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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない E05F |
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管理番号 | 1078717 |
審判番号 | 無効2001-35156 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-07-11 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-04-09 |
確定日 | 2003-03-31 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3052203号発明「自閉式引戸の全開保持装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 出願(特願平10-368334号) 平成10年12月25日 特許権の設定登録(特許第3052203号) 平成12年 4月 7日 本件審判の請求(無効2001-35156号) 平成13年 4月 9日 答弁書 平成13年 7月25日 訂正請求書(その後、取り下げ) 平成13年 7月25日 弁ぱく書 平成13年10月29日 無効理由通知(起案日) 平成14年 6月18日 意見書 平成14年 8月21日 訂正請求書 平成14年 8月21日 弁ぱく書 平成14年12月17日 第2.訂正の適否について 1.訂正の内容 被請求人が求めている、平成14年8月21日提出の訂正請求書による訂正の内容は、次の訂正事項(1)〜(8)からなる。 訂正事項(1) 特許請求の範囲の請求項1を 「【請求項1】戸体を開ロ部の開放時に壁内の戸袋部に引き込み収納する自閉式引戸であって、 開ロ部上方から壁内の戸袋部上方に跨って上枠を設け、 該上枠の前面で開ロ部上方の部位に点検カバーを設け、 該上枠に戸体を走行自在に吊持するハンガーレールを、戸袋部上方の部位では上枠に固定した受金具に戸尻側端部を差し込むだけで係止し、開ロ部上方の部位では上枠に螺子止めすることで、メンテナンス時に取外し可能に取付け、 通常時には戸体を全開位置に保持し、且つ、火災時には配線コードを通じて送られる火災報知設備からの電気信号により戸体の保持を解除する全開保持装置を、開□部上方の上枠に前記ハンガーレールの上方に位置させて設置し、 被保持具を戸体の戸先側引き残し部の上方に取付けたことを特徴とする自閉式引戸。」と訂正する。 訂正事項(2) 発明の名称を「自閉式引戸」と訂正する。 訂正事項(3) 明細書の段落【0001】を 「【発明の属する技術分野】本発明は、戸体を開□部の開放時に壁内に引き込み収納する自閉式引戸に関する。」と訂正する。 訂正事項(4) 明細書の段落【0004】を 「本発明は上記課題を解決すべく創作されたもので、戸体を開□部の開放時に壁内に引き込み収納する白閉式引戸において、戸袋部に点検パネルや、専用の点検口を設けなくとも全開保持装置の点検や調整ができる自閉式引戸を提供することを目的とする。」と訂正する。 訂正事項(5) 明細書の段落【0005】を 「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明が採用した技術手段は、戸体を開□部の開放時に壁内の戸袋部に引き込み収納する自閉式引戸であって、開□部上方から壁内の戸袋部上方に跨って上枠を設け、該上枠の前面で開□部上方の部位に点検カバーを設け、該上枠に戸体を走行自在に吊持するハンガーレールを、戸袋部上方の部位では上枠に固定した受金具に戸尻側端部を差し込むだけで係止し、開□部上方の部位では上枠に螺子止めすることで、メンテナンス時に取外し可能に取付け、通常時には戸体を全開位置に保持し、且つ、火災時には配線コードを通じて送られる火災報知設備からの電気信号により戸体の保持を解除する全開保持装置を開ロ部上方の上枠に前記ハンガーレールの上方に位置させて設置し、被保持具を戸体の戸先側引き残し部の上方に取付けたことを特徴とするものである。」と訂正する。 