• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H03H
管理番号 1076279
異議申立番号 異議2002-71873  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-12-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-07-29 
確定日 2003-02-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3251061号「多重モード水晶振動子」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 【1】手続きの経緯
本件特許第3251061号の発明は、平成4年7月31日(優先権主張、平成4年3月31日、日本国、特願平4-106045号)に特許出願(特願平4-225313号)されたものであって、平成13年11月16日にその特許(請求項の数2)について設定登録がなされ、平成14年1月28日に特許公報が発行され、その後、その特許(請求項1)について平成14年7月29日に藤澤正人より特許異議の申立てがなされ、その請求項1について平成14年10月4日付けで取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成14年12月17日に訂正請求がなされたものである。
【2】訂正の適否について
(1)訂正の要旨
訂正請求書により訂正する訂正事項は、特許請求の範囲の減縮(請求項1の削除)を目的とするというものであって、その訂正内容は、以下のとおり訂正するものである。
(1-1)訂正事項
『特許請求の範囲
【請求項1】水晶片の一方の主面に入出力電極を形成して他方の主面に共通電極を形成し、前記入出力電極から引出電極を延出して両端外周部に接続用の電極ランドを設け、前記電極ランドを導電性接着剤により固着して水晶片の両端外周部を保持してなる多重モード水晶振動子において、
上記引出電極と電極ランドとを異なる金属から形成して重畳するとともに前記引出電極と前記電極ランドとのいずれか一方をA1とし、前記導電性接着剤は各電極ランドの両側に設けられ、各電極ランドの一側では電極ランド内に位置し、他側では電極ランドと水晶片とにまたがって位置した状態として、前記水晶片を基板上に固着したことを特徴とする多重モード水晶振動子。』
(すなわち、請求項1が削除され、当該請求項1を引用していた請求項2の記載を独立形式に改めて、新たな請求項1としたものである。)
(2)判断
<訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否についての判断>
本件訂正の要旨は、上記訂正事項のとおりであって、その訂正事項の訂正内容は、異議申立てに係る特許請求の範囲の請求項1について、これを削除するとともに、この削除に伴い請求項1を引用するものであった請求項2を新たな請求項1として、その記載形式を引用形式から独立形式に改めたものであって、当該訂正事項は、明りょうでない記載の釈明を行うことを目的とするものと認められる。
したがって、上記訂正事項に係る訂正は、異議申立てに係る特許請求の範囲の請求項1の削除及びこれに伴う明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また請求項を追加するなど実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものとも認められない。
(3)まとめ
以上のとおりであって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するものと認められる。
【3】特許異議申立について
(3-1)異議申立ての理由の概要
異議申立人藤澤正人は、甲第1号証(特開昭53-6551号公報)、甲第2号証(特開平2-98207号公報)及び甲第3号証(実願昭53-156297号[実開昭55-74126号]のマイクロフィルム)を提出して、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明は「甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである。」旨、主張している。
