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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
管理番号 1083162
異議申立番号 異議2003-70782  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-07-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-24 
確定日 2003-08-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第3327822号「液体クロマトグラフのデータ処理方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3327822号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3327822号の請求項1ないし4に係る発明の出願は、平成9年10月30日(優先権主張、平成8年10月31日)に出願され、その請求項1ないし4に係る発明について平成14年7月12日に特許権の設定登録がなさ、その後申立人大原一より特許異議の申立てがあったものである。

2.本件発明
特許第3327822号の請求項1ないし4に係る発明は、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
カラムと、該カラムに注入されたそれぞれの試料を溶離してその中の成分を分離するように前記カラムに溶離液を流す装置と、前記分離された成分を検出し、デ-タ処理して前記それぞれの試料のクロマトグラムと定量計算結果からなる分析結果を得るデ-タ処理装置と、前記分析結果を表示する表示装置とを備えた液体クロマトグラフにおいて、
前記それぞれの試料の分析結果を対応する前記それぞれの試料と関連付けて前記データ処理装置内の記憶装置に格納し、
前記注入されたそれぞれの試料に関する注入データを示す試料情報テーブルを前記表示装置に表示し、
上記試料情報テーブル内の特定の試料を指定すると、その指定された試料の分析結果を前記記憶装置から読み出し、
読み出された分析結果を印刷プレビュー用として前記表示装置に表示することを特徴とする液体クロマトグラフのデータ処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液体クロマトグラフのデータ処理方法において、
前記試料テ-ブルと前記指定された試料の分析結果とを同一画面に表示することを特徴とする液体クロマトグラフのデータ処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の液体クロマトグラフのデータ処理方法において、
上記印刷プレビュー中の分析結果が不適切と判断された場合には、上記検出された成分のデータ処理を再度行って上記分析結果を生成することを特徴とする液体クロマトグラフのデータ処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の液体クロマトグラフのデータ処理方法において、
上記再度行うデータ処理は、標準試料中の特異データを除外した基準データを生成することを特徴とする液体クロマトグラフのデータ処理方法。 」

3.特許異議申立人の理由の概要
申立人大原一は、以下の甲号証刊行物を提出して、請求項1ないし4に係る発明は、刊行物1〜刊行物4に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、上記各発明に係る特許は同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものであると主張している。
<引用刊行物>
刊行物1 特開平7-319815号公報(甲第1号証)
刊行物2 特開平5-88953号公報(甲第2号証)
刊行物3 特開平6-110630号公報(甲第3号証)
刊行物4 特開平8-184588号公報(甲第4号証)

4.引用刊行物の記載事項
(1)刊行物1(甲第1号証)
刊行物1には、下記の事項が記載されている。
(1a)分析装置のソフトウェアについて、【0002】に
「【従来の技術】分析装置では、分析条件を設定する機能や測定データを解析する機能等の種々の機能がソフトウェアを用いて実現されており、このソフトウェアは分析装置に標準的に添付されている(以下、このソフトウェアを「標準ソフトウェア」という)。また、分析装置では、通常、どのオペレータも全機能を利用することができるようになっており、装置内に保持された分析条件や分析結果等のデータへのアクセスを管理する機構は設けられていない。したがって、どのオペレータも、標準ソフトウェアを介して分析条件を容易に変更することができ、また、測定データを再解析して得られたデータを上書きすることもできる。」と記載され、
(1b)実施例として液体クロマトグラフィによる分析装置について、【0009】に【図2】を用いて次のような説明がなされているとともに、
「【実施例】以下、本発明の一実施例である液体クロマトグラフィによる分析装置(以下「LCシステム」という)について説明する。
図2は、本実施例のLCシステムの全体構成を示すブロック図である。このLCシステムは、データ処理部34にキー操作やメニュー操作等によって入力されるコマンドに基づき、コントローラ32による制御の下、以下のように動作する。まず、ポンプ22によって移動相としての液体がインジェクタ24を経てカラム26に供給される。この液体は、カラム26を通過した後、検出器28を経て排出される。試料はインジェクタ24から瞬間的に注入され、その各成分はカラム26を通過するうちに分離されて検出器28に送られる。検出器28は、カラム26から出てくる各種成分の濃度を検出し、検出信号Sdを生成する。データ処理部34は、この検出信号Sdに基づき試料の定性及び定量等を行なう。」
(1c)さらに、データ処理について、【0010】に、次のように【図1】と【図3】を使って説明されている。
「図1は、データ処理部34の要部の構成を示すブロック図である。データ処理部34は、コントローラ32とともに、パーソナルコンピュータ(以下「LCワークステーション」という)によって実現されており、LCワークステーションは、CPU、RAM、キーボード、ディスプレイ装置、外部記憶装置、及びプリンタ等から構成される。このLCワークステーションには、データ処理部34としての機能を実現するためのソフトウェアが標準的に添付されており、この標準ソフトウェアは、オペレーティングシステムであるMS-Windows(商標名)の下で動作する。また、この標準ソフトウェアは、データ処理部34としての各機能を実現するための複数のプログラムA、B、…から構成されており、各プログラムにはそれぞれ所定の画面が対応している。そして、各画面からのメニュー操作によりその画面に対応するプログラムにコマンドが発行され、これにより、データ処理部34としての種々の機能が実現される。いま、クロマトグラフ分析の際に必要となるデータ処理を行なう機能がプログラムAによって実現されているとすると、このプログラムAには、例えば図3に示すような「分析」の画面が対応する。この画面に表示されている「メソッドファイル」とはクロマトグラフ分析の条件が格納されるファイルをいい、この画面は、メソッドファイルについて、「新規作成」、「読込」、「保管」、「新規保管」、及び「印刷」という各コマンドが実行できることを示している。」

