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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て成立) A44C |
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管理番号 | 1076557 |
判定請求番号 | 判定2003-60020 |
総通号数 | 42 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2000-02-22 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2003-02-13 |
確定日 | 2003-05-21 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3114868号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「止め具及び紐止め装置」は、特許第3114868号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、イ号図面及びイ号説明書に示す「金属製装身具ネックレス」(以下、「イ号物件」という。)が、特許第3114868号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。 2.本件発明 本件発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、その構成要件を分説すると、次のとおりである。 (A)外殻体と、弾性体とを含む止め具であって、 (B)前記外殻体は、孔と、中空部とを有し、前記中空部の内壁面が球面状の連続体であり、 (C)前記孔は、前記外殻体の外部から前記中空部へ通じており、 (D)前記弾性体は、通孔部を有するOリング状部材であって、前記中空部の内部に内蔵され、その外周が前記中空部の前記内壁面に圧接しており、 (E)前記通孔部は、前記孔に通じており、 (F)前記弾性体は、前記外殻体の前記孔を通って、前記外殻体の内部に導入される止め具。 3.イ号物件 請求人が提出した判定請求書の「6 請求の理由」における「(4)イ号の説明」(同請求書第4頁13行〜第5頁2行参照)並びに同請求書に添付された「イ号図面及びその説明書」の各記載を参考にすると、イ号物件は、次の(a)〜(f)の構成からなるものとするのが相当と認める。 (a)外殻体(A)と弾性体とを含む止め金具であって、 (b)前記外殻体(A)は、孔(4)、(5)と、中空部(7)とを有し、前記中空部の内壁面が球面状の連続体であり、 (c)前記孔(4)、(5)は、前記外殻体(A)の外部から前記中空部(7)へ通じており、 (d)前記弾性体は、略厚肉円筒状のゴムパイプ(B)であって、前記中空部(7)の内部に内蔵され、その外周面に於ける筒芯方向両端部分が前記中空部(7)の前記内壁面に圧接しており、 (e)前記ゴムパイプ(B)の貫通孔(10)部分は、前記外殻体(A)の孔(4)、(5)に通じており、 (f)前記ゴムパイプ(B)は、前記外殻体(A)形成前に予め内装されており、外殻体(A)形成後にロウ付けされる止め具。 (なお、本件発明の特許権者である被請求人は、平成15年4月11日付け判定請求答弁書において、請求人の製造、販売していた物品が上記請求人の提示するイ号物件とは異なるものと主張するものの、当該イ号物件の備える構成については具体的な相違点の指摘がなく、何らの反論もしていないと解されることから、請求人本人が製造すると主張するところのイ号物件の備える構成を、請求人主張のとおりに解するのが相当である。) 4.対比・判断 (1)本件発明とイ号物件との対比 両者を対比すると、イ号物件は、本件発明の構成要件(A)、(B)、(C)及び(E)と文言上一致する構成(a)、(b)、(c)及び(e)を備えていることから、当該構成要件を充足する(ちなみに、請求人は、判定請求書第6頁の「(6)イ号製品が本件特許発明の技術的範囲に属さないとの説明」の項において、当該構成が一致することを認めている)。 しかしながら、イ号物件が、本件発明の構成要件(D)及び(F)を充足するか否かは明らかでない。 (2)イ号物件は本件発明の構成要件(D)及び(F)を充足するか否かについて (イ)本件発明の構成要件(D)を充足するか否かについて 本件発明の構成要件(D)とイ号物件の構成(d)とを対比すると、本件発明における「弾性体」が「Oリング状部材」であって、「その外周が前記中空部の前記内壁面に圧接して」いるものであるのに対して、イ号物件における「弾性体」が「略厚肉円筒状のゴムパイプ(B)」であって、「その外周面に於ける筒芯方向両端部分が前記中空部(7)の前記内壁面に圧接して」いるものである点で、相違している。 そこで、イ号物件における「略厚肉円筒状のゴムパイプ(B)」が、本件発明における「Oリング状部材」に該当するものであるかにつき、検討する。 (ロ)本件発明における「Oリング状部材」の技術的意義について 「Oリング」は、一般に「円形断面をもつ環状のゴム製パッキン」を指すものであると解される(「JIS工業用語大辞典」(財)日本規格協会、1982年発行参照)。 そして、本件発明の明細書の記載を参酌してみても、本件発明における「Oリング状部材」につき、上記一般的な意味以外の特別の意味で理解すべきとする記載を見出し得ない。 さらに、本件発明の審査経過を参酌すると、平成12年8月28日付意見書(本判定請求書の添付書類である甲第7号証参照)の中に、本件発明の「弾性体はOリング状部材」であることにつき、次の主張が認められる。 (i)「本発明における弾性体として利用できるOリング状部材の典型的例は、市販の「Oリング」であります。一般的な市販の「Oリング」は、断面円形状です。」(同上意見書第3頁1〜3行参照) (ii)「特に、弾性体として、市販の「Oリング」を用いた典型的態様では、弾性体の円形状外周面と、外殻体の内壁面との間の接触面積が小さくなりますので、紐に強い力が加わったとき、市販の「Oリング」が外殻体の内壁面上を、更に容易に移動できます。これにより、紐に加わる力によって、市販の「Oリング」、即ち、弾性体が破損するのを回避することができます。」(同上意見書第3頁13〜17行及び第6頁26行〜第7頁1行参照) 以上のことを考慮すると、本件発明の「Oリング状」における「Oリング」は、その明細書において、一般的な意味に従って使用されているものと理解するのが相当であり、本件発明における「Oリング状」とは、「Oリング」という用語に「状」という文言が付加されていることを併せ考慮すると、「円形断面を有する環状パッキングの形状」及びこれと類似する形状に係るものと理解するのが相当である。 (ハ)イ号物件における「略厚肉円筒状のゴムパイプ(B)」の充足性について イ号物件の「略厚肉円筒状のゴムパイプ(B)」は、その中心部が空洞となった円柱状の筒状体であって一般的に市販されているOリングが備える外形形状及びこれと類似する形状とは明らかに異なるものであり、かつまた、その外周部分の断面形状が円形状でないことも明らかである。 してみると、イ号物件の「略厚肉円筒状のゴムパイプ(B)」が、本件発明の構成要件(D)における「Oリング状部材」に該当しないことが明らかであるから、イ号物件は、本件発明の構成要件(D)を充足しない。 なお、本判定請求事件の請求人は非特許権者であるため、均等侵害の主張がなされていないものの、仮に、均等侵害の観点から、本件発明の構成要件(D)の充足性を検討してみても、上述した意見書における主張内容からも理解されるように、本件発明において、その弾性体を「Oリング状部材」とした点は本件発明の本質的部分に係る事項であるから、この点においてイ号物件と本件発明との間で相違することは、均等の要件を明らかに欠くものであるといえる。 (3)まとめ 以上検討したように、イ号物件は本件発明の構成要件(D)を充足しないといえるから、本件発明の構成要件(F)の充足性を検討するまでもなく、イ号物件は、本件発明の構成要件(A)ないし(F)を充足するということができない。 5.むすび 以上のとおりであるから、イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2003-05-09 |
出願番号 | 特願平11-192395 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZA
(A44C)
|
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
藤原 直欣 佐野 遵 |
登録日 | 2000-09-29 |
登録番号 | 特許第3114868号(P3114868) |
発明の名称 | 止め具及び紐止め装置 |
代理人 | 阿部 美次郎 |
代理人 | 中村 政美 |