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審決分類 審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正  G03B
管理番号 1079661
異議申立番号 異議2002-73027  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-02-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-12-16 
確定日 2003-06-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3295311号「透過型スクリーン用レンチキュラーシート」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3295311号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3295311号の発明についての出願は、平成8年8月2日に出願され、平成12年12月27日に手続補正がされ、それに対して平成13年4月16日付けで拒絶査定がされ、平成13年6月1日に査定不服審判が請求され、平成13年12月7日付けで拒絶理由が通知され、それに対して平成14年2月12日に手続補正がされ、平成14年4月5日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人 株式会社ディスクにより特許異議申立がなされたものである。

2.特許異議申立ての概要
(1)本件発明
本件発明は、特許第3295311号の請求項1〜7に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された本件発明1は次のとおりのものである。
「フレネルレンズシートと組み合わせて透過型スクリーンを構成するレンチキュラーシートにおいて、
透明支持体の片面に、放射線硬化性樹脂の硬化物により、凸シリンドリカルレンズが0.3mm以下のピツチPで並設されてなるレンズ部が形成され、前記透明支持体の反レンズ部側は平坦面であり、
前記平坦面には、前記各シリンドリカルレンズの非集光部に相当する位置に、10μm以下の厚さで線幅P’の遮光パターンを設けた構成であり、
前記凸シリンドリカルレンズの頂上から透明支持体の平坦面までの厚さをD、前記遮光パターンの厚さをD’とした場合、
D’/D≦10%
とし、下記に示す開口率が90%以上であることを特徴とする透過型スクリーン用レンチキュラーシート。
θ=tan-1{(P-P’)/2D}
θ’=tan-1{(P-P’)/2(D+D’)}
開口率=θ’/θ」

(2)申立ての理由の概要
特許異議申立人 株式会社ディスクは、上記平成12年12月27日付け手続補正書の明細書【請求項1】、【0007】、及び図面の【図6】において、それぞれの「開口率=(θ-θ’)/θ」を「開口率=θ’/θ」と補正されているが、これらの事項は出願当初の明細書及び図面に記載されておらず、これらの補正は、新規事項の追加に該当するから、本件の請求項1〜7に係る発明は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。したがって、これらの発明の特許は特許法第113条第1項第1号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。

3.当審の判断
(1)願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の記載事項
ア.【請求項1】
「フレネルレンズシートと組み合わせて透過型スクリーンを構成するレンチキュラーシートにおいて、
凸シリンドリカルレンズがピッチPで並設されてなるレンズ部を有し、シリンドリカルレンズの凸部頂上から前記レンズ部の反対側の平坦面までの厚さがDであるレンチキュラーシートの前記平坦面には、各シリンドリカルレンズの非集光部に相当する位置に、幅P’,厚さD’でストライプ状の遮光パターンが形成されている場合に、
下記に示す開口率が90%以上であることを特徴とする透過型スクリーン用レンチキュラーシート。
θ =tan-1{(P-P’)/2D}
θ’=tan-1{(P-P’)/2(D+D’)}
開口率=(θ-θ’)/θ」

イ.従来技術の部分【0003】上記構成では、BSの形成される突起の存在のために、斜めから観察した際には、観察光路が突起で遮られて、映像光が透過する開口部の全面を視覚することができず、画面が暗く感じられてしまう。
また、片面のみに凸シリンドリカルレンズ面が形成されているレンチキュラーシートであっても、BSが突起の上部に形成されている場合には、同様に、斜めから観察すると画面が暗く感じられることになる。(図2参照)

ウ.【0013】「<作用> 開口率が90%以上であること(BSの高さがレンズ厚さの10%以下であること)によって、あらゆる方向からスクリーンを観察しても、観察光路が遮られることなく、映像光が透過する開口部の全面を視覚することができるため、画面が明るく感じられる。(請求項1,2)」

エ.【0032】「【発明の効果】 観察する方向(正面・斜め)に応じて、画面の明るさが変化することがなく、特に、斜めから見た場合に画面が暗く感じられることのない透過型スクリーン用レンチキュラーシートが提供される。」

(2)判断
上記ア.〜エ.の記載事項、及び図6の記載から、本件発明は、透過型スクリーン用レンチキュラーシートを、θ、θ’を請求項1のように定義した上で、θ、θ’を用いた無次元の開口率で規定しようとしたことは明らかであり、開口率が大きい方が、画面がより明るく見えて好ましいことが理解できる。

そこで、図6を見ると、θは、遮光パターンの厚さD’が限りなく薄い場合の出射光の角度、すなわち、出射光の最大角度を表し、θ’は、遮光パターンの厚さD’で、一部遮られて出射する出射光の角度を表している。したがって、θ’がθに等しい場合には、出射光が遮光パターンの厚さD’で遮られることなく、開口率が最大となるべきところ、当初明細書の開口率の定義では、逆に開口率が0となってしまい、「開口率=(θ-θ’)/θ」の定義が誤りであることは明らかである。

当初明細書の開口率の定義にある「θ-θ’」は、出射光が遮光パターンで遮られる部分の角度であり、逆に「θ’」が、出射光が遮光パターンで遮られることのない角度をあらわすこと、すなわち、遮光パターンを考慮した場合の出射光の角度をあらわすので、「開口率」と言った場合は、「(θ-θ’)/θ」ではなく、「θ’/θ」を用いるべきことは、当初明細書、及び図6の記載から当業者にとって、一義的に明らかであり、当初明細書の他の箇所にもこれに反する記載はない。

結局、「開口率=(θ-θ’)/θ」は、「開口率=θ’/θ」の誤記であることは、当初明細書、及び図面から、当業者にとって明らかであり、上記補正事項は、誤記の訂正に該当する。

4.むすび
以上のとおりであるから、平成12年12月27日付け手続補正書による補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものではなく、特許異議申立の理由によっては、本件発明1〜7についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜7についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-05-28 
出願番号 特願平8-204636
審決分類 P 1 651・ 561- Y (G03B)
最終処分 維持  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 辻 徹二
鹿股 俊雄
登録日 2002-04-05 
登録番号 特許第3295311号(P3295311)
権利者 凸版印刷株式会社
発明の名称 透過型スクリーン用レンチキュラーシート  
代理人 菅井 英雄  
代理人 青木 健二  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 米澤 明  
代理人 白井 博樹  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 内田 亘彦  
代理人 韮澤 弘  

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