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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  A63F
管理番号 1083224
異議申立番号 異議2002-72418  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-01 
確定日 2003-08-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3271586号「遊技機」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3271586号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 一、手続の経緯
本件特許第3271586号の請求項1に係る発明は、平成3年1月10日に特許出願された特願平3-13768号の一部を分割した特願平10-176603号の特許出願に係り、平成14年1月25日にその発明についての特許の設定登録がなされ、その後、請求項1に係る発明の特許に対して、篠原敏明(以下、「申立人1」という。)及び鈴木暁子(以下、「申立人2」という。)より特許異議の申立てがなされ、平成15年3月19日付けで請求項1に係る発明に対する取消理由を通知し、特許権者に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたところ、特許権者から前記取消理由に対する平成15年6月2日付けの特許異議意見書が提出され、これに対する平成15年7月1日付けの上申書が、上記申立人2により提出されたものである。

二、特許異議の申立てについて
1.本件発明
本件特許第3271586号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。
「【請求項1】遊技盤に設けられ且つ特別装置作動領域を含む複数の通過領域が形成された特別入賞装置と、該特別入賞装置に誘導された打球が前記特別装置作動領域を通過したときに作動開始すると共に再度特別装置作動領域を打球が通過したとき又は前記遊技盤に設けられる始動入賞口に所定個数の打球が入賞したときに作動終了する特別装置と、該特別装置の作動中に前記始動入賞口に打球が入賞する毎に所定の態様で開放駆動される変動入賞装置と、を備えた遊技機において、
前記遊技盤には、さらに複数の図柄を変動表示することが可能な図柄表示装置と、打球が通過することによって前記図柄表示装置の変動表示を制御するゲート入賞口と、前記特別入賞装置の上方に設けられ且つ前記図柄表示装置の停止時に表示される図柄が当り図柄であるときに打球を受け入れ易い状態に変化する電動入賞装置と、を備え、
前記図柄表示装置に表示される図柄が当り図柄である確率を前記特別装置の予め定めた所定回数目の作動終了時に低確率から高確率に変更し、変更後の最初の特別装置の作動により高確率から低確率に変更する確率変更手段と、高確率の変動表示であるか低確率の変動表示であるかを前記図柄表示装置の変動表示色によって報知する報知手段と、を設けたことを特徴とする遊技機。」

2.取消理由の概要
当審が通知した取消理由の一つは、申立人2が提示した甲第1号証としての特願平2-229037号(特開平4-108475号公報参照。以下、「引用例1」という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)を引用し、本件発明は、本件特許出願の日前の他の特許出願であって、その特許出願後に出願公開された上記引用例1(特願平2-229037号)の先願明細書に記載された発明と同一であると認められ、しかも、本件発明の発明者が引用例1の先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、本件特許出願の時において、その特許出願人が上記引用例1の特許出願の出願人と同一であるとも認められないので、本件発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当するから、取消されるべきものである、というものである。

3.引用例1に記載の発明
当審が取消理由に引用した引用例1には、弾球遊技機に関し、次の事項が記載されている。
