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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  G03F
審判 全部申し立て 2項進歩性  G03F
管理番号 1076274
異議申立番号 異議2002-70286  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-06-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-02-05 
確定日 2003-02-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3195480号「遮光性感光性樹脂組成物、遮光性感光性転写材料及び遮光膜の形成方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3195480号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3195480号の請求項1ないし5に係る特許は、平成5年12月9日に出願され、平成13年6月1日にその特許権の設定登録がなされ、その後、森田昭司より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成14年7月30日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正事項
2-1-1.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
2-1-2.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
2-1-3.訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
2-1-4.訂正事項d
特許請求の範囲の旧請求項4については、請求項1に繰り上げて、「請求項1又は2の遮光性感光性樹脂組成物を用いた層」を「アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層」と訂正し、「形成方法。」の後に
「【化1】

【化2】

」を挿入する。
2-1-5.訂正事項e
特許請求の範囲の旧請求項5については、請求項2に繰り上げて、「請求項4の遮光性感光性転写材料」を「アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を有する遮光性感光性転写材料」と訂正し、「形成方法。」の後に
「【化3】
化学構造式省略(訂正事項dの【化1】の化合物1〜12の化学
構造式と同じ)
【化4】
化学構造式省略(訂正事項dの【化2】の化合物13〜19の化 学構造式と同じ)」を挿入する。
2-1-6.訂正事項f
段落【0001】の「【産業上の利用分野】本発明は、高光学濃度の遮光膜の形成が可能な遮光性感光性樹脂組成物、遮光性感光性転写材料、およびそれらを用いた遮光膜の形成方法に関する。特に本発明による遮光性感光性樹脂組成物、遮光性感光性転写材料、およびそれらを用いた画像形成方法はセルフアライメント露光方式によるカラーフィルターの作成等に好適に用いられる。」の記載を、「【産業上の利用分野】本発明は、高光学濃度の遮光膜の形成が可能な遮光性感光性樹脂組成物及び遮光性感光性転写材料を用いた遮光膜の形成方法に関する。特に本発明による遮光性感光性樹脂組成物及び遮光性感光性転写材料を用いた画像形成方法はセルフアライメント露光方式によるカラーフィルターの作成等に好適に用いられる。」と訂正する。
2-1-7.訂正事項g
段落【0007】の「【発明が解決しようとする課題】本発明の第1の目的は、光学フィルターを用いずに高光学濃度遮光膜が形成可能な遮光性感光性樹脂組成物を提供することにある。本発明の第2の目的は、光学フィルターを用いずに高光学濃度遮光膜が形成可能な遮光性感光性樹脂転写材料を提供することにある。本発明の第3の目的は、光学フィルターを用いないセルフアライメント方式による高光学濃度のブラックマトリックス形成方法を提供することにある。」の記載を、「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、光学フィルターを用いないセルフアライメント方式による高光学濃度のブラックマトリックス形成方法を提供することにある。」と訂正する。
2-1-8.訂正事項h
段落【0008】の「【課題を解決するための手段】本発明の第1の目的は、(1)アルカリ可溶性バインダー、(2)光重合開始剤、(3)エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、(4)少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物において、該光重合開始剤が400nm以上の波長の光に対して実質的に感度を持たないことを特徴とする遮光性感光性樹脂組成物により達成された。
【化3】
化学構造式省略(訂正事項dの【化1】の化合物1〜12の化学構 構造式と同じ)
【化4】
化学構造式省略(訂正事項dの【化2】の化合物13〜19の化
学構造式と同じ)」の記載を、「本発明の目的は、(1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面に、アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を選択的にあるいは全面に設ける工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に、遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形成方法、あるいは、(1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面と、アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を有する遮光性感光性転写材料を加熱下で貼り合わせ、該遮光性感光性樹脂層を基板側に選択的にあるいは全面に転写する工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形方法、により達成された。遮光性感光性転写材料において、該遮光性感光性組成物は、仮支持体の上に直接設けても、密着性等を制御する機能を有する下塗り層を設けた上に設けても良い。以下本発明を詳細に説明する。
【化5】
化学構造式省略(訂正事項dの【化1】の化合物1〜12の化学
構造式と同じ)
【化6】
化学構造式省略(訂正事項dの【化2】の化合物13〜19の化 学構造式と同じ)」と訂正する。
2-1-9.訂正事項i
段落【0009】及び【0010】を削除する。
2-1-10.訂正事項j
段落【0018】の「ホウケイ酸ガラスを基板として場合」の記載を、「ホウケイガラスを基板とした場合」に訂正する。
2-1-11.訂正事項k
段落【0024】の「さらにに本発明の組成物ににには」の記載を「さらに本発明の組成物には」に訂正する。
2-1-12.訂正事項l
段落【0025】の「本発明の遮光感光性組成物」の記載を、「本発明における遮光性感光性組成物」に訂正する。
2-1-13.訂正事項m
段落【0026】の「本発明の遮光感光性組成物」の記載を、「本発明における遮光性感光性組成物」に訂正する。
2-1-14.訂正事項n
段落【0042】の「本発明の遮光性感光性組成物」の記載を、「本発明において、遮光性感光性組成物」に訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
2-2-1.訂正事項a、b、cは、それぞれ特許請求の範囲の請求項1、2、3を削除するものである。
したがって、上記訂正事項a、b、cは、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
2-2-2.訂正事項dは、請求項1〜3を削除したことに伴なって、旧請求項4を請求項1に繰り上げると共に、遮光性感光性樹脂組成物を旧請求項1又は2を引用して記載していたのを、旧請求項1に記載されていた通りに訂正したものである。なお、旧請求項1では、光重合開始剤が化合物1から19の中から選択されるものであったのを、旧請求項2では、化合物19に限定するものであるから、旧請求項1、2のいずれを引用しても遮光性感光性樹脂組成物が、化合物1から19の中から選択される光重合開始剤を含む点では変わらない。
したがって、上記訂正事項dは、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
2-2-3.訂正事項eは、旧請求項1〜3を削除したことに伴なって旧請求項5を請求項2に繰り上げて、さらに「請求項4の遮光性感光性転写材料」が、旧請求項4に係る発明は遮光膜の形成方法であるので、誤記と認められるところ、旧請求項1に記載されていた通りに遮光性感光性樹脂組成物を規定して、その遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を有する遮光性感光性転写材料に訂正したものであるが、これは実施例1の、遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を有する遮光性感光性転写材料を作成する記載によって裏付けられている(段落【0030】〜【0036】参照)。
したがって、上記訂正事項eは、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的とする訂正に該当し、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
2-2-4.訂正事項fは、請求項1〜3を削除したことに整合するように、【産業上の利用分野】を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
2-2-5.訂正事項gは、請求項1〜3を削除したことに整合するように、【発明が解決しようとする課題】を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
2-2-6.訂正事項hは、請求項1〜3を削除したことに整合するように、【課題を解決するための手段】を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、「仮支持対」を「仮支持体」とする訂正は誤記の訂正を目的とするものである。そして、「(1)透明基板上に・・・本発明を詳細に説明する。」の記載は、訂正前の段落【0010】、【0009】に記載されていることである。したがって、訂正事項hは、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
2-2-7.訂正事項i、l〜nは、請求項1〜3を削除したことによって「遮光感光性組成物」が発明ではなくなったことに整合するように、「本発明の遮光感光性組成物」を、「本発明における遮光性感光性組成物」、「本発明において、遮光性感光性組成物」と訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
2-2-8.訂正事項j、kは、誤記を正すものであるから、誤記の訂正を目的とする訂正するものであり、願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4項第3項において準用する平成6年法律116号による改正前の特許法126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立について
3-1.本件発明
上記2.で示したように訂正が認められるから、本件の請求項1、2に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲請求項1、2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】(1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面に、アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を選択的にあるいは全面に設ける工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に、遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形成方法。
【化1】

