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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03B
管理番号 1079637
異議申立番号 異議2002-72522  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-09-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-15 
確定日 2003-04-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3274733号「カメラのプリント基板実装構造」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3274733号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 (1)手続の経緯
特許第3274733号の請求項1に係る発明は、平成5年3月8日に特許出願され、平成14年2月1日にその特許の設定登録がなされ、その後異議申立人田村典子により特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年2月17日に訂正請求がなされたものである。

(2)訂正の適否についての判断
(ア)訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を、次のように訂正する。
「【請求項1】
カメラボディの背面に配設された電気基板であって、カメラの電気部品が実装され、外装部材内面と対面する面に他の電気基板と電気的接続を行うためのコネクタ部品が実装されているプリント基板と、
上記カメラボディの上記背面以外の他の面の少なくとも一面に設けられ、上記プリント基板の上記コネクタ部品と電気的に接続される接点部を有する、上記プリント基板とは別の上記他の電気基板であるフレキシブルブリント基板と、
を具備することを特徴とするカメラのプリント基板実装構造。」

訂正事項b
明細書の段落【0009】を、次のように訂正する。
「【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明によるカメラのプリント基板実装構造は、カメラボディの背面に配設された電気基板であって、カメラの電気部品が実装され、外装部材内面と対面する面に他の電気基板と電気的接続を行うためのコネクタ部品が実装されているプリント基板と、上記カメラボディの上記背面以外の他の面の少なくとも一面に設けられ、上記プリント基板の上記コネクタ部品と電気的に接続される接点部を有する、上記プリント基板とは別の上記他の電気基板であるフレキシブルブリント基板と、を具備することを特徴とする。」

(イ)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aに係る訂正は、特許請求の範囲の減縮に該当し、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないし、新規事項の追加にも該当しない。

訂正事項bに係る訂正は、明瞭でない記載の釈明に該当し、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないし、新規事項の追加にも該当しない。

(ウ)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)(以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

(3)特許異議の申立について
(ア)申立の理由の概要
申立人田村典子は、証拠として甲第1号証〔実願平2ー53714号(実開平4ー12679号)のマイクロフィルム〕、甲第2号証(特開平2ー166432号公報)を提出し、本件請求項1に係る発明の特許は、甲第1及び2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。したがって、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき旨主張している。

(イ)本件請求項1に係る発明
本件請求項1に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
カメラボディの背面に配設された電気基板であって、カメラの電気部品が実装され、外装部材内面と対面する面に他の電気基板と電気的接続を行うためのコネクタ部品が実装されているプリント基板と、
上記カメラボディの上記背面以外の他の面の少なくとも一面に設けられ、上記プリント基板の上記コネクタ部品と電気的に接続される接点部を有する、上記プリント基板とは別の上記他の電気基板であるフレキシブルプリント基板と、
を具備することを特徴とするカメラのプリント基板実装構造。」
(なお、「フレキシブルブリント基板」は「フレキシブルプリント基板」の明かな誤記であるから、上記のように認定した。)

(ウ)引用刊行物
本件請求項1に係る発明に対して、当審が平成14年12月10日付で通知した取消理由で引用した刊行物1[甲第1号証〔実願平2ー53714号(実開平4ー12679号)のマイクロフィルム〕]には、次のような記載がある。
「本考案は、フレキシブルプリント配線基板、詳しくは回路チェック用のチェックランドが設けられたフレキシブルプリント配線基板(以下FPCと称す)に関する。」(第1頁第17〜20行)

「第1図は、本考案の第一実施例を示すFPCの回路部品実装状態の斜視図を示す。なお、このFPCはカメラ等の電子機器に内蔵されるものとする。図に示されるように、FPC1は、回路部品実装面1aを有し、その面から延出する折曲連絡部1bおよびその先端部にコネクタ接続部1cを有している。上記折曲連絡部1b上にはチェックランド1dが設けられる。そして、上記実装面1a上には回路部品2a,2b,2c等が半田付け等により固着される。」(第5頁第14行〜第6頁第3行)

