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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1081402
異議申立番号 異議2000-73135  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-01-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-08-08 
確定日 2003-07-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第3011272号「遊技用設備装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについてされた平成14年10月25日付け取消決定に対し、東京高等裁判所において、上記決定を取り消す旨の判決(平成14年(行ケ)第621号、平成15年5月22日判決言渡)があったので、更に審理の上、次のとおり決定する。 
結論 特許第3011272号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
特許第3011272号の請求項1に係る発明は、昭和63年6月21日に特許出願され、平成11年12月10日にその特許権の設定登録がなされ、この特許に対し、鈴村弘より特許異議の申立て(異議2000-73135)がなされ、平成14年10月25日付けで請求項1に係る特許を取り消す旨の決定がなされたところ、株式会社三共はこれを不服として東京高等裁判所に当該決定の取消を求める訴(平成14(行ケ)621号)を提起するとともに、平成15年3月10日に訂正審判(訂正2003-39048)を請求し、この審判については審理の結果、平成15年4月28日付けで訂正を認める旨の審決がなされて確定し、上記特許を取り消す旨の決定は平成15年5月22日言渡の判決によって取消された。

2.特許異議申立て理由の概要
本件特許の請求項1に係る発明は、下記の甲第1ないし4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきである。

甲第1号証:特開昭58-130075号公報
甲第2号証:特開昭53-120943号公報
甲第3号証:実願昭60-200988号(実開昭62-107884号)のマイクロフィルム
甲第4号証:特開昭50-152799号公報

3.本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、上記平成15年3月10日付け訂正審判請求書に添付した全文訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるものである。
「遊技場に設置された遊技機により遊技を行なった後遊技者の所有となった持点を使用して景品交換を行なうための遊技用設備装置であって、
遊技場で遊技者が使用する記録媒体であって、記録媒体同士を識別するための記録媒体識別情報が記録された記録媒体と、
前記記録媒体識別情報毎に対応させて持点を格納している持点格納手段と、
前記記録媒体の記録媒体識別情報を読取り、前記持点格納手段に既に格納されている持点情報のうち前記読取った記録媒体識別情報に対応する持点情報に対し、当該記録媒体識別情報を記録している記録媒体を使用している遊技者が前記遊技機により遊技を行ない終了した後当該遊技者の所有となった新たな持点情報を加算更新可能な持点加算更新手段と、
前記記録媒体の記録媒体識別情報を読取り、前記持点格納手段に格納されている持点情報のうち前記読取った記録媒体識別情報に対応する持点情報の範囲内で景品交換が可能な景品交換手段とを含み、
前記持点情報は、数日間にわたって景品交換に用いることができる数日間景品交換用持点情報と、遊技者が前記遊技を行ない終了した後当該遊技者の所有となった新たな持点情報であって使用期限が1日限りである1日使用期限持点情報とからなり、