【化2】

【請求項2】(1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面と、アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を有する遮光性感光性転写材料を加熱下で貼り合わせ、該遮光性感光性樹脂層を基板側に選択的にあるいは全面に転写する工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形方法。
【化3】

【化4】



3.特許異議申立ての理由の概要
異議申立人森田昭司は、
甲第1号証(特開平5-34517号公報)、
甲第2号証(特開平5-45876号公報)、
甲第3号証(特公昭59-28328号公報)、
甲第4号証(特開昭55-32070号公報)、
甲第5号証(特開平5-265208号公報)、
甲第6号証(特開昭63-309916号公報)、
参考資料1(特開平7-159991号公報;本件出願に係る公開公報)
を提出して、
本件の訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第6号証に記載された発明であり、また、訂正前の請求項1ないし5に係る発明は甲第1ないし5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、さらに、訂正前の請求項5に係る発明は記載に不備があるから、本件の訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、特許法第29条第1項3号、第2項、第36条第5項の規定により特許を受けることができず、本件の訂正前の請求項1ないし5に係る特許は取り消されるべきである旨主張している。

4.甲号各証の記載事項
4-1.甲第1号証(特開平5-34517号公報)には次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】(1)基板上に、単一もしくは複数の色の画素パターンを形成する工程、
(2)該単一もしくは複数の色の画素パターンをもつ基板上に光重合性遮光材料層を形成する工程、
(3)裏面より全面露光する工程、
(4)該基板上に形成された画素パターンの各画素の周辺及び画素が存在しない部分が光透過性のマスクを介して、該光重合性遮光材料に露光する工程、
(5)該光重合性遮光材料を現像して未露光部を除去し、遮光パターンを形成する工程、
(6)該形成された遮光パターンの各画素をサイドエッチングし、着色パターンと遮光パターンとの重なり部を除去する工程、
を含むことを特徴とする遮光パターンの形成方法。」(ただし「(1)〜(6)」は丸数字)
(1b)「【0015】本発明の光重合性遮光材料は、カーボンブラックや黒色顔料および複数の着色顔料の組み合わせによる黒色混合物または黒色染料を光重合性組成物中に分散または溶解したものである。・・・アルカリ水溶液現像可能な光重合性組成物は、主成分としてカルボン酸基含有のバインダーと多官能アクリルモノマーと光重合開始剤を含んでいる。・・・好ましい光重合性遮光材料は、特開平1-152449号明細書に記載されている、顔料としてカーボン、チタンカーボン、酸化鉄のそれぞれ単独または混合物を含み、・・・カルボン酸基含有バインダーとしてアクリル酸、メタクリル酸等の不飽和有機酸化合物とメチルアクリレート、エチルアクリレート、ベンジルメタクリレート等の不飽和有機酸エステル化合物の共重合体を含み、光重合開始剤としてハロメチルオキサジアゾール系化合物またはハロメチル-s-トリアジン系化合物を含有する組成物である。」
(1c)「【0021】
【実施例】
実施例1
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に下記の処方H1からなる塗布液を塗布、乾燥させ、乾燥膜厚が20μmの熱可塑性樹脂層を設けた。
【0022】
熱可塑性樹脂層処方H1:
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(重量比:塩ビ/酢ビ=75/25、
重合度:約400、日信化学(株)製MPR-TSL) 290.0g
塩化ビニル-酢酸ビニル-マレイン酸共重合体(重量比:塩ビ/酢ビ/
マレイン酸=86/13/1、重合度:約400、日信化学(株)
製MPR-TM 76.0g
フタル酸ジブチル 88.5g
フッ素系界面活性剤(大日本インキ(株)製F-177P) 5.4g
MEK 975.0g
【0023】次に上記熱可塑性樹脂層上に下記処方B1から成る塗布液を塗布、乾燥させ、乾燥膜厚が1.6μm厚の分離層を設けた。
分離層処方B1:
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製PVA205、鹸化率=80%)
173.2g
弗素系界面活性剤 8g
蒸留水 2800g
【0024】上記熱可塑性樹脂層及び分離層を有する4枚の仮支持体の上に、それぞれ表1の処方を有する、黒色(Bl層用)、赤色(R層用)、緑色(G層用)及び青色(B層用)の4色の感光性溶液を塗布、乾燥させ、乾燥膜厚が2μmの着色感光性樹脂層を形成した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【0026】さらに上記感光性樹脂層の上にポリプロピレン(厚さ12μm)の被覆シートを圧着し、赤色、青色、緑色および黒色感光性転写材料を作成した。この感光性転写材料を用いて、以下の方法でカラーフィルターを作成した。赤色感光性転写材料の被覆シートを剥離し、感光性樹脂層面を透明ガラス基板(厚さ1.1mm)にラミネーター(大成ラミネータ(株)製VP-II)を用いて加圧(0.8kg/cm2)、加熱(130℃)して貼り合わせ、続いて分離層と熱可塑性樹脂層との界面で剥離し、仮支持体と熱可塑性樹脂層を同時に除去した。次に所定のフォトマスクを介して露光し、現像して不要部を除去し、ガラス基板上に赤色画素パターンを形成した。次いで、赤色画素パターンが形成されたガラス基板上に、緑色感光性転写材料を上記と同様にして貼り合わせ、剥離、露光、現像を行ない、緑色画素パターンを形成した。同様な工程を青色感光性転写材料で繰り返し、透明ガラス基板上にR、G、Bの各パターンを形成した。さらにその上に上記黒色感光性転写材料を用い、転写法により黒色感光性樹脂層を全面に設けた。尚、転写は、温度130℃、圧力0.8kg/cm2、搬送速度0.2m/分 で行った。又、パターン形成の際、現像は33℃の1%炭酸ナトリウム水溶液に30秒間浸漬して行った。次いで、裏面より全面露光し、続いて表側からR、G、B画素の周辺とブラックマトリックスの画素が5μmづつ重なるようなフォトマスクを介して200mJ/cm2で露光した。次に所定の現像液をスプレーすることにより現像し、重なりのあるパターンのカラーフィルターを得た。」
(1d)段落【0025】の表1には、K層の着色感光層用塗布液が、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比=73/27,粘度=0.12)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ミヒラーズケトン、2-(o-クロロフエニルジフエニル-4,5-イミダゾール二量体、及びカーボンブラック(黒色)を含有すること。

