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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1076076
審判番号 不服2000-6564  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-02 
確定日 2003-05-02 
事件の表示 平成 6年特許願第133600号「大型表示装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年12月 8日出願公開、特開平 7-319410]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続きの経緯
本願は、平成6年5月24日の出願であって、平成12年3月17日付で拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月30日に手続補正がなされたものである。

2. 平成12年5月30日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成12年5月30日の手続補正を却下する。

[理由1]
(1) 補正により追加された事項
上記手続補正により、枠体並びに内側及び外側パネル体の開口部に関して、「枠体の開口部と内側パネル体の上框、下框及び左右の縦框の内側に形成された開口部と外側のパネル体の上框、下框及び左右の縦框の内側に形成された開口部とを、それぞれほぼ同じ大きさにして配置した」点(以下、「追加事項」という。)が追加された。

(2) 願書に最初に添付した明細書及び図面の記載
願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」のようにいう。)における、枠体並びに内側及び外側パネル体の開口部に関する記載の内容についてみてみると、当初明細書には、「上下枠と左右の縦枠を方形に枠組みするとともにその表側に開口部を有」すること、及び、「枠体の開口部には透明パネルを框組みした外側パネル体を開閉自在に支持させる」ことが記載されており(【請求項1】、段落【0017】、段落【0021】等)、また、当初図面から、枠体並びに内側及び外側パネル体が開口部を有することがみてとれる。

(3) 新規事項の有無についての判断
当初明細書には、上記したとおり、枠体に開口部を設けることが記載されているだけであり、枠体の開口部と内側パネル体の上框、下框及び左右の縦框の内側に形成された開口部と外側のパネル体の上框、下框及び左右の縦框の内側に形成された開口部とを、それぞれほぼ同じ大きさにして配置することについて、何ら記載されていない。
しかも、当初明細書には、「前記枠体と内側パネル体に前記光源からの光が逃げるのを防止する突縁を形成した」(【請求項4】)、「内側パネル体には、閉鎖時に枠体1との間から光源4からの光が外に漏れないように突縁24が形成されている。この突縁24は枠体1の側に形成してもよい。」(【0024】)と記載されており、これらの記載、並びに、図2、図3及び図6の記載からすると、内側パネル体又は枠体1の一方に設けられた突縁24は、他方の開口部の周縁を超え、周縁を覆って延びるように設けられるものであることが認められ、そうであれば、枠体1の開口部と内側パネル体の開口部とは、いずれか一方が他方よりも大きいはずであるから、当初明細書に、上記追加事項が記載されているということはできない。
なるほど、当初図面の図2、図3及び図6には、枠体の開口部の周縁と内側及び外側パネル体の上框、下框及び左右の縦框の内側に形成された開口部の周縁とが図示されているが、図2等からは、枠体1の開口部の方が内側パネル体の開口部より大きいことがみてとれるし、同図面の図7及び図8には、これらの開口部の大きさが明らかに異なるものが示されていることからすると、上記追加事項が、当初図面から直接的かつ一義的に導き出されるということもできない。
よって、上記補正により追加された事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものではないため、上記補正は、平成5年法改正前の特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の規定に違反するものである。

[理由2]
(1) 補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、次のとおりに減縮することを含むものである。
「それぞれ断面コ字形に形成された上下枠と左右の縦枠を方形に枠組みするとともにその表側に開口部を有し、裏側には複数の平行な長尺光源とこれら隣り合う長尺光源間に山形又は台形状に形成された反射板とを取り付けて成る箱状枠体を備え、上記枠体の開口部の表側には透明パネルを框組みした外側パネル体を開閉自在に支持させ、この外側パネル体の内側には半透明パネルを框組みした内側パネル体を開閉自在に支持させるとともに、上記外側パネル体と内側パネル体との間に表示フィルム等の表示手段を挟持させ、上記長尺光源からの直接の光と上記反射板に反射した光とを上記内側パネル体から上記表示手段に照射し、さらに上記枠体の開口部と内側パネル体の上框、下框及び左右の縦框の内側に形成された開口部と外側のパネル体の上框、下框及び左右の縦框の内側に形成された開口部とを、それぞれほぼ同じ大きさにして配置したことを特徴とする大型表示装置。」

