• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  H05K
管理番号 1079588
異議申立番号 異議2002-71832  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-07-29 
確定日 2003-04-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3250937号「配線基板」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3250937号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 一.手続の経緯
特許第3250937号の請求項1,2に係る発明は、平成7年3月29日に特許出願され、平成13年11月16日にその発明について特許権の設定がなされた。その後、特許異議申立人奥山孝治より全請求項について特許異議の申立がなされたので、平成14年10月17日付で当審より特許取消の理由を通知したところ、その指定期間内である平成14年12月13日付で、特許異議意見書の提出と共に訂正請求がされたものである。

二.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は以下のとおりである。
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1,2の記載を
「【請求項1】複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部及び表面に配線導体を被着させて成る配線基板であって、前記配線導体の表面を金層で被覆するとともに前記絶縁基体の最上層のみを酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロムまたは酸化ニッケルを添加することにより着色させたことを特徴とする配線基板。
【請求項2】複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部及び表面に配線導体を被着させて成る配線基板であって、前記配線導体を銀粉末もしくは金粉末で形成するとともに前記絶縁基体の最上層のみを酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロムまたは酸化ニッケルを添加することにより着色させたことを特徴とする配線基板。」
と訂正する。(下線部の加入訂正。以下同様。)
訂正事項b
明細書の段落番号【0014】を
「【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の配線基板は複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部及び表面に配線導体を被着させて成る配線基板であって、前記配線導体の表面を金層で被覆するとともに前記絶縁基体の最上層のみを酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロムまたは酸化ニッケルを添加することにより着色させたことを特徴とするものである。」
と訂正する。
訂正事項c
明細書の段落番号【0015】を
「【0015】また本発明の配線基板は複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部及び表面に配線導体を被着させて成る配線基板であって、前記配線導体を銀粉末もしくは金粉末で形成するとともに前記絶縁基体の最上層のみを酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロムまたは酸化ニッケルを添加することにより着色させたことを特徴とするものである。」
と訂正する。
訂正事項d
明細書の段落番号【0017】を
「【0017】また本発明の配線基板によれば、複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の最上層のみを着色させたことから絶縁基体全体の誘電体損は大きくならず、その結果、配線導体に電気信号を高速で伝搬させても電気信号が大きく減衰することもない。」
と訂正する。
訂正事項e
明細書の段落番号【0021】を
「【0021】前記アルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体1はその比誘電率が5.5(室温1MHz) 以下と低く、そのため絶縁基体1 の内部及び表面に被着させた配線導体2を伝わる電気信号の伝搬速度が極めて速いものとなり、その結果、絶縁基体1 に電気信号の高速伝搬を要求する半導体素子3 の搭載が可能となる。」
と訂正する。
訂正事項f
明細書の段落番号【0033】を
「【0033】また本発明の配線基板によれば、複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の最上層のみを着色させたことから絶縁基体全体の誘電体損は大きくならず、その結果、配線導体に電気信号を高速で伝搬させても電気信号が大きく減衰することはない。」
