• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B21D
管理番号 1080505
審判番号 無効2001-35026  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-01-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-01-23 
確定日 2003-05-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2829350号発明「板材などの曲げ方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2829350号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
(1)本件特許2829350号の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)についての出願は、昭和63年7月6日に出願され、平成10年9月25日にその発明について特許の設定登録がされたものである。
(2)これに対して、請求人は、甲第1ないし5号証を提出し、本件特許発明は、甲第1号証又は甲第2号証のいずれかと甲第3ないし5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、無効とされるべきである旨を主張する。
(3)被請求人は、平成13年9月17日付けで訂正請求書を提出して訂正を求めた。

2 訂正の適否
(1)被請求人が求めている訂正の内容は、次のaないしdのとおりである。
a 登録時の明細書(以下「登録明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載された「出口まわりが連結された型材の上記出口」を、「上下方向及び左右方向で出口まわりが連結された型材の上記出口」と訂正する。
b 登録明細書の【発明の詳細な説明】の[問題点を解決するための手段]の項に記載された「出口まわりが連結された型材の上記出口」を、「上下方向及び左右方向で出口まわりが連結された型材の上記出口」と訂正する。
c 登録明細書の【発明の詳細な説明】の[作用]の項に記載された「上記型材の出口まわりが連結された構成」を、「上記型材の出口まわりが上下方向及び左右方向で連結された構成」と訂正する。
d 登録明細書の【発明の詳細な説明】の[発明の効果]の項に記載された「曲げ加工に使用する型材の出口まわりが連結された構成」を、「曲げ加工に使用する型材の出口まわりが上下方向及び左右方向で連結された構成」と訂正する。
(2)上記訂正事項aは、型材の出口まわりの連結の形態を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。そして、同訂正事項は、登録明細書に記載された事項の範囲内で訂正を行うものであると認められる。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)上記訂正事項bないしdは、上記訂正aに伴って生じる明りょうでない記載の釈明を目的としたものに該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)したがって、平成13年9月17日付けの訂正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第134条第2項及び同条第5項の規定によって準用する同法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3 本件特許発明に対する判断
(1)上記2に示したように訂正が認められるから、本件特許発明は、上記訂正された明細書及び登録時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 板材やパイプ材などの被加工部材を湾曲形状に曲げ加工する場合は、上下方向及び左右方向で出口まわりが連結された型材の上記出口から被加工部材を間欠的に送り出しつつ、被加工部材の送りが停止されているときに、押し具を一定幅だけ移動させることにより上記被加工部材を上記型材の出口側端部に押し付けて一定角度だけ折り曲げることを繰り返すことによって湾曲形状に曲げ加工し、また、上記被加工部材を直角に曲げ加工する場合は、上記押し具を上記一定幅よりも大きな幅で移動させることにより行なうことを特徴とする板材などの曲げ加工方法。」
(2)これに対し、当審が平成13年7月18日付けで通知した無効理由において引用した甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認める。
帯状材を湾曲形状に曲げ加工する場合に、上下方向で出口まわりが連結されたガイドの上記出口から帯状材を間欠的に送り出しつつ、上記帯状材の送りの間に曲げ具を一定幅だけ移動させることにより上記帯状材を上記ガイドの出口側端部に押し付けて一定角度だけ折り曲げることを繰り返すことによって湾曲形状に曲げ加工する帯状材の曲げ加工方法。
