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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01F
管理番号 1073360
異議申立番号 異議2002-72026  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-04-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-08-13 
確定日 2003-02-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第3257936号「ボンド磁石用フエライト粉末およびこれを用いたボンド磁石」の請求項1、2、9、10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3257936号の請求項1、2、9、10に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3257936号の請求項1、2、9、10に係る発明についての出願は、平成7年10月11日の出願であって、平成13年12月7日にその発明について特許権の設定登録がされ、その後平成14年8月13日に、その特許について、異議申立人山田順一により特許異議の申立てがなされたものである。

2.異議申立の理由の概要
特許異議申立人山田順一は、本件請求項1、2、9、10には、それぞれ下記の理由1)〜4)によって、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が記載されておらず、特許を受けようとする発明が明確でないので、本件請求項1、2、9、10に係る発明についての特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件をみたしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号の規定により取り消すべきものである、と主張している。
1)本件請求項1に係る発明に関して、発明の詳細な説明における比較例2及び4によれば、請求項1に係る特許発明の構成要件を全て満たしているフエライト粉末を用いているにもかかわらずボンド磁石の成形が不可であり、また、比較例3、6及び7によれば、請求項1に係る特許発明の構成要件を全て満たしているフエライト粉末を用いているにもかかわらず(BH)max2.5MG0e以上のボンド磁石が得られていないので、請求項1に特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が記載されていないことが明白であるから、請求項1の記載では特許を受けようとする発明が明確でない。
2)本件請求項2に係る発明に関して、発明の詳細な説明における比較例2及び4によれば、請求項2に係る特許発明の構成要件を全て満たしているフエライト粉末を用いているにもかかわらずボンド磁石の成形が不可であり、また、比較例3、6及び7によれば、請求項2に係る特許発明の構成要件を全て満たしているフエライト粉末を用いているにもかかわらず(BH)max2.5MG0e以上のボンド磁石が得られていないので、請求項2に特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が記載されていないことが明白であるから、請求項2の記載では特許を受けようとする発明が明確でない。
3)本件請求項9に係る発明に関して、発明の詳細な説明における比較例2、4、9及び10によれば、請求項9に係る特許発明で特定されている平均粒子径が0.9〜1.5μmのマグネトプランバイト型フエライトの粉末なる構成要件を満たしているフエライト粉末93重量%を用いているにもかかわらずボンド磁石の成形が不可であり、また、比較例3、6及び7によれば、請求項9に係る特許発明で特定されている前記構成要件を満たしているフエライト粉末93重量%を用いているにもかかわらず(BH)max2.5MG0e以上のボンド磁石が得られていないので、請求項9に特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が記載されていないことは明白であるから、請求項9の記載では特許を受けようとする発明が明確でない。
4)本件請求項10に係る発明に関して、発明の詳細な説明における比較例3、6及び7によれば、請求項10に係る特許発明で特定されている平均粒子径が0.9〜1.5μmのマグネトプランバイト型フエライトの粉末なる構成要件を満たしているフエライト粉末93重量%を成形密度3.90g/cm3以上に成形しているにもかかわらず(BH)maxが2.5MG○e以上のボンド磁石が得られていないので、請求項10に特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が記載されていないことは明白であるから、請求項10の記載では特許を受けようとする発明が明確でない。

3.本件請求項1、2、9、10に係る発明
本件請求項1、請求項2、請求項9及び請求項10に係る発明の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】 マグネトプランバイト型フエライトの粉末であって,平均粒子径が0.9〜1.5μm,粒度分布の幾何標準偏差σgが1.8〜2.5,1ton/cm2の圧力で圧縮したときの圧縮密度が3.40g/cm3以上およびJIS K-5101で測定した粉体PHが7〜10であるボンド磁石用フエライト粉末。
【請求項2】 マグネトプランバイト型フエライトの粉末であって,平均粒子径が0.9〜1.5μm,BET法で測定した比表面積が1.5〜4.0m2/g,1ton/cm2の圧力で圧縮したときの圧縮密度が3.40g/cm3以上およびJIS K-5101で測定した粉体PHが7〜10であるボンド磁石用フエライト粉末。
【請求項9】 平均粒子径が0.9〜1.5μmのマグネトプランバイト型フエライトの粉末93重量%以上を樹脂系バインダーを用いて成形してなる(BH)maxが2.5MGOe以上のフエライト系ボンド磁石。
【請求項10】 平均粒子径が0.9〜1.5μmのマグネトプランバイト型フエライトの粉末93重量%以上を樹脂系バインダーを用いて成形密度3.90g/cm3以上に成形してなる(BH)maxが2.5MGOe以上のフエライト系ボンド磁石。」

