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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  F23N
審判 全部申し立て 2項進歩性  F23N
管理番号 1078050
異議申立番号 異議2000-74584  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-22 
確定日 2003-06-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第3056968号「燃焼装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3056968号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3056968号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成7年3月31日に特許出願され、平成12年4月14日にその発明について特許の設定登録がなされ、平成12年12月22日に、その特許について、異議申立人野口昭仁により特許異議申立がなされ、平成14年3月29日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年6月11日に特許異議意見書が提出されたものである。

2.本件の発明
特許第3056968号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】制御情報に基づいて、バーナへの燃料供給量を変更調節する燃料供給量調整手段と、
前記バーナの目標燃焼量を指令する目標燃焼量指令手段と、
この目標燃焼量指令手段の指令情報に基づいて、前記バーナの燃焼量を前記目標燃焼量にするための制御情報を、前記燃料供給量調整手段に出力する燃焼制御手段とが備えられている燃焼装置であって、
前記燃料供給量調整手段における実際の調整作動情報を検出する実作動情報検出手段と、
前記目標燃焼量指令手段により指令された目標燃焼量に対応する、前記燃料供給量調整手段における適正作動情報を予め記憶する記憶手段と、
前記燃料供給量調整手段が備えられる前記バーナへの燃料供給路を開放する状態と、前記燃料供給路を遮断する状態とに変更自在な供給路開閉手段とが備えられ、
前記燃料供給量調整手段は、供給される電流値に基づいて、バーナへの燃料供給量を変更調節する電気式の調整操作手段と、前記制御情報に基づいて、前記調整操作手段に対する供給電流を調整する電流量調整手段とを備えて構成され、
前記実作動情報検出手段は、前記調整作動情報として、前記調整操作手段に供給される実供給電流を検出するように構成され、前記記憶手段は、前記適正作動情報として、前記目標燃焼量指令手段より指令された目標燃焼量に対応する前記調整操作手段への適正供給電流を記憶するように構成され、
前記燃焼制御手段は、
燃焼開始指令に基づいて、前記燃料供給量調整手段に前記制御情報を出力すると共に、前記実作動情報検出手段により検出された前記調整作動情報と、前記記憶手段にて記憶されている適正作動情報とに基づいて、前記燃料供給量調整手段が異常であるか否かを判別するように構成され、
前記燃料供給量調整手段が異常でないことを判別すると、前記供給路開閉手段を前記開放状態にさせると共に、前記バーナに対する点火手段を作動させる点火制御を実行するように構成され、且つ、前記燃料供給量調整手段が異常であることを判別すると、前記供給路開閉手段を前記遮断状態に維持させると共に、前記点火制御を行わないように構成されている燃焼装置。
【請求項2】前記バーナが、水加熱用の熱交換器を加熱するように構成され、且つ、前記熱交換器による加熱後の湯温に対する目標温度を設定する湯温設定手段が備えられ、
前記目標燃焼量指令手段は、前記目標温度に基づいて前記目標燃焼量を指令するように構成されている請求項1記載の燃焼装置。

3.特許異議申立理由の概要
特許異議申立人野口昭仁は、証拠として、
・甲第1号証:特開平8-261454号公報
(特願平7-61127号 平成7年3月20日出願)
・甲第2号証:特公平2-58513号公報
・甲第3号証:特開平5-296452号公報
を引用し、本件発明1及び2は、甲第1号証の願書に最初に添付した明細書または図面に記載された発明と同一であり、これらの発明の特許は特許法第29条の2第1項の規定に違反してなされたものである。また、本件発明1及び2は、甲第2号及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないものである。したがって、本件発明1及び2の特許は特許法第113条第2項の規定により取り消すべき旨主張している。

4.特許法第29条の2違反について
4-1 先願:特願平7-61127号(出願日:平成7年3月20日)
(特開平8-261454号公報参照、公開日:平成8年10月11日)(甲第1号証)