上記帯状材を上記一定角度よりも大きな角度に曲げ加工する場合は、曲げ具を上記一定幅よりも大きな幅で移動させることにより行なう帯状材の曲げ加工方法。
なお、甲第1号証には、ガイドの出口まわりの連結構造について明確な記載はないが、甲第1号証のガイドは、訂正された明細書の発明の詳細な説明に記載された型材と同様(訂正明細書第3頁第7から10行参照)、上下方向に一体結合となっているので、上記のように認定した。
また、上記認定のうち「上記帯状材を上記一定角度よりも大きな角度に曲げ加工する場合は、‥‥帯状材の曲げ加工方法。」については、甲第1号証に記載された装置により、湾曲形状に加工する場合の一回毎の曲げ角度よりも大きく曲げ加工する場合には、湾曲状に加工する場合に比べ、曲げ具の移動の幅が大きくなることは明らかであることから、上記のように認定した。
(3)本件特許発明(前者)と甲第1号証に記載された発明(後者)とを対比する。
後者における「帯状材」は、加工の対象となる板状材であるから、前者における「板材やパイプ材などの被加工部材」に相当し、後者における「ガイド」は、その出口側端部で帯状材が当接して折り曲げ形状を作ることから、前者における「型材」に相当する。
また、後者における「曲げ具」は、前者における「押し具」に相当するから、前者において「帯状材の送りの間に曲げ具を一定幅だけ移動させる」ことは、前者において「被加工物の送りが停止されているときに、押し具を一定幅だけ移動させる」ことに相当する。
さらに、前者において、被加工部材を直角に曲げ加工する場合は、湾曲形状に曲げ加工する場合の一定角度よりも大きな角度の曲げ加工であるから、両者は、被加工部材を湾曲形状に曲げ加工する場合の一定角度よりも大きな角度に曲げ加工する場合は、曲げ具を湾曲形状に加工する場合の一定幅よりも大きな幅で移動させることにより行なう点で共通する。
したがって、両者は、次の点で一致する。
板材やパイプ材などの被加工部材を湾曲形状に曲げ加工する場合は、上下方向で出口まわりが連結された型材の上記出口から被加工部材を間欠的に送り出しつつ、被加工部材の送りが停止されているときに、押し具を一定幅だけ移動させることにより上記被加工部材を上記型材の出口側端部に押し付けて一定角度だけ折り曲げることを繰り返すことによって湾曲形状に曲げ加工し、また、上記被加工部材を上記一定角度よりも大きな角度に曲げ加工する場合は、曲げ具を上記一定幅よりも大きな幅で移動させることにより行なう板材などの曲げ加工方法。
一方、両者は、次の2点で相違する。
(相違点1)前者において、型材の出口まわりは左右方向でも連結されているのに対し、後者においては、この点の限定がない点。
(相違点2)前者において、湾曲形状に加工する場合の1回毎の曲げ角度よりも大きい曲げ角度が直角であるのに対し、後者では、角度が特定されない点。
(4)まず、上記相違点1について検討する。
被請求人は、平成13年7月6日付けの口頭審理陳述要領書において、「「出口まわりが連結された型材」の「連結された」とは、押し具で被加工部材を型材の出口側端部に押し付けて被加工部材を折り曲げても型材の出口が上下方向及び左右方向に開かない型材の繋がりであることを意味する」(第2頁第16〜19行)と主張しているから、本件特許発明において「上下方向及び左右方向で出口まわりが連結された」とは、型材の出口が上下方向及び左右方向に開かないように、出口付近が連結されることを意味するものと認められる。
一方、甲第1号証に記載された発明において、ガイドの出口まわりが開かないように連結する場合に、上記出口が左右方向にも開かないように連結するという程度のことは、設計上、曲げ加工の方向に合わせて当然に検討されるべき事項である。
また、この相違点に関し、被請求人は、平成13年9月17日付けの意見書において、甲第1号証に記載された発明においては、±0.1mm程度の誤差がでるのはやむを得ないのに対し、本件特許発明では、例えば±0.025mmの誤差ですむ旨を主張している。
しかし、装置を構成する部材間の連結を、必要な加工精度に合わせて設計することは、ごく当然に行われていることであって、本件特許発明が、加工精度を高めるために特定の構成を有するわけでもないから、この点は単なる設計上の事項に過ぎず、格別なものとはいえない。
(5)次に、上記相違点2について検討する。
甲第1号証に記載された発明において、帯状材を直角に曲げ加工を行う場合には、曲げ具の移動量を適宜調節することにより行うことができるものと認められ、その場合にも湾曲形状に曲げ加工する場合に比べて大きな幅で移動させることは明らかである。したがって、相違点2も格別な差異であると認めることはできない。
(6)結局、上記各相違点はいずれも格別なものではなく、また、上記相違点を総合的に検討しても、これらによって奏する効果は当業者が当然に予測できる範囲内のものであると認められる。

4 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
