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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B60S
管理番号 1078722
審判番号 無効2002-35212  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-13 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-05-23 
確定日 2003-03-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2884460号発明「洗車機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2884460号の請求項2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 【一】当事者の求めた審判
1.請求人
特許第2884460号の請求項2に係る特許を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。
2.被請求人
本件審判請求は成り立たない。
審判費用は請求人の負担とする。
【二】事案の概要
1.本件特許に係る手続の経緯
本件特許第2884460号は、平成5年3月9日に出願された特願平5-48315号の一部を特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願とした特願平5-57409号に係り、平成11年2月12日に設定登録された後、特許異議(平成11年異議第73926号)の決定により請求項1に係る特許が取り消されたものであるところ、表記請求人より本件審判の請求がなされ、被請求人より願書に添付した明細書について訂正請求がなされたものである。
2.訂正請求の内容
上記訂正請求は、願書に添付した明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであるところ、その要旨は、次のとおりである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲に「【請求項1】 車両入口(I)から進入して車両洗浄位置(V2)に停止した車両を、その車両洗浄位置(V2)に停止した状態で、洗浄手段(1,2,4,5)を有する洗車機本体(6)を走行させて洗浄し、洗浄後の車両を前記車両洗浄位置(V2)から、車両入口(I)と反対側に設けた車両出口(O)を通って退出させる洗車機において、
前記車両洗浄位置(V2)からの車両の退出を検出する退出検出装置(20)と、
洗車機本体(6)を、車両出口(O)近傍に設けたスタート位置(6B)よりも車両入口(I)側に寄った位置(6A)に停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後に前記退出検出装置(20)の検出に基づいて、洗車機本体(1)をスタート位置(6B)へ走行させる制御装置(14)とを備えたことを特徴とする、洗車機。
【請求項2】 洗車機本体(6)の車両出口(O)側には、洗浄終了後に該洗車機本体(6)がスタート位置(6B)へ向けて走行しているときに車両を検知可能な検知装置(38)を配設し、この検知装置(38)の検知に応じて洗車機本体(6)の前記走行を停止させるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の洗車機。」とある記載を、
「【請求項2】洗車機の車両入口(I)とその反対側の車両出口(O)との間に、車両を停止させて洗浄するための車両洗浄位置(V2)を設け、洗浄手段(1,2,4,5)を有する洗車機本体(6)の、往行を開始するスタート位置(6B)を前記車両出口(O)の近傍に設け、前記車両入口(I)から進入して前記車両洗浄位置(V2)に停止した車両を、その車両洗浄位置(V2)に停止した状態で前記洗車機本体(6)を走行させて洗浄し、洗浄終了後の車両を前記車両洗浄位置(V2)から前記車両出口(O)を通って退出させる洗車機において、
前記車両洗浄位置(V2)からの車両の退出を検出する退出検出装置(20)と、
前記洗車機本体(6)を、前記スタート位置(6B)よりも前記車両入口(I)側に寄った位置(6A)に停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後に前記退出検出装置(20)の検出に基づいて、前記洗車機本体(1)を前記スタート位置(6B)へ走行させる制御装置(14)とを備え、
洗車機本体(6)の車両出口(O)側には、洗浄終了後に該洗車機本体(6)がスタート位置(6B)へ向けて走行しているときに車両を検知可能な検知装置(38)を配設し、洗浄終了後に洗車機本体(6)がスタート位置(6B)へ向けて走行しているときに該検知装置(38)が退出車両を検知するとその検知に応じて洗車機本体(6)の前記走行を停止させるようにしたことを特徴とする、洗車機。」と訂正する。
(2)訂正事項b
発明の詳細な説明の段落【0001】に「車両入口から進入して車両洗浄位置に停止した車両を、その車両洗浄位置に停止した状態で、洗浄手段を有する洗車機本体を走行させて洗浄し、洗浄後の車両を前記車両洗浄位置から、車両入口と反対側に設けた」とある記載を、
「洗車機の車両入口とその反対側の車両出口との間に、車両を停止させて洗浄するための車両洗浄位置を設け、洗浄手段を有する洗車機本体の、往行を開始するスタート位置を前記車両出口の近傍に設け、前記車両入口から進入して前記車両洗浄位置に停止した車両を、その車両洗浄位置に停止した状態で前記洗車機本体を走行させて洗浄し、洗浄終了後の車両を前記車両洗浄位置から前記」と訂正する。
(3)訂正事項c
発明の詳細な説明の段落【0006】〜【0007】に「請求項1の発明は、車両入口から進入して車両洗浄位置に停止した車両を、その車両洗浄位置に停止した状態で、洗浄手段を有する洗車機本体を走行させて洗浄し、洗浄後の車両を前記車両洗浄位置から、車両入口と反対側に設けた車両出口を通って退出させる洗車機において、前記車両洗浄位置からの車両の退出を検出する退出検出装置と、洗車機本体を、車両出口近傍に設けたスタート位置よりも車両入口側に寄った位置に停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後に前記退出検出装置の検出に基づいて、洗車機本体をスタート位置へ走行させる制御装置とを備えたことを特徴とする。
また請求項2の発明は、請求項1の発明の前記特徴に加えて、洗車機本体の車両出口側には、洗浄終了後に該洗車機本体がスタート位置へ向けて走行しているときに車両を検知可能な検知装置を配設し、この検知装置の検知に応じて洗車機本体の前記走行を停止させるようにしたことを特徴とする。」とある記載を、