訂正事項(6) 明細書の段落【0009】を 「ハンガーレール2は、断面略コ字状のレール受台21と該レール受台21の垂直面に固着された断面略J字状のレール本体22とからなり、戸尻側端部を垂直辺6bに固定された受金具4に差し込んで係止させ、開ロ部Aの上方に位置する戸先側の部位(点検カバー15を取り外して作業可能な部位)を螺子で螺着することで垂直辺6bに取付けられている。該ハンガーレール2は、開ロ部A及び点検カバー15を取り外した際の開口から手の届かない壁内においては螺子等で取付けを行わず、前記受金具4に戸尻側端部を差し込むだけの構造としたので、戸先側部位の螺子を取り外ずして、全体を戸先側に引き出すだけで取り外すことが出来る。」と訂正する。 訂正事項(7) 明細書の段落【0013】を 「前述の被保持具17は、断面略逆L字状の取付板17aと該取付板の上辺に固定されたローラ体17bとからなり、全開時に該ローラ体17bが前記傾斜面16dに当接するように位置させて戸体1に取付けられている。具体的には、戸体1の戸先側であって全開時に開ロ部Aに引き残しとなる戸先側引き残し部1’の上方に戸先側ハンガーローラ11を利用して取付けられており、少なくとも戸体1の全開時に該ローラ体17bが前記傾斜面16dより戸尻側に位置するように取付ける必要がある。」と訂正する。 訂正事項(8) 明細書の段落【0016】を 「【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば、戸体を開□部の開放時に壁内の戸袋部に引き込み収納する自閉式引戸であって、開□部上方から壁内の戸袋部上方に跨って上枠を設け、該上枠の前面で閉口部上方の部位に点検カバーを設け、該上枠に戸体を走行自在に吊持するハンガーレールを、戸袋部上方の部位では上枠に固定した受金具に戸尻側端部を差し込むだけで係止し、開□部上方の部位では上枠に螺子止めすることで、メンテナンス時に取外し可能に取付け、通常時には戸体を全開位置に保持し、且つ、火災時には配線コードを通じて送られる火災報知設備からの電気信号により戸体の保持を解除する全開保持装置を、開□部上方の上枠に前記ハンガーレールの上方に位置させて設置し、被保持具を戸体の戸先側引き残し部の上方に取付けたので、点検カバーを開くことで、全開保持装置の点検、調整をすることができる。さらには、メンテナンス時にハンガーレールを取り外す場合にも、全開保持装置の配線コード等がじやまになることがない。」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正および明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加には該当しないし、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。 3.むすび 以上のとおり、上記訂正は、特許法134条2項ただし書き、および同条5項において準用する同法126条2項、3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3.請求人の主張及び提出した証拠方法 請求の趣旨は、本件特許第3052203号の請求項1に係る発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めるものであり、その理由の要点は、次のとおりである。 「本件特許の請求項1に係る発明は、甲第2号証の1に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、特許法123条1項2号に該当し、無効とされるべきものである。」 証拠方法 甲第2号証の1:カタログ「引戸クローザ」、日本ドアーチェック製造株式会社、1995年4月発行 甲第3号証:「権利に強い特許明細書の書き方」日本法令様式販売所、昭和53年6月15日発行 甲第4号証:消防庁の平成10年3月25日付け通達 第4.被請求人の主張 被請求人は、答弁書において、概略、以下の反論を行っている。 「審判請求書において請求人が被請求人と利害関係を有することを証する証拠や記載がなく、請求人は審判請求の当事者適格を備えていない。よって、本件審判請求は不適法であり却下されるべきである。 