(a)「まず、実施例に係る特別装置30が適用される弾球遊技機の一例としてパチンコ遊技機を例示する。しかして、第1図を参照して、パチンコ遊技機の遊技盤1の構成について説明する。第1図は、遊技盤1の拡大部分正面図である。図において、遊技盤1の表面の誘導レール2に囲まれる遊技領域3のほぼ中央には、本実施例の要部を構成する特別装置30が配置されている。この特別装置30の下方には、権利発生遊技状態となったときで後述する始動通過領域としての始動入賞口11に打玉が入賞したことに基づいて作動される可変入賞球装置4が設けられている。可変入賞球装置4は、前記遊技盤1に取り付けられる取付基板5に設けられており、その取付基板5に開設された長方形状の入賞領域6を開閉する開閉扉7(アタッ力ーと表現する場合もある)によって構成されている。開閉扉7は、遊技盤1の裏面に設けられるアタッカーソレノイド8によって開閉駆動される。具体的には、アタッカーソレノイド8が励磁されたときには、遊技者にとって有利なように開閉扉7が開成して打玉を受け入れ易い第1の状態となり、アタッカーソレノイド8が消磁されたときには、遊技者にとって不利なように開閉扉7が閉成して打玉が入賞しない第2の状能となる。」(3頁左上欄5行〜右上欄8行)
(b)「ところで、上記した特別装置30は、第1図に示すように、前記遊技盤1の表面に取付けられる取付基板31を有し、その取付基板31の上部に入賞球装置32が取付けられている。入賞球装置32は、一対の開閉翼片33a,33bが開閉するもので、いわゆるチューリップ式入賞口とされている。ただし、通常の打玉の入賞によって機械的に開閉駆動されるチューリップ式入賞口と異なり、遊技盤1の裏面に設けられるチューリップソレノイド34によって開閉制御されるものである。具体的には、後述する可変表示器42a,42bの表示結果が予め定めた表示結果と一致したときに、所定時間(後述するように大当りのときには、6秒、中当りのときには、3秒)チューリップソレノイド34を励磁して開閉翼片33a,33bを開成して打玉が入賞し易い状態する。また、チューリップソレノイド34が消磁されたときには、開閉翼片33a,33bが起立して打玉が入賞し難い状能となる。」(5頁右上欄3行〜左下欄1行)
(c)「なお、この種のパチンコ遊技機においては、後述するように、権利発生遊技状態中に特別装置30に受け入れられた打玉が権利発生機能を有する特別通過領域38a〜38cを再度通過したときには、権利発生遊技状態が終了してしまうので、これを防止するために、図示の実施例では、通過□15及び入賞球装置32の左右両側にそれらを囲むように障害釘24を植立し、通過口15と入賞球装置32の間のいずれか一方(図示では左側)に打玉が入球し得る入球口25を形成している。このように形成することにより、権利発生遊技状態となったときに、遊技者は、入球口25が存在しない側、すなわち、図示の実施例では遊技領域3の右側に発射された打球が落下するように弾発力を調整すれば、打玉が特別装置30に受け入れられることがなく、したがって、権利発生遊技状態中における再度の権利発生機能を有する特別通過領域38a〜38cへの入賞に基づく権利発生遊技状態の解消を防止することができる。」(5頁左下欄18行〜右下欄16行)
(d)「また、入賞球装置32に受け入れられた打玉は、その下方に設けられる振分け部材36に導かれる。振分け部材36は、遊技盤1の裏面に配置されるモータ37の回転駆動により、後方部を中心にしてその先端が一定の周期で左右往復動作可能に揺動されるものである。また、振分け部材36は、受け止めた打玉を後方から前方に向って流下させるようになっている。また、振分け部材36の下方には、3つに区画された特別通過領域38a〜38cが形成され、それぞれに特定入賞玉検出器39a〜39cが設けられている。この特別通過領域38a〜38cは、いずれか1つが権利発生機能を有するように順次移動するようになっている。具体的には、本実施例において、権利発生遊技状態が終了する毎に中央の特別通過領域38aから左の特別通過領域38bへ、更に左の特別通過領域38bから右の特別通過領域38cへ、右の特別通過領域38cから再度中央の特別通過領域38aへ権利発生機能が移動するサイクルを繰り返す。そして、この3つの特別通過領域38a〜38cのいずれかに振分け部材36の先端から落下する打玉が振分けられる。