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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65B
管理番号 1073303
異議申立番号 異議2001-72306  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-07-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-08-23 
確定日 2003-02-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第3138916号「間歇回転形充填包装機における熱シール時の真空方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3138916号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯の概要
本件特許第3138916号発明は、平成8年12月24日に特許出願され、平成12年12月15日に設定登録(平成13年2月26日特許公報発行)がなされ、その後、平成13年8月23日付けで北隅康彦より特許異議の申立がなされ、平成13年11月6日に取消理由の通知がなされたが、指定された期間内に意見書のみが提出されたものである。

2.取消理由通知
当審は、本件の請求項1に係る特許発明は、本件特許出願前に頒布された下記刊行物1〜刊行物4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨の取消理由を通知した。

刊行物1:特開平 7-002233号公報(異議申立書中の甲第1号証)
刊行物2:特開昭53-023785号公報(同書中の甲第2号証)
刊行物3:実願昭51-023297号
(実開昭52-118756号)のマイクロフィルム
(平成12年4月17日付け拒絶理由通知書中の引用文献2)
刊行物4:特開昭62-287824号公報(同書中の引用文献3)

3.特許異議申立についての判断
(1)本件発明
本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「搬送する包装袋を円形テーブルに周設する各作業ステーションに順次吊下げ正対させ、該包装袋内に内容物を充填しエアー抜きして後、該包装袋の開口部を熱シールにより閉塞して搬出するようにした間歇回転形充填包装機における熱シール時の真空方法において、内容物を充填した前記包装袋の開口部よりエアー吸引ノズルを該包装袋内に進入させるとともにスポンジ状の柔軟な押えバーにて該エアー吸引ノズルごと開口部上端を両側から押え閉じして該包装袋内のエアーを吸引し、吸引完了後開口部を押えバーの押え閉じにより閉塞したまま該エアー吸引ノズルの先端を前記押えバー間内の位置にとどまるように引上げておいて該押えバー直下の前記開口部を熱シールして閉塞するようにしたことを特徴とする間歇回転形充填包装機における熱シール時の真空方法。」

(2)引用刊行物の記載事項
当審が通知した、取消理由に引用した刊行物1には、自動包装機の脱気装置について、図面とともに、以下のことが記載されている。
「エアー抜き時に移動装置を作動してヘラ状の吸引ノズルを袋内に挿入し、脱気板で袋の外方両面を挟圧すると同時に真空ポンプを作動させて、吸引ノズルを介し袋内のエアー抜きを行い、直ちに仮シールを行う。吸引ノズルを使用し混合状態下で吸引されたエアーと液(又は固形物)とは、フィルタ装置で分離され夫々れ外部に排出、又は回収される。又、吸引ガイド棒の効果により、吸引されて袋口が密接しても吸引作用を継続することが出来るものとなる。」(段落【0006】)
「図4によって本発明の脱気装置の脱気及び仮シール手順を説明する。チャック2で把持され、且つ内部に充填物(液)を収納された袋1が送られて来ると(図a1、a2)、先づ駆動棒9を作動して吸引ノズル6aを下降させて袋1内へ挿入し(図b1、b2)、次いで駆動機構12を作動して1対の脱気板4で袋1本体を外方両面から挟圧するのであり、これにより袋1内の液面が上昇して吸引ノズルの口に至り、予め作動された真空ポンプ23により不要の液と空気を吸込み、袋1内の脱気が行われる(図c1、c2)。」(段落【0017】)
「この場合、脱気板4による挟圧の度合い及び前記フィルタ装置11内の真空圧を適切に設定することにより、効果的な脱気が行われる。」(段落【0018】)
「こうして袋1内のエアー抜きが完了すると、駆動棒9を作動して吸引ノズル6を袋1内より引抜いた後、熱板3を袋口に押付けて熱シールし(図d1、d2)、次いで駆動機構12を作動して脱気板4を袋1より開放して全動作が完了する。図7は本発明装置を第1次(仮)シール工程に設けた図を示したものであり、脱気後直ちに第1次(仮)シールを行い、第2次(本)シール工程で本シールを行うためエアーが再入したりすることはない。」(段落【0019】)

