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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  G03B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G03B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G03B
管理番号 1077824
異議申立番号 異議2002-72390  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-09-30 
確定日 2003-04-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3270261号「透過型スクリーンとその製造方法及びそれを用いた背面投写型画像ディスプレイ装置」の請求項1ないし32に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3270261号の請求項1ないし32に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3270261号は、平成6年11月2日に出願され、平成14年1月18日にその特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人株式会社クラレ及び株式会社ディスクから特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年2月3日に訂正請求がなされたものである。
1.1 異議申立ての概要
異議申立人株式会社クラレは、甲第1号証(特開平2-251945号公報)、甲第2号証(特開平5-66479号公報)、甲第3号証(実願昭62-74995号(実開昭63-187140号公報)のマイクロフィルム)、甲第4号証(特開平4-372939号公報)、甲第5号証(特開昭62-157023号公報)、甲第6号証(特開平5-9264号公報)、甲第7号証(特開平5-105841号公報)及び甲第8号証(堂山昌男・山本良一編 瓜生敏之、堀江一之、白石振作著「材料テクノロジー16 ポリマー材料 第64,65頁 初版)を提出し、本件請求項1、29及び32に係る発明は、異議申立人株式会社クラレが提出した異議申立書記載の理由により、上記甲第1号証記載の発明に記載された発明であるから、本件請求項1、29及び32に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであり、本件請求項1〜32に係る発明は、異議申立人株式会社クラレが提出した異議申立書記載の理由により、上記甲第1〜8号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、本件請求項1〜32に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、本件請求項1〜32に係る特許を取消すべき旨主張している。
また、異議申立人株式会社ディスクは、甲第1号証(特開平5-66479号公報)、甲第2号証(特開平4-306630号公報)、甲第3号証(特開平2-251945号公報)、甲第4号証(特開平2-275934号公報)、甲第5号証(特開平6-160982号公報)、甲第6号証(特開昭62-157023号公報)、甲第7号証(特開平4-372939号公報)、甲第8号証(特開平5-289178号公報)及び甲第9号証(特開昭63-260932号公報)を提出し、本件請求項1〜3、5〜7、13〜19、21〜23、29〜32に係る発明は、異議申立人株式会社ディスクが提出した異議申立書記載の理由により、上記甲第1〜9号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、本件請求項1〜3、5〜7、13〜19、21〜23、29〜32に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、本件請求項1〜3、5〜7、13〜19、21〜23、29〜32に係る特許を取消すべき旨主張している。
1.2 異議申立人株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証の記載内容
1.2.1 甲第1号証の記載内容
甲第1号証の特許請求の範囲(1)及び(7)には、「(1)指向性の狭い光を指向性の広い光に変換して透過させる光拡散手段を備えた光拡散板と、観察者側に配置される透過性板とを備え、前記透光性板は内部に光拡散手段を含まず、出射面が平面状で、内部または出射面近傍に光吸収剤を備えた透過型スクリーン。
(7)入射面にレンティキュラレンズを形成したレンティキュラ板と、前記レンティキュラ板の観察者側に配置される透光性板とを備え、前記透光性板は光拡散手段を含まず、出射面が平面状で、内部または出射面近傍に光吸収剤を備え、前記レンティキュラ板と前記透光性板とを結合した透過型スクリーン。」と記載されている。
甲第1号証の第2頁右上欄第1行〜第9行には、「レンティキュラ板2は、内部に光散乱粒子を分散させた透光性板の表面に1素子の長手方向を垂直方向に向けたレンティキュラレンズ4を配列したものであり、垂直方向の適視視野角を大きくしないで水平方向の適視視野角を広くするためのものである。レンティキュラ板2の観察者側面の光が通過しない領域にストライプ状に光吸収物質を塗着したものもある。」と記載されている。
甲第1号証の第2頁右下欄第12行〜第3頁右上欄第12行には、「実施例 以下本発明による透過型スクリーンの一実施例について添付図面を参照しながら説明する。
第1図は本発明の一実施例における透過型スクリーンの構成を示したもので、5は光拡散板、6は透光性板、7はレンティキュラレンズ、8はフレネルレンズである。…透光性板6の可視領域(380nm〜720nm)における最大透過率は、70%以下にするとよい。
70%以下でない場合には、コントラスト向上の効果がほとんど感じられない。平均透過率が低過ぎる場合には、本来の画像の輝度が低下し過ぎるので、平均透過率を50〜70%にするのが適当である。」と記載されている。
甲第1号証の第3頁右下欄第8行〜第4頁左上欄第10行には、「第5図に示した透過型スクリーンは、投写器側から順に、フレネルレンズ板21、レンティキュラ板22、透光性板23と配置されたものである。フレネルレンズ板21は観察者側にフレネルレンズ24が形成され、レンティキュラ板22は投写器側にレンティキュラレンズ板25が形成されている。レンティキュラ板22は内部に光拡散剤を混入したものである。透光性板23は第1図に示したものと同一であり、観察者側面29は光沢面となっている。レンティキュラ板22と透光性板23の対向する面26,27はともに平面で、両者が透明接着剤28で結合されている。こうすると、レンティキュラ板22が薄く機械的強度が弱い場合には、透光性板23がレンティキュラ板22の変形を抑制することができる。第5図に示した透過型スクリーンも第1図に示した透過型スクリーンと同様の作用により、コントラストの良好な画像が得られる。
第5図に示した構成で、レンティキュラ板23の観察者側の面26の光が通過しない部分に光吸収物質を塗着すれば、この光吸収物質が外光を吸収し反射光を減少させるので、外光によるコントラスト低下をさらに低減することができる。」と記載されている。
1.2.2 甲第2号証の記載内容
甲第2号証の特許請求の範囲には、「【請求項1】 画像発生源側から画像観視側へ、フレネルレンズシート,レンチキュラーレンズシート,光吸収シートの順に配列して構成される透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートは、その光入射面(21)の形状が、スクリーン画面水平方向を長手方向とする第一のレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面(22)の形状がフレネルレンズ形状を成し、前記レンチキュラーレンズシートは、その光入射面(31)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする第二のレンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面(32)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする有限幅の光吸収帯を前記第二のレンチキュラーレンズ相互間の境界部分にほぼ対向してスクリーン画面水平方向に複数配列した形状を成し、前記光吸収シートは、半透明に着色されていると共に、その光入射面(41)及び光出射面(42)の形状が共に平面を成すことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項2】 画像発生源側から画像観視側へ、フレネルレンズシート,レンチキュラーレンズシート,光吸収シートの順に配列して構成される透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートは、その光入射面(21)の形状が、スクリーン画面水平方向を長手方向とする第一のレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面(22)の形状がフレネルレンズ形状を成し、前記レンチキュラーレンズシートは、その光入射面(31)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする第二のレンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面(32)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする第三のレンチキュラーレンズを前記第二のレンチキュラーレンズにほぼ対向してスクリーン画面水平方向に複数配列し、かつ、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする有限幅の光吸収帯を前記第三のレンチキュラーレンズ相互間の境界部分にそれぞれ設けた形状を成し、前記光吸収シートは、半透明に着色されていると共に、その光入射面(41)及び光出射面(42)の形状が共に平面を成すことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項3】 請求項1または2に記載の透過型スクリーンにおいて、前記レンチキュラーレンズシートと前記光吸収シートのうち、少なくとも一方は光拡散材を有し、スクリーン画面垂直方向の光拡散は、主として前記第一のレンチキュラーレンズにより行うと共に、補助的に前記光拡散材により行うようにしたことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項4】 画像発生源側から画像観視側へ、フレネルレンズシート,レンチキュラーレンズシート,光吸収シートの順に配列して構成される透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートは、その光入射面(21)の形状が、スクリーン画面水平方向を長手方向とする第一のレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面(22)の形状がフレネルレンズ形状を成し、前記レンチキュラーレンズシートは、その光入射面(31)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする第二のレンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面(32)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする有限幅の光吸収帯を前記第二のレンチキュラーレンズ相互間の境界部分にほぼ対向してスクリーン画面水平方向に複数配列した形状を成し、前記光吸収シートは、半透明に着色されていると共に、その光入射面(41)の形状が、スクリーン画面水平方向を長手方向とする第四のレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数配列した形状を成し、その光出射面(42)の形状が平面を成すことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項5】 画像発生源側から画像観視側へ、フレネルレンズシート,レンチキュラーレンズシート,光吸収シートの順に配列して構成される透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートは、その光入射面(21)の形状が、スクリーン画面水平方向を長手方向とする第一のレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面(22)の形状がフレネルレンズ形状を成し、前記レンチキュラーレンズシートは、その光入射面(31)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする第二のレンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面(32)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする第三のレンチキュラーレンズを前記第二のレンチキュラーレンズにほぼ対向してスクリーン画面水平方向に連続して複数配列し、かつ、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする有限幅の光吸収帯を前記第三のレンチキュラーレンズ相互間の境界部分にそれぞれ設けた形状を成し、前記光吸収シートは、半透明に着色されていると共に、その光入射面(41)の形状が、スクリーン画面水平方向を長手方向とする第四のレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数配列した形状を成し、その光出射面(42)の形状が平面を成すことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項6】 請求項4または5に記載の透過型スクリーンにおいて、前記レンチキュラーレンズシートと前記光吸収シートのうち、少なくとも一方は光拡散材を有し、スクリーン画面垂直方向の光拡散は、主として前記第四のレンチキュラーレンズにより行うと共に、補助的に前記第一のレンチキュラーレンズ及び前記光拡散材により補助的に行うようにしたことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項7】 画像発生源側から画像観視側へ、フレネルレンズシート,レンチキュラーレンズシート,光吸収シートの順に配列して構成される透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートは、その光入射面(21)の形状が平面を成すと共に、その光出射面(22)の形状がフレネルレンズ形状を成し、前記レンチキュラーレンズシートは、その光入射面(31)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする第二のレンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面(32)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする有限幅の光吸収帯を前記第二のレンチキュラーレンズ相互間の境界部分にほぼ対向してスクリーン画面水平方向に複数配列した形状を成し、前記光吸収シートは、半透明に着色されていると共に、その光入射面(41)の形状が、スクリーン画面水平方向を長手方向とする第四のレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数配列した形状を成し、その光出射面(42)の形状が平面を成すことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項8】 