「請求項2の発明は、洗車機の車両入口とその反対側の車両出口との間に、車両を停止させて洗浄するための車両洗浄位置を設け、洗浄手段を有する洗車機本体の、往行を開始するスタート位置を前記車両出口の近傍に設け、前記車両入口から進入して前記車両洗浄位置に停止した車両を、その車両洗浄位置に停止した状態で前記洗車機本体を走行させて洗浄し、洗浄終了後の車両を前記車両洗浄位置から前記車両出口を通って退出させる洗車機において、前記車両洗浄位置からの車両の退出を検出する退出検出装置と、前記洗車機本体を、前記スタート位置よりも前記車両入口側に寄った位置に停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後に前記退出検出装置の検出に基づいて、前記洗車機本体を前記スタート位置へ走行させる制御装置とを備え、洗車機本体の車両出口側には、洗浄終了後に該洗車機本体がスタート位置へ向けて走行しているときに車両を検知可能な検知装置を配設し、洗浄終了後に洗車機本体がスタート位置へ向けて走行しているときに該検知装置が退出車両を検知するとその検知に応じて洗車機本体の前記走行を停止させるようにしたことを特徴とする。」と訂正する。
(4)訂正事項d
発明の詳細な説明の段落【0040】に「車両入口から進入して車両洗浄位置に停止した車両を、その車両洗浄位置に停止した状態で、洗車機本体を走行させて洗浄し、洗浄後の車両を前記車両洗浄位置から、車両入口と反対側に設けた車両出口を通って退出させる洗車機において、前記車両洗浄位置からの車両の退出を検出する退出検出装置と、洗車機本体を、車両出口近傍に設けたスタート位置よりも車両入口側に寄った位置に停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後に前記退出検出装置の検出に基づいて、洗車機本体を」とあるのを、
「洗車機の車両入口とその反対側の車両出口との間に、車両を停止させて洗浄するための車両洗浄位置を設け、洗浄手段を有する洗車機本体の、往行を開始するスタート位置を前記車両出口の近傍に設け、前記車両入口から進入して前記車両洗浄位置に停止した車両を、その車両洗浄位置に停止した状態で前記洗車機本体を走行させて洗浄し、洗浄終了後の車両を前記車両洗浄位置から前記車両出口を通って退出させる洗車機において、前記車両洗浄位置からの車両の退出を検出する退出検出装置と、前記洗車機本体を、前記スタート位置よりも前記車両入口側に寄った位置に停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後に前記退出検出装置の検出に基づいて、前記洗車機本体を前記」と訂正する。
(5)訂正事項e
発明の詳細な説明の段落【0041】に「また特に請求項2の発明によれば、洗浄」とあるのを、
「また特に洗浄」と訂正する。
3.請求人が主張する無効理由の概要及び提出する証拠方法
(1)無効理由
本件請求項2に係る特許発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項2に係る特許は、同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(2)証拠方法
甲第1号証:特公昭40-8372号公報
甲第2号証:特開昭48-5267号公報
甲第3号証:本件特許についての異議決定謄本
甲第4号証:特開昭59-63254号公報
甲第5号証:特許第2884460号公報
甲第6号証:特許第2884460号登録原簿謄本
4.被請求人の主張の概要
以下(1)〜(3)のとおり、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に記載の洗車装置は、本件発明が特徴とする構成を備えておらず、したがって、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証のものを単に寄せ集めてみても、本件発明の効果を達成することができない。
よって、本件発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証のものから当業者が容易に発明できたものではない。
(1)次の(i),(ii)の理由により、甲第1号証には、本件発明の技術的課題及び構成が記載されていない。
(i)甲第1号証に、洗車装置の車両入口や車両出口の記載がなく自動車の進入方向や退出方向の記載もなく、この甲第1号証のものは、本件発明が解決しようとする技術的課題を有していない。
(ii)甲第1号証のものは、車両の退出を検出する退出検出装置や、退出車両を検知可能な検知装置を有していない。
(2)甲第2号証に記載の車両脱出検出装置L4は、車両Cが誘導路10,10から脱出し始めたことを検出するものである。甲第1号証に記載の技術は、自動車を載架台2より完全におろし終わった後に清掃枠体1と載架台2とを元の位置に戻すようにしたものである。
甲第1号証に記載の技術と、甲第2号証に記載の前記技術とは、目的及び作用効果が全く相違した技術思想であるため、甲第2号証に記載の「誘導路10,10からの車両Cの脱出を車両脱出検出装置L4で検出する技術」を、甲第1号証に記載の前記技術に適用することは不可能である。
従って、甲第1号証および甲第2号証に記載の技術からは、本件発明の「車両洗浄位置からの車両の退出を検出する退出検出装置と、洗車機本体をその洗浄終了後に前記退出検出装置の検出に基づいて、洗車機本体をスタート位置へ走行させる制御装置」は、得られない。
(3)次の(i)〜(iii)の理由により、甲第4号証には、本件発明の技術的課題及び構成は記載されていない。
(i)甲第4号証のものは、移動式洗車機の往復走行経路に沿って設けられる塀と洗車機との間に人が挟まれる事故を防止することを技術的課題とするものである。
(ii)甲第4号証の洗車機は、車両の進入路と退出路が同一である移動式洗車機であって、洗浄終了後に洗車機本体を洗浄終了位置からスタート位置まで復帰移動させるべき必然性が本来的に存在しない。甲第4号証には、本件発明のような安全装置(検知装置)を設けるべき必然性や動機づけは存在しない。
甲第4号証の洗車機における安全装置(検知装置)は、本件発明のものと使用目的や構成効果が明確に相違している。
(iii)本件発明は、退出検出装置が車両の退出を検出してから、洗車機本体がスタート位置へ向けて復帰走行を開始するまでの間の待ち時間を特別に長く設定する必要はなくなるため、洗車時間の短縮が図られる。このような効果は、ドライブスルー型を前提としない甲第4号証の洗車機では全く期待できない。
【三】当審の判断
1.明細書の訂正についての適否判断
(1)訂正の目的について