と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、発明を特定する事項である「ガラスセラミックス焼結体」を、これに含まれる事項である「アルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体」に変更し、しかも、「アルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成る」点については、願書に添付された明細書の【0020】に記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項b〜fは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項第1,3号に掲げる事項を目的とするもので、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

三.特許異議申立についての判断
1.本件請求項1,2に係る発明
上記「二.」で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1,2に係る発明は、上記訂正に係る明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部及び表面に配線導体を被着させて成る配線基板であって、前記配線導体の表面を金層で被覆するとともに前記絶縁基体の最上層のみを酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロムまたは酸化ニッケルを添加することにより着色させたことを特徴とする配線基板。(以下、「本件第1発明」という。)
【請求項2】複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部及び表面に配線導体を被着させて成る配線基板であって、前記配線導体を銀粉末もしくは金粉末で形成するとともに前記絶縁基体の最上層のみを酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロムまたは酸化ニッケルを添加することにより着色させたことを特徴とする配線基板。(以下、「本件第2発明」という。)」

2.引用例に記載された発明
当審からの取消理由で引用した、本願の出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された特願平6-286447号(特開平8-148778号公報参照)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。
イ)「【請求項1】一層又は複数層のセラミック層からなるセラミック基板において、その表面及び/又は裏面のほぼ全面に黒又は濃色の着色セラミック層が形成され、該着色セラミック層上に導体層が形成されていることを特徴とするセラミック配線基板。」
ロ)「【請求項2】着色セラミック層がCoO及び/又はRuO2を含み、その含有量がCoOをX軸としRuO2をY軸とする座標において、重量部で(0.3,0),(10,0),(0,0.5)及び(0,10)の4点に囲まれた範囲内であることを特徴とする請求項1記載のセラミック配線基板。」
ハ)「【請求項3】 セラミック層がCaO-Al2O3-SiO2-B2O3系、CaO-Al2O3-SiO2系、MgO-Al2O3-SiO2-B2O3系及びCaO-MgO-Al2O3-SiO2-B2O3系から選ばれる一種のガラス成分40〜70重量部と残部がアルミナである組成を有することを特徴とする請求項1記載のセラミック配線基板。」
ニ)「【請求項4】着色セラミック層上に形成される導体層がAg又はAu系であることを特徴とする請求項1記載のセラミック配線基板。」
ホ)「【産業上の利用分野】本発明は、セラミック配線基板表裏面の配線パターンの検査に適したセラミック配線基板に関する。特にCCDカメラを用いた配線パターンの検査に適したセラミック配線基板に関する。」
ヘ)「【0006】着色セラミック層に用いられる着色物質としては、電気特性の劣化を防ぐためできるだけ少量で着色できる物質が選択される。又、セラミック基板及び配線用導体材料とのなじみが良く、かつ白色又は白色に近い導体とのコントラストの強いものであれば限定されない。例えば濃紺色であるCoO、黒であるRuO2などの着色酸化物及びこれら両者の混合物が好適であり、他にAg2O-PdOなどが挙げられる。着色セラミック層を形成する方法としては着色材料を含有するセラミックペーストを白色セラミック基板の上に印刷する方法の他着色したグリーンシートを積層する手段を用いてもよい。又、着色セラミック層はセラミック層と同時に焼成して形成するか、セラミック層のみあらかじめ焼成し、その表面及び/又は裏面に着色セラミックペーストや着色グリーンシートを形成させ焼成する方法どちらでも良い。又、焼成中に着色物質に変化するものを層としてもよい。セラミック基板の全面に着色セラミック層を設けると検査工程で全ての配線パターンを自動検査できるので好ましいが、もし電気特性、蒸着手段等の理由で検査において重要な基板上のある特定部分のみ着色セラミック層が設けられる場合も本願発明に含まれる。・・・なお、導体とのコントラストを強くするためには、基板材料に着色剤としてCoO、RuO2、MnO2、Fe2O3等の酸化物を含有させることも考えられるが、このようにセラミック基板内部まで着色剤が入ると、セラミック体の特性が低下し、特に絶縁抵抗が劣化し、本来所有している低温焼成セラミックの優秀な電気特性をそこなってしまうため、好ましくない。」