4-2 先願明細書
本件特許の出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平7-61127号(特開平8-261454号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、下記の記載がある。
4-2-1「図1において、1はマイクロコンピュータ、2は比例弁駆動回路を示し、11はマイクロコンピュータ1からの燃焼量制御信号を一方の入力端子に受けるトランジスタ駆動用のオペアンプ、12はこのオペアンプ11の出力側に抵抗13を介してベースが接続された比例弁駆動用のトランジスタである。
また、14は電源と上記トランジスタ12のコレクタとの間に接続された比例弁コイルが発生するサージ吸収用ダイオード、15は上記トランジスタ12のエミッタとアースとの間に接続されたエミッタ側電圧を検出するための抵抗、16は上記トランジスタ12のエミッタと上記オペアンプ11の他方の入力端子との間に接続された抵抗である。
さらに、上記ダイオード14には、上記給湯器本体B側に設けられた上記比例弁3の比例弁コイル3aが並列接続されている。
また、この発明ではマイクロコンピュータ1のアナログ入力端子と上記トランジスタ12のエミッタに接続された抵抗16との間に、比例弁電流によって抵抗15に得られる電圧を入力する抵抗21が接続されている。
また、上記比例弁3のバーナへの燃料供給路には、図2に示すように、マイクロコンピュータ1の制御出力を受けて動作する遮断弁駆動回路31により開閉制御される燃料遮断弁22が直列接続されている。」(第【0027】段落〜第【0031】段落)
4-2-2「・・・比例弁3の比例弁コイル3aに流れる電流は、上記トランジスタ12を通して上記抵抗15に流れて電圧変換され、この電圧は抵抗16および抵抗21を介してマイクロコンピュータ1のアナログ入力端子に入力される。
すなわち、比例弁電流に対応した電圧信号が上記マイクロコンピュータ1にフィードバックされ、このマイクロコンピュータ1が出力する電圧をVDAとすると、比例弁電流ILVはILV≒VDA/R1であり、フィードバックされる電圧がVADとすると、VAD≒VDAとなるように制御が行われる。
この制御動作を図3のフローチャートに従って説明する。まず、燃料のバーナ4への供給は、図2に示すように、燃料遮断弁22を開かなければ行えないようになっているので、燃焼開始前(遮断弁閉状態)に比例弁3へ電流を流し、フィードバックされる電流をチェックすればよい。
すなわち、まず、燃料遮断弁22を閉じた状態にしておいて(ステップST1)、燃焼開始の要求があるか否かを判定し(ステップST2)、燃焼要求があった場合には、比例弁電流を最小値にセットする(ステップST3)。すなわち、VAD(VDAの誤記)=0%とする。
このとき、上記抵抗15の両端から上記マイクロコンピュータ1のアナログ入力端子に入力される電圧VADが正常か否か、つまり、VDA-α<VAD<VDA+αが成り立つか否かを判定する(ステップST4)。
この判定の結果、正常であれば、次に、比例弁電流を最大値にセットする(ステップST5)。このとき、VDA=100%である。ここで、上記電圧VADが正常か否かを判定し(ステップST6)、正常である場合には比例弁電流を点火レベルにセットする(ステップST7)。
この点火レベルにセットした後にも、上記電圧VADが正常と判定された場合には(ステップST8)、初めて点火動作に入ることとなる。
一方、上記ステップST4,ステップST6,ステップST8の判定処理で電圧VADが異常となった場合には、本来フィードバックされるべき電圧が得られなかったとして、比例弁駆動回路2または比例弁3を異常と判定して(ステップST9)、点火動作への移行を禁止する。
この禁止処理によって、バーナ4における燃料の不完全燃焼,爆発着火あるいは異常な高温出湯を未然に防止することができる。」(第【0032】段落〜第【0040】段落)
4-2-3「・・・燃焼動作中においては、制御装置AはPID演算によって出湯温度が設定温度に一致するように制御しており、従って、燃焼開始から一定時間経過すれば、出湯温度は上記設定温度と予め定めた許容温度γとの和または差の範囲、すなわち設定温度±γの範囲内に入るはずである。」(第【0044】段落)