つまり、振分け部材36の揺動位置と入賞球装置32によって受け入れられた打玉の振分け部材36の先端から落下するタイミングとによって、どの特別通過領域38a〜38cに導かれるかが決定される。振分け部材36の先端から落下した打玉が権利発生機能を有する特別通過領域38a〜38cに落下して対応する特定入賞玉検出器39a〜39cを作動させると、権利発生遊技状態を発生させる。そして、この権利発生遊技状態中においては、前記したように、始動入賞口11に打玉が入賞する毎に可変入賞球装置4の開閉扉7が一定期間開成されるようになっている。なお、権利発生遊技状態は、権利発生遊技状態中に再度打玉が権利発生機能を有する特別通過領域38a〜38cを通過して対応する特定入賞玉検出器39a〜39cを作動させたこと又は始動入賞口11に所定個数(例えば、16個)の打玉が入賞したことによって消滅するようになっている。」(6頁左上欄5行〜左下欄5行)
(e)「しかして、本実施例においては、上記したように権利発生機能を有している特別通過領域が「中央の特別通過領域38a→左の特別通過領域38b→右の特別通過領域38c→中央の特別通過領域38a→… 」と権利発生遊技状態の終了毎に移動しているので、中央の特別通過領域38aへの入賞に基づく1回目の権利発生状態となった後の左右の特別通過領域38b,38cへの入賞に基づく2回目、3回目の権利発生遊技状態は、1回目よりも発生し易くなっている。なお、本実施例では、3回目まで権利発生遊技状態が発生し易いようにしたが、その回数は、2回目までであってもよいし、4回以上であってもよい。そして、例えば2回目までにする場合には、権利発生機能を有する特別通過領域の移動態様を「38a→38b→38a→38c→38a→…」とすればよい。」(6頁右下欄1行〜17行)
(f)「前記特別通過領域38a〜38cの前面は、装飾板41によって覆われるが、その装飾板41には、可変表示装置としての可変表示器42a,42bが臨ませてある。この可変表示器42a,42bは、7セグメントLEDで構成され、「0」〜「9」の数字を図柄として表示可能となっている。しかして、発射された打玉が前記通過□15を通過して始動通過玉検出器16を作動したとき(始動通過記憶がある場合も含む)には、可変表示器42a,42bが上記数字を遊技者に視認できない速度で可変表示し、一定時間が経過したときにその可変表示が停止される。なお、停止操作ボタンを設けて、一定時間内に停止操作ボタンを操作することにより可変表示を停止させるようにしてもよい。そして、停止時の表示結果が予め定めた表示結果と一致したとき、具体的には、左右の可変表示器42a,42bで表示される数字が共に「7」であるときには、大当りと判断されて前記入賞球装置32を比較的長い時間(例えば、6秒)開成するように制御され、左右の可変表示器42a,42bで表示される数字が共に「7」以外の同じ数字(すなわちゾロ目)であるときには、中当りと判断されて入賞球装置32を比較的短い時間(例えば、3秒)開成するように制御され、左右の可変表示器42a,42bで表示される数字が異なるときには、外れと判断されて入賞球装置32を開成しないように制御される。なお、大当りや中当りの出現する確率は、予め設定されているが、後述するように制御基板ボックス45に設けられる確率設定操作部48の操作により所定段階に分けて調整できるようになっている。」(6頁右下欄18行〜7頁右上欄8行)
(g)「以上、特別装置30を含むパチンコ遊技機について説明してきたが、このパチンコ遊技機は、第2図に示す遊技制御回路によって制御される。第2図は、遊技制御回路をブロック構成で示した回路図である。図において、制御回路は、制御中枢としてのマイク口コンピュータ50を含み、このマイクロコンピュータ50には、制御動作を所定の手順で実行することのできるMPU51と、MPU51の動作プログラムデータを格納するROM52と、必要なデータの書き込み及び読出しができるRAM53とを含んでいる。また、マイクロコンピュータ50には、入出力回路54、サウンドジェネレータ55、パワーオンリセット回路56、クロック発生回路57、パルス分周回路58、及びアドレスデコード回路59を含む。入出力回路54には、検出回路60〜65を介して、モード検出器47、設定操作検出器49、打込玉検出器27、補給玉検出器28、始動入賞玉検出器12、始動通過玉検出器16、特定入賞玉検出器39a〜39c、入賞個数検出器9がそれぞれ接続され、また、ソレノイド駆動回路66を介してアタッカーソレノイド8及びチューリップソレノイド34が接続され、7セグメントLED駆動回路67を介して可変表示器42a,42b、始動入賞個数表示器14、及び入賞個数表示器9aが接続され、LED駆動回路68を介して始動通過記憶表示器35、及び権利入賞口表示器40a〜40cが接続され、ランプ駆動回路69を介して遊技効果ランプ20a、20b等のランプが接続されている。」(9頁左上欄3行〜右上欄12行)