訂正事項aは、請求項2の「検知装置(38)の検知に応じて」との記載を、「検知装置(38)が退出車両を検知するとその検知に応じて」とする訂正を含み、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また、訂正事項b〜eは、特許請求の範囲の記載の訂正に伴って、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載に整合するように訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
(2)新規事項、特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項aの「検知装置(38)が退出車両を検知する」との事項は、願書に添付した明細書の段落【0023】、【0041】に記載された事項であり、又、残余の訂正事項も願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項a〜eの各訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、前記訂正請求による明細書の訂正は、特許法第134条第2項及び同法同条第5項の規定により準用され、平成6年法律第116号附則第6条1項の規定により「なお従前の例による」として適用される同法律による改正前の特許法第126条第1〜3項の規定に適合し、認められるべきものである。
2.本件発明
「1.明細書の訂正についての適否判断」に説示のとおり、訂正請求による明細書の訂正が認められるから、本件請求項2に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の「洗車機本体(1)」は「洗車機本体(6)」の誤記と認め、特許請求の範囲の記載から、以下のとおりのものと認める。
「洗車機の車両入口(I)とその反対側の車両出口(O)との間に、車両を停止させて洗浄するための車両洗浄位置(V2)を設け、洗浄手段(1,2,4,5)を有する洗車機本体(6)の、往行を開始するスタート位置(6B)を前記車両出口(O)の近傍に設け、前記車両入口(I)から進入して前記車両洗浄位置(V2)に停止した車両を、その車両洗浄位置(V2)に停止した状態で前記洗車機本体(6)を走行させて洗浄し、洗浄終了後の車両を前記車両洗浄位置(V2)から前記車両出口(O)を通って退出させる洗車機において、
前記車両洗浄位置(V2)からの車両の退出を検出する退出検出装置(20)と、
前記洗車機本体(6)を、前記スタート位置(6B)よりも前記車両入口(I)側に寄った位置(6A)に停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後に前記退出検出装置(20)の検出に基づいて、前記洗車機本体(6)を前記スタート位置(6B)へ走行させる制御装置(14)とを備え、
洗車機本体(6)の車両出口(O)側には、洗浄終了後に該洗車機本体(6)がスタート位置(6B)へ向けて走行しているときに車両を検知可能な検知装置(38)を配設し、洗浄終了後に洗車機本体(6)がスタート位置(6B)へ向けて走行しているときに該検知装置(38)が退出車両を検知するとその検知に応じて洗車機本体(6)の前記走行を停止させるようにしたことを特徴とする、洗車機。」
3.特許の無効を求める請求についての判断
(1)甲各号証の記載事項
(i)甲第1号証
「対向移動式洗車装置」に関して、
(ア)「以下本発明を図面について説明すると、1は清掃枠体にして、これに除塵部イ、車輪水洗部口、車体清拭部ハ、水洗部ニおよび乾燥部ホ等を順次並設する。2は自動車の載架台にして・・・8,8は鎖帯にして、4隅に設けた鎖車9,9及び9’、9’に掛け渡し、その外側は清掃枠体1の両端に連結し、また、内側に向く両端は載架台2の両端に連結するものである。本発明は洗車に当り・・鎖帯8,8の移行により清掃枠体1と載架台2とは互に向い合いに移動し、載架台2上の自動車3はまず除塵部イにおいて真空除塵が行われ、次で車輪洗車部ロに至って車輪の水洗を行い、さらに車体清拭部ハにおいて車体の清拭を行い、続いて水洗部ニにおいて水の噴射による清洗を行い、最後に乾燥部において圧搾空気の吹付けによる乾燥を行って終了するものである。しかして上記清掃各部および乾燥部における作業中は、清掃枠体1および載架台2は所定時間移行を停止し、すなわちこの場合鎖車9は回転を停止するものであるが・・・上記のようにして清掃作業が全部終了したときは自動車3のみをそのまま前進させて載架台2よりおろし、そののち鎖車9を前記と反対方向に回転して清掃枠体1と載架台2とを元の位置に戻すものである。」(1頁左欄18行〜右欄21行)
の記載が認められ、併せて第1図及び第2図の記載を参照すると、甲第1号証には
(イ)“載架台2に侵入した自動車3と、該自動車3と対向する位置にある除塵部イ、車輪水洗部口、車体清拭部ハ、水洗部ニおよび乾燥部ホ等を順次並設された清掃枠体1との配置位置から、清掃枠体1と載架台2とが互に向い合いに移動して車両の清掃作業が始まり、清掃枠体1と載架台2は、清掃各部および乾燥部における作業中所定時間移行を停止し、向い合いの移動によって載架台2が清掃枠体1を通り抜けて清掃作業が全部終了したときは、自動車3のみをそのまま前進させて載架台2よりおろし、そののち、清掃枠体1と載架台2を元の位置に戻す対向移動式洗車装置”
が記載されているものと認める。
(ii)甲第2号証
「車輛用自動洗滌装置」に関し、
(ウ)「1は洗滌機で、左右一対のレール2,2上を自走でき車輛を囲繞し得る車輪付フレーム3と、そのフレーム3の内部において前記車輛の各外面に対応するように設けた各種洗滌機具とから成り、その機具として垂直ブラシ4、水平ブラシ5、車輪ブラシ6等の洗滌ブラシ類や側面乾燥風ノズル71、上面乾燥風ノズル72、さらには図示しないが洗滌水ノズル等を具備しており」(公報第1頁右下欄第9行目〜同右下欄第16行目)、
(エ)「他方の誘導路10に進入した車輛を洗滌位置に正確に停止されるための車輛停止指示装置29が設けられ、」(公報第2頁右上欄第13行目〜同右上欄第15行目)、
(オ)「L4、L4は一方の誘導路10の両端に設けた車輛脱出検出装置である。」(公報第2頁左下欄第12行目〜同左下欄第13行目)、
(カ)「被洗滌車輛の操縦者は搭乗のまゝで、誘導路入口10′で先づ料金を料金収納装置12に投入する。・・・これにより遮断杆20は上方に回動して誘導路10を開放する。」(公報第2頁右下欄第12行目〜同第3頁左上欄第2行目)
(キ)「操縦者は車輛を誘導路10、10に沿って前進させると既に起立状態のタイヤストッパー板30が一方の前輪のタイヤTを受止めるに至り、これを操縦者は感知して車輛を完全に停止させる。このとき、タイヤTにより車輛定位置停止検出装置L2が作動し、その信号によりスイッチ装置S4が閉成するので洗滌機1は所定の作動を開始する。即ち走行フレーム3は内部の各種洗滌機具を適時作動させながら前進および後退動して車輛の洗滌および乾燥を行うものであり、走行フレーム3が洗滌作業を終えて原位置に戻ると洗滌完了検出装置L3はそれを検出して発信し、・・・タイヤストッパー板30は第4図鎖線示のように倒伏する。次いで車輛が前進または後退して誘導路10、10を脱出する際、そのタイヤによって車輛脱出検出装置L4、L4のいづれかが踏圧されると脱出信号が発せられ、前記洗滌完了検出装置の信号と共にスイッチ装置S1、S2を開放動作させるのでコンプレッサー34は停止し、・・遮断桿20はスプリング24により降下する。かくて各装置はすべて原位置に復帰した。」(公報第3頁左上欄第7行目〜同頁右上欄第15行目)