4-2.甲第2号証(特開平5-45876号公報)には次の事項が記載されている。
(2a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,・・・新規な感光性S-トリアジン化合物、及びそれを含有する光重合性組成物に関するものである.本発明の光重合性組成物は、カラープルーフ等の作成に使用できる感光感熱性記録材料、カラープルーフ等多色画像の作成工程において使用する感光性転写シート、印刷基板作成用等のフオトレジスト、印刷版等に有用である。」
(2b)「【0039】(2) 仮支持体、有機重合体よりなる剥離層、光重合開始剤として本発明になる感光性ビストリハロメチル-S-トリアジン化合物を含有する光重合性組成物層を、この順に有する感光性転写シート。このような感光性転写シートは、サープリント法によるカラープルーフ等の、多色画像の作成工程に有用に使用される。」(ただし「(2)」は丸数字)
(2c)「【0070】
【化13】


(2d)【0080】実施例8〜10
1-1.[電子供与性無色染料カプセル液(A)の調製]・・・・・・・・
【0081】1-2.[電子供与性無色染料カプセル液(B)の調製]・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【0082】2-1.[光重合性組成物の乳化液(A)の調製〕
表1に示した光重合開始剤・・・ゼラチン水溶液13g ・・・乳化し、光重合性組成物の乳化液(A)を調整した。
【0083】2-2.[光重合性組成物の乳化液(B)の調製]
光重合性組成物の乳化液(A)において光重合開始剤を添加しない光重合性組成物の乳化液(B)を調整した。
【0084】3-1.[感光・感熱層用塗布液(A)の調製]
電子供与性無色染料カプセル液(A)1.4g と光重合性組成物の乳化液(A)3.7gと蒸留水1.1gとを混合し感光・感熱層用塗布液(A)を調製した。
【0085】3-2.[感光・感熱層用塗布液(B)の調製]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【0086】4.[中間層用塗布液の調整]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【0087】5.[保護層用塗布液の調製]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【0088】6.[記録材料の作製と評価]
感光・感熱層用塗布液(A)を100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に・・・塗布し、・・・この層の上に中間層用塗布液を・・・塗布し、・・・次に感光感熱層用塗布液(B)を・・・塗布乾燥し、更にその上に保護層用塗布液を・・・塗布し、・・・感光感熱シートを得た。・・・・
紫外光で露光し、その後120℃の熱板で5秒間加熱した。未露光部のシアン、マゼンタの発色濃度は、各々1.5、1.6だった。・・・・・・・・
【0089】比較例1〜3
実施例8において光重合性組成物の乳化液(A)の調製に用いた表1に示した光重合開始剤を、同じく表1に示した比較例用の化合物に代え、同様の操作でそれぞれ感光感熱シートを得た。実施例8と同様な評価を行った。結果を表2に示す。」
(2e)「【0090】
【表1】


(2f)「【0093】実施例11
ポリエチレンテレフタレ-トフイルム(厚さ:100μm)仮を支持体として、この上に下記組成の塗布液を塗布・乾燥して、乾燥膜厚が0.5μmの剥離層を設けた。
剥離層用塗布液
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【0094】 光重合系感光性樹脂層用塗布液
イエロ-感光塗布液
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【0095】 マゼンタ感光塗布液
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【0096】 シアン感光塗布液
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【0097】 ブラック感光塗布液
ベンジルメタクリレ-ト・メタクリル酸共重合体 60g
モル比:73/27、粘度η:0.12)
ペンタエリスリト-ルテトラアクリレ-ト 43.2g
化合物 2 1.81g
三菱カ-ボンブラックMA-100 6.6g
(大日精化工業(株)製)
メチルセロソルブアセテ-ト 560g
メチルエチルケトン 280g
フッ素系界面活性剤 1g
(フロラ-ドFC-430,住友3M(株)製)
【0098】剥離層の付設された四枚の仮支持体上に、これらの感光塗布液をそれぞれ塗布、乾燥して、乾燥膜厚が2.4μmの、着色した光重合性組成物層を設けた。別に、下記組成の保護層形成用の塗布液を調製し、この塗布液を各色光重合性組成物層の上にそれぞれ塗布、乾燥して、乾燥膜厚が1.5μmの保護層を設けた。
【0099】
保護層用塗布液
ポリビニルアルコ-ル 60g
(GL-05、日本合成化学工業(株)製)
水 970g
メタノ-ル 30g
このようにして、順に仮支持体、剥離層、着色した光重合性組成物層及び保護層からなる四色の感光性転写シ-ト(ネガ型着色感光シ-ト)を作成した。」
(2g)「【0112】
【発明の効果】本発明の感光性ビストリハロメチル-S-トリアジン化合物は経時安定性が優れており、これを用いると経時安定性の優れた光重合性組成物及び感光感熱性記録材料が得られる。更に、感光性転写シ-トの光重合性組成物層の光重合開始剤として使用すると、非画像部の着色が著しく少なく、カラ-プル-フとして良好であり、より印刷物近似性が向上する。」

4-3.甲第3号証(特公昭59-28328号公報)には次の事項が記載されている。
(3a)「本発明は不飽和単量体と光重合開始剤と必要とするなら線状有機高分子重合体からなる光重合性組成物に関し、特に印刷用原版の作成、ホトレジスト等に有用な光硬化像を提供しうる光重合性組成物に関するものである。」(第1頁第2欄第17〜21行)
(3b)「実施例 2
次の処方に従つて実施例1と同様に感光板を作製した。
メタクリル酸メチル/メタクリル酸 48g
(モル比85/15)(MEK中、30℃における極限粘度0.166)
トリメチロールプロパントリアクリレート 29g
一般式(I)の化合物 1.9g
一般式(II)の化合物 2.7g
トリフエニルホスフエート 8g
エチルセロソルブ 50ml
塩化メチレン 27ml
以上により作成した感光板を・・・露光した後下記の処方の現像液により未露光部を除去した。・・・ここで用いた一般式(I)の化合物および一般式(II)の化合物をそれぞれ表2、表3に示す。」(第6頁第12欄第37行〜第7頁第14欄第8行)
(3c)「.