(h)「一方、前記ステップS55で出玉率XがLよりも小さいと判別された場合、すなわち出玉率がMとLとの間にあると判別された場合には、当り外れ決定用力ウンタの値がステップS24で設定された「N1」よりも小さいか否かが判別され(ステップS58)、「N1」よりも小さい場合には始動通過記憶カウンタの値に対応するデータ記憶エリアに大当りデータを記憶して(ステップS59)、始動通過SWチェックサブルーチンを終了する。また、ステップS58で当り外れ決定用カウンタの値が「N1」より大きいと判別された場合には、当り外れ決定用力ウンタの値がステップS24で設定された「N2」よりも小さいか否かが判別され(ステップS60)、「N2」以下であると判別されたときには、始動通過記憶力ウンタの値に対応するデータ記憶エリアに中当りデータを記憶し(ステップS61)、「N2」より大きいと判別されたときには、始動通過記憶カウンタの値に対応するデータ記憶エリアに外れデータを記憶して(ステップS62)、始動通過SWチェックサブルーチンを終了する。上記したステップS45〜ステップS62の処理は、打玉が始動通過玉検出器16を作動させた際に、当り外れ決定用カウンタの値によって大当りか、中当りか、外れかを判定するものであり、本実施例の場合には、表示確率設定手段によって設定された確率や遊技中の出玉率によって大当りの確率、及び中当りの確率がいろいろな値を取るようになっている。」(12頁右下欄18行〜13頁右上欄6行)
(i)「また、権利発生遊技中のときには、大当り、中当りの表示回数N1、N2の値が設定値よりも小さくなるように制御して権利発生遊技状態が消滅しずらくしても良い。逆に権利発生機能を有する特別通過領域が左右の特別通過領域38b,38cとなったときには、表示回数N1、N2の値を設定値よりも大きくしてより権利発生遊技状態となる可能性を向上させてもよい。また、表示確率の変更は、遊技場に設けられる管理コンピュータからの指令に基づいて変更できるようにしてもよい。」(14頁右上欄8行〜18行)
上記引用例1の摘記事項及び添付の図面の記載からみて、引用例1には、「遊技盤1の遊技領域3に設けられる、いずれか1つが権利発生機能を有し、該権利発生機能が順次移動する複数の特別通過領域38a,38b,38cが形成された特別装置30と、該特別装置30に誘導された打球が権利発生機能を有する前記特別通過領域38a,38b,38cのいずれかを通過したときに発生すると共に再度権利発生機能を有する特別通過領域38a,38b,38cのいずれかを打球が通過したとき又は前記遊技盤1に設けられる始動入賞口11に所定個数の打球が入賞したときに終了するように権利発生状態の作動を制御する遊技制御回路と、該遊技制御回路による権利発生状態の作動中に前記始動入賞口11に打球が入賞する毎に打球を受け入れ易いように開閉扉7が開成状態に変化する可変入賞球装置4と、を備えた遊技機において、前記遊技盤1の遊技領域3には、さらに複数の図柄を可変表示することが可能な可変表示装置としての可変表示器42a,42bと、打球が通過することによって前記可変表示装置としての可変表示器42a,42bの可変表示を制御する通過領域としての通過口15と、前記特別装置30の上方に設けられ且つ前記可変表示装置としての可変表示器42a,42bの停止時に表示される図柄が当り図柄であるときに打球を受け入れ易いように一対の開閉翼片33a,33bが開放状態に可変する入賞球装置32と、を備え、出玉率XがMとLとの間の範囲にある場合に、前記可変表示装置としての可変表示器42a,42bに表示される図柄の大当り及び中当りを決定する当り外れ決定用力ウンタの値の範囲N1,N2の設定値を変更できる表示確率設定手段と、を設けた遊技機」の発明の記載が認められる。

4.当審の判断
a.一致点・相違点