板材などの曲げ加工方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 板材やパイプ材などの被加工部材を湾曲形状に曲げ加工する場合は、上下方向及び左右方向で出口まわりが連結された型材の上記出口から被加工部材を間欠的に送り出しつつ、被加工部材の送りが停止されているときに、押し具を一定幅だけ移動させることにより上記被加工部材を上記型材の出口側端部に押し付けて一定角度だけ折り曲げることを繰り返すことによって湾曲形状に曲げ加工し、また、上記被加工部材を直角に曲げ加工する場合は、上記押し具を上記一定幅よりも大きな幅で移動させることにより行なうことを特徴とする板材などの曲げ加工方法。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は、板材やパイプ材などの被加工部材を所望の湾曲形状に曲げ加工する曲げ加工方法に関する。
[従来の技術]
従来、板材やパイプ材などを曲げ加工して所望の湾曲形状を形成する場合には、ダイスの凹入部の上に板材やパイプ材などの被加工部材を置き、その被加工部材をポンチなどで加減しながら叩いて被加工部材を上記凹入部内へ凹ませるといった作業を被加工部材の複数箇所に施すことにより、被加工部材の全体を所望の湾曲形状に曲げ加工したり、螺旋形状や蛇行形状などの特殊形状に曲げ加工したりしていた。また、成形ローラを用いて上記のような形状に曲げ加工することもあった。
[発明が解決しようとする問題点]
しかしながら、上述した従来の曲げ加工方法は、被加工部材を叩いて凹ませるときの力加減が難しく、このことが被加工部材にスプリングバックが具備されていることも相まって、被加工部材を所望の曲率半径を有する湾曲形状に正確に曲げ加工するのに高度な技量と熟練を必要とし、誰でもが簡単に行なうことができないという問題があった。
また、成形ローラを用いる曲げ加工方法では、所望する形状が異なるごとにその形状に適応する成形面を有する成形ローラを取替え使用しなければならず、非常に多種多様な成形ローラを準備しておく必要があって、経済的に非常に不利であるという問題があった。
この発明は以上の問題を解決するもので、特別の訓練なく、初心者でも容易かつ迅速に、しかも、歪などを生じることなく被加工部材を所望の湾曲形状でも直角でも迅速かつ精度よく曲げ加工することができる板材などの曲げ加工方法を提供することを目的とする。
[問題点を解決するための手段]
上記目的を達成するために、本発明に係る板材などの曲げ加工方法は、板材やパイプ材などの被加工部材を湾曲形状に曲げ加工する場合は、上下方向及び左右方向で出口まわりが連結された型材の上記出口から被加工部材を間欠的に送り出しつつ、被加工部材の送りが停止されているときに、押し具を一定幅だけ移動させることにより上記被加工部材を上記型材の出口側端部に押し付けて一定角度だけ折り曲げることを繰り返すことによって湾曲形状に曲げ加工し、また、上記被加工部材を直角に曲げ加工する場合は、上記押し具を上記一定幅よりも大きな幅で移動させることにより行なうことを特徴とする。
[作用]
本発明によると、被加工部材を所望の湾曲形状に曲げ加工したい場合は、型材の出口から間欠的に送り出される被加工部材の送りが停止されている度に押し具を一定幅だけ移動させて、被加工部材を型材の出口側端部に押し付けて一定角度だけ折り曲げることの繰り返しによって、高度な技量や熟練を要することなく、誰でもが簡単かつ迅速に被加工部材全体を湾曲形状に曲げ加工することが可能である。また、被加工部材を直角に曲げ加工したい場合は、上記押し具の移動幅を上記一定幅よりも大きくして被加工部材を折り曲げることで簡単かつ迅速に行なうことができる。またここで、上記型材の出口まわりが上下方向及び左右方向で連結された構成であるから、押し具の移動によって被加工部材を型材の出口側端部に強く押し付けた場合でも、該出口がその開き方向に歪みを生じることがなく、被加工部材を所定の湾曲形状あるいは直角に精度よく曲げ加工することが可能である。
[実施例]
第1a〜1b図はこの発明に係る実施例の曲げ加工を行う手順を示している。同図においては、型材Dが相対設された内面が平坦な一対の型材10,10とされており、その出口14の側端部11は鋭角状に尖らせて先細形状に形成されているとともに、第3図に示すように、出口14の上下両端部にそれぞれ螺合させたねじ軸20,21により相互間隔Lが増減調節可能な状態で相互に連結されている。すなわち、型材Dは、上下方向を型材10,10自体の一体結合によって連結させ、左右方向をねじ軸20,21によって連結させることで、出口14のまわりを連結している。上記ねじ軸20,21はチェーン22で連動されているとともに、一方のねじ軸20に操作機構23が連結されており、該操作機構23を介してねじ軸20,21を正方向または逆方向に回転操作することにより、一対の型材10,10が接近または離間して上記相互間隔Lを調節するための機構が構成されている。
12は押し具で、上記型材10,10の出口14の側端部11に対し第1a図に例示した円弧経路A-Aに沿って接近離反可能に構成されている。13は被加工部材1に送りをかける送りローラである。