「FPC1は、第2図に示されるように電子機器の内部構造体4に回路部品実装面1aの部分を固着する。そして、チェックランド1dが設けられた折曲連絡部1bを折り曲げ、コネクタ接続部1cを上記構造体の下方に支持される硬質のプリント配線基板3のコネクタ3aに挿入し接続する。上記FPC1,構造体4,プリント配線基板3等は、外装体5,6によってカバーされる。」(第6頁第6〜14行)

「第2図に示されるように領域AがFPC1の回路部品実装可能領域を示し」(第6頁第18〜19行)

前記各記載事項、及び図面の記載からみて、刊行物1には「内部構造体4の一面に配設された電気基板であって、外装体6内面と対面しない面に他の電気基板と電気的接続を行うためのコネクタ3aが実装されている硬質のプリント配線基板3と、上記内部構造体4の上記一面以外の他の面の少なくとも一面に設けられ、上記硬質のプリント配線基板3の上記コネクタ3aと電気的に接続されるコネクタ接続部1cを有する、上記硬質のプリント配線基板3とは別の上記他の電気基板であるフレキシブルプリント配線基板1と、を具備することを特徴とするカメラのプリント基板実装構造。及び、フレキシブルプリント配線基板1にカメラの回路部品2a,2b,2cが実装される点。」が記載されている。

同刊行物2〔甲第2号証(特開平2ー166432号公報)〕には、次のような記載がある。
「カメラ」(第1頁左欄、発明の名称)

「巻取室15側にフレキシブルプリント配線基板608が屈曲して2段608a,608bにし、このフレキシブルプリント配線基板608に回路素子609を接続して第1回路であるメイン制御回路Bが配置され、巻取室15とパトローネ室14との段差X3で形成される空間を有効に利用している。」(第4頁右上欄第12〜18行)

「フレキシブルプリント配線基板608が第1コネクタ部700で、裏蓋40の裏蓋側回路Cに接続したフレキシブルプリント配線基板204の端部204aと圧着金具702を介しビス703で固定され、この裏蓋回路Cはデータ写し込み回路及び表示回路を構成している。」(第4頁左下欄第6〜11行)

前記各記載事項、及び図面の記載からみて、刊行物2には、カメラにおいて、コネクタ部で電気的に接続された2つのフレキシブルプリント配線基板の1つが裏蓋側に配設されることが記載されている。

(エ)対比・判断
刊行物1記載の発明の「内部構造体4」、「外装体5,6」、「コネクタ3a」、「硬質のプリント配線基板3」、「コネクタ接続部1c」、「フレキシブルプリント配線基板1」、及び「回路部品2a,2b,2c」は、請求項1に係る発明の「カメラボディ」、「外装部材」、「コネクタ部品」、「プリント基板」、「接点部」、「フレキシブルプリント基板」、及び「電気部品」にそれぞれ相当するものであるので、刊行物1には「カメラボディの一面に配設された電気基板であって、外装部材内面と対面しない面に他の電気基板と電気的接続を行うためのコネクタ部品が実装されているプリント基板と、上記カメラボディの上記一面以外の他の面の少なくとも一面に設けられ、上記プリント基板の上記コネクタ部品と電気的に接続される接点部を有する、上記プリント基板とは別の上記他の電気基板であるフレキシブルプリント基板と、を具備することを特徴とするカメラのプリント基板実装構造。及び、フレキシブルプリント基板にカメラの電気部品が実装される点。」が記載されている。
本件請求項1に係る発明と上記刊行物1(甲第1号証)記載の発明とを対比すると、両者は「カメラボディの一面に配設された電気基板であって、表面に他の電気基板と電気的接続を行うためのコネクタ部品が実装されているプリント基板と、上記カメラボディの上記一面以外の他の面の少なくとも一面に設けられ、上記プリント基板の上記コネクタ部品と電気的に接続される接点部を有する、上記プリント基板とは別の上記他の電気基板であるフレキシブルプリント基板と、を具備することを特徴とする外装部材を有するカメラのプリント基板実装構造。」という点で一致し、次の点で相違する。