4-3 対比
本件発明1と先願明細書に記載された発明を対比すると、
先願明細書に記載された「比例弁駆動回路」、「燃料遮断弁」、「比例弁駆動回路」及び「比例弁」は、本件発明1の「燃料供給量調整手段」、「供給路開閉手段」、「電流量調整手段」及び「調整操作手段」にそれぞれ相当する。
先願明細書に記載された「マイクロコンピュータ」はトランジスタ駆動用のオペアンプに燃焼量制御信号を出力するので、本件発明1の「目標燃焼量指令手段」に相当する。
先願明細書に記載された「・・・マイクロコンピュータ1のアナログ入力端子と上記トランジスタ12のエミッタに接続された抵抗16との間に、比例弁電流によって抵抗15に得られる電圧を入力する抵抗21が接続されている」回路は、本件発明1の「燃料供給量調整手段における実際の調整作動情報を検出する実作動情報検出手段」に相当する。
先願明細書に記載された「比例弁の比例弁コイルに流れる電流は、上記トランジスタを通して抵抗15に流れて電圧変換され、この電圧は抵抗16および抵抗21を介してマイクロコンピュータのアナログ入力端子に入力される」構成は、本件発明1の実作動情報検出手段としての「調整作動情報として、調整操作手段に供給される実供給電流を検出する構成」に相当する。
先願明細書に記載された「制御動作を図3のフローチャートに従って説明する。まず、燃料のバーナ4への供給は、図2に示すように、燃料遮断弁22を開かなければ行えないようになっているので、燃焼開始前(遮断弁閉状態)に比例弁3へ電流を流し、フィードバックされる電流をチェックすればよい。・・・(中略)・・・電圧VADが正常と判定された場合には(ステップST8)、初めて点火動作に入ることとなる。一方、上記ステップST4,ステップST6,ステップST8の判定処理で電圧VADが異常となった場合には、本来フィードバックされるべき電圧が得られなかったとして、比例弁駆動回路2または比例弁3を異常と判定して(ステップST9)、点火動作への移行を禁止する。」は、本件発明1の「燃焼開始指令に基づいて、前記燃料供給量調整手段に前記制御情報を出力すると共に、前記実作動情報検出手段により検出された前記調整作動情報に基づいて、前記燃料供給量調整手段が異常であるか否かを判別するように構成され、前記燃料供給量調整手段が異常でないことを判別すると、前記供給路開閉手段を前記開放状態にさせると共に、前記バーナに対する点火手段を作動させる点火制御を実行するように構成され、且つ、前記燃料供給量調整手段が異常であることを判別すると、前記供給路開閉手段を前記遮断状態に維持させると共に、前記点火制御を行わない」に相当する。
したがって、両者は、
「制御情報に基づいて、バーナへの燃料供給量を変更調節する燃料供給量調整手段と、
前記バーナの目標燃焼量を指令する目標燃焼量指令手段と、
この目標燃焼量指令手段の指令情報に基づいて、前記バーナの燃焼量を前記目標燃焼量にするための制御情報を、前記燃料供給量調整手段に出力する燃焼制御手段とが備えられている燃焼装置であって、
前記燃料供給量調整手段における実際の調整作動情報を検出する実作動情報検出手段と、
前記燃料供給量調整手段が備えられる前記バーナへの燃料供給路を開放する状態と、前記燃料供給路を遮断する状態とに変更自在な供給路開閉手段とが備えられ、
前記燃料供給量調整手段は、供給される電流値に基づいて、バーナへの燃料供給量を変更調節する電気式の調整操作手段と、前記制御情報に基づいて、前記調整操作手段に対する供給電流を調整する電流量調整手段とを備えて構成され、
前記実作動情報検出手段は、前記調整作動情報として、前記調整操作手段に供給される実供給電流を検出するように構成され、
前記燃焼制御手段は、
燃焼開始指令に基づいて、前記燃料供給量調整手段に前記制御情報を出力すると共に、前記燃料供給量調整手段が異常であるか否かを判別するように構成され、
前記燃料供給量調整手段が異常でないことを判別すると、前記供給路開閉手段を前記開放状態にさせると共に、前記バーナに対する点火手段を作動させる点火制御を実行するように構成され、且つ、前記燃料供給量調整手段が異常であることを判別すると、前記供給路開閉手段を前記遮断状態に維持させると共に、前記点火制御を行わないように構成されている燃焼装置。」
である点で一致し、次の点で相違している。
イ.本件発明1の燃焼装置は「目標燃焼量指令手段により指令された目標燃焼量に対応する、燃料供給量調整手段における適正作動情報を予め記憶する記憶手段」であって「記憶手段は、適正作動情報として、目標燃焼量指令手段より指令された目標燃焼量に対応する調整操作手段への適正供給電流を記憶するように構成されたもの」であるのに対し、先願明細書には、かかる構成が記載されていない点。(この点を以下、「相違点イ」という。)
ロ.本件発明1の判定手段が「記憶手段に記憶された目標燃焼量指令手段より指令された目標燃焼量に対応する調整操作手段への適正供給電流である適正作動情報と、実作動情報検出手段により検出された調整作動情報とを比較」して正常と異常を判定しているのに対し、先願明細書に記載された発明の判定手段は、「マイクロコンピュータが出力する電圧VDAと比例弁電流ILVによりフィードバックされる電圧VADとを比較」して正常と異常の判定をしている点。(この点を以下、「相違点ロ」という。)