(3-2)特許異議申立てについての判断
異議申立人藤澤正人が異議申立において取消しを求めた特許第3251061号の特許査定時の請求項1に係る発明についての特許は、訂正請求がなされ、前記「【2】訂正の適否について」において検討したように当該訂正が認められた結果削除されたものとなったので、本件特許異議の申立ての対象は存在しないものとなった。したがって、本件特許異議の申立ては不適法な申立てであって、その補正をすることができないものである。
【4】むすび
以上のとおりであるから、異議申立人藤澤正人による特許異議の申立ては不適法な申立てであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の6第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
多重モード水晶振動子
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】水晶片の一方の主面に入出力電極を形成して他方の主面に共通電極を形成し、前記入出力電極から引出電極を延出して両端外周部に接続用の電極ランドを設け、前記電極ランドを導電性接着剤により固着して水晶片の両端外周部を保持してなる多重モード水晶振動子において、
上記引出電極と電極ランドとを異なる金属から形成して重畳するとともに前記引出電極と前記電極ランドとのいずれか一方をAlとし、前記導電性接着剤は各電極ランドの両側に設けられ、各電極ランドの一側では電極ランド内に位置し、他側では電極ランドと水晶片とにまたがって位置した状態として、前記水晶片を基板上に固着したことを特徴とする多重モード水晶振動子。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はMCF(Monolithic Crystal Filter)としての多重モード水晶振動子(多重モード振動子とする)を利用分野とし、特に表面実装用とした多重モード振動子の電気的特性及び耐衝撃性を良好とする電極構造及び接着剤の塗布方法に関する。
【0002】
【発明の背景】
多重モード振動子は、水晶片に形成した例えば二組の電極対間の音響的結合を利用し、所定のフィルタ特性(伝送特性)を得るものとして通信機器等に有用されている。近年では、抵抗、コンデンサ等に代表されるような表面実装用とした多重モード振動子が要求されている。例えばこのようなものの一つに、本出願人による特願平4-46008号「多重モード水晶振動子」がある。
【0003】
【従来技術】
第14図及び第15図(ab)は表面実装用とする場合の多重モード振動子を説明する一例図である。なお、第14図は断面図、第15図(ab)は水晶片の表裏面を示す図である。
多重モード振動子は、水晶片1を密閉容器2に封入して形成される。水晶片1は例えば厚みすべり振動姿態のATカットとする。一方の主面1aには分割された入出力電極3、4を、他方の主面1bには共通電極5が形成される。入出力電極3、4と共通電極5からは、両端外周部に引出電極6、7、8(ab)を延出する。密閉容器2は凹状の積層構造の容器本体9に金属蓋体10をシーム溶接して形成される。容器本体9は、基板11と枠体12と溶接リング13とからなる。基板11は、両端側に入出力用の接続電極14、15を、中央部分にシールド電極16を有し、容器外表面に延出して表面実装用の外部端子となる。そして、水晶片1の一方の主面1aを基板11に対向させて保持する。すなわち、入出力電極3、4の形成された両端外周部を接続電極14、15上に導電性接着剤17をもって固着し、電気的・機械的に接続する。また、他方の主面1bの共通電極5の引出電極8はワイヤ18のボンディングによりシールド電極16に接続する。このようなものでは、基板11にシールド電極16を設けたので、入出力電極3、4間の電気的結合により直接的に伝搬する漏れ信号を遮蔽し、保証減衰量を高めることができる。この場合、保証減衰量を最大とする入出力電極3、4とシールド電極16間の最適距離があり、その距離がピーク値近傍になるように設定される。
【0004】
【従来技術の問題点】
しかしながら、上記構成の多重モード振動子では、水晶片1の両端外周部を固着する所謂両端保持とする。このため、接着剤17の硬化時における収縮力により、水晶片1の特に長さ方向に歪や応力を発生する。その結果、特に応力感度特性に起因して周波数温度特性の劣化を招くことから、両端保持はその実用化が困難であった。