ト)「【0008】・・・配線パターンの検査は、CCDカメラによって基板表面の濃色と配線パターンの白色又は白に近い色とのコントラストを画像処理の方法によって区別し、製品としての欠陥の有無を判断する。この操作は自動的に行うことができ、しかも基板上の全ての配線パターンを短時間で検査することができる。」
チ)「【0010】・・・次に所定の配線5をAgペーストを用い印刷した。表・裏面となる着色セラミック層2は、Au導体3を印刷法にて形成した。・・・」

上記イ)〜ヘ)及び第1図の記載からすれば、先願明細書には、「複数層」のガラスセラミック層からなる「セラミック基板」であって、その内部に配線が、表面に「Ag又はAu系」の導体からなる「配線パターン」が形成され、セラミック基板の表面の「ほぼ全面に黒又は濃色の着色セラミック層が形成」されている「セラミック配線基板」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比・判断
(1)本件第1発明について
技術常識を勘案すれば、先願発明のガラスセラミック層からなる「セラミック基板」も「セラミック焼結体から成る絶縁基体を備えた」「配線基板」といいうるし、先願発明の「配線」及び「Ag又はAu系」の導体から成る「配線パターン」は両者で「内部及び表面」に被着させる「配線導体」を構成している。
また、第1図を参照すれば、先願発明の「着色セラミック層」は基板の最上層のみを着色させたものとみることができる。
したがって、本件第1発明と先願発明は、複数層のガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部及び表面に配線導体を被着させて成る配線基板であって、前記絶縁基体の最上層のみを酸化コバルト(CoO)等の着色酸化物を添加することにより着色させた配線基板である点で一致し、次の各点で一応の相違があるといえる。
<一応の相違点1>
本件第1発明のガラスセラミックス焼結体がアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るのに対し、先願発明ではそのような数値の言及が無い点。
<一応の相違点2>
本件第1発明の配線導体が表面を金層で被覆するものであるのに対し、先願発明では、「Ag又はAu系」の導体というにとどまり、「金層で被覆する」ことまでの言及はない点。
上記相違点について検討する。
<一応の相違点1>について
先願発明は、「配線パターンの検査に適したセラミック配線基板」を実現するために、表面や裏面に「着色セラミック層」を形成するものであるが、当該「着色セラミック層」の形成と、セラミック材料中の「ガラス成分とアルミナ成分との重量比率」との間には、技術上の格別な関連性はないというべきであって、いわゆる低温焼成ガラスセラッミックス絶縁基板における、ガラス成分とアルミナ成分との重量比率は、基板に要求される電気的特性等に応じて 当業者が適宜変更しうるものであることからすれば(特開平6-199541号公報、参照。)、先願発明における上記の重量比率は、所望の電気的特性等に対応して、当業者が適宜の変更や設定をすべきものである。
しかも、アルミナ成分の重量比率が20〜30%程度のセラミック材料も周知であり(特開平6-16470号公報、特開昭63-107838号公報、参照。)、そのような周知の数値の言及の有無に格別の技術的意義を認めることはできない。
なお、先願明細書中には、上記重量比率に関して、本件第1発明とは異なる値の記載(上記ハの事項参照)があるが、これは単なる一例を示したものとみるべきで、先願発明における上記重量比率を当該記載の値に限定する趣旨の記載ではないというべきである。
<一応の相違点2>について
配線導体の「表面を金層で被覆」したものは、「Ag又はAu系」の導体の一態様であって、しかも、そのような態様は当該技術分野において周知かつ常套的に採用されているものであるから、そのような周知技術についての言及の有無は、技術上、格別の意味をもつものとはいえない。
以上のとおり、上記で一応の相違があるとした点は、いずれも実質上の相違点とは認められず、本件第1発明は先願発明と同一のものといえる。

(2)本件第2発明について
本件第2発明は本件第1発明の「配線導体」について「表面を金層で被覆する」ことに代えて、「銀粉末もしくは金粉末で形成」したものである。
しかしながら、当該技術分野において、銀又は金の粉末で形成する銀又は金の配線導体は周知のものであるから、配線導体を「Au又はAg系」の導体で形成する旨の言及がある以上、「銀粉末もしくは金粉末で形成」した配線導体についての開示も実質上存在するといえる。
したがって、本件第2発明も、本件第1発明と同様に、先願発明と同一のものといえる。

4.むすび
