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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  G11B
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  G11B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G11B
管理番号 1081415
異議申立番号 異議2003-70955  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-11-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-15 
確定日 2003-07-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第3333967号「磁気記録媒体」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3333967号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許第3333967号(平4年4月13日出願、平成14年8月2日設定登録)の請求項1〜3に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次の事項により特定されるとおりである。
「【請求項1】 非磁性支持体上に、非磁性粉末を含む非磁性層又は高透磁率材料を含高透磁層及び、平均長軸長0.01〜0.25μm、X線による粒径測定値が100〜200Åである強磁性金属粉末を含み、抗磁力が1700〜2200Oe、飽和磁束密度が3000〜4500ガウスである磁性層をこの順に有し、湿潤状態にある前記非磁性層又は前記高透磁層上に前記磁性層を塗設して形成した磁気記録媒体。
【請求項2】 前記磁性層の表面の表面粗さRZ(10)が5〜20nmである請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】 前記磁性層の膜厚が0.1〜0.8μmである請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。」

2.特許異議申立の理由の概要
特許異議申立人日立マクセル株式会社は、(1)本件特許発明1〜3は、甲第1号証(特開昭63-187418号公報)、甲第2号証(特開昭64-19524号公報)、甲第3号証(特開昭54-30002号公報)、甲第4号証(特開平2-239424号公報)及び甲第5号証(特平4-42428号公報)に記載された発明か、若しくはこれら甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第1項第3号あるいは第29条第2項の規定に違反するので、本件特許は特許法第113条第1項第2号の規定により、また、(2)本件特許明細書は記載不備があり、特許法第36条第4項乃至第6項の規定に違反するので、本件特許は特許法第113条第1項第4号の規定により、特許を取り消されるべきであると主張する。

3.特許異議申立の理由についての判断
(1)特許異議申立の理由(1)について
(a)甲号証の記載の概略
甲第1号証には、「非磁性支持体上に非磁性粉末を結合剤中に分散させてなる下層を少なくとも一層設け、その上に強磁性粉末を結合剤中に分散させてなる磁性層を設けた磁気記録媒体において、強磁性粉末が強磁性合金粉末で、該強磁性粉末の透過型電子顕微鏡による平均長軸長が0.30μm未満(例えば、0.18μm)、X線回折法による結晶サイズが300Å未満(例えば、150Å)であり、磁性層の厚みが2μm以下(例えば、0.5μm)であり、磁性層の抗磁力は好ましくは350〜5000Oe(特に好ましくは600〜2500Oe、特別に好ましくは、800〜200Oe)であり、下層と磁性層がウェット・オン・ウェット方式により設けられている磁気記録媒体。」の発明が記載されている。

甲第2号証には、「非磁性支持体上に強磁性粉末を結合剤中に分散させてなる複数の磁性層を有する磁気記録媒体において、最上層の強磁性粉末が強磁性合金粉末であって、最上層の強磁性合金粉末の透過型電子顕微鏡による平均長軸長が0.25μm未満(例えば、0.18μm)、X線回折法による結晶子サイズが200Å未満(例えば150Å)であり、最上層以外の磁性層の強磁性粉末の透過型電子顕微鏡による平均長軸長が0.25μm以上、X線回折法による結晶子サイズが250Å以上であり、最上層の厚さが2μm以下(例えば、0.5μm)であり、最上層の抗磁力は好ましくは600エルステッドから5000エルステッドであり、最上層及び下層がウェット・オン・ウェット塗布方式によって設けられている磁気記録媒体。」の発明が記載されている。

甲第3号証には、「(i)非磁性支持体上に強磁性金属粉末およびバインダーを主成分とする磁性層を塗布して設けた磁気記録媒体において、(1)前記強磁性金属粉末が低真空蒸発法により製造された平均粒径が約200〜300Åの金属分が85wt%以上の強磁性金属粉末であり、前記金属分が実質的に鉄とコバルトから成り、Fe/Coが約90/10〜30/70の重量比であり、且つ、前記強磁性金属粉末が100emu/g以上の飽和磁化(σs)、1400Oe以上の抗磁力(Hc)および0.35以上の角型比(Br/Bm)の特性を有し;・・・(v)前記磁気記録媒体が3000Gauss以上(例えば)の最大磁束密度(Bm)、2000Gauss以上(例えば、3200Gauss、3500Gauss)の残留磁束密度(Br)および1800Oe以上(例えば、1830Oe、1920Oe)の抗磁力(Hc)を有する磁場転写方式に使用されるマスターテープに好適な強磁性金属粉末を用いた磁気記録媒体。」の発明が記載され、さらに「スレーブテープ用のマスターテープとしてはスレーブテープの少なくとも2倍以上の抗磁力が要求され、より高い抗磁力を有することが必要である。更にスレーブテープの抗磁力の増加と共により高いBmを有することが要求されるようになってきた。」(第1頁右下欄第18行〜第2頁左上欄第4行)、「本発明の目的は第1に高Hc、高σsを有する強磁性金属粉末を用いたマスターテープ用磁気記録媒体を提供することである。第2に抗磁力が600Oe以上を有するスレーブテープに適したマスターテープ用磁気記録媒体を提供することである。」(第3頁右上欄第14〜19行)と記載されている。