4-4 判断
相違点イについて検討する。
先願明細書に記載された発明には、コンピュータからの指令電圧と比例弁に流れる電流を回路的に指令電圧と等しいフィードバック電圧を発生するように変換回路を構成したものであり、コンピュータの出力電圧による比例弁の作動電流をあらかじめ記憶している記憶手段を設けたものではない。指令電圧に対する検出電流を回路的に等しい電圧となるようにフィードバックを構成したものから、指令電圧に対する検出電流を記憶しておく記憶手段を設けることが、先願明細書または図面の記載から自明の事項であるとも、当業者にとって周知の技術的手段であるとも認められない。
したがって、相違点ロについて検討するまでもなく、本件発明1は先願明細書又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない。

4-5 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1をさらに限定したものであるから、上記と同様の理由により先願明細書又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない。

5.特許法第29条第2項違反について
5-1 刊行物
刊行物1:特公平2-58513号公報(甲第2号証)
刊行物2:特開平5-296452号公報(甲第3号証)

5-2 刊行物に記載された発明
刊行物1には、図面と共に下記の記載がある。
5-2-1「・・・・燃料ガスを制御する場合比例制御弁3によって制御されたガスはバーナーへと流入して燃焼し熱交換器(いずれも図示せず)によって水を湯にかえる。その湯温は負荷温度信号Fsとして検出され、設定温度信号Fdと比較器4で比較され偏差信号に応じて比例制御弁3が制御される。つまり設定温度信号Fdとなるような比例制御弁3によって燃焼量が制御される・・・・」(第2欄第17行〜第24行)
5-2-2「・・・・流量制御装置は通電量に応じて流体流量を制御する比例制御弁と、この比例制御弁に装備され、弁の動作状態を検出する動作状態検出器と、前記比例制御弁の上流に設けた閉止弁装置と比例弁駆動回路を有するとともに、前記比例制御弁への通電初期に前記閉止弁装置を閉弁した状態で比例制御弁にパルス入力を印加するパルス入力手段と、そのパルス入力の有無とそれに応じて得られる前記動作状態検出器の信号との組合せにより比例制御弁の異常を判別する異常判別手段を有し、正常時には前記閉止弁装置を開として比例制御動作を行ない、異常時は閉止弁装置を閉保持する安全回路を設けて構成したもの・・・・」(第3欄第13行〜第26行)
5-2-3「14は弁体7と共動するプランジャ13の上下動に応じて接点がON-OFFするマイクロスイッチ等からなる動作状態検出器であり取付け板15によってヨーク11の上面部に固定されている。動作状態検出器14は弁閉時はOFF、また弁全開時はONとなるよう設定されておりその信号は安全回路16aに入力される。」(第3欄第37行〜第43行)