以上のとおり、本件第1、2発明は、先願発明と実質的に同一であると認められ、しかも、本件第1、2発明の発明者が上記先願発明の発明者と同一であるとも、本件出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められないので、本件第1、第2発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができないものに該当する。
したがって、本件第1、第2発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定に基づいて取り消すべきものである。
よって、上記結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
配線基板
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部及び表面に配線導体を被着させて成る配線基板であって、前記配線導体の表面を金層で被覆するとともに前記絶縁基体の最上層のみを酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロムまたは酸化ニッケルを添加することにより着色させたことを特徴とする配線基板。
【請求項2】複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部及び表面に配線導体を被着させて成る配線基板であって、前記配線導体を銀粉末もしくは金粉末で形成するとともに前記絶縁基体の最上層のみを酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロムまたは酸化ニッケルを添加することにより着色させたことを特徴とする配線基板。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は半導体素子やコンデンサ、抵抗等の電子部品が搭載される配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、配線基板は一般に、酸化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料から成る絶縁基体の内部及び上面にタングステン、モリブデン、マンガン等の高融点金属粉末から成る複数個の配線導体を被着させた構造を有しており、絶縁基体の上面に半導体素子やコンデンサ、抵抗等の電子部品を搭載させるとともに該電子部品の電極を半田を介し配線導体に接続させることによって絶縁基体上面に搭載された各電子部品はその各々が配線導体を介して電気的に接続されるようになっている。
【0003】
しかしながら、この従来の配線基板は、
▲1▼絶縁基体を構成する酸化アルミニウム質焼結体の比誘電率が9.5〜10(室温1MHz)と高いため、絶縁基体に形成した配線導体を伝わる電気信号の伝搬速度が遅く、そのため電気信号の高速伝搬を要求する半導体素子はその搭載が不可となる。
【0004】
▲2▼配線導体を構成するタングステン、モリブデン等の電気抵抗値が高いため配線導体を伝わる電気信号の電圧降下が大きく、そのため配線導体を微細とし配線基板を小型高密度化することができない。
【0005】
等の欠点を有していた。
【0006】
そこで上記欠点を解消するために、絶縁基体をガラスセラミックス焼結体で形成し、配線導体を銅や銀、金等の粉末で形成した配線基板が提案されている。
【0007】
かかる配線基板によれば、絶縁基体を構成するガラスセラミックス焼結体の比誘電率が5.5(室温1MHz)と低いことから絶縁基体に形成した配線導体を伝わる電気信号の伝搬速度が遅くなることはなく、高速伝搬を要求する半導体素子の搭載も可能となる。
【0008】
またこの配線基板によれば絶縁基体の焼成温度が低く、配線導体を導通抵抗の小さい銅や銀、金で形成することができることから配線導体を伝わる電気信号の電圧降下も小さく、配線導体を微細として配線基板を小型高密度化することもできる。
【0009】
尚、前記配線基板においては、配線導体を銅粉末で形成すると該銅粉末は酸化され易い金属であるため配線導体の露出外表面に短時間に酸化物膜が形成されてしまい、一旦、配線導体の表面に酸化物膜が形成されると該酸化物膜は半田濡れ性が悪いため配線導体に電子部品の電極を半田を介して強固に接続することができなくなることから銅粉末から成る配線導体の表面には耐蝕性に優れるニッケル及び金がメッキ法により順次層着される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記配線基板はガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体が白色を呈しており、その光の反射率が銀や金の光の反射率に近似することから配線導体の位置を認識して電子部品を配線基板の所定位置に搭載させるオートマウンタを使用して配線基板上に半導体素子やコンデンサ等の電子部品を搭載させる際、オートマウンタが配線導体の位置を正確に認識することができず、その結果、配線基板の所定位置に電子部品を正確に搭載することが不可となる欠点を誘発した。
【0011】
