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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1084299
審判番号 不服2001-2063  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-02-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-15 
確定日 2003-09-26 
事件の表示 平成 6年特許願第193683号「吊下片を有する紙製容器」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 2月13日出願公開、特開平 8- 40440]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年7月26日の出願であって、平成12年12月28日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年2月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成13年3月14日付で手続補正がなされたものである。

2.平成13年3月14日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年3月14日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により特許請求の範囲は、
「【請求項1】前面板(7)、底面板(9)、後面板(8)を有し、前面板(7)に連続する上面板(10)と後面板(8)に連続する接合板(11)とを接合して、少なくとも一側面が開放した方形筒状の容器本体を形成し、前面板(7)又は後面板(8)の少なくとも一側に連続する側面板(12)と差込片(13)とからなるフラップ(4)により容器本体の前記開放された側面を開閉自在にすると共に、前面板(7)の上端に連続し、且中央に陳列バー(6)を挿通自在な孔(5)を有する吊下片(3)を上面板(10)の中央にミシン目(15)により切り離して起立自在に形成し、前面板(7)に窓孔(2)を形成し、該窓孔(2)を透明なフィルム、セロファン等で閉塞して、収納物を外部から視認可能とした吊下片を有する紙製容器において、上面板(10)と接合片(11)とを吊下片(3)を除いて接着し、吊下片(3)は接合板(11)に対して非接着状態に形成して、吊下片(3)のミシン目に沿った切り離しを容易に行い得るようにすると共に、上面板(10)の幅を容器(1)の幅より若干狭く形成し、吊下片(3)の長さを容器(1)の幅と同一に形成して、吊下片(3)の切り起こしを容易に行い得るようにし、更に吊下片(3)と上面板(10)との先端連結部に三角形のカット(19)を施し、吊下片(3)の切り離しを容易としたことを特徴とする吊下片を有する紙製容器。」
と補正された。
上記の補正において、請求項1の記載における補正は、請求項1に係る発明を特定するために、補正前の(平成12年12月8日付手続補正書で補正された)特許請求の範囲の請求項1に記載された事項にさらに「上面板(10)の幅を容器(1)の幅より若干狭く形成し、吊下片(3)の長さを容器(1)の幅と同一に形成して、吊下片(3)の切り起こしを容易に行い得るようにし、更に吊下片(3)と上面板(10)との先端連結部に三角形のカット(19)を施し、吊下片(3)の切り離しを容易とした」という構成を付加するものであり、この補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものであり、請求項1に係る発明における「吊下片」について限定するものであるので、特許法第17条の2第2項に規定する要件を満たし、かつ同条第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭61-92583号(実開昭62-203878号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という)及び実願昭62-25686号(実開昭63-134917号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
[引用例1]
a.「底板、前板、後板、左側内板、右側内板、左側外板、右側外板、天内板、天外板から成る記録・再生用テープの収納ケースにおいて、互いに前後に対向する左側内板及び左側外板と、右側内板及び右側外板とのいずれか一方を、切取線を介して切取自在にすると共に、前板及び後板の前記切取線側一側部の長手方向略中央部には開封片を、切取線を介して切取自在に夫々設け、且つ天外板の長手方向略中央部には、中心部に吊下孔を有する吊下片を、切取線を介して切起自在に設けたことを特徴とする記録・再生用テープの収納ケース。」(実用新案登録請求の範囲)
b.「従来、この種の収納ケースは・・・ケース本体の内部に右側方(又は左側方)から記録・再生用テープを収納し・・・ていた。」(2頁8〜13行)
c.「この考案は・・・販売店で展示する際には、吊下片を、切取線を介して上方へ切起して、販売店の展示台等に設けられた掛止杆に吊下孔を掛止して吊下げることができるようにしたものである。」(4頁11〜18行)
d.「第1図乃至第3図に示すように、先ず、横長の長方形状の底板1の前側縁及び後側縁に、互いに大きさが同一で縦長の長方形状の夫々前板2及び後板3を、折目線4、5を介して上方へ折曲自在に連設し、・・・切取線9、13の上端部には三角形状の開封用の切込溝18を設ける。・・・前板2の天側縁には天内板23を、折目線24を介して後方へ折曲自在に連設し、・・・後板3の天側縁には、前記天内板23の両端部外面に糊付けする天外板31を、折目線32を介して前方へ折曲自在に連設し、この天外板31の長手方向中央部には、中心部に吊下孔33を有する吊下片34を、切取線35及び前記折目線32を介して上方へ切起自在に設けたものである。」(5頁2行〜6頁19行、第1図乃至第3図参照)
