訂正前の請求項3において、シート防水工法に、「・・・・アンカーで固定・・・・」なる限定を付したものと同一のものを、その技術内容に包含していると認められる。(当然のことながら、訂正後の請求項1を引用して限定している防水シートである訂正後の請求項3に係る発明は、訂正後の請求項1に係る発明に包含される。)
一方、訂正前の請求項3に係る発明について通知した取消理由の内容は、特許法第29条第2項の規定に違反するというものであり、訂正後の請求項1に係る発明については、実質的に、特許法第29条第2項の規定違反の取消理由が通知されているといえるから、以下、特許法第29条第2項の規定違反について検討する。
訂正後の請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、「シート防水工法に用いられる防水シートであって、中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、オレフィン系熱可塑性エラストマーである積層体構造の防水シート」で一致するが、次の点で相違する。
1.防水シートに係るシート防水工法について、前者が「防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面にアンカーで固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法」と特定しているのに対して、後者は、防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことを記載(上記1-11参照)するだけで、シート防水工法の詳細については、具体的に記載していない点、
2.本件請求項1に係る発明が、オレフィン系熱可塑性エラストマーについて、樹脂成分とゴム成分の共通原料であるモノマーガスを反応器中にコントロールして導入し、樹脂成分とゴム成分を同時に混合状態で生成させたもの、と特定しているのに対して、刊行物1に記載された発明は、ポリオレフィン樹脂/エチレン-プロピレン共重合ゴムブレンド部分架橋体としている点、
で相違する。
(相違点2について)
刊行物1に記載された、エチレン-αオレフィン系ゴムにポリオレフィン樹脂を含む混合物を部分架橋したもの、すなわちポリマーブレンドタイプのオレフィン系熱可塑性エラストマーに代えて、刊行物2、3に記載されているような、従来のブレンド法によるアロイ化とは異なる、重合リアクター中でモノマーからポリマーを生成させ、アロイ化を可能にしたプロセスで製造された、オレフィン系熱可塑性エラストマーの「キャタロイ」のシートを用いて、防水シートとする程度のことは、刊行物1〜刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
(相違点1について)
訂正後の請求項1に係る発明における上記相違点は、請求項2に係る発明において述べたように、「シート防水工法」特定の点は、物の発明である「防水シート」について、直接的に、物の構成自体を特定するための要件としては、特段の意味を有するとは認められない。
上記刊行物1に記載された「防水シート」におけるオレフィン系熱可塑性エラストマーを、刊行物2、3に記載された重合リアクター中でのアロイ化を可能にしたプロセスで製造された、オレフィン系熱可塑性エラストマーと認識される「キャタロイ」のシートに代えたもの、すなわち、刊行物1〜刊行物3の記載から当業者が容易に想到し得る上記積層体構造の防水シートは、本件請求項1に係る発明である「中間層に繊維補強材層(ポリエステル織物層)を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、樹脂成分とゴム成分の共通原料であるモノマーガスを反応器中にコントロールして導入し、樹脂成分とゴム成分を同時に混合状態で生成させた」を要件とする積層体構造の防水シートに、積層体の材料構成上、一致するから、本件請求項1に係る発明で特定される「シート防水工法」に用いることができる物性を有していると判断できる。
そうすると、上記相違点1のシート防水工法の特定の点は、「防水シート」における実質的な相違点とはいえないと認められる。
したがって、訂正後の請求項1に係る発明は、刊行物1〜刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
VII.結び
以上のとおりであるから、請求項1〜3に係る発明は、刊行物1〜刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1〜3に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1〜3に係る特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