相違点(A)
プリント基板の配設位置が、本件請求項1に係る発明は、カメラボディの背面であるのに対して、刊行物1記載の発明は、そのことについての明示が無い点。

相違点(B)
本件請求項1に係る発明は、プリント基板にカメラの電気部品が実装されるのに対して、刊行物1記載の発明は、そのことについての明示が無い点。

相違点(C)
コネクタ部品が実装されている面が、本件請求項1に係る発明は、プリント基板の外装部材内面と対面する面であるのに対して、刊行物1記載の発明は、プリント基板の外装部材内面と対面しない面である点。

(本件請求項1に係る発明に対する判断)
相違点(A)について:
刊行物1記載の発明において、外装体(外装部材)5、及び外装体(外装部材)6は、通常いずれか一方がカメラの正面側となり、他方がカメラの背面側となるものである。
刊行物2には、フレキシブルではあるが、コネクタ部(コネクタ部品)で電気的に接続された2つのプリント配線基板(プリント基板)の1つが裏蓋側(背面側)に配設されることが記載されており、これを刊行物1記載の発明に適用して、刊行物1記載のものにおいて、外装体(外装部材)6をカメラの背面側として、相違点(A)における本件請求項1に係る発明のような構成にしたことに、格別の困難性は認められない。

相違点(B)について:
刊行物1には、フレキシブルプリント基板にカメラの電気部品が実装されることが記載されており、これを刊行物1記載の発明のプリント基板に採用して、相違点(B)における本件請求項1に係る発明のような構成にしたことに格別の困難性は認められない。

相違点(C)について:
コネクタ部品が実装されている面が、プリント基板の外装部材内面と対面する面である点は、周知技術〔例えば、実願平2ー53715号(実開平4ー12694号)のマイクロフィルム参照。〕であり、これを刊行物1記載のものにおいてプリント基板におけるコネクタ部品の実装に採用して、相違点(C)における本件請求項1に係る発明のような構成にしたことに、格別の困難性は認められない。