甲第4号証には、「非磁性支持体の少なくとも一方の面に磁性層が形成されてなり、前記磁性層が平均長軸長0.35μm以下(例えば、0.28〜0.35μm)、針状比6〜9である金属磁性粉末を含有する磁気記録媒体。」の発明が記載され、さらに金属磁性粉末の平均長軸長が小さくなる程7MHzにおける相対出力が大きくなることが示されている(第2図)。

甲第5号証には、「強磁性粉を含有する磁性層を支持体上に積層してなる磁気記録媒体において、下記定義される磁性層のR10Zが30nm以下(好ましくは、5〜20nm)である磁気記録媒体。」の発明が記載されている。

(b)対比・判断
本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載の発明を対比すると、甲第1号証に記載の発明には、本件請求項1に係る発明の技術事項である、非磁性層上に設けられる磁性層が「抗磁力1700〜200Oe、飽和磁束密度が3000〜4500ガウスである磁性層」という、抗磁力及び飽和磁束密度の範囲を同時に満足する磁性層の規定がない点で相違し他に格別差異はない。
そこで、この相違点について検討する。
甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証には、非磁性層上に磁性層を設けた磁気記録媒体の記載はないし、磁性層の飽和磁束密度についての記載もない。
甲第3号証には、最大磁束密度が3000ガウス以上(例えば、3500ガウス)、抗磁力が1800Oe以上(例えば、1830Oe、1920Oe)である磁性層についての記載はあるが、非磁性層上に磁性層を設けた磁気記録媒体の記載はないし、磁性層の抗磁力及び最大磁束密度の範囲を上記のように設定するのも、スレーブテープの抗磁力の増加と共に高い最大磁束密度がマスターテープ用磁気記録媒体には要求されるからであって、短波長域、長波長域の全帯域での大きなRF出力を得るために設定する記載や示唆はない。
そして、本件請求項1に係る発明は、上記非磁性層上に設けられる磁性層が「抗磁力1700〜200Oe、飽和磁束密度が3000〜4500ガウスである磁性層」であるという、甲第1号証〜甲第5号証に記載や示唆のない特有の技術事項を有することで、他の技術事項と相俟って、短波長域において高出力を発揮する電磁変換特性、デジタル記録性、重ね書き特性に良好な磁気記録媒体が得られると云う特有の効果を奏している。
してみると、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明であるか、これら甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

本件請求項2に係る発明及び本件請求項3に係る発明は、本件請求項1に係る発明の技術事項を全て備えた発明であるから、上述と同様に甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明であるか、これら甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(2)特許異議申立の理由(2)について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、特許請求の範囲で規定されている各技術事項の数値範囲が好ましいこと、特に、磁性層の抗磁力及び飽和磁束密度の範囲について、未満であったり超えた場合には不都合が生じ、両者とも範囲を外れた場合には本件特許発明の効果が発揮されないことが記載され、更に各数値範囲を満足する実施例1〜6が記載されていることからすれば、当業者が容易に発明を実施し得る程度に技術開示がなされていないとすることはできない。特許異議申立人は、意見書及び審判請求書中の実験データをもって特許を受けることができるとすべきではない旨主張しているが、これらの実験データは明細書に既に記載された技術事項の妥当性を単に釈明するものに過ぎず、該データがあって初めて当業者が発明を容易に実施し得るとなるものではないから、該主張は採用できない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1〜3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-06-27 
出願番号 特願平4-92949
審決分類 P 1 651・ 534- Y (G11B)
P 1 651・ 531- Y (G11B)
P 1 651・ 121- Y (G11B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩崎 伸二  
特許庁審判長 麻野 耕一
特許庁審判官 相馬 多美子
川上 美秀
登録日 2002-08-02 
登録番号 特許第3333967号(P3333967)
権利者 コニカ株式会社
発明の名称 磁気記録媒体  
代理人 折寄 武士  

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