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審決分類 審判 全部申し立て 産業上利用性  G02B
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  G02B
審判 全部申し立て 特174条1項  G02B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1079604
異議申立番号 異議2002-71527  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-04-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-06-17 
確定日 2003-05-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3239314号「平板レンズアレイおよびそれを用いた液晶表示素子」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3239314号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3239314号の発明は、平成6年9月16日に特許出願され、平成13年10月12日にその特許の設定登録がなされたものであり、その後、小林 文子、山口 十四治、古川 京子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年10月28日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、訂正拒絶理由通知に対して平成15年2月5日付けで手続補正書が提出された後、再度取消理由がなされ、その指定期間内である平成15年3月25日に、平成14年10月28日付けの訂正請求を取り下げるとともに、新たに訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)[訂正の内容]
訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。
訂正事項a:
特許請求の範囲の請求項1において、
「第2の点集合(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,2.07),(1.18,0.77),(1.18,3.97)(1.77,1.07),(1.77,6.04),(2.36,1.46),(2.36,6.73),(2.95,1.81)(2.95,7.33),(3.54,2.31),(3.54,7.42),(4.13,2.84),(4.13,7.33)(4.72,3.84),(4.72,6.30),(4.59,500)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥n2である多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)」を、
「第2の点集合(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,2.07),(1.18,0.77),(1.18,3.97),(1.77,1.07),(1.77,6.04),(2.36,1.46),(2.36,6.73),(2.95,1.81),(2.95,7.33),(3.54,2.31),(3.54,7.42),(4.13,2.84),(4.13,7.33),(4.72,3.84),(4.72,6.30),(4.59,5.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)」と訂正する。
訂正事項b:
特許請求の範囲の請求項2において、
「第3の点集合(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.68),(1.18,0.79),(1.18,3.28)(1.77,1.12),(1.77,4.32),(2.36,1.31),(2.36,5.52),(2.95,1.93)(2.95,6.03),(3.54,2.48),(3.54,6.20),(4.13,3.20),(4.13,5.87)(4.40,5.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥n2である多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。(Tsub/nsub)=(t1n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)」を、
「第3の点集合(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.68),(1.18,0.79),(1.18,3.28),(1.77,1.12),(1.77,4.32),(2.36,1.51),(2.36,5.52),(2.95,1.93),(2.95,6.03),(3.54,2.48),(3.54,6.20),(4.13,3.20),(4.13,5.87),(4.40,5.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)」と訂正する。
訂正事項c:
特許請求の範囲の請求項3において、
「第1の点集合(040,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.1),(1.8,0.8),(1.18,2.07))(1.77,131),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58)(2.95,3.45),(3.25,3.40)」を、
「第1の点集合(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)」と訂正する。
「(Tsub/nsub)=(t1n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)」を、
「(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)」と訂正する。
訂正事項d:
特許請求の範囲の請求項4において、
「ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥n2である多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。(Tsub/nsub)=(t1n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)」を、
「ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)」と訂正する。
訂正事項e:
本件特許明細書の段落番号【0002】において、
「このPTVの開発において、スクリーン上のでの高輝度をいかに実現するかがその焦点となっており、」を、
「このPTVの開発において、スクリーン上での高輝度をいかに実現するかがその焦点となっており、」と訂正する。

(2)[訂正の範囲の適否、拡張・変更の存否]
本件訂正事項a〜dは、XY平面での点の座標を誤記したものと、屈折率および屈折率と厚みとの比についても誤記したものとを、出願当初の明細書の記載に基づいて訂正するものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
本件訂正事項eは、明りょうでない記載の釈明を目的として、「スクリーン上のでの高輝度」を「スクリーン上での高輝度」と補正するものであって、特許明細書の記載全体から直接的かつ一義的に導き出せる事項の範囲内であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(3)[結び]
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)[申立ての理由の概要]
A.特許異議申立人小林 文子は、下記甲第1〜5号証を提出し、請求項1〜3、5〜8に係る発明の特許は、新規事項を含んで補正されたものであり、特許法第17条第2項に違反してされたものであるから取り消すべき旨、請求項1、2に係る発明の特許は、下記甲第1号証もしくは甲第2号証記載の発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に違反してなされたものであるから取り消すべき旨、請求項3、4に係る発明の特許は、甲第1号証記載の発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に違反してなされたものであるから取り消すべき旨、請求項1〜4に係る発明の特許は、下記甲第5号証記載の発明と同一であり、特許法第29の2の規定に違反してなされたものであるから取り消すべき旨、請求項1〜4に係る発明の特許は、下記甲第1、2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべき旨、請求項6、7に係る発明の特許は、下記甲第1〜3号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべき旨、請求項8に係る発明の特許は、下記甲第1、2、4号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべき旨、主張している。
甲第1号証:特開平3-136004号公報
甲第2号証:特開平4-353824号公報
甲第3号証:特開平5-88161号公報
甲第4号証:特開平3-175429号公報
甲第5号証:特開平6-317800号公報

B.特許異議申立人山口 十四治は、下記甲第1〜3号証を提出し、請求項1〜8に係る発明の特許は、発明の詳細な説明に記載された発明でなく、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるから取り消すべき旨、請求項1〜4に係る発明の特許は、下記甲第1号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべき旨、請求項5〜7に係る発明の特許は、下記甲第1、2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべき旨、請求項8に係る発明の特許は、下記甲第1、3号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべき旨、主張している。
甲第1号証:特開平4-50802号公報
甲第2号証:特開平6-18870号公報
甲第3号証:特開平5-88161号公報

C.特許異議申立人古川 京子は、請求項1〜8に係る発明の特許は、特許法第29条第1項柱書および特許法第36条第5項第2号に違反してされたものであるから取り消すべき旨、主張している。