このようなことから、一般には、第16図に示したように、水晶片1の一端部のみを保持することが良いとされている。すなわち、水晶片1の他端側を自由端として長さ方向の応力発生を防止することである。但し、水晶片1の他端側では、引出電極6を折り返し、ワイヤ18のボンディングにより入力用接続電極14に電気的に接続する。
しかし、一端部保持であっても、一端部の全領域を接着剤17の塗布領域として固着した場合には「第17図(a)」、幅方向に応力が発生し、水晶片1を破損する。また、一端部の一部のみを点的に固着した場合は「同図(b)」、接続強度が不充分で、衝撃時に水晶片1が脱離し、前述同様に破損等を生ずる。このことから、通常では、引出電極6、7を端部の幅方向に設け、一端部の両側を塗布領域として点的に保持する「同図(c)」。
しかし、この場合(一端部両側保持)でも、基本的には幅方向の両側を固定端とすることから、水晶片1には特に幅方向に歪が発生することになり、充分な耐衝撃性を得ることは困難であった。
そして、一端部保持の何れの場合でも、自由端とした他端部が上下に揺動し、結果的には、その部分での水晶片1の破損やワイヤ18の離脱及び断線、さらには一端部の接合強度を弱まらせる問題があった。
【0005】
【発明の着目点及び目的】
本発明は、基本的には、両端保持の方が水晶片の安定な保持を確保して、破損等の耐衝撃性を向上できる点に主眼を置き、これを達成するための電極構造及び接着方法に着目してなされたもので、両端保持とした上で、第1に周波数温度特性を良好に維持すること、第2に耐衝撃性を向上することを目的とする。
【0006】
【解決手段】
本発明は、第1に、水晶片1の入出力電極3、4から延出して形成される引出電極6、7に、別個に形成される接続用の電極ランド20、21を重畳して接続するとともに、いずれか一方をAlとし(第1図)、このような電極ランド20、21の形成された両端外周部に接着剤17を施して固着する(第2図)。
第2に、接着剤17は各電極ランド20、21の両側に設けられて、各電極ランド20、21の一側では電極ランド内に位置し、他側では電極ランド20、21と水晶片1の表面にまたがって固着した(第13図)ことをそれぞれ基本的な解決手段とする。以下、本発明の各実施例を作用とともに説明する。
【0007】
【第1実施例】
第1図は、本発明の第1の解決手段に相当する実施例の図で、特に水晶振動子の電極構造図である。なお、前従来例図と同一部分の説明は省略する。
この電極構造の特徴は、図から明かなように、水晶片1(一方の主面1a)の入出力電極3、4から延出した引出電極6、7上に、これとは異なる金属の電極ランド20、21を重畳して形成した点にある。この例では、入出力電極3、4及び引出電極6、7は水晶表面から順次、Cr、Cr-Ag、Ag、Crの4層構造(以下CrAg混在層とする)とする。また、電極ランド20、21はAlの一層構造とする。そして、いずれも蒸着により形成した。なお、引出電極6、7は、後述の基板11の接続用電極の関係から、水晶片1の一方の対角線上の角部に延出し、電極ランド20、21は対角部から端部に沿う幅方向に延出した。なお、他方の主面1bの共通電極5からの引出電極8(ab)は、ボンディング等の関係により、他方の対角線上の角部に延出した。また、水晶片1の外形は、長さ(z’軸方向)5mm、幅(x軸方向)2.5mm、厚み(y’軸方向)約80μm(中心周波数約21MHz)を対象とした。
このような電極構造の水晶片1を、第2図に示したように、基板11上に両端保持として固着し、周波数温度特性を測定したところ、良好な結果を得た。すなわち、第3図に示したように、従来のもの(曲線ロ)では本来の3次曲線からずれて直線的になるが、本実施例のもの(曲線イ)では本来の3次曲線に近接した特性を維持できた。但し、接着剤17としては、鉛筆硬度で2B以下の例えばウレタン系の導電性接着剤を使用した。
なお、第2図(a)は多重モード振動子の側面図、同図(b)は接着剤17の塗布位置(両端部中央)を示す水晶片1の平面図である。また、基板11は、第4図(平面図)に示したように、中央にシールド電極16が、両端側に接続用入出力電極14、15が形成される。なお、いずれも基板の両端側に外部端子として延出する。図中の符号18は共通電極5の引出電極8bに接続するワイヤのボンディングの位置である。