前記持点格納手段は、前記数日間景品交換用持点情報を格納する数日間景品交換用持点情報領域と、前記1日使用期限持点情報を格納する1日使用期限持点情報領域とを有し、遊技者が、前記遊技を行ない終了した後当該遊技者の所有となった新たな1日使用期限持点情報をその日の内に使用することなく前記数日間景品交換用持点情報領域の数日間景品交換用持点情報に加算更新して数日間にわたって累積的に格納する選択を行なうことにより、前記遊技を行ない終了した後当該遊技者の所有となった新たな1日使用期限持点情報が前記数日間景品交換用持点情報領域に既に格納されている数日間景品交換用持点情報に加算更新され、数日間にわたって前記遊技機により遊技を行なった結果、該数日間にわたって前記数日間景品交換用持点情報領域に格納されて累積的に加算更新された数日間景品交換用持点情報による景品交換を可能にするとともに、前記記録媒体には前記1日使用期限持点情報と前記数日間景品交換用持点情報を記録させないようにしたことを特徴とする、遊技用設備装置。」

4.甲号各証記載の発明
本件特許出願前に頒布された刊行物である、甲第1ないし4号証には、それぞれ次の事項が記載されている。
(1)甲第1号証(特開昭58-130075号公報)
(1-a)「(1)演算記憶部が実遊戯球の発射信号、フアール信号、入賞信号の各信号に予め対応させた換算数を以つて当初遊戯者が有していた持球換算数に対して演算を為し、演算記憶実数が零の場合には弾発を阻止することを基本とする電子制御式パチンコ機制御系において、
各遊戯者のその時々での持玉は個々に保持する個有の識別コードに関連して上記演算記憶部に記憶され、この演算記憶実数の読出しは常に上記個有の識別コード認識によって為されると共に、店内の景品交換所には、上記識別コード入力部と、該コード入力部への入力コードに該当する上記演算記憶実数を読出表示する表示部とを備えたことを特徴とする電子制御式パチンコ機遊戯者登録制御系。
(2)演算記憶部は、各景品の所要数を記憶し、遊戯者の選択した景品に応じて上記所要数と持玉との間の演算をなし、その結果としての景品交換可能個数は景品交換所の表示部に表示されることを特徴とする特許請求の範囲(1)に記載の電子制御式パチンコ機遊戯者登録制御系。」(特許請求の範囲)、
(1-b)「本発明は、各遊戯者を個有の識別コードで認識、登録し、その動きを追って当該遊戯者の仮想の遊戯球を電子的に運搬し、かつ登録用媒体への記録情報の逓減を試みた電子制御式パチンコ機用遊戯者登録制御系に関するものである。」(1頁右下欄11〜15行)、
(1-c)「本発明は各遊戯者を識別コードで弁別することにより、登録用媒体を用いるにしても識別コード情報のみで足り、入力情報機能部の簡略化を目的とすると共に、景品交換の合理化を図ったものである。
以下には本発明の遊戯者登録制御系の系統図を付し、一実施例としての観点から詳述するが、登録用媒体としてはそれ自身の乃至それを持つている遊戯者の識別コードをキーワード的に有しているという意味からこの媒体をキーと称する。もっとも形状は任意で文字通り鍵状のものでも良いし、板状、カード状等様々なものが考えられる。」(2頁左上欄11行〜右上欄3行)、
(1-d)「入賞球に就いては予め一球当たり何球の賞球という具合に定められている換算率に応じて、入賞信号発生部12では入賞球一球毎に所定賞球数nを著すQ(+n)信号を演算記憶部に送り、現記憶数に+nを加算して記憶させ、同様に表示部表示も更生していく。
以上のような演算過程で演算記憶数が零となった場合には演算記憶部から打止信号Soが発せられ、以後の弾発が妨げられる。遊戯者が遊戯半ばにしてその台での遊戯を中止しようとした場合には、キー挿入部3からキーを抜き出せば良い。すると、この台番号に対して当該識別コードを載せていたキ-が抜かれたことを示す中止信号Poが演算記憶部に送られ、この台とこのキ-との継りを絶つと共に表示部表示を帰零し、打止装置9を打止信号Soによって作動させる。但し、台とキーとの継りが絶たれてもその時点での現記憶数は台に就いて為されている訳ではなく、識別コードに対して為されているため、単に視覚的表示がなくなったということで、演算記憶部では、当該識別コードに対していくらの実数という情報を保持している訳である。従って、その遊戯者が台走査インタフェースを介して同一コンピュータに連なつている他の台のコード入力部乃至キー挿入部に自分のキーを挿入すると、この台に呼出指令が来た時にコンピュータ側では上述したと同様にこの識別コードをこの台番号と重ね合わせて把握する。従って、既に記憶されている識別コードはそれに荷われた情報の読出しをコンピュータに指令し、演算記憶部6では当該情報中、実数表示をその新台の表示部8になさせると共に、以下前台で為されたと同様の情報処理を行っていく。