(2)[本件発明]
本件請求項1ないし8に係る発明(以下、「本件発明1ないし8」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第2の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第2の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,2.07),(1.18,0.77),(1.18,3.97),(1.77,1.07),(1.77,6.04),(2.36,1.46),(2.36,6.73),(2.95,1.81),(2.95,7.33),(3.54,2.31),(3.54,7.42),(4.13,2.84),(4.13,7.33),(4.72,3.84),(4.72,6.30),(4.59,5.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)
【請求項2】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第3の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第3の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.68),(1.18,0.79),(1.18,3.28),(1.77,1.12),(1.77,4.32),(2.36,1.51),(2.36,5.52),(2.95,1.93),(2.95,6.03),(3.54,2.48),(3.54,6.20),(4.13,3.20),(4.13,5.87),(4.40,5.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)
【請求項3】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第4の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第4の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.45),(1.18,0.86),(1.18,2.81),(1.77,1.17),(1.77,3.98),(2.36,1.62),(2.36,4.45),(2.95,2.06),(2.95,5.07),(3.54,2.72),(3.54,5.07),(4.13,4.00),(4.13,4.66)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)
【請求項4】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第5の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第5の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.28),(1.18,0.91),(1.18,2.42),(1.77,1.24),(1.77,3.28),(2.36,1.68),(2.36,3.97),(2.95,2.27),(2.95,4.11),(3.54,3.03),(3.54,4.14),(3.80,4.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)
【請求項5】 請求項1ないし4記載の平板レンズアレイにおいて、前記平板レンズアレイは、その表面に1次元または2次元に配列した複数の屈折率分布マイクロレンズを有する基板に、透明カバー基板が前記基板表面のマイクロレンズを有する側に貼り合わされた構造である平板レンズアレイ。
【請求項6】 請求項1ないし4記載の平板レンズアレイにおいて、前記平板レンズアレイは、その表面に1次元または2次元に配列した略球面状の複数の凹部を有するガラス基板と、前記ガラス基板の屈折率より、屈折率が高い透明材料を前記凹部に充填し、さらに該透明材料を挟み込むようにカバーガラス基板を貼り合わせることにより凸レンズアレイとした構造である平板レンズアレイ。
【請求項7】 請求項6記載の平板レンズアレイにおいて、前記ガラス基板とカバーガラス基板が、ともに石英ガラスである平板レンズアレイ。
【請求項8】 請求項1ないし7記載の平板レンズアレイの表面に透明電極が形成され、且つTFT方式の画素電極が形成された第2の基板と前記透明電極間に液晶を挟み込んだ構造を有することを特徴とする液晶表示素子。

(3)[引用刊行物記載の発明]
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物、
刊行物1:特開平3-136004号公報(小林 文子の提出した甲第1号証)
刊行物2:特開平4-353824号公報(小林 文子の提出した甲第2号証)
刊行物3:特開平5-88161号公報(小林 文子の提出した甲第3号証)(山口 十四治の提出した甲第3号証)
刊行物4:特開平3-175429号公報(小林 文子の提出した甲第4号証)
刊行物5:特開平6-317800号公報(小林 文子の提出した甲第5号証)
刊行物6:特開平4-50802号公報(山口 十四治の提出した甲第1号証)
刊行物7:特開平6-18870号公報(山口 十四治の提出した甲第2号証)
刊行物1には、
「平板マイクロレンズアレイの集光効果を高めて、照明光の利用率が高く、明るい表面画面を得ることができる画像表示装置を提供する」(第2頁右下欄第16行〜第18行)、
「上記液晶表示パネル2は、表示画面の対角線が75mm、絵素ピッチが縦190μm×横161μm、絵素領域が縦88μm×横104μm、開ロ率が30%、基板の屈折率nが1.53、基板2aの厚さが1.1mmという構成である。」(第3頁左下欄第18行〜同頁右下欄第2行)、
「平板マイクロレンズアレイ1におけるマイクロレンズ11のピッチは、上記液晶表示パネル2の絵素ピッチ(縦190μm×横161μm)に対応し、焦点距離は、液晶表示パネル2の基板2aの厚さに等しい(空気中では、1.1/1.53≒0.72mmである。)。」(第4頁左上欄第3行〜第8行)、
が記載されている。
刊行物2には、
「2枚の透明基板を対向配置してなる液晶パネルと、該液晶パネルを通過する光源からの光をスクリーン上に投影する投影レンズを備えた投影型液晶表示装置に関する。」(段落【0001】)、
「厚さ1.lmmの基板を使用するのであれば、該マイクロレンズ33の焦点距離は2.2mmになる。また本実施例においては一つ一つのマイクロレンズ33の配設ピッチは200μmであるので、…」(段落【0043】)、
が記載されている。
刊行物3には、
「図4は本発明の第4の実施例の構成を示す断面図である。本実施例は図1に示した第1の実施例中のガラス基板101を、液晶層104の表面にレンズアレイ402が形成されたガラス基板402とし、さらに透明ガラスシート403および対向電極404を設けたものである。」(段落【0045】及び【0046】)、
が記載されている。
刊行物4には、第1図に示されるように、平板レンズアレイの表面に透明電極が形成され、表面に画素電極が形成されたガラス基板と透明電極間に液晶を挟み込んだ構造の液晶表示装置が記載されている。
刊行物5には、マイクロレンズ(集光部材)の焦点距離をマイクロレンズ(第1集光手段)から集光側基板表面(ライトバルブ)までの距離の1.3〜2.5倍にする旨の記載がある。
刊行物6には、
「(1)透明基板の表面に球面状の微小くぼみを多数配列形成するとともに、これらくぼみ内に前記基板よりも屈折率の高い透明材料を表面平坦状態に充填し、且つ、前記基板の厚みをt、その屈折率をn0、前記くぼみの曲率半径をr、くぼみ内充填材料の屈折率をn1として、0.3≦t(n1-n0)/rn0≦1の関係としたことを特徴とする平板レンズアレイ。
(2)液晶パネルにおいて液晶層を挟む一対のセル基板のうちの少なくとも一方を、各画素に対して1対1に対応させて配列した微小レンズ群を有する平板レンズアレイで構成し、該平板レンズアレイは、透明基板の表面に球面状の微小くぼみを多数配列形成するとともに、これらくぼみ内に基板よりも屈折率の高い透明材料を表面平坦状態に充填したものであって、そのレンズ配列面を液晶パネル外面側に向けて配置し、且つ、レンズアレイ基板の厚さをt、その屈折率をn0、前記くぼみの曲率半径をr、くぼみ内充填材料の屈折率をn1として、0.3≦t(n1-n0)/rn0≦1の関係を有していることを特徴とする液晶パネル素子。」(特許請求の範囲)、
「液晶パネルにおける各構成部品の仕様を上述したごとくに設計し、作製する事により、極めて大きな明るさ向上効果を得ることができる。」(第2頁左下欄下から第2行〜右下欄第1行)、
が記載されている。
刊行物7には、明細書の【0011】に、凸型マイクロレンズ101a側の表面に密着して入射側透明基板100bが配置される旨の記載がある。