」(第9頁、表3)

4-4.甲第4号証(特開昭55-32070号公報)には次の事項が記載されている。
(4a)「本発明は感光性樹脂組成物に関するものであり、特に活性光線を照射することにより硬化し、しかも活性光線照射部分と非照射部分との間に可視的コントラストを与える感光性樹脂組成物である。」(第1頁右下欄下から第2行〜第2頁左上欄第2行)
(4b)「実施例 3.
次の処方に従つて実施例1.と同様にしてPS版を作製した。
メタクリル酸メチル/メタクリル酸 48g
(モル比85/15)共重合体(メチルエチルケトン中、30℃における極 限粘度0.166)
トリメチロールプロパントリアクリレート 29g
一般式(I)の化合物(第3および5表に指示) 2.7g
一般式(II)の化合物(第4および5表に指示) 1.9g
ロイコマラカイトグリーン 1g
トリフエニルホスフエート 8g
ハイドロキノン 0.5g
エチルセロソルブ 50ml
塩化メチレン 27ml
以上により作成したPS版を・・・露光した。・・・下記の処方の現像液により現像し、・・・ここで用いた一般式(I)の化合物および一般式(II)の化合物をそれぞれ第3表、第4表に示す。」(第10頁左上欄第5行〜右上欄第13行)
(4c)「

」(第3表、第10頁)

4-5.甲第5号証(特開平5-265208号公報)には次の事項が記載されている。
(5a)「【0017】本発明の光重合性組成物中に含ませる光重合開始剤または光重合開始剤系は、実質的に、既知の全ての化合物を使用する事ができる。例としては、p-メトキシフェニル-2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾール、・・・特に好ましいのは2-(p-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾールのようなトリハロメチル基含有化合物がある。」
(5b)「【0024】本発明の光重合性組成物には、更に公知の添加剤、例えば色素、顔料、可塑剤、充填剤、安定化剤等を含有させる事ができる。即ち、本発明の光重合性組成物はカラーフィルター層上の保護層形成に好適に使用できるが、この用途に限定されるものではない。高度の耐薬品性が必要とされるカラーフィルター画素形成用の着色レジスト(例えば特開昭63-298304に開示)、プリント基板用ソルダーレジスト(例えば特開平3-223856に開示)、無電解メッキ用レジスト(同公報に開示)、電気素子の保護膜、層間絶縁膜、接着剤(以上例えば特開平3-126950に開示)等にも有用で・・・」

4-6.甲第6号証(特開平63-309916号公報)には次の事項が記載されている。
(6a)「1.対向する基板間を有し、これらの間に配された配向膜の基板側又は液晶側に所要パターンの遮光層を有する透過型液晶表示装置の製造法において、
前記遮光層の作成に際し、光不溶化型感光性組成物を用いて感光層を形成し、次いで該感光層を所要のパターンで露光、現像することとし、この露光、現像の前又は後において光不溶化型感光性組成物を光不透過性とする処理を行うことを特徴とする透過型液晶表示装置の製造法。
2.前記処理は、感光層形成に先立ち光不溶化型感光性組成物に光透過率を低下させる物質を溶解又は分散させることである特許請求の範囲第1項記載の過型液晶表示装置の製造法。」(特許請求の範囲第1、2項)
(6b)「感光層50の組成は次のとおりである。なお( )内は各成分の機能等を示している。
ベンジルメタアクリレート/メタアクリル酸共重合体(バインダー) 62g
〔モル比70/30,平均分子量Σw20,000〕
ペンタエリスリトール テトラアクリレート(モノマー) 38g
2-ベンゾイルメチレン-3-メチル-β-ナフトチアゾリン(光重合開始剤) 3g
2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリスクロルメチル)-s-トリアジン(熱重合防止剤) 3g
カーボンブラック(例えば三菱化成製のMA-100)(顔料) 20g
セロソルブ アセテート(溶剤) 650g」(第3頁左上欄第9行〜右上欄第6行)
(6c)「光重合開始剤としては、・・・特公昭51-48516号公報に開示されているベンゾチアゾール系化合物/トリハロメチール-s-トリアジン系化合物、米国特許第4,239,850号明細書に開示されているトリハロメチル-s-トリアジン系化合物・・・等があげられる。」(第5頁左下欄第4行〜右下欄第2行)

5.対比・判断
5-1.特許法第29条第2項違反について
5-1-1.請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という;訂正前の請求項4に対応)と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
【表1】に示される、K層の着色感光層用塗布液が含有する、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ミヒラーズケトン/2-(o-クロロフエニルジフエニル-4,5-イミダゾール二量体、及びカーボンブラック(黒色)は、それぞれ本件発明の、アルカリ可溶性バインダー、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、光重合開始剤、着色剤に相当するから、該塗布液は、本件発明1の遮光性感光性樹脂組成物に対応するものである〔摘記事項(1d)参照〕。
また、甲第1号証において、赤、青、緑の各色の感光性転写材料のそれぞれの感光性樹脂層面を透明ガラス基板に貼り合わせ、各色の所定フォトマスクを介して露光し、現像して不要部を除去し、ガラス基板上に赤、青、緑の画素パターンを形成したことは、本件発明1の、透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成したことに対応することであり、さらにその上に上記黒色感光性転写材料を用い、転写法により黒色感光性樹脂層を全面に設けたことは、本件発明1の、透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像を形成された面に、遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を全面に設けることに対応することである〔摘記事項(1c)参照〕。
裏面より全面露光し、続いて表側からR、G、B画素の周辺とブラックマトリックスの画素が5μmづつ重なるようなフォトマスクを介して200mJ/cm2で露光したことにおいて、裏面よりの全面露は、本件発明1の、透明基板を通して露光することに相当し、続く表側からのフォトマスクを介しての露光は画素パターン面側から露光である〔摘記事項(1c)参照〕。
そして、甲第1号証に記載された発明の、「ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体」、「ペンタエリスリトールテトラアクリレート」、「カーボンブラック」、「透明ガラス基板」、「K層の着色感光層用塗布液」、「赤、青、緑の画素パターン」は、本件発明1の、「アルカリ可溶性バインダー」、「エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー」、「着色剤」、「透明基板」、「遮光性感光性樹脂組成物」、「赤、青、緑の画素を有する画像」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は、「(1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面に、アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を全面に設ける工程、(2)該透明基板を通して露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の全部に、遮光膜を形成する工程、を含む遮光膜を形成する工程、を含む遮光膜の形成方法」である点で一致し、
相違点1:光重合開始剤が、前者では、化合物1から19の中から選択される少なくとも一種であるのに対して、後者では、ミヒラーズケトン/2-(o-クロロフエニルジフエニル-4,5-イミダゾール二量体である点、
相違点2:露光が、前者では、透明基板を通して露光するだけなのに対して、後者では、透明基板を通して露光し、次いで該基板に形成された画像面側から光透過性マスクを介して露光する点、
で相違する。

