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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B01J |
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管理番号 | 1079780 |
異議申立番号 | 異議2002-70479 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-07-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-02-27 |
確定日 | 2003-06-23 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3202676号「自動車排ガス浄化用吸着材」の請求項1〜3に係る特許に対する特許異議の申立てについてした平成14年8月16日付けの特許取消決定に対し、東京高等裁判所において決定取消の判決(平成14年(行ケ)第517号、平成15年4月30日判決言渡)があったので、さらに審理の結果、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3202676号の請求項1〜3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 (1)本件特許第3202676号は、平成3年10月23日(国内優先日・平成2年11月9日)に出願した特願平3-275296号の一部を、平成10年2月13日に分割出願したものであって、平成13年6月22日にその特許の設定登録がなされた。 (2)特許異議申立人株式会社東ソー株式会社より請求項1〜3に係る特許に対する特許異議の申立て(異議2002-70479号)があり、平成14年8月16日付けで「特許第3202676号の請求項1〜3に係る特許を取り消す。」との特許取消決定がなされた。 (3)特許権者は、同決定の取り消しを求める訴えを東京高等裁判所に提起する一方、平成15年1月24日付けで願書に添付した明細書について訂正を求める審判の請求(訂正2003-39015号)がなされ、当該審判の請求に対し、平成15年3月18日付けで「特許第3202676号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める」との審決がなされ、同審決は確定した。 (4)東京高等裁判所は、先の取消決定取消訴訟(平成14年(行ケ)第517号)について決定取消の判決(平成15年4月30日判決言渡)を行い、同判決は確定した。 2.本件発明 訂正後の本件請求項1〜3に係る発明は、上記訂正を求める審判による訂正後の願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】Si/Al比が48以上、アルカリ金属含有量が0.1重量%以下、1100℃で5時間加熱された場合のBET比表面積(m2/g)が少なくとも30(m2/g)である高シリカゼオライトであって、HC(炭化水素)を吸着することを特徴とする自動車排ガス浄化用吸着材。 【請求項2】請求項1記載の吸着材に触媒を担持させてなる自動車排ガス浄化用吸着材。 【請求項3】請求項1又は2記載の吸着材を、多数の貫通孔を有するハ二力ム構造体に被覆した自動車排ガス浄化用吸着材。」 3.申立ての理由の概要 特許異議申立人は、甲第1号証(特開平2-75327号公報)、甲第2号証(特開平2-135126号公報)、甲第3号証(東ソー研究報告、第33巻第2号、第155〜165頁、1989年)、甲第4号証(ZELITES、vol.2、第67〜68頁、1982年4月)を提出し、本件請求項1〜3に係る発明は甲第1〜4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件請求項1〜3係る発明の特許は取り消されるべきものである旨主張している。 4.甲第1〜4号証の記載内容 4-1.甲第1号証には、以下の事項が記載されている。 (1a)「本発明者は、HC吸着性能の高い吸収材について鋭意研究を重ねた結果、ゼオライトが比較的高い温度まで高いHC吸着性能を有することを見出した。さらに、ゼオライトの中でも、特にモルデナイト及びY型ゼオライトがHC吸着性能が良好であり、耐久後にも優れた吸着性能を有することを確認した。」(第2頁右上欄1〜7行) (1b)「これらの試験により、モルデナイト及びY型ゼオライトが自動車の排気ガス浄化装置における吸着材として優れた材料であることがわかる。」(第2頁右下欄2〜4行) 4-2.甲第2号証には、以下の事項が記載されている。 (2a)「本発明は、排ガス温度が上昇してHCが吸着材から離脱し始めてから触媒コンバータ中の触媒が充分に加熱されるまでの間においても、HCが良好に浄化される自動車排ガス浄化装置を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第13〜17行目) (2b)「吸着材の一部に坦持する触媒金属は、通常排気ガス浄化触媒として使用される金属、例えばCu、Pd、Pt、Rh、Fe、Cr、V等から選択することができ、特にHCの浄化に有効なものを使用するとよい。」(第2頁右上欄第5〜9行目) (2c)「ゼオライトとしては、吸着性能の点からH型モルデナイトあるいはH-Y型ゼオライトが好ましい。」(第2頁右上欄第16〜18行目) 4-3.甲第3号証には、以下の事項が記載されている。 (3a)「HSZシリーズは、Y型、L型、モルデナイト(Mordenite)、及びフェリエライト(Ferrierite)の4種の合成ゼオライトから成り、そのSiO2/Al2O3モル比が5以上と高く、シリカ分に富む(ハイシリカ)為に耐熱性及び耐酸性に優れている。」(第156頁左欄第4〜8行目) (3b)「合成或は脱アルミニウム処理によってSiO2/Al2O3比を高めたゼオライトは、疎水性を示し水よりも有機分子を選択的に吸着する様になる。」(第161頁左欄第4〜6行目) (3c)「Fig.8に、US-Y化によって骨格SiO2/Al2O3比を増大させたY型ゼオライトの、水及びベンゼンに対する吸着特性を示す。SiO2/Al2O3比が70以上になると両者に対する親和力(吸着容量)の逆転が生じる。