防水シートおよびその敷設施工に用いる熱風融着機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面にアンカーで固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法に用いられる防水シートであって、中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、樹脂成分とゴム成分の共通原料であるモノマーガスを反応器中にコントロールして導入し、樹脂成分とゴム成分を同時に混合状態で生成させたものであることを特徴とする防水シート。
【請求項2】防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面にアンカーで固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法に用いられる防水シートであって、中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリプロピレン/エチレン-プロピレン共重合ゴムブレンド部分架橋体であって、そのブレンド比が60/40〜90/10に設定されているものであることを特徴とする防水シート。
【請求項3】全体が、オレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなる表面層と、同じくオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなる裏面層と、上記表面層と裏面層の間に設けられる繊維補強層とで構成されている請求項1または2記載の防水シート。
【請求項4】請求項1〜3のいずれか一項に記載の防水シートを敷設施工する際に用いられる熱風融着機であって、熱風吹き出しノズルが、熱風導入筒部と、この筒部から偏平に伸びる偏平筒部とを有し、上記偏平筒部の先端部が、偏平筒部根元側に対し所定角度で傾斜した状態で延びており、上記傾斜先端部に設けられた開口が、融着作業の進行方向に対し、前方向と後ろ方向の二方向に分けて熱風を吹き出すよう形成されていることを特徴とする熱風融着機。
【請求項5】上記開口部から吹き出される熱風温度が400〜700℃に設定されている請求項4記載の熱風融着機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、作業性に優れ、しかも安全性,安定性にも優れた防水構造を実現しうる防水シートおよびその敷設施工に用いる熱風融着機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建築物の屋上等を防水する工法としては、従来から、加硫ゴム系等の防水シートを、接着剤を用いて下地面に接着施工する方法(シート防水工法)がよく知られている。この方法によれば、均一厚みの防水層を画一的に得ることができるという利点がある反面、降雨,降雪等により下地面が湿潤状態になると、乾燥するまで施工できないため、工期が遅れるという問題や、既設防水層の補修の際、部分補修がしにくいという問題がある。
【0003】
そこで、これらの問題を解決する方法として、塩化ビニル樹脂製の防水シートと、塩化ビニル樹脂で表側を被覆した固定金具とを用いて、防水シート同士、あるいは防水シートと固定金具とを、溶剤溶着又は熱融着させて接合する方法が提案され、実用化されている(特許第2724040号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記塩化ビニル樹脂は、塩素原子を含むため、廃棄の際に適切な処理がなされないと、ダイオキシンが発生するおそれがあり、環境保全の上で好ましくないという問題がある。また、上記塩化ビニル樹脂には、可塑剤や軟化剤が添加されているが、これらは徐々に揮散するため、防水シートが経時的に脆弱になるという問題もある。さらに、上記塩化ビニル樹脂製の防水シートの接合には、通常、テトラヒドロフラン(THF)を用いた溶剤溶着の手法が用いられるため、周囲にTHFが蒸散して、溶剤臭が発生するとともに引火しやすく危険であるという問題もある。また、THF蒸気を吸引すると酩酊状態になりやすいため、作業者にとって高所作業が危険になるという問題もある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、環境汚染がなく、安全に作業することのできる優れた防水シートと、その敷設施工に用いる熱風融着機とを提供することをその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面に固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法に用いられる防水シートであって、中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、樹脂成分とゴム成分の共通原料であるモノマーガスを反応器中にコントロールして導入し、樹脂成分とゴム成分を同時に混合状態で生成させたものである防水シートを第1の要旨とする。
【0007】