画像発生源側から画像観視側へ、フレネルレンズシート,レンチキュラーレンズシート,光吸収シートの順に配列して構成される透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートは、その光入射面(21)の形状が平面を成すと共に、その光出射面(22)の形状がフレネルレンズ形状を成し、前記レンチキュラーレンズシートは、その光入射面(31)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする第二のレンチキュラーレンズをスクリーン画面水平方向に連続して複数配列した形状を成すと共に、その光出射面(32)の形状が、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする第三のレンチキュラーレンズを前記第二のレンチキュラーレンズにほぼ対向してスクリーン画面水平方向に連続して複数配列し、かつ、スクリーン画面垂直方向を長手方向とする有限幅の光吸収帯を第三のレンチキュラーレンズ相互間の境界部分にそれぞれ設けた形状を成し、前記光吸収シートは、半透明に着色されていると共に、その光入射面(41)の形状が、スクリーン画面水平方向を長手方向とする第四のレンチキュラーレンズをスクリーン画面垂直方向に連続して複数配列した形状を成し、その光出射面(42)の形状が平面を成すことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項9】 請求項7または8に記載の透過型スクリーンにおいて、前記レンチキュラーレンズシートと前記光吸収シートのうち、少なくとも一方は光拡散材を有し、スクリーン画面垂直方向の光拡散は、主として前記第四のレンチキュラーレンズにより行うと共に、補助的に前記光拡散材により行う構成としたことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項10】 請求項1,2,3,4,5,6,7,8または9に記載の透過型スクリーンにおいて、前記フレネルレンズシート,前記レンチキュラーレンズシート及び前記光吸収シートのうち、前記光吸収シートのシート厚さが最も厚いことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項11】 請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9または10に記載の透過型スクリーンにおいて、前記光吸収シートは、その光出射面(42)に、防眩処理,帯電防止処理及び表面硬化処理のうち、少なくとも一つの表面処理がなされていることを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項12】 請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10または11に記載の透過型スクリーンを用いたことを特徴とする背面投写型画像ディスプレイ装置。」と記載されている。
甲第2号証の【0014】段落には、「【0014】また、照明光などの外光は、半分程度がレンチキュラーレンズシート3の光出射面32に設けられた前記の光吸収帯6により吸収されるが、光出射面32の第三のレンチキュラーレンズに入射した外光は、投写画像光と同様に、光拡散材により散乱される。」と記載されている。
甲第2号証の【0067】段落には、「【0067】本実施例においては、レンチキュラーレンズシート3の光出射面32に第三のレンチキュラーレンズとして、光入射面31の第二のレンチキュラーレンズの楕円柱面とほぼ同等の形状のレンチキュラーレンズを設ける構成としたが、この第三のレンチキュラーレンズは必ずしも楕円柱面である必要はなく、たとえば単純な円柱面であっても、同等の効果が得られる。また、レンチキュラーレンズシート3の光出射面32が単に平面で、前述の光吸収帯6のみが設けられている構成としてもよい。この場合、光出射面32に第三のレンチキュラーレンズを設ける場合と比較すると、画像のカラーシフトはやや大きくなるが、そのほかの性能については同等の効果が得られる。」と記載されている。
1.2.3 甲第3号証の記載内容
甲第3号証の実用新案登録請求の範囲には、「フレネルレンズを透過した像光によってレンチキュラーレンズ上に形成される画像を上記フレネルレンズ側とは逆側より観察するようにした透過型スクリーンにおいて、
上記レンチキュラーレンズの上記観察側に上記観察側が鏡面とされた半透明板を配することを特徴とする透過型スクリーン。」と記載されている。
第7頁第1〜5行には、レンチキュラーレンズが水平方向へ光を拡散するレンチキュラーレンズを光入射面側に備えていても良い旨記載されている。
第7頁第10〜13行には、レンチキュラーレンズの観察側にブラックストライプを設けていても良い旨記載されている。
第5頁第11〜15行には、黒く着色された半透明板が配される旨記載されている。
第6頁第15〜19行には、半透明板の入射面に垂直方向の拡散に寄与するようなレンチキュラーレンズが設けられて良い旨記載されている。
第6頁第15〜19行には、半透明板の入射面に垂直方向の拡散に寄与するようなシボが付けられても良い旨記載されている。
1.2.4 甲第4号証の記載内容
甲第4号証の【0023】及び【0024】段落には、「【0023】【実施例】以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施例としての透過型スクリーンを示す斜視図である。同図において、1は透過型スクリーン、2はフレネルレンズシート、4はマイクロレンズシートである。フレネルレンズシート2とマイクロレンズシート4はそれぞれ端部(図示せず)で相互に固定されている。20、40はそれぞれフレネルレンズシート2とマイクロレンズシート4の基材であり、いずれもほぼ透明な材料よりなる。尚、本実施例においては、フレネルレンズシート2,マイクロレンズシート4のいずれの基材20,40にも光拡散材は用いていない。
【0024】21はフレネルレンズシート2の入射面であり、本実施例では平面である。22はフレネルレンズシート2の映像光の出射面であり、凸のフレネルレンズになっている。また、41はマイクロレンズシート4の入射面であり、マイクロレンズ素子を画面水平方向及び画面垂直方向に連続的に並べた形状となっている。42はマイクロレンズシート4の出射面であり、入射面41のマイクロレンズ素子にほぼ対向して、マイクロレンズ素子が配列されるとともに、互いに隣り合うマイクロレンズ素子の境界部分には、凸形突起部43が形成され、その上に光吸収層6が設けられている。」と記載されている。
1.2.5 甲第5号証の記載内容
甲第5号証の特許請求の範囲には、光透過性箔が平らな支持シート上に添設され、該箔の背部にはアナモルフオティックレンズ構造物が設けられている点およびフレネルレンズを前記レンズ構造物と影像源との間に配設する旨記載されている。
第3頁右上欄7〜11行には、フレネルレンズがフレネル凸レンズを有する旨記載されている。
第2頁右上欄10〜13行及び第4頁左下欄16行〜右上欄1行には、アナモルフオテイックレンズ素子とは、互いに直交する2方向において異なる曲率半径を有するレンズ素子であって、この映写スクリーンはかかるレンズ素子の二次元マトリックスであり、支持シートの背面は所望の光分散を与える構造を具えており、その構造は薄い箔を含んでいてレンズ素子の所望の焦点距離および製造工程での応力で決められ旨記載されている。
第4頁右下欄18〜20行には、アナモルフオテイックレンズが設けられる箔は、例えば、紫外線効果物質のようなものより成る薄い光重合性コーティングによって支持シートに添着される旨記載されている。
第4頁右下欄16〜17行には、吸光層の比率が、表面積の75%とする例がある旨記載されている。
1.2.6 甲第6号証の記載内容
甲第6号証の【0024】段落には、「【0024】【発明の効果】本発明の放射線硬化性樹脂組成物は、硬化性に優れ、また得られた硬化物は密着性、耐溶剤性等に優れており、コーティング剤、塗料、接着剤等として有用である。」と記載されている。
1.2.7 甲第7号証の記載内容
甲第7号証の【0011】段落には、「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、各種プラスチックの保護、美粧および接着を目的として用いられるバインダー樹脂組成物に関し、更に詳しくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、各種合成樹脂のフィルム、シートまたは成形物に対し優れた諸物性を示す塗料、印刷インキ、あるいは接着剤用のバインダー樹脂組成物に関する。」と記載されている。
1.2.8 甲第8号証の記載内容
主なポリマーの屈折率が1.3〜1.7の範囲内であり、ポリマーと空気との界面での反射率はポリマーの屈折率が低い方が小さい旨記載されている。
1.3 異議申立人株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証の記載内容
1.3.1 甲第1号証の記載内容
異議申立人株式会社クラレが提出した甲第2号証に同じ。
1.3.2 甲第2号証の記載内容
甲第2号証の【0012】〜【0015】段落には、「【0012】 【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0013】 本発明による第一の実施例の投写型テレビジョン装置は、図1の曲線28に示すごとく、490nm以下の波長帯の透過率を高く、490nm〜660nmの波長帯の透過率を低くする選択波長性スモークシートを用いてなるものである。すなわち、一様な透過率のスモークシート9に代え、染料や顔料を所定に混合することにより波長選択性を持たせたスモークシート37を用いて図3の3枚構成透過形スクリーン36を構成し、赤、緑のCRTビーム電流を増加させるようにしたものである。
【0014】
ところで投写型テレビジョン装置において、青色、緑色、赤色CRTのパネル部に形成されるカラー蛍光体の透過率特性は、一般に図1に示される。青色CRTは発光スペクトラム29を有しメインピークは波長450nm付近にある。緑色CRTは発光スペクトラム30を有しメインピークは波長550nm付近にある。赤色CRTは発光スペクトラム31を有しメインピークは波長610nm付近にある。
【0015】
図3に示す本発明の選択波長スモークシート37は図1の28で示す選択波長透過率を有する。すなわち青色CRTの発光スペクトラム29に対する透過率は80%を越えているが、緑色CRT30・赤色CRT31の発光スペクトラム領域に対しては60〜65%となり、平均透過率に換算すれば70%近辺の透過率となる。本発明の選択波長スモークシート37と従来の一様な波長透過率を有するスモークシート27とを比較して述べる。」と記載されている。
1.3.3 甲第3号証の記載内容
異議申立人株式会社クラレが提出した甲第1号証に同じ。
1.3.4 甲第4号証の記載内容
甲4号証の第3頁右上欄第4行〜第4頁右下欄第4行に、レンチキュラーレンズシート1の映像光出射面に設けられた光吸収帯4則面保護シート6とを貼り合わせることによって、1枚の前面シートを形成した透過型スクリーン、前面保護シート6とレンチキュラーレンズシート1とを貼り合わせる接着剤が光を吸収する材質のものであること、及び、その接着剤は、アクリル系樹脂からなる旨記載されている。
1.3.5 甲第5号証の記載内容
甲5号証の第2頁左欄段落【0002】〜【0038】段落には、フレネルレンズシート1、61とレンチキュラーレンズシート2と前面シート3とを有し、映像発生源側から入射する映像光線11a、l1bを透して映像観視側に出射する透過型スクリーンであって、フレネルレンズシート1、61の1つ面にはフレネル凸レンズ4、64が形成され、レンチキュラーレンズシート2は、映像光入射面がスクリーン画面の車直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズ5をスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、映像光出射面の映像光線が通過しない領域に光吸収帯7が設けられ、前面保護シート3の映像光出射面は平面であり、前面保護シート3の映像光入射面が拡散面14となっており、前面保護シート3は透明である透過型スクリーンである旨記載されている。また、フレネルレンズシート1、61、レンチキュラーレンズシート2、前面保護シート3の各々の表面に反射防止膜15を設け、その反射防止膜15は、フッ素樹脂の溶液を、スクリーン面にディッピング法により塗布して成膜する旨記載されている。
1.3.6 甲第6号証の記載内容
異議申立人株式会社クラレが提出した甲第5号証に同じ。
1.3.7 甲第7号証の記載内容
異議申立人株式会社クラレが提出した甲第4号証に同じ。
1.3.8 甲第8号証の記載内容
甲第8号証の第2頁右欄段落【0004】〜【0008】段落には、フレネルレンズシート1とレンチキュラーレンズシート2と前面保護シート6とを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、前面保護シート6の両面に反射防止膜7を設けること、その反射防止膜7は、フッ素樹脂の溶液を、スクリーン面にディッピング法により塗布して成膜する旨記載されている。
1.3.9 甲第9号証の記載内容
甲第9号証の第3頁右下欄第14〜18行、第4頁右上欄第7行〜左下欄第11行、第5頁左上欄第9行〜右上欄第4行(実施例1)、第5頁右上欄第10〜18行(実施例3)には、フッ素樹脂をパーフルオロ溶剤に溶かして得られる所望の濃度の溶液を、対象面にディッピング法等により塗布して成膜して反射防止膜を製造する旨記載されている。
2.訂正の内容について
本件訂正請求は、本件特許第3270261 号の願書に添付された明細書を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、訂正しようとするものである。
2.1 訂正事項
訂正事項a
特許明細書の請求項1を、「フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、前記映像光出射面の前記映像光線が通過する領域を平面形状とし、
前記前面保護シートの映像光入射面及び映像光出射面は平面であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面に設けられた前記光吸収帯と前面保護シートとを接着剤を用いて貼り合わせることによって、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」と訂正する。
訂正事項b
特許明細書の請求項3を「フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光出射面は平面であって、前記前面保護シートの映像光入射面が、スクリーン画面の水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面の垂直方向に連続して配置した形状であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」と訂正する。
訂正事項c
特許明細書の請求項4を「フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光出射面は平面であって、前記前面保護シートの映像光入射面が、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面の水平方向に連続して配置した形状であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」と訂正する。
訂正事項d
特許明細書の請求項5を「フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光出射面は平面であって、前記前面保護シートの映像光入射面が、擦りガラス状に微細な凸凹を持つ形状をなし、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」と訂正する。
訂正事項e