モルデナイトに於いても同様の現象が見られる。」(第161頁左欄第7〜11行目) (3d)「Fig.10に、HSZシリーズを空気中、2時間加熱した場合の結晶度の変化を示す。US-Y化の度合いが増す程耐熱性は高く、SiO2/Al2O3比が600のHSZ-390HUAは少なくとも900℃まで何ら変化を示さない。」(第161頁右欄第3行目〜第163頁左欄第3行目) 4-4.甲第4号証には、以下の事項が記載されている。 (4a)「HZSM-5系における水、メタノール、ベンゼンおよびn-ヘキサンの吸着特性について、SiO2/Al2O3比を約50から900まで変化させて100℃で測定し、また、それらの疎水性を検討した。HZSM-5は、水やメタノールのような極性化合物よりn-ヘキサンのような極性の低い化合物をより吸着し、SiO2/Al2O3比として400を越える範囲における吸着量は、n-ヘキサン>ベンゼン>>メタノール>水の順となった。その疎水性は、SiO2/Al2O3比の増加に伴って直線的に増加した。」(第67頁抄録) 5.当審の判断 5-1.請求項1に係る発明について 甲第1号証には、上記(1a)によれば、「ゼオライトが比較的高い温度まで高いHC吸着性能を有する」と記載されており、また、(1b)によれば、「ゼオライト」が「自動車の排気ガス浄化装置における吸着材として優れた材料」であることも記載されている。 よって、甲第1号証の記載事項を本件請求項1に係る発明の記載振りに則って整理すると、甲第1号証には「ゼオライトであって、HC(炭化水素)を吸着することを特徴とする自動車排ガス浄化用吸着材。」という発明が記載されていると云える。 ここで、本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、「ゼオライトであって、HC(炭化水素)を吸着することを特徴とする自動車排ガス浄化用吸着材」である点で一致し、本件請求項1に係る発明1ではゼオライトを、「Si/Al比が48以上、アルカリ金属含有量が0.1重量%以下、1100℃で5時間加熱された場合のBET比表面積(m2/g)が少なくとも30(m2/g)」である高シリカゼオライトとしているのに対し、甲第1号証には、「モルデナイト及びY型ゼオライト」としか記載がなく、その具体的な物性については明らかでない点で相違している。 次に上記相違点について、その余の甲第2号証について検討すると、上記(2a)〜(2c)の記載からみて、甲第2号証には、HCを吸着する浄化吸着材に、ゼオライトとしてH型モルデナイトあるいはH-Y型ゼオライトが好ましく、坦持する金属としてCu、Pd、Pt、Rh、Fe、Cr、V等が適用し得ることが示唆されている。 また、甲第3号証について検討すると、上記(3b)、(3c)の記載によれば、甲第3号証には、水と有機分子を含むガスを処理する場合、ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が高くなるに従って、水の吸着量が減少する分、有機分子であるベンゼンの吸着量が増え、また、上記(3a)、(3d)の記載によれば、シリカ分に富む(ハイシリカ)ゼオライトほど耐熱性が高くなることが開示されているのであるから、「水分とHC(炭化水素)を含む排ガスから、炭化水素を吸着」し、かつ耐熱性を高くするために、ゼオライトとしてSi/Al比が高い値のものを、浄化装置の吸着材として適用し得ることについて示唆されていると云える。 さらに、甲第4号証について検討すると、上記(4a)に記載されているように、ゼオライトのSiO2/Al2O3比が増加すると、水より炭化水素であるベンゼンをより吸着するということが示唆されている。 しかしながら、甲第2〜4号証には、高シリカのゼオライトとして「Si/Al比が48以上」であり、かつ「アルカリ金属含有量が0.1重量%以下」とすることを示唆する記載はない。 本件請求項1に係る発明は、上記の如く、高シリカのゼオライトとして「Si/Al比が48以上」であるとともに、かつ「アルカリ金属含有量が0.1重量%以下、1100℃で5時間加熱された場合のBET比表面積(m2/g)が少なくとも30(m2/g)である」という構成により、高温条件下においてもHCを有効に捕獲するという、顕著な効果を奏するものである。 してみると、本件請求項1に係る発明の上記相違点に係る構成は、甲第2〜4号証の記載から、当業者が容易に想到することができたものではなく、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 5-2.請求項2に係る発明について 本件請求項2に係る発明は、本件請求項1に係る発明を引用することによりその発明特定事項を全て含むものであるから、前記5-1.と同様の理由により、本件請求項2に係る発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 5-3.請求項3に係る発明について 本件請求項3に係る発明3は、本件請求項1又は2に係る発明を引用することによりその発明特定事項を全て含むものであるから、前記5-1.、5-2.と同様の理由により、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 6.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1〜3に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜3に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2002-08-16 |
出願番号 | 特願平10-31743 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B01J)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 新居田 知生、中村 敬子 |
特許庁審判長 |
石井 良夫 |
特許庁審判官 |
山田 充 後谷 陽一 |
登録日 | 2001-06-22 |
登録番号 | 特許第3202676号(P3202676) |
権利者 | 日本碍子株式会社 |
発明の名称 | 自動車排ガス浄化用吸着材 |
代理人 | 渡邉 一平 |