また、本発明は、上記と同様のシート防水工法に用いられる防水シートであって、少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリプロピレン/エチレン-プロピレン共重合ゴムブレンド部分架橋体であって、そのブレンド比が60/40〜90/10に設定されているものである防水シートを第2の要旨とする。
【0008】
さらに、本発明は、これらの防水シートを敷設施工する際に用いられる熱風融着機であって、熱風吹き出しノズルが、熱風導入筒部と、この筒部から偏平に延びる偏平筒部とを有し、上記偏平筒部の先端部が、偏平筒部根元側に対し所定角度で傾斜した状態で延びており、上記傾斜先端部に設けられた開口が、融着作業の進行方向に対し、前方向と後ろ方向の二方向に分けて熱風を吹き出すよう形成されている熱風融着機を第3の要旨とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
まず、本発明の防水シートは、少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなるシートでなければならない。
【0011】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(以下「TPO」と略す)とは、熱可塑性を示すオレフィン系樹脂成分とゴム成分からなり、高温で成形可能で、常温ではゴム弾性を示す高分子材料である。そして、上記オレフィン系樹脂成分としては、ポリエチレン,ポリプロピレン等が用いられ、上記ゴム成分としては、エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPDM),ブタジエンゴム,イソプレンゴム等が用いられる。樹脂成分もゴム成分も、それぞれ単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリプロピレンとEPDMからなるものが好適に用いられる。なお、上記TPOは、樹脂成分とゴム成分の共通原料であるエチレン,プロピレン等のモノマーガスを反応器中にコントロールして導入し、樹脂成分とゴム成分を同時に混合状態で生成させたものを用いるか、あるいは、耐溶剤性、耐油性の向上と、耐疲労性、耐圧縮性等の力学特性の向上を目的として、樹脂とブレンドするゴムが部分架橋されたタイプのものを用いなければならない。また、樹脂とゴムとをブレンドする際にゴムの架橋を行う動的架橋の手法により得られるTPOを用いてもよい。
【0012】
上記TPOにおいて、樹脂成分とゴム成分のブレンド比は、両者の組み合わせる材料によって、適宜設定されるが、通常、樹脂成分/ゴム成分が、60/40〜90/10の範囲内に設定されているものが好適である。すなわち、上記範囲よりも樹脂成分が少ないと、ゴムの性質の割合が高くなって加熱しても充分な溶融が得られにくく、成形加工が困難になるとともに施工の際のジョイント強度が不充分になるおそれがあり、逆に上記範囲よりも樹脂成分が多いと、樹脂の性質の割合が高くなって、弾性が失われ、特に低温時に脆弱となり伸び性能が失われるおそれがあるからである。
【0013】
なお、本発明の防水シートには、シートの劣化防止を目的として、上記TPO以外に、紫外線安定剤や酸化防止剤を配合することができる。また、シート製造時の加工性を向上させるためのプロセスオイルや、適宜の色に着色するための着色顔料、難燃剤等、各種の添加物を配合することができる。したがって、本発明において、「TPOを主成分とする」とは、全体がTPOのみで形成されている場合と、上記のような、各種の添加剤を含有する場合の両方を含む趣旨で用いている。
【0014】
そして、本発明の防水シートは、シートの少なくとも表裏面が上記TPOを主成分とする高分子材料からなるシート(以下「TPOシート」と略す)でなければならない。すなわち、その表裏面のTPOの特性を利用して、シート同士の接合等を行うからである。したがって、表裏面が上記TPOシートからなり、その間に、TPOシート以外のシートが一層以上積層された積層シートの構造を成す。ただし、その場合、中間に設けられるシート層は、上記TPOシートの特性を損なうものであってはならない。もちろん、厚みや物性を多少違えた2種類のTPOシートを表裏面に貼り合わせた(融着によって接合一体化した)構造のものであってもよい。そして、このような積層構造において、中間部に、ポリエステルクロス等の繊維補強材層を設けるようにしてもよい。
【0015】
例えば、好ましい防水シートの一例として、図1に示すような構造のものを示すことができる。この防水シートは、2種類のTPOシート1,2を、ポリエステルクロス3を挟んで融着したもので、表面側のTPOシート1には、耐候性、耐火性等の点から、紫外線安定剤,酸化防止剤,着色顔料,難燃剤が配合されている。この防水シートの比重は、0.8〜1.2で、従来の、充填剤を含む塩化ビニル樹脂シート(通常、比重1.5)等に比べて軽量で、柔軟性も充分にあり、作業性が良好である。
【0016】
なお、本発明の防水シートの厚みは、通常、0.7〜5.0mm、なかでも1.0〜3.0mmに設定することが好適である。すなわち、0.7mm未満では、軽量ではあるが防水材としての信頼性に欠けるおそれがあり、逆に5.0mmを超えると、防水材としての信頼性は高まるが、重量が大きく作業時のハンドリングが悪くなるとともに経済的でないからである。