特許明細書の請求項13を「フレネルレンズシートとフライアイレンズシートと前面保護シートとを含み、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、前記フレネルレンズシートの少なくとも1つの面にフレネル凸レンズが形成されており、前記フライアイレンズシートは、映像光入射面がマイクロレンズ素子をスクリーン画面の水平及び垂直方向に連続して並べた形状をなして、前記マイクロレンズ素子の焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、前記前面保護シートの映像光入射面及び映像光出射面が平面であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
かつ前記フライアイレンズシートと前面保護シートとが前記フライアイレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」と訂正する。
訂正事項f
特許明細書【0059】段落の「全面シート1の映像光入射面6」を、「保護シート2の映像光入射面6」と訂正する。
2.2 訂正後の請求項1〜32に係る発明
請求項1
「フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、前記映像光出射面の前記映像光線が通過する領域を平面形状とし、
前記前面保護シートの映像光入射面及び映像光出射面は平面であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面に設けられた前記光吸収帯と前面保護シートとを接着剤を用いて貼り合わせることによって、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項2
「請求項1において、
前記光吸収帯の面積S1がスクリーンの全面積S0に対して、
0.4≦S1/S0≦0.8
なる条件を満たすことを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項3
「フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光出射面は平面であって、前記前面保護シートの映像光入射面が、スクリーン画面の水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面の垂直方向に連続して配置した形状であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項4
「フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光出射面は平面であって、前記前面保護シートの映像光入射面が、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面の水平方向に連続して配置した形状であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項5
「フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光出射面は平面であって、前記前面保護シートの映像光入射面が、擦りガラス状に微細な凸凹を持つ形状をなし、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項6
「請求項1〜5のいずれか1つにおいて、 前記前面保護シートと前記レンチキュラーレンズシートとの貼り合わせる接着剤は、光を吸収する材質のものであることを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項7
「請求項6において、
前記接着剤は、D線(波長589.3nmの光)に対する屈折率Nが
1.3≦N≦1.7
なる条件を満たす材質のものであることを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項8
「前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面の形状を形成しながら、前記前面保護シートと前記レンチキュラーレンズシートとを熱可塑性の材質の接着剤で貼り合わせて熱圧着し、前記前面シートを形成することを特徴とする請求項6に記載の透過型スクリーンの製造方法。」
請求項9
「請求項8において、前記接着剤は、D線(波長589.3nmの光)に対する屈折率Nが
1.3≦N≦≦1.7
なる条件を満たす材質のものであることを特徴とする透過型スクリーンの製造方法。」
請求項10
「前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面の形状を形成しながら、前記前面保護シートと前記レンチキュラーレンズシートとを紫外線もしくは可視光線もしくは電磁波を照射されることによって硬化する材質の接着剤で貼り合わせ、前記紫外線もしくは可視光線もしくは電磁波を前面保護シート側から照射して前記接着剤を硬化し、前記前面シートを形成することを特徴とする請求項6または7に記載の透過型スクリーンの製造方法。」
請求項11
「請求項8〜10のいずれか1つにおいて、前記前面保護シートにロール状に変形可能な材質を用いたことを特徴とする透過型スクリーンの製造方法。」
請求項12
「請求項8〜11のいずれか1つにおいて、
前記前面保護シートと前記レンチキュラーレンズシートとの貼り合わせ工程で、前記レンチキュラーレンズの光吸収帯に接着剤を塗布したことを特徴とする透過型スクリーンの製造方法。」
請求項13
「フレネルレンズシートとフライアイレンズシートと前面保護シートとを含み、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、前記フレネルレンズシートの少なくとも1つの面にフレネル凸レンズが形成されており、前記フライアイレンズシートは、映像光入射面がマイクロレンズ素子をスクリーン画面の水平及び垂直方向に連続して並べた形状をなして.前記マイクロレンズ素子の焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、前記前面保護シートの映像光入射面及び映像光出射面が平面であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
かつ前記フライアイレンズシートと前面保護シートとが前記フライアイレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項14
「請求項13において、
前記フライアイレンズシートの前記映像光出射面が、前記フライアイレンズシートの前記映像光入射面でのマイクロレンズ素子にほぼ対向してマイクロレンズ素子を、有限幅の光吸収帯を介して、スクリーン画面の水平及び垂直方向に連続して並べた形状をなしていることを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項15
「請求項13において、前記フライアイレンズシートの前記映像光出射面が平面であることを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項16
「請求項13,14または15において、前記光吸収帯の面積S1がスクリーンの全面積S0に対して
0.4≦S1/S0≦0.8
なる条件を満たすことを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項17
「請求項13において、
前記フレネルレンズシートの映像光出射面をフレネル凸レンズとしたことを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項18
「請求項17において、
前記フレネルレンズシートの映像光入射面が、スクリーン画面の水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面の垂直方向に連続的に配置した形状としたことを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項19
「請求項13において、
前記前面保護シートの映像光入射面が、スクリーン画面の水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面垂直方向に連続して配置した形状をなすことを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項20
「請求項13において、
前記前面保護シートの映像光入射面が、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面の水平方向に連続して配置した形状をなすことを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項21
「請求項13において、
前記前面保護シートの映像光入射面が、擦りガラス状に微細な凸凹を持つ形状をなすことを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項22
「請求項13において、
前記前面保護シートと前記フライアイレンズシートとを貼り合わせる接着剤は光を吸収する材質のものであることを特徴とする透過型スクリ-ン。」
請求項23
「請求項22において、前記接着剤は、D線(波長589.3nmの光)に対する屈折率Nが、
1.3≦N≦1.7
なる条件を満たす材質のものであることを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項24
「前記フライアイレンズシートの前記映像光出射面の形状を形成しながら、前記前面保護シートと前記フライアイレンズシートとを熱可塑性の材質の接着剤で貼り合わせて熱圧着し、前記前面シートを形成することを特徴とする請求項22に記載の透過型スクリーンの製造方法。」
請求項25
「請求項24において、前記接着剤は、D線(波長589.3nmの光)に対する屈折率Nが、
1.3≦N≦1.7
なる条件を満たす材質のものであることを特徴とする透過型スクリーンの製造方法。」
請求項26
「前記フライアイレンズシートの前記映像光出射面の形状を形成しながら、前記前面保護シートと前記フライアイレンズシートとを紫外線もしくは可視光線もしくは電磁波を照射されることによって硬化する材質の接着剤で貼り合わせ、前記前面保護シート側から紫外線もしくは可視光線もしくは電磁波を照射して前記接着剤を硬化し、前記前面シートを形成することを特徴とする請求項22または23に記載の透過型スクリーンの製造方法。」
請求項27
「請求項24〜26のいずれか1つにおいて、前記前面保護シートとしてロール状に変形可能な材質を用いたことを特徴とする透過型スクリーンの製造方法。」
請求項28
「請求項24〜27のいずれか1つにおいて、
前記前面保護シートと前記フライアイレンズシートの貼り合わせ製造工程で、前記フライアイレンズの前記映像光出射面での光吸収帯に接着剤を塗布したことを特徴とする透過型スクリーンの製造方法。」
請求項29
「請求項1〜7のいずれか1つにおいて、 フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートの少なくとも1つ面に反射防止膜を設けたことを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項30
「請求項13〜23のいずれか1つにおいて、
フレネルレンズシートとフライアイレンズシートと前面保護シートの少なくとも1つ面に反射防止膜を設けたことを特徴とする透過型スクリーン。」
請求項31
「前記反射防止膜は、非晶質のフッ素樹脂をパーフルオロ溶剤に溶かして得られる所望の濃度の溶液を、スクリーン面にスピン法またはディッピング法により塗布して成膜されることを特徴とする請求項29または30に記載の透過型スクリーンの製造方法。」
請求項32
「映像発生源の前方に投写レンズを配し、該投写レンズの前方の結像面に請求項1〜7,13〜23,29,30のいずれか1つに記載の透過型スクリーンを配して構成されることを特徴とする背面投写型画像ディスプレイ装置。」
3. 訂正の適否
訂正事項aについて
訂正事項aは、請求項1における、「前面保護シートの少なくとも映像光出射面は平面であり」を、下位概念である「前面保護シートの映像光入射面及び映像光出射面は平面であり」と訂正し、「前記光吸収帯と前面保護シートとを貼り合わせることによって、1枚の前面シートを形成している」を、下位概念である「前記光吸収帯と前面保護シートとを接着剤とを用いて貼り合わせることによって、1枚の前面シートを形成し、前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有する」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
また、上記訂正事項aは、特許明細書の【0051】、【0054】及び【0061】段落に記載されていることから、導き出されるものである。
そして、上記訂正事項aは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項bについて
訂正事項bは、請求項3において、「前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で貼り合わされて、1枚の前面シートを形成している」を、下位概念である「前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有する」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
また、上記訂正事項bは、特許明細書の【0054】及び【0061】段落に記載されていることから、導き出されるものである。
そして、上記訂正事項bは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項cについて
訂正事項cは、請求項4において、「前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で貼り合わされて、1枚の前面シートを形成している」を、下位概念である「前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有する」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
また、上記訂正事項cは、特許明細書の【0054】及び【0061】段落に記載されていることから、導き出されるものである。
そして、上記訂正事項cは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項dについて
訂正事項dは、請求項5において、「前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で貼り合わされて、1枚の前面シートを形成している」を、下位概念である「前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有する」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
また、上記訂正事項dは、特許明細書の【0054】及び【0061】段落に記載されていることから、導き出されるものである。
そして、上記訂正事項dは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項eについて
訂正事項eは、請求項13において、「前面保護シートの少なくとも映像光出射面は平面であり」を、下位概念である「前面保護シートの映像光入射面及び映像光出射面は平面であり」と訂正し、「前記光吸収帯と前面保護シートとを貼り合わせることによって、1枚の前面シートを形成している」を、下位概念である「前記光吸収帯と前面保護シートとを接着剤とを用いて貼り合わせることによって、1枚の前面シートを形成し、前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有する」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
また、上記訂正事項eは、特許明細書の【0051】、【0054】及び【0061】段落に記載されていることから、導き出されるものである。
そして、上記訂正事項eは、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項fについて