本件発明と引用例1に記載の発明(以下、「引用発明」という。)とを比較すると、引用発明の「遊技盤1」「いずれか1つが権利発生機能を有し、該権利発生機能が順次移動する複数の特別通過領域38a,38b,38c」「特別装置30」「始動入賞口11」「権利発生状態の作動を制御する遊技制御回路」「可変入賞球装置4」「複数の図柄を可変表示することが可能な可変表示装置としての可変表示器42a,42b」「通過口15」「入賞球装置32」「表示確率設定手段」が、それぞれ本件発明の「遊技盤」「特別装置作動領域を含む複数の通過領域」「特別入賞装置」「始動入賞口」「特別装置」「変動入賞装置」「複数の図柄を変動表示することが可能な図柄表示装置」「ゲート入賞口」「電動入賞装置」「確率変更手段」に相当する。
そして、前記引用発明の「可変表示装置としての可変表示器42a,42bに表示される図柄の大当り及び中当りを決定する当り外れ決定用力ウンタの値の範囲N1,N2の設定値」が、本件発明の「図柄表示装置に表示される図柄が当り図柄である確率」に対応する。
そうしてみると、本件発明と引用発明の両者は「遊技盤に設けられ且つ特別装置作動領域を含む複数の通過領域が形成された特別入賞装置と、該特別入賞装置に誘導された打球が前記特別装置作動領域を通過したときに作動開始すると共に再度特別装置作動領域を打球が通過したとき又は前記遊技盤に設けられる始動入賞口に所定個数の打球が入賞したときに作動終了する特別装置と、該特別装置の作動中に前記始動入賞口に打球が入賞する毎に所定の態様で開放駆動される変動入賞装置と、を備えた遊技機において、前記遊技盤には、さらに複数の図柄を変動表示することが可能な図柄表示装置と、打球が通過することによって前記図柄表示装置の変動表示を制御するゲート入賞口と、前記特別入賞装置の上方に設けられ且つ前記図柄表示装置の停止時に表示される図柄が当り図柄であるときに打球を受け入れ易い状態に変化する電動入賞装置と、を備え、前記図柄表示装置に表示される図柄が当り図柄である確率を変更する確率変更手段、を設けた遊技機」である点で一致し、次の点で両者の構成が一応相違する。
相違点1:本件発明の確率変更手段が「図柄表示装置に表示される図柄が当り図柄である確率を特別装置の予め定めた所定回数目の作動終了時に低確率から高確率に変更し、変更後の最初の特別装置の作動により高確率から低確率に変更する」のに対し、引用発明の確率変更手段による確率変更の時期についての記載が明確でない点。
相違点2:本件発明が「高確率の変動表示であるか低確率の変動表示であるかを図柄表示装置の変動表示色によって報知する報知手段」が設けられているのに対し、引用発明では、前記報知手段についての記載がない点。

b.相違点についての判断
(1)相違点1について
引用例1には、さらに実施例の変更例についての次の記載が認められる。
イ.「本実施例では、3回目まで権利発生遊技状態が発生し易いようにしたが、その回数は、2回目までであってもよいし、4回以上であってもよい。そして、例えば2回目までにする場合には、権利発生機能を有する特別通過領域の移動態様を「38a→38b→38a→38c→38a→…」とすればよい。」(6頁右下欄11行〜17行)、
ロ.「権利発生機能を有する特別通過領域が左右の特別通過領域38b,38cとなったときには、表示回数N1、N2の値を設定値よりも大きくしてより権利発生遊技状態となる可能性を向上させてもよい。」(14頁右上欄12行〜16行)
引用例1における変更例についての上記摘記事項を斟酌すると、引用例1には、「打玉が権利発生機能を有する特別通過領域38a〜38cのいずれかに落下して対応する特定入賞玉検出器39a〜39cを作動させると、権利発生状態の作動を制御する遊技制御回路の制御により権利発生状態が発生するパチンコ遊技機において、権利発生機能は、権利発生状態が終了する毎に前記特別通過領域38a〜38cを順次移動するサイクルを繰り返えすようになっていて、その移動態様を「38a→38b→38a→38c→38a→…」と設定した場合において、表示確率を変更させるために、大当り及び中当りを決定する当り外れ決定用力ウンタの値の範囲N1,N2の値を設定値よりも大きく設定すると、権利発生機能を有する特別通過領域が左右の特別通過領域38b,38cのいずれかとなったときに、権利発生状態となる可能性が、「38a→38b」又は「38a→38c」の場合には低確率から高確率へ変更され、また、「38b→38a」又は「38c→38a」の場合には高確率から低確率へ変更されて、大当り及び中当りを決定する当り外れ決定用力ウンタの値の範囲N1、N2の値の設定値によって大当り及び中当りの表示確率を変更制御できる表示確率設定手段を有するパチンコ遊技機」の変更例が記載されているといえる。