本発明者の推測によれば、従来のものでは、接着剤17の硬化時における収縮が、水晶片1と引出電極6、7及び入出力電極3、4との界面に摩擦を生じて、水晶片1の表面に張力(応力)を発生させる。そして、この張力が厚みすべり振動に多大な影響を及ぼし、応力感度特性により本来の周波数温度特性を損なわせる。
これに対し、本発明では、接着剤17が収縮しても、引出電極6、7と電極ランド20、21との界面にすべり現象を生じ、水晶片1の表面に生ずる張力を緩和する。すなわち、電極ランド20、21をAlとしたので、引出電極6、7との間に酸化膜を生じ、この酸化膜が両者間の結合を弱めてすべりを助長する。したがって、上記構成の電極構造であれば、特に励振部分での張力による歪発生がなく、厚みすべり振動へ与える影響が小さく、本来の周波数温度特性を得ることができると考えられた。
【0008】
しかし、このようなものでは、周波数温度特性は改善されても、クリスタルインピーダンス(以下CIとする)は充分に満足する結果には至らなかった。すなわち、Alとした電極ランド20、21の表面上に酸化膜が生じ易く、その後に導電性接着剤により固着するので、導通度を悪化させて充分なCIを得ることができない。以下、この点の解決策を述べる。
第5図はこの点の解決策を説明する図で、同図(a)は電極構造図で、同図(b)は接着剤の塗布位置を示す図である。すなわち、電極ランド20、21を形成した後、その上に引出電極6、7を重畳させる。そして、引出電極6、7を中心として電極ランド上にまたがって接着剤17を塗布したところ、周波数温度特性もCIも良好な特性を得ることができた。すなわち、前述したように、引出電極6、7と電極ランド20、21との界面における酸化膜の作用ですべり現象を起こして、励振部分に応力を発生させないことから、周波数温度特性を良好に維持できる。但し、前述のものよりは、引出電極6、7の端部は接着剤17により固定されるので、すべり現象は阻害されると考えられる。
そして、接着剤17はCrAg混在層とした引出電極6、7と直接に接触するので、導通度は損なわれることがない、したがってこれによりCI低下を防止する。なお、Crは比抵抗も大きく酸化膜を生成しやすいが、Ag層を混在するので導通不良を起こさない。ちなみに、この場合でのCIは、従来の両端保持における105Ωに対して、57Ωであった。但し、CIはfaモード(斜対称モード)による。
【0009】
上記電極構造では、励振電極3、4及び引出電極6、7をCrAg混在層とし、電極ランド20、21をAlとしたが、これとは逆に、第6図に示したように、励振電極3、4及び引出電極6、7をAlとし、電極ランド20、21をCrAg混在層としてもよい。すなわち、この場合でも、周波数温度特性は前述同様のすべり現象により良好に維持できる。そして、固着の際には、CrAg混在層とした電極ランド20、21に導電性接着剤が施されるので、導通不良をおこすことなく、CIを良好にする。但し、電極ランド20、21と引出電極6、7との界面にAlが存在するので、Alの酸化膜による導通度への影響を及ぼす。したがって、第7図に示したように引出電極6、7と電極ランド20、21との接触面積を大きくするとよい。また、第8図に示したようにCrAg混在層とした電極ランド20、21上に引出電極6、7を重畳させてもよいことは勿論である。
そして、この電極構造は励振電極部を質量の小さなAlとするので、特に周波数調整の関係から、例えば90MHzとする高周波数帯の多重モード振動子に適する。なお、上述以外にも導通度を高めてCIを良くする方法は種々考えられ、本発明では周波数温度特性を良好に維持することがその趣旨であって、CIを良好にすることがその趣旨ではない。
また、引出電極6、7は対角線上の角部に延出して電極ランド20、21を設けたが、従来例のように引出電極6、7を両端部中央に延出して、電極ランド20、21を設けてもよく(第9図)、これらは基板11に設けた接続用入出力電極14、15や共通電極5の引出電極8あるいは容器内スペース等の関係から決定されるもので、引出電極6、7の延出端や電極ランド20、21の位置には格別左右されないものである。
【0010】