遊戯者が自分の仮想持玉の景品換えを望んだ場合は、例えば景品交換所に各台の表示部8とコード入力部乃至キー挿入部3のみを取出したような表示装置8′を設けて、キー押込み乃至コード入力により演算記憶部をしてその識別コードを追いかけさせ、それに伴う実数情報を表示信号Do′を以つて表示部8′に表示し、遊戯者側、店員側に明示する。折角コンピュータを用いているのであるから、演算記憶部に各景品の所要数を記憶させ、遊戯者の選択した景品に応じて所要数を元に持玉(賞球数)との間に演算させて景品の交換可能個数等を表示器8′に示させても良い。」(3頁左上欄12行〜左下欄18行)。
(2)甲第2号証(特開昭53-120943号公報)
(2-a)「パチンコ遊技で獲得した賞品玉数に相関する情報が機械的読出し可能に記録されたカード状の記録媒体を用いて所望の種類の景品に交換するための装置」(1頁左下欄5〜8行)、
(2-b)「この発明の他の目的は、或る期間内であればいつでも景品交換が可能であり、少量の賞品玉を獲得した日は数日間に獲得した賞品玉をまとめて景品交換できるような自動景品交換装置を提供することである。」(2頁右下欄18行〜3頁左上欄2行)、
(2-c)「このレジスタ28aにストアされている賞品玉総数が、玉数表示器13に表示されるとともに、カード状の記録媒体(以下カードCD)に機械的読出し可能なように情報記録するためのカード記録手段29に与えられる。」(3頁左下欄11〜15行)、
(2-d)「顧客が所望の景品に交換できない程度の少量の賞品玉を獲得した場合には、数日間の獲得した賞品玉をまとめて、多量の賞品玉と交換可能な景品と交換できる」(8頁左上欄7〜10行)。
(3)甲第3号証(実願昭60-200988号(実開昭62-107884号)のマイクロフィルム)
(3-a)「しかして、遊技終了後景品交換時に端数が生じると入力手段によりその端数を入力し、入力により位置決め手段が発色ポイントを選定し、書込手段の位置が定められて端数貯金カードに端数が記入される。」(4頁1〜5行)、
(3-b)「遊技終了後、遊技媒体の端数が生じたり、端数が十分に貯まつたとき、ステップ(1)において、端数貯金カード10を管理装置20の装置本体21のカード挿入口24に挿入する。挿入するとそのときまでの端数の合計が数値表示部23に表示される。
そこでステップ(2)において端数の追加か景品の交換かが選択され、選択結果はキーボード22から入力され、追加の場合はステップ(3)に進み、キーボード22から追加数が入力される。前後して適宜単位域13aの発色ポイントの色が選定される。この色は時々変えて不正を防止することと、入力の識別をするためのものである。次に入力された端数に応じた数と色の単位域13aを発色すべく位置決め手段25が書込手段26の位置を制御して発色させて書き込み、日付も印刷される。数値表示部23には追加数が表示されてから合計が表示され、ステップ(4)で端数貯金カード10が取り出される。」(5頁14行〜6頁12行)、
(3-c)「本考案に係る遊技媒体の端数管理装置によれば、遊技が終了して景品交換して端数がでた場合でも貯めて景品交換することができるようにした」(7頁7〜9行)。
(4)甲第4号証(特開昭50-152799号公報)
「処理装置5の内部には個人認識票IDを所持するプレーヤ各人の持ち玉数を記録するための個人メモリMと遊技台の各台の玉の増減を記録するための台メモリmとの二つの独立な記憶装置が備えられている。」(2頁左下欄5〜10行)。

5.対比・判断
本件発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「景品交換所」が本件発明の「景品交換を行なうための遊技用設備装置」に対応し、同様に、「遊技者の識別コードをキーワード的に有している登録用媒体(キー)」が「記録媒体同士を識別するための記録媒体識別情報が記録された記録媒体」に、「演算記憶部」が「持点格納手段」に、それぞれ対応し、また、甲第1号証に記載された「その遊戯者が台走査インタフェースを介して同一コンピュータに連なつている他の台・・・キー挿入部に自分のキーを挿入すると、・・・コンピュータ側では・・・既に記憶されている識別コードはそれに荷われた情報の読出しをコンピュータに指令し、演算記憶部6では当該情報中、実数表示をその新台の表示部8になさせると共に、以下前台で為されたと同様の情報処理を行っていく。」(上記(1-d)の記載参照)は、本件発明の「記録媒体の記録媒体識別情報を読取り、前記持点格納手段に既に格納されている持点情報のうち前記読取った記録媒体識別情報に対応する持点情報に対し、当該記録媒体識別情報を記録している記録媒体を使用している遊技者が前記遊技機により遊技を行ない終了した後当該遊技者の所有となった新たな持点情報を加算更新」することを意味しているといえるから、甲第1号証記載の発明が「持点加算更新手段」を有していることは明らかである。