訂正事項fは、特許明細書【0059】段落の「前面シート1の映像光入射面6」を、「前面保保護シート2の映像光入射面6」と訂正するものであり、誤記訂正にあたる。
当該記載個所の「映像光入射面6」は、図3から明らかなように、前保護シート2の光入射面であり、かつ参照符号1は、レンチキュラーレンシートを指すものである。従って、当該記載個所の「前面シート1」は「前保護シート2」の誤記であることは明らかであるから、訂正事項fは、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
従って、上記訂正事項a〜fは、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第126条第1項ただし書及び同条第2項の規定に適合する。
従って、当該請求を認める。
3.特許異議申立てについての判断
3.1 異議申立てに係る本件特許の請求項1〜32に係る発明
上記2.2に記載のとおり。
3.2 異議申立ての理由の概要
上記1.1に記載のとおり。
3.3 異議申し立てに係る本件請求項1及び2に係る発明と甲各号証との対比、判断
本件請求項1に係る発明が、「レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面に設けられた前記光吸収帯と前面保護シートとを接着剤を用いて貼り合わせることによって、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有する」構成(以下、「本件請求項1の特徴的構成」という。)を有するのに対し、上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証には、いずれも上記本件請求項1の特徴的構成の記載又はその記載の示唆がなく、上記本件請求項1に係る発明は、当該本件請求項1の特徴的構成を有することにより、「【0046】さらに、本発明による透過型スクリーンでは、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとを接着する接着剤の屈折率を上記のように設定しているので、この接着剤と前面保護シートとの屈折率とが非常に近いものとなり、このため、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとの接着面での反射率が非常に小さいものとなる。従って、この接着面での外光の反射光の強度を充分低減できる。」(特許明細書【0046】段落)という、上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証にはない効果を有する。
従って、本件請求項1に係る発明は、上記上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証に基づいて容易に発明できたものではない。
本件請求項3に係る発明が、「レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有する」構成(以下、「本件請求項3の特徴的構成」という。)を有するのに対し、上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証には、いずれも上記本件請求項3の特徴的構成の記載又はその記載の示唆がなく、上記本件請求項3に係る発明は、当該本件請求項1の特徴的構成を有することにより、「【0046】さらに、本発明による透過型スクリーンでは、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとを接着する接着剤の屈折率を上記のように設定しているので、この接着剤と前面保護シートとの屈折率とが非常に近いものとなり、このため、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとの接着面での反射率が非常に小さいものとなる。従って、この接着面での外光の反射光の強度を充分低減できる。」(特許明細書【0046】段落)という、上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証にはない効果を有する。
従って、本件請求項3に係る発明は、上記上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証に基づいて容易に発明できたものではない。
本件請求項4に係る発明が、「レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有する」構成(以下、「本件請求項4の特徴的構成」という。)を有するのに対し、上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証には、いずれも上記本件請求項4の特徴的構成の記載又はその記載の示唆がなく、上記本件請求項4に係る発明は、当該本件請求項1の特徴的構成を有することにより、「【0046】さらに、本発明による透過型スクリーンでは、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとを接着する接着剤の屈折率を上記のように設定しているので、この接着剤と前面保護シートとの屈折率とが非常に近いものとなり、このため、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとの接着面での反射率が非常に小さいものとなる。従って、この接着面での外光の反射光の強度を充分低減できる。」(特許明細書【0046】段落)という、上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証にはない効果を有する。
従って、本件請求項4に係る発明は、上記上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証に基づいて容易に発明できたものではない。
本件請求項5に係る発明が、「レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有する」構成(以下、「本件請求項5の特徴的構成」という。)を有するのに対し、上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証には、いずれも上記本件請求項5の特徴的構成の記載又はその記載の示唆がなく、上記本件請求項5に係る発明は、当該本件請求項1の特徴的構成を有することにより、「【0046】さらに、本発明による透過型スクリーンでは、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとを接着する接着剤の屈折率を上記のように設定しているので、この接着剤と前面保護シートとの屈折率とが非常に近いものとなり、このため、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとの接着面での反射率が非常に小さいものとなる。従って、この接着面での外光の反射光の強度を充分低減できる。」(特許明細書【0046】段落)という、上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証にはない効果を有する。
従って、本件請求項5に係る発明は、上記上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証に基づいて容易に発明できたものではない。
本件請求項13に係る発明が、「フライアイレンズシートと前面保護シートとが前記フライアイレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」構成(以下、「本件請求項13の特徴的構成」という。)を有するのに対し、上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証には、いずれも上記本件請求項13の特徴的構成の記載又はその記載の示唆がなく、上記本件請求項13に係る発明は、当該本件請求項1の特徴的構成を有することにより、「【0046】さらに、本発明による透過型スクリーンでは、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとを接着する接着剤の屈折率を上記のように設定しているので、この接着剤と前面保護シートとの屈折率とが非常に近いものとなり、このため、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとの接着面での反射率が非常に小さいものとなる。従って、この接着面での外光の反射光の強度を充分低減できる。」(特許明細書【0046】段落)という、上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証にはない効果を有する。
従って、本件請求項13に係る発明は、上記上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証に基づいて容易に発明できたものではない。
また、本件請求項1、3、4、5及び13に係る発明を引用する、本件請求項2、6〜12、14〜32に係る発明は、上記本件請求項1、3、4、5及び13に係る発明と同様に、上記株式会社クラレが提出した甲第1〜8号証及び株式会社ディスクが提出した甲第1〜9号証に基づいて容易に発明できたものではない。
また、本件請求項1、29及び32に係る発明は、上記本件請求項1、3、4、5及び13に係る発明の特徴的構成を有するから、上記株式会社クラレが提出した甲第1号証記載の発明と同一ではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申し立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜32に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1〜32に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1〜32に係る発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
透過型スクリーンとその製造方法及びそれを用いた背面投写型画像ディスプレイ装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、前記映像光出射面の前記映像光線が通過する領域を平面形状とし、
前記前面保護シートの映像光入射面及び映像光出射面は平面であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面に設けられた前記光吸収帯と前面保護シートとを接着剤を用いて貼り合わせることによって、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項2】 請求項1において、
前記光吸収帯の面積S1がスクリーンの全面積S0に対して、
0.4≦S1/S0≦0.8
なる条件を満たすことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項3】 フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光出射面は平面であって、前記前面保護シートの映像光入射面が、スクリーン画面の水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面の垂直方向に連続して配置した形状であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項4】 フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光出射面は平面であって、前記前面保護シートの映像光入射面が、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面の水平方向に連続して配置した形状であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項5】 フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光出射面は平面であって、前記前面保護シートの映像光入射面が、擦りガラス状に微細な凸凹を持つ形状をなし、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1つにおいて、
前記前面保護シートと前記レンチキュラーレンズシートとの貼り合わせる接着剤は、光を吸収する材質のものであることを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項7】 請求項6において、
前記接着剤は、D線(波長589.3nmの光)に対する屈折率Nが
1.3≦N≦1.7
なる条件を満たす材質のものであることを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項8】 前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面の形状を形成しながら、前記前面保護シートと前記レンチキュラーレンズシートとを熱可塑性の材質の接着剤で貼り合わせて熱圧着し、前記前面シートを形成することを特徴とする請求項6に記載の透過型スクリ-ンの製造方法。
【請求項9】 請求項8において、
前記接着剤は、D線(波長589.3nmの光)に対する屈折率Nが
1.3≦N≦1.7
なる条件を満たす材質のものであることを特徴とする透過型スクリーンの製造方法。
【請求項10】 前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面の形状を形成しながら、前記前面保護シートと前記レンチキュラーレンズシートとを紫外線もしくは可視光線もしくは電磁波を照射されることによって硬化する材質の接着剤で貼り合わせ、前記紫外線もしくは可視光線もしくは電磁波を前面保護シート側から照射して前記接着剤を硬化し、前記前面シートを形成することを特徴とする請求項6または7に記載の透過型スクリ-ンの製造方法。
【請求項11】 請求項8〜10のいずれか1つにおいて、
前記前面保護シートにロール状に変形可能な材質を用いたことを特徴とする透過型スクリ-ンの製造方法。
【請求項12】 請求項8〜11のいずれか1つにおいて、
前記前面保護シートと前記レンチキュラーレンズシートとの貼り合わせ工程で、前記レンチキュラーレンズの光吸収帯に接着剤を塗布したことを特徴とする透過型スクリ-ンの製造方法。
【請求項13】 フレネルレンズシートとフライアイレンズシートと前面保護シートとを含み、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つの面にフレネル凸レンズが形成されており、
前記フライアイレンズシートは、映像光入射面がマイクロレンズ素子をスクリーン画面の水平及び垂直方向に連続して並べた形状をなして、前記マイクロレンズ素子の焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光入射面及び映像光出射面が平面であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
かつ前記フライアイレンズシートと前面保護シートとが前記フライアイレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項14】 請求項13において、
前記フライアイレンズシートの前記映像光出射面が、前記フライアイレンズシートの前記映像光入射面でのマイクロレンズ素子にほぼ対向してマイクロレンズ素子を、有限幅の光吸収帯を介して、スクリーン画面の水平及び垂直方向に連続して並べた形状をなしていることを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項15】 請求項13において、
前記フライアイレンズシートの前記映像光出射面が平面であることを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項16】 請求項13,14または15において、