(2) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された実願平2-51239号(実開平4-11588号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、次のように記載されている。
(イ)「本考案は、広告や案内表示等に使用される照明灯を使った電照式表示装置に関する。」(明細書第1頁第19〜20行)
(ロ)「本体枠1は金属材を以って浅い横長長方形の箱形に形成してあり、内部には箱の底部に当る起立面5に上下対をなす複数組のソケット6を備え、これに縦向きにした蛍光灯2をそれぞれ着脱自在に装着している。」(明細書第5頁第14〜18行)
(ハ)「中枠3は断面L字形に押出成形したアルミの型材を矩形の枠に組んで額縁形に形成してなり、外枠部を形成する枠部分3aから内方に向けて直角に延設する片部分3bの前面にアクリル樹脂製の半透明板7を添わせ、これをビス8によって固定される止め金具9で押えて嵌め殺し状に止め付けてある。」(明細書第5頁第19行〜第6頁第5行)
(ニ)「外枠4は上記中枠と共同して掲示物11を固定し本体枠1の前面に保持するものであり、断面略L字形に押出成形したアルミ型材を中枠3と同様に額縁形に形成し、その内周に透明板12を収めてある。
透明板12は内方に向けて突き出す片部分4bの内側面に周縁部を添わせ、ビス13によって止め付けられる止め金具14により嵌め殺し状に収めてある。」(明細書第6頁第10〜18行)
(ホ)「図中、17は本体枠1に対して中枠3と外枠4を開閉自在に蝶着する蝶番であり、」(明細書第7頁第9〜10行)
(ヘ)「掲示物11をセットする場合には…外枠4を自由にして蝶番17を支点に開放し(第3図の状態)、次に前面を露出させた半透明板7の前面にフィルム状掲示物11を添わせ、再び外枠を閉じて透明板12を接面させ挟持することでセットすることになる。」(明細書第9頁第13〜19行)
上記記載(イ)〜(ヘ)及び第1〜第5図の記載を総合すると、上記引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「浅い横長長方形の箱形であって、起立面5には複数の蛍光灯2を取り付けて成る本体枠1を備え、上記本体枠1の開口部の表側には透明板12を額縁形に形成した枠に嵌め殺し状に収めた外枠4を開閉自在に支持させ、この外枠4の内側には半透明板7を額縁形に形成した枠に嵌め殺し状に収めた中枠3を開閉自在に支持させるとともに、上記外枠4と中枠3との間にフィルム状掲示物11を挟持させ、上記蛍光灯2からの直接の光を上記中枠3から上記フィルム状掲示物11に照射し、さらに中枠3の額縁形に形成した枠の内側に形成された開口部と外枠4の額縁形に形成した枠の内側に形成された開口部とを、それぞれほぼ同じ大きさにして配置したことを特徴とする表示装置。」

(3) 対比
上記補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)と引用発明とを対比すると、後者における「上下枠と左右の縦枠を方形に枠組みするとともにその表側に開口部を有する箱形の本体枠1」は、前者における「浅い横長長方形の箱形である箱状枠体」に、「起立面5」は「(箱状枠体における)裏側」に、「蛍光灯2」は「平行な長尺光源」に、「透明板12」は「透明パネル」に、「外枠4」は「外側パネル体」に、「半透明板7」は「半透明パネル」に、「中枠3」は「内側パネル体」に、及び、「フィルム状掲示物11」は「表示フィルム等の表示手段」に、それぞれ、その機能、構造からみて相当し、後者においても、「浅い横長長方形の箱形である箱状枠体」、「中枠3」及び「外枠4」には開口部が形成され、大型の表示装置であることが明らかであるから、両者は、
「上下枠と左右の縦枠を方形に枠組みするとともにその表側に開口部を有し、裏側には複数の平行な長尺光源を取り付けて成る箱状枠体を備え、上記枠体の開口部の表側には透明パネルを有する外側パネル体を開閉自在に支持させ、この外側パネル体の内側には半透明パネルを有する内側パネル体を開閉自在に支持させるとともに、上記外側パネル体と内側パネル体との間に表示フィルム等の表示手段を挟持させ、上記長尺光源からの直接の光を上記内側パネル体から上記表示手段に照射するようにした大型表示装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
a.前者においては、箱状枠体の上下枠と左右の縦枠とが断面コ字形に形成されているのに対し、後者においては、断面コ字形に形成されていない点
b.前者は、箱状枠体の裏側において、隣り合う長尺光源間に山形又は台形状に形成された反射板とを取り付け、上記反射板に反射した光を上記内側パネル体から上記表示手段に照射しているのに対し、後者においては、かかる反射板を取りつけておらず、反射板に反射した光を上記内側パネル体から上記表示手段に照射していない点
c.前者においては、内側及び外側パネル体において、パネルを框組みしているのに対し、後者においては、パネルを額縁形に形成した枠に嵌め殺し状に収めている点
d.前者においては、枠体の開口部と、内側及び外側パネル体の開口部とをほぼ同じ大きさとしているのに対し、後者においては、内側及び外側パネル体の開口部をほぼ同じ大きさとしているものの、枠体の開口部と内側及び外側パネル体の開口部とはほぼ同じ大きさとされていない(枠体の開口部の方が大きい)点