刊行物2には、包装体のガス置換密封装置について、図面とともに、以下のことが記載されている。
「シリンダーに取付けられたノズルを切口部より包装体内部にさし込み、一方シリンダーの出し入れのためのガイド管の先端部は押え治具により包装容器と共に圧着することにより機密された状態にしておいて、ノズルを通して脱気及びガス封入を行ない、ノズルを引き上げた後直ちにシール機構により容器の切口部を包装内部と隔離する」(公報第2頁左上欄10行〜17行)
「先ず、包装体(6)に内容物(7)を充填した後包装体上部をシールし、切口部(13)を残し、切口部(13)にガイド管(3)を通し、先端部に於いて押え治具(4)により密着固定し機密とする。」(公報第2頁右上欄20行〜左下欄3行)
「包装内部の残存空気を極力排除してからシリンダー(5)と共にノズルを上昇させ、シール機構(8)によりシールして包装内部と切口部(13)を隔離した後、押え治具(4)を戻せば包装内部がガス置換された密封包装体が得られる。」(公報第2頁左下欄8行〜13行)
「従来困難とされていた大袋の包装袋に於いても十分包装内残存酸素ガス濃度の減少が可能となり、内容物の品質鮮度を損うことなく流通過程に供することが出来るようになった。」(公報第3頁右上欄1行〜5行)

刊行物3には、真空包装装置について、図面とともに、以下のことが記載されている。
「(3)は上記吸引パイプ(1)の中途部左右に配設したクランピング部材で、共に矢印方向に移動して吸引パイプ(1)及び包袋(4)の開口部を気密的にクランピングするものであって、このクランピング部材(3)の夫々相対向する側には柔軟弾力性のある部材(3')が設けてあり、吸引パイプ(1)の外周に気密的に包袋フィルムを密着させる作用をなさしめる。」(明細書第2頁8行〜14行)
「受台(6)上に内容物を容れた包袋(4)を載せる。この受台(6)が一定のストロークだけ上昇すると包袋(4)の開口部を通して各吸引パイプ(1)が包袋内に介入し、この時点で左右のクランピング部材(3)が互いに当接するまで動いて包袋の開口部を閉じ気密を保持する。
この信号により真空ポンプが働いて包袋(4)内の空気は吸引され内部は真空となる。この状態でヒートシール部材(5)が作用して吸引パイプ(1)の先端から外れた包袋の開口部分をヒートシールし真空包装は完了する。」(明細書第5頁6行〜第6頁1行)

刊行物4には、袋へのノズル挿脱装置について、図面とともに、以下のことが記載されている。
「袋内のエアを抜くには、袋内に吸気ノズルをその口部から挿入するとともに、この口部を両シャッター部により挟持して閉塞し、この状態で脱気した後、吸気ノズルを口部から抜き、その口部を閉塞したままでシールするものが考えられる。この場合、口部を両シャッター部により閉塞すると、吸気ノズルもこの両シャッター部により挟持されるため、吸気ノズルと両シャッター部との間の密封が問題になる。又、吸気ノズルを口部から抜くときにそれらの間からのエア漏れが問題になる。」(公報第1頁右下欄13行〜第2頁左上欄4行)
「ノズル75を進退可能に取付けるとともに、袋100の口部101を挟持して閉塞する一対のシャッター部59,60を開閉可能に取付け、この両シャッター部59,60の挟持縁59a,60aのうち少なくとも一方には切欠き77を形成し、このシャッター部59,60には両シャッター部59,60が閉じたとき切欠き77によりできるノズル挿通間隙79を閉塞する弾性体78を取着したものである。」(公報第2頁左上欄8行-17行)
「まず吸気ノズル75が袋100内にその口部101を通して挿入される。その後、両シャッター部59,60が閉じると、その挟持縁59a,60a間で袋100の口部101が挟持されて閉塞されるとともに、吸気ノズル75が切欠き77に入って弾性体78に接触し、吸気ノズル挿通間隙79が閉塞される。従って、袋100の口部101が密封される。次に、吸気ノズル75の吸引が始まり、袋100内が真空に近い状態になる。吸気ノズル75が切欠き77から抜けると、弾性体78により前記間隙79が閉塞される。」(公報第2頁右上欄1行-11行)

(3)対比・判断
本件発明を、刊行物1に記載の発明と比較すると、刊行物1の「袋」「吸引ノズル」は、それぞれ、本件発明の「包装袋」「エアー吸引ノズル」に相当するから、両者は、
「搬送する包装袋を円形テーブルに周設する各作業ステーションに順次吊下げ正対させ、該包装袋内に内容物を充填しエアー抜きして後、該包装袋の開口部を熱シールにより閉塞して搬出するようにした間歇回転形充填包装機における熱シール時の真空方法において、内容物を充填した前記包装袋の開口部よりエアー吸引ノズルを該包装袋内に進入させるとともに該包装袋内のエアーを吸引し、吸引完了後該エアー吸引ノズルの先端を引上げておいて前記開口部を熱シールして閉塞する間歇回転形充填包装機における熱シール時の真空方法」
である点で一致し、
(a)本件発明では、「スポンジ状の柔軟な押えバーにて該エアー吸引ノズルごと開口部上端を両側から押え閉じして」エアーを吸引し、吸引完了後「開口部を押えバーの押え閉じにより閉塞したまま」エアー吸引ノズルの先端を引上げるのに対し、刊行物1に記載されたものでは、押え閉じを行わない点、
(b)本件発明では、エアー吸引ノズルの先端を、「押えバー間内の位置にとどまるように」しておいて「押えバー直下の」開口部を熱シールして閉塞するのに対し、刊行物1に記載されたものでは、エアー吸引ノズルの先端を押えバー間内の位置にとどめておかない点、
で相違する。