(2)刊行物2(甲第2号証)
「情報処理装置」の発明についての刊行物2には、
(2a)【0001】に、「【産業上の利用分野】本発明は情報処理装置に関する。更に詳しくは、複数のアプリケーションを有し、例えば外部の磁気記憶媒体等の、データファイルを記憶している記憶媒体を用いて各種アプリケーションの処理を行う情報処理装置に関する。」と記載され、
(2b)従来技術として、【0002】に、「【従来の技術】従来、情報処理装置においては、各種アプリケーションにて作成されたデータファイルを読み出す際には下記の手順にて操作しなければならなかった。まず読み出すデータファイルを扱うアプリケーションを起動する。次に、データファイルに対応するファイル名等のファイル情報の一覧を、液晶叉は陰極管等のディスプレイ画面上に表示する。ここで表示されるファイル情報は、起動されたアプリケーションが扱えるデータファイルに対応したもののみである。そして、前記ディスプレイ上にて、読み出すべきデータファイルのファイル名をカーソル等にて指定することにより、データファイルの読み出しを実行する。」と、ファイル情報の一覧をディスプレイ画面上に表示することが記載され、
(2c)一覧表示例が【0018】に、「まず、図4において、ステップS1でフロッピーディスクドライブ5にセットされているFD内に格納されているデータファイルの検索を行う。ここで、FD内に記憶されている全てのデータファイルが検索される。次に、ステップS2に進み、ステップS1で検索されたデータファイルのファイル情報がディスプレイ3上に一覧表示される。ファイル情報とは例えば文書名、日付、文書形式、ファイルサイズ等であり、この一覧表示例が図6に示されている。この一覧表示によると、文書形式のデータファイル、イラスト形式のデータファイル、表計算形式のデータファイル、外字形式のデータファイルがFD内に格納されていることがわかる。」と記載されている。

(3)刊行物3(甲第3号証)
「データ処理装置」の発明についての刊行物3には、
(3a)【0001】に、「【産業上の利用分野】この発明は複数ページからなるデータを処理し、各ページのデータの印刷状態を表示手段に表示する表示機能を有するデータ処理装置に関し、特にデータ全体のページ構成を縮小して上記表示手段に概念的に表示することにより印刷状態を表示するデータのページ指定を容易に行うことができるようにして操作性を改善したデータ処理装置に関する。」と記載され、
(3b)【0002】に、「【従来の技術】一般に、コンピュータ等の複数ページからなるデータを処理するデータ処理装置において、各ページのデータを実際に印刷することなくその印刷状態を表示手段に表示して確認する、いわゆるプレビューと呼ばれる表示機能を有するデータ処理装置が知られている。」と、プレビューについての記載がされた上で、
(3c)【図1】のこの発明のデータ処理装置の一実施例の概略構成についての説明が、【0010】でなされ、
(3d)【図2】のプレビューページ指定画面について【0019】に、「この図2に示すプレビューページ指定画面には、印刷状態を表示すべき複数ページからなるデータ全体が縮小され、その全体のページ構成が概念的に表示されている。すなわち、図2において、領域505がこの印刷状態を表示すべき複数ページからなるデータのページ構成を概念的に表示する部分で、この領域505には印刷状態を表示すべきデータは全体で8ページであることがグラフィックに示されている。」と記載され、
(3f)【0022】に「図4は、このプレビューページ指定画面500により、この8ページのデータの中の第6ページが指定された場合に、次に表示部50に表示される表示画面の一例を示したものである。この図4に示す表示画面には、この第6ページのデータの内容が、実際に印刷される態様で表示される。そこで、オペレータのこの表示画面をみて、このまま印刷に移行するか更に訂正するかの判断を行うことができる。」と、プレビューページ指定画面の利用方法が記載されている。