そこで上記欠点を解消するために配線基板のガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体に酸化鉄や酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ニッケル等の着色剤を添加し絶縁基体全体を黒色や褐色、茶褐色とすることによって光の反射率を配線導体を形成する銀や金等の光の反射率に対し異とすることが考えられる。
【0012】
しかしながら、ガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体に酸化鉄や酸化コバルト等の着色剤を添加すると該着色剤は誘電体損が大きいため配線導体を電気信号が高速で伝搬した場合、電気信号が大きく減衰するという欠点が招来してしまう。
【0013】
【発明の目的】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は高速駆動を行う半導体素子やコンデンサ、抵抗等の電子部品を所定位置に正確、且つ強固に搭載接続することができる配線基板を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の配線基板は複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部及び表面に配線導体を被着させて成る配線基板であって、前記配線導体の表面を金層で被覆するとともに前記絶縁基体の最上層のみを酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロムまたは酸化ニッケルを添加することにより着色させたことを特徴とするものである。
【0015】
また本発明の配線基板は複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の内部及び表面に配線導体を被着させて成る配線基板であって、前記配線導体を銀粉末もしくは金粉末で形成するとともに前記絶縁基体の最上層のみを酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロムまたは酸化ニッケルを添加することにより着色させたことを特徴とするものである。
【0016】
【作用】
本発明の配線基板によれば、複数層のガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の最上層を着色させたことから配線導体が銀、金で形成、或いは表面に金が被覆されて形成されているとしても配線導体と絶縁基体の光の反射率が異なり、これによってオートマウンタに配線導体の位置を正確に認識させ、半導体素子やコンデンサ等の電子部品を配線基板の所定位置に極めて正確に搭載させることが可能となる。
【0017】
また本発明の配線基板によれば、複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の最上層のみを着色させたことから絶縁基体全体の誘電体損は大きくならず、その結果、配線導体に電気信号を高速で伝搬させても電気信号が大きく減衰することもない。
【0018】
【実施例】
次に本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の配線基板の一実施例を示し、1は絶縁基体、2は配線導体である。この配線導体2を絶縁基体1に被着させたものが配線基板Aとなる。
【0019】
前記配線基板Aの絶縁基体1はその上面に半導体素子3やコンデンサ4等の電子部品が搭載され、半導体素子3やコンデンサ4等の電子部品を支持する支持部材として作用する。
【0020】
前記絶縁基体1は例えば、アルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体で形成され、40.0乃至46.0重量%の酸化珪素、5.0乃至12.0重量%の酸化ホウ素、26.0乃至32.0重量%のアルミナ、8.0乃至15.0重量%の酸化マグネシウム、5.0乃至10.0重量%の酸化亜鉛から成るホウ珪酸ガラス粉末に、20.0乃至28.0重量%のアルミナ粉末及び適当な有機バインダー、有機溶剤、可塑剤、分散剤を添加混合して泥漿状となすとともに該泥漿物を従来周知のドクターブレード法やカレンダロール法によりシート状に成形することによってグリーンシート(生シート)を得、しかる後、前記グリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともにこれを複数枚積層し、約900℃の温度で焼成することによって製作される。
【0021】
前記アルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体1はその比誘電率が5.5(室温1MHz)以下と低く、そのため絶縁基体1の内部及び表面に被着させた配線導体2を伝わる電気信号の伝搬速度が極めて速いものとなり、その結果、絶縁基体1に電気信号の高速伝搬を要求する半導体素子3の搭載が可能となる。
【0022】
また前記ガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体1の内部及び表面には更に複数個の配線導体2が被着形成されており、該配線導体2には絶縁基体1上に搭載される半導体素子3やコンデンサ4等の電極が半田を介して接続され、これによって半導体素子3やコンデンサ4等の電子部品はその各々が配線導体2を介して相互に電気的に接続されることとなる。