刊行物2には、図面と共に下記の記載がある。
5-2-4「本発明は、主に給湯器においてガス、空気、水、湯などの流量を制御する比例弁制御装置に関する。」(第【0001】段落)
5-2-5「・・・・本発明の比例弁制御装置は、可動部と、可動部の位置に応じて流体の流量を制御する比例弁と、可動部を一定の強さで押圧するばね部と、可動部をばね部と逆方向に通電電流に比例した強さで引くソレノイド部と、ソレノイド部に電流を供給する定電流回路と、ソレノイド部の通電電流を決定し定電流回路に出力する制御部と、ソレノイド部の通電電流を検出する電流検出部と、電流検出部と制御部の出力を比較しそれぞれの相関関係が所定の範囲に入らないときソレノイド部への駆動電流を強制的に遮断する停止部を備える。」(第【0010】段落)
5-2-6「・・・・可動部は比例弁の内部において流体の通る開口部を開閉し、ばね部は可動部を一定の強さで全閉方向に押しつけ、ソレノイド部は可動部を通電電流に比例した強さでばね部と逆方向に引っ張り、定電流回路はソレノイド部に所定の電流を通電し、制御部は定電流回路の通電電流を設定し、電流検出部はソレノイド部の通電電流を検出し、停止部は制御部の設定した通電電流と前記電流検出部の検出した通電電流を比較し、それぞれの相関関係が所定の範囲に入っていないときはソレノイド部への通電を強制的に遮断するように作用する。」(第【0011】段落)
5-2-7「図1は本発明の一実施例における比例弁制御装置のブロック図である。定電流回路7は制御部6の設定に基づきソレノイド部4に通電する。比例弁2中の可動部1は、ばね部3とソレノイド部4の力が釣り合った所に位置し、そのときの開口に応じた流量が得られる(以上、従来例と同じ構成)。定電流回路7の出力電流、すなわちソレノイド部4の通電電流Icは、エミッタホロワ回路10のエミッタ電圧Veとエミッタ抵抗ReからIc=Ve/Reとして求められる。電流検出回路13はエミッタ電圧Veをディジタル信号に変換するA/D変換器14とA/D変換器14を保護するためのクリップ回路15からなる。
図4(図2の誤記)は定電流回路7の入力電流Iiに対する出力電流Icの入出力特性図である。図中の曲線25,26,27は制御系のばらつき範囲を示し、中央値は曲線25、最大値は曲線26、最小値は曲線27で示す。なお、Imin以下はオペアンプの飽和領域、Imax以上はクリップ回路15の動作範囲で異常検出動作範囲外とする。図4(図2の誤記)において、動作点が曲線26,27、上限Imax,下限Iminで囲まれた範囲外にあるときは、制御系が異常であるといえる。
例えば、ボルテージホロワ回路9の故障でオペアンプの入力にかかわらず出力が高電位にラッチされてしまうと、入力電流Iiの値にかかわらず出力電流Icは最大値Imaxとなる。それを電流検出部13を介して異常停止部16が検出して直ちに停止スイッチトランジスタ12をオンする。その結果、異常が発生して危険な状態となる前に、エミッタホロワ回路10をオフし比例弁2を即時に遮断する。」(第【0012】段落〜第【0014】段落)

5-3 対比
本件発明1と、刊行物1に記載されたものを比較すると、刊行物1に記載された発明の「動作状態検出器」、「閉止弁装置」及び「比例制御弁」は、本件発明1の「実作動情報検出手段」、「供給路開閉手段」及び「調整操作手段」にそれぞれ相当する。
そして、刊行物1には従来例として、比例制御弁は燃料ガスを制御するものであって、水加熱の場合、湯温は負荷温度信号Fsとして検出され、設定温度信号Fdと比較器4で比較され偏差信号に応じて比例制御弁3が制御されること、つまり設定温度信号Fdとなるような比例制御弁3によって燃焼量が制御されるものが記載され、刊行物1に記載された流量制御装置は燃焼装置に適用される場合も実質的に記載されていると認められるので、両者は、
「制御情報に基づいて、バーナへの燃料供給量を変更調節する燃料供給量調整手段と、
前記バーナの目標燃焼量を指令する目標燃焼量指令手段と、
この目標燃焼量指令手段の指令情報に基づいて、前記バーナの燃焼量を前記目標燃焼量にするための制御情報を、前記燃料供給量調整手段に出力する燃焼制御手段とが備えられている燃焼装置であって、
前記燃料供給量調整手段における実際の調整作動情報を検出する実作動情報検出手段と、
前記燃料供給量調整手段が備えられる前記バーナへの燃料供給路を開放する状態と、前記燃料供給路を遮断する状態とに変更自在な供給路開閉手段とが備えられ、
前記燃料供給量調整手段は、供給される電流値に基づいて、バーナへの燃料供給量を変更調節する電気式の調整操作手段と、前記制御情報に基づいて、前記調整操作手段に対する供給電流を調整する電流量調整手段とを備えて構成され、
前記燃焼制御手段は、
燃焼開始指令に基づいて、前記燃料供給量調整手段が異常であるか否かを判別するように構成され、
前記燃料供給量調整手段が異常でないことを判別すると、前記供給路開閉手段を前記開放状態にさせ、且つ、前記燃料供給量調整手段が異常であることを判別すると、前記供給路開閉手段を前記遮断状態に維持させるように構成されている燃焼装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
ハ.本件発明1の燃焼装置は「目標燃焼量指令手段により指令された目標燃焼量に対応する、燃料供給量調整手段における適正作動情報を予め記憶する記憶手段」であって「記憶手段は、適正作動情報として、目標燃焼量指令手段より指令された目標燃焼量に対応する調整操作手段への適正供給電流を記憶するように構成されたもの」であるのに対し、先願明細書には、かかる構成が記載されていない点。(この点を以下、「相違点ハ」という。)
ニ.刊行物1に記載された発明の動作状態検出器は「弁の動作状態をプランジャの上下動に応じて接点がON-OFFする」ものであるが、本件発明1の実作動情報検出手段は、「調整作動情報として、調整操作手段に供給される実供給電流を検出する」ものである点。(この点を以下、「相違点ニ」という)
ホ.本件発明1の燃焼装置の異常判別手段は、「燃焼開始指令に基づいて、前記燃料供給量調整手段に前記制御情報を出力すると共に、前記実作動情報検出手段により検出された前記調整作動情報と、前記記憶手段にて記憶されている適正作動情報とに基づいて、前記燃料供給量調整手段が異常であるか否かを判別する」ものであるが、刊行物1に記載された発明の異常判別手段は、「比例制御弁への通電初期に前記閉止弁装置を閉弁した状態で比例制御弁にパルス入力を印加するパルス入力手段と、そのパルス入力の有無とそれに応じて得られる前記動作状態検出器の信号との組合せにより比例制御弁の異常を判別する」ものである点。(この点を以下、「相違点ホ」という)
ヘ.本件発明1の燃焼装置は「燃料供給量調整手段が異常でないことを判別すると、前記バーナに対する点火手段を作動させる点火制御を実行するように構成され、前記燃料供給量調整手段が異常であることを判別すると前記点火制御を行わない」ものであるが、刊行物1には、かかる構成が記載されていない点。(この点を以下、「相違点ヘ」という。)