上記相違点1、2について検討する。
相違点1について
甲第2号証の実施例11には、ブラック感光塗布液が記載されているが、ブラック感光塗布液が含有する、ベンジルメタクリレ-ト・メタクリル酸共重合体、ペンタエリスリト-ルテトラアクリレ-ト、化合物 2〔摘記事項(2c)参照〕、三菱カ-ボンブラックMA-100は、それぞれ本件発明1の、アルカリ可溶性バインダー、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、化合物19の光重合開始剤、着色剤に相当するから、本件発明1の、遮光性感光性樹脂組成物に相当するものではある。さらに、該ブラック感光塗布液と、シアン、マゼンタ、イエローの各色感光塗布液を塗布した四色の感光性転写シートを作成することが記載されている。該感光性転写シートを露光現像して、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの四色の画像を形成し、その四色の画像を重ね合わせて作成したカラープルーフは非画像部の着色が少なく、印刷物近似性が向上することが記載されている〔摘記事項(2f)、(2g)参照〕。
また、甲第2号証の表1に示される、実施例8の光重合性組成物の乳化液(A)に含有される光重合開始剤の化合物-2は、本件発明1の化合物19であって、該光重合性組成物の乳化液(A)を用いた感光感熱シートにおいて経時安定性を改善するという効果を生じるものである。そして、比較例1、2、3の光開始重合剤は、それぞれ本件発明1の化合物5、8、1の光開始重合剤であるが、比較例であり、効果を生じるものとしては記載されていない〔摘記事項(2c)〜(2e)、(2g)参照〕。
そうであるから、甲第2号証の光重合性組成物は、カラーフィルターの遮光膜のセルフアライメントのために、赤、青、緑の画素を有する画像が形成された透明基板を通して露光するために用いるものではない。また、甲第2号証には青画素を通して露光した際、400nm附近の光が透過して青画素上に遮光材料が残るというカブリが発生することについて何も記載されておらず、示唆もない。
よって、甲第2号証に、化合物1、5、8、19が光重合開始剤として記載されているからといって、そのことがこれらの光重合開始剤を、本件発明1の光重合開始剤に用いることを動機付けるものではない。
甲第3、4号証には、光重合開始剤が示されており、その中に本件発明1の化合物1、13の光重合開始剤もあるが、印刷用原版の作成、ホトレジスト、画像形成を用途とするものである。また、甲第3、4号証での露光は画像面側から露光するものであって、透明基板を通しての露光との関係までについては何も記載されておらず、示唆もない〔摘記事項(3a)〜(4b)参照〕。
甲第5号証には、カラーフィルターの保護層、画素形成用の着色レジスト等を用途とする光重合性組成物が記載され、その光重合開始剤として、2-(p-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾールが例示されており、これは本件発明1の化合物3の光重合開始剤ではあるが、透明基板を通しての露光については記載されておらず、示唆もない〔摘記事項(5a)、(5b)参照〕。
甲第6号証には、カーボンブラックを含有する光不溶化型感光性組成物の感光層に所要のパターンを露光して、遮光層(本件発明1の遮光膜に相当)を作成することが記載されているが、光不溶化型感光性組成物は2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリスクロルメチル)-s-トリアジンは、本件発明1の化合物1に相当するものではあるが、熱重合防止剤として用いているにすぎず〔摘記事項(6a)、(6b)参照〕、また、光重合開始剤としてトリハロメチル-s-トリアジン系化合物が例示されているが、単なる例示にとどまるもので、本件発明1の化合物1から19の特定のトリハロメチル-s-トリアジン系化合物を示唆するものではない〔摘記事項(6c)参照〕。
したがって、甲第2ないし6号証の記載は、本件発明1の化合物1から19の中から選択される少なくとも一種の光重合開始剤を選択して用いることを動機付けるものではない。

相違点2について
本件発明1において、透明基板を通して露光するだけで遮光膜が形成できるのは、400nm以上の波長の光に対して実質的に感度を持たない化合物1〜19を光重合開始剤として用い、裏面から透明基板を通して露光することにより、400nm以上の波長の光を透過する青画素上にある遮光性感光性樹脂組成物が感光しないため光硬化せず、現像により完全に除去できてカブリを生じないことによるものであり、遮光膜のセルフアライメントを可能としたものである(段落【0004】〜【0006】参照)。
これに対して、甲第1号証に記載された発明において、透明基板を通して露光し、続いて該基板に形成された画素面側から、遮光膜形状パターンを有する光透過性マスクを介して露光するという2回の露光をするのは、400nm以上の波長の光に対して実質的に感度を持たないことによる遮光膜のセルフアライメントができないからであるといえる。
甲第2ないし5号証に記載の光重合組成物の露光は、カラーフィルターの遮光膜のセルフアライメントのために、赤、青、緑の画素を有する画像が形成された透明基板を通して露光するために用いるものではなく、遮光膜をセルフアライメントで形成することを導き出すことができない〔摘記事項(2d)、(2f)、(3a)〜(5b)参照〕。
甲第6号証には、カーボンブラックを含有する光不溶化型感光性組成物の感光層に所要のパターンを露光して、遮光層(本件発明1の遮光膜に相当)を作成することが記載されているが、所要のパターンで露光するのであるから、画素面側から露光するものであって、透明基板を通しての露光については記載されておらず、示唆もない〔摘記事項(6a)、(6b)参照〕。
したがって、本件発明1は、相違点1、2により、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づき、甲第6号証に記載された発明を勘案しても、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

5-1-2.請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明(以下「本件発明2」という;訂正前の請求項5に対応)は、本件発明1の「遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を選択的にあるいは全面に設ける工程」〔工程(1)参照〕が、「遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を有する遮光性感光性転写材料を加熱下で貼り合わせ、該遮光性感光性樹脂層を基板側に選択的にあるいは全面に転写する工程」と、遮光性感光性樹脂組成物の層を、遮光性感光性転写材料を転写することで設けると規定した点のみで異なるものである。
そうすると、化合物1〜19の中から選択される少なくとも1種の光重合開始剤を用いる点は両者で共通する構成であるから、本件発明2と甲第1号証に記載された発明とは、上記5-1-1.に示した相違点1、2において、明らかに異なる。
相違点1、2は上記検討事項の通りであるから、本件発明2は、相違点1、2により、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づき、甲第6号証に記載された発明を勘案しても、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

5-2.特許法第36条第5項違反について
請求項2に係る発明に対応する訂正前の請求項5に係る発明では、「請求項4の遮光性感光性転写材料」と記載されているが、訂正前の請求項4に係る発明は、「遮光膜の形成方法」であるから、該訂正前の請求項5に係る発明には明確に特定されていない不備があるとする点は、上記のように請求項2が訂正されたので解消した。

なお、訂正前の請求項1ないし3は、訂正の結果削除されたので、該請求項1ないし3に対する異議申立人の主張は判断する対象が存在しない。

6.むすび
以上のとおりであるので、異議申立の理由及び証拠によっては、本件の請求項1、2に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件の請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遮光性感光性樹脂組成物、遮光性感光性転写材料及び遮光膜の形成方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 (1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面に、アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を選択的にあるいは全面に設ける工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形成方法。
【化1】

【化2】

【請求項2】 (1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面と、アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を有する遮光性感光性転写材料を加熱下で貼り合わせ、該遮光性感光性樹脂層を基板側に選択的にあるいは全面に転写する工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形成方法。
【化3】