そして、本件請求項1に係る発明の効果は、刊行物1及び2の記載と周知技術から予測される範囲のものである。

(オ)むすび
以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、上記刊行物1及び2記載の発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
カメラのプリント基板実装構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 カメラボディの背面に配設された電気基板であって、カメラの電気部品が実装され、外装部材内面と対面する面に他の電気基板と電気的接続を行うためのコネクタ部品が実装されているプリント基板と、
上記カメラボディの上記背面以外の他の面の少なくとも一面に設けられ、上記プリント基板の上記コネクタ部品と電気的に接続される接点部を有する、上記プリント基板とは別の上記他の電気基板であるフレキシブルブリント基板と、
を具備することを特徴とするカメラのプリント基板実装構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、カメラのプリント基板実装構造、より詳しくは、カメラボディ内に収納される、カメラのプリント基板実装構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、カメラの電気回路の配線実装は、カメラ内の狭い空間を有効利用するために、可撓性を有するフレキシブルプリント基板を利用することが多かった。
【0003】
しかし、近年のカメラは高度の電子化,多機能化をしており、これに伴い回路の実装規模が大きくなり、かつ各種のスイッチ類やセンサ等がカメラ内の所々に分散配置されるようになってきたために、配線実装としてのフレキシブルプリント基板の配線は、カメラ内の狭い空間を縫う複雑なものとなっている。これに加えてカメラの小型化が急速に進み、カメラ内に広い空間がほとんど取れず、フレキシブルプリント基板上に実装する電気部品の配置も分散化する傾向にある。このような事情により、電気部品間の配線のためには、フレキシブルプリント基板として広い面積を要求されるようになってきた。
【0004】
このような状況の中で、フィルムパトローネ内にスプールに巻き付けられた状態で装填されているフィルムを、該スプールを回転させることにより送り出して自動装填するカメラにおけるプリント基板実装構造、より詳しくは、カメラボディ内部の裏面に実装可能に硬質プリント基板を配設し、該硬質プリント基板上に設けられた接点に対して、部品実装可能な面部を有したフレキシブルプリント基板の接点を電気的に接続するカメラの基板実装構造は、従来より種々提案されている。
【0005】
このようなカメラのプリント基板実装構造の一例として、特開昭62-141524号公報に、実装するフレキシブルプリント基板を、カメラ本体の上面,下面,側面等の各実装面部用の複数枚の分割体とし、かつ該各分割体が実装されない共通のカメラ本体面部に向かってそれぞれ折り曲げ、この面部上で全体一連に結線状態とするものが提案されている。このような構成により、基板を実装する際の作業性を向上し、かつコストダウンを図っている。
【0006】
また、上記カメラの基板実装構造の他の例が、実開昭63-113135号公報にも記載されている。該公報記載のカメラの電気回路実装構造は、被写体の輝度を測光するための測光センサーと、ストロボ撮影時の閃光量を測光するための調光センサーと、該両センサーからの出力信号を基に露出並びにストロボ撮影制御を行う制御回路素子等の電気回路素子とを1枚のフレキシブルプリント基板上に実装し、該フレキシブルプリント基板をペンタプリズムの上面を含むカメラ上面と、ミラーボックスの側面および下面と、保持板とに沿って連続的に配設するとともに、少なくとも1箇所はフレキシブルプリント基板が重ねられて配設されたものとなっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開昭62-141524号公報に記載の技術手段では、分割された基板は、複数であるためにカメラ本体への装着が面倒になるばかりでなく、カメラ内の隙間を縫っているために折り曲げ部分も多く、実装面積も小さいという問題点がある。また、実開昭63-113135号公報に記載のものでは、基板を1枚のフレキシブルプリント基板としたために折り曲げ部が多くなり、基板面積の割には広い実装面積がとれないものである。そして、カメラボディへフレキシブルプリント基板を装着するのが困難であるばかりでなく、大きい面積のフレキシブルプリント基板はコストアップにもつながるという問題がある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、コストが安くて作業性の良い、実装面積の広いカメラのプリント基板実装構造を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明によるカメラのプリント基板実装構造は、カメラボディの背面に配設された電気基板であって、カメラの電気部品が実装され、外装部材内面と対面する面に他の電気基板と電気的接続を行うためのコネクタ部品が実装されているプリント基板と、上記カメラボディの上記背面以外の他の面の少なくとも一面に設けられ、上記プリント基板の上記コネクタ部品と電気的に接続される接点部を有する、上記プリント基板とは別の上記他の電気基板であるフレキシブルブリント基板と、を具備することを特徴とする。
【0010】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。◎
図1,図2は本発明の第1実施例を示したものである。図1はカメラボディを裏側から見たときのカメラのプリント基板実装構造を示す斜視図、図2はカメラボディを側面側から見たときのカメラのプリント基板実装構造を示す側断面図である。
【0011】