さらに、本件特許に係る発明は、請求人が提出した甲第2号証の1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法29条2項に該当するものではないから、特許法123条1項2号の規定によって無効となるものではない。」 第5.当審の判断 1.請求人の当事者適格について 請求人は「本件においては、将来、引戸クローザに対する需要が増加する可能性に鑑み、請求人は引戸クローザ製作の準備を鋭意続行中である」(平成13年10月29日付け弁ぱく書2頁)と述べており、請求人は被請求人と利害関係を有し、本件審判請求の当事者適格を備えているものと認める。 2.本件発明 上記「第2.訂正の適否について」で示したとおり、訂正が認められるから、特許第3052203号の請求項1に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】戸体を開ロ部の開放時に壁内の戸袋部に引き込み収納する自閉式引戸であって、 開ロ部上方から壁内の戸袋部上方に跨って上枠を設け、 該上枠の前面で開ロ部上方の部位に点検カバーを設け、 該上枠に戸体を走行自在に吊持するハンガーレールを、戸袋部上方の部位では上枠に固定した受金具に戸尻側端部を差し込むだけで係止し、開ロ部上方の部位では上枠に螺子止めすることで、メンテナンス時に取外し可能に取付け、 通常時には戸体を全開位置に保持し、且つ、火災時には配線コードを通じて送られる火災報知設備からの電気信号により戸体の保持を解除する全開保持装置を、開□部上方の上枠に前記ハンガーレールの上方に位置させて設置し、 被保持具を戸体の戸先側引き残し部の上方に取付けたことを特徴とする自閉式引戸。」(以下、「本件発明」という) 3.刊行物に開示された発明 請求人が提出した甲第2号証の1(カタログ「引戸クローザ」、日本ドアーチェック製造株式会社)には、裏表紙の右下に「’95・4」とあるので、1995年(平成7年)4月に作成され、本件の出願日前に頒布されたものと認める。 そこで、同号証(以下、「刊行物」という)を点検すると、 (1) 35頁には、 「機構・作動説明 遮煙閉鎖式引戸クローザは、センサーが熱又は煙を感知し、防火戸のストップ装置(開放保持)が外れた時に、内蔵のバネの力と空気圧により安全な速度に制動しつつドアを完全に閉鎖します。・・・・尚、都合によりドアを閉鎖しておきたい場合は、戸袋より少し引っ張り出すとスモクローザの開放保持(ストップ)が外れ、自閉します。再び戸袋内に収納する場合は、手動でドアを全開するとスモクローザが開放の状態で保持します。」、 「本機の遮蔽機構の特性を利用してクリーンルーム等にも一般引戸としてご使用頂けます。」という説明文があり、 煙感知器と熱感知器からの信号電流を受けた装置からの操作電流により、スモクローザの保持が解除され、ドアが引戸クローザの力で自動的に閉まることを示す図があり、 図の番号の部品名称として1(正しくは丸数字、以下同じ)はレール、2はレール固定ブラケット、5は引戸クローザ本体、6-1はハンガー戸車(戸先側)、6-2はハンガー戸車(戸尻側)、8および9はストップ受け台座、10はスモクローザであることを示す表がある。 (2)36頁には、 「1 レール固定ブラケツト2を無目枠内の裏板のタップ穴に取付ける。」、 「2 レール1をレール固定ブラケット2に固定する。」、 「3 スモクローザ(D-24-1A)10を無目枠内の裏板のタップ穴に取付けて、本体のリード線(3本)と電線管からの電線を結線する。」、 「4 ハンガー戸車6-1、6-2及びドア上部ローラー7をドア上部に取付け、ドアを吊り込む。…」、 「5 引戸クローザ本体5をハンガー戸車6-1、6-2へ取付ける。」、 「6 スモクローザ(D-24‐1A)10用ストップ受け8とストップ受け台座9をドア上部へ取付ける。」という説明文があり、 説明文の上方には、無目枠内の裏板のタップ穴にネジ止めした複数のレール固定ブラケツト2に、レール1の戸尻側端部やその他の部位が固定されている図がある。 (3)37頁の「防火用引戸クローザ納り図6-1」には、 左下に「A,B,C(正しくは丸文字、以下同じ)視図は次ページの各箇所の側面図を示す。」という説明文があり、A-A視図、B-B視図、C-C視図が示されている。 