このようなことから、本発明の電極構造とすることにより、先ず、両端保持における特に周波数温度特性を主とした電気的特性の問題を解消できる。しかし、単に、両端保持としたとしても、すなわち両端部の中央あるいは端部を点的に保持したとしても、破損等の耐衝撃性の点ではその強度が不充分である。したがって、両端部の両側を点的に保持する4点保持が望ましくなる。以下、この点の解決策を第2の実施例により説明する。
【0008】
【第2実施例】
第10図は本発明の第2の解決手段に至った理由を説明する図で、接着剤17の塗布方法によって、水晶片1に生ずる歪量に差異のあることを示すためのものである。なお、第10図(ab)は接着剤17を水晶片1の一端部両側の表面に直接施して固着した場合の図、同図(cd)は水晶片1の一端部の幅方向に電極23を設け同様に固着した場合の図である。
第11図(a)は、これらの塗布方法による、縦軸を歪量d(μm)とした実験結果図である。なお、ここでの歪量は、測定器ZYGOシステムを使用して、接着剤17の硬化後における水晶片表面の上下差dを測定したものである「同図(b)」。これから明かなように、水晶片1に直接接着剤17を施して保持した方が、電極23上を介在させて保持するよりも、水晶片1に発生する歪量は約1.5倍大きくなる。
すなわち、水晶片1と接着剤17の接合強度が、電極23を介在させた場合よりも大きいので、硬化時における収縮力が直接的に影響を及ぼす。また、電極23を介在させた場合には、電極23と水晶片1との接合強度が小さいため、両者間ですべり等の現象を引き起こして収縮力が緩和される結果と考えられた。
したがって、水晶片1に直接接着剤を施した場合は、その歪量が大きくて破損しやすく、耐衝撃性を悪化させる。これに対し、電極23上に接着剤17を施した場合は、歪量が小さく破損を防止して耐衝撃性を良好にする。なお、接着剤17の塗布位置が近接すると、収縮時における歪が両者間に集中して破損しやすく、また離間するほど歪が緩和されて破損しにくい。
このようなことから、基本的には、4点保持する場合、例えば第12図(ab)に示したように、各電極ランド20、21における両側の表面上に接着剤17を施してやれば、歪による破損を防止できる。しかし、この場合には、水晶片1の表面に対する電極ランド20、21の付着強度は弱いため、電極ランド20、21が水晶片1の表面から剥離しやすくて、電気的導通の損なわれる問題を生ずる。
このことから、例えば第13図(ab)に示したように、接着剤17は、電極ランド20、21の幅方向の一側では電極ランド20、21内に位置し、他側では電極ランド20、21と水晶片1とにまたがった位置にして固着する。
このような固着方法であれば、前述したように電極ランド20、21が介在することにより、収縮時における水晶片1の歪が緩和されて、各電極ランド20、21の一側では、接着剤17に対して言わば自由端となる。また、他側では、接着剤17が水晶片表面に固着するのでこれによる歪が発生するものの、一側が自由端であるためにその歪がにげやすく破損を防止する。そして、他側において、接着剤17が直接に電極ランド20、21と水晶片1にまたがって塗布されるので、電極ランド20、21の剥離強度も増して電気的導通をも維持できる。したがって、前実施例の電極構造に加えて、このような4点保持であれば、電気的特性を損なうことなく、耐衝撃性を向上した両端保持を達成できる。なお、この例では各対角線上の角部を一側及び他側とするので、幅方向のみならず、長さ方向についても同様なことが言える。
【0009】
【他の事項】
上記実施例では、電極ランド20、21の形成された水晶片1の両端外周部を基板上に固着するとしたが、例えば基板上に設けた保持具等に固着する場合であっても、あるいは一般の平板状のサポ-タにより保持する場合でも、この電極構造は有用であり、本発明はこれを排除するものではない。
そして、共通電極5の引出電極8からの電極導出はワイヤボンディングとしたが、例えば引出電極8を入出力電極面側に折り返し、前述した接着方法を用いて固着して導出してもよいものである。また、水晶片1の外形寸法及び方向は実施例に限らず、本発明は基本的には長さ方向をx軸方向としても、その寸法を代えても適用できるものである。
【0010】
【発明の効果】