図1,図2に示すように、硬質プリント基板1は、カメラボディ5の裏側に配設されていて、略矩形で該ボディ5の裏面にほぼ相当する面積を有し、この硬質プリント基板1上には広い実装可能面部が設けられている。この硬質プリント基板1は、図示しないペンタプリズム上面を含む該カメラボディ5の上面に沿うように部品実装可能に配設されたフレキシブルプリント基板2と、該カメラボディ5の下面に沿うように部品実装可能に配設されたフレキシブルプリント基板3と、図示しないミラーボックス側面部に沿うように部品実装可能に配設されたフレキシブルプリント基板4と、それぞれ電気的導通手段である接触接点6およびコネクタ8,9を介して電気的に接続されている。
【0012】
すなわち、上記フレキシブルプリント基板2,3,4は、上記接触接点6が設けられた凸部2a,3a,4aをそれぞれの部品実装可能面部からカメラ裏面に向かって突設するとともに、上記硬質プリント基板1上の対となる接点部に重なるように、該基板1に向かってほぼ90度曲折されている。また、上記フレキシブルプリント基板2,3は、コネクタ接続部2b,3bをカメラ裏面に向かって突設するとともに、上記硬質プリント基板1上のコネクタ8,9に向かってそれぞれ曲折して電気的に接続されている。
【0013】
なお、この第1実施例のカメラのプリント基板実装構造をカメラに適用する場合、フィルムパトローネを装填するためにパトローネ室に面しているカメラ外壁の一部を開いてパトローネを落とし込む、いわゆるドロップイン方式のカメラが最も望ましいものである。しかし、このドロップイン方式のカメラに限らず、例えば、硬質プリント基板とフレキシブルプリント基板との間を接触接点で接続する手段を採用すれば、カメラ後方のいわゆる裏蓋前面を開閉することによりフィルムパトローネを装填する従来のカメラに対して適用することも可能である。
【0014】
このような第1実施例によれば、従来のカメラにおいて裏蓋が配設されていた広い平面領域を有効に用いて、広い面積の部品実装面部を備えたコストの安い硬質プリント基板1を配設することにより、スペースを有効に利用できて実装効率の向上を図ることができるとともに、フレキシブルプリント基板を少ない折り曲げ回数で配線接続できるように構成したことで作業性が向上し、コストダウンすることができる。さらに、接続をコネクタなどを使用して行うようにしたことで、各基板の接続作業がさらに容易になる。
【0015】
図3,図4は本発明の第2実施例を示したものである。図3はカメラボディを裏側から見たときのカメラのプリント基板実装構造を示す斜視図、図4はカメラを上記図3の切断線Aにより光軸方向に切断した際の各基板の積層状態を示す部分断面図である。この第2実施例は上述の第1実施例とほぼ同様であるので、主として異なる部分についてのみ説明する。
【0016】
図3,図4に示すように、この第2実施例においては、広い実装面積を両面に有した硬質プリント基板10を、裏板部材19と裏蓋部材21との間に設けられた空間に配設している。
【0017】
すなわち、カメラボディ5の裏面であって、カメラ裏側からフィルムパトローネをカメラへ装填および取り出しするためのメカスペースに影響を及ぼさない領域に、広い実装面積を有する硬質プリント基板10が配設されている。この硬質プリント基板10の両面には、カメラ内に配設されている回路を構成する主要な電気部品10a,10bなどが、高密度に実装されている。該硬質プリント基板10は、配線パターンの高密度化を実現するために、パターン層が2層の硬質プリント基板としている。
【0018】
このような硬質プリント基板10に対して、図示しないペンタプリズムの上面を含む該カメラボディ5の上面に沿うようにして設けられた、図示しないファインダCPUや各種スイッチ,ダイヤル類などが配設されているフレキシブルプリント基板11と、このフレキシブルプリント基板11の上に重ねて配設されていて、図示しない外部表示用装置に接続されているフレキシブルプリント基板12と、カメラボデイ5の下面に沿うように設けられていて、図示しない複数のモーターへの配線や電気部品等が配設されているフレキシブルプリント基板13とが接続されている。
【0019】
すなわち、該複数のフレキシブルプリント基板11,12,13は、各種電気部品が実装されている面部からそれぞれコネクタ接続部11a,11b,12a,13aをカメラの裏面に向かって延出するとともに、上記硬質プリント基板10の部品実装面部に略平行になるように折曲した後、該硬質プリント基板10の公知の構成のコネクタ15a,15b,15c,15dにそれぞれ電気的に接続するようになっている。
【0020】
さらに、上記硬質プリント基板10に対しては、上記フレキシブルプリント基板13と同じカメラボディ5の下面に配設された電源制御用の硬質プリント基板14が接続されるようになっている。すなわち、この硬質プリント基板14は、上記硬質プリント基板10と電気的接続を行うために、これらの2つの硬質プリント基板10,14の電気的接続に必要十分なパターンが配線された公知の構成の中継用フレキシブルプリント基板14aの一端を接続するとともに、この中継用フレキシブルプリント基板14aの他端を硬質プリント基板10に設けられたコネクタ15cに接続している。
【0021】
また、図3の切断線Aによるカメラの断面に表れる図4の符号16a,16bは、アパーチャ20で上下に2分割されているカメラボディ5の一部を示している。◎
このカメラボディ16a,16bの光軸後方には、該カメラボディ16a,16bに形成されたフィルムレール面16c,16dに沿って移動可能に、フィルム17が張設されている。この後方にはフィルム圧着板18が配設されていて、平面性を保持しながら該フィルム17を上記フィルムレール面16c,16dに圧着するようになっている。
【0022】
このフィルム圧着板18は、裏板部材19により弾性をもって保持されている。そして、この裏板部材19は、上記カメラボディ16a,16bと図示しない部分で組み付けられて一体となっている。◎
この裏板部材19のさらに後方には、上記硬質プリント基板10を挟んでカメラの外装となる裏蓋部材21が配設されていて、上記カメラボディ5と図示しない部分で組み付けられて一体となっている。
【0023】
このような第2実施例によれば、図示しないフィルムパトローネをカメラ裏側から装填および取り出しするためのスペースを確保しても、高密度な部品実装が可能でかつ広い実装可能面積を持つ硬質プリント基板をカメラボディ5裏面部に配設することができ、電気部品の実装効率が大きく向上する。また,上記各基板10,11,12,13,14の接続をコネクタを介して行うようにしたことで、これらの接続作業は容易となり、作業効率も向上することができる。