そうすると、本件発明と甲第1号証に記載された発明とは、
遊技場に設置された遊技機により遊技を行なった後遊技者の所有となった持点を使用して景品交換を行なうための遊技用設備装置であって、遊技場で遊技者が使用する記録媒体であって、記録媒体同士を識別するための記録媒体識別情報が記録された記録媒体と、前記記録媒体識別情報毎に対応させて持点を格納している持点格納手段と、前記記録媒体の記録媒体識別情報を読取り、前記持点格納手段に既に格納されている持点情報のうち前記読取った記録媒体識別情報に対応する持点情報に対し、当該記録媒体識別情報を記録している記録媒体を使用している遊技者が前記遊技機により遊技を行ない終了した後当該遊技者の所有となった新たな持点情報を加算更新可能な持点加算更新手段と、前記記録媒体の記録媒体識別情報を読取り、前記持点格納手段に格納されている持点情報のうち前記読取った記録媒体識別情報に対応する持点情報の範囲内で景品交換が可能な景品交換手段とを含み、前記記録媒体には持点情報を記録させないようにした遊技用設備装置である点で一致し、
本件発明では、「前記持点情報は、数日間にわたって景品交換に用いることができる数日間景品交換用持点情報と、遊技者が前記遊技を行ない終了した後当該遊技者の所有となった新たな持点情報であって使用期限が1日限りである1日使用期限持点情報とからなり、
前記持点格納手段は、前記数日間景品交換用持点情報を格納する数日間景品交換用持点情報領域と、前記1日使用期限持点情報を格納する1日使用期限持点情報領域とを有し、遊技者が、前記遊技を行ない終了した後当該遊技者の所有となった新たな1日使用期限持点情報をその日の内に使用することなく前記数日間景品交換用持点情報領域の数日間景品交換用持点情報に加算更新して数日間にわたって累積的に格納する選択を行なうことにより.前記遊技を行ない終了した後当該遊技者の所有となった新たな1日使用期限持点情報が前記数日間景品交換用持点情報領域に既に格納されている数日間景品交換用持点情報に加算更新され、数日間にわたって前記遊技機により遊技を行なった結果、該数日間にわたって前記数日間景品交換用持点情報領域に格納されて累積的に加算更新された数日間景品交換用持点情報による景品交換を可能に」しているのに対し、甲第1号証記載の発明では、前記構成を備えていない点で両者は構成が相違する。
上記相違点について検討するに、甲第2号証には、少量の賞品玉しか獲得することができなかった日には、その賞品玉を景品と交換せず、数日間に獲得した賞品玉を或る期間内でまとめて景品と交換できることが記載されており、また、甲第3号証には、遊技が終了して景品交換して端数がでた場合、その端数を端数貯金カード10に貯めて景品交換できることが記載されているが記載されており、すなわち、甲第2又は3号証には、数日間に獲得した賞品玉を貯め、その貯めた賞品玉で景品と交換することができるようにする技術思想が開示されているといえる。
しかしながら、甲第2ないし4号証には、上記相違点における本件発明の構成、すなわち、持点情報には、数日間にわたって景品交換に用いることができる数日間景品交換用持点情報と、遊技者が遊技を行ない終了した後当該遊技者の所有となった新たな持点情報であって使用期限が1日限りである1日使用期限持点情報とがあり、遊技者が、累積的に格納する選択を行なうことにより、前記遊技を行ない終了した後当該遊技者の所有となった新たな1日使用期限持点情報を、数日間景品交換用持点情報に加算更新し、その累積的に加算更新された数日間景品交換用持点情報による景品交換を可能にすることは、記載されておらず、且つ、示唆されてもいない。
そして、本件発明は、特許明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲第1号証ないし4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-10-25 
出願番号 特願昭63-152711
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 鈴木 寛治
二宮 千久
登録日 1999-12-10 
登録番号 特許第3011272号(P3011272)
権利者 株式会社三共
発明の名称 遊技用設備装置  
代理人 塚本 豊  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  

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