5-4 判断
相違点ハについて検討する。
刊行物2には、「給湯器において、ガス、空気、水、湯などの流量を制御する比例弁制御装置に関し、比例弁制御装置は、可動部と、可動部の位置に応じて流体の流量を制御する比例弁と、・・・(中略)・・・ソレノイド部に電流を供給する定電流回路と、ソレノイド部の通電電流を決定し定電流回路に出力する制御部と、ソレノイド部の通電電流を検出する電流検出部と、電流検出部と制御部の出力を比較しそれぞれの相関関係が所定の範囲に入らないときソレノイド部への駆動電流を強制的に遮断する停止部を備え」、「ソレノイド部の通電電流を検出する電流検出部と、制御部の出力を比較しそれぞれの相関関係制御出力が所定の範囲に入っているかどうかで比例弁が正常か異常かを判別する。その判別の基準は図2に示された範囲で正常と異常を判別する」旨の記載はあるものの、電流検出部と制御部の出力の相関関係の比較手段の詳細は記載されていない。
比較手段について、上記相違点ハに記載した記憶手段を設けることは、刊行物2の明細書及び図面の記載から自明の事項であるとはいえないし、制御手段において、指令情報を制御情報に変換するための記憶手段を適宜設けることは周知技術であるが、指令手段の指令情報により制御される操作対象の適性作動情報を予め記憶しておく記憶手段を設けることは当業者にとって周知の技術であるとはいえないので、刊行物1に記載された、ソレノイドの動作状態を検出する動作状態検出器を、刊行物2に記載された、ソレノイド部の通電電流を検出する電流検出部に変更し、さらに、刊行物2に記載されたソレノイドの電流検出部と制御部の出力の相関関係が所定の範囲に入らないかどうかで正常か異常かを判別する比較手段を構成するために、上記相違点ハに記載した記憶手段を設けるようにすることは、当業者が容易にできたものであるとはいえない。
したがって、相違点ニ〜相違点ヘについて検討するまでもなく、本件発明1は上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5-5 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1をさらに限定したものであるから、上記と同様の理由により、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-05-21 
出願番号 特願平7-75570
審決分類 P 1 651・ 16- Y (F23N)
P 1 651・ 121- Y (F23N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 茂夫  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 佐野 遵
長浜 義憲
登録日 2000-04-14 
登録番号 特許第3056968号(P3056968)
権利者 株式会社ハーマン
発明の名称 燃焼装置  
代理人 北村 修一郎  

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