(4)[対比・判断]
A.特許法第29条第1項柱書、同法第36条第5項第2号、及び同法第36条第5項第1号の違反について、
特許異議申立人古川 京子は、請求項1〜8に係る発明において、各点集合の数値は、照明光平行度が±4°で且つ開口部面積が36%であることを前提とする数値であって、これ以外の条件では、明るさを向上できる実験的裏付けは何ら見出すことは出来ず、目的たる技術効果が達成できない未完成の発明であり、特許法第29条第1項柱書に違反する旨、そして、請求項1〜8に係る発明において、各点集合の数値は、照明光平行度が±4°で且つ開口部面積が36%であるという前提条件がない構成だけでは、明るさ向上の目的及び効果を達成することはできないから、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものとはいえず、特許法第36条第5項第2号に違反する旨、主張する。
次に、特許異議申立人山口 十四治は、請求項1〜8に係る発明において、各点集合の数値は、照明光平行度が±4°で、開口部面積が36%の場合であり、これ以外の条件において、実効開口率が向上するか否かは不明であるところ、照明光平行度についても、開口部面積についても何らの規定がなされていないから、各発明は、詳細な説明に記載された発明ではなく、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるから取り消すべき旨、主張するが、異議申立ての内容から判断すると、該条文は、特許法第36条第5項第1号とするのが正しいと認められるから、異議申立書中の「特許法第36条第6項第1号」とあるのは「特許法第36条第5項第1号」と読み替えて以下に検討すると、
照明光平行度については、図6ないし図9において、±3°、±5°、±6°についてもデータが示されていることから、同様に実験を行っているものと認められるところ、このような通常考えられる照明光平行度において、実効開口率は同じような傾向を示すことが明らかである。また、特許明細書の記載によれば、液晶表示素子開口面上の光強度分布は、平板レンズ1画素のコヒーレントな回折像強度分布と、照明光の幾何光学的な像の光強度分布とのコンボリューションとして、近似的に求めることができ、この強度分布のなかで、開口部内に入射する全光量と、1画素に入射する全光量との比を開口効率と定義し、この値をもってレンズアレイによる明るさ向上効果を評価することにすると、まず、平板レンズアレイそのものを、液晶表示素子の対向電極基板として用いることを前提とし、マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極部分が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化することを考え、PTVに用いられる照明白色光の広がりを解析の1つのパラメータとしながら、レンズアレイによる明るさ増大の効果が、有効に発揮されるマイクロレンズの焦点距離と、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みの関係を求め、レンズピッチとマイクロレンズの主平面から、集光基板表面までの媒体の屈折率のパラメータでこれらを規格化し、一般的な範囲を求めるということが示されており、図4には、例えば、照明光平行度が±4°の場合、開口面積が36%の時の、シミュレーションにより求めた、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での点集合からなる線分が示されているが、これは、前記したレンズアレイによる明るさ増大の効果が所定の割合で得られる場合の、マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極部分が存在する平面との間の距離とマイクロレンズの焦点距離とを最適化するものであるから、必ずしも開口面積を36%と限定する必要がないものであることが理解できる。
したがって、請求項1〜8に係る発明は、未完成であるとも、発明の構成に欠くことができない事項を欠如したものとも、また詳細な説明に記載された発明ではないとも認めることができないから、請求項1〜8に係る発明の特許は、特許法第29条第1項柱書、同法第36条第5項第2号、及び同法第36条第5項第1号に違反するとはいえない。

B.特許法第29条第1項第3号違反について、
[本件発明1について]
本件発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明は、本件発明1が具備する「(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第2の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。」という構成を具備していない。
また、かかる点は、前記刊行物2に記載も示唆もなされていない。
しかも本件発明1は、前記構成を有することで、明細書記載の「マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が有効に発揮される。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明1は、刊行物1または2に記載された発明と同一であるとは認められない。
したがって、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものではない。
[本件発明2について]
本件発明2と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明は、本件発明2が具備する「(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第3の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。」という構成を具備していない。
また、かかる点は、前記刊行物2に記載も示唆もなされていない。
しかも本件発明2は、前記構成を有することで、明細書記載の「マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が有効に発揮される。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明2は、刊行物1または2に記載された発明と同一であるとは認められない。
したがって、本件発明2は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものではない。
[本件発明3について]
本件発明3と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明は、本件発明3が具備する「(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第4の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。」という構成を具備していない。
しかも本件発明3は、前記構成を有することで、明細書記載の「マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が有効に発揮される。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明3は、刊行物1に記載された発明と同一であるとは認められない。
したがって、本件発明3は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものではない。
[本件発明4について]
本件発明4と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明は、本件発明4が具備する「(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第5の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。」という構成を具備していない。
しかも本件発明4は、前記構成を有することで、明細書記載の「マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が有効に発揮される。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明4は、刊行物1に記載された発明と同一であるとは認められない。
したがって、本件発明4は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものではない。

C.特許法第29条の2違反について、
[本件発明1について]
本件発明1と刊行物5記載の発明とを対比すると、刊行物5記載の発明は、本件発明1が具備する「(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第2の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。」という構成を具備していない。
しかも本件発明1は、前記構成を有することで、明細書記載の「マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が有効に発揮される。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明1は、刊行物5に記載された発明と同一であるとは認められない。
したがって、本件発明1は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではない。
[本件発明2について]
本件発明2と刊行物5記載の発明とを対比すると、刊行物5記載の発明は、本件発明2が具備する「(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第3の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。」という構成を具備していない。
しかも本件発明2は、前記構成を有することで、明細書記載の「マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が有効に発揮される。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明2は、刊行物5に記載された発明と同一であるとは認められない。
したがって、本件発明2は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではない。
[本件発明3について]
本件発明3と刊行物5記載の発明とを対比すると、刊行物5記載の発明は、本件発明3が具備する「(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第4の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。」という構成を具備していない。
しかも本件発明3は、前記構成を有することで、明細書記載の「マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が有効に発揮される。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明3は、刊行物5に記載された発明と同一であるとは認められない。
したがって、本件発明3は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではない。
[本件発明4について]
本件発明4と刊行物5記載の発明とを対比すると、刊行物5記載の発明は、本件発明4が具備する「(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第5の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。」という構成を具備していない。
しかも本件発明4は、前記構成を有することで、明細書記載の「マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が有効に発揮される。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明4は、刊行物5に記載された発明と同一であるとは認められない。
したがって、本件発明4は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではない。