4.異議申立の理由についての判断
4.1.本件請求項1に係る発明について
異議申立人は、本件請求項1に係る特許発明の構成要件を全て満たしているフエライト粉末を用いているにもかかわらず、ボンド磁石の成形が不可であるか、または、(BH)maxが2.5MGOe以上のフエライト系ボンド磁石が得られないので、本件発明の課題は達成されず、また、本件発明の課題を達成するためには、微粉の平均粒子径、粗粉の平均粒子径、微粉と粗粉との混合比率及びアニール温度についての条件を特定することが必要であり、これらの条件が特定されていない本件請求項1には特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が記載されていないことが明白であるから、請求項1の記載では特許を受けようとする発明が明確でないと主張している。
しかしながら、発明の詳細な説明に記載された実施例1〜15のフエライト粉末について、本件請求項1に記載された条件である、平均粒子径、粒度分布の幾何標準偏差、1ton/cm2の圧力で圧縮したときの圧縮密度及びJIS K-5101で測定した粉体PHの値を見てみると、平均粒子径は最小値が1.00μm(実施例6)で最大値が1.5μm(実施例3)、粒度分布の幾何標準偏差σgは最小値が1.95(実施例6)で最大値が2.35(実施例14,15)、1ton/cm2の圧力で圧縮したときの圧縮密度は最小値が3.40g/cm3(実施例3)、JIS K-5101で測定した粉体PHは最小値が8.3(実施例11)で最大値が9.7(実施例14,15)であるから、上記実施例1〜15についてはいずれも本件請求項1に記載された条件を満足しており、また、該実施例1〜15のフエライト粉末によって形成されたボンド磁石は最大エネルギー積(BH)maxの最小値が2.50MGOe(実施例3,8)であるから、最大エネルギー積(BH)maxは2.5MGOe以上となっているので、本件請求項1には本件発明の課題が達成されるために必要な条件が記載されていると言える。
そして、たとえ異議申立人の主張するように、請求項1に記載されていない条件(例えば、微粉の平均粒子径、粗粉の平均粒子径、微粉と粗粉との混合比率及びアニール温度)によっては、本件請求項1に係る発明が、ボンド磁石の成形が不可であるフエライト粉末及び最大エネルギー積(BH)maxが2.5MGOe未満となるフエライト粉末を含むとしても、特許請求の範囲には請求項ごとに「特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない」(特許法第36条第5項)のであるから、特許請求の範囲には特許出願人が自らの判断で特許を受けることによって保護を求める発明について記載すればよいのであり、特許法第49条第4号及び特許法第113条第4号の規定に特許法第36条第5項が含まれていないことから明らかなように、請求項に「発明を特定するために必要と認める事項のすべて」が記載されているかどうかについては拒絶又は異議の理由とされないこととなっている。
さらに、請求項1に係る発明の明確性の点に関して、異議申立人の指摘した点以外に、1)その記載自体に不明確な点が認められるものであるか、2)発明を特定するための事項の内容に技術的な矛盾や欠陥があるか、又は、技術的意味・技術的関連が理解できないものであるか、3)発明のカテゴリーが不明確であるか、4)範囲をあいまいにする表現がある結果、発明の範囲が不明確となっているものであるか、等について検討しても、請求項1には特に明確でないとする点は認められない。
したがって、本件請求項1については特許を受けようとする発明が明確でないとする理由は認められず、本件請求項1に係る発明についての特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

(なお、本件請求項1に係る発明は、実施例1〜15として発明の詳細な説明に記載されているので、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものでもなく、記載が簡潔でない点も認められないので、特許法第36条第6項第3号の規定に違反するものでもない。
また、特許請求の範囲に「発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載」した項に区分して記載することが必要であるのは、出願日が平成6年改正法の施行日(平成7年7月1日)前の出願であることに注意されたい。)

4.2.本件請求項2、9、10に係る発明について
本件請求項2、9、10に係る発明についても、異議申立の内容は、本件請求項1に係る発明についてのものと同趣旨であるから、本件請求項1と同様の理由により、特許を受けようとする発明が明確でないとする理由は認められず、本件請求項2、9、10に係る発明についての特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件請求項1、2、9、10に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、9、10に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1、2、9、10に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものではない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-01-28 
出願番号 特願平7-288163
審決分類 P 1 652・ 537- Y (H01F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 酒井 朋広  
特許庁審判長 内野 春喜
特許庁審判官 朽名 一夫
池渕 立
登録日 2001-12-07 
登録番号 特許第3257936号(P3257936)
権利者 日本弁柄工業株式会社 同和鉱業株式会社
発明の名称 ボンド磁石用フエライト粉末およびこれを用いたボンド磁石  

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