【0017】
つぎに、上記防水シートを用いたシート防水工法について説明する。本発明の防水シートは、上記防水シートの表裏面が熱可塑性であることから、シート端部とシート端部の接合を、両者を重ねて熱風融着することができる。これが大きな特徴である。そして、防水シートを下地面(通常は、その上に、まず絶縁シートが敷設されるのであり、その場合は、上記絶縁シートの上面)に固定する場合は、例えば図2に示すような、TPOを主成分とする高分子被覆層4がその表面に形成されたプレート鋼板(以下「TPO被覆プレート鋼板」と略す)5等を用いることができる。すなわち、防水シートの一端側の縁部を下地面もしくは絶縁シート面に固定する場合、その固定すべき場所に、まず上記TPO被覆プレート鋼板5を載置し、固定用アンカーで固定する。つぎに、上記TPO被覆プレート鋼板5の上に、TPOシートからなる防水シートを重ね、両者の重なり部分を加熱して融着させることにより、防水シートを接合固定することができる。なお、鋼板の形は、平板の外、各種形状に成形されたものを、目的に応じて適宜使い分けることができる。
【0018】
なお、本発明の防水シートを用いたシート防水工法において、防水シートの固定は、必ずしも上記TPO被覆プレート鋼板5で行う必要はなく、従来から用いられている、TPOで被覆されていない普通のプレート鋼板、あるいはディスク状の固定用鋼板(以下「ディスク鋼板」と略す)といった金属製の固定金具を、適宜用いることができる。もちろん、上記ディスク鋼板の表面に、TPO被覆層を形成したものを準備し、上記TPO被覆プレート鋼板5と同様、ディスク鋼板表面のTPO被覆層を利用して、ディスク鋼板と防水シートを接合して、防水シートの固定を行うようにしてもよい。
【0019】
そして、本発明の防水シートの端部と端部を重ねて融着により接合する場合、その重なり代は、2〜40cmに設定することが好適である。すなわち、2cm未満では、接合強度が不充分になるおそれがあり、逆に40cmを超えると、強度,漏水の面で、過剰品質となって経済的でないからである。
【0020】
本発明の防水シートを用いたシート防水工法の具体例について説明する。例えば、図3に示す工法では、コンクリート等の一般的な下地10の上に、まず絶縁シート11を敷設する。そして、下地立ち上がり部10aの下縁部に沿って、L字状のTPO被覆プレート鋼板5′を載置してアンカーで固定し、その上に、第1の防水シート12の一端縁を重ねる。そして、この重なり部を、所定の熱風融着機を用いて加熱して融着させる。この融着部を斜線領域Pで示す。つぎに、上記第1の防水シート12の他端縁を、所定間隔で、通常のディスク鋼板13およびアンカー14で固定する。そして、第2の防水シート12aの一端縁を、上記第1の防水シート12の他端縁部に重ね、ディスク鋼板13による固定部を覆うようにして、第1の防水シート12と第2の防水シート12aの端部を、上記と同様にして融着させる。この融着部を斜線領域Qで示す。また、下地立ち上がり部10aの上面に、TPO被覆プレート鋼板5″を載置してアンカー(図示せず)で固定し、一定寸法に裁断された第3の防水シート12bの一端縁をこれに融着させる(融着部R)。そして、上記第3の防水シート12bの他端縁は、先に固定されている第1の防水シート12の一端縁と融着させる。この融着部を斜線領域Sで示す。このようにして得られた第1の防水シート12と第2の防水シート12aの接合部は、図4に示すように、下地10側にディスク鋼板13およびアンカー14で固定された第1の防水シート12に、第2の防水シート12aが直接融着によって接合されているため、両者の間は、高い水密性が保たれることとなる。下地立ち上がり部10aにおける第3の防水シート12bの接合部も、同様に、高い水密性が保たれる。
【0021】
このように、上記工法によれば、防水シート12,12a,12bを、非常に簡単に、しかも互いに完全に隙間なく接合固定することができる。そして、この施工時には、従来の塩化ビニル樹脂製シートを用いた場合のように、シート同士の接合の際に溶剤臭が発生することがなく、また、防水シート12,12a,12bが軽量で柔軟であることから、作業性が非常に良好である。
【0022】
また、他の工法として、例えば図5に示すように、第1の防水シート12の他端縁の固定を、第2の防水シート12aの端部との重なり部を融着させることによって行い(融着部T)、第1の防水シート12の中央部付近で、シートが浮くのを防止して、適宜の間隔で、これを上からディスク鋼板13(とアンカー14)で下地10側に固定し、このディスク鋼板13の上から、TPOシートからなる円形のパッチ材16を重ね、その周囲を第1の防水シート12に融着させて接合固定する方法を用いることができる。他の部分の固定は、上記の例と同様である。この方法によっても、防水シート12,12a,12bを接合固定して、完全な水密状態を保つことができる。
【0023】