前記光吸収帯の面積S1がスクリーンの全面積S0に対して
0.4≦S1/S0≦0.8
なる条件を満たすことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項17】 請求項13において、
前記フレネルレンズシートの映像光出射面をフレネル凸レンズとしたことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項18】 請求項17において、
前記フレネルレンズシートの映像光入射面が、スクリーン画面の水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面の垂直方向に連続的に配置した形状としたことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項19】 請求項13において、
前記前面保護シートの映像光入射面が、スクリーン画面の水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面垂直方向に連続して配置した形状をなすことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項20】 請求項13において、
前記前面保護シートの映像光入射面が、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面の水平方向に連続して配置した形状をなすことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項21】 請求項13において、
前記前面保護シートの映像光入射面が、擦りガラス状に微細な凸凹を持つ形状をなすことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項22】 請求項13において、
前記前面保護シートと前記フライアイレンズシートとを貼り合わせる接着剤は光を吸収する材質のものであることを特徴とする透過型スクリ-ン。
【請求項23】 請求項22において、
前記接着剤は、D線(波長589.3nmの光)に対する屈折率Nが、
1.3≦N≦1.7
なる条件を満たす材質のものであることを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項24】 前記フライアイレンズシートの前記映像光出射面の形状を形成しながら、前記前面保護シートと前記フライアイレンズシートとを熱可塑性の材質の接着剤で貼り合わせて熱圧着し、前記前面シートを形成することを特徴とする請求項22に記載の透過型スクリ-ンの製造方法。
【請求項25】 請求項24において、
前記接着剤は、D線(波長589.3nmの光)に対する屈折率Nが、
1.3≦N≦1.7
なる条件を満たす材質のものであることを特徴とする透過型スクリーンの製造方法。
【請求項26】 前記フライアイレンズシートの前記映像光出射面の形状を形成しながら、前記前面保護シートと前記フライアイレンズシートとを紫外線もしくは可視光線もしくは電磁波を照射されることによって硬化する材質の接着剤で貼り合わせ、前記前面保護シート側から紫外線もしくは可視光線もしくは電磁波を照射して前記接着剤を硬化し、前記前面シートを形成することを特徴とする請求項22または23に記載の透過型スクリ-ンの製造方法。
【請求項27】 請求項24〜26のいずれか1つにおいて、
前記前面保護シートとしてロール状に変形可能な材質を用いたことを特徴とする透過型スクリ-ンの製造方法。
【請求項28】 請求項24〜27のいずれか1つにおいて、
前記前面保護シートと前記フライアイレンズシートの貼り合わせ製造工程で、前記フライアイレンズの前記映像光出射面での光吸収帯に接着剤を塗布したことを特徴とする透過型スクリ-ンの製造方法。
【請求項29】 請求項1〜7のいずれか1つにおいて、
フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートの少なくとも1つ面に反射防止膜を設けたことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項30】 請求項13〜23のいずれか1つにおいて、
フレネルレンズシートとフライアイレンズシートと前面保護シートの少なくとも1つ面に反射防止膜を設けたことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項31】 前記反射防止膜は、非晶質のフッ素樹脂をパーフルオロ溶剤に溶かして得られる所望の濃度の溶液を、スクリーン面にスピン法またはディッピング法により塗布して成膜されることを特徴とする請求項29または30に記載の透過型スクリーンの製造方法。
【請求項32】 映像発生源の前方に投写レンズを配し、該投写レンズの前方の結像面に請求項1〜7,13〜23,29,30のいずれか1つに記載の透過型スクリーンを配して構成されることを特徴とする背面投写型画像ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、透過型スクリーンとその製造方法及びそれを用いた背面投射型テレビなどの背面投写型画像ディスプレイ装置に係り、特に、フレネルレンズシートと組み合わせて透過型スクリーンを構成するレンチキュラーレンズシートもしくはフライアイレンズシートと、前面保護シートとに関する。
【0002】
【従来の技術】
小型画像発生源としての投写型ブラウン管や液晶表示装置などに表示された画像を投写レンズによって拡大し、透過型スクリーンに投写する背面投写型テレビジョン受像機などの画像ディスプレイ装置は、近年画質の向上が著しく、大画面による迫力ある臨場感を楽しむことができるため、家庭用や業務用として普及が進んでいる。
【0003】
この背面投写型ディスプレイ装置においては、投写型ブラウン管を画像発生源として用いる場合、透過型スクリーン上の輝度を充分に明るくするために、従来から一般に、赤,緑,青の3原色夫々毎のブラウン管と投写型レンズを組み合わせ、透過型スクリーン上で3原色の合成を行なう方式が採用されていた。
【0004】
図15はかかる背面投写型ディスプレイ装置の光学系を示す構成図であって、30B,30G,30Rは夫々青色投写管,緑色投写管,赤色投写管、31B,31G,31Rは夫々投写レンズ、32B,32G,32Rは夫々青色映像光,赤色映像光,緑色映像光、33は透過型スクリーンである。
【0005】
同図において、緑色投写管30Gを中心として左右に青色投写管30B、赤色投写管30Rが横方向にインライン配置され、緑色投写管30Gからの緑色映像光32G,青色投写管30Bからの青色映像光32B及び赤色投写管30Rからの赤色映像光32Rが夫々投写レンズ31G,31B,31Rで拡大されて、透過型スクリーン33上で合成投写される。これにより、透過型スクリーン33の前面(図面上、右側の面)に拡大されたカラー映像が表示される。
【0006】
図16はこのような背面投写型画像ディスプレイ装置に用いられる従来の透過型スクリーンの要部を示す斜視図であって、1はレンチキュラーレンズシート、3はフレネルレンズシート、7は映像光出射面、8は映像光入射面、9は映像光出射面、10は映像光入射面、11は光吸収帯である。
【0007】
同図において、透過型スクリーンはフレネルレンズシート3とレンチキュラーレンズシート1からなる2枚構成であって、レンチキュラーレンズシート1が背面投写型画像ディスプレイ装置の前面側にある。フレネルレンズシート3の投写管(図示せず)側の映像光入射面10は平面であって、その反対側の映像光出射面9にはフレネル凸レンズが形成されている。フレネルレンズシート3の映像光出射面9のフレネル凸レンズは、映像光入射面10から入射する画像光の光束がこの映像光出射面9からほぼ平行光束となって出射するように設けられており、透過型スクリーンの画面全体の明るさを均一にする効果がある。
【0008】
図17は図16でのレンチキュラーレンズシート1の要部を示す横断面図であって、34は映像光であり、図16に対応する部分には同一符号をつけている。
【0009】
同図において、レンチキュラーレンズシート1では、フレネルレンズシート3側の映像光入射面8の形状が、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなしており、また、その反対側の映像光出射面7の形状が、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズと、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とする有限幅の光吸収帯11とを交互に連続して複数配列した形状をなしている。映像光入射面8をなすレンチキュラーレンズの横断面形状は楕円に近い面形状をしており、その形状及び特性は特開昭58-59436号公報に詳しく述べられている。
【0010】
フレネルレンズシート3(図16)から出射した映像光34は、映像光入射面8での縦長レンチキュラーレンズによって画面水平方向に屈折拡散され、広い角度範囲に出射する。
【0011】
また、明るい室内でかかる背面投写型ディスプレイ装置の映像を観視したときには、室内の光が外光となってスクリーンで反射され、映像光と重なって見えて映像が見づらくなる現象が発生することがあるが、このレンチキュラーレンズシート1が持つ作用ににより、かかる背面投写型ディスプレイ装置では、外光の反射が低減される。
【0012】
映像光入射面8の縦長レンチキュラーレンズによって屈折された光は、映像光出射面7の一定の幅の範囲内に集光されて出射される。そして、光が出射しない場所には黒色の塗料で塗装して光吸収帯11とし、これにより、透過型スクリーンでの外光反射を大幅に低減できるようにしている。
【0013】
因みに、かかる従来のレンチキュラーレンズシート1では、映像光出射面7に対する光吸収帯11の面積比率を約50%にすると、光吸収帯11での外光反射は、極めて小さいことから、ほぼ0とみなすことができ、このため、スクリーン表面での外光の平均反射率は、光吸収帯11がない場合に比較すると、約50%低減される。従って、同じ外光があった場合でも、反射強度は半減する。
【0014】
なお、かかる縦長レンチキュラーレンズでは、映像光はスクリーン画面の垂直方向には拡散されない。そこで、映像光をスクリーン画面の垂直方向に拡散させるために、レンチキュラーレンズシート1のプラスチック基材の中に屈折率が異なる透明な硝子ビーズなどでできた光拡散材が練り込まれており、これによって水平及び垂直方向への光拡散を行なっている。レンチキュラーレンズシート1の内部へ入射した映像光はこの光拡散材によって屈折もしくは反射され、上下左右方向に散乱する。レンチキュラーレンズシート1では、この光拡散材の拡散作用によってスクリーン画面の垂直方向に光を拡散させている。そのため、レンチキュラーレンズシート1の内部に入射した外光は光拡散材によって散乱される。従って、レンチキュラーレンズシート1の内部に入射した外光の反射は極めて小さいため、ほぼ0とみなすことができる。
【0015】
しかしながら、かかるレンチキュラーレンズシート1を用いると、スクリーン表面が平坦でなく、レンチキュラーレンズ7及び光吸収帯11の複雑な凸凹を持つため、スクリーン表面が傷つきやすく、また、清掃がしづらいという問題があった。さらに、このような表面形状を持つスクリーンではざらざらした表面に見え、ディスプレイ装置としての高級感を損ねるという問題もあった。
【0016】
そこで、レンチキュラーレンズシート1より外側(映像観視側)に、さらに、アクリル平板の前面保護シートを設置する技術が近年行なわれている。
【0017】
図18はかかる前面保護シートを使用した従来の透過型スクリーンの要部を示す斜視図であって、2は前面保護シート、5は映像光出射面、6は映像光入射面であり、図16に対応する部分には同一符号をつけている。
【0018】
同図において、この透過型スクリーンは3枚構成であって、フレネルレンズシート3とレンチキュラーレンズシート1と前面保護シート2からなっており、レンチキュラーレンズシート1の前面側に平行平面状の映像光入射面6、映像光出射面5を有する前面保護シート2が配置されている。
【0019】
かかる前面保護シート2を設置することにより、映像観視側のスクリーン表面が平面となり、このため、スクリーン表面の傷付き防止や清掃を容易にすることができるし、また、スクリーン表面に光沢を持たせたディスプレイ装置としての高級感を高めることができる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような前面保護シート2を備えた従来の透過型スクリ-ンでは、映像光の入出射面数の増加による外光反射の増加や重量増、構成シート数の増加などの問題がある。以下、これらについて詳細に説明する。
【0021】
第1の問題点として、透過型スクリ-ンの映像観視側に平面の前面保護シート11を追加することにより、前面保護シート11によって新たな外光反射が発生し、スクリ-ン上に室内の照明や周囲の人,窓などが映り込んで表示される映像と重なって見え、映像が見づらくなるという映り込みの問題が発生していた。
【0022】
図19は前面保護シートを用いた従来の透過型スクリーンでの外光反射の状態を示す光線追跡図であり、12は外光、13は表面反射光、14,15は内部反射光である。
【0023】
同図において、前面保護シート2での外光12の反射光は、この前面保護シート2の映像光出射面5での表面反射光13だけではなく、その他の反射光も生ずる。その主な反射光としては、一旦前面保護シート2の内部に入射した外光12が前面保護シート2での映像光入射面6で反射され、再度前面保護シート2を通ってその映像光出射面5から出射する内部反射光14や、さらに映像光入射面6を透過してレンチキュラーレンズシート1の映像光出射面7で反射され、再度前面保護シート2の映像光入射面6から入射して映像光出射面5から出射する内部反射光15も含まれる。
【0024】
ここで、表面反射光13の強度Rs,内部反射光14の強度Rn,内部反射光15の強度Rmは、外光12の強さを1とし、レンチキュラーレンズシート1での映像光出射面7側の面の光吸収帯11の面積比率をH、界面での反射率をRaとすると、夫々次の式(1)で表わすことができる。
【0025】
前面保護シート2の映像光出射面5:Rs=Ra
前面保護シート2の映像光入射面6:Rn=Ra・(1-Ra)2
レンチキュラーレンズシート1の映像出射面7
:Rm=(1-H)・Ra・(1-Ra)4
………(1)
但し、Rは全反射を1とし、Hは全て光吸収帯である場合を1として定義する。
【0026】
このとき、室内の光がスクリーンで反射されるときの外光の入射角度は様々であるが、代表的な垂直に近い角度で入射する外光について考える。スクリーンに対してほぼ垂直に入射する外光に対する表面反射光と内部反射光とを併せた映り込みの大きさR1は、外光の強さを1とし、界面での反射率をRaとすると、次の式(2)で表わすことができる。
【0027】
R1=Rs+Rn+Rm
=Ra+Ra・(1-Ra)2+(1-H)・Ra・(1-Ra)4
………(2)
ここで、屈折率の異なる物質の界面における反射率Rは、光が垂直に入射する場合、光入射側の媒質の屈折率をN1とし、光出射側の媒質の屈折率をN2とすると、次の式(3)で表わすことができる。
【0028】
R=(N1-N2)2/(N1+N2)2 ………(3)
そこで、前面保護シート2の基材は一般にアクリル樹脂であり、アクリル樹脂基材の屈折率が約1.49であるから、屈折率1.0の空気との界面に垂直に入射する光に対して、前面保護シート2の映像光出射面5,映像光入射面6での反射率Raは、上記式(3)から、約0.039となる。従って、上記式(1),式(2)により、従来の前面保護シート2の映り込みの強度は、
前面保護シート2の映像光出射面5の反射光強度Rs:0.039
同 映像光入射面6の反射光強度Rn:0.036
レンチキュラーレンズシート1の映像光出射面7の反射光強度Rm
:0.017
の合計となり、スクリーンに入射する外光12に対して約0.092となる。
【0029】