【0024】
なお、この第2実施例では上記硬質プリント基板10のパターン層を2層としたが、このような2層に限られるものではなく、2層以上の多層とした場合には電気部品の実装効率は一段と向上して、より高い効果が得られることはいうまでもない。
【0025】
図5は、本発明の第3実施例を示したものであり、図示しないペンタプリズムを含むファインダーユニットを着脱自在に取り外し可能なカメラの斜視図である。この第3実施例は上述の第1,第2実施例とほぼ同様であるので、主として異なる部分についてのみ説明する。
【0026】
図5に示すように、硬質プリント基板22は、広い実装面積を有していて、カメラボディ5の裏面であって、かつカメラの裏側からフィルムパトローネをカメラへ装填および取り出しするためのメカスペースに影響を及ぼさない領域に配設されている。
【0027】
この硬質プリント基板22が配設されている部分と同じ空間領域であるカメラの裏面の、パトローネ出入に邪魔にならない側の側方には、硬質プリント基板26が、部品実装可能に、かつその部品実装面部が、硬質プリント基板22の部品実装面部と略平行となるように配設されている。そして、硬質プリント基板26のコネクタ26aと、上記硬質プリント基板22コネクタ22aとを、中継用フレキシブルプリント基板27を介して電気的に接続している。
【0028】
上記硬質プリント基板22は、両面が実装面となっていて、図示しない主要電気部品が配設されている。これに対して、硬質プリント基板26は、カメラ裏側に向かった面のみが実装面部となっていて、この面のみに電気部品が配設されていることが特徴となっている。
【0029】
このような硬質プリント基板22および硬質プリント基板26に対して、ファインダーユニット装着部分によって左右に分けられたカメラボディ5の上面の内、カメラ裏面側から見て向かって右側の面部に沿うように部品実装可能に配設されたフレキシブルプリント基板23と、該カメラボディ5の上面の内、カメラ裏面側から見て向かって左側の面部に沿うように部品実装可能に配設されたフレキシブルプリント基板24と、該カメラボディ5の下面に沿うように部品実装可能に配設されたフレキシブルプリント基板25とが、上記第1,第2実施例で示されたような公知の電気的接続手段を介して接続されている。
【0030】
すなわち、硬質プリント基板22,26にはそれぞれコネクタ22b,26bが設けられていて、フレキシブルプリント基板23から延出されている2つのコネクタ接続部23a,23bを、該コネクタ22b,26bに向かって曲折した後、電気的に接続するようになっている。
【0031】
また、上記フレキシブルプリント基板24からは、フィルムパトローネの出入に邪魔にならないようにほぼ直角のくの字形に形成して延出された接続部24aが、硬質プリント基板22の対応する部分に重ねられて、接触接点28により電気的に接続されている。
【0032】
さらに、上記フレキシブルプリント基板25からは、接続部25aが延出して曲折され、その先端部の電気接点と硬質プリント基板22の接続したい電気接点とを公知の構成のハンダブリッジ接点29により導通している。
【0033】
この第3実施例では、上記第1,第2実施例と異なり、カメラボディ5の裏面部領域に配設される硬質プリント基板を1枚ではなく少なくとも2枚以上に分割している。つまり、少なくとも1枚の基板は電気部品を両面に実装し、少なくとも1枚の基板には片面のみに電気部品を実装するように分けて、部品高さの高い電気部品は片面実装の基板へ実装し、他の部品高さの高くない電気部品は両面実装の基板に配設することにより、硬質プリント基板22および硬質プリント基板26の配設される高さ方向のスペースを有効利用している。
【0034】
このような第3実施例によれば、上記第1,第2実施例とほぼ同様の効果を有するとともに、カメラボディ5の裏面領域に配設される硬質プリント基板を複数に分割し、少なくとも一つの硬質プリント基板は片面、他の少なくとも一つの硬質プリント基板は両面に電気部品実装を行うことで、該硬質プリント基板が配設される領域の体積を減少させて、カメラ内のスペースを有効に利用することができる。
【0035】
なお、上記第1,第2,第3実施例において、硬質プリント基板とフレキシブルプリント基板の接続は、上述の電気的接続方法に限るものではなく、例えば他の接続手段である熱圧着等の公知の手段によっても可能であることはいうまでもない。
【0036】
さらに本発明は、上記各実施例に示した各基板の形状よりも、もっと複雑な形状の基板を有する場合に適用することもできる。◎
加えて、上記各実施例においては、1眼レフカメラにおける実施例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、コンパクトカメラなどの基板構成にも適用できることはいうまでもない。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、コストが安くて作業性の良い、実装面積の広いカメラのプリント基板実装構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施例に係り、カメラボディを裏側から見たときのカメラのプリント基板実装構造を示す斜視図。
【図2】
上記第1実施例に係り、カメラボディを側面側から見たときのカメラのプリント基板実装構造を示す側断面図。
【図3】
本発明の第2実施例に係り、カメラボディを裏側から見たときのカメラのプリント基板実装構造を示す斜視図。
【図4】
上記第2実施例に係り、カメラを上記図3の切断線Aにより光軸方向に切断した際の各基板の積層状態を示す部分断面図。
【図5】
本発明の第3実施例に係り、カメラボディを裏側から見たときのカメラのプリント基板実装構造を示す斜視図。
【符号の説明】
1,10,22,26…硬質プリント基板
2,3,4,11,12,13,23,24,25…フレキシブルプリント基板
5…カメラボディ
14…電源制御用硬質プリント基板
21…裏蓋部材(カメラボディ後面を形成する外装部材)
 