なお、これらの工法において、下地立ち上がり部10a根元部における第1の防水シート12と第3の防水シート12bの固定を、図6に示すような方法で行ってもよい。すなわち、まず、第1の防水シート12の縁部を、ディスク鋼板13とアンカー14で下地側に固定し、その上に、第3の防水シート12bの縁部を、上記ディスク鋼板13を覆うように被せ、その端縁と、下地立ち上がり部10aの根元部とを、ともに融着させて接合する(融着部U,V)。この方法によれば、L字状のTPO被覆プレート鋼板5′は不要である。
【0024】
また、これらの工法において、通常のディスク鋼板13に代えて、その表面にTPO被覆層を設けたディスク鋼板を用いることもできる。その場合は、防水シート12(12a,12bを含む)の上からディスク鋼板を固定する必要はなく、例えば防水シート12の下側の適宜の位置に、予めTPO被覆ディスク鋼板を固定し、その上に防水シート12を敷設したのち、防水シート12の上から、電磁誘導加熱工具を当てて、上記TPO被覆ディスク鋼板の表面を加熱し、その熱で、TPO被覆ディスク鋼板の表面とその上の防水シート12を融着させるようにすることができる。この方法によれば、表側にディスク鋼板が露出しないため、図5に示すように、いちいちパッチ材16を接合する必要がない、という利点を有する。
【0025】
さらに、図7に示すように、どの接合個所も、ディスク鋼板13を用いず、TPO被覆プレート鋼板5,5′だけで接合固定するようにしてもよい。この場合、第1の防水シート12と第2の防水シート12aの接合部は、図8に示すように、下地10側に固定されたTPO被覆プレート鋼板5の表面に、第1の防水シート12の他端縁が融着され、その上に、第2の防水シート12aの一端縁が融着された構造となる。融着部を、図7において斜線領域Wで示す。この方法によれば、2枚の防水シート12,12aの融着固定を同時に行うことができるため、作業効率が向上する。
【0026】
なお、上記の方法では、TPO被覆プレート鋼板5の上に、2枚の防水シート12,12aの端部が重なる構造となるため、その部分の突出が大きくなって好ましくない場合がある。そこで、例えば図9に示すように、まず、第1の防水シート12の端縁側をTPO被覆プレート鋼板5の上に融着固定し、その際、その端部が所定幅だけ外側にはみ出すようにしておき、このはみ出し部分20に、第2の防水シート12aの端部を重ねて融着するようにすると、重なりによる突出があまり大きくならず、その点で好適である。
【0027】
これらの工法において、防水シート12(12a,12bを含む)同士の融着、あるいは防水シート12とTPO被覆プレート鋼板5(5′,5″を含む)の融着、防水シート12とTPO被覆ディスク鋼板の融着には、すでに述べたように、熱風加熱が必要である。そのためには、従来から知られている、どのような熱風融着機を用いても差し支えないが、本発明では、特に、例えば図10に示すような、特殊な熱風融着機30を用いることが、作業性の上で好適である。すなわち、この熱風融着機30は、熱風吹き出しノズル31が、円筒状の熱風導入筒部32と、この筒部32から偏平に延びる偏平筒部33とを有し、偏平筒部33の先端側の所定部分が、一定の角度で傾斜した、特殊な形状を備えている。
【0028】
上記傾斜部34は、図11に示すように、偏平筒部33の中心軸に対する角度θ1が60°となるような折り曲げ線35で折り曲げて形成されている。また、その偏平筒部33の偏平面からの立ち上がり傾斜角度θ2(図11の紙面から手前に立ち上がる角度)が70°となるよう傾斜がつけられている。そして、その先端には、図12に示すように、従来の開口に相当する第1の開口36とは別に、第2の開口37が側方に設けられている。
【0029】
上記熱風融着機30によれば、上記傾斜部34が、図10に示すように、重ねたシート端部同士の間に入り込みやすく、片側が下地立ち上がり部10a(図3参照)で空間的に余裕のない部位であっても、本体を立てることにより、容易に融着作業を進めることができる。しかも、その先端の、第1の開口36から、作業進行方向に向かって大量の熱風を吹き出して充分な熱量を融着部に与えながら、第2の開口37から後方にも熱風を吹き出すため、前後に熱風吹き出しノズル31を振りながら作業を進めることにより、より広い範囲に、熱風を繰り返しかけながら融着作業を行うことができ、融着による完全一体化を効率よく行うことができる。
【0030】
なお、上記熱風融着機30において、他の構成は、従来の熱風融着機と同様であり、その説明を省略する。そして、本発明の特徴である傾斜部34は、θ1を40〜80°の範囲に設定し、θ2を60〜90°の範囲に設定することが好適である。これらの範囲内に設定することにより、隙間への傾斜部34の差し込み作業が非常に容易となり、かつ熱風吹き出し動作にも支障が生じることがない。
【0031】
そして、上記熱風融着機30は、いわゆるハンド式タイプのものであるが、上記傾斜部34を備えた特殊な熱風吹き出しノズル32を、自走式タイプの熱風融着機に取り付けて、これを自走させて作業を行うようにしてもよい。
【0032】