D.特許法第29条第2項違反について、
[本件発明1について]
本件発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明は、本件発明1が具備する「(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第2の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。」という構成を具備していない。
また、かかる点は、前記刊行物2、6に記載も示唆もなされていない。
しかも本件発明1は、前記構成を有することで、明細書記載の「マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が有効に発揮される。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明1は、刊行物1および2、または6に記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものとは認められない。
また、前記構成は、異議申立人の提出した他の証拠のいずれにも記載されていない。
したがって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
[本件発明2について]
本件発明2と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明は、本件発明2が具備する「(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第3の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。」という構成を具備していない。
また、かかる点は、前記刊行物2、6に記載も示唆もなされていない。
しかも本件発明2は、前記構成を有することで、明細書記載の「マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が有効に発揮される。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明2は、刊行物1および2、または6に記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものとは認められない。
また、前記構成は、異議申立人の提出した他の証拠のいずれにも記載されていない。
したがって、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
[本件発明3について]
本件発明3と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明は、本件発明3が具備する「(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第4の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。」という構成を具備していない。
また、かかる点は、前記刊行物2、6に記載も示唆もなされていない。
しかも本件発明3は、前記構成を有することで、明細書記載の「マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が有効に発揮される。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明3は、刊行物1および2、または6に記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものとは認められない。
また、前記構成は、異議申立人の提出した他の証拠のいずれにも記載されていない。
したがって、本件発明3は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
[本件発明4について]
本件発明4と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明は、本件発明4が具備する「(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第5の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。」という構成を具備していない。
また、かかる点は、前記刊行物2、6に記載も示唆もなされていない。
しかも本件発明4は、前記構成を有することで、明細書記載の「マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が有効に発揮される。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明4は、刊行物1および2、または6に記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものとは認められない。
また、前記構成は、異議申立人の提出した他の証拠のいずれにも記載されていない。
したがって、本件発明4は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
[本件発明5ないし8について]
本件発明5ないし8は、本件発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当するから、本件発明1について説示したのと同様の理由により、本件発明5ないし8は、刊行物1〜4、6、7に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたとも認めることはできない。
したがって、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。

E.特許法第17条第2項違反について、
特許異議申立人小林 文子は、本件発明1〜3、5〜8は、新規事項を含んで補正されたものであり、特許法第17条第2項に違反してされたものであるから取り消すべき旨の主張がなされ、当審においても同趣旨の取消理由通知がなされたが、上記2(2)において検討したとおり、適法に訂正されたから、取消理由は解消した。