(ク)「走行フレーム3が洗滌作業を終えて原位置に戻ると洗滌完了検出装置L3はそれを検出し」(公報第3頁左上欄第16行目〜同頁右上欄第1行目)
の記載が認められる。
そして、上記(カ)の記載から「料金収納装置12」、「遮断杆20」が設けられた側が車輛用自動洗滌装置の車輛入口と認められ、また、上記(キ)中の「車輛を誘導路10、10に沿って前進させると既に起立状態のタイヤストッパー板30が一方の前輪のタイヤTを受止めるに至り」、「タイヤストッパー板30は第4図鎖線示のように倒伏する。次いで車輛が前進または後退して誘導路10、10を脱出する際」との記載から、車輛の出口を、車輛入口の反対側、即ち上記(キ)中の走行フレーム3の「原位置」側とする構成も記載されているものと認められる。
さらに、上記(ク)の記載から、洗滌完了検出装置L3が走行フレーム3の原位置への戻りを検出する前に、走行フレーム3による洗滌作業は終えている、と認められる。
したがって、併せて図面を参照すると、甲第2号証には、
“車輛用自動洗滌装置の車輛入口とその反対側の車輛出口との間に、車輛を停止させて洗滌するための車輛定位置を設け、垂直ブラシ4、水平ブラシ5、車輪ブラシ6等の洗滌ブラシ類や側面乾燥風ノズル71、上面乾燥風ノズル72、洗滌水ノズル等の洗滌機具を有する走行フレーム3の、往行を開始する原位置を前記車輛出口の近傍に設け、前記車輛入口から進入して前記車輛定位置に停止した車輛を、その車輛定位置に停止した状態で前記走行フレーム3を走行させて洗滌し、洗滌終了後の車輛を前記車輛定位置から前記車輛出口を通って退出させる車輛用自動洗滌装置において、
前記車輛定位置に連なる誘導路10、10からの車輛の脱出を検出する車輛脱出検出装置L4を備え、脱出信号が発せられると、コンプレッサー34が停止し、車輛入口側の遮断杆20が降下して、各装置はすべて原位置に復帰する、車輛用自動洗滌装置。”
が記載されているものと認める。
(iii)甲第4号証
「洗車機の安全装置」に関して、
(ケ)「門型走行フレーム1の外面に支持ピン11を突設し、この支持ピン11に、前記走行フレーム1の外面に沿ってのびる感知バーBをそれが外力を受けると該走行フレーム1側へ移動できるように支承し、さらに前記感知バーBには、前記走行フレーム1に設けた走行停止用安全スイッチSwのセンサ14を連係させ、前記感知バーBが走行フレーム1側へ移動したとき前記センサ14を作動するようにしたので、走行フレーム1の往復走行時に感知バーBが障害物に当たると安全スイッチSwが作動して門型走行フレーム1の走行を停止させることができ」(第3頁右上欄第6〜17行)
(コ)「車両Vを誤って門型走行フレーム1の走行経路上に駐車したような場合にも、門型走行フレーム1の走行時それを検知することが可能で洗車機IVおよび車両Vの破損を防止することができる。」(第3頁左下欄第6〜10行)
の記載が認められる。
したがって、併せて図面を参照すると、甲第4号証には、
“洗車機において、洗車機の走行フレーム1の走行方向側には、走行経路上の車両等を検知可能なセンサ14を配設し、走行フレーム1が走行しているときに前記センサ14が前記車両等を検知するとその検知に応じて走行フレーム1の前記走行を停止させるようにした構成”が記載されているものと認める。
(2)対比・判断
(2-1)本件発明と上記甲第2号証に記載された発明とを対比すると、上記甲第2号証に記載された発明の“車輛定位置”、“洗滌機具”、“走行フレーム3”、“往行を開始する原位置”が、それぞれ、本件発明の「車両洗浄位置(V2)」、「洗浄手段(1,2,4,5)」、「洗車機本体(6)」、「スタート位置(6B)」に相当し、上記甲第2号証に記載された発明の“車輛用自動洗滌装置”も、洗車を行うものであるから、洗車機である。
したがって、両者は、
洗車機の車両入口とその反対側の車両出口との間に、車両を停止させて洗浄するための車両洗浄位置を設け、洗浄手段を有する洗車機本体の、往行を開始するスタート位置を前記車両出口の近傍に設け、前記車両入口から進入して前記車両洗浄位置に停止した車両を、その車両洗浄位置に停止した状態で前記洗車機本体を走行させて洗浄し、洗浄終了後の車両を前記車両洗浄位置から前記車両出口を通って退出させる、洗車機.
で一致し、次の相違点で相違する。
[相違点A]
本件発明は、「前記車両洗浄位置(V2)からの車両の退出を検出する退出検出装置(20)」を備えているのに対して、上記甲第2号証に記載された発明は、前記車両洗浄位置に連なる誘導路10、10からの車両の脱出を検出する車両脱出検出装置L4を備えるものである点
[相違点B]
本件発明は、「前記洗車機本体(6)を、前記スタート位置(6B)よりも前記車両入口(I)側に寄った位置(6A)に停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後に前記退出検出装置(20)の検出に基づいて、前記洗車機本体(1)を前記スタート位置(6B)へ走行させる制御装置(14)」を備えているのに対して、上記甲第2号証に記載された発明は、洗車機本体を停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後に車両洗浄位置からの退出を検出する退出検出装置の検出に基づいて、前記洗車機本体(走行フレーム3)を前記スタート位置(往行を開始する原位置)へ走行させること、及びそのための制御装置については、特に言及されたものではない点
[相違点C]
本件発明は、「洗車機本体(6)の車両出口(O)側には、洗浄終了後に該洗車機本体(6)がスタート位置(6B)へ向けて走行しているときに車両を検知可能な検知装置(38)を配設し、洗浄終了後に洗車機本体(6)がスタート位置(6B)へ向けて走行しているときに該検知装置(38)が退出車両を検知するとその検知に応じて洗車機本体(6)の前記走行を停止させるようにした」のに対して、上記甲第2号証に記載された発明は、このような退出車両を検知する手段について言及したものではない点
(2-2)上記各相違点について検討する。
(i)相違点Aについて
甲第2号証に記載された発明の車輛脱出検出装置L4は、第2図を参照すると、前記車両洗浄位置より車両の出口側に寄った位置にあるから、前記車両洗浄位置からの車両の退出を検出できるものと認められる。
したがって、甲第2号証に記載された上記車輛脱出検出装置L4を、「前記車両洗浄位置からの車両の退出を検出する退出検出装置」とすることは当業者が容易になしうる設計事項である。