本発明における熱風融着条件は、吹き出し温度が、ハンド式のもので、500〜700℃、なかでも550〜650℃に設定することが好適で、自走式のもので、400〜600℃、なかでも450〜550℃に設定することが好適である。また、融着速度は、ハンド式のもので、0.8〜2.0m/min、なかでも1.5m/minに設定することが好適で、自走式のもので、3.0〜6.0m/min、なかでも3.5〜5.0m/minに設定することが好適である。ハンド式より自走式の方が作業安定性がよいので、好適範囲に上記のような差異が生じる。
【0033】
つぎに実施例について比較例と併せて説明する。
【0034】
【実施例】
図1に示す構成の防水シート(厚み1.2mm)を準備し、図3に示す工法にしたがって、実際に防水施工を行った。熱風融着については、図10に示すハンド式の熱風融着機を用いた。熱風融着条件は、熱風吹き出し温度が600℃、融着速度が1.5m/minとした。この防水工法によれば、防水シートが軽量で柔軟であることと、溶剤臭の発生がないことから、作業性が非常に良好であり、また、防水シート同士を、容易に、完全な水密状態に接合することができた。
【0035】
つぎに、上記実施例に用いた防水シートに対し、下記のとおり性能評価試験を行った。なお、比較例として、市販の塩化ビニル製防水シート(厚み1.5mm)を準備し、同様に性能評価試験を行った。
【0036】
〔防水シート端部同士の接合強度〕
JIS A 6008(合成高分子系ルーフィングシート)補強複合試験に準じた。すなわち、試料として、幅100mmの帯状シートを2枚準備し、図13に示すように、上記帯状シートの端部同士を、その重なり長さが40mmとなるよう接合した。ただし、実施例品からなる試料は熱風溶着とし、比較例品からなる試料はTHFによる溶剤溶着とした。接合部分を斜線Xで示す。そして、矢印で示すように、左右に引っ張り荷重(300mm/min)をかけて、破断する限界荷重を測定した。その結果を、下記の表1に示す。なお、規格では、常温で61.2kgf以上の接合強度が必要とされている。
【0037】
【表1】

【0038】
上記の結果から、実施例品は、非常に優れた接合強度を備えていることがわかる。
【0039】
〔接合部の耐風圧強度〕
幅80mmの帯状シートを2枚準備し、図14に示すように、片方のシートの端縁を、プレート鋼板50と樹脂アンカー51で、舗装用コンクリート平板(150mm×150mm×60mm)52に固定した。そして、上記と同様にして接合部(斜線Xで示す)を形成し、この接合部を上方に引き上げるようにシート両側に引っ張り荷重(300mm/min)をかけて、接合部の耐風圧強度を測定した。また、図15に示すように、シートのみを上記と同様の方法で固定し、シートに上向きに引っ張り荷重(300mm/min)をかけて、シート単体強度を測定した。これらの結果を、下記の表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
上記の結果から、実施例品は、シート単体強度よりも接合部強度が高いため、少なくともシートが破断する前に接合部で破断が生じることがなく、水密性(防水性)の信頼性に優れていることがわかる。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明の防水シートによれば、シート同士の端部を熱風融着させる、という簡単な作業で、安全に、信頼性の高い、優れた防水構造を実現することができる。そして、シートを廃棄処分しても、ダイオキシン発生のおそれがなく、環境保全の点で非常に有用である。しかも、本発明の防水シートは、作業性が良好で、取扱いが簡単である。また、本発明の熱風融着機を用いることにより、本発明の防水シート同士の熱風融着を、効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の防水シートの一例の説明図である。
【図2】
本発明の防水シートを固定するために用いるTPO被覆プレート鋼板の一例の説明図である。
【図3】
本発明の防水シートを用いたシート防水工法の一例の説明図である。
【図4】
上記シート防水工法によって得られた防水構造の部分的な説明図である。
【図5】
本発明の防水シートを用いたシート防水工法の他の例の説明図である。
【図6】
上記シート防水工法の変形例の説明図である。
【図7】
本発明の防水シートを用いたシート防水工法のさらに他の説明図である。
【図8】
上記シート防水工法によって得られた防水構造の部分的な説明図である。
【図9】
上記シート防水工法の変形例の説明図である。
【図10】
本発明の防水シートの接合に用いる熱風融着機の一例を示す説明図である。
【図11】
上記熱風融着機の詳細説明図である。
【図12】
上記熱風融着機の詳細説明図である。
【図13】
防水シート接合部の接合強度の測定方法の説明図である。
【図14】
防水シート接合部の耐風圧強度の測定方法の説明図である。
【図15】
防水シートの単体強度の測定方法の説明図である。
【符号の説明】
1,2:TPOシート
【図面】















 