(5)[結び]
したがって、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
平板レンズアレイおよびそれを用いた液晶表示素子
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第2の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第2の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,2.07),(1.18,0.77),(1.18,3.97),(1.77,1.07),(1.77,6.04),(2.36,1.46),(2.36,6.73),(2.95,1.81),(2.95,7.33),(3.54,2.31),(3.54,7.42),(4.13,2.84),(4.13,7.33)(4.72,3.84),(4.72,6.30),(4.59,5.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)
【請求項2】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第3の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第3の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.68),(1.18,0.79),(1.18,3.28),(1.77,1.12),(1.77,4.32),(2.36,1.51),(2.36,5.52),(2.95,1.93),(2.95,6.03),(3.54,2.48),(3.54,6.20),(4.13,3.20),(4.13,5.87),(4.40,5.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)
【請求項3】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第4の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第4の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.45),(1.18,0.86),(1.18,2.81),(1.77,1.17),(1.77,3.98),(2.36,1.62),(2.36,4.45),(2.95,2.06),(2.95,5.07),(3.54,2.72),(3.54,5.07),(4.13,4.00),(4.13,4.66)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)
【請求項4】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第5の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第5の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.28),(1.18,0.91),(1.18,2.42),(1.77,1.24),(1.77,3.28),(2.36,1.68),(2.36,3.97),(2.95,2.27),(2.95,4.11),(3.54,3.03),(3.54,4.14),(3.80,4.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)
【請求項5】 請求項1ないし4記載の平板レンズアレイにおいて、前記平板レンズアレイは、その表面に1次元または2次元に配列した複数の屈折率分布マイクロレンズを有する基板に、透明カバー基板が前記基板表面のマイクロレンズを有する側に貼り合わされた構造である平板レンズアレイ。
【請求項6】 請求項1ないし4記載の平板レンズアレイにおいて、前記平板レンズアレイは、その表面に1次元または2次元に配列した略球面状の複数の凹部を有するガラス基板と、前記ガラス基板の屈折率より、屈折率が高い透明材料を前記凹部に充填し、さらに該透明材料を挟み込むようにカバーガラス基板を貼り合わせることにより凸レンズアレイとした構造である平板レンズアレイ。
【請求項7】 請求項6記載の平板レンズアレイにおいて、前記ガラス基板とカバーガラス基板が、ともに石英ガラスである平板レンズアレイ。
【請求項8】 請求項1ないし7記載の平板レンズアレイの表面に透明電極が形成され、且つTFT方式の画素電極が形成された第2の基板と前記透明電極間に液晶を挟み込んだ構造を有することを特徴とする液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、平板レンズアレイとそれを用いた液晶表示素子に関するものであり、特に液晶表示素子の光利用効率を向上させる目的として使用する平板レンズアレイと、それを用いた投影型液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、透過型液晶表示素子を用いたプロジェクタテレビジョン(PTV)が、実用化されてきている。このPTVの開発において、スクリーン上での高輝度をいかに実現するかがその焦点となっており、高出力のライトバルブや光学装置の開発や、平板レンズアレイの応用等が精力的に検討されている。
【0003】
このPTVに平板レンズアレイを用いれば、液晶表示素子のブラックマトリクスや画素電極部分に入射し、画素開口部の照明には寄与していなかった光を大きく低減できるため、照明光の強度を上げることなくスクリーン上の輝度を向上することができる。この結果、表示素子の光および熱による特性の劣化の問題を、解決することが可能となる。
【0004】
この場合、平板レンズアレイは、液晶表示素子の光入射側に配置され、ブラックマトリクスや画素電極部分に入射していた光を、画素開口部に集光して有効に利用し、実効開口効率を向上させる働きを有している。
【0005】
従来、平板レンズアレイとしては、ソーダライムガラスにTi等の耐食性保護皮膜(マスク膜)を成膜し、周知のフォトリソグラフィ技術を用いて、円形あるいは直線スリット状の開口を設け、これを溶融塩に浸漬して開口部からイオン交換を行う、いわゆるイオン交換法により、その断面が略半円状の屈折率分布を持つレンズを1次元あるいは2次元に多数配列した平板マイクロレンズ(例えば、特開平5-45642号)や、また化学エッチングによって、ガラス基板表面にその断面が略半円状の凹部を1次元あるいは2次元に多数形成し、これに透明樹脂等を充填しレンズアレイとした平板レンズアレイが知られている(例えば、特開平4-50802号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の平板マイクロレンズや平板レンズアレイ(以下、まとめてレンズアレイと呼ぶ)は、通常液晶表示素子とは別途作製され、液晶表示素子の対向電極基板の光入射側に貼り合わされて配置されていることが多い。このため、レンズアレイの各マイクロレンズの主平面と、ブラックマトリクスあるいは画素電極部分が存在する平面との間の距離は、液晶表示素子の対向電極基板の厚みによって決定されている場合がほとんどであった。したがって、各マイクロレンズの光学特性は考慮されておらず、実効開口効率を最大にするような最適設計にはなっていなかった。
【0007】
つまり、上記レンズアレイでは、マイクロレンズの焦点距離は、液晶表示素子の対向電極基板の厚さ(空気中換算)相当に設計されている。しかしながら、実際にPTVに用いられる照明光は白色であり、波長の分布とマイクロレンズに対する入射角度分布を有している。このため、実効開口効率は、液晶表示素子の対向電極基板の厚さ(空気中換算)相当の位置では、集光スポットがあまり絞り込むことができていないことになる。
【0008】
さらに、一般に焦点距離の長い(開口数NAの小さい)マイクロレンズでは、該レンズによる明るさ増大の効果は有効に発揮されていないことになる。これは、回折によって集光スポットが有限の広がりを有し、その広がりは、光の波長に比例し、レンズ開口数NAに反比例するためである。
【0009】
特に、今後大きな市場が期待される高精細プロジェクタテレビジョン(HD-PTV)では、高密度に画素が配列しているため、これに対応したレンズアレイも、当然ながら多数個の微小レンズを高密度で配列させることになる。レンズが高密度で配列されている場合は、必然的にレンズの開口径は小さくなるので、画素密度が低く開口径の大きいレンズアレイと、同程度の開口数NAを達成するためには、焦点距離をその分短くする必要がでてくる。
【0010】
したがって、上述したようなレンズアレイを、液晶表示素子の対向電極基板の光入射側に貼り合わせて使用するような方法では、もはや明るさ増大の効果は期待できないことになる。
【0011】
そこで、レンズアレイそのものを、液晶表示素子の対向電極基板として用い、マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離を極めて小さくし、その距離に応じたマイクロレンズを設計し作製することが必須となってくる。
【0012】
本発明では、このように従来のレンズアレイでは、液晶PTVの実効開口効率向上の効果が十分発揮されないといった課題を解決するために、まず液晶表示素子に用いるレンズアレイの集光特性が、最適となるような設計手法を示し、この手法によるレンズアレイを提供することを目的とする。
【0013】
さらに、このレンズアレイを液晶表示素子に適用することにより、液晶表示素子の実効開口効率を向上し、もって高精細で高輝度の液晶PTVを提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、透明基板に、マイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの主平面を基板内部に有し、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面で、図4に示した領域内の特性を有する平板レンズアレイである。
【0015】
本発明では、まず、液晶PTVの液晶画素開口部以外の領域に入射する照明光を、マイクロレンズによって開口部に有効に集光させることにより、開口部を透過する光量を増加させ、実効的な開口効率を上げることを想定する。そして、この効果をシミュレーション解析により評価し、有効なマイクロレンズのパラメータを求め、それに基づいた平板マイクロレンズアレイを製作する。
【0016】
まず、本発明に用いた解析評価の概要を、以下に簡単に述べる。多くの液晶PTV光学系では、有限な広がりを持つ照明光源から発光した光束を、放物面鏡などでコリメートして液晶素子を照明している。レンズアレイを液晶表示素子の前面に配置した場合、液晶表示素子開口面上の光強度分布は、平板レンズ1画素のコヒーレントな回折像強度分布と、照明光の幾何光学的な像の光強度分布とのコンボリューションとして、近似的に求めることができる。この強度分布のなかで、開口部内に入射する全光量と、1画素に入射する全光量との比を開口効率と定義し、この値をもってレンズアレイによる明るさ向上効果を評価することにする。
【0017】
具体的な求め方を、以下に簡単に述べる。まず、平板レンズアレイそのものを、液晶表示素子の対向電極基板として用いることを前提とし、マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極部分が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化することを考える。
【0018】
最適化にあたっての設計手法は、以下の通りである。まず、PTVに用いられる照明白色光の広がりを解析の1つのパラメータとしながら、レンズアレイによる明るさ増大の効果が、有効に発揮されるマイクロレンズの焦点距離と、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みの関係を求める。次に、レンズピッチとマイクロレンズの主平面から、集光基板表面までの媒体の屈折率のパラメータでこれらを規格化し、一般的な範囲を求める。
【0019】
【作用】
本発明によれば、平板レンズアレイそのものを、液晶表示素子の対向電極基板として用い、マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極部分が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、レンズアレイによる明るさ増大の効果が、最大限に発揮される。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を図面に示した実施例に基づき詳細に説明する。図1には、本発明の一実施例である平板レンズアレイの断面構造を示す。図2には、請求項6に述べたその表面に1次元または2次元に配列した複数の屈折率分布型マイクロレンズを有するベース基板に、透明カバー基板を貼り合わせた構造の平板レンズアレイの断面構造を示す。
【0021】
図3には、請求項7に述べたその表面に1次元または2次元に配列した複数の高屈折率充填型マイクロレンズを有するベース基板に、透明カバー基板を貼り合わせた構造の平板レンズアレイの断面構造を示す。
【0022】
図4には、シミュレーションにより求めた、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面における、請求項1ないし5を満足する領域を示す。
【0023】
ここで、Pはマイクロレンズのピッチ、Tsubはマイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚み、nsubはマイクロレンズの主平面から集光基板表面までの媒体の屈折率nsub(波長550nm)であり、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,・・・tnの層でありそれぞれの屈折率がn1,n2,・・・nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+・・・+(tn/nn)
【0024】
レンズピッチPは、レンズ配列の仕方によって以下ように定義している。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に、四方配列の場合のレンズピッチPは、P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)
【0025】
図4中、請求項1記載の範囲は、白抜き丸印で囲まれた範囲で示されており、例えば照明光平行度が±4°の場合、開口部面積が36%の時に、実効開口効率が54%(1.5倍)になる平板マイクロレンズのパラメータの範囲を示している。
【0026】
図4中、請求項2記載の範囲は、白抜き三角印で囲まれた範囲で示されており、例えば照明光平行度が±4°の場合、開口部面積が36%の時に、実効開口効率が63%(1.75倍)になる平板マイクロレンズのパラメータの範囲を示している。
【0027】
図4中、請求項3記載の範囲は、黒塗り丸印で囲まれた範囲で示されおり、例えば照明光平行度が±4°の場合、開口部面積が36%の時に、実効開口効率が72%(2.0倍)になる平板マイクロレンズのパラメータの範囲を示している。
【0028】
図4中、請求項4記載の範囲は、二重丸印で囲まれた範囲で示されており、例えば照明光平行度が±4°の場合、開口部面積が36%の時に、実効開口効率が81%(2.25倍)になる平板マイクロレンズのパラメータの範囲を示している。
【0029】
図4中、請求項5記載の範囲は、黒塗り下三角印で囲まれた範囲で示されており、例えば照明光平行度が±4°の場合、開口部面積が36%の時に、実効開口効率が90%(2.5倍)になる平板マイクロレンズのパラメータの範囲を示している。
【0030】
図4中、*印の((0.59,0.52),(1.18,1.03),(1.77,1.72),(2.36,2.41),(2.95,2.76))各点で示された折れ線の近傍は、平板マイクロレンズによる実効開口効率の向上が最も得られるパラメータの領域である。
【0031】
図5には、本発明の平板レンズアレイを用いた液晶表示素子の概念図を示している。平板レンズアレイは、その集光側基板の表面に透明導電性薄膜が形成され、液晶表示素子のTFT基板に対する対向基板として、レンズ内蔵型基板として使用される。
【0032】
透明導電性薄膜としては、酸化インジウム錫などが用いられ、通常さらに開口窓としてのブラックマトリクス(遮光層)が形成される。ブラックマトリクスは、クロム膜をパターニングすることによって作製される。
【0033】
本発明の平板レンズアレイによって集光された照明光は、集光側基板表面付近に位置する開口窓を効率よく透過する。
【0034】
以下に、この平板レンズアレイを、液晶表示素子に適用する場合について述べる。対向基板としての平板レンズアレイとTFT基板の間には、ツイストネマチック液晶等の液晶材料が狭持され、必要に応じてスペーサとしてのビーズが基板間隔を一定に保つために同時に用いられる。基板は周辺部で封着され、液晶とスペーサが狭持される。
【0035】
液晶駆動素子としてのTFTには、アモルファスシリコン(a-Si)、多結晶シリコン(p-Si)が用いられる。通常a-SiTFTには、多成分系無アルカリガラスが基板として用いられ、p-Siには特に成膜時に高温を必要とするため、石英ガラスが基板として用いられる。
【0036】
平板レンズアレイを形成する基板材料は、TFT基板と同じ材料もしくはほぼ同等の熱膨張係数を有する材料を用いることが、画素の位置ズレをなくする上で好ましい。
【0037】
以下に具体的実施例について述べる。
(実施例1)石英ガラス基板の表面に、スパッタリング法によりエッチャントに対する耐食性保護膜としてCr膜を形成した。次に、フォトレジストを塗布、露光、現像をおこなうフォトリソグラフィによって、Cr膜に所定のレンズ配列パターンで小開口を多数形成した。形成した小開口は六方配列されており、これによりハニカム型のレンズアレイが得られる。この小開口の直径は、最終的に得ようとするレンズの径よりも、十分小さいことが望ましい。
【0038】
上記小開口を有するCr膜付き基板を、HFおよび界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む水溶液に浸漬して、化学エッチングを行った。ここでHFおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの濃度は、10重量%および0.1重量%とした。これにより、Cr膜の小開口を始点として石英ガラス基板の表面部分が等方的にエッチングされ、ほぼ半球状をなした凹部が得られる。この第1段階のエッチングは、隣接する凹部の間に若干の幅をもった平坦な境界部を残した状態で止める。
【0039】
次いで第2段階のエッチングとして、石英ガラス基板表面からCr膜を除去した後、先のエッチャントに再び浸漬して、基板表面全体をエッチングした。この2段階のエッチングにより、形成された凹部は、平面視したときに、その周辺が6角形をなし、その周囲の隣接する凹部と密接した稠密充填配列となった。
【0040】
上記2段階のエッチングの処理後、前記凹部に前記石英ガラス基板の屈折率よりも、屈折率の高い透光性のエポキシ系樹脂材料を充填し、その上から石英基板を貼合せた後、前記樹脂の硬化を行った。この場合、前記樹脂には光硬化型や熱硬化型のものを用いることができる。
【0041】
今回作製したレンズアレイのピッチは、Px×Py=50×40μm(P=58μm)であり、凹部の曲率半径はエッチング条件を変えることにより30μm、35μm、40μmとした。また、充填するエポキシ系樹脂は、屈折率は1.60、1.65のものを用意し、カバーガラス厚みを最適化して以下の焦点距離を有する平板レンズアレイを作製した(表1)。
【0042】
【表1】