また、A-A視図右側には「点検口側」の記載、C-C視図下方には「戸袋壁仕上げ」の記載がある。 (4)38頁の「防火用引戸クローザ納り図6-2〈片引戸〉」には、 左方に「煙又は熱感知器(別途)連動にて、非常時閉鎖」の記載、上下に「扉全閉時DW」、「扉全閉・全開のかぶり」、「扉全開時DW」の記載、下方に「戸袋壁仕上げ」の記載がある。 (5)48頁の「引戸用スモクローザ(D-24-1A)」には、 写真とともに、「上枠内蔵式」、「ストップローラー」、「8ストップ受け」の記載があり、中程には、「【概要】防火戸の戸袋側上枠に格納して取付け、ストップローラー及び、ドア側受金具によりドアを開放保持しておき、手動もしくは熱又は煙感知器と連動して保持を解除するものです。尚、解除後のドアの閉鎖は引戸クローザで行います。」という説明文がある。 ここで、37頁のA-A、B-B、C-C視図の各々の右端の二重線で示されている部分(例えば、A-A視図の「点検口側」の記載の左側)は点検カバーであると認められ、 38頁の図におけるA-A、B-B、C-C視図の位置を合わせ考えると、点検カバーは上枠の前面で開口部上方の部位から戸袋部上方の部位に通しで設けられていると認められる。 そして、37頁のC-C視図下方および38頁の下方の「戸袋壁仕上げ」の記載と、点検カバーが戸袋部上方の部位に設けられていることから、戸袋部は開放式すなわち壁外の戸袋部であると認められる。 また、レール固定ブラケツト2に固定されているレール1は、メンテナンス時に取外し可能であると認められる。 さらに、スモクローザ10は、戸袋部上方の上枠に前記レール1の下方に位置させて設置されているものと認められる。 したがって、刊行物には、自閉式引戸に関して次のような発明が開示されているものと認める。かっこ内は対応する刊行物における構成・用語である。 「戸体(ドア)を開口部の開放時に壁外の戸袋部に引き込み収納する自閉式引戸であって、 開口部上方から壁外の戸袋部上方に跨って上枠を設け、 該上枠の前面で開口部上方および戸袋部上方の部位に点検カバーを設け、 該上枠に戸体(ドア)を走行自在に吊持するハンガーレール(レール1)を、戸袋部上方の部位では上枠に固定(ネジ止め)した金具(レール固定ブラケツト2)に戸尻側を係止(固定)し、開口部上方の部位でも上枠に金具(レール固定ブラケツト2)を介して固定することで、メンテナンス時に取外し可能に取付け、 通常時には戸体(ドア)を全開位置に保持し、且つ、火災時には配線コード(電線)を通じて送られる火災報知設備(熱又は煙感知器)からの電気信号(信号電流・操作電流)により戸体の保持を解除する全開保持装置(スモクローザ10)を、戸袋部上方の上枠に前記ハンガーレール(レール1)の下方に位置させて設置し、 被保持具(ストップ受け台座8,9)を戸体(ドア)の上方に取付けた自閉式引戸」という発明が開示されているものと認める。(以下、「刊行物発明」という) 4.対比・判断 本件発明と刊行物発明を対比すると、両者は、 「戸体を開口部の開放時に戸袋部に引き込み収納する自閉式引戸であって、 開口部上方から戸袋部上方に跨って上枠を設け、 該上枠の前面で開口部上方の部位に点検カバーを設け、 該上枠に戸体を走行自在に吊持するハンガーレールを、戸袋部上方の部位では上枠に固定した金具に戸尻側を係止し、開口部上方の部位でも上枠に固定することで、メンテナンス時に取外し可能に取付け、 通常時には戸体を全開位置に保持し、且つ、火災時には配線コードを通じて送られる火災報知設備からの電気信号により戸体の保持を解除する全開保持装置を、上枠に設置し、 被保持具を戸体の上方に取付けた自閉式引戸」 である点で一致し、次の点で相違している。 相違点1 戸袋部および点検カバーが、本件発明においては壁内の戸袋部であり、戸袋部上方の部位には点検カバーは無いのに対し、刊行物発明においては壁外の戸袋部であり、戸袋部上方の部位にも点検カバーがある点。 相違点2 ハンガーレールを、戸袋部上方の部位で、上枠に固定した金具に戸尻側を係止するに際し、本件発明においては、上枠に固定した受金具に戸尻側端部を差し込むだけで係止するのに対し、刊行物発明においては、上枠にネジ止めしたレール固定ブラケツト2に戸尻側を固定する点。 