このような内部反射光を低減する方法としては、従来、前面保護シート2に半透明の着色を加えて、光透過率を減少させる方法が行なわれていた。この方法によると、図19に示すように、前面保護シート2の内部に入射して界面で反射される内部反射光14,15は、再び外部に出射するまでに、少なくとも2回前面保護シート2の内部を通過することになるが、これによって内部反射光14,15は、着色された前面保護シート2の透過率の2乗に比例して減衰することになる。但し、表面反射光13はこの着色による影響は受けない。従って、着色による透過率をTとし、前面保護シート2における界面の反射率をRaとすると、映り込みの強さR2は次の式(4)で表わされる。
【0030】
R1=Rs+T2・Rn+T2・Rm
=Ra+T2・Ra・(1-Ra)2+T2・(1-H)・Ra・(1-Ra)4
………(4)
但し、Tは着色のない場合を1、全く光を透過しない場合を0とする。
【0031】
しかし、この方法では、スクリーンを通過する映像光の強度をも減衰させることになる。映像光の減衰に比べると、内部反射光は透過率の2乗に比例して減少するため、映像は観視しやすくなるが、映像光も減衰してしまうことは問題である。例えば、映り込みを従来の0.092の80%の0.074に減小させるためには、表面反射光13は着色の影響を受けないため、前面保護シート2の映像光入射面6における内部反射光14とレンチキュラーレンズシート1の映像光出射面7における反射光15とを着色のない場合の約66%に減少させる必要があり、従って、着色により映像光の透過率を約81%に減少させる必要が生じる。このように、従来の着色を使用した技術によって映り込みを減少させると、映像光の強度も減少してしまうという問題が生ずる。
【0032】
従来の透過型スクリーンの第2の問題としては重量が増大化することである。
【0033】
投写形ディスプレイ装置を開発する上での課題の1つとして、据付け作業を容易にするためのセットを軽量化することが挙げられる。ところが、従来の前面保護シート2(図19)は、破損や凹みなどのに対する強度を確保するため、一般に2mm以上の厚さを有している。画面サイズが対角35″を超える投写形ディスプレイ装置では、装置全体の重量を画面対角1″当り1kg以下に、例えば、画面サイズ対角40″では40kg以下に抑えることが目標の1つであるが、前面保護シート単体の重さは1kg近くになり、重量増も無視できない問題となっていた。
【0034】
従来の透過型スクリーンの第3の問題として、図19に示したように、前面保護シート2を新たに加えることによってスクリ-ンを構成するシート枚数が2枚から3枚に増加するため、ディスプレイ装置のキャビネットのスクリ-ン取付け構造が複雑になり、部品点数の増加や組付け性の悪化を招くという問題がある。
【0035】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、前面保護シートを有しながら映り込みによる画質の低下を軽減し、良好な品質感を保ちつつ傷付き防止を図り、清掃が容易な透過型スクリーンとその製造方法及びそれを備えた背面投写形ディスプレイ装置を提供することにある。
【0036】
本発明の他の目的は、前面保護シートの追加により増加したスクリーンの重量を軽減し、構成シートの枚数を低減することによって軽量でかつ組み付け性に優れた透過型スクリーンとその製造方法及びそれを備えた背面投写形ディスプレイ装置を提供することにある。
【0037】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による透過型スクリーンは、レンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートと前面保護シートとを接着し、1枚の前面シートとする。この場合、接着するのは、レンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートの映像光出射面に設けられた光吸収帯と前面保護シートの映像光入射面とであり、前面保護シートの映像光出射面は平面形状とする。
【0038】
また、本発明による透過型スクリーンは、上記光吸収帯の面積S1がスクリーンの全面積S0に対して、0.4≦S1/S0≦0.8となるようにする。
【0039】
さらに、本発明による透過型スクリーンは、レンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートと前面保護シートとを接着する接着剤を、D線に対する屈折率Nが1.3≦N≦1.7であるものとする。
【0040】
本発明による透過型スクリーンの製造方法は、レンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートの映像光出射面の形状を形成しながら、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとを接着剤で貼り合わせ、しかる後、熱圧着もしくは紫外線,可視光線,電磁波の照射によってこの接着剤を硬化させて前面シートを形成する。
【0041】
【作用】
本発明による透過型スクリーンでは、前面保護シートの映像光出射面から入射した外光の一部は、この前面保護シートの映像光入射面で反射するが、この映像光入射面でのレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートの光吸収帯に接着された部分では、光吸収が行なわれるので、この部分からの内部反射光の強度は低減する。このため、反射光全体の強度が低減し、外光による映り込みを低減できて表示される映像が見やすくなる。
【0042】
また、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとが接着されて1枚の前面シートが形成されているため、この前面シートの機械強度が、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとが分離されているときよりも、大きくなり、このため、前面保護シートの厚みを薄くできて、スクリーン全体を軽量化できる。
【0043】
さらに、スクリーン構成のシート枚数も、従来の3枚から2枚に減らすことができ、スクリーンの取付け構造が簡略化できて、背面投写型画像ディスプレイ装置への組付け性能が向上する。
【0044】
さらにまた、スクリーン画面となる前面保護シートの映像光出射面は平面形状をなすものであるから、背面投写型画像ディスプレイ装置としても、品質感が高まり、また、スクリーンに傷がつきにくくて清掃も容易になる。
【0045】
また、本発明による透過型スクリーンでは、スクリーンの全面積に対する上記光吸収帯の面積が設定されるので、前面シートでの貼り合わせの機械的強度が充分であるとともに、光吸収帯によって映像光が影響されることも防止することができる。
【0046】
さらに、本発明による透過型スクリーンでは、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとを接着する接着剤の屈折率を上記のように設定しているので、この接着剤と前面保護シートとの屈折率とが非常に近いものとなり、このため、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートまたはフライアイレンズシートとの接着面での反射率が非常に小さいものとなる。従って、この接着面での外光の反射光の強度を充分低減できる。
【0047】
本発明による透過型スクリーンの製造方法では、レンチキュラーレンズシートもしくはフライアイレンズシートの映像光出射面の形状を形成しながら、かかるシートと前面保護シートとの貼り合わせによる前面シートの形成が行なわれるから、製造工程が短縮できる。
【0048】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明による透過型スクリーンの第1の実施例の要部を示す斜視図であって、4は前面シートであり、図16〜図19に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0049】
同図において、この実施例は、フレネルレンズシート3と前面シート4との2枚構成であって、前面シート4はレンチキュラーレンズシート1と前面保護シート2が貼り合わされたものである。
【0050】
フレネルレンズシート3は、映像光入射面10,映像光出射面9の少なくとも一方にフレネル凸レンズが形成されているが、ここでは、図16〜図19で示した従来の透過型スクリーンの場合と同様に、その映像光入射面10が平面形状であり、その映像光出射面9の形状がフレネル凸レンズ形状をなしているものとする。
【0051】
前記前面シート4を形成するレンチキュラーレンズシート1では、映像光入射面8の形状が、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して多数配列した形状をなし、また、映像光出射面7の形状が、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズとスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする有限幅の光吸収帯11とを交互に連続して複数配列した形状をなしている。ここで、これらレンチキュラーレンズは映像光入射面8でのレンチキュラーレンズに各々対向している。この映像光出射面7において、光吸収帯11は縦長レンチキュラーレンズよりも高く突き出した凸形状の突起の上面に位置し、映像光出射面7全体に対する面積比率は約50%とする。また、前面保護シート2は映像光入射面6と映像光出射面5とが平面であり、厚さが1mmである。
【0052】
これらレンチキュラーレンズシート1と前面保護シート2とはレンチキュラーレンズシート1の光吸収帯11で貼り合わされており、これにより、1枚の前面シート4が形成されている。従って、この実施例では、フレネルレンズシート3と前面シート4との2枚構成となっている。
【0053】
図2は図1の水平面で切断してみた場合の横断面図であって、図1に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0054】
同図において、レンチキュラーレンズシート1と前面保護シート2とがレンチキュラーレンズシート1の光吸収帯11で貼り合わされ、1枚の前面シート4となっている。このとき、光吸収帯11上には、黒色で光を吸収する材質の接着剤が塗布されており、これによって光吸収帯11が接着面となっている。
【0055】
次に、この第1の実施例の作用について説明する。
【0056】
図1,図2において、透過型スクリーン後方(即ち、フレネルレンズシート3の映像光入射面10側)からの映像光は、まず、フレネルレンズシート3によってほぼ平行な光に変換され、レンチキュラーレンズシート1の映像光入射面8での縦長レンチキュラーレンズによってスクリーン画面の水平方向に拡散され、また、レンチキュラーレンズシート1の内部に練り込まれた光拡散材により、スクリーン画面の垂直方向にも拡散される。かかる拡散された映像光は、前面保護シート2を透過して観視者に到達する。
【0057】
ここで、明るい室内で映像を観視した場合、室内の光源や人物などがスクリーンで反射されて映り込みとなる。
【0058】
図3にこの第1の実施例における外側から入射した外光の反射状況を概略的に示す図であって、12は外光、13は表面反射光、14,15は内部反射光であり、図2に対応する部分には同一符号をつけている。
【0059】
同図において、入射した外光12は前面保護シート2の映像光出射面5で一部が反射され、残りが前面シート2内に入射する。この反射した光が表面反射光13となる。前面保護シート2の内部に入射したこの外光の一部も、また、前面保護シート2の映像光入射面6で反射されて内部反射光14となり、この映像光入射面6を透過した外光はレンチキュラーレンズシート1の映像光出射面7で一部反射され、さらに、前面保護シート2を透過して内部反射光15となる。
【0060】
このとき、前面保護シート2の映像光入射面6の面積のうちの50%の部分は、この前面シート2の基材と屈折率の差の少ない接着剤が塗布されているレンチキュラーレンズシート1の光吸収帯11と接着されており、このため、この接着面での界面反射率は大幅に低減し、この接着面からの反射光はほとんどないことになる。
【0061】
例えば、前面保護シート2の基材を屈折率が1.49のアクリル樹脂とし、接着剤を、例えば、屈折率が1.52の接着剤とすると、上記式(3)により、上記接着面での垂直に入射した光に対する反射率Rは0.0001であり、前面保護シート2の映像光入射面6が空気に接している場合のこの映像光入射面6での反射率R=0.039に対して、1/100以下となる。従って、かかる接着面に達した外光はほとんど光吸収帯11で吸収される。
【0062】
そこで、前面保護シート2での映り込みR3は、外光12の強度を1.0、レンチキュラーレンズシート1の映像光出射面7での光吸収帯11の面積比率をH、接着面での界面での反射率をRb、空気とアクリル樹脂との界面での反射率をRaすると、次の式(5)で表わすことができる。
【0063】
前面保護シート2の映像光出射面5 :Rs=Ra
前面保護シート2の映像光入射面6 :Rn=(1-H)・Ra・(1-Ra)2+H・Rb・(1-Ra)2
レンチキュラーレンズシート1の映像出射面7
:Rm=(1-H)・R・(1-Ra)4
総反射強度 :R3=Rs+Rn+Rm
………(5)
例えば、レンチキュラーレンズシート1の映像光出射面7での光吸収帯11の面積比率Hを0.5とすると、貼り合わせによって前面保護シート2の映像光入射面6の内、面積比50%の部分の界面での反射率が0.039から0.0001に減少するため、内部反射光14の強度は上記式(1)によって求められる従来の0.036に対し、上記式(5)で求められる0.018と約50%減少させることができる。ここで、表面反射光13とレンチキュラーレンズシート1による内部反射光15は貼り合わせによる影響を受けないが、前面シート4における外光の映り込みの強度は全体で従来の0.092(上記式(2)による)から0.074(上記式(5)による)に減少する。
【0064】
また、このとき、レンチキュラーレンズシート1の光吸収帯11のみを接着面とすることにより、映像光の通過する部分には影響を与えないため、貼り合わせによる映像光の光量の損失や光の拡散の変化などは発生しない。
【0065】
ここで、レンチキュラーレンズシート1の映像光出射面7での光吸収帯11の面積比率Hは0.5近辺に限定されるものではなく、0.4〜0.8であればよい。ここで、この面積比率Hを0.4よりも小さくすると、前面保護シート2に貼り合わせる機械的強度が低下する。また、この面積比率Hを0.8よりも大きくすると、映像光の一部が光吸収帯11にかかって損失光が生じるため、実用的でない。このことは、後述する他の実施例についても同様であるが、以下では、この面積比率Hを0.5として説明する。
【0066】
2枚のシートを接着する接着剤については、前面保護シート2との屈折率との差が少ないほど好ましいが、屈折率が1.3〜1.7の接着剤であれば、充分に映り込みを低減できる。
【0067】
また、従来の前面保護シート2に半透明の着色を加えるだけの方法では、外光の映り込みを0.074に減少させるためには、透過率81%の着色が必要となるが、この実施例では、映像光の透過率を減少させる必要がなく、より好ましい技術である。但し、この実施例においても、前面保護シート2に半透明の着色を加えることにより、さらに映り込みを減少させることも可能である。このとき、着色による透過率の範囲がD線(波長589.3nmの光)に対して40%以上であればよく、40%よりも小さいと、映像そのものが暗くなり、実用的でなくなる。このことは後述する他の実施例についても同様である。
【0068】
さらに、この実施例では、夫々のシートの映像光入出射面に反射防止膜を施すことでさらに映り込みを減少させることも可能である。反射防止膜としては、例えば、非晶質のフッ素樹脂をパークルオロ溶剤に溶かして所望濃度の溶液とし、これをスピン法やディッピング法などにより塗布して成膜すればよい。
【0069】
ここで、透過型スクリーンに入射する外光の入射角度は様々であるが、以下、代表的な外光であるスクリーン面に垂直に入射する外光に対する反射光の強度について評価を行なった。
【0070】
次の表1は、この実施例と、従来の前面保護シートとレンチキュラーレンズシートとが分離されている場合と、さらに、前面保護シートに半透明の着色を加えた場合との垂直に入射した外光に対する映り込みの強度を比較したものである。