訂正の要旨 訂正の内容
訂正事項は次のとおりである。
a.特許請求の範囲請求項1〜2に係る記載「【請求項1】防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面に固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法に用いられる防水シートであって、少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、樹脂成分とゴム成分の共通原料であるモノマーガスを反応器中にコントロールして導入し、樹脂成分とゴム成分を同時に混合状態で生成させたものであることを特徴とする防水シート。
【請求項2】 防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面に固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法に用いられる防水シートであって、少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリプロピレン/エチレン-プロピレン共重合ゴムブレンド部分架橋体であって、その成分比が60/40〜90/10に設定されているものであることを特徴とする防水シート。」を
「【請求項1】防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面にアンカーで固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法に用いられる防水シートであって、中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、樹脂成分とゴム成分の共通原料であるモノマーガスを反応器中にコントロールして導入し、樹脂成分とゴム成分を同時に混合状態で生成させたものであることを特徴とする防水シート。
【請求項2】 防水シートを下地面もしくは絶縁シート上面にアンカーで固定するとともに、上記防水シート端部同士の接合を熱風融着によって行うことにより、下地面に直接もしくは絶縁シートを介して防水シートを敷設施工するシート防水工法に用いられる防水シートであって、中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面がオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする高分子材料からなり、上記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、ポリプロピレン/エチレン-プロピレン共重合ゴムブレンド部分架橋体であって、そのブレンド比が60/40〜90/10に設定されているものであることを特徴とする防水シート。」と訂正する。
b.段落0006における「・・・・防水シートであって、少なくとも表裏面が・・・・」の記載を「・・・・防水シートであって、中間層に繊維補強材層を設けた少なくとも表裏面が・・・・」と訂正する。
c.段落0007における「・・・・その成分比が・・・・」の記載を「・・・・そのブレンド比が・・・・」と訂正する。
d.段落0012における「「・・・・の成分比は、・・・・」の記載を「・・・・のブレンド比は、・・・・」と訂正する。
e.段落0014における「・・・・したがって、全体が、TPOシートのみからなる単層シートであってもよいし、あるいは表裏面が上記TPOシートからなり、その間に、TPOシート以外のシートが一層以上積層された積層シートであってもよい。・・・・」の記載を「・・・・したがって、表裏面が上記TPOシートからなり、その間に、TPOシート以外のシートが一層以上積層された積層シートの構造を成す。・・・・」と訂正する。
f.段落0016における「・・・・本発明の防水シートの厚みは、それが単層シートであっても、積層シートであっても、通常、0.7〜5.0mm、なかでも1.0〜3.0mmに設定することが好適である。・・・・」の記載を「・・・・本発明の防水シートの厚みは、通常、0.7〜5.0mm、なかでも1.0〜3.0mmに設定することが好適である。・・・・」と訂正する。
異議決定日 2002-10-22 
出願番号 特願平10-235937
審決分類 P 1 652・ 121- ZA (E04D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 青山 敏  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 石井 克彦
須藤 康洋
登録日 2000-05-12 
登録番号 特許第3064264号(P3064264)
権利者 カネボウ株式会社 カネボウ化成株式会社
発明の名称 防水シートおよびその敷設施工に用いる熱風融着機  
代理人 黒瀬 靖久  
代理人 清水 久義  
代理人 高田 健市  

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