相違点3 ハンガーレールを、開口部上方の部位で、上枠に固定するに際し、本件発明においては、上枠に螺子止めするのに対し、刊行物発明においては、上枠にネジ止めしたレール固定ブラケツト2を介して固定する点。 相違点4 全開保持装置を上枠に設置するに際し、本件発明においては、開口部上方の上枠に前記ハンガーレールの上方に位置させて設置するのに対し、刊行物発明においては、戸袋部上方の上枠に前記レール1の下方に位置させて設置する点。 相違点5 被保持具を戸体の上方に取付けるに際し、本件発明においては、戸先側引き残し部に取付けるのに対し、刊行物発明においては、特に限定していない点。 そこで、上記相違点2から検討すると、 ハンガーレールを、壁内の戸袋部上方の部位で、上枠に固定した受金具に戸尻側端部を差し込むだけで係止することは、戸袋部が壁外であるような刊行物発明から当業者が容易に想到し得るものではなく、また、メンテナンス時に、ハンガーレールが壁内の戸袋部から取外し可能となる格別な効果を奏するものである。 また、甲3、4号証にも、相違点2に係る本件発明の特定事項を示唆するものは、何も無い。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、刊行物発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 第6.むすび 以上、請求人の主張する理由および提出した証拠によっては、本件発明の特許を無効とすることができない。 また他に、本件発明の特許を無効とすべき理由を発見しない。 審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 自閉式引戸 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 戸体を開口部の開放時に壁内の戸袋部に引き込み収納する自閉式引戸であって、開口部上方から壁内の戸袋部上方に跨って上枠を設け、該上枠の前面で開口部上方の部位に点検カバーを設け、該上枠に戸体を走行自在に吊持するハンガーレールを、戸袋部上方の部位では上枠に固定した受金具に戸尻側端部を差し込むだけで係止し、開口部上方の部位では上枠に螺子止めすることで、メンテナンス時に取外し可能に取付け、通常時には戸体を全開位置に保持し、且つ、火災時には配線コードを通じて送られる火災報知設備からの電気信号により戸体の保持を解除する全開保持装置を、開口部上方の上枠に前記ハンガーレールの上方に位置させて設置し、被保持具を戸体の戸先側引き残し部の上方に取付けたことを特徴とする自閉式引戸。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、戸体を開口部の開放時に壁内に引き込み収納する自閉式引戸に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、戸体を手で開放すると自動閉鎖機構により自動的に閉鎖される自閉式引戸において、例えば荷物の搬入の際などに戸体を全開位置で停止させておきたいとする要望があり、戸体を全開位置で所定時間(あるいは閉鎖方向に一定以上の外力(人の操作)が加えられるまで)保持しておく全開保持装置が採用されていた。 そして、これらの全開保持装置は、戸体に設けられる被保持具が戸体の戸尻側端の上方に設けられる関係上、これに対応する位置(戸袋部の奥部)に取付けられており、全開保持装置を点検、調整する場合には点検パネルを取り外ずして行われていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 ところが、近年、戸体の収納部に点検パネルを設けず、戸体を収納する戸袋部の表面を周囲の壁面と同じ壁材で仕上げ、開口部の開放時には戸体を壁内に収納するタイプの自閉式引戸が採用されるようになり、従来の戸袋部の奥部に全開保持装置を設ける構造では全開保持装置の調整、点検が出来ないと言う問題があった。 