【0071】
【表1】

【0072】
表1に示すように、この実施例では、上記のように2枚のシートを貼り合わせることにより、映像光の光量の損失を伴わずに、前面保護シート2の映像光入射面6での内部反射光の強度を0.036から0.018へと従来の50%に低減し、外光の映り込みも全体で従来の0.092から0.074へと約80%に低減した。
【0073】
なお、次の表2に、この実施例での前面シート4の前面保護シート2に半透明の着色(透過型率81%)を加えることにより、さらに映り込みを低減させた結果を示す。
【0074】
【表2】

【0075】
表2に示すように、この実施例では、前面保護シート2を着色した場合でも、従来の透過型スクリーンに対して反射光の強度を低減できた。
【0076】
また、透過型スクリーンを構成する各シートでの反射を低減するために、上記のように、夫々のシートの映像光入出射面に反射防止膜を施すことにより、さらに映り込みの少ない透過型スクリーンを実現することもできる。この場合、反射防止膜によって個々のシートの映像光入出射面での反射率を小さくし、外光の映り込みを大幅に減少できるが、この実施例では、従来の透過型スクリーンに反射防止膜を使用した場合よりもさらに映り込みを減少させることができる。
【0077】
以上の説明から明らかなように、この実施例では、外光の映り込みが少なく、室内灯などの外光がある場合でも、映像が観視しやすい。また、スクリーンの表面が平面であるため、光沢を持って高級感が出るほか、傷が付きにくく、清掃が容易である。
【0078】
また、レンチキュラーレンズシート1と前面保護シート2を貼り合わせることにより、従来の透過型スクリーンよりも前面シートの強度が増すため、前面保護シートの厚さを2mmから1mmに薄くしても充分な強度を持ち、スクリーンを約500g軽量化することができる。さらに、透過型スクリーンを構成するシートの枚数は従来の3枚から2枚に低減したため、ディスプレイ装置に対するスクリーンの取付け構造が単純なものとなる。
【0079】
図4は上記第1の実施例での前面シート4の製造方法の一実施例を示す図であって、16は押出し成形機(エクストルーダ)、17はシート基材、18は映像光出射面成形ロール、19は映像光入射面成形ロール、20は接着剤塗布ロール、21は前面保護シート圧着ロール、22は熱可塑性接着剤であり、前出図面に対応する部分には同一符号をつけている。
【0080】
同図において、押出し成形機16より押し出されたレンチキュラーレンズシート1のシート基材17は、その映像光入射面8のレンチキュラーレンズ面を形成する映像光入射面成形ロール19とその映像光出射面7のレンチキュラーレンズと光吸収帯11を成形する光出射側成形ロール18によって挾まれて、レンチキュラーレンズシート1が成形される。成形されたこのレンチキュラーレンズシート1は、次いで、接着剤塗布ロール20により、映像光出射面7の光吸収帯11に、黒色の熱可塑性接着剤22が塗布される。そして、前面保護シート圧着ロール21により、レンチキュラーレンズシート1の出射面7に前面保護シート2が熱圧着によって貼り合わされて、前面シート4が形成される。ここで、前面保護シート2の材質をロール状に変形可能なものにすると、圧着の際に、前面保護シート2に無理な力や熱を加える必要がなくなる。
【0081】
なお、この実施例では、黒色の接着剤を使用することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、黒色の塗料と接着剤とを別々にし、黒色の塗料を塗布した後に接着剤をその上に塗布するようにしてもよい。
【0082】
図5は上記第1の実施例での前面シート4の製造方法の他の実施例を示す図であって、23は紫外線照明、24は紫外線硬化接着剤であり、図4に対応する部分には同一符号をつけている。
【0083】
同図において、図4に示した方法と同様にして映像光入射面8と映像光出射面7とが形成されたレンチキュラーレンズシート1は、接着剤塗布ロール20によって黒色の紫外線硬化接着剤24が塗布され、次いで、前面保護シート圧着ロール21により、レンチキュラーレンズシート1の出射面7に前面保護シート2が圧着された後、前面保護シート2側から紫外線照明23により紫外線が照射されて紫外線硬化接着剤24が硬化し、前面シート4が形成される。
【0084】
なお、紫外線の照射を映像光入射面8側より行なうと、その縦長レンチキュラーレンズのレンズ作用によって光吸収帯11に紫外線が入射しない。このため、紫外線の照射は前面保護シート2側から行なう必要がある。
【0085】
また、この実施例では、接着剤を紫外線によって硬化する紫外線硬化樹脂としてが、本発明はこれに限定されるものではなく、可視光線もしくは電磁波によって硬化する接着剤としてもよい。
【0086】
以上のように、レンチキュラーレンズシート1と前面保護シート2との接着に紫外線硬化樹脂の接着剤を使用した場合、前面保護シート2の圧着の際に熱を加える必要がなく、かつ、接着後、紫外線照射により直ちに強い接着力が得られるため、レンチキュラーレンズの熱や時間,揮発性物質による変形が少なく、より高精度な前面シート4を得ることができる。
【0087】
図6は本発明による透過型スクリーンの第2の実施例の要部を示す斜視図であって、1Aはレンチキュラーレンズシート、7Aは映像光出射面、8Aは映像光入射面、4Aは前面シートであり、前出図面に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0088】
同図において、先の実施例と同様に、この実施例においても、レンチキュラーレンズシート1Aと前面保護シート2とが貼り合わされて前面シート4Aを形成しているが、説明の都合上、これらレンチキュラーレンズシート1Aと前面保護シート2とを離した状態で図示している。従って、この実施例も、前面シート4Aとフレネルレンズシート3とからなる2枚構成であり、図1に示した第1の実施例と同様の構成をなしている。
【0089】
ここで、前面シート4Aを構成するレンチキュラーレンズシート1Aは、映像光入射面8Aが、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して多数配列した形状をなし、映像光出射面7Aが平面形状であって、この平面状の映像光出射面7Aに、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とする有限幅の光吸収帯11が、所定の等間隔で、映像光入射面8Aでのレンチキュラーレンズに等しい個数配列されている。
【0090】
そして、レンチキュラーレンズシート1Aと前面保護シート2とが、図1に示した第1の実施例と同様の方法により、貼り合わせて前面シート4Aが形成されている。
【0091】
図7は図6の水平面で切断してみた場合の横断面図であって、図6に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0092】
同図において、貼り合わせに使用する接着剤は約0.1mmの厚さをもっており、このため、レンチキュラーレンズシート1Aと前面保護シート2との間の光の透過部分には隙間が生じる。しかし、この実施例の作用は図1に示した第1の実施例と同様であり、外光の映り込みについては、前面保護シート2の映像光入射面6での内部反射光を大幅に低減できる。
【0093】
従って、外光の映り込みが少なく、室内灯などの外光がある場合でも、映像が観視しやすいし、スクリーンの表面が平面であるため、高級感があって傷が付きにくく、清掃が容易である。
【0094】
そして、レンチキュラーレンズシート1Aと前面保護シート2とを貼り合わせることによって従来よりも前面シート4Aの強度が増すため、前面保護シート2の厚さを2mmから1mmに薄くして軽量化が可能であり、また、透過型スクリーンを構成するシートの枚数は従来の3枚から2枚に低減したため、ディスプレイ装置に対する透過型スクリーンの取付け構造が単純なものとなる。
【0095】
また、この実施例においても、透過型スクリーンを構成する各シートの映像光入出射面での反射が低減するために、夫々のシートの映像光入出射面に反射防止膜を施すことにより、さらに映り込みの少ないものとすることもできる。
【0096】
図8は本発明による透過型スクリーンの第3の実施例の要部を示す斜視図であって、4Bは前面シート、25はフライアイレンズシート、26は映像光出射面、27は映像光入射面であり、前出図面に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0097】
同図において、フライアイレンズシート25と前面保護シート2とは貼り合わされて前面シート4Bを形成しているが、説明の都合上、これらフライアイレンズシート25と前面保護シート2とは離して図示している。
【0098】
この実施例も、フライアイレンズシート25と前面保護シート2とが貼り合わされてなる前面シート4Bと、フレネルレンズシート3とからなる2枚構成である。
【0099】
ここで、前面シート4Bを構成するフライアイレンズシート25の映像光入射面27は、フレネルレンズシート3側に凸状のマイクロレンズ素子をスクリーン画面の水平及び垂直方向に連続して並べた形状をなしており、映像光出射面26は、前面保護シート2側に凸状のマイクロレンズ素子をスクリーン画面の水平及び垂直方向に連続して並べた形状をなしている。そして、映像光出射面26のマイクロレンズ素子相互の境界部には、かかるマイクロレンズ素子よりも高く突き出した格子状の平面部が設けられ、その上に格子状の光吸収帯11が設けられている。この光吸収帯11の面積はフライアイレンズシート25の映像光出射面26の全面積の約50%とする。
【0100】
かかるフライアイレンズシート25と前面保護シート2とが、図4または図5に示した方法により、光吸収帯11で接着されて前面シート4Bが形成される。
【0101】
次に、この第3の実施例の作用について説明する。
【0102】
透過型スクリーン後方からの映像光は、まず、フレネルレンズシート3によってほぼ平行な光に変換され、フライアイレンズシート25に入射する。フライアイレンズシート25に入射した映像光はそのフライアイレンズによってスクリーン画面の水平及び垂直方向に拡散され、拡散された映像光は前面保護シート2を透過して観視者に到達する。
【0103】
また、スクリーン画面の外側から入射した室内の外光は、前面保護シート2の映像光出射面5で一部が反射されて表面反射光となる。前面保護シート2の内部に入射した外光は、その一部が映像光入射面6で反射されて内部反射光となる。ここで、前面保護シート2の映像光入射面6の全面積のうちの約50%がそのシート基材と屈折率の差の少ない接着剤を使用した光吸収帯11との接着面であるため、この接着面での界面反射率はフライアイレンズシート25と前面保護シート2とが離れている場合の0.039から0.0001へと1/100以下となり、この内部反射光の強度をフライアイレンズシート25と前面保護シート2とが離れている場合の約50%に低減させ、前面保護シート2全体での映り込みを約80%に改善できる。
【0104】
このように、この実施例でも、先の実施例と同様に、外光の映り込みが少くなく、室内灯などの外光がある場合でも、映像が観視しやすい。また、スクリーンの表面が平面であるため、高級感があって傷が付きにくく、清掃が容易である。
【0105】
そして、フライアイレンズシート25と前面保護シート2を貼り合わせることによって従来よりも前面シート4Bの強度が増すため、前面保護シート2の厚さを2mmから1mmに薄くして軽量化できるし、シートの枚数も従来の3枚から2枚に低減したため、ディスプレイ装置に対する透過型スクリーンの取付け構造が単純なものとなった。
【0106】
また、この実施例でも、各シートでの反射を低減するために、夫々のシートの入出射面に反射防止膜を施すことにより、さらに映り込みを少なくすることができる。
【0107】
図9は本発明による透過型スクリーンの第4の実施例の要部を示す斜視図であって、4Cは前面シート、25Aはフライアイレンズシート、26Aは映像光出射面、27Aは映像光入射面であり、前出図面に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0108】
同図において、フライアイレンズシート25Aと前面保護シート2とは貼り合わされて前面シート4Cを形成しているが、説明の都合上、これらフライアイレンズシート25Aと前面保護シート2とは離して図示している。
【0109】
この実施例も、フライアイレンズシート25Aと前面保護シート2とが貼り合わされてなる前面シート4Cと、フレネルレンズシート3とからなる2枚構成である。
【0110】
フライアイレンズシート25Aの映像光入射面27Aは、フレネルレンズシート3側に凸状のマイクロレンズ素子をスクリーン画面の水平及び垂直方向に連続して並べた形状をなしている。映像光出射面26Aの形状は平面であり、そこに格子状の光吸収帯11が設けられている。映像光出射面26Aでの光吸収帯11で囲まれた光透過部分は、映像光入射面27Aでのマイクロレンズ素子に夫々対向している。
【0111】
これらフライアイレンズシート25Aと前面保護シート2とは、図4または図5で示した方法により、光吸収帯11で接着されて、前面シート4Cが構成されている。
【0112】
かかる構成により、この実施例においても、先の第3の実施例と同様の効果が得られる。
【0113】
また、この実施例においても、各シートでの反射を低減するために、夫々のシートの映像光入出射面に反射防止膜を施すことにより、さらに映り込みを少なくすることもできる。
【0114】
図10は本発明による透過型スクリーンの第5の実施例の要部を示す斜視図であって、2Aは前面保護シート、6Aは光入射面、4Dは前面シートであり、図1に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0115】
同図において、レンチキュラーレンズシート1と前面保護シート2Aとが貼り合わされて前面シート4Dを構成しており、この前面シート4Dとフレネルシート3とにより、2枚構成となっている。
【0116】
ここで、前面保護シート2Aの光入射面6Aの形状は、スクリーン画面の水平方向を長手方向とする横長レンチキュラーレンズがスクリーン画面の垂直方向に連続して多数配列した形状をなしている。また、レンチキュラーレンズシート1は第1の実施例におけるものと同様である。
【0117】
図11は図10での光吸収帯11に沿って縦方向に切断してみたときの縦断面図であって、映像光の拡散状態を示す光線追跡図である。
【0118】
同図において、レンチキュラーレンズシート1によってスクリーン画面の水平方向の拡散された映像光は、前面保護シート2Aの光入射面6Aでの横長レンチキュラーレンズにより、スクリーン画面の垂直方向に拡散される。ここでは、横長レンチキュラーレンズによる光の垂直方向の拡散状態を明確に示すため、光拡散材による映像光の拡散を除いているが、実際には、レンチキュラーレンズシート1の内部で映像光は垂直方向に拡散されており、スクリーン画面の垂直方向の観視可能範囲は、この光拡散材と横長レンチキュラーレンズとの拡散作用が足し合わされたものとなる。
【0119】
この実施例でも、図1に示した第1の実施例と同様、前面保護シート2Aの光入射面6Aの面積のうちの50%は、そのシート基材と屈折率の差の少ない接着剤を使用した光吸収帯11との接着面であるから、この接着面での界面反射率は接着しない場合の0.039から0.0001となり、内部反射光の強度を接着しない場合の約50%に低減させて、前面保護シート2Aの映り込みを改善できる。
【0120】
また、前面保護シート2Aの光出射面5Aは平面であるため、光沢による高級感があって傷が付きにくく、清掃が容易である。
【0121】
さらに、レンチキュラーレンズシート1と前面保護シート2Aとを貼り合わせることによって従来よりも前面シート4Dの強度が増すため、前面保護シート2Aの厚さを2mmから1mmに薄形化して軽量化ができるほか、シートの枚数を従来の3枚から2枚に低減できるため、ディスプレイ装置に対するスクリーンの取付け構造が単純なものとなる。
【0122】
そして、前面保護シート2Aの横長レンチキュラーレンズの作用により、図1に示した第1の実施例に比べ、スクリーン画面の垂直方向の観視可能範囲がさらに広い特性が得られる。
【0123】