【0043】
上記平板レンズアレイによって、液晶の画素の開口窓(Dx×Dy=30×24μm)に、集光される光量(実効開口率)を±4°の白色光源を用いて測定した。その結果、規格化した焦点距離fと、カバーガラス厚みTsubおよびカバーガラス屈折率nsubの関係は、以下の表2のようになり、特許請求の範囲に示したパラメータの範囲で、高い実効開口率が実現することが分かった。
【0044】
【表2】

【0045】
(実施例2)ゾルゲル成形法により、平板レンズアレイを作製した。メチルエトキシシラン(CH3Si(OC2H5)3)、エタノールおよび水(少量の塩酸を含む)を混合し、室温で約30分間攪拌して塗布溶液を調製した。
【0046】
上記調整液を石英基板にディッピング法により塗布し、ゲル膜を作製した。そして後述する方法で作製したNi、樹脂等のスタンパをこのゲル膜に接合し、適当な圧力で押圧しながら約120℃で加熱を行った。加熱後、スタンパを基板から離形し、さらに約200℃で焼成することにより、屈折率1.38のゾルゲル材料による凹部が作製された。
【0047】
上記ゾルゲル成形による凹部形成後、凹部にゾルゲル材料よりも屈折率の高いエポキシ系樹脂材料を充填し、石英カバーガラスを貼合せることにより平板レンズアレイを作製した。
【0048】
今回作製したマイクロレンズの画素ピッチは、Px×Py=50×40μmであり凹部の曲率半径は18μmであり、充填した上記エポキシ系樹脂の屈折率は1.55、1.60、1.65である。これにより以下の平板レンズアレイを得た(表3)。
【0049】
【表3】