【化4】

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高光学濃度の遮光膜の形成が可能な、遮光性感光性樹脂組成物及び遮光性感光性転写材料を用いた遮光膜の形成方法に関する。特に本発明による遮光性感光性樹脂組成物及び遮光性感光性転写材料を用いた画像形成方法はセルフアライメント露光方式によるカラーフィルターの作成等に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来、カラーフィルターを作成するにあたりR、G、Bの各画素の間隙には表示コントラスト向上等の目的でブラックマトリックスを形成している。その方法として、クロム等の金属膜をブラックマトリックスとして用いる方法や遮光性顔料等を分散させた感光性樹脂を用いる方法等が知られている。何れの場合においてもそのブラックマトリックスとR、G、Bの各画素はアライメントズレ等で発生する白ヌケ等を防止する目的で一部重なりを有して形成される。
【0003】
クロム等の金属膜を用いたブラックマトリックスは、金属膜を蒸着等の方法で基板上に形成し、次にフォトレジストを使用したフォトリソとエッチング工程により金属膜をパターニングする。遮光性顔料等を分散させた感光性樹脂を用いる方法は、遮光性顔料等を分散した感光性樹脂層をを塗布や印刷等の方法で基板上に形成し、パターン露光-現像の工程でブラックマトリックスが形成される。
【0004】
この際、例えば特開昭62-9301に開示されているように、この遮光性顔料等を分散させた感光性樹脂を用いたセルフアライメント方式でブラックマトリックスを形成する方式がコスト、製造工程の面から注目視されている。その方式では、R、G、Bの各画素が形成された基板にカーボンブラック等の黒色遮光性顔料等を分散させた感光性樹脂層を設け、裏面から露光しR、G、Bの各画素がフォトマスクとして作用し、その間隙にブラックマトリックスが形成される。この場合、従来必要であった位置合せの手間が省け、なおかつ白ヌケは原理上発生しない利点がある。
【0005】
このセルフアライメント方式において、特に400nm附近の光透過性が大きいB画素を透過してきた光により、B画素上に設けられた感光性遮光材料が感光し、B画素上に遮光材料が残る現象、いわゆるカブリが発生していた。これを避けるために裏面露光量を少なくし、B画素上にカブリが発生しないように裏面露光量を調整する必要があり、その場合、十分な裏面露光量を与えられないので、現像処理の際遮光膜として存在すべき部分も一部エッチングされ、結果的には遮光膜の光学濃度が低くなってしまう問題を有していた。
【0006】
そこで、上述のB画素上の裏面露光カブリを防止するために裏面露光時に400nm以上の波長をカットする光学フィルターを介して露光し、高濃度の遮光膜を形成する方法が特願平4-150691に記載されているが、光学フィルターの熱的強度が弱い等の問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、光学フィルターを用いないセルフアライメント方式による高光学濃度のブラックマトリックス形成方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、(1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面に、アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を選択的にあるいは全面に設ける工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形成方法、あるいは、(1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面と、アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を有する遮光性感光性転写材料を加熱下で貼り合わせ、該遮光性感光性樹脂層を基板側に選択的にあるいは全面に転写する工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形成方法、により達成された。遮光性感光性転写材料において、該遮光性感光性組成物は、仮支持体の上に直接設けても、密着性等を制御する機能を有する下塗り層を設けた上に設けても良い。以下、本発明を詳細に説明する。
【化5】

【化6】

【0011】
本発明に用いられるアルカリ可溶性バインダーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するポリマー、例えば、特開昭59-44615号、特公昭54-34327号、特公昭58-12577号、特公昭54-25957号、特開昭59-53836号、特開昭59-71048号の各明細書に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等があり、また側鎖にカルボン酸基を有するセルローズ誘導体が挙げられる。この他に水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも有用である。特に好ましくは米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の共重合体やベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。以上のものは水不溶性のバインダーを挙げたが、水溶性ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
【0012】
以上の他に、種々の性能、例えば硬化膜の強度を改良するために、現像性等に悪影響を与えない範囲でアルカリ不溶のポリマーを添加することができる。これらのポリマーとしてはアルコール可溶性ナイロンあるいはエポキシ樹脂が挙げられる。
【0013】
バインダーの遮光性感光性樹脂組成物固形分中の固形分含有量は10〜95重量%で、より好ましくは20〜90重量%である。10重量%未満では感光性樹脂層の粘着性が高すぎ、95重量%を越えると形成される画像の強度及び光感度の点で劣る。
【0015】
以下に、本発明で使用する光重合開始剤を挙げる。
【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