本発明は、水晶片の入出力電極から延出して形成される引出電極に、別個に形成される接続用の電極ランドを重畳して接続するとともに、いずれか一方をAlとし、このような電極ランドの形成された両端外周部に接着剤を施して固着したので、周波数温度特性を良好に維持できる。そして、接着剤は各電極ランドの両側に設けられて、各電極ランドの一側では電極ランド内に位置し、他側では電極ランドと水晶片とにまたがって固着したので、耐衝撃性を向上する多重モード振動子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【第1図】
本発明の第1実施例を説明する図で、同図(a)は水晶片の一方の主面の電極構造図(平面図)、同図(b)は他方の主面の図である。
【第2図】
本発明の第1実施例を説明する図で、同図(a)は水晶片の保持構造図(側面図)、同図(b)は接着剤の塗布位置を示す水晶片の一方の主面の図である。
【第3図】
本発明の第1実施例の作用効果を説明する周波数温度特性図である。
【第4図】
本発明の第1実施例に適用した基板の平面図である。
【第5図】
本発明の第1実施例の他の例を説明する図で、同図(a)は水晶片の一方の主面の電極構造図、同図(b)は接着剤の塗布位置を示す図である。
【第6図】
本発明の第1実施例の他の例を説明する水晶片の一方の主面の電極構造図である。
【第7図】
本発明の第1実施例の他の例を説明する水晶片の一方の主面の電極構造図である。
【第8図】
本発明の第1実施例の他の例を説明する水晶片の一方の主面の電極構造図である。
【第9図】
本発明の第1実施例の他の例を説明する水晶片の一方の主面の電極構造図である。
【第10図】
本発明の第2の解決手段に至った理由を説明する図で、同図(a)は接着剤17を水晶片1の一端部両側の表面に直接施した水晶片の平面図、同図(b)は同水晶片を基板に固着した場合の断面図、同図(c)は水晶片1の一端部に電極23設けて一端部両側に導電性接着剤を施した水晶片の平面図、同図(d)は同水晶片を基板に固着した場合の断面図である。
【第11図】
本発明の第2実施例を説明する図で、同図(a)は第10図の塗布方法による水晶片の歪量d(μm)を示す実験結果図、同図(b)は水晶片の歪量dを定義する断面図である。
【第12図】
本発明の第2実施例を示す水晶片の図で、同図(a)(b)ともに水晶片の平面図である。
【第13図】
本発明の第2実施例を示す水晶片の図で、同図(a)(b)ともに水晶片の平面図である。
【第14図】
従来例を説明する多重モード振動子の断面図である。
【第15図】
従来例を説明する図で、同図(ab)ともに電極構造を示す水晶片の平面図である。
【第16図】
他の従来例を説明する多重モード振動子の断面図である。
【第17図】
従来例を説明する図で、同図(a)(b)(c)ともに水晶片の平面図である。
【符号の説明】
1 水晶片、2 容器、3 入出電極、4 出力電極、5 共通電極、6、7、8 引出電極、9 容器本体、10 蓋体、11 基板、12 枠体、13 溶接リング、14、15 接続用入出力電極、16 シールド電極、17 接着剤、18 ワイヤ、20、21 電極ランド、23 電極.
 
訂正の要旨 訂正事項
特許請求の範囲
【請求項1】水晶片の一方の主面に入出力電極を形成して他方の主面に共通電極を形成し、前記入出力電極から引出電極を延出して両端外周部に接続用の電極ランドを設け、前記電極ランドを導電性接着剤により固着して水晶片の両端外周部を保持してなる多重モード水晶振動子において、
上記引出電極と電極ランドとを異なる金属から形成して重畳するとともに前記引出電極と前記電極ランドとのいずれか一方をAlとし、前記導電性接着剤は各電極ランドの両側に設けられ、各電極ランドの一側では電極ランド内に位置し、他側では電極ランドと水晶片とにまたがって位置した状態として、前記水晶片を基板上に固着したことを特徴とする多重モード水晶振動子。
異議決定日 2003-02-05 
出願番号 特願平4-225313
審決分類 P 1 652・ 121- XA (H03H)
最終処分 決定却下  
前審関与審査官 工藤 一光  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 千葉 輝久
植松 伸二
登録日 2001-11-16 
登録番号 特許第3251061号(P3251061)
権利者 日本電波工業株式会社
発明の名称 多重モード水晶振動子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