また、この実施例においても、各シートでの反射を低減するために、夫々のシートの入出射面に反射防止膜を施すことにより、さらに映り込みを少なくすることもできる。
【0124】
図12は図10での前面シート4Dの製造方法の一例を示すものであって、図4,図10に対応する部分には同一符号をつけている。
【0125】
同図において、図4に示した方法と同様にして得られたレンチキュラーレンズシート1での光出射面7の光吸収帯11に、接着剤塗布ロール20により、黒色の熱可塑性接着剤22が塗布され、その上に、さらに、前面保護シート圧着ロール21により、前面保護シート2Aの予め横長レンチキュラーレンズが成形されている光入射面6Aが熱圧着によって貼り合わされて、前面シート4Dが形成される。
【0126】
図13は本発明による透過型スクリーンの第6の実施例の要部を示す斜視図であって、2Bは前面保護シート、5Bは光出射面、6Bは光入射面、4Eは前面シートであり、図1に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0127】
同図において、この実施例においても、レンチキュラーレンズシート1と前面保護シート2Bとが貼り合わされて前面シート4Eが形成されており、この前面シート4Eとフレネルレンズシート3とで2枚構成となっている。
【0128】
ここで、前面保護シート4Eの光入射面6Bの形状が、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して多数配列した形状をなしており、これ以外の点では、図1に示した第1の実施例と同様である。
【0129】
そこで、スクリーン後方からの映像光は、まず、フレネルレンズシート3によってほぼ平行な光に変換され、次いで、レンチキュラーレンズシート1の縦長レンチキュラーレンズによってスクリーン画面の水平方向に拡散される。また、レンチキュラーレンズシート1の内部に練り込まれた光拡散材により、スクリーン画面の垂直方向にも拡散される。レンチキュラーレンズシート1によってスクリーン画面の垂直及び水平方向に拡散された映像光は、前面保護シート2Bの光入射面6Bの縦長レンチキュラーレンズにより、スクリーン画面の水平方向にさらに拡散される。
【0130】
この実施例も、図1に示した第1の実施例と同様、前面保護シート2Bの光入射面6Bの面積のうちの50%がそのシート基材と屈折率の差の少ない接着剤を使用した光吸収帯11との接着面であり、このため、この接着面での界面反射率は接着されていない場合の1/100以下となる。従って、内部反射光が接着されていない場合の約50%に低減し、前面保護シート2Bの映り込みを改善できる。また、前面保護シート2Bの光出射面5Bは平面であるため、光沢による高級感があって傷が付きにくく、清掃が容易である。
【0131】
さらに、レンチキュラーレンズシート1と前面保護シート2Bとを貼り合わせることによって貼り合わせない場合よりも前面シート4Eの強度が増すため、前面保護シート2Bの厚さを2mmから1mmに薄くして軽量化が可能となるし、シートの枚数が貼り合わせない場合の3枚から2枚に低減できるため、ディスプレイ装置に対するスクリーンの取付け構造が単純なものとなる。
【0132】
そして、前面保護シート2Bの縦長レンチキュラーレンズの作用により、図1に示した第1の実施例に比べ、スクリーン画面の水平方向の観視可能範囲がさらに広い特性が得られる。
【0133】
なお、この実施例でも、各シートでの反射を低減するために、夫々のシートの光入出射面に反射防止膜を施すことにより、さらに映り込みを少なくすることもできる。
【0134】
また、この実施例での前面シート4Eは、図12に示した方法で製造することができる。
【0135】
図14は本発明による透過型スクリーンの第7の実施例の要部を示す斜視図であって、2Cは前面保護シート、5Cは光出射面、6Cは光入射面、4Fは前面シートであり、図1に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0136】
同図において、この実施例においても、レンチキュラーレンズシート1と前面保護シート2Cとが貼り合わされて前面シート4Fが形成されており、この前面シート4Fとフレネルレンズシート3とで2枚構成になっている。ここで、この前面保護シート2Cの光入射面6Cの形状が擦りガラス状に微細な凸凹を成形した形状をなしている。
【0137】
そこで、フレネルレンズシート3から出射した映像光は、レンチキュラーレンズシート1の縦長レンチキュラーレンズによってスクリーン画面の水平方向に拡散される。また、レンチキュラーレンズシート1の内部に練り込まれた光拡散材により、スクリーン画面の垂直方向にも拡散される。レンチキュラーレンズシート1によってスクリーン画面の垂直及び水平方向に拡散された映像光は、前面保護シート2Cの光入射面6Cの擦りガラス状の微細な凸凹により、スクリーン画面の垂直及び水平方向にさらに拡散される。
【0138】
かかる構成により、この実施例でも、図1に示した第1の実施例の透過型スクリーンと同様に、前面保護シート2Cの光入射面6Cの面積のうちの50%は、シート基材と屈折率の差の少くない接着剤を使用した光吸収帯11との接着面であり、このため、この接着面での界面反射率は接着されない場合の1/100以下となり、内部反射光を接着されない場合の約50%に低減させ、前面保護シート2Cの映り込みを改善できる。また、前面保護シート2Cの光出射面5Cが平面であるため、光沢による高級感があって傷ず付きにくく、清掃が容易である。
【0139】
さらに、レンチキュラーレンズシート1と前面保護シート2Cを貼り合わせることによって貼り合わされない場合よりも前面シート4Fの強度が増すため、前面保護シート2Cの厚さを2mmから1mmに薄くした軽量化が可能となる。また、シートの枚数は貼り合わされない場合の3枚から2枚に低減できるため、ディスプレイ装置に対するスクリーンの取付け構造が単純なものとなる。
【0140】
そして、前面保護シート2Cの光入射面6Cの擦りガラス状の凸凹の拡散作用により、図1に示した第1の実施例に比べて、スクリーン画面の垂直及び水平方向の観視可能範囲のさらに広い特性が得られる。
【0141】
また、この実施例でも、各シートでの反射を低減するために、夫々のシートの光入出射面に反射防止膜を施すことにより、さらに映り込みを少くなくすることもできる。
【0142】
さらに、この実施例での前面シート4Fは、図12に示した方法で製造することができる。
【0143】
なお、上記各実施例では、フレネルレンズシート3の映像光入射面10を平面形状としたが、スクリーン画面の水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面の垂直方向に連続的に配置した形状としてもよい。これによると、フレネルレンズシート3によっても映像光がスクリーン画面の垂直方向に拡散される。
【0144】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、前面保護シートを追加しても、映像の明るさを低減させることなく、外光の映り込みを低減することができ、より見やすい映像を得ることができるし、該前面保護シートの光出射面が平面状のスクリーン画面を形成するから、品質感を高め、傷がつきにくくて清掃も容易となる。
【0145】
また、本発明によると、前面保護シートとレンチキュラーレンズシートとの貼り合わせにより、スクリーン強度が増すため、シートを薄型化して軽量化が可能となるし、シート枚数も従来の3枚から2枚へと低減するから、スクリーンの取付け構造も簡略化し、背面投写型ディスプレイ装置への組付け性能が向上する。
【0146】
さらに、本発明によると、レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとの貼り合わせを1つの装置で行なうことができるから、製造工程を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による透過型スクリーンの第1の実施例の要部を示す斜視図である。
【図2】
図1に示した第1の実施例の横断面図である。
【図3】
図1に示した第1の実施例での外光の反射を示す横断面図である。
【図4】
図1における前面シートの製造方法の一例を示す概略図である。
【図5】
図1における前面シートの製造方法の他の例を示す概略図である。
【図6】
本発明による透過型スクリーンの第2の実施例の要部を示す斜視図である。
【図7】
図6に示した第2の実施例の横断面図である。
【図8】
本発明による透過型スクリーンの第3の実施例の要部を示す斜視図である。
【図9】
本発明による透過型スクリーンの第4の実施例の要部を示す斜視図である。
【図10】
本発明による透過型スクリーンの第5の実施例の要部を示す斜視図である。
【図11】
図10に示した第5の実施例での光の拡散状態の光線追跡を示す図である。
【図12】
図10における前面シートの製造方法の一例を示す概略図である。
【図13】
本発明による透過型スクリーンの第6の実施例の要部を示す斜視図である。
【図14】
本発明による透過型スクリーンの第7の実施例の要部を示す斜視図である。
【図15】
背面型投写ディスプレイ装置の光学系を示す概略図である。
【図16】
従来の透過形スクリーンの要部を示す斜視図である。
【図17】
レンチキュラーレンズシートの特性を示す横断面図である。
【図18】
前面保護シートを持つ従来の透過形スクリーンの要部を示す斜視図である。
【図19】
図18における前面保護シートの外光の反射を示す横断面図である。
【符号の説明】
1,1A レンチキュラーレンズシート
2,2A,2B,2C 前面保護シート
3 フレネルレンズシート
4,4A,4B,4C,4D,4E,4F 前面シート
5,5A,5B,5C 映像光出射面
6,6A,6B,6C 映像光入射面
7,7A 映像光出射面
8,8A 映像光入射面
9 映像光出射面
10 映像光入射面
11 光吸収帯
12 外光
13 表面反射光
14,15 内部反射光
16 押出し成形機(エクストルーダ)
17 シート基材
18 映像光出射面成形ロール
19 映像光入射面成形ロール
20 接着剤塗布ロール
21 前面保護シート圧着ロール
22 熱可塑性接着剤
23 紫外線照明
24 紫外線硬化接着剤
25,25A フライアイレンズシート
26,26A 映像光出射面
27,27A 映像光入射面
34 映像光
 
訂正の要旨 ▲1▼訂正事項a
特許明細書(特許第3270261号明細書、以下同じ)における請求項1の記載を以下の通り訂正する。
「【請求項1】 フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、前記映像光出射面の前記映像光線が通過する領域を平面形状とし、
前記前面保護シートの映像光入射面及び映像光出射面は平面であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面に設けられた前記光吸収帯と前面保護シートとを接着剤を用いて貼り合わせることによって、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」
▲2▼訂正事項b
特許明細書における請求項3の記載を以下の通り訂正する。
「【請求項3】 フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光出射面は平面であって、前記前面保護シートの映像光入射面が、スクリーン画面の水平方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面の垂直方向に連続して配置した形状であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」
▲3▼訂正事項c
特許明細書における請求項4の記載を以下の通り訂正する。
「【請求項4】 フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光出射面は平面であって、前記前面保護シートの映像光入射面が、スクリーン画面の垂直方向を長手方向とするレンチキュラーレンズを複数個、スクリーン画面の水平方向に連続して配置した形状であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」
▲4▼訂正事項d
特許明細書における請求項5の記載を以下の通り訂正する。
「【請求項5】 フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートと前面保護シートとを有し、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つ面にはフレネル凸レンズが形成されており、
前記レンチキュラーレンズシートは、映像光入射面がスクリーン画面の垂直方向を長手方向とする縦長レンチキュラーレンズをスクリーン画面の水平方向に連続して複数配列した形状をなして、前記レンチキュラーレンズの焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光出射面は平面であって、前記前面保護シートの映像光入射面が、擦りガラス状に微細な凸凹を持つ形状をなし、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
前記レンチキュラーレンズシートと前面保護シートとが前記レンチキュラーレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」
▲5▼訂正事項e
特許明細書における請求項13の記載を以下の通り訂正する。
「【請求項13】 フレネルレンズシートとフライアイレンズシートと前面保護シートとを含み、映像発生源側から入射する映像光線を透過して映像観視側に出射する透過型スクリーンにおいて、
前記フレネルレンズシートの少なくとも1つの面にフレネル凸レンズが形成されており、
前記フライアイレンズシートは、映像光入射面がマイクロレンズ素子をスクリーン画面の水平及び垂直方向に連続して並べた形状をなして、前記マイクロレンズ素子の焦点位置がその映像光出射面とほぼ同じとなるようにし、前記映像光出射面の前記映像光線が通過しない領域に光吸収帯が設けられ、
前記前面保護シートの映像光入射面及び映像光出射面が平面であり、かつ前記前面保護シートのD線(波長589.3nmの光)に対する透過率Tが、
0.4≦T<1.0
なる条件を満たし、
かつ前記フライアイレンズシートと前面保護シートとが前記フライアイレンズシートの前記映像光出射面での光吸収帯で、接着剤を用いて貼り合わされて、1枚の前面シートを形成し、
前記接着剤は、該接着剤によって貼り付けられた前記前面保護シートと前記光吸収帯との接着面における光反射率が、前記前面保護シートの空気界面における光反射率の1/100以下となるような屈折率を有することを特徴とする透過型スクリーン。」
▲6▼訂正事項f
特許明細書第8頁右欄第20行(段落番号【0059】)の「全面シート1の映像光入射面6」との記載を、「保護シート2の映像光入射面6」に訂正する。
異議決定日 2003-03-17 
出願番号 特願平6-269787
審決分類 P 1 651・ 113- YA (G03B)
P 1 651・ 121- YA (G03B)
P 1 651・ 16- YA (G03B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 辻 徹二
柏崎 正男
登録日 2002-01-18 
登録番号 特許第3270261号(P3270261)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 透過型スクリーンとその製造方法及びそれを用いた背面投写型画像ディスプレイ装置  
代理人 作田 康夫  
代理人 菅井 英雄  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 内田 亘彦  
代理人 青木 健二  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 米澤 明  
代理人 白井 博樹  
代理人 韮澤 弘  
代理人 作田 康夫  

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