【0018】
光重合開始剤の分光感度スペクトルの400nm以上の面積(A)と、遮光膜を形成する基板の透過率が10%以上となる最低波長から400nm以下の面積(B)の比(A/B)の値が0.1以下であることは、該光重合開始剤が400nm以上の光に実質的に感度を有さない化合物であることを意味する。
例えば、ホウケイ酸ガラスを基板とした場合、10%以上の光透過率となる波長は、290nmであり、従って、この場合は上記面積Bは、290nmから400nmの面積となる。
そこで、前記本発明で使用される化合物1〜19について、ホウケイ酸ガラスを用いた場合の分光感度曲線の400nm以上の面積(A)と290〜400nmの面積(B)の比を調べたところ、全て、0.01以下であった。
【0019】
光重合開始剤の光重合性組成物固形分中の固形分含有量は0.5〜20重量%で、より好ましくは1〜15重量%である。0.5重量%未満では光感度や画像の強度が低く、20重量%を越えても性能への良好な効果が認められない。
【0020】
本発明に用いられるエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基をもち沸点が常圧で100℃以上の化合物である。例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート。ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシドよプロピレンオキシドを付加反応した後で(メタ)アクリレート化したもの。特公昭48-41708号、特公昭50-6034号、特開昭51-37193号の各公報に記載されているウレタンアクリレート類。特開昭48-64183号、特公昭49-43191号、特公昭52-30490号の各公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートを挙げることができる。より好ましくはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0021】
エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマーの遮光性感光性樹脂組成物固形分中の固形分含有量は5〜50重量%で、より好ましくは10〜40重量%である。5重量%未満では光感度や画像の強度が低く、50重量%を越えると感光性樹脂層の粘着性が過剰になり好ましくない。
【0022】
本発明に用いられる少なくとも一種類以上の着色剤としては、特願平5-110487に記載の種々の着色剤が用いられる。中でも、同明細書記載の紫外線領域が透過性が大きくなるような顔料の混合が特に好ましい。着色剤の遮光性感光性樹脂組成物固形分中の固形分含有量は1〜50重量%であることが好ましい。
【0023】
以上の成分の他に、更に熱重合防止剤を添加することが好ましい。その例としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2-メルカプトベンズイミダゾール、フェノチアジン等が挙げられる。
【0024】
さらに本発明の組成物には必要に応じて公知の添加剤、例えば可塑剤、界面活性剤、溶剤等を添加することができる。
【0025】
本発明における遮光性感光性樹脂組成物により形成された遮光膜の厚さは1μmから3μmの範囲が好ましい。1μm未満では、必要な光学濃度を得るためには遮光膜中の顔料濃度が高くなり、現像性が悪化する。3μmを越えると現像性悪化、画像形成再現性悪化等の問題が発生する。この遮光膜の膜厚は上記の範囲において任意に設定可能であり、特にカラーフィルター作成時には完成品カラーフィルターの平坦性が良好であることが望まれ、従って、この場合はその他の着色層(赤、青、緑の各着色層等)と同じ膜厚に設定することが望ましい。
【0026】
本発明における遮光性感光性樹脂組成物は公知の方法で基板上に設けることができる。具体的にはスピナー、ホワイラー、ローラーコーター、カーテンコーター、ナイフコーター、ワイヤーバーコーター、エクストルーダー等を用いて塗布し、乾燥させ遮光性感光性樹脂層を基板上に設ける。特に、仮支持体上に本発明に成る遮光性感光性樹脂組成物層を有する遮光性感光性転写材料を用いて基板上に転写する方式が好ましい。具体的な転写材料としては特願平2-400047、特願平3-9292、特願平3-120223、特願平3-153227、特願平4-64870、特願平5-110487に記載の転写材料が用いられる。
【0027】
裏面露光に際して、光源は遮光性感光性樹脂層の感光性に応じて選択され、超高圧水銀灯、キセノン灯、カーボンアーク灯、アルゴンレーザー等の公知の物が使用できる。
【0028】
また、あらかじめ基板上に形成される赤色、緑色、青色画素は特願平4-150691に記載の様に遮光性感光性樹脂層の感光波長域における上記各画素の光透過率が2%以下にすることが好ましい。
【0029】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
【実施例】
実施例1
(遮光性感光性転写材料の作成)
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に下記の処方H1からなる塗布液を塗布、乾燥させ、乾燥膜厚が20μmの熱可塑性樹脂層を設けた。
【0031】
熱可塑性樹脂層処方H1:
・メチルメタクリレート/2-エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=55/28.8/11.7/4.5、重量平均分子量=80000)
15.0重量部
・BPE-500(新中村化学社製多官能アクリレート) 7.0重量部
・F177P(大日本インキ社製フッ素系界面活性剤) 0.3重量部
・メタノール 30.0重量部
・メチルエチルケトン 19.0重量部
・1-メトキシ-2-プロパノール 10.0重量部
【0032】
次に上記熱可塑性樹脂層上に下記処方B1から成る塗布液を塗布、乾燥させ、乾燥膜厚が1.6μm厚の中間層を設けた。
【0033】
分離層処方B1:
・ポリビニルアルコール(クラレ(株)製PVA205、鹸化率=80%)
130重量部
・ポリビニルピロリドン(GAFコーポレーション社製PVP、K-30)
60重量部
・蒸留水 2110重量部
・メタノール 1750重量部
【0034】
上記熱可塑性樹脂層及び中間層を有する仮支持体の上に、以下の処方C1からなる塗布液を塗布、乾燥させ、乾燥膜厚が2μmの遮光性感光性樹脂層を形成した。
【0035】
処方C1:
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比=70/30、極限粘度=0.12)
11.00重量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 10.60重量部
・ビス[4-[N-[4-(4,6-ビストリクロルメチル-S-トリアジン-2-イル)フェニル]カルバモイル]フェニル]セバケート(光重合開始剤)
0.52重量部
・ピグメントレッド177 4.00重量部
・ピグメントブルー15:6 2.86重量部
・ピグメントイエロー139 2.27重量部
・ピグメントバイオレット23 0.39重量部
・カーボンブラック 1.70重量部
・ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.01重量部
・F177P(大日本インキ社製界面活性剤) 0.07重量部
・メチルセロソルブアセテート 40.00重量部
・メチルエチルケトン 125.00重量部
【0036】
さらに上記遮光性感光性樹脂層の上にポリプロピレン(厚さ12μm)の被覆シートを圧着し、遮光性感光性転写材料を作成した。この遮光性感光性樹脂層のCIE表色法のY値は光源をF10光源とした場合は、0.7となった。365nmの透過率は0.3%となり、Y値と365nm透過率の比は約2.3:1となった。また、CIE表色法で無彩色点からのx、y値の差の絶対値はそれぞれ0.08、0.07となった。また、この場合の光重合開始剤の分光感度スペクトルの400nm以上の面積(A)と350nmから400nm以下の面積(B)の比(A/B)は0.1以下となった。
【0037】
ホウケイ酸ガラス基板(厚さ1.1mm)上に特願平4-150691に記載の実施例1と同じ2μmの膜厚のR、G、B画素を有するカラーフィルターを作成した。この場合、B画素の400nm以上の光透過率は10%以上あった。上記のR、G、Bカラーフィルター上に遮光性感光性転写材料の被覆シートを剥離し、遮光性感光性樹脂層面をカラーフィルター面にラミネーター(大成ラミネータ(株)製VP-II)を用いて加圧(0.8kg/cm2)、加熱(130℃)して貼り合わせ、続いて仮支持体と熱可塑性樹脂層との界面で剥離し、仮支持体を除去した。
【0038】
次にカラーフィルター面とは反対の側から超高圧水銀灯を用いて裏露光を行ったが、この場合、上記基板上に形成されたRGBカラーフィルター部とその外周一部のみに遮光膜を形成する為に光源とサンプルの間にマスクを介して裏露光を行い、露光量は100mj/cm2で行った。その後、1%炭酸ナトリウム水溶液で現像して不要部を除去し、R、G、B各画素間隙とカラーフィルター外周一部に遮光膜を形成した。出来上がったカラーフィルターは遮光膜とRGB層との重なりは無く、CIE表色法のY値が0.7の高光学濃度の遮光膜を有していた。また平坦性も±0.1μmと良好であった。
【0039】
比較例1
下記処方C2からなる塗布液を塗布、乾燥させ、乾燥膜厚が2μmの遮光性感光性樹脂層を形成した以外は実施例1と同様に行った。
【0040】
処方C2
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比=70/30、極限粘度=0.12)
11.00重量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 10.60重量部
・2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[4-(N,N-ジエトキシカルボメチル)-3-ブロモフェニル]-s-トリアジン(光重合開始剤)
0.52重量部
・ピグメントレッド177 4.00重量部
・ピグメントブルー15:6 2.86重量部
・ピグメントイエロー139 2.27重量部
・ピグメントバイオレット23 0.39重量部
・カーボンブラック 1.70重量部
・ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.01重量部
・F177P(大日本インキ社製界面活性剤) 0.07重量部
・メチルセロソルブアセテート 40.00重量部
・メチルエチルケトン 125.00重量部
【0041】
この場合の光重合開始剤の分光感度スペクトルの400nm以上の面積(A)と350nmから400nmの面積(B)の比(A/B)が0.2以上なので、裏面露光によりB画素上にカブリが発生し、遮光材料が一部残ってしまった。裏面露光量を50mj/cm2にして露光を行った場合はB画素上にカブリは発生しないが、得られた遮光膜のY値は1.5の光学濃度の物しか得られなかった。
【0042】
【発明の効果】
本発明において、遮光性感光性組成物を用いることにより、簡単な裏露光で、光学濃度の高い、かつ平坦性の良好な遮光膜を有するカラーフィルターを得ることができる。
 