(4)刊行物4(甲第4号証)
液体クロマトグラフの検量線作成に用いるデータ処理装置に関する刊行物4には、
(4a)【請求項1】に、「検量線を表示する表示手段と、測定対象成分の既知濃度データに基づいて前記検量線を描画する描画手段を有するデータ処理装置において、前記検量線が測定対象成分の複数の測定のデータを加味した状態で描画される場合であって、或る一定の濃度値上に前記測定対象成分の測定毎の検量線の基礎となる形成点を前記表示手段に表示する行程と,前記表示手段上に表示された形成点を任意に選択する行程と,前記選択された形成点を除いて前記検量線を設定する行程を設けたことを特徴とするデータ処理装置。」が記載され、
(4b)【図2】のCPU12を有する実施例について、【0011】〜【0012】に説明され、【0013】〜【0024】に、複数の標準試料を分析して、信頼性の高い検量線が作成できる手順を、【図1】のフローチャート、【図3】〜【図8】を使って説明されている。

5.本件発明と刊行物1記載の発明との対比・検討
(1)対比
請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1の「ポンプ22」、「インジェクタ24」等を有する装置(前記(1b)参照)は、「カラムに注入されたそれぞれの試料を溶離してその中の成分を分離するように前記カラムに溶離液を流す装置」に相当し、刊行物1の「データ処理部34」(前記(1c)参照)は、「前記分離された成分を検出し、デ-タ処理して前記それぞれの試料のクロマトグラムと定量計算結果からなる分析結果を得るデ-タ処理装置」に相当する。
また、刊行物1の「LCワークステーション」の「ディスプレイ装置」(前記(1c)参照)は、「前記分析結果を表示する表示装置」に相当し、刊行物1の「分析装置」では、「測定データを再解析して得られたデータを上書きすることもできる」ものなので(前記(1a)参照)、「それぞれの試料の分析結果を対応する前記それぞれの試料と関連付けて前記データ処理装置内の記憶装置に格納」され、「特定の試料を指定すると、その指定された試料の分析結果を前記記憶装置から読み出」すことができ、「読み出された分析結果」を「前記表示装置に表示する」ことができるものということができる。
そうすると、刊行物1には、請求項1に係る発明と共通する、
「カラムと、該カラムに注入されたそれぞれの試料を溶離してその中の成分を分離するように前記カラムに溶離液を流す装置と、前記分離された成分を検出し、デ-タ処理して前記それぞれの試料のクロマトグラムと定量計算結果からなる分析結果を得るデ-タ処理装置と、前記分析結果を表示する表示装置とを備えた液体クロマトグラフにおいて、
前記それぞれの試料の分析結果を対応する前記それぞれの試料と関連付けて前記データ処理装置内の記憶装置に格納し、
特定の試料を指定すると、その指定された試料の分析結果を前記記憶装置から読み出し、読み出された分析結果を前記表示装置に表示することからなる液体クロマトグラフのデータ処理方法」
は記載されているものの、請求項1に係る発明を特定する次の事項が記載されていない点で相違する。
(相違点1)
前記注入されたそれぞれの試料に関する注入データを示す試料情報テーブルを前記表示装置に表示し、表示された上記試料情報テーブル内の試料を指定により、試料の分析結果を前記記憶装置から読み出しする点。
(相違点2)
読み出された分析結果を印刷プレビュー用として前記表示装置に表示する点。

(4)検討
そこで、これらの相違点について検討する。
これらの相違点の構成を採ることにより、本件発明は、「印刷プレビューにおける分析結果のページと、試料注入量、試料名称やバイアルNo.を試料注入毎に並べた試料情報テーブルとを対応させることによって、分析者が所望する未知試料に対応した分析結果を直接、かつ、迅速に見ることができる。すなわち、分析結果の印刷プレビュ-を直接かつ迅速に行い得る。」という効果を奏するものと認められる(本件明細書段落【0038】参照)。
そして、一般的なデータ処理に関する刊行物2〜刊行物3には、各試料の分析結果を対応するそれぞれの試料と関連付けてデータ処理装置内の記憶装置に格納し、注入されたそれぞれの試料に関する注入データを示す試料情報テーブルを表示装置に表示して、特定試料の分析結果を記憶装置から読み出すための特定試料の指定のために、表示された試料情報テーブルを利用することを教示、示唆する記載はないし、液体クロマトグラフの検量線作成のデータ処理方法に関する刊行物4にも、表示装置に表示された注入されたそれぞれの試料に関する注入データを示す試料情報テーブルにより試料を指定して、分析結果を前記記憶装置から読み出し、その読み出された分析結果を印刷プレビュー用として表示することは、記載も示唆もされていない。
そうすると、請求項1に係る発明は、刊行物1〜刊行物4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものということはできない。

7.請求項2ないし4に係る発明についての検討
請求項2ないし4に係る発明は、いずれも請求項1を引用する発明であるから、請求項1に係る発明について前述したのと同様に、刊行物1〜刊行物4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものということはできない。

8.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件の請求項1ないし4に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-08-04 
出願番号 特願平9-298440
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加々美 一恵  
特許庁審判長 後藤 千恵子
特許庁審判官 渡部 利行
水垣 親房
登録日 2002-07-12 
登録番号 特許第3327822号(P3327822)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 液体クロマトグラフのデータ処理方法  

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