【0004】 本発明は上記課題を解決すべく創作されたもので、戸体を開口部の開放時に壁内に引き込み収納する自閉式引戸において、戸袋部に点検パネルや、専用の点検口を設けなくとも全開保持装置の点検や調整ができる自閉式引戸を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために本発明が採用した技術手段は、戸体を開口部の開放時に壁内の戸袋部に引き込み収納する自閉式引戸であって、開口部上方から壁内の戸袋部上方に跨って上枠を設け、該上枠の前面で開口部上方の部位に点検カバーを設け、該上枠に戸体を走行自在に吊持するハンガーレールを、戸袋部上方の部位では上枠に固定した受金具に戸尻側端部を差し込むだけで係止し、開口部上方の部位では上枠に螺子止めすることで、メンテナンス時に取外し可能に取付け、通常時には戸体を全開位置に保持し、且つ、火災時には配線コードを通じて送られる火災報知設備からの電気信号により戸体の保持を解除する全開保持装置を、開口部上方の上枠に前記ハンガーレールの上方に位置させて設置し、被保持具を戸体の戸先側引き残し部の上方に取付けたことを特徴とするものである。 【0006】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態について図1、図2を参照して説明する。図1は自閉式引戸の全体正面図、図2は戸体が全開位置にある場合の自閉式引戸の縦断面図であって、自閉式引戸は、開口部Aを開閉する戸体1と、該戸体1を走行自在に吊持するハンガーレール2と、該ハンガーレール2が取付けられると共に開口部A及び壁面の内部に戸袋部(開口部の開放時に戸体を引き込んで収納する空間)を形成する引戸枠5とからなり、戸体1がハンガーレール2に沿って走行することで開口部Aの開閉がなされる。尚、該戸体1は上部に設けられたハンガーローラ11、11によりハンガーレール2に走行自在に吊持され、下端は床面に固定された図示しない振れ止めローラにより案内されている。 【0007】 該引戸枠5は、開口部Aの左右に立設される戸先側竪枠7と戸尻側竪枠8と前記戸袋部の最奥(図1の右端)に立設された壁内竪枠9と、これらの上部を連結する上枠6とからなり、全体が下向きに開口した略E字状に構成されている。また該上枠6は、水平辺6aと垂直辺6bとから断面視略逆L字状に形成されており、該垂直辺6bにはハンガーレール2や後述する全開保持装置16が取付けられている。 また該垂直辺6bに対向する位置(見込み方向の前側)で、開口部Aの上方(戸先側竪枠7と戸尻側竪枠8の間)には取外しできる点検カバー15が装着されている。 【0008】 自閉式引戸の周囲の壁面は、いわゆる軽鉄間仕切と称される間仕切り壁で床と天井間に立設したスタッド材(図示せず)の両面に壁材(石膏ボード)Kを張ったもので、該自閉式引戸の戸袋部の(見込み方向の)前後面及び開口部A上方の垂直辺6bの後面も、周囲の壁面と同じように壁材Kを張って仕上げられており、内部の点検ができない構造となっている。 【0009】 ハンガーレール2は、断面略コ字状のレール受台21と該レール受台21の垂直面に固着された断面略J字状のレール本体22とからなり、戸尻側端部を垂直辺6bに固定された受金具4に差し込んで係止させ、開口部Aの上方に位置する戸先側の部位(点検カバー15を取り外して作業可能な部位)を螺子で螺着することで垂直辺6bに取付けられている。 該ハンガーレール2は、開口部A及び点検カバー15を取り外した際の開口から手の届かない壁内においては螺子等で取付けを行わず、前記受金具4に戸尻側端部を差し込むだけの構造としたので、戸先側部位の螺子を取り外ずして、全体を戸先側に引き出すだけで取り外すことが出来る。 【0010】 また該ハンガーレール2において、レール本体22は戸尻側を高く戸先側を低く長さ方向に全体を傾斜させてレール受台21に取付けられており、戸体1はレール本体22の傾斜と戸体1の自重により自動閉鎖する構造となっている。 【0011】 16は、全開保持装置16であって装置本体16aと舌片状の板バネ片16bとからなり、後述する戸体1の戸先側に取付けられた被保持具17のローラ体17bを、該板バネ片16bの傾斜面16dに当接させて係止することで、戸体1を全開位置に保持する構造となっている。 そして該全開保持装置16は、開口部Aの上方(戸先側竪枠7と戸尻側竪枠8の間)で前記点検カバーの裏側に位置し、さらに戸尻側竪枠8に近接して引戸枠5に(詳しくは上枠6の垂直辺6bに)取付けられている。 