(ii)相違点Bについて
上記甲第1号証には、前説示のとおり、自動車3と対向する位置にある清掃枠体1との配置位置から、清掃枠体1と自動車3とが相対的に互いに向かい合いに移動して車両の清掃作業が始まり、向かい合いの移動によって自動車3が清掃枠体1を通り抜けて清掃作業が全部終了したときは、自動車3のみをそのまま前進させて載架台2よりおろし、そののち、清掃枠体1と載架台2を元の位置に戻す洗車装置が記載されている。即ち、甲第1号証に記載された洗車装置は、清掃枠体1と自動車3の位置関係が、清掃作業の開始時とは前後に入れ替わった位置で、清掃枠体1と載架台2を停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後に自動車3を退出させ、そののち、清掃枠体1と載架台2を元の位置に戻すものと認められる。
そして、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明は、「洗車機」という共通の技術分野に係るものであるから、甲第1号証に記載された発明を甲第2号証に記載された発明に適用することが困難とはいえない。
したがって、前記洗車機本体(6)を、前記スタート位置(6B)よりも前記車両入口(I)側に寄った位置(6A)、つまり洗車機本体(6)と車両の位置関係が、洗浄作業の開始時とは前後に入れ替わった位置に停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後の車両退出後、前記洗車機本体(1)を前記スタート位置(6B)へ走行させる構成とすることは、甲第1号証に記載された発明を甲第2号証に記載された発明に適用することにより当業者が容易に想到し得ることである。
また、甲第2号証に記載された発明の車両脱出検出装置L4は、誘導路からの車両の退出を検出するものであるものの、その車両の退出の検出に基づいて各装置はすべて原位置に復帰されるものであると共に、前説示のとおり車両洗浄位置からの車両の退出を検出できるものであるから、洗浄終了後の前記洗車機本体の前記スタート位置への走行を、「退出検出装置の検出に基づいて」行わせることも困難ではなく、また、必要な「制御装置」を備えることも困難ではない。
(iii)相違点Cについて
甲第4号証に、洗車機において、洗車機本体の走行方向側に、走行経路上の車両等を検知可能な検知装置(センサ)を配設し、洗車機本体が走行しているときに前記検知装置が前記車両等を検知するとその検知に応じて洗車機本体の前記走行を停止させるようにした構成が記載されているものと認められる。
そして、甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明は、「洗車機」という共通の技術分野に係るものであるから、甲第4号証に記載された発明を甲第2号証に記載された発明に適用することが困難とはいえず、甲第2号証に記載された発明において、洗車機本体の走行方向側に、走行しているときに車両を検知可能な検知装置を配設し、走行しているときに該検知装置が車両を検知するとその検知に応じて洗車機本体の前記走行を停止させるようにすることは、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しうることである。
また、上記「(ii)相違点Bについて」に説示のとおり当業者が容易に適用しうる甲第1号証に記載された発明を適用した甲第2号証に記載された発明においては、甲第4号証に記載された発明の構成を採用することによって、洗車機本体の車両出口側には、洗浄終了後に該洗車機本体がスタート位置へ向けて走行しているときに車両を検知可能な検知装置が配置され、洗浄終了後に洗車機本体がスタート位置へ向けて走行しているときに前記検知装置が退出車両を検知するとその検知に応じて洗車機本体の前記走行を停止させる構成が必然的に得られるものである。
したがって、相違点Cにおける本件発明の構成も当業者が容易になしえたものとするのが相当である。
(2-3)本件発明の構成は、以上のとおり当業者が容易に想到しうるものであり、本件発明の作用効果も、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証に記載された発明から予測しうる程度のものであり、格別顕著なものとはいえない。
よって、本件発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)被請求人の主張について
(3-1)甲第1号証に、本件発明の技術的課題が記載されていないこと、甲第1号証に記載の技術と甲第2号証に記載の技術とが目的及び作用効果において相違することは、甲第1号証に記載された事項を甲第2号証に記載された発明に適用することの阻害要因とはならず、甲第1号証に記載された事項と甲第2号証に記載された事項は、共通の技術分野に係るものであり、このことは、これらを組み合わせることの動機づけとなりうる。
(3-2)甲第4号証に記載された安全装置(検知装置)も、洗車機の走行中における車両等との衝突による洗車機又は車両等の損傷を回避するものである点で、本件発明の技術的課題と共通する。
そして、甲第4号証に記載された事項は、甲第2号証に記載された事項と共通の技術分野に係るものであり、このことは、これらを組み合わせることの動機づけとなりうる。
甲第4号証に記載された洗車機も、走行経路上に車両等が存在すれば停止させることを前提に走行させるものである点で、本件発明と共通し、本件発明の洗車時間が短縮できる効果は予測可能と認められる。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
洗車機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】 洗車機の車両入口(I)とその反対側の車両出口(O)との間に、車両を停止させて洗浄するための車両洗浄位置(V2)を設け、洗浄手段(1,2,4,5)を有する洗車機本体(6)の、往行を開始するスタート位置(6B)を前記車両出口(O)の近傍に設け、前記車両入口(I)から進入して前記車両洗浄位置(V2)に停止した車両を、その車両洗浄位置(V2)に停止した状態で前記洗車機本体(6)を走行させて洗浄し、洗浄終了後の車両を前記車両洗浄位置(V2)から前記車両出口(O)を通って退出させる洗車機において、
前記車両洗浄位置(V2)からの車両の退出を検出する退出検出装置(20)と、
前記洗車機本体(6)を、前記スタート位置(6B)よりも前記車両入口(I)側に寄った位置(6A)に停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後に前記退出検出装置(20)の検出に基づいて、前記洗車機本体(1)を前記スタート位置(6B)へ走行させる制御装置(14)とを備え、