相違点(a)について
しかしながら、(2)で摘記したように、刊行物2には、包装容器の開口部よりノズルを進入させるとともに、押え治具にて開口部上端を両側から気密に押え閉じして包装容器内のエアーを吸引し、吸引完了後開口部を押え治具の押え閉じにより閉塞したままノズルの先端を引上げて押え治具直下の前記開口部をシールして閉塞することが記載されている。
刊行物1、2記載の発明はともに充填包装機における包装体内の空気の除去に関する発明であって、刊行物2に記載された発明を刊行物1に記載された発明に適用することを妨げる特段の事由がないことから、刊行物2に記載された上記技術を刊行物1に記載のものに適用しようとすることは、当業者が通常想到するところである。
ここで、刊行物2に記載されたものは、包装容器の開口部を、ノズルを内挿するガイド管を進入させたまま、押え治具で押さえるようにして、脱気からシール時まで、包装容器の開口部から空気が漏れることを防止するようになっており、ノズルは、ガイド管の中で上下に摺動し、シール時にはシール機構と干渉しない位置に退避可能となっている。
一方、ノズルを挿入したまま、押えバーで包装袋の開口部を押さえて、空気が漏れることを防止するものにおいて、ガイド管を介することなく、ノズルを柔軟な押えバーに対して上下に摺動させるものも、例えば刊行物4に示すように周知である。
刊行物1記載のものに刊行物2記載の技術を適用するにあたり、周知の機構に倣ってガイド管を省略し、また、押えバーにて開口部を気密に閉塞する必要上、エアー吸引ノズルごと直接、押え閉じを行うようにしても、エアー吸引ノズルは押えバーに対して気密を保ったまま上下に摺動して、シール機構と干渉しない位置に退避可能なことは明白であるから、エアー吸引ノズルごと包装袋の開口部を柔軟な押さえバーで押さえるようにして、相違点のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点(b)について
また、熱シールの障害になることを防止するためには、エアー吸引ノズルをシール機構と干渉しない位置まで上昇させれば十分であり、熱シール以前にエアー吸引ノズルを包装袋の開口部から完全に引き抜かねばならない特段の事情もないから、エアー吸引ノズルを引抜く際のもれ等を考慮して、例えば刊行物3に記載されたものと同様に、開口部を閉塞するまでエアー吸引ノズルを押えバー間内の位置にとどめておくようにすることは、当業者であれば適宜採用することができる程度の事項にすぎない。

なお、本件特許権者は特許異議意見書において、刊行物1、2に記載の発明は熱シール時の真空方法でないので、本件発明を取消す理由とならない旨を主張しているが、(2)でも摘記したように、刊行物1には、「図7は本発明装置を第1次(仮)シール工程に設けた図を示したものであり、脱気後直ちに第1次(仮)シールを行い、第2次(本)シール工程で本シールを行うためエアーが再入したりすることはない。」と記載されており、熱シール閉塞の前にエアーが袋内に流入することが防止されるものといえる。
また、刊行物2には、「機密された状態にしておいて、ノズルを通して脱気及びガス封入を行ない、ノズルを引き上げた後直ちにシール機構により容器の切口部を包装内部と隔離する」こと、及び、「包装内残存酸素ガス濃度の減少が可能となり、内容物の品質鮮度を損うことなく流通過程に供する」効果が記載されており、エアー抜き後、熱シール時まで、本件発明と同様に、外部エアーの包装袋内への流入が防止されるものと解される。
従って、本件特許権者の上記主張は採用することができない。

4.むすび
以上のとおり、本件請求項1に係る発明は上記の各刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-02-15 
出願番号 特願平8-355421
審決分類 P 1 651・ 121- Z (B65B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 中島 成  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 渡邊 真
山崎 豊
登録日 2000-12-15 
登録番号 特許第3138916号(P3138916)
権利者 株式会社シンセイ
発明の名称 間歇回転形充填包装機における熱シール時の真空方法  
代理人 永島 郁二  

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