e.「天外板31の長手方向略中央部に、中心部に吊下孔33を有する吊下片34を、切取線35を介して切起自在に設けたことにより、販売店で展示する際には、吊下片34を、切取線35を介して上方へ切起して、販売店の展示台等に設けられた掛止杆Bに吊下孔33を掛止して吊下げることができるため、・・・展示操作が極めて簡単で且つ消費者が見易いように展示することができる。」(8頁14行〜9頁3行)
[引用例2]
f.「1)プラスチック製容器の前面上部に、吊下部を設けたことを特徴とする商品収納展示用吊下箱
2)プラスチック製容器が、前板、側板、蓋板、底板、差込板、重合板、差込片を一枚のプラスチックシートに連設して設けたものの組み立てからなり、かつ前板の上部に吊下板が連設されている実用新案登録請求の範囲第1項記載の商品収納展示用吊下箱」(実用新案登録請求の範囲第1項・第2項)
g.「従来この種の容器は・・・吊下部分は容器の後部上面に連設するのが通例である。・・・前記の従来の技術により製造された吊下箱は、これを水平方向に突出した吊下棒により吊下げるときは、・・・吊下支点を通る垂直軸に対して後部方向へ角αにて傾斜することが避けられず、このため顧客はこの商品に対し認識が薄くなり、セールス効果があがらないうらみがあった。・・・上記の如き実情に鑑み鋭意検討の結果、プラスチック製容器の前面上部に吊下部を設けた吊下箱が、吊下支点を通る水直軸に対し下部になるに従い前部方向へ角αにて傾斜することにより、商品が顧客に見易くなりセールス効果を上げうることが見いだされた。」(1頁19行〜2頁18行)
(3)対比
引用例1に記載された発明(以下、「引用発明1」という)では、「収納ケース」の材質が特定されていないが、この種収納ケースは通常、紙やプラスチックシートで構成されるものであり、本願補正発明においても紙、プラスチックシート、両者の積層シート等で構成した容器を総称して「紙製容器」の用語を使用するとしているので(段落番号【0008】)、引用発明1の「収納ケース」は本願補正発明の「紙製容器」に相当する。
引用発明1の収納ケースは、底板、前板、後板、左側内板、右側内板、左側外板、右側外板、天内板、天外板からなるものであり(記載a)、引用発明1の「底板」、「天外板」及び「天内板」は、それぞれ本願補正発明の「底面板」、「上面板」及び「接合板」に相当し、引用発明1の「後板」と本願補正発明の「前面板」は容器を構成する第1の面板として共通し、引用発明1の「前板」と本願補正発明の「後面板」は容器を構成する第2の面板として共通する。
また、引用発明1の「掛止杆」、「吊下孔」及び「吊下片」は、それぞれ本願補正発明の「陳列バー」、「孔(5)」及び「吊下片」に相当する(記載d)。
さらに、引用発明1の吊下片は、天外板の長手方向略中央部に切取線を介して切起自在に設けられており(記載a)、切取線をミシン目により構成することは通常行われていることであるので、引用発明1の「切取線」は、本願補正発明の「ミシン目」に相当する。
そして、記載dより、引用発明1の吊下片は、天内板には糊付けされていないと解され、引用例1の第1図及び第2図を参照すると、天外板の幅は収納ケースの幅よりやや狭く、吊下片の幅は収納ケースの幅とほぼ同じに形成されている。
してみると、本願補正発明と引用発明1とは、「第1の面板、底面板、第2の面板を有し、第1の面板に連続する上面板と第2の面板に連続する接合板とを接合して、方形筒状の容器本体を形成し、第1の面板の上端に連続し、且中央に陳列バーを挿通自在な孔を有する吊下片を上面板の中央にミシン目により切り離して起立自在に形成した吊下片を有する紙製容器において、上面板と接合片とを吊下片を除いて接着し、吊下片は接合板に対して非接着状態に形成して、吊下片のミシン目に沿った切り離しを容易に行い得るようにすると共に、上面板の幅を容器の幅より若干狭く形成し、吊下片の長さを容器の幅と同一に形成して、吊下片の切り起こしを容易に行い得るようにしたことを特徴とする吊下片を有する紙製容器」である点で一致しており、以下の点で相違している。
[相違点1]本願補正発明における第1の面板は「前面板」で、第2の面板は「後面板」であるのに対し、引用発明1における第1の面板は「後板」で、第2の面板は「前板」であり、この結果、吊下片は前者では前面側にあるが、後者では後面側にある点。
[相違点2]本願補正発明は、容器本体の少なくとも一側面が解放し、前面板又は後面板の少なくとも一側に連続する側面板と差込片とからなるフラップにより容器本体の前記開放された側面を開閉自在にしているのに対し、引用発明1は側面が解放されておらず、開閉自在ではない点。
[相違点3]本願補正発明は、前面板に窓孔を形成し、該窓孔を透明なフィルム、セロファン等で閉塞して、収納物を外部から視認可能としたのに対し、引用発明1は面板に窓孔を有していない点。
[相違点4]本願補正発明は、吊下片と上面板との先端連結部に三角形のカットを施し、吊下片の切り離しを容易としたのに対し、引用発明1は当該部分に三角形のカットを有していない点。
(4)判断
上記の相違点について検討する。
[相違点1]について
吊下片を容器後面上部に設けた場合、容器の下部が後方へ後退する傾斜した状態となり、容器前面を視認し難くなるため、これを防止するために、吊下片を容器前面上部に設けることは引用例2に記載されている(記載g)。
引用例2に記載された発明(以下、「引用発明2」という)は、本願補正発明及び引用発明1と同様に1枚のシートからなる吊下片を有する商品展示用の容器であるから、三者の技術分野は同じであり、引用発明1に上記引用発明2の構成を適用し、容器における第1の面板及び第2の面板の前後を逆にして、本願補正発明のように吊下片を容器前面に設けることは当業者が容易に想到しうる事項であり、その効果も、予測しうる範囲内のものである。
[相違点2]について
