• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1082283
審判番号 不服2002-12614  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-12-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-08 
確定日 2003-08-18 
事件の表示 平成11年特許願第146178号「遊技機」拒絶査定に対する審判事件[平成11年12月21日出願公開、特開平11-347187]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成2年8月22日に特許出願された特願平2-221491号の出願の一部を分割して新たな特許出願とした特願平10-82559号を、その一部を分割して新たな特許出願とした特願平11-117498号を、その出願の一部を分割して新たな特許出願とした特願平11-146178号の特許出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年3月11日付け手続補正書によって全文補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「遊技球を機内で循環させて遊技を行わせる機内循環経路と、遊技球を遊技機設置島内で循環させて遊技を行わせる島循環経路とのいずれにも対応可能であって前記機内循環経路と島循環経路を切り替える切替手段を有し、遊技場の遊技客数が少ない状態で機内循環経路を使用し、遊技客数が多い状態で島循環経路を使用するようにした遊技機」にあるものと認められる。

2.拒絶査定の概要
平成13年12月17日付け拒絶理由の概要は「この出願は、明細書及び図面の記載が、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない。」というものであって、平成14年6月5日付け拒絶査定には、請求項1に係る発明について、(1)「「遊技客数が少ない状態」及び「遊技客数が多い状態」との記載は、比較の基準が不明であるので不明瞭である。」また、(2)「「使用するようにした」と記載されているが、使用するための技術的事項(何が使用状態に切り替えるのか)を特定することができないので、不明瞭である。」と記載されている。

3.当審の判断
(イ)拒絶査定の概要の前記(1)について
明細書の【0004】第5-6行には「遊技場の遊技客数が少ない状態で機内循環経路を使用し、遊技客数が多い状態で島循環経路を使用する」と、【0005】第1-2行には「客数が少ない状態では機内循環経路を使用し、客数が多い状態で島循環経路に切り替えて」と、【0033】第4-5行には「客数の少ない時間帯には機内循環経路を使って運転経費の節減を図り、客数の多い時間帯は島循環経路を使って」と、【0034】第3-4行には「客数が少ない状態では機内循環経路を使って経済的に運転し、客数が多い状態では島循環経路に切り替えて」と記載されていて、具体的にどのような状態が「少ない状態」あるいは「多い状態」であるのか記載されていない。
「少ない状態」あるいは「多い状態」とは、所定の基準と比較して理解し得る事項に基づいた表現であるから、具体的な基準が規定されていない段階で「少ない状態」あるいは「多い状態」と決定することはできないものであり、「遊技客数が少ない状態」及び「遊技客数が多い状態」との記載は、どのような状態を示しているのかが不明瞭である。
請求人は、審判請求書において、「本願発明の多い、少ないは相対的な概念であって、ある客数に対してそれより増えれば多いと捉えればよく、それによって機内循環経路から島循環経路に切り替えるものである。」、「もちろんどの程度の客数を少ないと考えるかは任意であり、多い、少ないの分岐点をどのレベルに設定するかも個々の事情に任せるべき問題である。」と主張するが、「ある客数」、「どの程度の客数」と記載された客数は、主観的で変動する数値であり、そのような数値に基づいた「少ない状態」あるいは「多い状態」は主観的で変動するものとなり、その結果どのような状態を「少ない状態」あるいは「多い状態」とするのか特定できないから、請求人の主張は採用できない。

(ロ)拒絶査定の概要の前記(2)について
明細書の【0004】第5-6行には「遊技場の遊技客数が少ない状態で機内循環経路を使用し、遊技客数が多い状態で島循環経路を使用するようにした」と記載されていて、具体的にどのように「使用するようにした」のか記載されていない。
少ない「状態」あるいは多い「状態」から「循環経路を使用するようにした」までの具体的な構成及び関連が記載されていない、即ち少ない「状態」あるいは多い「状態」をどのように判断し、把握するのか、そしてどのような仕組みで「状態」と「循環経路の使用」とを関連付けて切替手段を制御するのか記載されていないから、「循環経路を使用するようにした」との記載は、不明瞭である。

(ハ)特許法第36条第3項違反について
平成13年12月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由2において、請求項1の「遊技客の数の要素を加味して前記切替手段を切替制御するようにした」という記載に対応する構成が発明の詳細な説明に記載されていないとの旨の通知をしたところ、平成14年3月11日付け手続補正書において、上記請求項1に記載されたとおりの、
「遊技場の遊技客数が少ない状態で機内循環経路を使用し、遊技客数が多い状態で島循環経路を使用するようにした」と補正され、また、同日付けの意見書において「ここに記載された実施例は、遊技客数の多い少ないを時間で判断して両循環経路を切り替えるというものであり、この記載に基づけば通常の知識を有する当業者が周知のタイマーを使って容易に実施可能である。」と主張された。
しかしながら、遊技客数と時間帯との間に、経験的に認め得る相関関係が、ある社会的条件を特定すれば存在するかも知れないものの、密接な関連があるとは認められず、どのような時間帯に遊技客数が少ないあるいは多いのか具体的な記載がなされていない明細書の記載から、時間帯のみによって客数の少ない状態あるいは多い状態を把握できるとは認められない。また、装置の構成として、「遊技客数が少ない状態で」あるいは「遊技客数が多い状態で」という技術事項を、タイマーを用いた、時間に基づいた動作の限定を意味するものと解釈することはできないから、上記の主張は採用できない。
したがって、請求項1に記載された「遊技場の遊技客数が少ない状態で機内循環経路を使用し、遊技客数が多い状態で島循環経路を使用するようにした」ことに対応した構成が、当業者が容易に実施できる程度に発明の詳細な説明に記載されていないから、特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていない。

(ニ)まとめ
以上のように、本願の特許請求の範囲に記載された、遊技客数に応じて循環経路を切り替える切替手段については、特許を受けようとする発明に対応した構成が、当業者が容易に実施できる程度に発明の詳細な説明に記載されていないから、特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていない。
また、前記切替手段を切り替える基準、及び切替制御する制御手段が特定されていないことから循環経路を切り替えて使用することができないために、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではないから、特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしていない。

4.むすび
したがって、本願は特許法第36条第3項及び第4項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2003-05-29 
結審通知日 2003-05-30 
審決日 2003-06-12 
出願番号 特願平11-146178
審決分類 P 1 8・ 531- Z (A63F)
P 1 8・ 534- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 英司  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 川島 陵司
塩崎 進
発明の名称 遊技機  
代理人 武蔵 武  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