訂正の要旨 ▲1▼訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、明細書の特許請求の範囲における請求項1を削除する。
▲2▼訂正事項b
特許請求の範囲の減縮を目的として、明細書の特許請求の範囲における請求項2を削除する。
▲3▼訂正事項c
特許請求の範囲の減縮を目的として、明細書の特許請求の範囲における請求項3を削除する。
▲4▼訂正事項d
特許請求の範囲の減縮を目的として、明細書の特許請求の範囲における請求項1乃至3を削除したため、請求項4「(1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面に、請求項1又は2の遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を選択的にあるいは全面に設ける工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形成方法。」を、請求項1『(1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面に、アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を選択的にあるいは全面に設ける工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形成方法。[化1](略)[化2](略)』に訂正する。
▲5▼訂正事項e
特許請求の範囲の減縮を目的として、明細書の特許請求の範囲における請求項1乃至3を削除したため、ならびに請求項5における誤記の訂正を目的として、請求項5「(1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面と、請求項4の遮光性感光性転写材料を加熱下で貼り合わせ、該遮光性感光性樹脂層を基板側に選択的にあるいは全面に転写する工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形成方法。」を、請求項2『(1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面と、アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を有する遮光性感光性転写材料を加熱下で貼り合わせ、該遮光性感光性樹脂層を基板側に選択的にあるいは全面に転写する工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形成方法。[化3](略)[化4](略)』に訂正する。
▲6▼訂正事項f
減縮した特許請求の範囲の記載と整合させることを目的として、明細書の第1頁(特許公報第3頁第6欄)段落番号【0001】における【産業上の利用分野】の「本発明は、高光学濃度の遮光膜の形成が可能な遮光性感光性樹脂組成物、遮光性感光性転写材料、およびそれらを用いた遮光膜の形成方法に関する。特に本発明による遮光性感光性樹脂組成物、遮光性感光性転写材料、およびそれらを用いた画像形成方法はセルフアライメント露光方式によるカラーフィルターの作成等に好適に用いられる。」を、『本発明は、高光学濃度の遮光膜の形成が可能な、遮光性感光性樹脂組成物及び遮光性感光性転写材料を用いた遮光膜の形成方法に関する。特に本発明による遮光性感光性樹脂組成物及び遮光性感光性転写材料を用いた画像形成方法はセルフアライメント露光方式によるカラーフィルターの作成等に好適に用いられる。』に訂正する。
▲7▼訂正事項g
減縮した特許請求の範囲の記載と整合させることを目的として、明細書の第3頁(特許公報第4頁第8欄)段落番号【0007】における【発明が解決しようとする課題】の「本発明の第1の目的は、光学フィルターを用いずに高光学濃度遮光膜が形成可能な遮光性感光性樹脂組成物を提供することにある。本発明の第2の目的は、光学フィルターを用いずに高光学濃度遮光膜が形成可能な遮光性感光性樹脂転写材料を提供することにある。本発明の第3の目的は、光学フィルターを用いないセルフアライメント方式による高光学濃度のブラックマトリックス形成方法を提供することにある。」を、『本発明の目的は、光学フィルターを用いないセルフアライメント方式による高光学濃度のブラックマトリックス形成方法を提供することにある。』に訂正する。
▲8▼訂正事項h
減縮した特許請求の範囲の記載と整合させることを目的として、明細書の第3頁(特許公報第4頁第8欄)段落番号【0008】の「本発明の第1の目的は、(1)アルカリ可溶性バインダー、(2)光重合開始剤、(3)エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、(4)少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物において、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする遮光性感光性樹脂組成物、さらには、該光重合開始剤が下記化合物19を含む遮光性感光性樹脂組成物により達成された。[化3](略)[化4](略)」を、『本発明の目的は、(1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面に、アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を選択的にあるいは全面に設ける工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形成方法、あるいは、(1)透明基板上に赤、青、緑の画素を有する画像が形成された面と、アルカリ可溶性バインダー、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性モノマー、少なくとも一種類以上の着色剤、を含有する遮光性感光性樹脂組成物であり、該光重合開始剤が下記化合物1から19の中から選択される少なくとも一種を含む遮光性感光性樹脂組成物を用いた層を有する遮光性感光性転写材料を加熱下で貼り合わせ、該遮光性感光性樹脂層を基板側に選択的にあるいは全面に転写する工程、(2)該透明基板を通して選択的あるいは全面露光する工程、(3)現像処理を行い、(1)の画像の非画素部の一部あるいは全部に遮光膜を形成する工程、を含むことを特徴とする遮光膜の形成方法、により達成された。遮光性感光性転写材料において、該遮光性感光性組成物は、仮支持体の上に直接設けても、密着性等を制御する機能を有する下塗り層を設けた上に設けても良い。以下、本発明を詳細に説明する。[化5](略)[化6](略)』に訂正する。
▲9▼訂正事項i
減縮した特許請求の範囲の記載と整合させることを目的として、明細書の第4頁(特許公報第6頁第11〜12欄)段落番号【0009】及び【0010】の記載を削除する。
▲10▼訂正事項j
誤記の訂正を目的として、明細書の第5頁(特許公報8頁第15欄)段落番号【0018】における「ホウケイ酸ガラスを基板として場合」を、「ホウケイ酸ガラスを基板とした場合」に訂正する。
▲11▼訂正事項k
誤記の訂正を目的として、明細書の第7頁(特許公報第9頁第17欄)段落番号【0024】における「さらにに本発明の組成物ににには」を『さらに本発明の組成物には』に訂正する。
▲12▼訂正事項l
減縮した特許請求の範囲の記載と整合させることを目的として、明細書の第7頁(特許公報第9頁第18欄)段落番号【0025】における「本発明の遮光性感光性組成物」を、『本発明における遮光性感光性組成物』に訂正する。
▲13▼訂正事項m
減縮した特許請求の範囲の記載と整合させることを目的として、明細書の第7頁(特許公報第9頁第18欄)段落番号【0026】における「本発明の遮光性感光性組成物」を、『本発明における遮光性感光性組成物』に訂正する。
▲14訂正事項n
減縮した特許請求の範囲の記載と整合させることを目的として、明細書の第12頁(特許公報第11頁第22欄)段落番号【0042】における「本発明の遮光性感光性組成物」を、『本発明において、遮光性感光性組成物』に訂正する。
異議決定日 2003-02-04 
出願番号 特願平5-309263
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G03F)
P 1 651・ 534- YA (G03F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 佳与子  
特許庁審判長 嶋矢 督
特許庁審判官 阿久津 弘
伏見 隆夫
登録日 2001-06-01 
登録番号 特許第3195480号(P3195480)
権利者 富士写真フイルム株式会社
発明の名称 遮光性感光性樹脂組成物、遮光性感光性転写材料及び遮光膜の形成方法  
代理人 中島 淳  
代理人 中島 淳  

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