洗車機本体(6)の車両出口(O)側には、洗浄終了後に該洗車機本体(6)がスタート位置(6B)へ向けて走行しているときに車両を検知可能な検知装置(38)を配設し、洗浄終了後に洗車機本体(6)がスタート位置(6B)へ向けて走行しているときに該検知装置(38)が退出車両を検知するとその検知に応じて洗車機本体(6)の前記走行を停止させるようにしたことを特徴とする、洗車機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、洗車機の車両入口とその反対側の車両出口との間に、車両を停止させて洗浄するための車両洗浄位置を設け、洗浄手段を有する洗車機本体の、往行を開始するスタート位置を前記車両出口の近傍に設け、前記車両入口から進入して前記車両洗浄位置に停止した車両を、その車両洗浄位置に停止した状態で前記洗車機本体を走行させて洗浄し、洗浄終了後の車両を前記車両洗浄位置から前記車両出口を通って退出させる洗車機に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記ドライブスルー型の洗車機として、特開昭48-5267号公報に記載されたものが公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上記従来の洗車機は、洗車終了時に洗車機本体が停止する位置が車両出口の近傍に設定されているため、退出の際に車両が洗車機本体の内部を手前側から向こう側にくぐり抜ける必要があるため、運転がしずらく時間がかかる問題があった。
【0004】
そこで、洗車機本体を車両出口よりも車両入口側に寄った位置に停止させ、車両出口からの退出を容易にすることが考えられる。しかしながら上述のようにすると、今度は後続車両が車両入口から進入する際に運転がしずらくなる問題が発生する。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ドライブスルー型の洗車機において、車両洗浄位置への進入と車両洗浄位置からの退出とを容易に行えるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項2の発明は、洗車機の車両入口とその反対側の車両出口との間に、車両を停止させて洗浄するための車両洗浄位置を設け、洗浄手段を有する洗車機本体の、往行を開始するスタート位置を前記車両出口の近傍に設け、前記車両入口から進入して前記車両洗浄位置に停止した車両を、その車両洗浄位置に停止した状態で前記洗車機本体を走行させて洗浄し、洗浄終了後の車両を前記車両洗浄位置から前記車両出口を通って退出させる洗車機において、前記車両洗浄位置からの車両の退出を検出する退出検出装置と、前記洗車機本体を、前記スタート位置よりも前記車両入口側に寄った位置に停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後に前記退出検出装置の検出に基づいて、前記洗車機本体を前記スタート位置へ走行させる制御装置とを備え、洗車機本体の車両出口側には、洗浄終了後に該洗車機本体がスタート位置へ向けて走行しているときに車両を検知可能な検知装置を配設し、洗浄終了後に洗車機本体がスタート位置へ向けて走行しているときに該検知装置が退出車両を検知するとその検知に応じて洗車機本体の前記走行を停止させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
【実施例】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0009】
図1〜図6は本発明の一実施例を示すもので、図1は洗車機の全体平面図、図2は洗車機の全体側面図、図3は図1の3-3線矢視図、図4は操作パネルの正面図、図5は作用を説明するフローチャート、図6は制御系のブロック図である。
【0010】
図1〜図3に示すように、車両の上面を洗浄するトップブラシ1と、車両の側面を洗浄する左右一対のサイドブラシ2,2と、車両の上面を乾燥するトップノズル4と、車両の側面を乾燥する左右一対のサイドノズル5,5と、図示されていない洗浄水噴射装置及びワックス水噴射装置とよりなる洗浄手段が設けられた門型の洗車機本体6は、駆動輪7,7と遊輪8,8とにより走行レール9,9上を往復走行する。
【0011】
前記駆動輪7,7はそれぞれ駆動モータ10,10に接続されており、洗車機本体6を往復走行させるべく駆動される。一方の駆動モータ10の出力軸には、その回転数に応じた数のパルスを出力するロータリエンコーダ11が設けられている。
【0012】
一方の走行レール9の一端近傍にはカム12が設けられており、洗車機本体6に設けた位置検出スイッチ13が前記カム12に当接することにより、洗車機本体6が鎖線で示すスタート位置6Bにあることが検出される。また前記走行レール9の他端近傍にはカム29が設けられており、このカム29に前記位置検出スイッチ13が当接することにより、洗車機本体6が鎖線で示す折り返し位置6Cにあることが検出される。
【0013】
走行レール9,9の内側には、車両を左右方向に位置決めすべく車輪の外側を案内する案内パイプ18,18と、車両を前後方向に位置決めすべく右前輪の停止位置を規制するストッパ19とが設けられている。車両が前記案内パイプ18,18及びストッパ19によって位置決めされ、洗浄を行うための車両洗浄位置V2に停止すると、前記ストッパ19の内側に設けられた踏込みスイッチ20が作動する。
【0014】
洗車機の車両入口Iの手前側には遮断機15と受付装置16とが設けられており、また洗車機の車両出口Oの向う側には案内表示器17が設けられている。
【0015】
受付装置16には、後述する操作パネル21と、記憶手段N1及び記憶有無検出手段N2を備えた操作入力制御装置22(図6参照)と、操作パネル21の操作方法、注意事項及び車両の停止前進を案内するスピーカー23とが設けられている。
【0016】
図4に示すように、操作パネル21は、カードの有効、無効を判別するカードリーダ30と、洗車コースを操作入力する普通洗車キー31及びワックス洗車キー32と、スポイラー、キャリアー、ドアミラーの回避動作を行わせるYESキー33A,34A,35A及び前記回避動作を行わせないNOキー33B,34B,35Bと、前記各キー31〜35Bのキーの入力を取り消すときに押すクリアキー36と、前記各キー31〜35Bの入力に間違いがない時に押すスタートキー37とが設けられている。前記各キー31〜37はランプを内装しており、押圧されると点灯するようになっている。
【0017】
前記YESキー33Aを押したときは、洗車中にスポイラーを回避する動作が行なわれ、前記YESキー34Aを押したときは、洗車中にキャリアーを回避する動作が行なわれ、前記YESキー35Aを押したときは、洗車中にドアミラーを回避する動作がそれぞれ自動的に行なわれる。
【0018】
遮断機15は門型のアーチ24と昇降モータ25により上限位置及び下限位置間を移動する竿26とからなり、アーチ24には、車両待機位置V1への来車を検出する来車検出手段27としての投光器27Aと受光器27Bとが設けられている。
