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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1079287
審判番号 不服2001-18203  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-09-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-11 
確定日 2003-07-03 
事件の表示 平成 6年特許願第 35508号「可視カメラ・赤外線カメラ併用型異常検知装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 9月19日出願公開、特開平 7-245757]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、発明の名称を「可視カメラ・赤外線カメラ併用型異常検知装置」とする平成6年3月7日の出願である。
本願は、拒絶の理由が通知され(平成12年11月27日付け)、同通知において指定された期間内(平成13年2月5日)に手続補正書が提出されたところ、その後、更に拒絶の理由が通知され(平成13年7月9日付け)、更に通知された拒絶の理由により拒絶査定がされた(平成13年9月4日付け)。

2.査定の理由
査定の理由は、拒絶理由通知書(平成13年7月9日付け)によれば、概略、下記1のとおりである。
記1(査定の理由)
平成13年2月5日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。

「中央処理装置」が「比較結果に基づいて画像特性により火災を類別する機能」、「この類別を赤外線画像により熱画像原画と比較して最終的な異常判断を行う機能」、「異常種別をパターン化して判断する機能」を備えていることは、出願当初の明細書又は図面に記載されておらず、出願当初の明細書又は図面からみて明らかでもない。
したがって、上記補正は、出願当初の明細書又は図面から当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項であるとは認められない。