【0050】
上記平板レンズアレイによって、液晶の画素の開口窓(Dx><Dy=30×24μm)に、集光される光量(実効開口率)を±4°の白色光源を用いて測定した。その結果、規格化した焦点距離fと、カバーガラス厚みT subおよびカバーガラス屈折率n subの関係は、以下の表4のようになり、特許請求の範囲に示したパラメータの範囲で、高い実効開口率が実現することが分った。
【0051】
【表4】

【0052】
(実施例3)実施例1と同様に、2段階のエッチングにより石英ガラス基板(厚み1mm)に表面に2次元に配列した複数の微小凹状部(曲率半径30μm)を形成した。これに種々の高屈折率樹脂材料(n=1.52〜2.20)を充填し、カバー石英ガラス基板(厚み100μm)を貼り合わせた構造の平板レンズアレイ(画素ピッチ:Px×Py=50×40μm)を作製した。この平板レンズアレイを液晶表示素子のTFT対向基板として用いるために、さらにカバー石英ガラス表面に、透明導電膜とブラックマトリクス(開口窓:Dx×Dy=30×24μm)を形成した。
【0053】
図6に、このレンズアレイ付き液晶表示素子対向基板のカバー石英ガラス基板(厚み100μm)表面における、実効開口効率ηとマイクロレンズの焦点距離(空気中)の関係を、照明光平行度をパラメータとして示す。
【0054】
図6より、±4°の照明光に対して、焦点距離fが、(a)45μm≦f≦230μmの範囲で、実効開口効率は54%以上(b)46μm≦f≦190μmの範囲で、実効開口効率は63%以上(c)50μm≦f≦163μmの範囲で、実効開口効率は72%以上(d)53μm≦f≦140μmの範囲で、実効開口効率は81%以上(e)57μm≦f≦120μmの範囲で、実効開口効率は90%以上になり、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が、有効に発揮されることが分かった。
【0055】
(実施例4)図7に、実施例3と同様の構造において、カバー石英ガラス基板を厚み200μmのものに代えた場合の結果を示す。
【0056】
図7より、±4°の照明光に対して、焦点距離fが、(a)85μm≦f≦390μmの範囲で、実効開口効率は54%以上(b)88μm≦f≦320μmの範囲で、実効開口効率は63%以上(c)94μm≦f≦258μmの範囲で、実効開口効率は72%以上(d)98μm≦f≦230μmの範囲で、実効開口効率は81%以上(e)110μm≦f≦186μmの範囲で、実効開口効率は90%以上になり、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が、有効に発揮されることが分かった。
【0057】
(実施例5)図8に、実施例3と同様の構造において、カバー石英ガラス基板を厚み300μmのものに代えた場合の結果を示す。
【0058】
図8より±4°の照明光に対して、焦点距離fが、(a)134μm≦f≦430μmの範囲で、実効開口効率は54%以上(b)144μm≦f≦360μmの範囲で、実効開口効率は63%以上(c)158μm≦f≦294μmの範囲で、実効開口効率は72%以上(d)176μm≦f≦240μmの範囲で、実効開口効率は81%以上になり、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が、有効に発揮されることが分かった。ただしfを変化させても、実効開口効率は90%以上にはならない。
【0059】
(実施例6)図9に、実施例3と同様の構造において、カバー石英ガラス基板を厚み400μmのものに代えた場合の結果を示す。
【0060】
図9より、±4°の照明光に対して、焦点距離fが、(a)223μm≦f≦365μmの範囲で、実効開口効率は54%以上になり、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が、有効に発揮されることが分かった。ただしfを変化させても、実効開口効率は63%以上にはならない。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、平板レンズアレイそのものを、液晶表示素子の対向電極基板として用い、マイクロレンズの主平面とブラックマトリクスあるいは画素電極等遮光部が存在する平面との間の距離と、マイクロレンズの焦点距離とを最適化しているため、平板レンズアレイによる明るさ増大の効果が有効に発揮される。したがって、高精細で高輝度の液晶PTVを提供することが可能になる。
【0062】
また、高出力の光源を使用することなく、高精細で高輝度の液晶PTVを提供することが可能になり、さらに損失光に起因した表示素子の劣化を低減することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
平板マイクロレンズの一般的な断面構造。
【図2】
屈折率分布型マイクロレンズを有するベース基板に、透明カバー基板を貼り合わせた構造の平板マイクロレンズの断面構造。
【図3】
高屈折率材料充填型マイクロレンズを有するベース基板に、透明カバー基板を貼り合わせた構造の平板マイクロレンズの断面構造。
【図4】
(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面における、請求項1ないし5を満足する領域。
【図5】
本発明による平板レンズアレイを用いた液晶表示素子の概念図。
【図6】
平板レンズアレイ付き液晶表示素子の実効開口効率ηと、マイクロレンズの焦点距離(空気中)の関係を示す図(カバーガラス基板の厚み;100μm)。
【図7】
平板レンズアレイ付き液晶表示素子の実効開口効率ηと、マイクロレンズの焦点距離(空気中)の関係を示す図(カバーガラス基板の厚み;200μm)。
【図8】
平板レンズアレイ付き液晶表示素子の実効開口効率ηと、マイクロレンズの焦点距離(空気中)の関係を示す図(カバーガラス基板の厚み;300μm)。
【図9】
平板レンズアレイ付き液晶表示素子の実効開口効率ηと、マイクロレンズの焦点距離(空気中)の関係を示す図(カバーガラス基板の厚み;400μm)。
【符号の説明】
10 略球面で接する屈折率の異なる2つの材料からなる一般的な平板レンズアレイ
101 低屈折率材料
101A 略球面形状部
102 高屈折率材料
30 照明光
11 屈折率分布型マイクロレンズを有するベース基板に、透明カバー基板を貼り合わせた構造の平板レンズアレイ
111 屈折率分布型マイクロレンズを有するベース基板
111A 屈折率分布型マイクロレンズ
112 透明カバー基板
12 高屈折率材料充填型マイクロレンズを有するベース基板に、透明カバー基板を貼り合わせた構造の平板レンズアレイ
121 高屈折率材料充填型マイクロレンズを有するベース基板
121A 高屈折率材料充填型マイクロレンズ
122 透明カバー基板
20 平板レンズアレイを用いた液晶表示素子
103 透明導電性膜
104 ブラックマトリクス
21 TFT基板
21A TFT等の不透光部
21B 画素電極
22 液晶材料
H レンズの主平面
 