以上において、被加工部材1が板材1′である場合には、例えば第1a図および第1b図のように送りローラ13を所定角度だけ回転させて型材10,10の出口14から被加工板材1′を送り出し、この被加工板材1′の厚み寸法tに合わせて一対の型材10,10の相互間隔Lを調整し固定する。そして、被加工板材1′の所定箇所イが上記出口14の側端部11に対向したところで被加工板材1′の送りを停止し、続いて押し具12を第1c図のように一定幅Hだけ右方向へ移動させることにより、被加工板材1′を上記出口側端部11に押し付けて上記箇所イを一定角度だけ折り曲げる。この後、第1d図のように押し具12を元の位置まで後退させると共に、送りローラ13を所定角度だけ回転させて被加工板材1′を送りだし、既に折り曲げられている箇所イから所定幅だけ離れた箇所ロを上記出口側端部11に対向させて送りを停止する。そして、再び押し具12を一定幅Hだけ右方向へ移動させることにより第1e図のように被加工板材1′の所定箇所ロを上記出口側端部11に押し付けて上記の箇所イと同一の一定角度だけ折り曲げる。以上の操作を繰り返すことによって、被加工板材1′が所定間隔おきの複数個所で折り曲げられ、全体として所望の湾曲形状に曲げ加工される。なお、上記折曲げ箇所イ,ロ,…の間隔が比較的狭い場合には全体として湾曲形状に曲げ加工されるが、その間隔に広狭がある場合には間隔を隔てた複数箇所がそれぞれ湾曲状に曲げ加工される。
上述の方法において、押し具12の移動幅Hを一定にしておけば、被加工板材1′の各箇所(イ,ロ…)の一回の折曲げ角度は同一になる。また、送りローラ13による被加工板材1′の間欠送り幅Dを一定にしておけば、第2図に示すように、折り曲げられる各箇所(イ,ロ…)の相互間隔が同一になる。このことにより、円弧状の湾曲形状に曲げ加工する場合には、被加工板材1′の曲げ加工を施す部分を複数に等分割してその等分割箇所が上記型材10,10の出口側端部11に次々と対向されるように上記間欠送り幅Dを決定するとともに、押し具12の一回の押し付けにより折り曲げられる被加工板材1′の折曲げ角度と曲げ加工により形成したい湾曲部分の曲率半径とから折曲げ回数を算出しておけば、これら両方の要素を因子として正確な湾曲形状の曲げ加工を行うことが可能になる。なお、押し具12の一回の押し付けにより折り曲げられる被加工板材1′の曲がり角度には、被加工板材1′のスプリングバックを考慮しておく必要がある。
また、被加工板材1′を直角に曲げ加工したい場合は、押し具12の移動幅を上記移動幅Hよりも大きくして、上記のように直角よりも小さい鋭角状に尖った先細形状に形成されている型材10,10の出口側端部11に向けて上記押し具12を円弧経路A-Aに沿って移動させればよい。
即ち、被加工板材1′を直角に折り曲げたときは、その被加工板材1′がスプリングバックによって折り曲げ後にやや復元するから、押し具12を上記先細形状の出口側端部11の下を通過した後にさらにやや上向きに移動させて被加工板材1′を押し具12によって直角よりい小さい鋭角に折り曲げておくことで、押し具12が後退した後には被加工板材1′がスプリングバックによって直角に復元し、所定の直角曲げ加工品が得られる。
第2図は上述した手順で曲げ加工された被加工板材1′の湾曲部分を示している。同図において、Aは曲げ加工により形成された円弧状の湾曲部分の両端部の開き角度、aは押し具12の押し付けにより折り曲げられた個所相互の開き角度で、これは上記開き角度Aを等分割したときの一つ分の角度である。また、rは湾曲部分の曲率半径である。
以上の説明は、被加工部材1が板材1′である場合についての説明であるが、被加工部材1が丸パイプである場合にも同様な曲げ加工が行なえる。この場合には一対の型材10,10の相互間隔Lは丸パイプ材の外径寸法に合わせて調整する。
ところで、被加工部材1が丸パイプである場合において、板材1′を曲げ加工する場合と同一形状の型材、すなわち丸パイプ材に対向する面が平坦な第3図のような型材10,10を用いると、丸パイプ材の周面上の一点だけが押し具12で型材10の平坦な出口側端部11に押し付けられ、丸パイプ材の内側部分、つまり折り曲げにより圧縮される部分の一点に局部的に押付力が集中して丸パイプ材がうまく曲がらず、いびつに変形し折れ曲がることがある。このような変形曲げを生じないようにするためには、第4図および第5図に示すように、一対の型材10,10の出口14の周縁を丸パイプ材1″の外周面に合わせて円弧状の成形面15に構成しておくことがよい。こうすることにより、丸パイプ材1″の半周部分が成形面15に支持された状態で折り曲げられるため、上述した局部的な押付力の集中が起こらず、丸パイプ材1″が局部的にいびつに変形するといった事態を生じることなく、丸パイプ材1″を大きな角度に曲げ加工する場合に特に有効である。