さらに該装置本体16aには、建物に設置された図示しない火災報知設備から配線コード16cで電気的に接続された図示しない電磁ソレノイド機構が内蔵されており、火災時には、前記火災報知設備からの火災信号を受けて前記電磁ソレノイドが作動することで板バネ片16bが上動し、被保持具17の係止が解除されて戸体1は自動閉鎖する構造となっている。 【0012】 また該配線コード16cは、前記火災報知設備から建物躯体に配設された電気配管を通じ、さらに戸先側竪枠7に穿設された図示しない配管穴から引戸枠5内に引き込まれて全開保持装置16に接続されている。ここで全開保持装置16を、取外し可能なハンガーレール2を利用して従来のように戸袋部の奥部(ハンガーレール2の戸尻側端部)に取付けることが考えられるが、ハンガーレール2を取り外す時に配線コード16cがじゃまになるので、本実施の形態のような配線コードを有する全開保持装置には採用することができない。 【0013】 前述の被保持具17は、断面略逆L字状の取付板17aと該取付板の上辺に固定されたローラ体17bとからなり、全開時に該ローラ体17bが前記傾斜面16dに当接するように位置させて戸体1に取付けられている。具体的には、戸体1の戸先側であって全開時に開口部Aに引き残しとなる戸先側引き残し部1’の上方に戸先側ハンガーローラ11を利用して取付けられており、少なくとも戸体1の全開時に該ローラ体17bが前記傾斜面16dより戸尻側に位置するように取付ける必要がある。 【0014】 また戸体1には制動装置80が取付けられており、該制動装置80に軸支されたピニオンギヤ81と、ハンガーレール2に設けられた開、閉ラック体82、83とが歯合することで、全開及び全閉付近で戸体1の走行に制動力が働き、戸体1と引戸枠5との衝突音の軽減が図られている。 【0015】 また本実施の形態の自閉式引戸は、ハンガーレールの傾斜と戸体の自重を利用して自動閉鎖させる、いわゆる傾斜レール式と呼ばれるものであるが、自閉機構は傾斜レール式に限定されるものではなく、例えばゼンマイばねを利用して戸体を閉鎖方向に付勢する専用の自閉装置を用いたものでも良い。 【0016】 【発明の効果】 請求項1に記載の発明によれば、戸体を開口部の開放時に壁内の戸袋部に引き込み収納する自閉式引戸であって、開口部上方から壁内の戸袋部上方に跨って上枠を設け、該上枠の前面で開口部上方の部位に点検カバーを設け、該上枠に戸体を走行自在に吊持するハンガーレールを、戸袋部上方の部位では上枠に固定した受金具に戸尻側端部を差し込むだけで係止し、開口部上方の部位では上枠に螺子止めすることで、メンテナンス時に取外し可能に取付け、通常時には戸体を全開位置に保持し、且つ、火災時には配線コードを通じて送られる火災報知設備からの電気信号により戸体の保持を解除する全開保持装置を、開口部上方の上枠に前記ハンガーレールの上方に位置させて設置し、被保持具を戸体の戸先側引き残し部の上方に取付けたので、点検カバーを開くことで、全開保持装置の点検、調整をすることができる。さらには、メンテナンス時にハンガーレールを取り外す場合にも、全開保持装置の配線コード等がじゃまになることがない。 【図面の簡単な説明】 【図1】 自閉式引戸の全体正面図。 【図2】 戸体が全開位置にある場合の自閉式引戸の縦断面図。 【符号の説明】 1 戸体 1’ 引き残し部 2 ハンガーレール 5 引戸枠 16 全開保持装置 17 被保持具 A 開口部 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2003-01-30 |
結審通知日 | 2003-02-04 |
審決日 | 2003-02-17 |
出願番号 | 特願平10-368334 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
YA
(E05F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 辻野 安人 |
特許庁審判長 |
安藤 勝治 |
特許庁審判官 |
山口 由木 藤原 伸二 |
登録日 | 2000-04-07 |
登録番号 | 特許第3052203号(P3052203) |
発明の名称 | 自閉式引戸 |
代理人 | 荒垣 恒輝 |
代理人 | 廣瀬 哲夫 |
代理人 | 廣瀬 哲夫 |