この種容器において、容器本体の少なくとも一側面を解放した構成とすることは、引用発明1の記載bにもみられるように、本願出願前周知の技術的事項である。そして、この場合、前面板又は後面板の少なくとも一側に連続する側面板と差込片とからなるフラップにより容器本体の前記開放された側面を開閉自在に構成することも、本願出願前周知の技術的事項であり(必要であれば、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭46-36269号〈実開昭47-35794号〉のマイクロフィルム及び実願昭54-11998号〈実開昭55-115515号〉のマイクロフィルム等参照)、上記の周知技術を、収納した商品が下部から落下するのを防止する目的で、引用発明1の側壁に適用することは、当業者が容易になし得る事項であり、その効果も、周知の技術的事項から予測しうる範囲内のものである。
[相違点3]について
この種容器において、面板に窓孔を形成し、該窓孔を透明なフィルム、セロファン等で閉塞して、収納物を外部から視認可能とすることは、本願出願前周知の技術的事項であり(必要であれば、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭51-133444号〈実開昭53-51835号〉のマイクロフィルム及び実願昭54-11998号〈実開昭55-115515号〉のマイクロフィルム等参照)、上記の周知技術を、引用発明1の前板又は後板に適用することは、当業者が容易になし得る事項である。そして、窓孔を形成する部位を前面板に特定することも展示中の視認性を考慮すれば当業者が当然採用する事項であり、その効果も、周知の技術的事項から予測しうる範囲内のものである。
[相違点4]について
この種容器において、切り離しを容易にするために、板体に設けられた切り離し線の先端部に三角形のカットを設けることは、引用発明1の第1図(切込溝18)に示されているように、本願出願前周知の技術的事項である(必要であれば、さらに原査定の拒絶の理由に引用された、特公昭47-29676号公報参)。そして、この三角形のカットを吊下片と上面板との先端連結部に設けることも、本願出願前周知の技術的事項であり(必要であれば、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭47-41512号〈実開昭49-2294号〉のマイクロフィルム参照)、上記の周知技術を、引用発明1の吊下片部分に適用することは、当業者が容易になし得る事項であり、その効果も、周知の技術的事項から予測しうる範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は引用例1及び引用例2に記載された発明、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成13年3月14日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成12年12月8日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであるところ、請求項1には以下のとおり記載されている(以下、「本願発明」という)。
「【請求項1】前面板(7)、底面板(9)、後面板(8)を有し、前面板(7)に連続する上面板(10)と後面板(8)に連続する接合板(11)とを接合して、少なくとも一側面が開放した方形筒状の容器本体を形成し、前面板(7)又は後面板(8)の少なくとも一側に連続する側面板(12)と差込片(13)とからなるフラップ(4)により容器本体の前記開放された側面を開閉自在にすると共に、前面板(7)の上端に連続し、且中央に陳列バー(6)を挿通自在な孔(5)を有する吊下片(3)を上面板(10)の中央にミシン目(15)により切り離して起立自在に形成し、前面板(7)に窓孔(2)を形成し、該窓孔(2)を透明なフィルム、セロファン等で閉塞して、収納物を外部から視認可能とした吊下片を有する紙製容器において、上面板(10)と接合片(11)とを吊下片(3)を除いて接着し、吊下片(3)は接合板(11)に対して非接着状態に形成して、吊下片(3)のミシン目に沿った切り離しを容易に行い得るようにしたことを特徴とする吊下片を有する紙製容器。」
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」の項に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の構成に対し、「吊下片」の切り起こしを容易に行い得るように「上面板の幅を容器の幅より若干狭く形成し、吊下片の長さを容器の幅と同一に形成し」、同じく「吊下片」の切り離しを容易とするように「吊下片と上面板との先端連結部に三角形のカットを施す」構成を欠如するものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1及び引用例2に記載された発明、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、引用例1及び引用例2に記載された発明、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は引用例1及び引用例2に記載された発明、並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2003-07-15 
結審通知日 2003-07-22 
審決日 2003-08-04 
出願番号 特願平6-193683
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 利英一ノ瀬 覚上尾 敬彦  
特許庁審判長 鈴木 美知子
特許庁審判官 柳 五三
山崎 勝司
発明の名称 吊下片を有する紙製容器  
代理人 竹内 裕  

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