【0019】
図6に示すように、洗車機本体6に設けられた制御装置14には、洗車機制御手段D1と、記憶手段D2と、記憶有無検出手段D3と、待機位置検出手段D4と、作動検出手段D5とが設けられている。
【0020】
待機位置検出手段D4は、洗車機本体6がスタート位置6Bから往行を開始してスタート位置検出スイッチ13がカム12から離れたときから、ロータリエンコーダ11が1パルスを出力する毎に、洗車機本体6が往行しているときは+1し、復行しているときは-1して洗車機本体6の走行位置を演算し、その走行位置から洗車機本体6が図1に示す待機位置6Aに達したことを検出する。
【0021】
洗車機制御手段D1は、下記▲1▼及び▲2▼の洗車コースの作動を洗車機本体6に行わせる。
▲1▼ 普通洗車コース
スタート位置6Bから折り返し位置6Cまで、洗浄水を車両に噴射してトップブラシ1とサイドブラシ2,2とで車両をブラッシングする往行洗浄を行い、引き続く折り返し位置6Cからスタート位置6Bまで、トップノズル4とサイドノズル5,5とで車両に空気を噴射する復行乾燥を行い、引き続く再往行時にスタート位置6Bから待機位置6Aまで再往行乾燥を行う。
▲2▼ ワックス洗車コース
スタート位置6Bから折り返し位置6Cまで、洗浄水を車両に噴射してトップブラシ1とサイドブラシ2,2とで車両をブラッシングした後にワックス水を車両に噴射する往行洗浄ワックス塗布を行い、引き続く折り返し位置6Cからスタート位置6Bまで、トップノズル4とサイドノズル5,5とで車両に空気を噴射する復行乾燥を行い、引き続く再往行時にスタート位置6Bから待機位置6Aまで再往行乾燥を行う。
【0022】
尚、符号28は、車両が車両洗浄位置V2に停車したときに注意事項を案内したり、洗車が終ったときに前進退出を案内するスピーカー、符号38は、後部(即ち洗車機本体6よりも車両出口O側)に車両が停車しているとき該車両に接触検知して洗車機本体6の復行を停止させる安全スイッチ、符号39は前記洗車機に隣接して設けられた塀である。
【0023】
而して前記安全スイッチ38は、本発明の検知装置を構成するものであって、図1〜3にも明示するように洗車機本体6の車両出口O側の端部に配設されている。従って洗車機本体6が後述するように洗車終了後に前記待機位置6Aからスタート位置6Bへ復行しているときに停車している退出車両(従って該車両と洗車機本体との接近)を検知可能であり、その検知に応じて洗車機本体6の前記復行を停止させて、洗車機本体6が退出車両に追突するのを未然に防止できる。
【0024】
次に、前述の構成を備えた本発明の実施例の作用を、図5のフローチャート及び図6のブロック図を参照して説明する。
【0025】
洗車機本体6が待機位置6Aに停止していて、車両が車両洗浄位置V2に入っていないで、来車検出手段27が車両を検出していないで、記憶手段N1,D2に記憶が無く、遮断機15の竿26が図2に示す下限位置にある状態で始めるとする。
【0026】
洗車機制御手段D1の作動信号と、踏込みスイッチ20の検出信号と、待機位置検出手段D4の検出信号と、記憶有無検出手段D3の検出信号とにより、洗車機が待機位置6Aにおいて待機中であることを作動検出手段D5が検出すると(ステップS1)、制御装置14は操作入力制御装置22へ待機中信号を出力する(ステップS2)。操作入力制御装置22が制御装置14からの待機中信号を検出し(ステップS3)、且つ記憶手段N1に記憶が無いことを検出すると(ステップS4)、操作入力待ちの状態となる(ステップS5)。
【0027】
上記操作入力待ちの状態で、車両が図1の車両待機位置V1に入ったことを来車検出手段27が検出すると、入力制御装置22はカードの受付けを可能にする。運転者が乗車したままカードをカードリーダ30に挿入し、カードが有効であると洗車コースを選択する普通洗車キー31及びワックス洗車キー32のランプが点滅する。普通洗車キー31及びワックス洗車キー32のいずれか一方のキーを押すと、そのランプが点灯して他のランプが消灯し、次のスポイラーのYESキー33A及びNOキー33Bのランプが点滅する。スポイラーのYESキー33A及びNOキー33Bのいずれか一方のキーを押すと、そのランプが点灯して他のランプが消灯する。以下同様にしてキャリアー及びドナミラーに対応するYESキー34A,35A又はNOキー34B,35Bを順次押して全ての入力が完了すると、クリアキー36及びスタートキー37のランプが点滅する。
【0028】
次にスタートキー37を押すと、スタートキー37のランプが点灯してクリアキー36のランプが消灯し、カードが排出される。運転者がカードを抜き取ったのをカードリーダ30が検出すると(ステップS5)、洗車コース、スポイラー、キャリアー、ドアミラーの各操作入力による洗車条件信号が、操作入力制御装置22から制御装置14へ出力される(ステップS6)。制御装置14では前記洗車条件を記憶手段D2に記憶し、これを記憶有無検出手段D3が検出すると、作動検出手段D5はそれまで出力していた待機中信号の出力を停止すると同時に、洗車機本体6を待機位置6Aからスタート位置6Bへ復行させ、遮断機15の竿26を上限へ移動させる(ステップS7)。
【0029】
また、ステップS6で操作入力制御装置22が洗車条件信号を出力し終えると、操作入力制御装置22は各キー31〜37のランプを消灯するとともに、来車検出手段27の検出によりカードリーダ30を受付可能な状態にし、後続車両の操作入力待ちの状態となる。この状態で、前記ステップS5における先行車両の操作入力と同様にして後続車両の操作入力があると(ステップS8)、この後続車両の操作入力による洗車条件を記憶手段N1に記憶する(ステップS9)。
【0030】
さて、洗車機本体6がスタート位置6Bに達して停止し、車両待機位置V1にあった先行車両が車両入口Iから進入して車両洗浄位置V2に停車したのを踏込みスイッチ20が検出し、その状態が数秒間(約3秒)継続すると、車両が車両洗浄位置V2に確実に停車したと判断し(ステップS10)、洗車機制御手段D1は記憶手段D2に記憶されている洗車条件の洗車を開始するとともに、竿26を下限にする(ステップS11)。このときステップ8で後続車両の操作入力がなければ(ステップS12)、操作入力待ちをし、操作入力が行なわれると記憶手段N1に洗車条件を記憶する(ステップS13,S14)。
【0031】
洗車機本体6が再往行して待機位置6Aに達すると、その位置で洗車機本体6が停止して洗車を終了する。洗車が終了すると、スピーカー28及び案内表示器17の案内により運転者は車両を前進させて車両出口Oから退出する。これを踏込みスイッチ20が検出して数秒間(約3〜5秒)が経過すると、先行車両が退出したと作動検出手段D5が判断し(ステップS1)、記憶手段D2の記憶を消して待機中信号を出力する(ステップS2)。操作入力制御装置22に待機中信号が入力されると、記憶有無検出手段N2が記憶手段N1に後続車両の洗車条件の記憶があるか検出し(ステップS4)、有るときはその洗車条件を制御装置14へ出力するとともに記憶手段N1の記憶を消し、来車検出手段27の検出によりカードリーダ30の受付を可能にする(ステップS15)。以下前記ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS10→ステップS11によって後続車両の洗車を開始する。