訂正の要旨 (1)誤記の訂正を目的として、本件請求項1に係る記載
「【請求項1】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第2の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第2の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,2.07),(1.18,0.77),(1.18,3.97),(1.77,1.07),(1.77,6.04),(2.36,1.46),(2.36,6.73),(2.95,1.81),(2.95,7.33),(3.54,2.31),(3.54,7.42),(4.13,2.84),(4.13,7.33)(4.72,3.84),(4.72,6.30),(4.59,500)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥n2である多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)」を、
「【請求項1】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第2の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第2の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,2.07),(1.18,0.77),(1.18,3.97),(1.77,1.07),(1.77,6.04),(2.36,1.46),(2.36,6.73),(2.95,1.81),(2.95,7.33),(3.54,2.31),(3.54,7.42),(4.13,2.84),(4.13,7.33)(4.72,3.84),(4.72,6.30),(4.59,5.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)」に訂正する。
(2)誤記の訂正を目的として、本件請求項2に係る記載
「【請求項2】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第3の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第3の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.68),(1.18,0.79),(1.18,3.28),(1.77,1.12),(1.77,4.32),(2.36,1.31),(2.36,5.52),(2.95,1.93),(2.95,6.03),(3.54,2.48),(3.54,6.20),(4.13,3.20),(4.13,5.87),(4.40,5.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥n2である多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)」を、
「【請求項2】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第3の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第3の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.68),(1.18,0.79),(1.18,3.28),(1.77,1.12),(1.77,4.32),(2.36,1.51),(2.36,5.52),(2.95,1.93),(2.95,6.03),(3.54,2.48),(3.54,6.20),(4.13,3.20),(4.13,5.87),(4.40,5.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)」に訂正する。
(3)誤記の訂正を目的として、本件請求項3に係る記載
「【請求項3】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第4の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(040,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.1),(1.8,0.8),(1.18,2.07),(1.77,131),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第4の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.45),(1.18,0.86),(1.18,2.81),(1.77,1.17),(1.77,3.98),(2.36,1.62),(2.36,4.45),(2.95,2.06),(2.95,5.07),(3.54,2.72),(3.54,5.07),(4.13,4.00),(4.13,4.66) ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)」を、
「【請求項3】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第4の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第4の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.45),(1.18,0.86),(1.18,2.81),(1.77,1.17),(1.77,3.98),(2.36,1.62),(2.36,4.45),(2.95,2.06),(2.95,5.07),(3.54,2.72),(3.54,5.07),(4.13,4.00),(4.13,4.66)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)」に訂正する。
(4)誤記の訂正を目的として、本件請求項4に係る記載
「【請求項4】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第5の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第5の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.28),(1.18,0.91),(1.18,2.42),(1.77,1.24),(1.77,3.28),(2.36,1.68),(2.36,3.97),(2.95,2.27),(2.95,4.11),(3.54,3.03),(3.54,4.14),(3.80,4.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥n2である多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)」を、
「【請求項4】 透明基板にマイクロレンズを1次元または2次元に複数配列した平板レンズアレイにおいて、前記マイクロレンズの焦点距離をf(波長550nm、空気中)、マイクロレンズのピッチをP、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの厚みをTsub、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までの屈折率をnsub(波長550nm)とし、(Tsub/nsub)/PをX座標、f/PをY座標とするXY平面での以下に示す第1の点集合からなる線分と第5の点集合からなる線分とで囲まれる領域内の特性を有することを特徴とする平板レンズアレイ。
第1の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.11),(1.18,0.98),(1.18,2.07),(1.77,1.31),(1.77,2.76),(2.36,1.89),(2.36,3.21),(2.95,2.58),(2.95,3.45),(3.25,3.40)
第5の点集合
(0.40,0.50),(0.59,0.51),(0.59,1.28),(1.18,0.91),(1.18,2.42),(1.77,1.24),(1.77,3.28),(2.36,1.68),(2.36,3.97),(2.95,2.27),(2.95,4.11),(3.54,3.03),(3.54,4.14),(3.80,4.00)
ただし、マイクロレンズの主平面から集光側基板表面までが、厚みt1,t2,‥tnの層でありそれぞれの屈折率n1,n2,‥nnである多層構造からなる場合には、(Tsub/nsub)は、以下のように定義する。
(Tsub/nsub)=(t1/n1)+(t2/n2)+…+(tn/nn)
また、マイクロレンズが2次元で配列する場合のレンズピッチは、以下のように定義する。X方向のレンズ配列ピッチPx、Y方向のレンズ配列ピッチPyとしたときの、六方配列の場合のレンズピッチPは、
P={Px2+(Py/2)2}/Px(Px≧Py)
同様に四方配列の場合のレンズピッチPは、
P=(Px2+Py2)1/2(Px≧Py)」に訂正する。
(5)明瞭でない記載の釈明を目的として、段落【0002】の記載
「現在、透過型液晶表示素子を用いたプロジェクタテレビジョン(PTV)が、実用化されてきている。このPTVの開発において、スクリーン上のでの高輝度をいかに実現するかがその焦点となっており、高出力のライトバルブや光学装置の開発や、平板レンズアレイの応用等が精力的に検討されている。」を、
「現在、透過型液晶表示素子を用いたプロジェクタテレビジョン(PTV)が、実用化されてきている。このPTVの開発において、スクリーン上での高輝度をいかに実現するかがその焦点となっており、高出力のライトバルブや光学装置の開発や、平板レンズアレイの応用等が精力的に検討されている。」に訂正する。
異議決定日 2003-04-17 
出願番号 特願平6-221518
審決分類 P 1 651・ 55- YA (G02B)
P 1 651・ 14- YA (G02B)
P 1 651・ 534- YA (G02B)
P 1 651・ 121- YA (G02B)
P 1 651・ 113- YA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山村 浩  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 青木 和夫
柏崎 正男
登録日 2001-10-12 
登録番号 特許第3239314号(P3239314)
権利者 日本板硝子株式会社
発明の名称 平板レンズアレイおよびそれを用いた液晶表示素子  
代理人 小山 有  
代理人 小山 有  

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