しかして、上記変更例によれば、権利発生機能の移動態様を「38a→38b→38a→38c→38a→…」と設定した場合において、表示確率設定手段による変更制御により、大当り及び中当りを決定する当り外れ決定用力ウンタの値の範囲N1、N2の値を設定値よりも大きく設定変更すると、打玉が、先ず最初に一回目の権利発生状態を発生させる権利発生機能を有する特別通過領域38aに落下して一回目の権利発生状態が発生して終了し、その次に二回目の権利発生状態を発生させる権利発生機能を有する特別通過領域38bに落下した場合には、大当り及び中当りの表示確率が低確率から高確率へ変更されることになり、そして引き続き、その変更後に最初の権利発生状態を発生させる権利発生機能を有する特別通過領域38aに落下した場合には、再度最初の権利発生状態が発生して、大当り及び中当りの表示確率が高確率から低確率へ変更されることになる。
そうしてみると、引用例1に記載されている上記変更例においても、図柄表示装置に表示される図柄が当り図柄である確率を、権利発生状態の作動を制御する遊技制御回路の予め定めた1回目の作動終了時に低確率から高確率に変更し、変更後の最初の権利発生状態の作動を制御する遊技制御回路の作動により高確率から低確率に変更させることが、実質的に引用例1に記載されているということができるから、本件発明の相違点1に係る前記「図柄表示装置に表示される図柄が当り図柄である確率を前記特別装置の予め定めた所定回数目の作動終了時に低確率から高確率に変更し、変更後の最初の特別装置の作動により高確率から低確率に変更する確率変更手段」の構成は、引用例1に実質的に記載されているということができる。

(2)相違点2について
遊技機に、高確率の変動表示であるか低確率の変動表示であるかを図柄表示装置の変動表示色によって報知する報知手段を設けることは、本件特許出願時に普通に慣用されていた周知技術〔その例として、特開平1-244775号公報(申立人2提出の甲第5号証)、特開昭63-11185号公報(申立人2提出の甲第7号証)を参照。〕である。
そうしてみると、本件発明の相違点2に係る前記「高確率の変動表示であるか低確率の変動表示であるかを前記図柄表示装置の変動表示色によって報知する報知手段を設けること」については、引用例1に明示の記載はないが、前記相違点2に係る構成は、当業者が必要に応じて適宜採用できることにすぎないことである。そして、前記報知手段を設けたことによる本件発明の効果も、前記周知技術の奏する作用効果の範囲にとどまり、格別のものとはいえない。

c.まとめ
そうしてみると、本件発明と引用発明との間には実質上の構成の差異を認めることができず、また、本件発明の奏する作用効果に引用発明との格別顕著な差異を認めることができないので、本件発明と引用発明とは同一である。
したがって、本件発明は、当該特許出願の日前の特許出願であって、当該特許出願後に出願公開がされた上記特願平2-229037号(特開平4-108475号公報参照)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であると認められ、しかも、その発明をした者が本件発明の発明者と同一の者であるとも、本件特許出願の時において、その特許出願人が上記他の特許出願の出願人と同一の者であるとも認められないから、本件発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。

三、むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-07-03 
出願番号 特願平10-176603
審決分類 P 1 651・ 161- Z (A63F)
最終処分 取消  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 瀬津 太朗
佐藤 昭喜
登録日 2002-01-25 
登録番号 特許第3271586号(P3271586)
権利者 株式会社三洋物産
発明の名称 遊技機  
代理人 山田 強  

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