【0023】
前記配線導体2は銅粉末、銀粉末、金粉末等から成り、例えば銅粉末にエチルセルロース、或いはアクリル樹脂とアルファーテルピネオール等の溶剤とを添加混合して得た銅ペーストを絶縁基体1と成るグリーンシートに予め従来周知のスクリーン印刷法等により所定パターンに印刷塗布しておくことによって絶縁基体1の内部及び表面に所定パターンに被着形成される。
【0024】
尚、前記配線導体2を銅粉末で形成する場合、銅は酸化され易い金属であるため銅粉末から成る配線導体2の露出外表面には酸化を防止するためにニッケル及び金がメッキ法により順次層着される。
【0025】
また前記配線導体2は電気抵抗値の小さい金、銀、銅等で形成されていることから配線導体2を伝わる電気信号の電圧降下は極めて小さなものとなり、その結果、配線導体2を微細化して配線導体Aの小型化高密度化を達成することができる。
【0026】
更に前記ガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体1と配線導体2とから成る配線基板Aは絶縁基体1の最上層1aのみが黒色や褐色、茶褐色に着色されており、絶縁基体1の最上層1aの光の反射率が配線導体の光の反射率に対し異なっている。そのためオートマウンタを使用して半導体素子3やコンデンサ4等の電子部品を配線基板Aの所定位置に搭載させる際、オートマウンタが配線導体2の位置を正確に認識して半導体素子3やコンデンサ4等の電子部品を配線基板Aの所定位置に極めて正確に搭載することができる。
【0027】
前記絶縁基体1はまたその最上層1aのみが黒色や褐色、茶褐色に着色されていることから絶縁基体1全体の誘電体損はさほど大きくならず、その結果、配線導体2に電気信号を高速で伝搬させても電気信号が大きく減衰することもない。
【0028】
前記絶縁基体1の最上層1aのみを黒色や褐色、茶褐色に着色する方法としては複数枚のグリーンシートを積層し焼成して絶縁基体1を得る際、最上層1aに位置するグリーンシートに予め酸化鉄や酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ニッケル等の着色剤を添加しておくことによって行われる。
【0029】
かくして上述の配線基板Aによれば、絶縁基体1の上面に半導体素子3やコンデンサ4等の電子部品をオートマウンタを使用して搭載するとともに該半導体素子3やコンデンサ4等の電極を半田を介して配線導体2に接続すれば、絶縁基体1の上面に搭載される半導体素子3やコンデンサ4等の電子部品はその各々が配線導体2を介して電気的に接続され、これによって所定の電気回路を形成することとなる。
【0030】
尚、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、例えば上述の実施例では絶縁基体1の上面にのみ半導体素子3やコンデンサ4等の電子部品を搭載したが、絶縁基体1の上下両面に半導体素子3やコンデンサ4等の電子部品を搭載してもよい。
【0031】
この場合、絶縁基体1はその上下の両表面部が着色される。
【0032】
【発明の効果】
本発明の配線基板によれば、複数層のガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の最上層を着色させたことから配線導体が銀、金で形成、或いは表面に金が被覆されて形成されているとしても配線導体と絶縁基体の光の反射率が異なり、これによってオートマウンタに配線導体の位置を正確に認識させ、半導体素子やコンデンサ等の電子部品を配線基板の所定位置に極めて正確に搭載させることが可能となる。
【0033】
また本発明の配線基板によれば、複数層のアルミナ20.0乃至28.0重量%、残部がホウ珪酸ガラスより成るガラスセラミックス焼結体から成る絶縁基体の最上層のみを着色させたことから絶縁基体全体の誘電体損は大きくならず、その結果、配線導体に電気信号を高速で伝搬させても電気信号が大きく減衰することはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の一実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・・絶縁基体
1a・・・・・・・・・絶縁基体の最上層
2・・・・・・・・・・配線導体
3・・・・・・・・・・半導体素子
4・・・・・・・・・・コンデンサ
A・・・・・・・・・・配線基板
 
訂正の要旨 訂正の要旨
審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-02-21 
出願番号 特願平7-71969
審決分類 P 1 651・ 16- ZA (H05K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 林 茂樹  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 鈴木 久雄
尾崎 和寛
登録日 2001-11-16 
登録番号 特許第3250937号(P3250937)
権利者 京セラ株式会社
発明の名称 配線基板  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