3.当審の判断
(1)手続補正書の記載
平成13年2月5日付け手続補正書の特許請求の範囲(請求項の数:1)の記載は下記2のとおりである(以下、下記2の請求項1に係る発明を「補正に係る発明」ともいう)。
記2(手続補正書の特許請求の範囲)
【請求項1】被検知区域の視覚画像を得る可視カメラと、被検知区域の赤外線画像を得る赤外線カメラと、可視カメラ及び赤外線カメラの画像信号をディジタル化して記憶する記憶装置と、記憶装置の情報を画像処理演算する画像処理装置と、画像処理装置による画像処理演算を制御する中央処理装置と、画像処理信号を表示するディスプレイ装置と、中央処理装置を操作して被検知区域の異常状態を把握する操作端末とからなり、中央処理装置には、ディジタル化された信号を可視画像原画と適宜時間間隔で比較する機能と、比較結果に基づいて画像特性により火災を類別する機能と、この類別を赤外線画像により熱画像原画と比較して最終的な異常判断を行う機能と、異常種別をパターン化して判断する機能とが備えられていることを特徴とする可視カメラ・赤外線カメラ併用型異常検知装置。
(2)当初明細書の記載
本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」とも言う)には、下記3の記載が認められ、これらの記載によれば、当初明細書には、下記4の構成を主たる構成とする「可視カメラ・赤外線カメラ併用型異常検知装置」が記載されていることが認められる。
記3(当初明細書の記載)
(ア)「【従来の技術】火力プラントの燃料貯蔵設備には、漏油、発煙、火災及び侵入者の異常発生が考えられるが、これらの異常の検知は、現在、熱式火災検知器、…可視画像式異常検出器、熱画像式異常検出器を単独または併用して行っている。」(0002)
(イ)「【発明が解決しようとする課題】従来の漏油、発煙、火災及び侵入者の異常検知では以下に示した問題がある。…(3)可視画像式異常検出器は、…夜間の漏油、発煙、侵入者は周囲が暗いため異常検出が困難である。また、昼間の初期火災(種火)は、周囲が明るいため異常検出が困難である。…(4)熱画像検出器は…発熱部の見えない発煙の場合は検知不可能である。」(0003)
(ウ)「本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、可視画像式と熱画像式を組み合わせると共に、互いの欠点を補う画像処理アルゴリズムを併用し、異常検知を的確且つ迅速に行うことができる異常検知装置を提供することを目的とする。」(0004)
(エ)「画像処理をスタートしたら、熱画像原画像の変更が必要な場合…赤外線カメラ2から熱画像を取込みメモリA21aに記憶する。また、可視画像原画の変更が必要な場合…可視カメラ1から可視画像を取込みメモリB21bに記憶する。」
「次に、赤外線カメラ2から熱画像を点検画像としてメモリX21xに一時記憶する。記憶後、先に記憶したメモリA21aの内容とメモリX21xの内容とを比較する。比較の結果、異常{熱画像による火災・発煙(発熱部あり)・漏油(温度あり)・侵入者…}が検知された場合、その異常内容と熱画像中における位置情報をメモリC21cに記憶する。」
「同様に、可視カメラ1から可視画像を点検画像としてメモリX21xに一時記憶する。記憶後、先に記憶したメモリB21bの内容とメモリX21xの内容とを比較する。比較の結果、異常{可視画像による火災・発煙・漏油・侵入者(何れも周囲との明暗差有り)…}が検知された場合、その異常内容と可視画像中における位置情報をメモリD21dに記憶する。」
「最後に、熱画像と可視画像の相互補正としてメモリC21cとメモリD21dの内容を比較し、同一の位置の同一の異常の有無を確認する。この結果、異常があった場合には、警報処理としてテレビディスプレイ4上に異常内容と共にその場所を表示する。」(0010)
(オ)「【発明の効果】本発明の可視カメラ・赤外線カメラ併用型異常検知装置は、可視カメラからの可視監視画像を画像処理装置により処理し、火災、発煙等の異常内容と共に監視画像内の異常発生場所を記憶装置に異常警報として記憶し、同様に赤外線カメラからの熱監視画像を画像処理装置により処理し、火災、発煙等の異常内容と共に監視画像内の異常発生場所を記憶装置に異常警報として記憶し、これら二つの異なる監視画像から得られた異常警報を基に多数決理論を用いて異常判断を行うようにしたので、同一場所に同一内容の異常が検知された場合、信頼性の高い異常検知を行うようことができる。この結果、可視画像式と熱画像式を組み合わせると共に、互いの欠点を補う画像処理アルゴリズムを併用し、異常検知を的確且つ迅速に行うことが可能になる。」(0022)
記4(主たる構成)
赤外線カメラからの熱画像を処理し、異常内容(火災・発煙・漏油・侵入者)と異常発生位置とを記憶し、同様に、可視カメラからの可視画像を処理し、異常内容(火災・発煙・漏油・侵入者)と異常発生位置とを記憶し、これら二つの異なる監視画像から得られた異常警報(異常内容及び異常発生位置)を基に、同一の位置における同一の異常内容の有無を確認し、これが検知された場合に「異常」と判断する。
(3)補正に係る発明
(a)補正に係る発明の「ディジタル化された信号を可視画像原画と適宜時間間隔で比較する機能」は、上記(エ)の「可視カメラ1から可視画像を点検画像としてメモリX21xに一時記憶する。記憶後、先に記憶したメモリB21bの内容とメモリX21xの内容とを比較する。」に相当することが認められる。
(b)「比較結果に基づいて画像特性により火災を類別する機能」は、上記(エ)の「比較の結果、異常{熱画像による火災・発煙(発熱部あり)・漏油(温度あり)・侵入者…}が検知された場合、その異常内容と熱画像中における位置情報をメモリC21cに記憶する。」と「比較の結果、異常{可視画像による火災・発煙・漏油・侵入者…}が検知された場合、その異常内容と可視画像中における位置情報をメモリD21dに記憶する。」に相当することが認められる。
なお、「火災を類別する」の部分は、その表現上、上記(エ)の「異常内容(火災・発煙・漏油・侵入者)と異常発生位置を検知する」に相当すると直ちに認められるものではないが、請求人は、本願図面の図2(及び図3)に記載した「熱(可視)画像異常検知「火災検知、発煙検知、漏油検知、侵入者検知」」及び「熱(可視)画像異常内容場所記録」の過程が、熱(可視)画像の比較結果に基づく火災の類別及び比較結果の記憶を示す旨主張しているので(平成13年11月6日付け手続補正書の4頁参考図1、5頁参考図2)、その表現の適切さはひとまず措き、その意味を請求人の主張のとおりに解して以下検討を続ける。
(c)「この類別を赤外線画像により熱画像原画と比較して最終的な異常判断を行う機能」は、上記(エ)の「最後に、熱画像と可視画像の相互補正としてメモリC21cとメモリD21dの内容を比較し、同一の位置の同一の異常の有無を確認する。この結果、異常があった場合には、警報処理としてテレビディスプレイ4上に異常内容と共にその場所を表示する。」に対応することが認められる。
ただ、「最終的な異常判断を行う」のに際して、補正に係る発明では、「この類別」(注:熱画像及び可視画像についてした「火災の類別」)を「熱画像原画」と比較することとしている。
他方、当初明細書では、上記(エ)(オ)によれば、熱画像から検出した「異常内容(火災・発煙・漏油・侵入者)と異常発生位置」(メモリC21c)と可視画像から検出した「異常内容(火災・発煙・漏油・侵入者)と異常発生位置」(メモリD21d)とを比較している。すなわち、当初明細書に記載した発明は、請求項1の表現を借りるとすれば、仮に、「火災を類別する」の意味を請求人の上記主張のとおり「異常内容(火災・発煙・漏油・侵入者)と異常発生位置を検出する」と解した場合、「火災の類別」を互いに比較するものであり、補正に係る発明のように、「火災の類別」を「熱画像原画」と比較するものではない。
当初明細書には、他に、熱画像及び可視画像についてした「火災の類別」を「熱画像原画」と比較することを示す記載はなく、示唆する記載も見あたらない。
(d)請求人は、当初明細書の「最後に、…その場所を表示する。」(段落(0010)の第14行〜第17行)は、熱画像の比較結果及び可視画像の比較結果を赤外線画像により熱画像原画と比較して(相互補正して)最終的な異常判断を行う機能を記載している旨(平成13年11月6日付け手続補正書の2頁22行〜25行)、図面の第3図に記載された「可視画像/熱画像相互補正」、「異常検知」及び「警報処理」の過程は、熱画像の比較結果と可視画像の比較結果を相互補正して最終的な異常判断を行う機能を示す旨(同手続補正書5頁の参考図2の後半)を各々主張するが、いずれを見ても、熱画像の比較結果及び可視画像の比較結果を「熱画像原画」と比較することを示すものではない。上記段落(0010)及び第3図の記載をもって、「この類別を赤外線画像により熱画像原画と比較して」が当初明細書に記載されているとすることはできない。
(4)まとめ
以上、補正に係る発明の「この類別を赤外線画像により熱画像原画と比較して最終的な異常判断を行う機能」は、「火災を類別する」の意味を措いても、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の事項であると言うことはできない。

4.むすび
したがって、平成13年2月5日付けの手続補正書によりした補正は、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-04-30 
結審通知日 2003-05-06 
審決日 2003-05-20 
出願番号 特願平6-35508
審決分類 P 1 8・ 55- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小池 正彦山本 章裕  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 酒井 朋広
小林 秀美
発明の名称 可視カメラ・赤外線カメラ併用型異常検知装置  
代理人 光石 忠敬  
代理人 田中 康幸  
代理人 光石 俊郎  

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