【0032】
上述のように、先行車両が車両洗浄位置V2に入って洗車が開始されると、その洗車が終了するのを待たず、後続車両は直ちに車両待機位置V1に入って洗車条件の入力を行うことが可能となる。従って、先行車両の洗浄と後続車両の洗車条件入力とを同時に並行して行うことが可能になり、複数台の車両を連続して洗浄する場合に大幅な時間短縮が達成される。
【0033】
また、洗車終了時に洗車機本体6が停止する待機位置6Aが、スタート位置6Bよりも折り返し位置6C側に寄った位置に設定されているため、待機位置6Aにある洗車機本体6と車両出口Oとの間に充分なスペースが確保される。従って、運転者は塀39に邪魔されることなく、且つ洗車機本体6の内部を手前側から向こう側にくぐり抜けることなく、容易に退出することができる。
【0034】
また、通常の洗車機では洗車終了時に洗車機本体6がスタート位置6Bに停止するようになっているため、本発明の如く洗車終了時に洗車機本体6を待機位置6Aに停止させると、運転者が洗車が終了したことを認識できずに退出に遅れが生じる可能性がある。しかしながら、前述のように、洗車が終了するとスピーカー28及び案内表示器17で運転者に洗車終了を報知し、車両の速やかな退出を促すことができる。
【0035】
また、洗車条件の入力が終了すると遮断機15の竿26が上限へ移動するので、車両待機位置V1にある車両の運転者に洗車機への進入を促して時間のロスを回避することができる。しかも、車両が車両入口Iから車両洗浄位置V2に進入するとき、洗車機本体6は既に待機位置6Aからスタート位置6Bに復行しているため、車両は洗車機本体6に邪魔されずに容易に車両洗浄位置V2に進入することができる。
【0036】
また、図1において車両が右旋回しながら退出する際、タイヤが右側の走行レール9の先端(符号A参照)を踏んで破損させる虞があるが、案内パイプ18,18を設けたことによりタイヤが走行レール9を踏まないようにして該走行レール9の破損を防止することができる。案内パイプ18,18の先端位置は、車体重量が大きくて走行レール9,9を破損させる虞のある車両の旋回半径を考慮して決定すれば良い。
【0037】
また、図1において車両が右旋回して退出する場合、小さなスペースで退出することができる。
【0038】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0039】
例えば、実施例では洗車機本体6の待機位置6Aをスタート位置6Bと折り返し位置6Cとの間に設定しているが、前記待機位置6Aを折り返し位置6Cに一致させても良い。
【0040】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、洗車機の車両入口とその反対側の車両出口との間に、車両を停止させて洗浄するための車両洗浄位置を設け、洗浄手段を有する洗車機本体の、往行を開始するスタート位置を前記車両出口の近傍に設け、前記車両入口から進入して前記車両洗浄位置に停止した車両を、その車両洗浄位置に停止した状態で前記洗車機本体を走行させて洗浄し、洗浄終了後の車両を前記車両洗浄位置から前記車両出口を通って退出させる洗車機において、前記車両洗浄位置からの車両の退出を検出する退出検出装置と、前記洗車機本体を、前記スタート位置よりも前記車両入口側に寄った位置に停止させて洗浄を終了させ、その洗浄終了後に前記退出検出装置の検出に基づいて、前記洗車機本体を前記スタート位置へ走行させる制御装置とを備えるので、洗浄終了時には車両出口近傍のスタート位置よりも車両入口側に寄った位置に洗車機本体が停止するため、車両洗浄位置からの退出の際に車両が洗車機本体の内部を手前側から向こう側にくぐり抜ける必要がなくなって退出が容易になる。また、先行車両が車両出口から退出して後続車両が車両入口から進入する際に、洗車機本体が既に先程の停止位置からスタート位置へ移動しているため、後続車両は洗車機本体の内部に入り込むことなく容易に車両洗浄位置に進入することができる。以上の結果、車両の退出及び進入の際の運転が容易になって時間がかからないため、洗車時間の短縮に寄与することができる。また特に洗浄終了後における洗車機本体のスタート位置への走行を、車両洗浄位置からの車両退出を検出する退出検出装置の検出に基づいて制御するようにしているため、車両洗浄位置からの車両退出動作に応じて洗車機本体をスタート位置へ的確に自動復帰させることができる。
【0041】
また特に洗浄終了後に洗車機本体がスタート位置へ向けて走行しているときに、洗車機本体の車両出口側に設けた検知装置が退出車両を検知するのに応じて洗車機本体の前記走行を停止できるようにしたので、洗車機本体が退出車両に衝突するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
洗車機の全体平面図
【図2】
洗車機の全体側面図
【図3】
図1の3-3線矢視図
【図4】
図4は操作パネルの正面図
【図5】
作用を説明するフローチャート
【図6】
制御系のブロック図
【符号の説明】
1 トップブラシ(洗浄手段)
2 サイドブラシ(洗浄手段)
4 トップノズル(洗浄手段)
5 サイドノズル(洗浄手段)
6 洗車機本体
6A 待機位置(車両入口側に寄った位置)
6B スタート位置
14 制御装置
20 踏込みスイッチ(退出検出装置)
38 安全スイッチ(検知スイッチ)
I 車両入口
O 車両出口
V2 車両洗浄位置
 
訂正の要旨 訂正の要旨
審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2003-01-30 
出願番号 特願平5-57409
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (B60S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川向 和実  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 鈴木 久雄
神崎 潔
登録日 1999-02-12 
登録番号 特許第2884460号(P2884460)
発明の名称 洗車機  
代理人 板垣 孝夫  
代理人 仁木 一明  
代理人 森本 義弘  
代理人 仁木 一明  
代理人 落合 健  
代理人 落合 健  

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