訂正の要旨 ▲1▼訂正事項a
特許請求の範囲(請求項1)を、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 カメラボディの背面に配設された電気基板であって、カメラの電気部品が実装され、外装部材内面と対面する面に他の電気基板と電気的接続を行うためのコネクタ部品が実装されているプリント基板と、
上記カメラボディの上記背面以外の他の面の少なくとも一面に設けられ、上記プリント基板の上記コネクタ部品と電気的に接続される接点部を有する、上記プリント基板とは別の上記他の電気基板であるフレキシブルブリント基板と、
を具備することを特徴とするカメラのプリント基板実装構造。」
と訂正する。
▲2▼訂正事項b
明細書段落番号【0009】を、
「【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明によるカメラのプリント基板実装構造は、カメラボディの背面に配設された電気基板であって、カメラの電気部品が実装され、外装部材内面と対面する面に他の電気基板と電気的接続を行うためのコネクタ部品が実装されているプリント基板と、上記カメラボディの上記背面以外の他の面の少なくとも一面に設けられ、上記プリント基板の上記コネクタ部品と電気的に接続される接点部を有する、上記プリント基板とは別の上記他の電気基板であるフレキシブルブリント基板と、を具備することを特徴とする。」
と訂正する。
異議決定日 2003-03-07 
出願番号 特願平5-46967
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (G03B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 森口 良子  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 柏崎 正男
國島 明弘
登録日 2002-02-01 
登録番号 特許第3274733号(P3274733)
権利者 オリンパス光学工業株式会社
発明の名称 カメラのプリント基板実装構造  
代理人 伊藤 進  
代理人 伊藤 進  

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