(4) 判断
そこで、これらの相違点について検討する。
まず、相違点aについてみると、この種の大型表示装置において、箱状枠体の上下枠と左右の縦枠とを断面コ字形に形成することは、本願出願前周知の技術であり(必要ならば、、実願平3-16910号(実開平4-112288号)のマイクロフィルム、を参照のこと。)引用発明において、箱状枠体の枠体構造を、かかる周知のものに変更することは、当業者ならば適宜行いうることというべきである。
なお、請求人は、審判請求書において、本願補正発明においては、箱状枠体の上下枠と左右の縦枠とを断面コ字形に形成することにより、その内側に長尺光源のソケット等を収納できるため、長尺光源による照射時にこれらの影が表側に出にくいという効果が奏される旨を主張しているが、影ができるかどうかは、長尺光源とソケット等との位置関係などによっても異なるものと解されるところ、本願補正発明においては、これらの位置関係などが特定されているわけではないから、上記効果は、断面コ字形に形成することにより直接得られる効果とはいい難い。なお、上記周知の技術に関する参照文献においても、箱状枠体の上下枠と左右の縦枠とを断面コ字形に形成し、その内側に関連部品を収納することが記載されている(図1)。
次に、相違点bについてみる。
原査定の拒絶の理由においても指摘がなされているように、隣り合う長尺光源間に山形又は台形状に形成された反射板を取り付け、上記反射板に反射した光を表示手段に照射するようにすることは、本願出願前周知であり(必要ならば、実願昭57-181802号(実開昭59-87090号)のマイクロフィルム、実願平1-130193号(実開平3-69189号)のマイクロフィルム、実願平4-39872号(実開平6-33184号)のCD-ROM等を参照のこと。)、引用発明において、隣り合う長尺光源間に山形又は台形状の反射板を取り付けることは、当業者ならば適宜行い得ることというべきである。
さらに、相違点cについてみる。
「框」、「框組み」とは、一般的には、「建具の四周を固める部材」、「竪框、横框、鏡板で組まれた構造」をさしていうものであるから((株)彰国社編「建築大辞典」第2版(普及版)、1993年6月10日、(株)彰国社、第306頁、[框組み]の項を参照。)、本願補正発明において、パネルを框組みするとは、上框、下框及び左右の縦框にパネルを組み込んだ構造とすることをいうものと解されるところ、引用発明においても、パネルを額縁形に形成した枠に嵌め殺し状に収めており、両発明におけるパネル体の構造は、上下左右の枠体にパネルを組み込んだ構造である点で何ら異なるものではなく、上記相違点cは、実質的な相違点とはいえない。
最後に、相違点dについてみる。
枠体の開口部と、パネル体等の開口部とをほぼ同じ大きさとすることは、本願出願前広く採用されていることであり(必要ならば、特開昭63-23187号公報)、引用発明において、枠体の開口部と内側及び外側パネル体の開口部とをほぼ同じ大きさとすることは当業者ならば適宜設計変更し得ることというべきである。
なお、請求人は、枠体の開口部と、内側及び外側パネル体の開口部とをほぼ同じ大きさとしたことにより、本願補正発明においては、均一で効率的な照射が実現できる効果が奏されると主張しているが、枠体の開口部の大きさを内側及び外側パネル体の開口部とほぼ同じにするか大きくするかの違いにより、作用効果上格別の差異が生ずると認めるに足る根拠は見当たらない。
したがって、上記相違点a乃至dのいずれにも格別の技術的意義を見出せず、本願補正発明は、本願出願前に頒布された上記刊行物に記載された発明並びに本願出願前周知の技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[むすび]
以上のとおり、本件補正は、平成5年法改正の特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項、及び、同法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第2項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3. 本願発明について
(1)本願発明
平成12年5月30日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜4に係る発明は、平成10年8月31日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
(なお、平成11年1月8日付手続補正は、平成12年3月17日付で却下されている。)
「上下枠と左右の縦枠を方形に枠組みするとともにその表側に開口部を有し、裏側には複数の平行な長尺光源とこれら隣り合う長尺光源間に山形又は台形状に形成された反射板とを取り付けて成る箱状枠体を備え、上記枠体の開口部には透明パネルを框組みした外側パネル体を開閉自在に支持させ、この外側パネル体の内側には半透明パネルを框組みした内側パネル体を開閉自在に支持させるとともに、上記外側パネル体と内側パネル体との間に表示フィルム等の表示手段を挟持させ、上記長尺光源からの直接の光と上記反射板に反射した光とを上記内側パネル体から上記表示手段に照射することを特徴とする大型表示装置。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、上記2.[理由2](2)に記載したとおりである。

(3)対比、判断
本願発明は、実質的に、本願補正発明から、箱状枠体の上下枠及び左右の縦枠の断面形状に関する限定事項である、「それぞれ断面コ字形に形成された」点と、枠体並びに内側及び外側パネル体の開口部に関する限定事項である、「枠体の開口部と内側パネル体の上框、下框及び左右の縦框の内側に形成された開口部と外側のパネル体の上框、下框及び左右の縦框の内側に形成された開口部とを、それぞれほぼ同じ大きさにして配置した」点を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.[理由2](4)に記載したとおり、本願出願前に頒布された上記刊行物に記載された発明並びに本願出願前周知の技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明することができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された上記刊行物に記載された発明並びに本願出願前周知の技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-02-24 
結審通知日 2003-03-03 
審決日 2003-03-14 
出願番号 特願平6-133600
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
P 1 8・ 561- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松澤 福三郎塩澤 克利  
特許庁審判長 梅田 幸秀
特許庁審判官 平上 悦司
門前 浩一
発明の名称 大型表示装置  
代理人 瀬川 幹夫  

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