第6図は丸パイプ材1″を特殊形状に曲げ加工する場合を例示しており、この場合は、丸パイプ材1″を一対の型材10の出口14(第1a図などを参照)から間欠的に送り出すとともに、該丸パイプ材1″をローラなどで挟んでその軸心回りに所望角度bだけ間欠的に回転させ、丸パイプ材1″の送り出しと回転が停止されているときに、押し具12を一定幅だけ移動させることにより上記丸パイプ材1″を型材10の出口側端部11(第1a図などを参照)に押し付けて一定角度だけ折り曲げるのである。なおここで、丸パイプ材1″の送り出しと回転は同時併行させても、一方を先に行なった後に他方を行なってもよい。第6図のように、各折曲箇所イ,ロ,…において同一角度だけ丸パイプ材1″を回転させる場合には、曲げ加工された丸パイプ材1″が第7図のように螺旋状になり、例えば螺旋階段の手すりなどの用途に好適に使用可能である。
また、丸パイプ材1″を蛇行状に曲げ加工することも可能である。この場合は、所定の折曲箇所を曲げ加工するときに丸パイプ材1″をその軸心回りで180度反転させ、その他の折曲箇所を曲げ加工するときには丸パイプ材1″を回転させないことによって、ねじれのない蛇行状の曲げ加工を行なうことができる。
[発明の効果]
以上の説明のように、本発明の曲げ加工方法によると、型材の出口から被加工部材を間欠的に送り出しつつ、その送りが停止されている度に押し具を一定幅だけ移動させるといった動作を繰り返すだけで、ダイスやポンチ、さらには多種の中から選択された一つの成形ローラを用いることなく、また、高度な技量や熟練を要することなく、板材やパイプ材などの被加工部材を所定の湾曲形状に容易かつ迅速に曲げ加工することができる。また、被加工部材を直角に曲げ加工したい場合は、上記押し具の移動幅を大きくして曲げ加工することで、簡単かつ迅速に行なうことができる。しかも、このような曲げ加工に使用する型材の出口まわりが上下方向及び左右方向で連結された構成であるから、押し具によって被加工部材を型材の出口側端部に強く押し付けた場合でも、該出口が開き方向に歪みを生じることがなく、したがって、被加工部材を所定の湾曲形状に非常に精度よく曲げ加工することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1a〜1e図はこの発明の実施例による曲げ加工方法の手順を示す説明図、第2図は第1a〜1e図の手順に従って曲げ加工された板材の湾曲部分を示す側面図、第3図は一対の型材の相互連結および相互間隔調節機構を例示する平面図、第4図は型材の変形例を示す縦断側面図、第5図は第4図のV-V線に沿った断面図、第6図は丸パイプ材を螺旋状に曲げ加工する場合の説明図、第7図は螺旋状に曲げ加工された丸パイプ材の側面図である。
1……被加工部材、1′……板材、1″……丸パイプ材、10……型材、11……出口側端部、12……押し具、14……型材の出口、15……成形面。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
1.登録時の明細書(以下「登録明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載された「出口まわりが連結された型材の上記出口」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「上下方向及び左右方向で出口まわりが連結された型材の上記出口」と訂正する。
2.登録明細書の【発明の詳細な説明】の[問題点を解決するための手段]の項に記載された「出口まわりが連結された型材の上記出口」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「上下方向及び左右方向で出口まわりが連結された型材の上記出口」と訂正する。
3.登録明細書の【発明の詳細な説明】の[作用]の項に記載された「上記型材の出口まわりが連結された構成」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「上記型材の出口まわりが上下方向及び左右方向で連結された構成」と訂正する。
4.登録明細書の【発明の詳細な説明】の[発明の効果]の項に記載された「曲げ加工に使用する型材の出口まわりが連結された構成」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「曲げ加工に使用する型材の出口まわりが上下方向及び左右方向で連結された構成」と訂正する。
審理終結日 2001-10-24 
結審通知日 2001-10-29 
審決日 2001-11-09 
出願番号 特願昭63-168547
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (B21D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 八木 誠  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 中村 達之
宮崎 侑久
登録日 1998-09-25 
登録番号 特許第2829350号(P2829350)
発明の名称 板材などの曲げ方法  
代理人 鈴江 正二  
代理人 鈴江 正二  
代理人 鈴江 孝一  
代理人 中谷 武嗣  
代理人 鈴江 孝一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